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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017007
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】記憶装置及び導電層
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/27 20230101AFI20240201BHJP
   H10B 63/10 20230101ALI20240201BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240201BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240201BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L27/105 449
H01L29/78 371
H01L21/28 301R
H01L29/58 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119359
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】井野 恒洋
【テーマコード(参考)】
4M104
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA08
4M104BB29
4M104BB37
4M104BB39
4M104CC05
4M104DD43
4M104EE02
4M104EE16
4M104FF18
4M104GG16
4M104HH20
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083FZ10
5F083GA10
5F083GA30
5F083JA31
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR21
5F101BA45
5F101BB04
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
(57)【要約】
【課題】耐熱性の高い導電性の物質を含む記憶装置を提供する。
【解決手段】実施形態の記憶装置は、第1の方向に延びる半導体層と、第1の物質又は第2の物質を含むゲート電極層であって、第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度が、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さく、第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度が、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい、ゲート電極層と、半導体層とゲート電極層との間に設けられた電荷蓄積層と、半導体層と電荷蓄積層との間に設けられた第1の絶縁層と、電荷蓄積層とゲート電極層との間に設けられた第2の絶縁層と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる半導体層と、
第1の物質又は第2の物質を含むゲート電極層であって、前記第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さく、前記第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい、ゲート電極層と、
前記半導体層と前記ゲート電極層との間に設けられた電荷蓄積層と、
前記半導体層と前記電荷蓄積層との間に設けられた第1の絶縁層と、
前記電荷蓄積層と前記ゲート電極層との間に設けられた第2の絶縁層と、
を備える記憶装置。
【請求項2】
前記第1の物質の窒素の原子濃度は、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和の80%以上95%以下であり、
前記第2の物質の窒素の原子濃度は、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和の80%以上95%以下である、請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記第1の物質のタンタルの原子濃度は、タングステンの原子濃度の30%以上330%以下であり、
前記第2の物質のニオブの原子濃度は、モリブデンの原子濃度の30%以上330%以下である、請求項1記載の記憶装置。
【請求項4】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、酸素(O)を更に含む、請求項1記載の記憶装置。
【請求項5】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、多結晶質部分を含み、前記多結晶質部分において、結晶粒中の酸素の原子濃度は、結晶粒界の酸素の原子濃度よりも低い、請求項4記載の記憶装置。
【請求項6】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、炭素(C)、塩素(Cl)、水素(H)、及び重水素(D)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を、更に含む、請求項1記載の記憶装置。
【請求項7】
前記第1の物質及び前記第2の物質のCu-Kα線によるX線回折において、回折角2θが15度以上30度以下の範囲に存在する回折ピークの半値幅が1.3度以上5度以下である、請求項1記載の記憶装置。
【請求項8】
前記ゲート電極層は、第1の領域と、前記第1の領域と前記第2の絶縁層との間に設けられた第2の領域と、を含み、前記第2の領域は前記第1の物質又は前記第2の物質を含む、請求項1記載の記憶装置。
【請求項9】
前記第1の領域は窒素を含むか又は含まず、前記第1の領域の窒素の原子濃度は前記第2の領域の窒素の原子濃度よりも低い、請求項8記載の記憶装置。
【請求項10】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた抵抗変化領域と、を備え、
前記第1の電極は、第1の物質又は第2の物質を含み、前記第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さく、前記第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい、記憶装置。
【請求項11】
前記第1の物質の窒素の原子濃度は、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和の80%以上95%以下であり、
前記第2の物質の窒素の原子濃度は、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和の80%以上95%以下である、請求項10記載の記憶装置。
【請求項12】
前記第1の物質のタンタルの原子濃度は、タングステンの原子濃度の30%以上330%以下であり、
前記第2の物質のニオブの原子濃度は、モリブデンの原子濃度の30%以上330%以下である、請求項10記載の記憶装置。
【請求項13】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、酸素(O)を更に含む、請求項10記載の記憶装置。
【請求項14】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、多結晶質部分を含み、前記多結晶質部分において、結晶粒中の酸素の原子濃度は、結晶粒界の酸素の原子濃度よりも低い、請求項13記載の記憶装置。
【請求項15】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、炭素(C)、塩素(Cl)、水素(H)、及び重水素(D)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を、更に含む、請求項10記載の記憶装置。
【請求項16】
前記第1の物質及び前記第2の物質のCu-Kα線によるX線回折において、回折角2θが15度以上30度以下の範囲に存在する回折ピークの半値幅が1.3度以上5度以下である、請求項10記載の記憶装置。
【請求項17】
前記第1の電極と前記抵抗変化領域との間、又は、前記第2の電極と前記抵抗変化領域との間に設けられ、前記抵抗変化領域の化学組成と異なる化学組成を有する中間領域を、更に備える請求項10記載の記憶装置。
【請求項18】
前記中間領域は、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、及びチタン(Ti)からなる群から選ばれる第1の元素と、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、及びテルル(Te)からなる群から選ばれる第2の元素と、を含む、請求項17記載の記憶装置。
【請求項19】
前記抵抗変化領域は、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)を含む、請求項18記載の記憶装置。
【請求項20】
第1の物質又は第2の物質を含み、前記第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さく、前記第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい、導電層。
【請求項21】
前記第1の物質の窒素の原子濃度は、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和の80%以上95%以下であり、
前記第2の物質の窒素の原子濃度は、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和の80%以上95%以下である、請求項20記載の導電層。
【請求項22】
前記第1の物質のタンタルの原子濃度は、タングステンの原子濃度の30%以上330%以下であり、
前記第2の物質のニオブの原子濃度は、モリブデンの原子濃度の30%以上330%以下である、請求項20記載の導電層。
【請求項23】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、酸素(O)を含む、請求項20記載の導電層。
【請求項24】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、多結晶質部分を含み、前記多結晶質部分において、結晶粒中の酸素の原子濃度は、結晶粒界の酸素の原子濃度よりも低い、請求項23記載の導電層。
【請求項25】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、炭素(C)、塩素(Cl)、水素(H)、及び重水素(D)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を、更に含む、請求項20記載の導電層。
【請求項26】
前記第1の物質及び前記第2の物質のCu-Kα線によるX線回折において、回折角2θが15度以上30度以下の範囲に存在する回折ピークの半値幅が1.3度以上5度以下である、請求項20記載の導電層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置及び導電層に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶装置では、製造途中の熱処理により導電層の電気抵抗が変化する場合がある。熱処理による電気抵抗変化を抑制するために、耐熱性の高い物質を導電層に用いることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-60944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性の高い導電性の物質を含む記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の記憶装置は、第1の方向に延びる半導体層と、第1の物質又は第2の物質を含むゲート電極層であって、前記第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さく、前記第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい、ゲート電極層と、前記半導体層と前記ゲート電極層との間に設けられた電荷蓄積層と、前記半導体層と前記電荷蓄積層との間に設けられた第1の絶縁層と、前記電荷蓄積層と前記ゲート電極層との間に設けられた第2の絶縁層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの回路図。
図2】第1の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図。
図3】第1の実施形態の記憶装置のメモリセルの一部の拡大図。
図4】第1の実施形態の変形例の記憶装置のメモリセルの一部の拡大図。
図5】第2の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの回路図。
図6】第2の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの一部の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0008】
本明細書中の記憶装置を構成する部材の化学組成の定性分析及び定量分析は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)、電子エネルギー損失分光法(Electron Energy Loss Spectroscopy:EELS)、又はX線光電分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)などにより行うことが可能である。また、記憶装置を構成する部材の厚さ、部材間の距離等の測定には、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いることが可能である。また、記憶装置を構成する部材の構成物質の結晶系の同定、結晶系の存在割合の大小比較には、例えば、透過型電子顕微鏡、X線回折分析(X-ray Diffraction:XRD)、電子線回折分析(Electron Beam Diffraction:EBD)、又はX線光電分光分析や放射光X線吸収微細構造解析(Synchrotron Radiation X-ray Absorption Fine Structure:XAFS)を用いることが可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の記憶装置は、第1の方向に延びる半導体層と、第1の物質又は第2の物質を含むゲート電極層であって、第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さく、第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい、ゲート電極層と、半導体層とゲート電極層との間に設けられた電荷蓄積層と、半導体層と電荷蓄積層との間に設けられた第1の絶縁層と、電荷蓄積層とゲート電極層との間に設けられた第2の絶縁層と、を備える。
【0010】
第1の実施形態の記憶装置は、3次元NANDフラッシュメモリである。第1の実施形態の記憶装置のメモリセルは、いわゆる、Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor型(MONOS型)のメモリセルである。
【0011】
図1は、第1の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの回路図である。
【0012】
第1の実施形態の3次元NANDフラッシュメモリのメモリセルアレイ100は、図1に示すように複数のワード線WL、共通ソース線CSL、ソース選択ゲート線SGS、複数のドレイン選択ゲート線SGD、複数のビット線BL、及び、複数のメモリストリングMSを備える。
【0013】
複数のワード線WLが、互いに離間してz方向に配置される。複数のワード線WLがz方向に積層して配置される。複数のメモリストリングMSは、z方向に延びる。複数のビット線BLは、例えば、x方向に延びる。
【0014】
以下、x方向を第3の方向、y方向を第2の方向、z方向を第1の方向と定義する。x方向、y方向、z方向は互いに交差し、例えば、互いに垂直である。
【0015】
図1に示すように、メモリストリングMSは、共通ソース線CSLとビット線BLとの間に直列接続されたソース選択トランジスタSST、複数のメモリセル、及び、ドレイン選択トランジスタSDTを備える。1本のビット線BLと1本のドレイン選択ゲート線SGDを選択することにより1本のメモリストリングMSが選択され、1個のワード線WLを選択することにより1個のメモリセルが選択可能となる。ワード線WLは、メモリセルを構成するメモリセルトランジスタMTのゲート電極である。
【0016】
図2(a)、図2(b)は、第1の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図である。図2(a)、図2(b)は、図1のメモリセルアレイ100の中の、一個のメモリストリングMSの中の複数のメモリセルの断面を示す。
【0017】
図2(a)は、メモリセルアレイ100のyz断面図である。図2(a)は、図2(b)のBB’断面である。図2(b)は、メモリセルアレイ100のxy断面図である。図2(b)は、図2(a)のAA’断面である。図2(a)中、破線で囲まれた領域が、1個のメモリセルである。
【0018】
図3は、第1の実施形態の記憶装置のメモリセルの一部の拡大図である。図3は、図2(a)の一部の拡大図である。
【0019】
メモリセルアレイ100は、図2(a)、図2(b)、図3に示すように、ワード線WL、半導体層10、層間絶縁層13、トンネル絶縁層14、電荷蓄積層16、ブロック絶縁層18、コア絶縁領域20を備える。複数のワード線WLと複数の層間絶縁層13が積層体30を構成する。
【0020】
ワード線WLは、ゲート電極層の一例である。ワード線WLは、導電層の一例である。トンネル絶縁層14は、第1の絶縁層の一例である。ブロック絶縁層18は、第2の絶縁層の一例である。
【0021】
メモリセルアレイ100は、例えば、図示しない半導体基板の上に設けられる。半導体基板は、例えば、x方向及びy方向に平行な表面を有する。
【0022】
ワード線WLと層間絶縁層13は、半導体基板の上に、z方向に交互に積層される。ワード線WLは、互いに離間してz方向に繰り返し配置される。ワード線WLは、メモリセルトランジスタMTの制御電極として機能する。
【0023】
ワード線WLは、板状の導電体である。
【0024】
ワード線WLは、第1の物質又は第2の物質を含む。例えば、ワード線WLの全領域が第1の物質又は第2の物質で形成される。
【0025】
第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい。また、第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい。
【0026】
ワード線WLは、例えば、第1の物質を含む。第1の物質の主成分は、タンタル、タングステン、及び窒素である。第1の物質の主成分がタンタル、タングステン、及び窒素であるとは、第1の物質に含まれる元素の中で、タンタル、タングステン、又は窒素よりも原子濃度が高い元素が存在しないことを意味する。第1の物質に含まれるタンタル、タングステン、及び窒素の原子濃度の総和は、例えば、80%以上である。
【0027】
第1の物質は、例えば、窒化タンタルタングステンを含む。第1の物質は、例えば、窒化タンタルタングステンである。
【0028】
ワード線WLは、例えば、第1の物質で形成される。ワード線WLは、例えば、窒化タンタルタングステンを含む。ワード線WLは、例えば、窒化タンタルタングステン層である。
【0029】
第1の物質の窒素の原子濃度は、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい。第1の物質の窒素の原子濃度は、例えば、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和の80%以上95%以下である。
【0030】
第1の物質のタンタルの原子濃度は、例えば、タングステンの原子濃度の30%以上330%以下である。
【0031】
ワード線WLは、例えば、第2の物質を含む。第2の物質の主成分は、ニオブ、モリブデン、及び窒素である。第2の物質の主成分がニオブ、モリブデン、及び窒素であるとは、第2の物質に含まれる元素の中で、ニオブ、モリブデン、又は窒素よりも原子濃度が高い元素が存在しないことを意味する。第2の物質に含まれるニオブ、モリブデン、及び窒素の原子濃度の総和は、例えば、80%以上である。
【0032】
第2の物質は、例えば、窒化ニオブモリブデンを含む。第2の物質は、例えば、窒化ニオブモリブデンである。
【0033】
ワード線WLは、例えば、第2の物質で形成される。ワード線WLは、例えば、窒化ニオブモリブデンを含む。ワード線WLは、例えば、窒化ニオブモリブデン層である。
【0034】
第2の物質の窒素の原子濃度は、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい。第2の物質の原子濃度は、例えば、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和の80%以上95%以下である。
【0035】
第2の物質のニオブの原子濃度は、例えば、モリブデンの原子濃度の30%以上330%以下である。
【0036】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、酸素(O)を含む。第1の物質及び第2の物質に含まれる酸素の原子濃度は、例えば、5原子%以上20原子%以下である。
【0037】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、多結晶質部分を含む。例えば、第1の物質及び第2の物質の全部が、多結晶質部分である。
【0038】
第1の物質及び第2の物質の多結晶質部分において、例えば、結晶粒中の酸素の原子濃度は、結晶粒界の酸素の原子濃度よりも低い。第1の物質及び第2の物質の多結晶質部分において、例えば、酸素は結晶粒界に偏析している。
【0039】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、炭素(C)、塩素(Cl)、水素(H)、及び重水素(D)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含む。第1の物質及び第2の物質に含まれる上記少なくとも一つの元素の原子濃度は、例えば、5原子%以上20原子%以下である。
【0040】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、多結晶質である。第1の物質及び第2の物質のCu-Kα線によるX線回折において、例えば、回折角2θが15度以上30度以下の範囲に存在する回折ピークの半値幅が1.3度以上5度以下である。
【0041】
ワード線WLのz方向の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0042】
ワード線WLは、例えば、化学気相成長法(CVD法)により第1の物質の膜又は第2の物質の膜を堆積することで形成される。ワード線WLをCVD法により形成する際の原料ガスの組成を調整することで、所望の化学組成の第1の物質の膜又は第2の物質の膜を堆積することが可能である。
【0043】
層間絶縁層13は、ワード線WLのz方向に設けられる。ワード線WLと層間絶縁層13は、z方向に配列される。
【0044】
層間絶縁層13は、ワード線WLとワード線WLを分離する。層間絶縁層13は、ワード線WLとワード線WLを電気的に分離する。
【0045】
層間絶縁層13は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。層間絶縁層13は、例えば、シリコン(Si)及び酸素(O)を含む。層間絶縁層13は、例えば、酸化シリコンを含む。層間絶縁層13は、例えば、酸化シリコン層である。層間絶縁層13のz方向の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0046】
半導体層10は、積層体30の中に設けられる。半導体層10は、z方向に延びる。半導体層10は、半導体基板の表面に垂直な方向に延びる。
【0047】
半導体層10は、積層体30を貫通して設けられる。半導体層10は、複数のワード線WLに囲まれる。半導体層10は、例えば、円筒状である。半導体層10は、メモリセルトランジスタMTのチャネルとして機能する。
【0048】
半導体層10は、例えば、多結晶の半導体である。半導体層10は、例えば、多結晶シリコンである。
【0049】
トンネル絶縁層14は、半導体層10とワード線WLとの間に設けられる。トンネル絶縁層14は、半導体層10と電荷蓄積層16との間に設けられる。トンネル絶縁層14は、ワード線WLと半導体層10との間に印加される電圧に応じて電荷を通過させる機能を有する。
【0050】
トンネル絶縁層14は、例えば、シリコン(Si)、窒素(N)、及び酸素(O)を含む。トンネル絶縁層14は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコンを含む。トンネル絶縁層14は、例えば、酸化シリコン層、窒化シリコン層、又は酸窒化シリコン層である。トンネル絶縁層14の厚さは、例えば、1nm以上8nm以下である。
【0051】
電荷蓄積層16は、トンネル絶縁層14とブロック絶縁層18との間に設けられる。
【0052】
電荷蓄積層16は、電荷をトラップして蓄積する機能を有する。電荷は、例えば、電子である。電荷蓄積層16に蓄積される電荷の量に応じて、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化する。この閾値電圧の変化を利用することで、1個のメモリセルがデータを記憶することが可能となる。
【0053】
例えば、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化することで、メモリセルトランジスタMTがオンする電圧が変化する。例えば、閾値電圧が高い状態をデータ“0”、閾値電圧が低い状態をデータ“1”と定義すると、メモリセルは“0”と“1”の1ビットデータを記憶することが可能となる。
【0054】
電荷蓄積層16は、例えば、絶縁体である。電荷蓄積層16は、例えば、シリコン(Si)、及び窒素(N)を含む。電荷蓄積層16は、例えば、窒化シリコンを含む。電荷蓄積層16は、例えば、窒化シリコン層である。電荷蓄積層16の厚さは、例えば、3nm以上10nm以下である。
【0055】
ブロック絶縁層18は、トンネル絶縁層14とワード線WLとの間に設けられる。ブロック絶縁層18は、電荷蓄積層16とワード線WLとの間に設けられる。ブロック絶縁層18は、電荷蓄積層16とワード線WLとの間に流れる電流を阻止する機能を有する。
【0056】
ブロック絶縁層18は、絶縁層である。ブロック絶縁層18は、例えば、シリコン(Si)及び酸素(O)を含む。ブロック絶縁層18は、例えば、酸化シリコンを含む。ブロック絶縁層18は、例えば、酸化シリコン層である。
【0057】
ブロック絶縁層18は、例えば、アルミニウム(Al)及び酸素(O)を含む。ブロック絶縁層18は、例えば、酸化アルミニウムを含む。ブロック絶縁層18は、例えば、酸化アルミニウム層である。
【0058】
ブロック絶縁層18は、例えば、酸化シリコン層と酸化アルミニウム層との積層構造である。
【0059】
ブロック絶縁層18の、半導体層10からワード線WLに向かうy方向の厚さは、例えば、1nm以上8nm以下である。
【0060】
コア絶縁領域20は、積層体30の中に設けられる。コア絶縁領域20は、z方向に延びる。コア絶縁領域20は、積層体30を貫通して設けられる。コア絶縁領域20は、半導体層10に囲まれる。コア絶縁領域20は、複数のワード線WLに囲まれる。コア絶縁領域20は、柱状である。コア絶縁領域20は、例えば、円柱状である。
【0061】
コア絶縁領域20は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。コア絶縁領域20は、例えば、シリコン(Si)及び酸素(O)を含む。コア絶縁領域20は、例えば、酸化シリコンを含む。コア絶縁領域20は、例えば、酸化シリコン層である。
【0062】
次に、第1の実施形態の記憶装置の作用及び効果について説明する。
【0063】
3次元NANDフラッシュメモリを製造する際、メモリセルの形成中または形成後に、熱処理が行われる。例えば、メモリセル中のブロック絶縁層18の改質などの目的や、メモリセルの上に設けられる多層配線層の形成のために、熱処理が行われる。熱処理の温度は、例えば、800℃以上1150℃以下である。
【0064】
メモリセルの形成後の熱処理により、ワード線WLの電気抵抗が変化する場合がある。例えば、熱処理によりワード線WLの電気抵抗が高くなる場合がある。ワード線WLの電気抵抗が変化すると、例えば、メモリセルの動作が不安定になる。メモリセルの動作を安定化させるために、熱処理による電気抵抗変化の小さい、耐熱性の高い物質をワード線WLの材料として用いることが望まれる。また、熱処理によりワード線WLの電気抵抗が変化しているということは、ワード線WLと接するブロック絶縁層18の構成材料とワード線WLの構成材料が熱処理により混合していることを意味する場合がある。ワード線WLの構成材料とブロック絶縁層18の構成材料が熱処理により混合してしまうと、ブロック絶縁層18の特性が劣化することによってメモリセルの特性が劣化する。そのようなメモリセルの劣化を防ぐために、熱処理による電気抵抗変化の小さい、耐熱性の高い物質をワード線WLの材料として用いることが望まれる。
【0065】
第1の実施形態の3次元NANDフラッシュメモリのワード線WLは、第1の物質又は第2の物質を含む。
【0066】
第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい。また、第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい。
【0067】
第1の実施形態の3次元NANDフラッシュメモリのワード線WLは、第1の物質又は第2の物質を含む。第1の物質及び第2の物質は、耐熱性が高く、熱処理が加えられた場合の電気抵抗変化が小さい。
【0068】
ワード線WLに第1の物質又は第2の物質を用いることにより、熱処理による電気抵抗変化の小さいワード線WLが実現できる。ワード線WLに第1の物質又は第2の物質を用いることにより、特に、熱処理によりワード線WLの電気抵抗が高くなることが抑制される。
【0069】
ワード線WLに第1の物質又は第2の物質を用いることにより、特に、ワード線WLのz方向の厚さが薄くなった場合に、熱処理によりワード線WLの電気抵抗が高くなることを抑制することができる。ワード線WLに第1の物質又は第2の物質を用いることにより、特に、ワード線WLのz方向の厚さが10nm以下となった場合に、熱処理によりワード線WLの電気抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0070】
物質の相変態(phase transformation)が起こるには系に存在する相が平衡状態で存在する相(平衡相)よりも不安定である必要がある。一定圧力条件下での相の安定性はギブスの自由エネルギー(Gibbs free energy)によって定義される。ギブスの自由エネルギーGは、下記式で定義される。下記式において、Uは内部エネルギー、Tは絶対温度、Sはエントロピー、Pは圧力、Vは体積である。
G=U-TS+PV
【0071】
一定温度及び一定圧力下の閉じた系において、ギブスの自由エネルギーGが最小値の場合、系は平衡状態(equilibrium)といえる。言い換えれば、ギブスの自由エネルギーGが最小値の場合、系が最も安定な状態にある。
【0072】
上記式からも分かるように、エントロピーSが大きいほど、ギブスの自由エネルギーGは小さくなる。したがって、エントロピーSの大きい物質はギブスの自由エネルギーGが小さく、更にギブスの自由エネルギーGが小さくなる状態が存在しにくい。この効果は系の温度Tが高くなるほど大きい。したがって、エントロピーSの大きい物質は高温における安定性が高く、耐熱性が高いと考えられる。
【0073】
エントロピーSは、系の微視的な乱雑さを表す物理量である。エントロピーSが大きい物質とは、例えば、多数の元素が混じっている物質、均質に混合されている物質、相分離していない物質、又は欠陥サイトが存在する物質である。
【0074】
第1の実施形態の第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含む。第1の物質は、例えば、窒化タンタルタングステンである。三元素で構成される窒化タンタルタングステンは、例えば、二元素で構成される窒化タンタルや窒化タングステンよりもエントロピーSが大きい物質である。
【0075】
また、第1の物質は、窒素の原子濃度が、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい。第1の物質は、例えば、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい窒化タンタルタングステンである。窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい窒化タンタルタングステンは、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和と等しい窒化タンタルタングステンよりも窒素の欠陥サイトが多くエントロピーSが大きい物質である。
【0076】
第1の実施形態の第1の物質は、エントロピーSが大きい物質であることにより、耐熱性が高く、熱処理が加えられた場合に電気抵抗変化が生じにくいと考えられる。
【0077】
第1の実施形態の第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含む。第2の物質は、例えば、窒化ニオブモリブデンである。三元素で構成される窒化ニオブモリブデンは、例えば、二元素で構成される窒化ニオブや窒化モリブデンよりもエントロピーSが大きい物質である。
【0078】
また、第2の物質は、窒素の原子濃度が、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい。第2の物質は、例えば、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい窒化ニオブモリブデンである。窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい窒化ニオブモリブデンは、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和と等しい窒化ニオブモリブデンよりも窒素の欠陥サイトが多くエントロピーSが大きい物質である。
【0079】
第1の実施形態の第2の物質は、エントロピーSが大きい物質であることにより、耐熱性が高く、熱処理が加えられた場合に電気抵抗変化が生じにくいと考えられる。
【0080】
第1の物質の窒素の原子濃度は、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和の80%以上95%以下であることが好ましい。上記範囲を充足することにより、エントロピーSの大きい物質を実現できる。したがって、第1の物質の耐熱性が向上する。
【0081】
第2の物質の窒素の原子濃度は、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和の80%以上95%以下であることが好ましい。上記範囲を充足することにより、エントロピーSの大きい物質を実現できる。したがって、第2の物質の耐熱性が向上する。
【0082】
第1の物質のタンタルの原子濃度は、タングステンの原子濃度の30%以上330%以下であることが好ましい。上記範囲を充足することにより、エントロピーSの大きい物質を実現できる。したがって、第1の物質の耐熱性が向上する。
【0083】
第2の物質の窒素のニオブの原子濃度は、モリブデンの原子濃度の和の30%以上330%以下であることが好ましい。上記範囲を充足することにより、エントロピーSの大きい物質を実現できる。したがって、第2の物質の耐熱性が向上する。
【0084】
第1の物質及び第2の物質は、酸素(O)を含むことが好ましい。第1の物質及び第2の物質が四元素以上含むことで、更にエントロピーSの大きい物質を実現できる。したがって、第1の物質及び第2の物質の耐熱性が向上する。
【0085】
第1の物質及び第2の物質に含まれる酸素の原子濃度は、5原子%以上20原子%以下であることが好ましい。上記下限値よりも酸素の原子濃度が高いことで、エントロピーSが大きくなり第1の物質及び第2の物質の耐熱性が向上する。また、上記上限値よりも酸素の原子濃度が低いことで、第1の物質及び第2の物質の電気抵抗を低くできる。
【0086】
第1の物質及び第2の物質が多結晶質部分を含み、多結晶質部分において、結晶粒中の酸素の原子濃度は、結晶粒界の酸素の原子濃度よりも低いことが好ましい。第1の物質及び第2の物質の耐熱性が向上する。
【0087】
第1の物質及び第2の物質に含まれる、炭素(C)、塩素(Cl)、水素(H)、及び重水素(D)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の原子濃度は、5原子%以上20原子%以下であることが好ましい。上記下限値よりも上記少なくとも一つの元素の原子濃度が高いことで、エントロピーSが大きくなり第1の物質及び第2の物質の耐熱性が向上する。また、上記上限値よりも上記少なくとも一つの元素の原子濃度が低いことで、第1の物質及び第2の物質の電気抵抗を低くできる。
【0088】
第1の物質及び第2の物質のCu-Kα線によるX線回折において、例えば、回折角2θが15度以上30度以下の範囲に存在する回折ピークの半値幅が1.3度以上5度以下であることが好ましい。第1の物質及び第2の物質が、完全な結晶性を備えず、かつ、非晶質ではないことで、第1の物質及び第2の物質の耐熱性が向上する。
【0089】
(変形例)
第1の実施形態の変形例の記憶装置は、ゲート電極層は、第1の領域と、第1の領域と第2の絶縁層との間に設けられた第2の領域と、を含み、第2の領域は第1の物質又は第2の物質を含む点で、第1の実施形態の記憶装置と異なる。
【0090】
図4は、第1の実施形態の変形例の記憶装置のメモリセルの一部の拡大図である。図4は、第1の実施形態の図3に対応する図である。
【0091】
ワード線WLは、メインメタル領域WLa及びバリアメタル領域WLbを含む。メインメタル領域WLaは、第1の領域の一例である。バリアメタル領域WLbは、第2の領域の一例である。バリアメタル領域WLbは、導電層の一例である。
【0092】
メインメタル領域WLaは、例えば、金属である。メインメタル領域WLaは、例えば、タングステン(W)又はモリブデン(Mo)を含む。メインメタル領域WLaは、例えば、タングステン層又はモリブデン層である。
【0093】
バリアメタル領域WLbは、メインメタル領域WLaとブロック絶縁層18との間に設けられる。バリアメタル領域WLbは、第1の物質又は第2の物質を含む。バリアメタル領域WLbのy方向の厚さは、例えば、0.5nm以上5nm以下である。
【0094】
メインメタル領域WLaは、例えば、第1の物質及び第2の物質を含まない。メインメタル領域WLaは、窒素(N)を含むか又は含まない。メインメタル領域WLaの窒素の原子濃度は、例えば、バリアメタル領域WLbの窒素の原子濃度よりも低い。
【0095】
バリアメタル領域WLbに第1の物質又は第2の物質を用いることにより、熱処理による電気抵抗変化の小さいバリアメタル領域WLbが実現できる。バリアメタル領域WLbに第1の物質又は第2の物質を用いることにより、熱処理によりバリアメタル領域WLbの電気抵抗が高くなることが抑制される。
【0096】
以上、第1の実施形態の3次元NANDフラッシュメモリによれば、耐熱性の高い導電性の物質を含むゲート電極層を備えた記憶装置を提供できる。
【0097】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の記憶装置は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられた抵抗変化領域と、を備える。第1の電極は、第1の物質又は第2の物質を含み、第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さく、第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい。第2の実施形態の記憶装置は、メモリセル構造が異なる点で、第1の実施形態の記憶装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0098】
第2の実施形態の記憶装置は、抵抗変化メモリである。第2の実施形態の抵抗変化メモリは、例えば、相変化メモリや超格子型構造を利用したメモリである。
【0099】
相変化メモリや超格子型構造を利用したメモリは、例えば、抵抗変化領域にカルコゲナイトを主成分とする物質を用いる。これらのメモリは、例えばカルコゲナイトを主成分とする物質における主たる抵抗変化機構、すなわち抵抗変化領域内の結晶構造の変化又は結晶構造中の原子の変位に伴う抵抗変化を利用してデータを記憶する。
【0100】
図5は、第2の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの回路図である。図5は、メモリセルアレイ内の配線構造を模式的に示す。第2の実施形態のメモリセルアレイ200は、メモリセルMCが立体的に配置された三次元構造を備える。
【0101】
図5に示すように、メモリセルアレイ200内には、複数のメモリセルMCが立体的に配置される。図5中、点線で囲まれた領域が1個のメモリセルMCに対応する。
【0102】
メモリセルアレイ200は、例えば、複数のワード線WLと複数のビット線BLを備える。ワード線WLはx方向に延びる。ビット線BLはz方向に延びる。ワード線WLとビット線BLは垂直に交差する。ワード線WLとビット線BLとの交差部に、メモリセルMCが配置される。
【0103】
図6(a)、図6(b)は、第2の実施形態の記憶装置のメモリセルアレイの一部の模式断面図である。図6(a)は、メモリセルアレイ200のyz断面図である。図6(b)は、メモリセルアレイ200のxy断面図である。図6(a)は、図6(b)のDD’断面図、図6(b)は図6(a)のCC’断面図である。例えば、図6(a)において、破線で囲まれた領域が一つのメモリセルMCである。
【0104】
メモリセルアレイ200は、複数のワード線WL、複数のビット線BL、第1の層間絶縁層51、第2の層間絶縁層52、抵抗変化層54、及びセレクタ層56を備える。
【0105】
ワード線WLは、第1の電極の一例である。ワード線WLは、導電層の一例である。抵抗変化層54は、抵抗変化領域の一例である。セレクタ層56は、中間領域の一例である。
【0106】
ワード線WLは第1の層間絶縁層51と、z方向に交互に積層される。ワード線WLはx方向に延びる。
【0107】
ワード線WLは、第1の物質又は第2の物質を含む。例えば、ワード線WLの全領域が第1の物質又は第2の物質で形成される。
【0108】
第1の物質は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がタンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい。また、第2の物質は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及び窒素(N)を含み、窒素の原子濃度がニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい。
【0109】
ワード線WLは、例えば、第1の物質を含む。第1の物質の主成分は、タンタル、タングステン、及び窒素である。第1の物質の主成分がタンタル、タングステン、及び窒素であるとは、第1の物質に含まれる元素の中で、タンタル、タングステン、又は窒素よりも原子濃度が高い元素が存在しないことを意味する。第1の物質に含まれるタンタル、タングステン、及び窒素の原子濃度の総和は、例えば、80%以上である。
【0110】
第1の物質は、例えば、窒化タンタルタングステンを含む。第1の物質は、例えば、窒化タンタルタングステンである。
【0111】
ワード線WLは、例えば、第1の物質で形成される。ワード線WLは、例えば、窒化タンタルタングステンを含む。ワード線WLは、例えば、窒化タンタルタングステン層である。
【0112】
第1の物質の窒素の原子濃度は、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和よりも小さい。第1の物質の窒素の原子濃度は、例えば、タンタルの原子濃度とタングステンの原子濃度の和の80%以上95%以下である。
【0113】
第1の物質のタンタルの原子濃度は、例えば、タングステンの原子濃度の30%以上330%以下である。
【0114】
ワード線WLは、例えば、第2の物質を含む。第2の物質の主成分は、ニオブ、モリブデン、及び窒素である。第2の物質の主成分がニオブ、モリブデン、及び窒素であるとは、第2の物質に含まれる元素の中で、ニオブ、モリブデン、又は窒素よりも原子濃度が高い元素が存在しないことを意味する。第2の物質に含まれるニオブ、モリブデン、及び窒素の原子濃度の総和は、例えば、80%以上である。
【0115】
第2の物質は、例えば、窒化ニオブモリブデンを含む。第2の物質は、例えば、窒化ニオブモリブデンである。
【0116】
ワード線WLは、例えば、第2の物質で形成される。ワード線WLは、例えば、窒化ニオブモリブデンを含む。ワード線WLは、例えば、窒化ニオブモリブデン層である。
【0117】
第2の物質の窒素の原子濃度は、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和よりも小さい。第2の物質の原子濃度は、例えば、ニオブの原子濃度とモリブデンの原子濃度の和の80%以上95%以下である。
【0118】
第2の物質のニオブの原子濃度は、例えば、モリブデンの原子濃度の30%以上330%以下である。
【0119】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、酸素(O)を含む。第1の物質及び第2の物質に含まれる酸素の原子濃度は、例えば、5原子%以上20原子%以下である。
【0120】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、多結晶質部分を含む。第1の物質及び第2の物質の全部が、例えば、多結晶質部分である。
【0121】
第1の物質及び第2の物質の多結晶質部分において、例えば、結晶粒中の酸素の原子濃度は、結晶粒界の酸素の原子濃度よりも低い。第1の物質及び第2の物質の多結晶質部分において、例えば、酸素は結晶粒界に偏析している。
【0122】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、炭素(C)、塩素(Cl)、水素(H)、及び重水素(D)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含む。第1の物質及び第2の物質に含まれる上記少なくとも一つの元素の原子濃度は、例えば、5原子%以上20原子%以下である。
【0123】
第1の物質及び第2の物質は、例えば、多結晶質である。第1の物質及び第2の物質のCu-Kα線によるX線回折において、例えば、回折角2θが15度以上30度以下の範囲に存在する回折ピークの半値幅が1.3度以上5度以下である。
【0124】
ワード線WLのz方向の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0125】
ワード線WLは、例えば、化学気相成長法(CVD法)により第1の物質の膜又は第2の物質の膜を堆積することで形成される。ワード線WLをCVD法により形成する際の原料ガスの組成を調整することで、所望の化学組成の第1の物質の膜又は第2の物質の膜を堆積することが可能である。
【0126】
第1の層間絶縁層51は、ワード線WLとワード線WLとの間に設けられる。第1の層間絶縁層51は、例えば、酸化シリコンを含む。第1の層間絶縁層51は、例えば、酸化シリコン層である。
【0127】
ビット線BLは、ワード線WLと交差する。ビット線BLは、ワード線WLとワード線WLとの間に設けられる。
【0128】
ビット線BLは、z方向に延びる。z方向はx方向と交差する。z方向は、例えば、x方向と直交する。ビット線BLは、例えば、金属を含む。ビット線BLは、例えば、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、又は、白金(Pt)を含む。
【0129】
第2の層間絶縁層52は、ビット線BLとビット線BLとの間に設けられる。第2の層間絶縁層52は、ワード線WLとワード線WLとの間に設けられる。第2の層間絶縁層52は、例えば、酸化シリコンを含む。第2の層間絶縁層52は、例えば、酸化シリコン層である。
【0130】
抵抗変化層54は、抵抗状態の変化によってデータを記憶する。また、抵抗変化層54は、電圧又は電流の印加によってデータを書き換え可能である。
【0131】
抵抗変化層54は、電圧又は電流の印加によって高抵抗状態と抵抗状態との間を遷移する。例えば、高抵抗状態をデータ“0”、低抵抗状態をデータ“1”と定義する。メモリセルMCは“0”と“1”の1ビットデータを記憶する。
【0132】
抵抗変化層54は、例えば、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)を含む化合物である。抵抗変化層54は、例えば、GeSbTeの化学組成の合金である。
【0133】
抵抗変化層54は、例えば、超格子構造を備える。抵抗変化層54は、例えば、GeSbTeであり、GeTe領域とSbTe領域とが交互に積層される超格子構造を備える。電圧又は電流の印加により、超格子構造内でゲルマニウム(Ge)の位置が変化し、高抵抗状態と低抵抗状態が遷移する。
【0134】
セレクタ層56は、ビット線BLとワード線WLとの間に設けられる。セレクタ層56は、例えば、ワード線WLと抵抗変化層54との間に設けられる。セレクタ層56は、例えば、ビット線BLと抵抗変化層54との間に設けられても構わない。
【0135】
セレクタ層56は、特定の電圧(閾値電圧)で電流が急峻に立ち上がる非線形な電流電圧特性を有する。セレクタ層56は、半選択セルに流れる半選択リーク電流の増加を抑制する機能を有する。セレクタ層56は、スイッチング素子として機能する。
【0136】
セレクタ層56の化学組成は、抵抗変化層54の化学組成と異なる。セレクタ層56を形成する物質は、抵抗変化層54を形成する物質と異なる。
【0137】
セレクタ層56は、例えば、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、及び、チタン(Ti)からなる群から選ばれる第1の元素と、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、及び、テルル(Te)からなる群から選ばれる第2の元素と、を含む。
【0138】
セレクタ層56は、例えば、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化チタン、硫化ニオブ、硫化バナジウム、硫化タンタル、硫化チタン、セレン化ニオブ、セレン化バナジウム、セレン化タンタル、セレン化チタン、テルル化ニオブ、テルル化バナジウム、テルル化タンタル、又は、テルル化チタンを含む。
【0139】
セレクタ層56のビット線BLからワード線WLに向かう方向の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0140】
第2の実施形態のメモリセルアレイ200を製造する際、例えば、ワード線WLを形成した後に、セレクタ層56、抵抗変化層54、及びビット線BLを形成する。セレクタ層56の電流電圧特性を安定させる観点から、例えば、セレクタ層56の形成の際に800℃以上の熱処理が加えられる。
【0141】
第2の実施形態の記憶装置では、ワード線WLに耐熱性の高い第1の物質又は第2の物質を用いることにより、熱処理による電気抵抗変化の小さいワード線WLが実現できる。ワード線WLに第1の物質又は第2の物質を用いることにより、特に、熱処理によりワード線WLの電気抵抗が高くなることが抑制される。
【0142】
以上、第2の実施形態の抵抗変化メモリによれば、耐熱性の高い導電性の物質を含むワード線WLを備えた記憶装置を提供できる。
【0143】
第1の実施形態では、ワード線WLの間に、層間絶縁層13が設けられる場合を例に説明したが、ワード線WLの間は、例えば、空洞であっても構わない。
【0144】
また、第1の実施形態では、半導体層10がワード線WLに囲まれる構造を例に説明したが、半導体層10が2つに分割されたワード線WLに挟まれる構造とすることも可能である。この構造の場合、積層体30の中のメモリセルの数を2倍にすることが可能となる。
【0145】
また、第1の実施形態では、1つのメモリ穴に1つの半導体層10を設ける構造を例に説明したが、1つのメモリ穴に2つ以上に分割された複数の半導体層10を設ける構造とすることも可能である。この構造の場合、積層体30の中のメモリセルの数を2倍以上にすることが可能となる。
【0146】
また、第1の実施形態では、電荷蓄積層が絶縁体である場合を例に説明したが、電荷蓄積層は導電体、例えば互いに電気的に分離された複数のフローティングの導電体であっても構わない。
【0147】
また、第2の実施形態では、抵抗変化メモリが超格子構造を備える場合等を、例に説明したが、記憶装置は、抵抗変化層に電流を流す2端子の記憶装置であれば、これに限定されない。記憶装置は、例えば、超格子構造を備える抵抗変化メモリ以外の相変化メモリ、抵抗変化型メモリ、磁気抵抗メモリ、又は、強誘電体メモリであっても構わない。
【0148】
また、第1及び第2の実施形態では、導電層の一例として、ワード線WLを例示したが、導電層はワード線WLに限定されるものではない。
【0149】
また、第1及び第2の実施形態では、3次元構造のメモリセルアレイを例に説明したが、メモリセルアレイは2次元構造であっても構わない。
【0150】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0151】
10 半導体層
14 トンネル絶縁層(第1の絶縁層)
16 電荷蓄積層
18 ブロック絶縁層(第2の絶縁層)
54 抵抗変化層(抵抗変化領域)
56 セレクタ層(中間領域)
BL ビット線(第2の電極)
WL ワード線(ゲート電極層、第1の電極、導電層)
WLa メインメタル領域(第1の領域)
WLb バリアメタル領域(第2の領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6