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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170069
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】制御装置および電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241129BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087028
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 慧
(72)【発明者】
【氏名】恩田 昇治
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA03
5H770DA03
5H770DA21
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770JA17Z
5H770KA01Y
5H770LA01W
5H770LB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両用補助電源装置の安定した運転を実現する制御装置を提供する。
【解決手段】電源システム1において、制御装置9は、インバータ37、47と、インバータ37、47の直流入力端子間に接続されたコンデンサ36、46と、コンデンサ36、46と直流電源との間に接続された逆流防止素子34、44とを備えた補助電源装置3、4を複数並列に接続した構成から、補助電源装置3、4の各々について、直流電圧検出値、直流電源電圧検出値、出力電流検出値、出力電圧検出値及び入力電流検出値を取得する取得部911,921と、補助電源装置3、4の各々の出力電圧指令値を算出し、補助電源装置3、4の出力電力が同一になるように、出力電圧指令値に第1補償値を加算する出力電圧指令値算出部913、923と、直流電圧検出値と直流電源電圧検出値との差に応じた第2補償値により出力電圧指令値を補償して出力する補償部914、924と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷へ出力するインバータと、前記インバータの直流入力端子間に接続されたコンデンサと、前記コンデンサと前記直流電源との間に接続された逆流防止素子とを備えた補助電源装置を複数並列に接続した電源装置から、複数の前記補助電源装置の各々について、前記コンデンサの直流電圧検出値と、直流電源電圧検出値と、前記負荷へ出力される出力電流検出値と、前記負荷へ出力される出力電圧検出値と、前記直流電源から前記補助電源装置に入力される入力電流検出値と、を取得する取得部と、
複数の前記補助電源装置の各々の出力電圧指令値を算出し、前記出力電圧指令値に応じて前記インバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の前記補助電源装置の各々の前記出力電圧指令値を算出するとともに、複数の前記補助電源装置の出力電力が同一になるように、前記出力電圧指令値に第1補償値を加算する出力電圧指令値算出部と、
前記第1補償値により補償された前記出力電圧指令値を、前記直流電圧検出値と前記直流電源電圧検出値との差に応じた第2補償値により補償して出力する補償部と、を備える、制御装置。
【請求項2】
前記補償部は、
前記直流電圧検出値と前記直流電源電圧検出値との差を演算する減算部と、
前記入力電流検出値に応じた比例制御ゲインを前記差に乗算することにより前記第2補償値を算出する比例制御部と、
前記第2補償値を前記出力電圧指令値に加算する加算部と、
を備えた請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記比例制御部は、
前記入力電流検出値が第1閾値より大きい値であるときにハイレベルの値を出力し、前記入力電流検出値が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となったときにローレベルの値を出力するヒステリシス制御部を備え、
前記ヒステリシス制御部の出力値がハイレベルであるときに、前記比例制御ゲインを0とする、
請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記比例制御部は、前記入力電流検出値が所定の閾値より大きくなったときに、前記比例制御ゲインを徐々に低下させて0にする、
請求項2記載の制御装置。
【請求項5】
直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷へ出力するインバータと、前記インバータの直流入力端子間に接続されたコンデンサと、前記コンデンサと前記直流電源との間に接続された逆流防止素子とを備えた補助電源装置を複数並列に接続した電源装置と、
前記電源装置から、複数の前記補助電源装置それぞれの前記コンデンサの直流電圧検出値と、直流電源電圧検出値と、前記負荷へ出力される出力電流検出値と、前記負荷へ出力される出力電圧検出値と、前記直流電源から入力される入力電流検出値と、を取得する取得部と、
複数の前記補助電源装置の各々の出力電圧指令値を算出し、前記出力電圧指令値に応じて前記インバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の前記補助電源装置の各々の前記出力電圧指令値を算出するとともに、複数の前記補助電源装置の出力電力が同一になるように、前記出力電圧指令値に第1補償値を加算する出力電圧指令値算出部と、
前記第1補償値により補償された前記出力電圧指令値を、前記直流電圧検出値と前記直流電源電圧検出値との差に応じた第2補償値により補償して出力する補償部と、を備える、電源システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置および電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、例えば空調や蛍光灯等などの設備に電力を供給する補助電源装置を備えている。直流架線から供給される電力により駆動される直流電車等の鉄道車両において、出力容量の増加や装置の冗長性の向上のニーズに対応するために車両用補助電源装置を複数台並列接続した電源システムを備える構成が提案されている。
【0003】
上記電源システムにおいて、複数の車両用補助電源装置の出力電圧にばらつきがあると、並列接続点に電位差が生じ、車両用補助電源装置間にのみ流れる電流(以下、横流とする。)が発生する。横流が流れることで、各車両用補助電源装置が担う出力電流に偏りが生じ、システムが不安定になることがある。
【0004】
従来、各々の車両用補助電源装置の出力電流の情報を、複数の車両用補助電源装置の制御部間で伝送させ、各車両用補助電源装置の出力電流が同一となるように、各々の車両用補助電源装置の出力電圧を制御する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-28909号公報
【特許文献2】特開2016-100960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記車両用補助電源装置を複数台並列接続するシステムについて、横流が出力電流を上回った場合、横流が流れ込む側の車両用補助電源装置は回生動作となる。直流電車には、直流架線への電力回生を防止するために、インバータの入力側(直流側)と直流架線との間にダイオードなどの逆流防止素子を配置しているため、横流によりインバータの直流側に挿入されたコンデンサが充電され、過電圧となる可能性があった。インバータの直流入力が過電圧となると、車両に設けられた設備への電力供給が停止され、鉄道車両の運行に支障が生じる恐れがあった
【0007】
本発明の実施形態は、上記事情を鑑みて成されたものであって、車両用補助電源装置の安定した運転を実現する制御装置および電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による制御装置は、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷へ出力するインバータと、前記インバータの直流入力端子間に接続されたコンデンサと、前記コンデンサと前記直流電源との間に接続された逆流防止素子とを備えた補助電源装置を複数並列に接続した電源装置から、複数の前記補助電源装置の各々について、前記コンデンサの直流電圧検出値と、直流電源電圧検出値と、前記負荷へ出力される出力電流検出値と、前記負荷へ出力される出力電圧検出値と、前記直流電源から前記補助電源装置に入力される入力電流検出値と、を取得する取得部と、複数の前記補助電源装置の各々の出力電圧指令値を算出し、前記出力電圧指令値に応じて前記インバータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、複数の前記補助電源装置の各々の前記出力電圧指令値を算出するとともに、複数の前記補助電源装置の出力電力が同一になるように、前記出力電圧指令値に第1補償値を加算する出力電圧指令値算出部と、前記第1補償値により補償された前記出力電圧指令値を、前記直流電圧検出値と前記直流電源電圧検出値との差に応じた第2補償値により補償して出力する補償部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電源システムを搭載した車両の一構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る電源システムの一構成例を概略的に示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る制御装置の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図4図4は、一実施形態に係る制御装置の補償部の一構成例を概略的に示す制御ブロック図である。
図5図5は、一実施形態に係る制御装置の第1制御装置の横流抑制制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る制御装置について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる図面において、各部の縮尺は適宜変更されている。また、以下の実施形態の説明に用いる図面において、説明のために、構成を適宜省略している場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電源システムを搭載した鉄道車両の一構成例を概略的に示す図である。
鉄道車両は、例えば、直流架線(直流電源)8から供給される直流電力を電源として駆動される直流電車であって、複数の車両2を含んでいる。
鉄道車両は、例えば、照明機器6と、空調設備7と、エアコンプレッサ5と、複数の補助電源装置3、4と、を備えている。
【0012】
補助電源装置3、4は、直流架線8から供給された直流電力を交流電力に変換して、負荷であるエアコンプレッサ5、照明機器6および空調設備7に供給する。補助電源装置3、4と、エアコンプレッサ5と、照明機器6と、空調設備7と、は電力線PLを介して電気的に接続されている。補助電源装置3、4は、後述する制御装置9(図2に示す)により、制御される。
鉄道車両は、複数の補助電源装置を備える必要はなく、少なくとも1つの補助電源装置を備えていればよい。また、図1に示す例では、鉄道車両は、2つの補助電源装置3、4を備えているが、これに限らず、3つ以上の補助電源装置を備えていてもよい。
【0013】
図2は、一実施形態に係る電源システムの一構成例を概略的に示す回路図である。
電源システム1は、第1補助電源装置3と、第2補助電源装置4と、制御装置9と、切換器SWと、を備えている。
第1補助電源装置3と第2補助電源装置4とは、直流架線8に対して並列に接続されている。また、第1補助電源装置3と第2補助電源装置4とは、切換器SWを介して、負荷に対して並列に接続可能に構成されている。
【0014】
第1補助電源装置3は、高速度遮断器31と、フィルタリアクトルL3と、架線電圧検出器32と、入力電流検出器33と、逆流防止素子34と、直流電圧検出器35と、コンデンサ36と、インバータ37と、ACフィルタ38と、出力電流検出器391と、出力電圧検出器392と、を備えている。
【0015】
高速度遮断器31は高電位側の直流ラインに設けられ、直流架線8からインバータ37へ過電流が流れた場合に、直流架線8とインバータ37とを電気的に切り離す遮断器である。
架線電圧検出器32は、高速度遮断器31よりも直流架線8側において、高電位側の直流ラインの電圧値(直流架線8の電圧値)を検出し、検出結果を制御装置9に出力する。
【0016】
入力電流検出器33は、高速度遮断器31及びフィルタリアクトルL3を介して、直流架線8からインバータ37に入力される入力電流値を検出し、検出結果を制御装置9に出力する。
【0017】
逆流防止素子34は、フィルタリアクトルL3とインバータ37との間において、直流架線8からインバータ37へ向かう方向が順方向となるように高電位側の直流ラインに挿入されている。逆流防止素子34は、直流架線8からインバータ37に供給される方向の電流を通流させ、電流が直流架線8へ逆流することを防ぐ役割をもつ。
【0018】
コンデンサ36は、インバータ37の正側(高電位側)の直流入力端子と負側(低電位側)の直流入力端子との間に接続されている。コンデンサ36は、インバータ37に入力される直流電圧を一定に維持(電圧を平滑化)する。
直流電圧検出器35は、コンデンサ36と並列に接続され、コンデンサ36の電圧(インバータ37の直流端子間の電圧)を検出する。
【0019】
インバータ37は、複数のスイッチング素子(図示せず)を備え、制御装置9から供給されるゲート信号に基づいてスイッチングパターンが切り替わることにより、直流架線8から供給される直流電力を三相交流電力に変換する。
ACフィルタ38は、インバータ37から出力された三相交流電圧に含まれる高調波成分を除去し、波形を整形する。
【0020】
出力電流検出器391は、ACフィルタ38を介してインバータ37から出力された三相交流電流値を検出し、検出結果を制御装置9に出力する。
出力電圧検出器392は、ACフィルタ38を介してインバータ37から出力された三相交流電圧値を検出し、検出結果を制御装置9に出力する。
【0021】
なお、第1補助電源装置3と第2補助電源装置4の構成は同一であるため、第2補助電源装置4の説明は省略する。
切換器SWは、第1補助電源装置3と、第2補助電源装置4と、を並列接続するために用いる。
【0022】
図3は、一実施形態に係る制御装置の一構成例を概略的に示す制御ブロックである。
制御装置9は、第1制御装置91と、第2制御装置92と、バス通信線BLと、を備え、第1制御装置91と、第2制御装置92と、がバス通信線BLを介して通信可能に接続されている。なお、第1制御装置91と、第2制御装置92とは、無線ネットワーク等で接続され、データの送受信を行う構成であってもよい。
【0023】
第1制御装置91は、第1補助電源装置3から取得した種々の情報に基づいて、第1補助電源装置3のインバータ37のゲート信号を出力する。第2制御装置92は、第2補助電源装置4から取得した種々の情報に基づいて、第2補助電源装置4のインバータ47のゲート信号を出力する。
【0024】
第1制御装置91と第2制御装置92とは同様の構成であるため、以下では第1制御装置91の構成について説明し、第2制御装置92の構成については説明を省略する。
【0025】
第1制御装置91は、取得部911と、制御部912と、出力部918と、記憶部919と、バス通信線BL1と、を備えている。取得部911と、制御部912と、出力部918と、記憶部919とは、バス通信線BL1を介してデータの送受信が可能に接続されている。
【0026】
取得部911は、第1補助電源装置3から出力された直流電圧検出値と、直流電源電圧検出値と、出力電流検出値と、入力電流検出値と、を取得する。取得部911は、直流電圧検出値と、直流電源電圧検出値と、出力電流検出値と、出力電圧検出値と、入力電流検出値と、を常時監視し、取得していてもいいし、任意のタイミングで取得していてもよい。また、取得部911は、上位制御装置(図示せず)から供給される出力指令値を取得する。
【0027】
記憶部919は、例えば、ROM(read-only memory)、RAM(random-access memory)を含み得る。ROMは、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリであり、制御部912が各種の処理を行う上で使用するデータ及び各種の設定値などを記憶することができる。また、RAMは、制御部912が各種の処理を行う上で一時的にデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアとして利用され得る。本実施形態の記憶部919は、例えばRAMであって、メモリとして用いられる。
【0028】
また、記憶部919は、制御部912を中枢とするコンピュータの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体でもありうる。記憶部919は、例えば、EEPROM(登録商標)(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はSSD(solid state drive)などでもありうる。記憶部919は、制御部912が各種の処理を行う上で使用するデータ、制御部912での処理によって生成されたデータ又は各種の設定値などを保存することもできる。例えば、記憶部919は、直流電圧検出値と、直流電源電圧検出値と、出力電流検出値と、出力電圧検出値と、入力電流検出値などを記憶することができる。
【0029】
制御部912は、CPU(Central Process Unit)、MPU(micro processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)などのプロセッサを少なくとも1つ含む。制御部912は、記憶部919に記憶されたシステムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア又はファームウェアなどのプログラムに基づいて、電源システム1の種々の機能を実現することが可能である。
【0030】
制御部912は、出力電圧指令値算出部913と、補償部914と、を備えている。
出力電圧指令値算出部913は、記憶部919から出力電流検出値と、出力電圧検出値と、を取得し、当該出力電流検出値と、当該出力電圧検出値と、を用いて出力電力を算出する。出力電圧指令値算出部913は、当該出力電力を制御部922に出力する。出力電圧指令値算出部913は、出力電力を出力後、制御部922から第2補助電源装置4の出力電力を取得する。
【0031】
なお、説明のため、以降第1補助電源装置3の出力電流検出器391から出力される出力電流検出値を第1出力電流検出値とし、第1補助電源装置3の出力電圧検出器392から出力される出力電圧検出値を第1出力電圧検出値とし、第1出力電流検出値と、第1出力電圧検出値と、を用いて算出される出力電力を第1出力電力とする。
同様に、第2補助電源装置4の出力電流検出器491から出力される出力電流検出値を第2出力電流検出値とし、第2補助電源装置4の出力電圧検出器492から出力される出力電圧検出値を第2出力電圧検出値とし、第2出力電流検出値と、第2出力電圧検出値と、を用いて算出される出力電力を第2出力電力とする。
【0032】
出力電圧指令値算出部913は、上位制御装置から供給された出力指令値に基づき、第1出力電圧検出値が出力電圧指令値に追従するように当該出力電圧指令値を算出する。出力電圧指令値算出部913は、第1補助電源装置3の第1出力電力と、第2補助電源装置4の第2出力電力と、が同一になるように、出力電圧指令値に第1補償値を加算する。出力電圧指令値算出部913は、上記処理にて算出及び補償した出力電圧指令値を補償部914に出力する。
【0033】
補償部914は、第1補助電源装置3から取得した種々の情報に基づいて、出力電圧指令値算出部913から出力された出力電圧指令値に第2補償値を加算し、補償後の出力電圧指令値を出力部918へ供給する。
【0034】
図4は、一実施形態に係る制御装置の補償部の一構成例を概略的に示す制御ブロック図である。
補償部914は、減算部915と、比例制御部916と、加算部917と、を備えている。
減算部915は、記憶部919から直流電圧検出値と、直流電源電圧検出値と、を取得し、当該直流電圧検出値および直流電源電圧検出値の差(直流電圧検出値-直流電源電圧検出値)を演算する。
【0035】
比例制御部916は、記憶部919から入力電流検出値を取得し、当該入力電流検出値に応じた比例制御ゲインを減算部915で演算した差に乗算することにより第2補償値を算出する。
比例制御部916は、ヒステリシス制御部A1と、判定部A2と、ランプ制御部A3と、乗算部A4と、を備える。
【0036】
ヒステリシス制御部A1は、取得した入力電流検出値に対してヒステリシス制御を適用する。ヒステリシス制御部A1は、入力電流検出値が第1閾値より大きい値となったときに1(High(ハイレベル))を出力し、入力電流検出値が第2閾値以下となったときに0(Low(ローレベル))を出力する。ここで、第1閾値は第2閾値よりも大きい値である。入力電流検出値に対して上記ヒステリシス制御を行うことにより、例えばノイズ等により入力電流検出値が所定の閾値近傍において振動するときに、閾値と入力電流検出値との比較結果が短期間で変化することを回避することができる。
【0037】
なお、比例制御部916は、ヒステリシス制御部A1を備えていなくてもよい。この場合、比例制御部916は、デジタルLPF(Low-Pass-Filter)を備え、デジタルLPFにより入力電流検出値の振動成分を除去した後の値が、所定の閾値より大きい値である場合に1を出力し、所定の閾値以下である場合、0を出力する構成としてもよい。
【0038】
判定部A2は、ヒステリシス制御部A1の出力値に応じて、比例制御ゲイン若しくは0を出力する。例えば、判定部A2は、ヒステリシス制御部A1の出力値が1のときに0を出力し、ヒステリシス制御部A1の出力値が0のときに比例制御ゲインを出力する。ここでは、比例制御ゲインは予め設定された値である。
【0039】
ランプ制御部A3は、判定部A2から比例制御ゲインが入力されると、比例制御ゲインを出力する。ランプ制御部A3は、判定部A2から入力される値が比例制御ゲインから0となると、出力値を比例制御ゲイン(設定値)から徐々に低下させて小さくし、最終的に0を出力する。したがって、入力電流検出値が所定の閾値(第2閾値)以下ときに、ランプ制御部A3の出力値は0から比例制御ゲイン(設定値)となり、入力電流検出値が所定の閾値(第1閾値)より大きい値となったときに、ランプ制御部A3の出力値は比例制御ゲイン(設定値)から徐々に小さくなり0となる。
【0040】
なお、ランプ制御部A3は省略しても構わない。比例制御部916がランプ制御部A3を備えることにより、入力電流値が閾値以下となったときに電圧指令値の補償量が急激に変動することがなくなり、補助電源装置3による安定した電力供給を実現することができるとともに、定常特性は電圧指令値の補償量をゼロとして、複数の補助電源装置のインバータの出力電流が同一となるように制御することができる。
乗算部A4は、ランプ制御部A3から出力された値と、減算部915の出力値とを乗算することにより第2補償値を算出する。
【0041】
加算部917は、比例制御ゲインと差から算出した第2補償値を、出力電圧指令値に加算し、補償後の出力電圧指令値を算出して出力する。
出力部918は、補償後の出力電圧指令値に応じたゲート信号をインバータ37に出力する。出力部918は、例えば出力電圧指令値と搬送波とを比較した結果に基づいてインバータ37のゲート信号を生成することができる。
【0042】
以下、実施形態の制御装置9により、各補助電源装置の出力電圧の電位差を小さくする手順の一例について説明する。なお、以下の動作の説明における処理の内容は一例であって、同様の効果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
【0043】
図5は、一実施形態に係る制御装置の第1制御装置の横流抑制制御の一例について説明するためのフローチャートである。
取得部911は、直流電源から第1補助電源装置3に入力される入力電流検出値と、直流電源電圧検出値と、第1補助電源装置3が有するコンデンサ36の直流電圧検出値と、を取得する(ステップS1)。
【0044】
比例制御部916のヒステリシス制御部A1は、取得部911が取得した入力電流検出値に対してヒステリシス制御を適用する。
比例制御部916のヒステリシス制御部A1は、入力電流検出値と所定の閾値を比較する。より詳細には、比例制御部916のヒステリシス制御部A1は、入力電流検出値と第1閾値および第2閾値とを比較し、比較結果に応じた処理を実行する。
【0045】
入力電流検出値が第1閾値より大きい場合、比例制御部916のヒステリシス制御部A1は、1(High)を出力する。一方、入力電流検出値が第2閾値以下である場合、比例制御部916のヒステリシス制御部A1は、0(Low)を出力する。
判定部A2は、ヒステリシス制御部A1から入力された値が1のときに、0を出力し、ヒステリシス制御部A1から入力された値が0のときに比例制御ゲインを出力する。
【0046】
ランプ制御部A3は、判定部A2から供給された値を出力する。また、ランプ制御部A3は、入力電流検出値が所定の閾値より大きくなったとき、すなわち判定部A2の出力値が比例制御ゲインから0となったときに、比例制御ゲインにランプ制御を適用し、徐々に比例制御ゲインの値を小さくしていき、最終的に0とする。
乗算部A4は、比例制御ゲインと、直流電圧検出値と直流電源電圧検出値との差を乗算し、第2補償値を算出する(ステップS2)。
【0047】
加算部917は、ステップS2で算出した第2補償値を、出力電圧指令値算出部913から供給された出力電圧指令値に加算して、出力電圧指令値を補償する(ステップS3)。出力部918は、ステップS3で得られた補償後の出力電圧指令値に基づくゲート信号をインバータ37に出力する(ステップS4)。
【0048】
インバータ37のスイッチング素子は、上記ゲート信号に基づき切り替えられる。上記ステップ1からステップS7までの処理は、第2制御装置92でも同様に行われ、インバータ47は、第2制御装置92から出力されたゲート信号に基づき切り替えられる。
このことにより、例えば架線電圧とインバータ37の直流端子間電圧(コンデンサ36の電圧)との差があるとき(等しくないとき)に、架線電圧と直流端子間電圧との差が0となるようにインバータ37の出力電圧が制御される。このことにより、回生された横流電流が逆流防止素子34により阻害され、コンデンサ36が過充電されることを防止することができる。
【0049】
本実施形態の制御装置9および電源システム1によれば、第1制御装置91と第2制御装置92が、出力電流検出値と、出力電圧検出値と、から算出した出力電力を相互伝送することにより、出力電圧指令値を制御し、第1補助電源装置3と第2補助電源装置4の電位差を小さくすることで、横流の発生を抑制することができる。また、入力電流検出値と、直流電源電圧検出値と、直流電圧検出値と、を用いて算出した第2補償値を出力電圧指令値に加算することで、逆流防止素子の回生動作阻害によるコンデンサの過充電を防止することができる。
【0050】
そして、制御装置9において、比例制御ゲインの値を切り替えるために用いられる入力電流検出値に対してヒステリシス制御を行うことにより、入力電流検出値が閾値付近で変動した場合であっても、比例制御ゲインが瞬時に切り換わるのを抑制することができる。
上記のように、本実施形態によれば、車両用補助電源装置の安定した運転を実現する制御装置および電源システムを提供することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…電源システム、2…車両、3、4…補助電源装置、5…エアコンプレッサ、6…照明機器、7…空調設備、8…直流架線、9…制御装置、31、41…高速度遮断器、32、42…架線電圧検出器、33、43…入力電流検出器、34、44…逆流防止素子、35、45…直流電圧検出器、36、46…コンデンサ、37、47…インバータ、38、48…ACフィルタ、391、491…出力電流検出器、392、492…出力電圧検出器、91、92…制御装置、911、921…取得部、912、922…制御部、913、923…出力電圧指令値算出部、914、924…補償部、915、925…減算部、916、926…比例制御部、917、927…加算部、918、928…出力部、919、929…記憶部、A1…ヒステリシス制御部、A2…判定部、A3…ランプ制御部、A4…乗算部

図1
図2
図3
図4
図5