(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170076
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】蒸気供給システム及び蒸気供給方法
(51)【国際特許分類】
F22B 3/00 20060101AFI20241129BHJP
F25B 30/02 20060101ALI20241129BHJP
F25B 7/00 20060101ALI20241129BHJP
F22B 1/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F22B3/00
F25B30/02 Z
F25B7/00 D
F22B1/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087036
(22)【出願日】2023-05-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大村 峰正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 太地
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 智暉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆英
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 篤
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 鷹規
(57)【要約】
【課題】生成した負圧蒸気を熱利用先で有効に利用することができる蒸気供給システムを提供する。
【解決手段】蒸気供給システム1Aは、水循環経路3を備えている。水循環経路3には、水を負圧に減圧して負圧水を生成する流量調整弁7と、負圧水と加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換器9と、負圧蒸気と熱利用先15とを熱交換させることによって負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換器11と、凝縮水を流量調整弁7へ供給する水ポンプ5と、が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧部と、
前記負圧水と加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換器と、
前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換器と、
前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給部と、
を備えている蒸気供給システム。
【請求項2】
前記水供給部は、前記第2熱交換器から導かれた前記凝縮水を前記減圧部へ移送する水ポンプを備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項3】
前記水供給部は、前記第2熱交換器から導かれた前記凝縮水を大気に開放する水槽と、
該水槽内に貯留されて大気圧とされた前記凝縮水を前記減圧部へ導く水供給配管と、
を備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項4】
前記第1熱交換器へ供給する前記加熱媒体としての冷媒を供給するヒートポンプを備え、
前記ヒートポンプは、
冷媒を循環させる冷媒循環経路と、
前記第1熱交換器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記第1熱交換器にて熱交換した後の冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁で減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して該冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項5】
前記第1熱交換器へ供給する前記加熱媒体としての冷媒を供給するヒートポンプを備え、
前記ヒートポンプは、高段側ヒートポンプと低段側ヒートポンプとを備え、
前記高段側ヒートポンプは、
冷媒を循環させる高段側冷媒循環経路と、
前記第1熱交換器に供給する冷媒を圧縮する高段側圧縮機と、
前記第1熱交換器にて熱交換した後の冷媒を減圧する高段側膨張弁と、
前記高段側膨張弁で減圧した冷媒を蒸発させる高段側蒸発器と、
を備え、
前記低段側ヒートポンプは、
冷媒を循環させる低段側冷媒循環経路と、
前記高段側蒸発器に供給する冷媒を圧縮する低段側圧縮機と、
前記高段側蒸発器にて熱交換した後の冷媒を減圧する低段側膨張弁と、
前記低段側膨張弁で減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して該冷媒を蒸発させる低段側蒸発器と、
を備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項6】
減圧部で水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧工程と、
前記負圧水と加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換工程と、
前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換工程と、
前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給工程と、
を有している蒸気供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気供給システム及び蒸気供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のカーボンニュートラル化へ向けた取り組みは、産業分野においても活発に行われている。産業分野では、消費エネルギーの約85%が熱利用とされている。熱供給を行う主要熱源として従来から燃料焚きボイラが使用されている。これに対し、脱炭素化のためヒートポンプによる代替が鋭意検討されている。
【0003】
ヒートポンプによる蒸気生成として、負圧蒸気を生成することが知られている(例えば特許文献1)。100℃未満の低温で加温することで蒸気を生成できるので、省エネルギーの点で有利である。
【0004】
また、工場の各プロセスに蒸気を供給する場合、650kW程度の燃料焚きボイラを工場の一箇所にまとめて設置し、ヘッダを介して各プロセスに蒸気を分配する集中配置方式が多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、負圧蒸気を生成するものの、負圧蒸気を蒸気圧縮機で加圧して利用することを前提としており、負圧蒸気そのものの利用については何ら考慮されていない。
【0007】
例えば工場における表面処理槽などにおいて温度維持のために蒸気が使用されており、利用側の温度が100℃未満(さらには80℃以下)のプロセスも多い。このように、飽和温度が100℃未満の負圧蒸気そのものにも一定のニーズがある。
【0008】
また、上述した集中配置方式に代えて、蒸気の利用側と供給側の能力を一対一対応させて、各プロセスの近傍に機器設置する分散配置とすれば、集中配置方式のような蒸気搬送ロスを減少させることができる。
【0009】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、生成した負圧蒸気を熱利用先で有効に利用することができる蒸気供給システム及び蒸気供給方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、分散配置が実現可能とされた蒸気供給システム及び蒸気供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係る蒸気供給システムは、水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧部と、前記負圧水と加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換器と、
前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換器と、前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給部と、を備えている。
【0012】
本開示の一態様に係る蒸気供給方法は、減圧部で水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧工程と、前記負圧水と加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換工程と、前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換工程と、前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給工程と、を有している。
【発明の効果】
【0013】
生成した負圧蒸気を熱利用先で有効に利用することができる。
また、負圧蒸気を生成する程度の加熱媒体を供給する能力の機器を設置すれば足りるので、分散配置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る蒸気供給システムを示した概略構成図である。
【
図2】本開示の第2実施形態に係る蒸気供給システムを示した概略構成図である。
【
図3】本開示の第3実施形態に係る蒸気供給システムを示した概略構成図である。
【
図4】本開示の第4実施形態に係る蒸気供給システムを示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態について、
図1を用いて説明する。
蒸気供給システム1Aは、閉ループとされた水循環経路3を備えている。水循環経路3には、水ポンプ(水供給部)5と、流量調整弁(減圧部)7と、第1熱交換器9と、第2熱交換器11とが設けられている。
【0016】
水ポンプ5は、図示しない制御部によって制御され、水循環経路3の負圧水を吸い込んで流量調整弁7に向けて吐出する。このときに吐出される水は、加圧されて負圧のまま、又は正圧となる。水ポンプ5としては、例えば、自吸式渦巻ポンプ、ギアポンプなどを用いることができる。
【0017】
制御部(図示せず)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0018】
流量調整弁7は、図示しない制御部によって制御され、水ポンプ5から送られてきた水の流量を調整するとともに減圧する。流量調整弁7で減圧することによって、例えば30~70kPa程度の負圧水とする。
【0019】
第1熱交換器9では、流量調整弁7から供給された負圧水と、加熱媒体流路13を流れる加熱媒体とが熱交換する。加熱媒体としては、温水や、圧縮機によって圧縮されて加熱された冷媒などを用いることができる。第1熱交換器9にて、負圧水が加熱媒体によって加熱させて気化され負圧蒸気が生成される。例えば、第1熱交換器9に流入する負圧水の温度を80℃とした場合、例えば95℃といった100℃未満の加熱媒体が用いられる。
第1熱交換器9としては、負圧水と加熱媒体とが非接触で熱交換する非接触式熱交換器が用いられ、例えばプレート型熱交換器、シェル&プレート熱交換器、シェル&チューブ熱交換器などの隔壁式熱交換器を用いることができる。
【0020】
第2熱交換器11は、熱利用先15に設置される。熱利用先15に対しては、100℃未満の負圧蒸気によって加熱された熱媒(例えば水や空気など)を介して熱供給される。第2熱交換器11と第1熱交換器9との間には蒸気圧縮機のような加圧手段は設けられておらず、第1熱交換器9によって生成された負圧蒸気がそのまま第2熱交換器に導かれる。
第2熱交換器11としては、負圧蒸気と熱利用先15の熱媒とが非接触で熱交換する非接触式熱交換器が用いられ、例えばプレート型熱交換器、フィン&チューブ熱交換器、浸漬熱交換器などの隔壁式熱交換器を用いることができる。
【0021】
第2熱交換器11にて負圧蒸気は熱利用先15の熱媒に対して放熱することによって凝縮し、負圧水となる。負圧水は、水循環経路3を通り、水ポンプ5の吸込側へ導かれる。
上述の通り、水循環経路3には、流量調整弁(減圧部)7、第1熱交換器9、第2熱交換器11、水ポンプ(水供給部)5が水の循環方向に沿って、この順に設けられている。水循環経路3はこれらの構成を備えることによって、この経路のうち少なくとも減圧部7の下流側から水ポンプ5の吸込み側までの経路を負圧にすることができる。当該区画内に第1熱交換器9、第2熱交換器11が設けられていることで、これらの熱交換器内では水の状態変化に伴う潜熱を100℃未満の温度でも他の媒体と交換することが可能となる。
【0022】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
流量調整弁7で水を負圧にした後に第1熱交換器9で加熱媒体と熱交換させて100℃未満の負圧蒸気を生成することとした。これにより、第1熱交換器9に供給する加熱媒体を100℃未満とすることができる。
【0023】
第1熱交換器9で生成した100℃未満の負圧蒸気を第2熱交換器11で熱利用先15と熱交換させて凝縮させることで、熱利用先15に対して100℃未満の熱を供給することができる。これにより、100℃未満の熱を必要とする熱利用先15の需要に応えることができる。
【0024】
第2熱交換器11にて負圧蒸気をそのまま使用することとし、第2熱交換器11に供給する負圧蒸気を圧縮するための蒸気圧縮機を設置する必要がないので、費用およびメンテナンスの点で有利となる。
【0025】
第2熱交換器11で凝縮潜熱を放出して凝縮した負圧水が、水ポンプ5によって流量調整弁7へ供給されることによって水の循環系統が形成される。これにより、水の有効利用を図ることができる。
【0026】
第1熱交換器9で負圧蒸気を生成するための加熱媒体を供給するために、例えば数十~数百kW程度のヒートポンプを用いて実現することができる。この容量のヒートポンプを用いれば、熱利用先15と供給側(ヒートポンプ)の能力を一対一に対応させることができるので、工場内の各位置に蒸気供給システム1Aを分散配置することができる。これにより、工場の一箇所にボイラをまとめて設置し、ヘッダを介して各プロセスに蒸気を分配する集中配置方式に比べて、蒸気搬送ロスを減少させることができ、熱効率を向上させることができる。
【0027】
第2熱交換器11から導かれた負圧水を流量調整弁7へ移送する水ポンプ5を用いることで、簡便な構成とされた水循環経路3を形成することができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について、
図2を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態の水ポンプ5(
図1参照)に代えて異なる水供給部を採用した点が異なる。その他の同一の構成については同一符号を付しその説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の蒸気供給システム1Bは、水供給部17を備えている。水供給部17は、水ポンプ19と、アスピレータ21と、水槽23とを備えている。水槽23は、大気開放されている。したがって、水槽23に貯留されている水は大気圧となっている。水ポンプ19は、図示しない制御部によって制御され、水槽23内に貯留された水を吸い上げてアスピレータ21へと送る。アスピレータ21は、ベンチュリ効果によって生成された低圧によって第2熱交換器11から導かれた負圧水を吸い込み、水循環経路3の吐出配管25から水槽23内へ水を送る。水槽23へ導かれることによって負圧水は大気圧となる。
【0030】
水槽23に貯留された水に浸漬されるように、水循環経路3の水供給配管27が設けられている。水供給配管27を介して、水槽23に貯留された水が流量調整弁7へと導かれる。上述の通り、本実施形態における水循環経路3には、流量調整弁(減圧部)7、第1熱交換器9、第2熱交換器11、アスピレータ21が水の循環方向に沿って、この順に設けられている。水循環経路3はこれらの構成を備えることによって、この経路のうち少なくとも減圧部7の下流側からアスピレータ21の吸込み側までの経路を負圧にすることができる。当該区画内に第1熱交換器9、第2熱交換器11が設けられていることで、これらの熱交換器内では水の状態変化に伴う潜熱を100℃未満の温度でも他の媒体と交換することが可能となる。
【0031】
本実施形態の作用効果は、第1実施形態に加えて以下の通りである。
水循環経路3を流れる水ないし蒸気は負圧とされているため、水循環経路3を閉ループとした場合、空気が侵入すると侵入した空気を排出することが困難となる。そこで、負圧水を大気に開放する水槽23を設け、大気圧とされた水槽23の貯留水を水供給配管27を用いて流量調整弁7へ導くようにした。これにより、水循環経路3に空気が侵入した場合であっても、侵入した空気を排出することができる。
【0032】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態について、
図3を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態の第1熱交換器9に供給する加熱媒体の具体的な構成が追加されている。その他の同一の構成については同一符号を付しその説明を省略する。なお、第2実施形態のように水供給部17(
図2参照)を備えた蒸気供給システムに対しても本実施形態を適用することができる。
【0033】
図3に示されているように、本実施形態の蒸気供給システム1Cは、ヒートポンプ30を備えている。ヒートポンプ30は、冷媒を循環させる冷媒循環経路32を備えている。冷媒循環経路32は、第1熱交換器9に接続されており、
図1の加熱媒体流路13に相当する。
冷媒循環経路32には、第1熱交換器9に供給する冷媒を圧縮する圧縮機34と、第1熱交換器9にて熱交換した冷媒を減圧する膨張弁36と、膨張弁36で減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して冷媒を蒸発させる蒸発器38と、を備えている。
【0034】
圧縮機としては、例えばスクロール圧縮機やロータリ圧縮機などが用いられる。冷媒としては、代替フロン冷媒やCO2などの自然冷媒が用いられる。蒸発器38に導かれる熱源媒体としては水や空気が用いられる。
【0035】
本実施形態によれば、ヒートポンプ30を用いて第1熱交換器9に供給する加熱媒体を生成することとしたので、水や空気などの低温熱源とされた熱源媒体から所望温度に加熱された加熱媒体を生成することができる。
【0036】
[第4実施形態]
次に、本開示の第4実施形態について、
図4を用いて説明する。本実施形態は、第3実施形態のヒートポンプ30(
図3参照)をカスケード式にした点で相違する。その他の同一の構成については同一符号を付しその説明を省略する。なお、第2実施形態のように水供給部17(
図2参照)を備えた蒸気供給システムに対しても本実施形態を適用することができる。
【0037】
図4に示すように、本実施形態の蒸気供給システム1Dは、カスケード式ヒートポンプ40を備えている。カスケード式ヒートポンプ40は、高段側ヒートポンプ40Aと低段側ヒートポンプ40Bとを備えている。
【0038】
高段側ヒートポンプ40Aは、冷媒を循環させる高段側冷媒循環経路42Aと、第1熱交換器9に供給する冷媒を圧縮する高段側圧縮機44Aと、第1熱交換器9にて熱交換した後の冷媒を減圧する高段側膨張弁46Aと、高段側膨張弁46Aで減圧した冷媒を蒸発させる高段側蒸発器48Aと、を備えている。
【0039】
低段側ヒートポンプ40Bは、冷媒を循環させる低段側冷媒循環経路42Bと、高段側蒸発器48Aに供給する冷媒を圧縮する低段側圧縮機44Bと、高段側蒸発器48Aにて熱交換した後の冷媒を減圧する低段側膨張弁46Bと、低段側膨張弁46Bで減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して冷媒を蒸発させる低段側蒸発器48Bと、を備えている。
【0040】
高段側圧縮機44A及び低段側圧縮機44Bとしては、例えばスクロール圧縮機やロータリ圧縮機などが用いられる。高段側と低段側で要求される圧力範囲が異なるので、使用圧力範囲において効率の良い圧縮機を使うことが好ましい。
【0041】
冷媒としては、代替フロン冷媒やCO2などの自然冷媒が用いられる。冷媒は高段側冷媒循環経路42Aと低段側冷媒循環経路42Bとで異ならせることが好ましい。例えば、高圧冷媒と低圧冷媒とを使い分けて効率を向上せることができる。
【0042】
低段側蒸発器48Bに導かれる熱源媒体としては水や空気が用いられる。熱源媒体として空気を用いる場合には、低段側ヒートポンプ40Bとして市販の空気熱源ヒートポンプを用いることができる。
【0043】
本実施形態によれば、高段側ヒートポンプ40Aと低段側ヒートポンプ40Bとを有するカスケード式のヒートポンプ40を用いることとしたので、水や空気などの低温熱源とされた熱源媒体から加熱媒体を生成することができる。カスケード式として複数段のヒートポンプ40A,40Bで熱源媒体から熱を汲み上げることができるので、高効率でヒートポンプ40を運転することができる。
【0044】
なお、高段側ヒートポンプ40Aと低段側ヒートポンプ40Bとの間に1又は複数のヒートポンプを設けて3段以上のカスケード式としても良い。
【0045】
以上説明した各実施形態に記載の蒸気供給システム及び蒸気供給方法は、例えば以下のように把握される。
【0046】
本開示の第1態様に係る蒸気供給システムは、水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧部(7)と、前記負圧水と加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換器(9)と、前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換器(11)と、前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給部(5)と、を備えている。
【0047】
減圧部で水を負圧にした後に第1熱交換器で加熱媒体と熱交換させて100℃未満の負圧蒸気を生成することとした。これにより、第1熱交換器に供給する加熱媒体を100℃未満とすることができる。
第1熱交換器で生成した100℃未満の負圧蒸気を第2熱交換器で熱利用先と熱交換させて凝縮させることで、熱利用先に対して100℃未満の熱を供給することができる。これにより、100℃未満の熱を必要とする熱利用先の需要に応えることができる。
第2熱交換器にて負圧蒸気をそのまま使用することとし、第2熱交換器に供給する負圧蒸気を圧縮するための蒸気圧縮機を設置する必要がないので、費用およびメンテナンスの点で有利となる。
第2熱交換器で凝縮潜熱を放出して凝縮した凝縮水が、水供給部によって減圧部へ供給されることによって水の循環系統が形成される。これにより、水の有効利用を図ることができる。
また、第1熱交換器にて100℃未満の負圧蒸気を生成する程度の加熱媒体を供給する能力の機器を設置すれば足りるので、分散配置が可能となる。
第1熱交換器としては、負圧水と加熱媒体とが非接触で熱交換できるように、例えばプレート型熱交換器、シェル&プレート熱交換器、シェル&チューブ熱交換器などの隔壁式熱交換器を用いることができる。
第2熱交換器としては、負圧蒸気と熱利用先とが非接触で熱交換できるように、例えばプレート型熱交換器、フィン&チューブ熱交換器、浸漬熱交換器などの隔壁式熱交換器を用いることができる。
加熱媒体としては、温水や圧縮加熱された冷媒などを用いることができる。
【0048】
本開示の第2態様に係る蒸気供給システムは、前記第1態様において、前記水供給部は、前記第2熱交換器から導かれた前記凝縮水を前記減圧部へ移送する水ポンプ(5)を備えている。
【0049】
第2熱交換器から導かれた凝縮水を減圧部へ移送する水ポンプを用いることで、簡便な構成とされた水循環経路を形成することができる。
水ポンプとしては、例えば、自吸式渦巻ポンプ、ギアポンプなどを用いることができる。
【0050】
本開示の第3態様に係る蒸気供給システムは、前記第1態様において、前記水供給部(17)は、前記第2熱交換器から導かれた前記凝縮水を大気に開放する水槽(23)と、該水槽内に貯留されて大気圧とされた前記凝縮水を前記減圧部へ導く水供給配管(27)と、を備えている。
【0051】
水循環経路を流れる水ないし蒸気は負圧とされているため、水循環経路を閉ループとした場合、空気が侵入すると侵入した空気を排出することが困難となる。そこで、負圧の凝縮水を大気に開放する水槽を設け、大気圧とされた水槽の凝縮水を水供給配管を用いて減圧部へ導くようにした。これにより、水循環経路に空気が侵入した場合であっても、侵入した空気を大気へ排出することができる。
【0052】
本開示の第4態様に係る蒸気供給システムは、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記第1熱交換器へ供給する前記加熱媒体としての冷媒を供給するヒートポンプ(30)を備え、前記ヒートポンプは、冷媒を循環させる冷媒循環経路(32)と、前記第1熱交換器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機(34)と、前記第1熱交換器にて熱交換した後の冷媒を減圧する膨張弁(36)と、前記膨張弁で減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して該冷媒を蒸発させる蒸発器(38)と、を備えている。
【0053】
ヒートポンプを用いることとしたので、水や空気などの低温熱源とされた熱源媒体から加熱媒体を生成することができる。
【0054】
本開示の第5態様に係る蒸気供給システムは、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記第1熱交換器へ供給する前記加熱媒体としての冷媒を供給するヒートポンプを備え、前記ヒートポンプは、高段側ヒートポンプ(40A)と低段側ヒートポンプ(40B)とを備え、前記高段側ヒートポンプは、冷媒を循環させる高段側冷媒循環経路(42A)と、前記第1熱交換器に供給する冷媒を圧縮する高段側圧縮機(44A)と、前記第1熱交換器にて熱交換した後の冷媒を減圧する高段側膨張弁(46A)と、前記高段側膨張弁で減圧した冷媒を蒸発させる高段側蒸発器(48A)と、を備え、前記低段側ヒートポンプは、冷媒を循環させる低段側冷媒循環経路(42B)と、前記高段側蒸発器に供給する冷媒を圧縮する低段側圧縮機(44B)と、前記高段側蒸発器にて熱交換した後の冷媒を減圧する低段側膨張弁(46B)と、前記低段側膨張弁で減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して該冷媒を蒸発させる低段側蒸発器(48B)と、を備えている。
【0055】
高段側ヒートポンプと低段側ヒートポンプとを有するカスケード式のヒートポンプによって、水や空気などの低温熱源とされた熱源媒体から加熱媒体を生成することができる。カスケード式として複数段のヒートポンプで熱源媒体から熱を汲み上げることができるので、高効率でヒートポンプを運転することができる。
なお、高段側ヒートポンプと低段側ヒートポンプとの間に1又は複数のヒートポンプを設けて3段以上のカスケード式としても良い。
【0056】
本開示の第1態様に係る蒸気供給方法は、減圧部で水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧工程と、前記負圧水と加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換工程と、前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換工程と、前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給工程と、を有している。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B,1C,1D 蒸気供給システム
3 水循環経路
5 水ポンプ(水供給部)
7 流量調整弁(減圧部)
9 第1熱交換器
11 第2熱交換器
13 加熱媒体流路
15 熱利用先
17 水供給部
19 水ポンプ
21 アスピレータ
23 水槽
25 吐出配管
27 水供給配管
30 ヒートポンプ
32 冷媒循環経路
34 圧縮機
36 膨張弁
38 蒸発器
40 ヒートポンプ
40A 高段側ヒートポンプ
40B 低段側ヒートポンプ
42A 高段側冷媒循環経路
42B 低段側冷媒循環経路
44A 高段側圧縮機
44B 低段側圧縮機
46A 高段側膨張弁
46B 低段側膨張弁
48A 高段側蒸発器
48B 低段側蒸発器
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧部と、
前記負圧水と100℃未満の加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換器と、
前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換器と、
前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給部と、
を備えている蒸気供給システム。
【請求項2】
前記水供給部は、前記第2熱交換器から導かれた前記凝縮水を前記減圧部へ移送する水ポンプを備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項3】
前記水供給部は、前記第2熱交換器から導かれた前記凝縮水を大気に開放する水槽と、
該水槽内に貯留されて大気圧とされた前記凝縮水を前記減圧部へ導く水供給配管と、
を備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項4】
前記第1熱交換器へ供給する前記加熱媒体としての冷媒を供給するヒートポンプを備え、
前記ヒートポンプは、
冷媒を循環させる冷媒循環経路と、
前記第1熱交換器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記第1熱交換器にて熱交換した後の冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁で減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して該冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項5】
前記第1熱交換器へ供給する前記加熱媒体としての冷媒を供給するヒートポンプを備え、
前記ヒートポンプは、高段側ヒートポンプと低段側ヒートポンプとを備え、
前記高段側ヒートポンプは、
冷媒を循環させる高段側冷媒循環経路と、
前記第1熱交換器に供給する冷媒を圧縮する高段側圧縮機と、
前記第1熱交換器にて熱交換した後の冷媒を減圧する高段側膨張弁と、
前記高段側膨張弁で減圧した冷媒を蒸発させる高段側蒸発器と、
を備え、
前記低段側ヒートポンプは、
冷媒を循環させる低段側冷媒循環経路と、
前記高段側蒸発器に供給する冷媒を圧縮する低段側圧縮機と、
前記高段側蒸発器にて熱交換した後の冷媒を減圧する低段側膨張弁と、
前記低段側膨張弁で減圧した冷媒と熱源媒体と熱交換して該冷媒を蒸発させる低段側蒸発器と、
を備えている請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項6】
減圧部で水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧工程と、
前記負圧水と100℃未満の加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換工程と、
前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換工程と、
前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給工程と、
を有している蒸気供給方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本開示の一態様に係る蒸気供給システムは、水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧部と、前記負圧水と100℃未満の加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換器と、前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換器と、前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給部と、を備えている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本開示の一態様に係る蒸気供給方法は、減圧部で水を負圧に減圧して負圧水を生成する減圧工程と、前記負圧水と100℃未満の加熱媒体とを熱交換させて負圧蒸気を生成する第1熱交換工程と、前記負圧蒸気と熱利用先とを熱交換させることによって該負圧蒸気の凝縮水を生成する第2熱交換工程と、前記凝縮水を前記減圧部へ供給する水供給工程と、を有している。