IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-過給システム 図1
  • 特開-過給システム 図2
  • 特開-過給システム 図3
  • 特開-過給システム 図4
  • 特開-過給システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170082
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】過給システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20241129BHJP
   F02B 37/007 20060101ALI20241129BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F02B37/00 400E
F02B37/007
F02B37/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087045
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山道 智裕
(72)【発明者】
【氏名】橋田 涼平
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA15
3G005EA24
3G005EA26
3G005GA04
3G005JA06
3G005JA24
(57)【要約】
【課題】過給システム全体としての運転効率を向上させること。
【解決手段】複数のターボチャージャ23のうち、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャ23ほど、可変ノズル機構60のベーン開度における閉じ側の限界開度が小さく設定されている。よって、複数のターボチャージャ23のうち、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャ23ほど、排気通路48からタービンホイール30に導入される排気の流速が可変ノズル機構60によって上がり易くなる。その結果、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが小さくても、タービンホイール30の回転数が増大する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排気通路へ排出される排気のエネルギーによってタービンホイールが回転することにより前記内燃機関に吸入される吸気を過給するターボチャージャを複数備え、
前記各ターボチャージャは、複数のノズルベーンを有するとともに前記複数のノズルベーンを回動させることにより、隣り合うノズルベーン同士の隙間の大きさであるベーン開度を調整することで、前記排気通路から前記タービンホイールに導入される排気の流速を調整する可変ノズル機構を備え、
前記ベーン開度を調整することにより前記内燃機関に吸入される吸気の過給圧が変更される過給システムであって、
前記複数のターボチャージャのうち、前記タービンホイールに導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャほど、前記ベーン開度における閉じ側の限界開度が小さく設定されていることを特徴とする過給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、内燃機関から排気通路へ排出される排気のエネルギーによってタービンホイールが回転することにより内燃機関に吸入される吸気を過給するターボチャージャを複数備えた過給システムが知られている。各ターボチャージャは、複数のノズルベーンを有する可変ノズル機構を備えている。可変ノズル機構は、複数のノズルベーンを回動させることにより、隣り合うノズルベーン同士の隙間の大きさであるベーン開度を調整することで、排気通路からタービンホイールに導入される排気の流速を調整する。このように、過給システムにおいては、ベーン開度を調整することにより内燃機関に吸入される吸気の過給圧が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-83717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように、ターボチャージャを複数備えた過給システムにおいては、各ターボチャージャのタービンホイールにそれぞれ排気が導入される前に、排気が排気通路を流れる際に、排気の圧損や排気の温度の低下が生じる場合がある。すると、各ターボチャージャにおいてタービンホイールに導入される排気のエネルギーが異なる。各ターボチャージャのタービンホイールにそれぞれ導入される排気のエネルギーが異なると、各ターボチャージャにおいてタービンホイールの回転数が異なることになるため、各ターボチャージャの実際の作動点が目標の作動点からずれてしまう。すると、各ターボチャージャでサージングが発生したり、タービンホイールが過回転になったりするため、過給システム全体としての運転効率が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する過給システムは、内燃機関から排気通路へ排出される排気のエネルギーによってタービンホイールが回転することにより前記内燃機関に吸入される吸気を過給するターボチャージャを複数備え、前記各ターボチャージャは、複数のノズルベーンを有するとともに前記複数のノズルベーンを回動させることにより、隣り合うノズルベーン同士の隙間の大きさであるベーン開度を調整することで、前記排気通路から前記タービンホイールに導入される排気の流速を調整する可変ノズル機構を備え、前記ベーン開度を調整することにより前記内燃機関に吸入される吸気の過給圧が変更される過給システムであって、前記複数のターボチャージャのうち、前記タービンホイールに導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャほど、前記ベーン開度における閉じ側の限界開度が小さく設定されている。
【0006】
これによれば、複数のターボチャージャのうち、タービンホイールに導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャほど、可変ノズル機構のベーン開度における閉じ側の限界開度が小さく設定されている。したがって、複数のターボチャージャのうち、タービンホイールに導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャほど、排気通路からタービンホイールに導入される排気の流速を可変ノズル機構によって上げ易くすることができる。その結果、タービンホイールに導入される排気のエネルギーが小さくても、タービンホイールの回転数を増大させることができる。一方で、タービンホイールに導入される排気のエネルギーが比較的大きいターボチャージャでは、可変ノズル機構のベーン開度における閉じ側の限界開度を小さく設定しない。このため、タービンホイールに導入される排気のエネルギーが比較的大きいターボチャージャにおいては、排気通路からタービンホイールに導入される排気の流速が可変ノズル機構によって上げ過ぎてしまうことが回避されている。したがって、各ターボチャージャにおいてタービンホイールに導入される排気のエネルギーが異なっていても、各ターボチャージャにおいてタービンホイールの回転数のずれを抑制することができる。よって、各ターボチャージャの実際の作動点が目標の作動点からずれてしまうことが抑制されるため、各ターボチャージャでサージングが発生したり、タービンホイールが過回転になったりすることが回避され易くなる。以上により、過給システム全体としての運転効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、過給システム全体としての運転効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態における過給システムを説明するための概略構成図である。
図2図2は、ベーン開度が開き側の限界開度に達している状態を示す図である。
図3図3は、ベーン開度が閉じ側の限界開度に達している状態を示す図である。
図4図4は、ベーン開度と排気の流量との関係を示すグラフである。
図5図5は、空気の流量と圧力比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、過給システムを具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。本実施形態の過給システムは、内燃機関に吸入される吸気の過給圧を変更する。過給システム及び内燃機関は、エンジンシステムを構成している。本実施形態のエンジンシステムは、車両に搭載されている。
【0010】
<エンジンシステムの概略構成>
図1に示すように、エンジンシステム10は、内燃機関11と、過給システム12と、を備えている。内燃機関11は、エンジン本体13を備えている。エンジン本体13は、第1バンク14と、第2バンク15と、を有している。第1バンク14は、第1気筒16を複数有している。第2バンク15は、第2気筒17を複数有している。本実施形態の内燃機関11は、第1バンク14が第1気筒16を3つ有するとともに、第2バンク15が第2気筒17を3つ有するV型6気筒ディーゼルエンジンである。
【0011】
各第1気筒16内及び各第2気筒17内それぞれには、図示しない燃焼室が形成されている。各第1気筒16内及び第2気筒17内それぞれには、燃焼室の容積を可変とする図示しないピストンが設けられている。また、エンジン本体13には、各第1気筒16に対応して第1インジェクタ18が1つずつ設けられている。第1インジェクタ18は、第1気筒16内の燃焼室に燃料を噴射する。エンジン本体13には、各第2気筒17に対応して第2インジェクタ19が1つずつ設けられている。第2インジェクタ19は、第2気筒17内の燃焼室に燃料を噴射する。
【0012】
内燃機関11は、第1吸気マニホールド20と、第2吸気マニホールド21と、排気マニホールド22と、を備えている。第1吸気マニホールド20は、第1バンク14の各第1気筒16の図示しない吸気ポートに連結されている。第2吸気マニホールド21は、第2バンク15の各第2気筒17の図示しない吸気ポートに連結されている。排気マニホールド22は、第1バンク14の各第1気筒16の図示しない排気ポート、及び第2バンク15の各第2気筒17の図示しない排気ポートに連結されている。
【0013】
過給システム12は、ターボチャージャ23を複数備えている。本実施形態の過給システム12は、ターボチャージャ23を2つ備えている。なお、以下の説明では、2つのターボチャージャ23のうちの一方を「第1ターボチャージャ24」と記載するとともに、2つのターボチャージャ23のうちの他方を「第2ターボチャージャ25」と記載する場合もある。
【0014】
第1ターボチャージャ24は、第1コンプレッサ26と、第1タービン27と、第1連結軸28と、を備えている。第1コンプレッサ26は、第1コンプレッサホイール29を有している。第1タービン27は、タービンホイール30を有している。なお、以下の説明では、第1ターボチャージャ24のタービンホイール30を「第1タービンホイール31」と記載する場合もある。第1コンプレッサホイール29は、第1連結軸28の第1端に連結されている。第1タービンホイール31は、第1連結軸28の第2端に連結されている。第1コンプレッサホイール29と第1タービンホイール31とは第1連結軸28を介して一体的に回転する。
【0015】
第2ターボチャージャ25は、第2コンプレッサ32と、第2タービン33と、第2連結軸34と、を備えている。第2コンプレッサ32は、第2コンプレッサホイール35を有している。第2タービン33は、タービンホイール30を有している。なお、以下の説明では、第2ターボチャージャ25のタービンホイール30を「第2タービンホイール36」と記載する場合もある。第2コンプレッサホイール35は、第2連結軸34の第1端に連結されている。第2タービンホイール36は、第2連結軸34の第2端に連結されている。第2コンプレッサホイール35と第2タービンホイール36とは第2連結軸34を介して一体的に回転する。
【0016】
エンジンシステム10は、第1上流吸気管37と、第2上流吸気管38と、を備えている。第1上流吸気管37の第1端は、大気に連通している。第1上流吸気管37の第2端は、第1ターボチャージャ24の第1コンプレッサ26の入口に接続されている。第1上流吸気管37内には、図示しないエアクリーナによって異物が除去された空気が流れる。第1上流吸気管37内を流れる空気は、第1ターボチャージャ24の第1コンプレッサ26に吸入される。
【0017】
第2上流吸気管38の第1端は、大気に連通している。第2上流吸気管38の第2端は、第2ターボチャージャ25の第2コンプレッサ32の入口に接続されている。第2上流吸気管38内には、図示しないエアクリーナによって異物が除去された空気が流れる。第2上流吸気管38内を流れる空気は、第2ターボチャージャ25の第2コンプレッサ32に吸入される。
【0018】
エンジンシステム10は、第1接続配管39と、第2接続配管40と、インタークーラ41と、を備えている。第1接続配管39の第1端は、第1ターボチャージャ24の第1コンプレッサ26の出口に接続されている。第1接続配管39の第2端は、インタークーラ41の入口に接続されている。第2接続配管40の第1端は、第2ターボチャージャ25の第2コンプレッサ32の出口に接続されている。第2接続配管40の第2端は、第1接続配管39の途中に接続されている。第2接続配管40内を流れる空気は、第1接続配管39内に合流する。
【0019】
エンジンシステム10は、還流管42を備えている。還流管42の第1端は、第2接続配管40の途中に接続されている。還流管42の第2端は、第1上流吸気管37に接続されている。還流管42は、第2接続配管40内を流れる空気を第1上流吸気管37内に還流させる。
【0020】
エンジンシステム10は、第1下流吸気管43と、第2下流吸気管44と、を備えている。第1下流吸気管43の第1端は、インタークーラ41の第1出口に接続されている。第1下流吸気管43の第2端は、第1吸気マニホールド20に接続されている。第2下流吸気管44の第1端は、インタークーラ41の第2出口に接続されている。第2下流吸気管44の第2端は、第2吸気マニホールド21に接続されている。インタークーラ41は、第1接続配管39内から流入する空気を冷却可能に構成されている。インタークーラ41は、例えば、空冷式又は水冷式の熱交換器である。
【0021】
エンジンシステム10は、排気合流配管45と、第1排気分岐配管46と、第2排気分岐配管47と、を備えている。排気合流配管45の第1端は、排気マニホールド22に接続されている。排気合流配管45内には、排気マニホールド22に排出された排気が流れ込む。第1排気分岐配管46及び第2排気分岐配管47は、排気合流配管45の第2端から分岐している。第1排気分岐配管46の第1端は、排気合流配管45の第2端に接続されている。第1排気分岐配管46の第2端は、第1ターボチャージャ24の第1タービン27の入口に接続されている。第1排気分岐配管46内を流れる排気は、第1ターボチャージャ24の第1タービン27の第1タービンホイール31に導入される。第2排気分岐配管47の第1端は、排気合流配管45の第2端に接続されている。第2排気分岐配管47の第2端は、第2ターボチャージャ25の第2タービン33の入口に接続されている。第2排気分岐配管47内を流れる排気は、第2ターボチャージャ25の第2タービン33の第2タービンホイール36に導入される。排気合流配管45、第1排気分岐配管46、及び第2排気分岐配管47は、内燃機関11の排気マニホールド22から排出される排気が流れる排気通路48を構成している。
【0022】
エンジンシステム10は、第1排気下流配管49と、第2排気下流配管50と、DOC51と、尿素SCR52と、排気接続配管53と、排気管54と、を備えている。DOC51は、例えば、CO又はHC等の不完全燃焼生成物を酸化する酸化触媒である。尿素SCR52は、尿素水から生成されたアンモニアを用いて排気中のNOx(窒素酸化物)を還元する脱硝触媒である。
【0023】
第1排気下流配管49の第1端は、第1ターボチャージャ24の第1タービン27の出口に接続されている。第1排気下流配管49の第2端は、DOC51の入口に接続されている。第2排気下流配管50の第1端は、第2ターボチャージャ25の第2タービン33の出口に接続されている。第2排気下流配管50の第2端は、第1排気下流配管49の途中に接続されている。第2排気下流配管50内を流れる排気は、第1排気下流配管49内に合流する。
【0024】
排気接続配管53の第1端は、DOC51の出口に接続されている。排気接続配管53の第2端は、尿素SCR52の入口に接続されている。排気管54の第1端は、尿素SCR52の出口に接続されている。排気管54の第2端は、図示しないマフラーを介して大気に開放されている。DOC51及び尿素SCR52によって浄化された排気は、排気管54内を介して車外に排出される。
【0025】
エンジンシステム10は、第1切換弁55と、第2切換弁56と、第3切換弁57と、を備えている。第1切換弁55は、第2接続配管40における還流管42が接続されている部分よりも第1接続配管39寄りの部位に設けられている。第1切換弁55は、オンオフ弁である。第1切換弁55は、電磁弁である。
【0026】
第2切換弁56は、還流管42に設けられている。第2切換弁56は、オンオフ弁である。第2切換弁56は、電磁弁である。第3切換弁57は、第2排気分岐配管47に設けられている。第3切換弁57は、オンオフ弁である。第3切換弁57は、電磁弁である。
【0027】
エンジンシステム10は、制御装置58を備えている。制御装置58は、中央処理制御装置(CPU)を備えている。制御装置58は、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるメモリを備えている。制御装置58は、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えている。
【0028】
制御装置58は、第1切換弁55、第2切換弁56、及び第3切換弁57に電気的に接続されている。制御装置58は、第1切換弁55、第2切換弁56、及び第3切換弁57の駆動を制御する。制御装置58には、第1切換弁55、第2切換弁56、及び第3切換弁57の駆動を制御することにより、エンジンシステム10を、シングルターボモードと、ツインターボモードと、に切換可能なプログラムが予め記憶されている。制御装置58は、例えば、アクセル開度等の車両の状態に応じて、シングルターボモードと、ツインターボモードとを切り換える。
【0029】
エンジンシステム10は、内燃機関11の負荷が比較的小さく、排気流量が比較的小さい運転領域のときに、シングルターボモードに切り換わる。一方で、エンジンシステム10は、内燃機関11の負荷が比較的大きく、排気流量が比較的大きい運転領域のときに、ツインターボモードに切り換わる。
【0030】
制御装置58には、シングルターボモードに切り換わると、第1切換弁55、第2切換弁56、及び第3切換弁57を閉状態にするプログラムが予め記憶されている。制御装置58には、シングルターボモードからツインターボモードに切り換わると、まず、第2切換弁56及び第3切換弁57を開状態にするプログラムが予め記憶されている。そして、制御装置58には、第2ターボチャージャ25の過給能力が十分高くなったタイミングになったことを把握すると、第1切換弁55を開状態にするとともに第2切換弁56を閉状態にするプログラムが予め記憶されている。
【0031】
<シングルターボモード>
シングルターボモードでは、制御装置58は、第1切換弁55、第2切換弁56、及び第3切換弁57を閉状態に切り換える。そして、内燃機関11の排気マニホールド22から排出される排気は、排気合流配管45及び第1排気分岐配管46を介して第1ターボチャージャ24の第1タービン27の第1タービンホイール31に導入される。第1タービンホイール31は、排気のエネルギーによって回転する。これにより、第1連結軸28を介して第1コンプレッサホイール29が回転する。第1タービン27を通過した排気は、第1排気下流配管49、DOC51、排気接続配管53、尿素SCR52、及び排気管54を介して車外へ排出される。
【0032】
第1上流吸気管37から第1コンプレッサ26に吸入された空気は、第1コンプレッサホイール29の回転により昇圧される。このように、第1ターボチャージャ24の第1コンプレッサ26により昇圧された空気は、第1接続配管39を介してインタークーラ41に流入する。インタークーラ41に流入してインタークーラ41により冷却された空気の一部は、内燃機関11に吸入される吸気として、第1下流吸気管43及び第1吸気マニホールド20を介して第1バンク14の各第1気筒16に吸入される。また、インタークーラ41に流入してインタークーラ41により冷却された空気の一部は、内燃機関11に吸入される吸気として、第2下流吸気管44及び第2吸気マニホールド21を介して第2バンク15の各第2気筒17に吸入される。
【0033】
このように、第1ターボチャージャ24は、内燃機関11から排気通路48へ排出される排気のエネルギーによって第1タービンホイール31が回転することにより内燃機関11に吸入される吸気を過給するターボチャージャ23である。
【0034】
<ツインターボモード>
エンジンシステム10がシングルターボモードからツインターボモードに切り換わると、制御装置58は、まず、第2切換弁56及び第3切換弁57を開状態に切り換える。そして、内燃機関11の排気マニホールド22から排出される排気は、排気合流配管45内から第1排気分岐配管46内及び第2排気分岐配管47内へそれぞれ流れる。排気合流配管45内から第1排気分岐配管46内へ流れた空気に関する作用は、シングルターボモードで説明した空気に関する作用と同様であるためその説明を省略する。
【0035】
一方で、排気合流配管45内から第2排気分岐配管47内へ流れた空気は、第2ターボチャージャ25の第2タービン33の第2タービンホイール36に導入される。第2タービンホイール36は、排気のエネルギーによって回転する。これにより、第2連結軸34を介して第2コンプレッサホイール35が回転する。第2タービン33を通過した排気は、第2排気下流配管50、第1排気下流配管49、DOC51、排気接続配管53、尿素SCR52、及び排気管54を介して車外へ排出される。
【0036】
第2上流吸気管38から第2コンプレッサ32に吸入された空気は、第2コンプレッサホイール35の回転により昇圧される。第2ターボチャージャ25の第2コンプレッサ32により昇圧された空気は、第2接続配管40内に流出する。ここで、第1切換弁55が閉状態であるとともに第2切換弁56が開状態であるため、第2接続配管40内を流れる空気は、還流管42を介して第1上流吸気管37内に還流する。この空気の流れにより、第2ターボチャージャ25の助走運転が行われる。
【0037】
制御装置58は、第2ターボチャージャ25の過給能力が十分に高くなったタイミングを把握すると、第1切換弁55を開状態に切り換えるとともに第2切換弁56を閉状態に切り換える。すると、第2ターボチャージャ25の第2コンプレッサ32により昇圧された空気は、第2接続配管40を介して第1接続配管39内に合流するとともに、インタークーラ41に流入する。インタークーラ41に流入してインタークーラ41により冷却された空気の一部は、内燃機関11に吸入される吸気として、第1下流吸気管43及び第1吸気マニホールド20を介して第1バンク14の各第1気筒16に吸入される。また、インタークーラ41に流入してインタークーラ41により冷却された空気の一部は、内燃機関11に吸入される吸気として、第2下流吸気管44及び第2吸気マニホールド21を介して第2バンク15の各第2気筒17に吸入される。
【0038】
このように、第2ターボチャージャ25は、内燃機関11から排気通路48へ排出される排気のエネルギーによって第2タービンホイール36が回転することにより内燃機関11に吸入される吸気を過給するターボチャージャ23である。これにより、ツインターボモードでは、第1ターボチャージャ24及び第2ターボチャージャ25の両方で内燃機関11に吸入される吸気が過給される。
【0039】
<可変ノズル機構>
第1ターボチャージャ24は、可変ノズル機構60を備えている。なお、以下の説明では、第1ターボチャージャ24の可変ノズル機構60を「第1可変ノズル機構61」と記載する場合もある。第1可変ノズル機構61は、第1タービン27に設けられている。第2ターボチャージャ25は、可変ノズル機構60を備えている。なお、以下の説明では、第2ターボチャージャ25の可変ノズル機構60を「第2可変ノズル機構62」と記載する場合もある。第2可変ノズル機構62は、第2タービン33に設けられている。したがって、各ターボチャージャ23は、可変ノズル機構60を備えている。
【0040】
図2及び図3では、第1可変ノズル機構61の構成について詳細に説明する。なお、第2可変ノズル機構62の構成は、第1可変ノズル機構61の構成と同じであるため、第2可変ノズル機構62の構成の詳細な説明を省略する。
【0041】
図2及び図3に示すように、第1可変ノズル機構61は、複数のノズルベーン63を有している。複数のノズルベーン63は、第1タービンホイール31の周囲に第1タービンホイール31の周方向に等間隔置きに配置されている。複数のノズルベーン63は、ノズルプレート64上に配置されている。各ノズルベーン63は、ベーンシャフト65を介してノズルプレート64に回動可能に支持されている。各ノズルベーン63は、ベーンシャフト65の軸線を回転中心として所定の角度だけ回動可能に構成されている。
【0042】
第1可変ノズル機構61は、アクチュエータ66と、リンクロッド67と、駆動リンク68と、ストッパボルト69と、ロックナット70と、ボルト保持部71と、を備えている。アクチュエータ66は、モータ72と、連結リンク73と、を有している。モータ72の回転軸74は、連結リンク73を回転軸74の軸心を回転中心として回転させる。
【0043】
リンクロッド67の第1端は、第1リンク軸75を介してアクチュエータ66の連結リンク73に連結されている。リンクロッド67の第2端は、第2リンク軸76を介して駆動リンク68に連結されている。
【0044】
ボルト保持部71は、第1タービン27の図示しないハウジングに固定されている。ボルト保持部71は、雌ねじ孔77を有している。ストッパボルト69は、雌ねじ孔77に螺合可能になっている。ストッパボルト69は、ボルト保持部71の端面71aから突出している。そして、ストッパボルト69を雌ねじ孔77に対して螺進退させることにより、ストッパボルト69におけるボルト保持部71の端面71aからの突出量H1が調整可能になっている。ロックナット70は、ストッパボルト69に螺合することにより、ストッパボルト69をボルト保持部71に対して固定する。
【0045】
駆動リンク68は、ストッパボルト69におけるボルト保持部71の端面71aからの突出方向の先端面69aに対して接離可能になっている。具体的には、モータ72の回転軸74が第1方向R1に回転すると、駆動リンク68が連結リンク73及びリンクロッド67を介してストッパボルト69の先端面69aから離れる方向へ移動する。一方で、モータ72の回転軸74が第1方向R1とは逆方向である第2方向R2に回転すると、駆動リンク68が連結リンク73及びリンクロッド67を介してストッパボルト69の先端面69aに近付く方向へ移動する。そして、第1可変ノズル機構61は、駆動リンク68におけるストッパボルト69の先端面69aからの接離する方向への移動に伴い、各ノズルベーン63がベーンシャフト65の軸線を回転中心として回動するように構成されている。
【0046】
第1可変ノズル機構61は、複数のノズルベーン63を回動させることにより、隣り合うノズルベーン63同士の隙間78の大きさであるベーン開度を調整することで、排気通路48から第1タービンホイール31に導入される排気の流速を調整する。そして、過給システム12では、ベーン開度を調整することにより内燃機関11に吸入される吸気の過給圧が変更される。
【0047】
図2は、ベーン開度が開き側の限界開度に達している状態を示している。図3は、ベーン開度が閉じ側の限界開度に達している状態を示している。図2に示すように、ベーン開度が大きくなるほど、アクチュエータ66の駆動に伴い、駆動リンク68は、ストッパボルト69の先端面69aから離れる方向へ移動する。一方で、図3に示すように、ベーン開度が小さくなるほど、アクチュエータ66の駆動に伴い、駆動リンク68は、ストッパボルト69の先端面69aに近付く方向へ移動する。
【0048】
ベーン開度が閉じ側の限界開度に達している状態では、駆動リンク68は、ストッパボルト69の先端面69aに接触している。したがって、ベーン開度における閉じ側の限界開度は、ストッパボルト69におけるボルト保持部71の端面71aからの突出量H1を調整することにより設定されている。具体的には、ストッパボルト69におけるボルト保持部71の端面71aからの突出量H1が小さいほど、ベーン開度における閉じ側の限界開度は小さくなる。
【0049】
ところで、過給システム12においては、第1タービンホイール31及び第2タービンホイール36にそれぞれ排気が導入される前に、排気が排気通路48を流れる際に、排気の圧損や排気の温度の低下が生じる場合がある。すると、第1タービンホイール31に導入される排気のエネルギーと第2タービンホイール36に導入される排気のエネルギーとが異なる。
【0050】
ここで、例えば、第2タービンホイール36に導入される排気のエネルギーが、第1タービンホイール31に導入される排気のエネルギーよりも小さかったとする。第1タービンホイール31に導入される排気のエネルギー、及び第2タービンホイール36に導入される排気のエネルギーは、例えば実験等によって予め求められている。
【0051】
第2ターボチャージャ25のストッパボルト69におけるボルト保持部71の端面71aからの突出量H1は、第1ターボチャージャ24のストッパボルト69におけるボルト保持部71の端面71aからの突出量H1よりも小さくなるように予め設定されている。したがって、第2ターボチャージャ25の第2可変ノズル機構62のベーン開度における閉じ側の限界開度は、第1ターボチャージャ24の第1可変ノズル機構61のベーン開度における閉じ側の限界開度よりも小さく設定されている。このように、本実施形態の過給システム12では、複数のターボチャージャ23のうち、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャ23ほど、ベーン開度における閉じ側の限界開度が小さく設定されている。
【0052】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4には、第1ターボチャージャ24の第1可変ノズル機構61のベーン開度と第1タービンホイール31に導入される排気の流量との関係を実線L1で示している。また、第2ターボチャージャ25の第2可変ノズル機構62のベーン開度と第2タービンホイール36に導入される排気の流量との関係を破線L2で示している。
【0053】
図4に示すように、第2可変ノズル機構62のベーン開度が閉じ側の限界開度であるときの第2タービンホイール36に導入される排気の流量は、第1可変ノズル機構61のベーン開度が閉じ側の限界開度であるときの第1タービンホイール31に導入される排気の流量よりも小さい。
【0054】
図5は、ターボチャージャ23のコンプレッサの空気の流量と、コンプレッサの前後の圧力比との関係からタービンホイール30の回転数を導出するマップである。図5の実線は、タービンホイール30の回転数を示す特性線である。このマップは、例えば実験等によって予め求められている。
【0055】
第2タービンホイール36に導入される排気のエネルギーが、第1タービンホイール31に導入される排気のエネルギーよりも小さい場合を考える。このとき、第1ターボチャージャ24の第1可変ノズル機構61のベーン開度における閉じ側の限界開度と、第2ターボチャージャ25の第2可変ノズル機構62のベーン開度における閉じ側の限界開度と、が同じ場合を考える。この場合、第1ターボチャージャ24の第1タービンホイール31の回転数と第2ターボチャージャ25の第2タービンホイール36の回転数とが異なる。このため、第1ターボチャージャ24の実際の作動点P1と第2ターボチャージャ25の実際の作動点P2とが目標の作動点Pxからずれてしまう。
【0056】
そこで、第2ターボチャージャ25の第2可変ノズル機構62のベーン開度における閉じ側の限界開度を、第1ターボチャージャ24の第1可変ノズル機構61のベーン開度における閉じ側の限界開度よりも小さく設定した。したがって、第2ターボチャージャ25は、排気通路48から第2タービンホイール36に導入される排気の流速を第2可変ノズル機構62によって上げ易くなっている。その結果、第2タービンホイール36に導入される排気のエネルギーが小さくても、第2タービンホイール36の回転数が増大する。一方で、第1タービンホイール31に導入される排気のエネルギーが比較的大きい第1ターボチャージャ24では、第1可変ノズル機構61のベーン開度における閉じ側の限界開度を小さく設定しない。このため、第1ターボチャージャ24においては、排気通路48から第1タービンホイール31に導入される排気の流速が第1可変ノズル機構61によって上げ過ぎてしまうことが回避されている。したがって、第1タービンホイール31に導入される排気のエネルギーと、第2タービンホイール36に導入される排気のエネルギーとが異なっていても、第1タービンホイール31の回転数と第2タービンホイール36の回転数とのずれが抑制される。よって、第1ターボチャージャ24の実際の作動点P1と第2ターボチャージャ25の実際の作動点P2とが目標の作動点Pxからずれてしまうことが抑制されている。このため、例えば、第2ターボチャージャ25でサージングが発生したり、第1タービンホイール31が過回転になったりすることが回避され易くなっている。
【0057】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)複数のターボチャージャ23のうち、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャ23ほど、可変ノズル機構60のベーン開度における閉じ側の限界開度が小さく設定されている。したがって、複数のターボチャージャ23のうち、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが小さいターボチャージャ23ほど、排気通路48からタービンホイール30に導入される排気の流速を可変ノズル機構60によって上げ易くすることができる。その結果、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが小さくても、タービンホイール30の回転数を増大させることができる。一方で、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが比較的大きいターボチャージャ23では、可変ノズル機構60のベーン開度における閉じ側の限界開度を小さく設定しない。このため、タービンホイール30に導入される排気のエネルギーが比較的大きいターボチャージャ23においては、排気通路48からタービンホイール30に導入される排気の流速が可変ノズル機構60によって上げ過ぎてしまうことが回避されている。したがって、各ターボチャージャ23においてタービンホイール30に導入される排気のエネルギーが異なっていても、各ターボチャージャ23においてタービンホイール30の回転数のずれを抑制することができる。よって、各ターボチャージャ23の実際の作動点P1,P2が目標の作動点Pxからずれてしまうことが抑制されるため、各ターボチャージャ23でサージングが発生したり、タービンホイール30が過回転になったりすることが回避され易くなる。以上により、過給システム12全体としての運転効率を向上させることができる。
【0058】
(2)回転数センサ、流量センサ、圧力センサ等を用いたフィードバック制御によって、各ターボチャージャ23の可変ノズル機構60のベーン開度における閉じ側の限界開度を調整する必要が無いため、構成が複雑化することが無い。したがって、簡便な構成で過給システム12全体としての運転効率を向上させることができる。
【0059】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
○ 実施形態において、内燃機関11は、V型6気筒ディーゼルエンジンに限定されるものではなく、例えば、ガソリンエンジンであってもよいし、V型以外の気筒レイアウトで設計されたエンジンであってもよい。また、バンクや気筒の数も任意に変更してもよい。
【0061】
○ 実施形態において、ターボチャージャ23の数は3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
11…内燃機関、12…過給システム、23…ターボチャージャ、30…タービンホイール、48…排気通路、60…可変ノズル機構、63…ノズルベーン、78…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5