(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170072
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】コンデンサ及びコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/33 20060101AFI20241129BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 547
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087032
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 進
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和人
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 尚之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光雄
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB01
5E001AC05
5E001AC09
5E082EE14
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG27
5E082FG38
5E082FG42
5E082FG44
5E082GG10
5E082GG11
(57)【要約】
【課題】基板に不良が生じるのを低減し得るコンデンサとコンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、第1主面A1及び第2主面A2を有する基板2と、基板2の第1主面A1に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第1凹部5と、基板2の第2主面A2に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第2凹部6とを備える、コンデンサ1が提供される。基板2内において、少なくとも1つの第1凹部5と少なくとも1つの第2凹部6が一方向に沿って交互に並んでいる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面を有する基板と、
前記基板の前記第1主面に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第1凹部と、
前記基板の前記第2主面に前記一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第2凹部とを備え、
前記基板内において、前記少なくとも1つの第1凹部と前記少なくとも1つの第2凹部が前記一方向に沿って交互に並んでいる、コンデンサ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1凹部内に設けられる第1導電層と、
前記第1導電層と前記基板との間に介在される第1誘電体層と、
前記少なくとも1つの第2凹部内に設けられる第2導電層と、
前記第2導電層と前記基板との間に介在される第2誘電体層と
をさらに含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第1誘電体層と前記基板との間に介在される第3導電層と、
前記第2誘電体層と前記基板との間に介在される第4導電層と
をさらに含む、請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記第1導電層及び前記第2導電層は、不純物がドーピングされたポリシリコンからそれぞれ形成される、請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記基板が抵抗率10KΩcm以上の真正半導体基板である、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のコンデンサの製造方法であって、
前記基板の前記少なくとも1つの第1凹部と前記少なくとも1つの第2凹部を、触媒を用いたエッチングにより一括して形成することを含む、コンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記基板の前記少なくとも1つの第1凹部内に第1導電層を形成することと、前記基板の前記少なくとも1つの第2凹部内に第2導電層を形成することを一括して行うことをさらに含む、請求項6に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記第1導電層及び前記第2導電層の一括形成の前に、前記基板の前記少なくとも1つの第1凹部の内面に第1誘電体層を形成することと、前記基板の前記少なくとも1つの第2凹部の内面に第2誘電体層を形成することを、一括して行う、請求項7に記載のコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コンデンサ及びコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器の小型化及び高機能化に伴い、それらに搭載されるコンデンサには、小型化及び薄型化が求められている。容量密度を維持しつつ、小型化及び薄型化を実現する構造として、基板にトレンチを形成して表面積を増大させたトレンチコンデンサがある。このトレンチコンデンサには、製造工程中に基板の反りなどの不良が生じるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-129577号公報
【特許文献2】特開2021-48343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、基板に不良が生じるのを低減し得るコンデンサとコンデンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、第1主面及び第2主面を有する基板と、基板の第1主面に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第1凹部と、基板の第2主面に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第2凹部とを備える、コンデンサが提供される。基板内において、少なくとも1つの第1凹部と少なくとも1つの第2凹部が一方向に沿って交互に並んでいる。
また、他の実施形態によれば、コンデンサの製造方法が提供される。この製造方法は、実施形態のコンデンサの製造方法であって、基板の少なくとも1つの第1凹部と少なくとも1つの第2凹部を、触媒を用いたエッチングにより一括して形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るコンデンサの概略を示す斜視図。
【
図3】
図2に示すコンデンサのIII-III線に沿った断面図。
【
図4】第1実施形態に係るコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図5】
図4に示す方法における工程S1の一例を示す断面図。
【
図6】
図4に示す方法における工程S2の一例を示す断面図。
【
図7】
図4に示す方法における工程S3の一例を示す断面図。
【
図8】
図4に示す方法における工程S4の一例を示す断面図。
【
図9】
図4に示す方法における工程S5の一例を示す断面図。
【
図10】
図4に示す方法における工程S6の一例を示す断面図。
【
図11】
図4に示す方法における工程S7の一例を示す断面図。
【
図12】
図4に示す方法における工程S8の一例を示す断面図。
【
図13】
図4に示す方法における工程S9の一例を示す断面図。
【
図14】
図4に示す方法における工程S10の一例を示す断面図。
【
図15】
図4に示す方法における工程S12の一例を示す断面図。
【
図16】第2実施形態に係るコンデンサの概略を示す断面図。
【
図17】第2実施形態に係るコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図18】第3実施形態に係るコンデンサの概略を示す断面図。
【
図19】第3実施形態に係るコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<第1実施形態>
第1実施形態のコンデンサ及びその製造方法を、
図1乃至
図15に示す。
コンデンサ1は、
図1乃至
図3に示すように、基板2と、第1誘電体層3aと、第2誘電体層3bと、第1導電層4aと、第2導電層4bと、第1電極7と、第2電極8と、絶縁層9a,9bを含んでいる。
【0009】
各図において、X軸方向は基板2の主面に平行な第1方向であり、Y軸方向は基板2の主面に平行であり且つX軸方向に垂直な第2方向である。また、Z軸方向は、基板2の厚さ方向、即ち、X軸方向(第1方向)及びY軸方向(第2方向)に垂直な方向である。
【0010】
基板2は、少なくとも表面が導電性を有している基板である。基板2は、第1主面A1と、第2主面A2と、第1主面A1の縁から第2主面A2の縁まで延びた端面とを有している。ここでは、基板2は、扁平な略直方体形状を有している。基板2は、他の形状を有していてもよい。
【0011】
第1主面A1には、
図2及び
図3に示す第1凹部5が複数設けられている。ここでは、これら第1凹部5は、第2方向のY軸方向に各々が延びた形状を有している第1トレンチである。第1凹部5は、
図2及び
図3に示すように、第1方向のX軸方向に沿って互いから側壁を隔てて並んでいる。第1凹部5は、X軸方向に沿って切断した断面が有底矩形筒状を有する。第1主面A1には、複数の第1凹部5を設けてもよく、第1凹部5を1つのみ設けてもよい。
【0012】
第2主面A2には、
図2及び
図3に示す第2凹部6が複数設けられている。ここでは、これら第2凹部6は、第2方向のY軸方向に各々が延びた形状を有している第2トレンチである。第2凹部6は、
図2及び
図3に示すように、第1方向のX軸方向に沿って互いから側壁を隔てて並んでいる。第2凹部6は、
図2に示すように、第2主面A2のうち、第1凹部5の底壁と向き合う位置ではなく、第1凹部5の側壁と向き合う位置に設けられている。言い換えれば、第1凹部5と第2凹部6は、基板2内においてX軸方向(第1方向)に沿って側壁を介して交互に並んでいる。なお、第2主面A2には、複数の第2凹部6を設けてもよく、第2凹部6を1つのみ設けてもよい。
【0013】
第1凹部5の深さ及び第2凹部6の深さは、基板2の厚さにもよるが、一例によれば0.1μm乃至500μmの範囲内にあり、他の例によれば1μm乃至400μmの範囲内にある。
【0014】
第1凹部5及び第2凹部6の開口部の寸法は、0.3μm以上であることが好ましい。なお、第1凹部5及び第2凹部6の開口部の寸法は、第1凹部5及び第2凹部6の開口部の径又は幅である。ここでは、第1凹部5及び第2凹部6の開口部の寸法は、それらの長さ方向に対して垂直な方向における寸法である。これら寸法を小さくすると、より大きな電気容量を達成できる。但し、これら寸法を小さくすると、第1凹部5及び第2凹部6内に、誘電体層と導電層とを含んだ積層構造を形成することが難しくなる。
【0015】
隣り合った第1凹部5間の距離及び隣り合った第2凹部6間の距離は、0.1μm以上であることが好ましい。これら距離を小さくすると、より大きな電気容量を達成できる。但し、これら距離を小さくすると、基板2のうち、第1凹部5間に挟まれた部分及び第2凹部6間に挟まれた部分の破損を生じ易くなる。
【0016】
第1凹部5及び第2凹部6は、様々な形状を有し得る。例えば
図3では、第1凹部5及び第2凹部6の深さ方向に平行な断面は矩形状である。これら断面は矩形状でなくてもよい。例えば、これら断面は、先細りした形状を有していてもよい。
【0017】
図2及び
図3では、第1凹部5及び第2凹部6が、第2方向のY軸方向に各々が延びた形状を有し、かつ第1方向のX軸方向に沿って互いから側壁を隔てて並んでいる。このような配置に限定されず、第1凹部5及び第2凹部6が、第1方向のX軸方向に各々が延びた形状を有し、かつ第2方向のY軸方向に沿って互いから側壁を隔てて並んでいても良い。
【0018】
基板2は、シリコン基板などのシリコンを含んだ基板であることが好ましい。そのような基板は、半導体プロセスを利用した加工が可能である。基板2の例に、単結晶シリコンウェハが含まれる。単結晶シリコンウェハの面方位は特に問わず、一主面が(100)面あるいは(110)面であるシリコンウェハを用いることができる。
【0019】
第1誘電体層3a,第2誘電体層3bは、基板2の表面に対してコンフォーマルな層である。第1誘電体層3aは、基板2と第1導電層4aとを互いから電気的に絶縁する。第1導電層4aは、少なくとも第1凹部5内に設けられ得る。第1誘電体層3aは、基板2と第1導電層4aとの間に介在され得る。また、第2誘電体層3bは、基板2と第2導電層4bとを互いから電気的に絶縁する。第2導電層4bは、少なくとも第2凹部6内に設けられ得る。第2誘電体層3bは、基板2と第2導電層4bとの間に介在され得る。
【0020】
図3の場合、第1導電層4aは、第1凹部5それぞれの内部に設けられている。X軸方向(第1方向)において側壁を介して隣り合う第1凹部5の間に位置する第1主面A1上にも第1導電層4aが設けられている。第1導電層4aの上記配置により、第1凹部5それぞれの内部に設けられた第1導電層4a同士が電気的に接続されている。第1導電層4aは櫛歯形状を有している。一方、第2導電層4bは、第2凹部6それぞれの内部に設けられている。X軸方向(第1方向)において側壁を介して隣り合う第2凹部6の間に位置する第2主面A2上にも第2導電層4bが設けられている。第2導電層4bの上記配置により、第2凹部6それぞれの内部に設けられた第2導電層4b同士が電気的に接続されている。第2導電層4bは櫛歯形状を有している。第1,第2の導電層4a,4bは、導電性を高めるために不純物がドーピングされたポリシリコン、又は、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、ニッケル及び銅などの金属若しくは合金からなる。不純物の例として、P型又はN型の不純物を挙げることができる。第1,第2の導電層4a,4bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
一方、
図3の場合、第1誘電体層3aは、第1凹部5それぞれの内面及び第1主面A1上の一部に設けられ、基板2と第1導電層4aとの間に介在されている。また、第2誘電体層3bは、第2凹部6それぞれの内面及び第2主面A2上の一部に設けられ、基板2と第2導電層4bとの間に介在されている。第1誘電体層3a,第2誘電体層3bは、例えば、有機誘電体又は無機誘電体からなる。有機誘電体としては、例えば、ポリイミドを使用することができる。無機誘電体としては、強誘電体も用いることができるが、無機誘電体層は、例えば、酸化膜、窒化膜等を挙げることができる。シリコン窒化物、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、チタン酸化物、及びタンタル酸化物などの常誘電体が好ましい。これらの常誘電体は、温度による誘電率の変化が小さい。そのため、常誘電体を第1,第2の誘電体層3a,3bに使用すると、コンデンサ1の耐熱性を高めることができる。
【0021】
このコンデンサ1は、
図3に示す第1電極7と第2電極8と絶縁層9a,9bとを更に含んでいる。
【0022】
第1電極7は、第1導電層4a上に形成されることで電気的に接続された第1下部電極7aと、第1下部電極7aと電気的に接続された第1外部パッド7bとを含む。第1電極7は、例えばアルミニウムなどの金属を例えばスパッタリングによって成膜することで得られる。
【0023】
一方、第2電極8は、第2導電層4b上に形成されることで電気的に接続された第2下部電極8aと、第2下部電極8aと電気的に接続された第2外部パッド8bとを含む。第2電極8は、例えばアルミニウムなどの金属を例えばスパッタリングによって成膜することで得られる。
【0024】
絶縁層9aは、第1外部パッド7bを第1主面A1から絶縁する。絶縁層9aは、1以上の貫通孔を有する。絶縁層9aのある貫通孔内において、第1下部電極7aが第1導電層4aと電気的に接続されている。また、絶縁層9aは、第1導電層4a及び第1誘電体層3aそれぞれの端部と、第1主面A1とを覆う。外部パッド7bは、絶縁層9aのxy軸方向に沿う面からz軸方向(基板2の厚さ方向)に沿って突出している。また、絶縁層9bは、第2外部パッド8bを第2主面A2から絶縁する。絶縁層9bは、1以上の貫通孔を有する。絶縁層9bのある貫通孔内において、第2下部電極8aが第2導電層4bと電気的に接続されている。また、絶縁層9bは、第2導電層4b及び第2誘電体層3bそれぞれの端部と、第2主面A2とを覆う。外部パッド8bは、絶縁層9bのxy軸方向に沿う面から外部パッド7bとは反対向きのz軸方向(基板2の厚さ方向)に沿って突出している。絶縁層9a,9bは、例えば、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane, TEOS)などの層間絶縁膜から形成される。
【0025】
このコンデンサ1は、めっき層(図示を省略)をさらに含んでいても良い。めっき層は、例えば、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、NiAl合金などからなる。めっき層は、例えば、第1導電層4aと第1電極7との間か、第2導電層4bと第2電極8との間、あるいは双方に配置することができる。
【0026】
第1実施形態のコンデンサによれば、基板の第1主面に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第1凹部と、基板の第2主面に前記一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第2凹部とを備える。基板内において、少なくとも1つの第1凹部と少なくとも1つの第2凹部が一方向に沿って交互に並んでいる。この基板を備えたコンデンサによれば、第1主面と第2主面の両面に一括で加工を行うことにより、基板の反りや割れなどの不良を低減することができる。例えば、第1主面の第1凹部と第2主面の第2凹部とを触媒を用いたエッチングにより一括で設ける等により、基板の両面に凹部を形成する際の基板の反りを抑制することができる。また、両面に一括で加工を行うことにより、工数を減らすことができる。またさらに、導電層として不純物がドープされたポリシリコンを用いる場合、ポリシリコンには、後述する通り、抵抗率が低い方が応力が大きくなる傾向がある。第1実施形態によれば、抵抗率が低くて応力の大きな導電層を用いても、すなわち導電層の種類に拘わらず、基板の反りなどの不良を低減することが可能となる。
【0027】
第1実施形態のコンデンサにおいて、少なくとも1つの第1凹部内に設けられる第1導電層と、第1導電層と基板との間に介在される第1誘電体層と、少なくとも1つの第2凹部内に設けられる第2導電層と、第2導電層と基板との間に介在される第2誘電体層とをさらに備えることが望ましい。これにより、第1導電層と第1誘電体層と基板とでMIM(Metal-Insulator-Metal)構造の第1キャパシタを形成することができ、かつ第2導電層と第2誘電体層と基板でMIM構造の第2キャパシタを形成することができる。なお、基板は第1キャパシタと第2キャパシタを電気的に接続する導体(配線)として機能し得る。その結果、第1キャパシタと第2キャパシタを備えたコンデンサを厚さ方向に沿って複数積層することにより、高耐圧なコンデンサを実現することができる。
【0028】
第1実施形態のコンデンサは、例えば、
図4~
図15に示す第1実施形態の方法で製造される。この製造方法を
図4~
図15を参照して説明する。
図5~
図15において、X軸方向は基板2の主面に平行な第1方向であり、Y軸方向は基板2の主面に平行であり且つX軸方向に垂直な第2方向である。また、Z軸方向は、基板2の厚さ方向、即ち、X軸方向(第1方向)及びY軸方向(第2方向)に垂直な方向である。
【0029】
(工程S1)
工程S1は、
図5に一例を示す基板薄化工程である。基板材料10を所定の厚さまで削って薄くし、基板2を得る。基板2の厚さは、一例として、150μm以下である。ここでは、一例として、基板2は単結晶シリコンウェハであるとする。単結晶シリコンウェハの面方位は特に問わないが、本例では、一主面が(100)面であるシリコンウェハを用いる。基板10としては、一主面が(110)面であるシリコンウェハを用いることもできる。
【0030】
(工程S2)
工程S2は、
図6に一例を示すマスク形成工程である。基板2の第1主面A1にマスク層11a、第2主面A2にマスク層11bを形成する。マスク層11a、11bは、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂などの有機材料や、酸化シリコン及び窒化シリコンなどの無機材料から形成され得る。マスク層11a、11bは、例えば、既存の半導体プロセスによって形成することができる。
【0031】
(工程S3)
工程S3は、
図7に一例を示すマスクのパターニング工程である。マスク層11a、11bそれぞれの上に、所望のパターン形状のレジスト層12a,12bを形成する。レジスト層12a,12bは、例えばフォトレジストから形成され得る。次いで、マスク層11a、11bを所望のパターン形状に例えば反応性イオンエッチング(Reactive ion etching;RIE)などでエッチング加工することにより、マスク層11a、11bに開口13a,13bを設ける。開口13aは第1凹部5になるべく位置に設けられている。開口13bは第2凹部6になるべく位置に設けられている。その後、レジスト層12a,12bを除去する。
【0032】
(工程S4)
工程S4は、
図8に一例を示す、触媒層を両面に一括形成する工程である。第1主面A1のうちマスク層11aによって覆われていない領域(開口13aを含む)上に、第1触媒層14aを形成する。同時に、第2主面A2のうちマスク層11bによって覆われていない領域(開口13bを含む)上に、第2触媒層14bを形成する。
【0033】
基板2の第1主面A1に第1触媒層14aを形成するのと、基板2の第2主面A2に第2触媒層14bを形成するのを両面一括で行うことにより、基板2の第1主面A1側に加わる応力と、第2主面A2側に加わる応力の差を小さくすることができる。
【0034】
第1触媒層14aと第2触媒層14bは、例えば、貴金属を含んだ不連続層である。一例として、第1触媒層14aと第2触媒層14bは、貴金属を含んだ触媒粒子からなる粒状層が挙げられる。
【0035】
貴金属は、例えば、金、銀、白金、ロジウム、パラジウム、及びルテニウムの1以上である。第1触媒層14aと第2触媒層14bは、チタンなどの貴金属以外の金属を更に含んでいてもよい。
【0036】
第1触媒層14aと第2触媒層14bは、例えば、電解めっき、還元めっき、又は置換めっきによって形成することができる。第1触媒層14aと第2触媒層14bは、貴金属粒子を含む分散液の塗布、又は、蒸着及びスパッタリング等の気相堆積法を用いて形成してもよい。これら手法の中でも、置換めっきは、マスク層11a,11bの開口13a,13bに、貴金属を直接的且つ一様に析出させることができるため特に好ましい。
【0037】
(工程S5)
工程S5は、触媒を用いたエッチングにより基板の両面に凹部を一括して形成する工程である。
図9に一例を示す通り、基板の両面にトレンチをMacEtch(Metal-Assisted Chemical Etching)で一括形成する。
【0038】
MacEtchによると、貴金属の触媒としての作用のもとで基板2をエッチングして、第1凹部5となる第1トレンチ及び第2凹部6となる第2トレンチを基板2に形成することができる。
【0039】
具体的には、基板2をエッチング剤でエッチングする。例えば、基板2を含む処理基板を液状のエッチング剤に浸漬させて、エッチング剤を基板2と接触させる。
【0040】
エッチング剤は、例えば、酸化剤と弗化水素とを含み得る。
エッチング剤における弗化水素の濃度は、1mol/L乃至20mol/Lの範囲内にあることが好ましく、5mol/L乃至10mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、3mol/L乃至7mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。弗化水素濃度が低い場合、高いエッチングレートを達成することが難しい。弗化水素濃度が高い場合、過剰なサイドエッチングを生じる可能性がある。
【0041】
酸化剤は、例えば、過酸化水素、硝酸、AgNO3、KAuCl4、HAuCl4、K2PtCl6、H2PtCl6、Fe(NO3)3、Ni(NO3)2、Mg(NO3)2、Na2S2O8、K2S2O8、KMnO4及びK2Cr2O7から選択することができる。有害な副生成物が発生せず、半導体素子の汚染も生じないことから、酸化剤としては過酸化水素が好ましい。
【0042】
エッチング剤における酸化剤の濃度は、0.2mol/L乃至8mol/Lの範囲内にあることが好ましく、2mol/L乃至4mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、3mol/L乃至4mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。
【0043】
エッチング剤は、緩衝剤を更に含んでいてもよい。緩衝剤は、例えば、弗化アンモニウム及びアンモニアの少なくとも一方を含んでいる。一例によれば、緩衝剤は、弗化アンモニウムである。他の例によれば、緩衝剤は、弗化アンモニウムとアンモニアとの混合物である。
エッチング剤は、水などの他の成分を更に含んでいてもよい。
【0044】
このようなエッチング剤を使用した場合、基板2のうち第1触媒層14a又は第2触媒層14bと近接している領域においてのみ、基板2の材料、ここではシリコンが酸化される。そして、これによって生じた酸化物は、フッ化水素酸により溶解除去される。そのため、第1触媒層14a又は第2触媒層14bと近接している部分のみが選択的にエッチングされる。
【0045】
第1触媒層14aは、エッチングの進行とともにZ軸方向に沿って第2主面へ向けて移動し、そこで上記と同様のエッチングが行われる。その結果、
図9に示すように、第1触媒層14aの位置では、第1主面から第2主面へ向けて、第1主面に対して垂直なZ軸方向にエッチングが進む。
【0046】
他方、第2触媒層14bは、エッチングの進行とともに第1主面へ向けて移動し、そこで上記と同様のエッチングが行われる。その結果、
図9に示すように、第2触媒層14bの位置では、第2主面から第1主面へ向けて、第2主面に対して垂直なZ軸方向にエッチングが進む。
【0047】
このようにして、
図9に示すように、第1凹部5に相当する凹部を第1主面A1に形成するのと、第2凹部6に相当する凹部を第2主面A2に形成するのとを一括して行う。これにより、基板2の第1主面A1側に加わる応力と、第2主面A2側に加わる応力の差を小さくすることができる。
【0048】
(工程S6)
工程S6は、
図10に一例を示す、触媒層とマスクの除去を両面一括で行う工程である。触媒層の除去には、例えば王水を使用することができる。一方、マスク層の除去には、例えばホットリン酸などを使用することができる。
【0049】
触媒層とマスクの除去を両面一括で行うことにより、基板2の第1主面A1側に加わる応力と、第2主面A2側に加わる応力の差を小さくすることができる。
【0050】
(工程S7)
工程S7は、基板の両面に誘電体層を一括で形成する工程である。
図11に一例を示す通り、基板2の第1主面A1上と、第1凹部5それぞれの内面に第1誘電体層3aを設ける。その際に、基板2の第2主面A2上と、第2凹部6それぞれの内面に第2誘電体層3bを設ける。第1誘電体層3aと第2誘電体層3bは、それぞれ、例えば、LPCVD(low pressure chemical vapor deposition)、あるいは基板2の表面を熱酸化することによって形成することができる。
【0051】
基板2の両面に第1,第2の誘電体層3a,3bを一括で形成することにより、基板2の第1主面A1側に加わる応力と、第2主面A2側に加わる応力の差を小さくすることができる。
【0052】
(工程S8)
工程S8は、基板の両面に導電層を一括で形成する工程である。
図12に一例を示す通り、基板2の第1主面A1上の第1誘電体層3a上と、第1凹部5それぞれの内面に形成された第1誘電体層3aに第1導電層4aを形成する。その際に、基板2の第2主面A2上の第2誘電体層3b上と、第2凹部6それぞれの内面に第2誘電体層3bに第2導電層4bを形成する。不純物がドープされたポリシリコンからなる第1,第2の導電層4a,4bは、例えば、LPCVD(low pressure chemical vapor deposition)によって形成することができる。金属からなる第1,第2の導電層4a,4bは、例えば、電解めっき、還元めっき、又は置換めっきによって形成することができる。
【0053】
基板2の第1凹部5を含む第1主面A1と第2凹部6を含む第2主面A2に第1,第2の導電層4a,4bを一括で形成することにより、両面同時に同じ膜厚の第1,第2の導電層4a,4bを形成することができる。これにより、基板2の第1主面A1側に加わる応力と、第2主面A2側に加わる応力の差を小さくすることができる。
【0054】
(工程S9)
工程S9は、レジストパターン形成である。例えば
図13に示す通り、第1,第2の導電層4a,4bそれぞれの上に、所望のパターン形状のレジスト層15a,15bを形成する。レジスト層15a,15bは、例えばフォトレジストから形成され得る。レジスト層15a,15bは、一方のレジスト層を形成した後、他方のレジスト層を形成しても良いが、両方のレジスト層を一括で形成しても良い。
【0055】
(工程S10)
工程S10は、導電層のパターニングである。例えば
図14に示す通り、第1,第2の導電層4a,4bを所望のパターン形状に例えば等方性イオンエッチング(Chemical dry etching;CDE)などでエッチング加工することにより、第1,第2の導電層4a,4bを所望のパターン形状に加工する。一方の導電層をエッチング加工した後、他方の導電層をエッチング加工しても良いが、両方の導電層を同時にエッチング加工しても良い。エッチング加工後、必要に応じてレジスト層15a,15bを除去しても良い。
【0056】
(工程S11)
工程S11は、めっき層の形成である。例えば
図15に示す通り、めっき層16aは、第1導電層4aのxy軸方向に沿う面と、この面の縁と繋がる端面とを覆う。また、めっき層16bは、第2導電層4bのxy軸方向に沿う面と、この面の縁と繋がる端面とを覆う。めっき層16a,16bは、例えば、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、NiAl合金などからなる。一方のめっき層を形成した後、他方のめっき層を形成しても良いが、めっき層16a,16bを一括で形成しても良い。
めっき層の形成は、省略することができる。
【0057】
(工程S12)
工程S12は、電極の形成である。電極は、例えばアルミニウム電極であり得る。電極は、例えば、スパッタリング成膜などのコンフォーマル成膜により形成され得る。一方の電極を形成した後、他方の電極を形成しても良いが、両方の電極を一括で形成しても良い。電極は、めっき層上に形成しても良いし、めっき層を設けずに導電層上に直接形成しても良い。
導電層を電極として用いる場合、工程S12を省略することができる。
なお、第1実施形態のコンデンサの製造方法は、工程S1~S12を全て含むことも可能であるが、工程S11または工程S12を省略するなど、一部の工程を省略することもできる。
【0058】
以上説明した第1実施形態のコンデンサの製造方法では、基板両面に工程S4から工程S8までの処理を一括で行う。すなわち、基板の第1主面に第1凹部を形成する工程と、基板の第2主面に第2凹部を形成する工程とを一括で行った後、基板の第1主面と第2主面に誘電体層を両面一括で形成し、次いで、基板の第1主面と第2主面に導電層を両面一括で形成する。その結果、基板の第1主面側に加わる応力と、第2主面側に加わる応力の差を小さくすることができる。また、基板の第1主面と第2主面とに同じ厚さの層を同時に形成することができる。これらにより、基板の反り及び基板の割れなどの不良を低減することができる。また、両面一括形成により、工数を少なくすることができる。
【0059】
第1実施形態では、第1凹部及び第2凹部を、MacEtchなどの触媒を用いたエッチングにより形成したが、MacEtchではなく、DRYエッチングで実現するには、基板の第1主面に第1凹部を形成して導電層を形成した後、第1凹部深さに相当する薄さまで基板を薄化し、その後、反対側の第2主面に第2凹部を形成し、再度導電層を形成する逐次プロセスとなる。薄い基板のハンドリングが必要である。また、導電層形成時に基板の反りが生じる。これに対し、第1実施形態のように、第1凹部及び第2凹部の形成をMacEtchで基板両面から一括で行い、その後、導電層も一括で形成することで、薄い基板をハンドリングする機会を削減することができると共に、導電層形成時の反り抑制が可能となる。
【0060】
<第2実施形態>
第2実施形態のコンデンサ及びその製造方法を、
図16及び
図17に示す。
図16は、第2実施形態のコンデンサの厚さ方向(Z軸方向)に沿った断面図である。
図17は、第2実施形態のコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1~
図15と同様な部材は、同符号を付して説明を省略する。
【0061】
第2実施形態のコンデンサは、基板2が真正半導体基板であり、かつ誘電体層を設けないこと以外は、
図1~
図3に示すコンデンサ1と同様な構造を有する。真正半導体基板は、例えば、抵抗率10kΩcm以上のシリコンウエハであり得る。基板2の第1主面A1及び第2主面A2には、前述したのと同様に第1凹部5と第2凹部6がX軸方向(第1方向)に沿って互いに側壁を隔てつつ、交互に並んでいる。第1凹部5と第2凹部6それぞれの内面には、誘電体層を設けることなく、第1、第2の導電層4a,4bが直接設けられている。第1、第2の導電層4a,4bは、櫛歯形状を有する。第1、第2の導電層4a,4bは、第1凹部5と第2凹部6それぞれの内面に加え、第1主面A1上及び第2主面A2上にも形成されている。第1主面A1上には、第1導電層4aが、X軸方向(第1方向)において側壁を介して隣り合う第1凹部5の間に設けられている。これにより、第1凹部5それぞれの内部に設けられた第1導電層4a同士が電気的に接続されている。また、第2主面A2上には、第2導電層4bが、X軸方向(第1方向)において側壁を介して隣り合う第2凹部6の間に設けられている。これにより、第2凹部6それぞれの内部に設けられた第2導電層4b同士が電気的に接続されている。第1電極7、第2電極8、絶縁層9a、9bの詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0062】
第2実施形態のコンデンサによれば、基板の第1主面に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第1凹部と、基板の第2主面に前記一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第2凹部とを備える。基板内において、少なくとも1つの第1凹部と少なくとも1つの第2凹部が一方向に沿って交互に並んでいる。この基板を備えたコンデンサによれば、第1主面と第2主面の両面に一括で加工を行うことにより、基板の反りや割れなどの不良を低減することができる。また、両面に一括で加工を行うことにより、工数を減らすことができる。またさらに、抵抗率が低いものの応力が大きいポリシリコンを導電層として用いても基板の不良を少なくすることができるため、導電層の種類に拘わらず、基板の不良を低減することが可能となる。
【0063】
第2実施形態のコンデンサにおいて、第1凹部の内面の少なくとも一部に設けられた第1導電層と、第2凹部の内面の少なくとも一部に設けられた第2導電層とをさらに備えることが望ましい。これにより、第1導電層と基板と第2誘電体層とでMIM構造のキャパシタを形成することができる。
【0064】
図16を参照して説明した第2実施形態のコンデンサの製造方法の一例のフローチャートを
図17に示す。この製造方法は、基板薄化S21、マスク形成S22、マスクのパターニングS23、触媒層を両面に一括形成S24、両面にトレンチをMacEtchで一括形成S25、触媒層とマスクの除去を両面一括で行うS26、両面に導電層(第1,第2の導電層)を一括形成S27、レジストパターン形成S28、導電層(第1,第2の導電層)のパターニングS29、めっき層の形成S30及び電極の形成S31を備える。触媒層とマスクの除去を両面一括で行う工程S26を行った後、誘電体層を設けることなく、両面に導電層を一括形成する工程S27する以外は、第1実施形態と同様に行われる方法である。なお、第2実施形態のコンデンサの製造方法は、工程S21~S31を全て含むことも可能であるが、工程S30または工程S31を省略するなど、一部の工程を省略することもできる。
【0065】
第2実施形態のコンデンサの製造方法では、基板両面に工程S24から工程S28までの処理を一括で行う。すなわち、基板の第1主面に第1凹部を形成する工程と、基板の第2主面に第2凹部を形成する工程とを一括で行った後、基板の第1主面と第2主面に第1,第2の導電層を両面一括で形成する。その結果、基板の第1主面側に加わる応力と、第2主面側に加わる応力の差を小さくすることができる。また、基板の第1主面と第2主面とに同じ厚さの層を同時に形成することができる。これらにより、基板の反り及び基板の割れなどの不良を低減することができる。また、両面一括形成により、工数を少なくすることができる。
【0066】
また、第1凹部及び第2凹部を、MacEtchなどの触媒を用いたエッチングにより一括形成した後、導電層も一括で形成することで、薄い基板をハンドリングする機会を削減することができると共に、導電層形成時の反り抑制が可能となる。
【0067】
<第3実施形態>
第3実施形態のコンデンサ及びその製造方法を、
図18及び
図19に示す。
図18は、第3実施形態のコンデンサの厚さ方向(Z軸方向)に沿った断面図である。
図19は、第3実施形態のコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1~
図15と同様な部材は、同符号を付して説明を省略する。
【0068】
第3実施形態のコンデンサ1は、
図18に示すように、基板2と、第1誘電体層3aと、第2誘電体層3bと、第1導電層4aと、第2導電層4bと、第3導電層20aと、第4導電層20bと、第3電極21と、第4電極22と、絶縁層9a,9bを含んでいる。
【0069】
図18において、X軸方向は基板2の主面に平行な第1方向であり、Y軸方向は基板2の主面に平行であり且つX軸方向に垂直な第2方向である。また、Z軸方向は、基板2の厚さ方向、即ち、X軸方向(第1方向)及びY軸方向(第2方向)に垂直な方向である。
【0070】
基板2には、第1実施形態で説明したのと同様なものが用いられる。第1主面A1及び第2主面A2には、
図2及び
図3を参照して説明したのと同様な構成で、第1凹部5と第2凹部6が設けられている。第1凹部5と第2凹部6は、基板2内において、互いを側壁を隔てつつ、X軸方向(第1方向)に沿って交互に並んでいる。第1凹部5と第2凹部6の詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0071】
第1,第2の誘電体層3a,3b、第1,第2の導電層4a,4bの詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0072】
第3導電層20aは、第1凹部5それぞれの内面と、第1主面A1上に設けられている。この第3導電層20aと櫛歯状の第1導電層4aとの間に、第1誘電体層3aが介在されるようになる。第4導電層20bは、第2凹部6それぞれの内面と、第2主面A2上に設けられている。この第4導電層20bと櫛歯状の第2導電層4bとの間に、第2誘電体層3bが介在されるようになる。第3導電層20a、第4導電層20bは、基板2がシリコン基板などの半導体基板である場合、半導体基板の表面領域に不純物をドーピングしたドーピング層であってもよい。不純物の例として、P型又はN型の不純物を挙げることができる。また、第3導電層20a、第4導電層20bは、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、ニッケル及び銅などの金属若しくは合金から形成されていても良い。第3導電層20a、第4導電層20bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0073】
絶縁層9aは、第3電極21と第4電極22を互いから絶縁する。第3電極21と第4電極22は、それぞれ、絶縁層9aのxy軸方向に沿う面からz軸方向(基板2の厚さ方向)に沿って同じ向きに突出している。絶縁層9aは、1以上の貫通孔を有する。絶縁層9aのある貫通孔内において、第3電極21が第1導電層4aと電気的に接続されている。絶縁層9aの別の貫通孔内において、第4電極22が第3導電層20aと電気的に接続されている。また、絶縁層9aは、第1導電層4a及び第1誘電体層3aそれぞれの端部と、第3導電層20aとを覆う。
【0074】
絶縁層9bは、第2導電層4b、第2誘電体層3b、及び、第4導電層20bを覆い、これらを外部から絶縁する。
【0075】
絶縁層9a,9bは、例えば、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane, TEOS)などの層間絶縁膜から形成される。
【0076】
第3電極21及び第4電極22は、例えばアルミニウムなどの金属を例えばスパッタリングによって成膜することで得られる。
【0077】
コンデンサ1は、めっき層(図示を省略)をさらに含んでいても良い。めっき層は、例えば、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、NiAl合金などからなる。めっき層は、例えば、導電層上(例えば、第1導電層4a、第2導電層4b、第3導電層20aまたは第4導電層20bなど)に設けることができる。
【0078】
以上説明した構造を有するコンデンサでは、第3,第4の導電層20a,20bで挟まれた基板2が、第1誘電体層3aを介して第1導電層4aとMIM構造のキャパシタを形成すると共に、第2誘電体層3bを介して第2導電層4bとMIM構造のキャパシタを形成する。
【0079】
第3実施形態のコンデンサによれば、基板の第1主面に一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第1凹部と、基板の第2主面に前記一方向に沿って設けられた、少なくとも1つの第2凹部とを備える。基板内において、少なくとも1つの第1凹部と少なくとも1つの第2凹部が一方向に沿って交互に並んでいる。この基板を備えたコンデンサによれば、第1主面と第2主面の両面に一括で加工を行うことにより、基板の反りや割れなどの不良を低減することができる。また、両面に一括で加工を行うことにより、工数を減らすことができる。またさらに、抵抗率が低いものの応力が大きいポリシリコンを導電層として用いても基板の不良を少なくすることができるため、導電層の種類に拘わらず、基板の不良を低減することが可能となる。
【0080】
図18を参照して説明した第3実施形態のコンデンサの製造方法を説明する。この製造方法は、基板薄化S41、マスク形成S42、マスクのパターニングS43、触媒層を両面に一括形成S44、両面にトレンチをMacEtchで一括形成S45、触媒層とマスクの除去を両面一括で行うS46、両面に導電層(第3,第4の導電層)を一括形成S47、両面に誘電体層(第1、第2の誘電体層)を一括形成S48、両面に導電層(第1,第2の導電層)を一括形成S49、レジストパターン形成S50、導電層(第1,第2の導電層)のパターニングS51、めっき層の形成S52及び電極の形成S53を備える。この製造方法は、触媒層とマスクの除去を両面一括で行うS46の後に、両面に第3,第4の導電層を一括形成するS47を行い、その後に両面に第1,第2の誘電体層を一括形成するS48を行う以外は、第1実施形態と同様にして行われる。なお、第3実施形態のコンデンサの製造方法は、工程S41~S53を全て含むことも可能であるが、工程S52または工程S53を省略するなど、一部の工程を省略することもできる。
【0081】
以下、両面に第3,第4の導電層を一括形成する工程S47の詳細を説明する。
【0082】
触媒層とマスクの除去を両面一括で行うS46を、第1実施形態の工程S6と同様にして行った後、基板2の第1主面A1、第1凹部5の内面、第2主面A2、第2凹部6の内面それぞれの目的箇所に不純物をドープするか、あるいは金属層若しくは合金層を設ける。不純物がドープされたドープ層の形成方法は、特に限定されず、CVD(chemical vapor deposition)、LPCVD(low pressure chemical vapor deposition)、イオン注入等が挙げられる。また、金属層及び合金層は、例えば、スパッタリングによって成膜することができる。
【0083】
工程S48(第1,第2の誘電体層の一括形成)は、工程S7と同様にして行われる。また、工程S49(第1,第2の導電層の一括形成)は、工程S8と同様にして行われる。
【0084】
第3実施形態のコンデンサの製造方法では、基板両面に工程S44から工程S48までの処理を一括で行う。すなわち、基板の第1主面に第1凹部を形成する工程と、基板の第2主面に第2凹部を形成する工程とを一括で行った後、基板の第1主面と第2主面に第3,第4の導電層を両面一括で形成し、次いで第1,第2の誘電体層を両面一括で形成し、次いで第1,第2の導電層を両面一括で形成する。その結果、基板の第1主面側に加わる応力と、第2主面側に加わる応力の差を小さくすることができる。また、基板の第1主面と第2主面とに同じ厚さの層を同時に形成することができる。これらにより、基板の反り及び基板の割れなどの不良を低減することができる。また、両面一括形成により、工数を少なくすることができる。
【0085】
また、第1凹部及び第2凹部を、MacEtchなどの触媒を用いたエッチングにより一括形成した後、導電層及び誘電体層も一括で形成することで、薄い基板をハンドリングする機会を削減することができると共に、導電層及び誘電体層形成時の反り抑制が可能となる。
【0086】
比較例のコンデンサとして、例えば
図20に示す構造を有するものがある。
図20に示すコンデンサ100は、基板101と、誘電体層102と、導電層103と、アルミニウム(Al)電極104を備える。基板101の片面に櫛葉状にトレンチ105が形成されている。誘電体層102は、基板101の片面上と、トレンチ105の内面と、基板101の反対側の片面とに設けられている。導電層103は、誘電体層102上に設けられ、一部はトレンチ105内に埋め込まれている。Al電極104は、基板101の片面に設けられた導電層103上に形成されている。このような構造を有するコンデンサ100の製造では、導電層103を設ける際、基板101の一方側と他方側との応力差が大きくなる。具体的には、基板101のトレンチ105が形成されている側の応力106が、基板101の反対側の応力107に比して大きくなる。その結果、基板101が反りやすくなる。基板101の反りは、基板101が割れる等の不良を招く。
【0087】
例えば導電層103としてポリシリコンを用いる場合、基板101の一方側と他方側との応力差を軽減する方法として、成膜温度を高くして導電層103の応力を低くするなどがある。しかしながら、導電層103の応力を低くすると、導電層103の抵抗率(mΩ・cm)が高くなる。従って、コンデンサとしての電気特性と、基板の反りには、トレードオフの関係がある。
【0088】
第1~第3実施形態のコンデンサ及びその製造方法によれば、コンデンサとしての電気特性を犠牲にすることなく、基板の反りや割れなどの不良を低減することができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…コンデンサ、2…基板、3a…第1誘電体層、3b…第2誘電体層、4a…第1導電層、4b…第2導電層、5…第1凹部、6…第2凹部、7…第1電極、7a…第1下部電極、7b…第1外部パッド、8…第2電極、8a…第2下部電極、8b…第2外部パッド、9a…絶縁層、9b…絶縁層、10…基板材料、11a…マスク層、11b…マスク層、12a…レジスト層、12b…レジスト層、13a…開口、13b…開口、14a…第1触媒層、14b…第2触媒層、15a…レジスト層、15b…レジスト層、16a…めっき層、16b…めっき層、20a…第3導電層、20b…第4導電層、21…第3電極、22…第4電極、100…コンデンサ、101…基板、102…誘電体層、103…導電層、104…電極、105…トレンチ、106…応力、107…応力、A1…第1主面、A2…第2主面、S1,S21,S41…基板薄化、S2,S22,S42…マスク形成、S3,S23,S43…マスクのパターニング、S4,S24,S44…触媒層を両面に一括形成、S5,S25,S45…両面にトレンチをMacEtchで一括形成、S6,S26,S46…触媒層とマスクの除去を両面一括で行う、S7…両面に誘電体層を一括形成、S8,S27…両面に導電層を一括形成、S9,S28,S50…レジストパターン形成、S10,S29…導電層のパターニング、S12,S31,S53…電極の形成、S11,S30,S52…めっき層の形成、S47…両面に導電層(第3,第4の導電層)を一括形成、S48…両面に誘電体層(第1、第2の誘電体層)を一括形成、S49…両面に導電層(第1,第2の導電層)を一括形成、S51…導電層(第1,第2の導電層)のパターニング。