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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170083
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】バルブタイミング変更装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087048
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】菅野 弘二
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018BA10
3G018BA33
3G018CA19
3G018DA18
3G018DA20
3G018DA72
3G018DA73
3G018DA76
3G018DA77
3G018DA83
3G018DA85
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA14
(57)【要約】
【課題】バブルタイミング変更装置において、大型化及び重量化を招くことなく、簡単な構造にて、アンバランス量を減じる。
【解決手段】カムシャフトと一体的にカムシャフトの軸線S回りに回転すると共にロックピン42を含むベーンロータ10と、ベーンロータに対して軸線回りに所定の可動角度Δθの範囲を相対的に回転可能でかつロックピンにより相対的な回転がロックされるハウジングロータHrとを備え、ハウジングロータHrは、駆動力が及ぼされる歯列31を有する歯付き部材30と、歯付き部材に固定されてベーンロータを収容する有底円筒状のハウジング部材20を含み、ハウジング部材20は、ベーンロータのアンバランス量m1を相対的に減じる側にその重心が軸線Sから偏心して形成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフトにより駆動される吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミングを変更するバブルタイミング変更装置であって、
前記カムシャフトと一体的に前記カムシャフトの軸線回りに回転すると共にロックピンを含むベーンロータと、
前記ベーンロータに対して前記軸線回りに所定の可動角度の範囲を相対的に回転可能でかつ前記ロックピンにより相対的な回転がロックされるハウジングロータと、を備え、
前記ハウジングロータは、駆動力が及ぼされる歯列を有する歯付き部材と、前記歯付き部材に固定されて前記ベーンロータを収容する有底円筒状のハウジング部材を含み、
前記ハウジング部材は、前記ベーンロータのアンバランス量を相対的に減じる側に、その重心が前記軸線から偏心して形成されている、
ことを特徴とするバルブタイミング変更装置。
【請求項2】
前記ハウジング部材は、前記軸線を中心とする内周面と、前記軸線から平行に偏倚した偏倚軸線を中心とする外周面を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項3】
前記ベーンロータは、前記ロックピンが配置されて前記可動角度の範囲を移動し得るベーン部を有し、
前記軸線及び前記偏倚軸線に直交する直交線は、前記軸線に対して前記可動角度と対頂角をなす領域内に位置付けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項4】
前記直交線は、前記対頂角の中央の角度位置に位置付けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項5】
前記ベーンロータは、前記ロックピンが配置されたベーン部を有し、
前記ハウジング部材は、前記ベーン部の移動を前記可動角度の範囲に規制するべく前記内周面から突出する一対のシュー部を有し、
前記軸線及び前記偏倚軸線に直交する直交線は、前記軸線に垂直で前記一対のシュー部により画定される空間領域の中央を通る直線上に位置付けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項6】
前記歯付き部材は、前記軸線方向に突出する円板状凸部を有し、
前記ハウジング部材は、前記円板状凸部を嵌合させる環状凹部を有し、
前記外周面は、前記環状凹部から外れた外側の領域に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項7】
前記歯付き部材は、前記ベーンロータの前記アンバランス量を相対的に減じる側に、その重心が前記軸線から偏心して形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項8】
前記歯付き部材は、前記ベーンロータの前記アンバランス量を相対的に減じるべく形成された肉抜き部を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項9】
前記歯付き部材の前記重心は、前記軸線に対して前記可動角度と対頂角をなす領域内に位置付けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項10】
前記歯付き部材の前記重心は、前記対頂角の中央の角度位置に位置付けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項11】
前記ベーロータは、アルミニウム材料により形成され、
前記歯付き部材は、鉄系材料により形成され、
前記ハウジング部材は、アルミニウム材料により形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項12】
前記可動角度の範囲は、一端において最遅角位置及び他端において最進角位置を規定し、
前記ロックピンは、前記最遅角位置において、前記ハウジング部材をロックする、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング変更装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミングを運転状況に応じて変更するバルブタイミング変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバルブタイミング変更装置としては、カムシャフトの軸線上においてクランクシャフトと同期して回転するハウジング部材及びチェーンスプロケット(ハウジングロータ)と、カムシャフトと一体的に回転すると共にハウジングロータに対して所定の角度範囲を相対的に回転し得るベーン部材(ベーンロータ)と、ベーンロータとハウジングロータの相対的な回転を規制するべくベーンロータに設けられた回動規制手段(ロックピン)を備え、ロックピンを設けたことによるベーンロータの軸線回りの不釣り合い質量(回転時のアンバランス量)を小さくするべく、チェーンスプロケットに軽量部として開口部又は肉抜き部を設けた、内燃機関のバルブタイミング制御装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
この装置においては、ハウジングロータの一部を形成するチェーンスプロッケットのみでアンバランス量を調整するものであるが、開口部や肉抜き部による調整では強度的又は構造的に限界があり、アンバランス量を十分に低減できない虞がある。
【0004】
また、他のバルブタイミング変更装置としては、同様に、ハウジング部材及びチェーンスプロケット(ハウジングロータ)と、ベーン部材(ベーンロータ)と、ロックピンを備え、ロックピンを設けたことによるベーンロータの軸線回りの不釣り合い質量(アンバランス量)を小さくするべく、ベーンロータにおいて、ロックピンが設けられた羽根部とそれと対称位置にある羽根部をバランスさせた、内燃機関のバルブタイミング制御装置が知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【0005】
この装置においては、ベーンロータのみでアンバランス量を調整するものであるが、ハウジングロータにベーンロータを収容して組付けた装置全体としては、組付けや製造のバラツキにより、アンバランス量を低減するには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-227307号公報
【特許文献2】特開2002-30908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、大型化及び重量化を招くことなく、簡単な構造にて、回転時のアンバランス量を低減ないしは解消することができる、バルブタイミング変更装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバルブタイミング変更装置は、カムシャフトにより駆動される吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミングを変更するバブルタイミング変更装置であって、カムシャフトと一体的にカムシャフトの軸線回りに回転すると共にロックピンを含むベーンロータと、ベーンロータに対して軸線回りに所定の可動角度の範囲を相対的に回転可能でかつロックピンにより相対的な回転がロックされるハウジングロータとを備え、ハウジングロータは、駆動力が及ぼされる歯列を有する歯付き部材と、歯付き部材に固定されてベーンロータを収容する有底円筒状のハウジング部材を含み、ハウジング部材は、ベーンロータのアンバランス量を相対的に減じる側に、その重心が軸線から偏心して形成されている、構成となっている。
【0009】
上記バルブタイミング変更装置において、ハウジング部材は、軸線を中心とする内周面と、軸線から平行に偏倚した偏倚軸線を中心とする外周面を有する、構成を採用してもよい。
【0010】
上記バルブタイミング変更装置において、ベーンロータは、ロックピンが配置されて可動角度の範囲を移動し得るベーン部を有し、軸線及び偏倚軸線に直交する直交線は、軸線に対して可動角度と対頂角をなす領域内に位置付けられている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記バルブタイミング変更装置において、軸線及び偏倚軸線に直交する直交線は、対頂角の中央の角度位置に位置付けられている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記バルブタイミング変更装置において、ベーンロータは、ロックピンが配置されたベーン部を有し、ハウジング部材は、ベーン部の移動を可動角度の範囲に規制するべく内周面から突出する一対のシュー部を有し、軸線及び偏倚軸線に直交する直交線は、軸線に垂直で一対のシュー部により画定される空間領域の中央を通る直線上に位置付けられている、構成を採用してもよい。
【0013】
上記バルブタイミング変更装置において、歯付き部材は、軸線方向に突出する円板状凸部を有し、ハウジング部材は、円板状凸部を嵌合させる環状凹部を有し、外周面は、環状凹部から外れた外側の領域に形成されている、構成を採用してもよい。
【0014】
上記バルブタイミング変更装置において、歯付き部材は、ベーンロータのアンバランス量を相対的に減じる側に、その重心が軸線から偏心して形成されている、構成を採用してもよい。
【0015】
上記バルブタイミング変更装置。歯付き部材は、ベーンロータのアンバランス量を相対的に減じるべく形成された肉抜き部を有する、構成を採用してもよい。
【0016】
上記バルブタイミング変更装置において、歯付き部材の重心は、軸線に対して可動角度と対頂角をなす領域内に位置付けられている、構成を採用してもよい。
【0017】
上記バルブタイミング変更装置において、歯付き部材の重心は、対頂角の中央の角度位置に位置付けられている、構成を採用してもよい。
【0018】
上記バルブタイミング変更装置において、ベーロータはアルミニウム材料により形成され、歯付き部材は鉄系材料により形成され、ハウジング部材はアルミニウム材料により形成されている、構成を採用してもよい。
【0019】
上記バルブタイミング変更装置において、上記可動角度の範囲は、一端において最遅角位置及び他端において最進角位置を規定し、ロックピンは、最遅角位置において、ハウジング部材をロックする、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0020】
上記構成をなすバルブタイミング変更装置によれば、大型化及び重量化を招くことなく、簡単な構造にて、アンバランス量を低減ないしは解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るバルブタイミング変更装置を内燃エンジンのカムシャフトに装着する前の状態を示すものであり、前方斜めから視た分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るバルブタイミング変更装置を内燃エンジンのカムシャフトに装着する前の状態を示すものであり、後方斜めから視た分解斜視図である。
図3】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置を分解して前方斜めから視た分解斜視図である。
図4】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置を分解して後方斜めから視た分解斜視図である。
図5】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置をカムシャフトに装着した状態を示す断面図である。
図6】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置をカムシャフトに装着した状態を示す断面図である。
図7】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置をカムシャフトに装着した状態を示す断面図である。
図8】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、ハウジングロータを構成するハウジング部材の内部を軸線方向の後方側から視た背面図である。
図9】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、ベーンロータが角度範囲の中間位置に位置する状態において、歯付き部材を取り除いて内部を軸線方向の後方側から視た背面図である。
図10図9に示す状態において、軸線を通る面で切断した斜視断面図である。
図11図9に示す状態において、軸線を通る面で切断した断面図である。
図12】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、ベーンロータが中間位置に位置する状態で、ハウジングロータを構成する歯付き部材を軸線方向の後方側から視た背面図である。
図13】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、ベーンロータ、歯付き部材、及びハウジング部材のそれぞれの重心の関係を示す模式図である。
図14】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、歯付き部材の重心位置を、可動角度の範囲の最遅角位置、中間位置、及び最進角位置のそれぞれに位置付けたときの位相角度ごとの装置全体としてのアンバランス量の変化を示すグラフである。
図15】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、歯付き部材及びハウジング部材の重心位置を角度範囲の中間位置に位置付けたときの位相角度ごとの装置全体としてのアンバランス量の変化を示すグラフである。
図16】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、ベーンロータが最遅角位置にある状態及び遅角通路を示す断面図である。
図17】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、ベーンロータが中間位置にある状態及び進角通路を示す断面図である。
図18】一実施形態に係るバルブタイミング変更装置において、ベーンロータが最遅角位置にある状態及び進角通路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
一実施形態に係るバルブタイミング変更装置Mは、図1及び図2に示すように、内燃エンジンのカムシャフト1に装着されるものであり、図3ないし図7に示すように、ベーンロータ10、ハウジングロータHr、座金W、ベーンロータ10に対してハウジングロータHrをロックするロックユニット40を備えている。
ここで、ハウジングロータHrは、ハウジング部材20と、ハウジング部材20にネジbにより固定された歯付き部材30とにより構成されている。
【0023】
カムシャフト1は、内燃エンジンのシリンダヘッドに形成された軸受により軸線S回りにおいて回転可能に支持され、矢印R方向に回転して吸気バルブ又は排気バルブをカム作用により開閉駆動する。また、カムシャフト1は、図1及び図2に示すように、ハウジングロータHrを回動自在に支持する円形状の軸部1a、作動油の供給及び排出を行う進角通路1b、作動油の供給及び排出を行う遅角通路1c、ボルトBを捩じ込む雌ネジ穴1d、位置決めピンPを嵌合する嵌合穴1eを備えている。
ボルトBは、硬質の鉄系金属材料により形成され、鍔付きの頭部B、ネジ部B、首下部Bを備えている。
【0024】
そして、バルブタイミング変更装置Mは、ベーンロータ10がボルトBを用いてカムシャフト1に固定された状態で、ハウジングロータHrがチェーン等を介してクランクシャフトの回転に連動し、ベーンロータ10を介してクランクシャフトの回転駆動力をカムシャフト1に伝達すると共に、作動油の流れを制御する油圧制御系2に接続されることにより、内燃エンジンにおいてバルブタイミングを変更する機能をなす。
油圧制御系2は、図1及び図2に示すように、ポンプから吐出される作動油の流れを制御する油圧制御弁2a、油圧制御弁2aと進角通路1bとを接続する進角側通路2b、油圧制御弁2aと遅角通路1cとを接続する遅角側通路2c、油圧制御弁2aの駆動を制御する制御手段(不図示)により構成されている。
【0025】
ベーンロータ10は、鉄系材料よりも軟質のアルミニウム材料を用いて形成され、図3及び図4に示すように、前面10a及び後面10b、四つのベーン部11、円柱状のハブ部12、貫通孔13、ロックユニット40を取り付ける取付け穴14、遅角通路15、進角通路16、カムシャフト1を嵌合する嵌合凹部17、ベーン部11の先端に形成された四つのシール挿入溝18、カムシャフト1の位置決めピンPを嵌合する位置決め穴19を備えている。
【0026】
前面10aは、軸線Sに垂直な平面であり、四つのベーン部11及びハブ部12の前側の端面を画定する。そして、ベーン部11の領域及びハブ部12の外側領域における前面10aが、軸線S方向においてハウジングロータHrの内壁面と摺動自在に接触する。また、ハブ部12の内側領域における環状凹部10aの底面が、座金Wを当接させる座面として機能する。
後面10bは、軸線Sに垂直な平面であり、四つのベーン部11及びハブ部12の後側の端面を画定する。そして、後面10bは、軸線S方向においてハウジングロータHrの内壁面(端面34a)と摺動自在に接触する。
【0027】
四つのベーン部11は、ハブ部12に対して放射状に周方向に離れて配置されている。一つのベーン部11aには、周方向における幅寸法が他の三つのベーン部11よりも大きく形成されて、ロックユニット40を取り付ける取付け穴14が設けられている。すなわち、ベーン部11aにはロックユニット40が配置されており、不釣り合い質量(アンバランス量)が生じる領域である。
ハブ部12は、座金Wを介してボルトBによりカムシャフト1に固定される。
貫通孔13は、ボルトBのネジ部B及び首下部Bを非接触にて通して首下部Bの周りに作動油の通路を画定するべく、軸線Sを中心とし、前面10aに形成された環状凹部10aから後面10bまで貫通する円形孔として形成されている。
【0028】
取付け穴14は、後面10bに開口し、ロックユニット40の円筒ホルダ41を嵌め込むように形成されている。また、取付け穴14には、圧力を調整する通路14a,14bが連通するように形成されている。通路14aは、開口部23を通して外部に連通するべく前面10aに形成された長溝14aに連通する。通路14bは、ベーン部11aの側面に開口して遅角室RCに連通し、ロックピン42を埋没させる向きに作用する遅角室RC内の作動油を供給する。
【0029】
遅角通路15は、図4図6図16に示すように、嵌合凹部17の底面に形成されカムシャフト1の遅角通路1cに連通する溝状の二つの通路15a、ハブ部12の外周面に開口する四つの通路15bにより形成されている。そして、遅角通路15は、貫通孔13内でボルトBの首下部Bの周りに画定される通路を介して、遅角室RCに作動油を供給し又遅角室RCから作動油を排出する。
進角通路16は、図4図7図17に示すように、カムシャフト1の進角通路1bに連通するべく嵌合凹部17の底面に開口して軸線Sの方向に伸長する二つの通路16a、ハブ部12の外周面に開口する四つの通路16bにより形成されている。そして、進角通路16は、進角室ACに作動油を供給し又進角室ACから作動油を排出する。
嵌合凹部17は、ベーンロータ10の後面10b側において、カムシャフト1の軸部1aの前端部を嵌合させるべく、円筒状の凹部として形成されている。
シール挿入溝18は、矩形断面をなすように形成され、ハウジングロータ20の内周面21fと摺動自在に接触するシール部材18aが嵌め込まれる。
【0030】
そして、ベーンロータ10は、所定の可動角度Δθの範囲において、すなわち、図16に示す最遅角位置と図18に示す最進角位置との間の可動角度Δθの範囲において相対的に回転可能に、ハウジングロータHrの収容室(空間領域A)に収容され、収容室を進角室AC及び遅角室RCに領域分けすると共に、座金Wを介してボルトBによりカムシャフト1に固定されてカムシャフト1と一体的に回転する。
【0031】
上記構成をなすベーンロータ10においては、ベーン部11aにロックユニット40が配置されかつ軸線S回りの周方向の寸法が他のベーン部11に比べて大きく形成されているため、軸線S回りに回転する際に、ベーン部11aの領域において、不釣り合い質量、すなわち、アンバランス量が生じる。
【0032】
ハウジング部材20は、アルミニウム材料を用いたダイカストにより又は焼結体として、円筒壁20a及び前壁20bを有する有底円筒状に形成されている。
ハウジング部材20は、図3ないし図8に示すように、円筒壁20aを画定する内周面21及び外周面22、前壁20bに形成された開口部23、ネジbを捩じ込む四つのネジ孔24、内周面21から内側に突出するシュー部25、四つの外側凹部26、環状端面27、環状凹部28を備えている。
【0033】
内周面21は、軸線Sを中心とする円筒面の一部として形成され、シール部材18aが摺動自在に接触する。
外周面22は、図8に示すように、軸線Sから平行に所定量だけ偏倚した偏倚軸線S2を中心とする円筒面として形成されている。
また、軸線S及び偏倚軸線S2に直交する直交線Lは、図8及び図9に示すように、軸線Sに対して可動角度Δθの対頂角α(=Δθ)をなす領域内において、対頂角αの中央の角度位置に位置付けられている。
【0034】
開口部23は、ボルトBを通すべく、軸線Sを中心とする円孔として形成されている。
四つのネジ孔24は、四つのシュー部25の領域において、軸線Sの方向に貫通するように形成されている。
【0035】
シュー部25は、円筒壁20aの内周面21から中心(軸線S)に向かって突出すると共に周方向に間隔をおいて形成された四つのシュー部25a,25b,25c,25dにより構成されている。
そして、シュー部25aとシュー部25bの間隔(周方向の長さCL)は、シュー部25bとシュー部25cの間隔、シュー部25cとシュー部25dの間隔、及びシュー部25dとシュー部25aの間隔よりも大きく設定されている。
また、一対のシュー部25a,25bにより規定される空間領域Aに、ベーンロータ10のベーン部11aが往復動自在に収容される。さらに、シュー部25aは、ベーンロータ10が最遅角位置に位置決めされるストッパ面25aを有し、シュー部25bは、ベーンロータ10が最進角位置に位置決めされるストッパ面25bを有する。
【0036】
また、軸線S及び偏倚軸線S2に直交する直交線Lは、図8に示すように、軸線Sに垂直でかつ一対のシュー部25a,25bにより規定される空間領域Aの中央を通る直線D上に、すなわち、空間領域Aの周方向の長さCLを二等分する位置を通る直線D上に位置付けられている。
これにより、ハウジング部材20は、ベーンロータ10のアンバランス量が生じる側と軸線Sを挟んで反対側に、すなわち、ベーンロータ10のアンバランス量を相対的に減じる側に、その重心が軸線Sから偏心して形成されている。
【0037】
外側凹部26は、それぞれのシュー部25a,25b,25c,25dの近傍において、外周面22から軸線Sに向かう半円筒面を画定するように形成されている。
環状端面27は、軸線S方向の後端に形成され、内周面21と外周面22とにより肉厚が画定され、図8に示すように、外周面22が軸線Sからに平行に偏倚した偏倚軸線S2を中心として形成されているため、軸線Sと偏倚軸線S2に直交する直交線Lの延長線(直線D)上において、一対のシュー部25a,25bに挟まれた領域に最も肉厚の薄い領域が形成され、一対のシュー部25c,25dに挟まれた領域に最も肉厚の厚い領域が形成されている。
【0038】
環状凹部28は、図11に示すように、歯付き部材30の円板状凸部34が嵌合される領域であり、軸線Sに垂直な環状底面28a及び環状内周面28bを画定する。
環状底面28aは、軸線S方向において円板状凸部34の端面34aに密接する領域であり、軸線S周りの全域において同一のシール幅Tをなす。
環状内周面28bは、軸線Sに垂直な方向において円板状凸部34の外周面34bと密接する領域であり、軸線S方向において同一のシール幅をなす。
このように、環状凹部28のシール幅は一定に確保されているため、環状端面27の肉厚に関係無く、所望のシール性能を確保することができる。
【0039】
歯付き部材30は、鉄系の金属材料を用いた焼結体として円板状に形成され、図3ないし図7に示すように、歯列31、嵌合内周面32、ネジbを通す四つの円孔33、円板状凸部34、溝状の通路35、嵌合穴36、肉抜き部37を備えている。
【0040】
歯列31は、クランクシャフトの回転駆動力を伝達するチェーンが巻回されて、駆動力が及ぼされるようになっている。
嵌合内周面32は、カムシャフト1の軸部1aに回動自在に嵌合される。
円板状凸部34は、軸線S方向において歯列31よりも前方(ハウジング部材20側)に突出し、端面34a及び外周面34bを画定する。
端面34aは、軸線Sに垂直な平面をなし、軸線Sの方向においてベーンロータ10の端面である後面10bが摺動自在に接触すると共に、その外周縁領域がハウジング部材20の環状底面28aと密接する。
外周面34bは、軸線Sに垂直な方向において、ハウジング部材20の環状内周面28bと密接する。
【0041】
通路35は、嵌合穴36に対する作動油の供給及び排出を行うべく、端面34aにおいて溝状にかつベーンロータ10の進角通路16(通路16a,16b)に連通するように形成されている。
嵌合穴36は、端面34aにおいて、ロックユニット40に含まれるロックピン42が嵌合し得るように形成されている。
【0042】
肉抜き部37は、図4及び図12に示すように、歯付き部材30内において、図9に示す直交線Lと平行で軸線Sに直交する直交線L2に対して、略線対称的でかつロックユニット40が配置されるベーン部11a側において肉抜き量が大きくなる形態に形成されている。すなわち、肉抜き部37は、ベーンロータ10のアンバランス量を相対的に減じるように形成されている。
【0043】
上記構成をなす歯付き部材30は、軸線S方向から視たときに、図12に示すように、その重心Cが、軸線Sに対して可動角度Δθと対頂角αをなす領域内において、対頂角αの中央の角度位置(直交線L2上)に位置付けられている。
すなわち、歯付き部材30は、ベーンロータ10のアンバランス量を相対的に減じる側にその重心Cが軸線Sから偏心して形成されている。
【0044】
ロックユニット40は、図5及び図10に示すように、円筒ホルダ41、ロックピン42、コイルバネ43を備えている。
円筒ホルダ41は、コイルバネ43により付勢されたロックピン42を往復動自在に保持するべく、ベーンロータ10の取付け穴14に嵌め込まれる。
ロックピン42は、軸線S方向に往復動自在であり、コイルバネ43の付勢力によりベーンロータ10の後面10bから突出して歯付き部材30の嵌合穴36に嵌合し、又、嵌合穴36に導かれた作動油の油圧を受けて又は通路14bを通して導かれた作動油の油圧を受けてベーンロータ10内に埋没するように形成されている。
コイルバネ43は、ベーンロータ10の後面10bからロックピン42を突出させる向きに付勢力を及ぼす。
【0045】
上記構成をなすロックユニット40においては、進角通路16及び通路35を経て供給される作動油の油圧が低下しかつ通路14bを経て供給される作動油の油圧が低下すると、ロックピン42がコイルバネ43の付勢力によりハウジングロータ20の嵌合穴36に嵌合し、ベーンロータ10がハウジングロータHrに対して最遅角位置にロックされる。
一方、進角通路16及び通路35を経て導かれる作動油の油圧がコイルバネ43の付勢力よりも大きくなると、ロックピン42がベーンロータ10の後面10bから没入して、ベーンロータ10のロックが解除される。また、通路14bを経て供給される作動油の油圧がコイルバネ43の付勢力よりも大きくなると、ロックの解除状態が維持される。
【0046】
次に、上記バルブタイミング変更装置Mの組付け方法について説明する。
予め、ロックユニット40が組み込まれたベーンロータ10、四つのシール部材18a、ハウジング部材20及び歯付き部材30、座金W、四つのネジbを準備する。
先ず、ハウジング部材20の収容室に、座金Wを環状凹部10aに嵌め込んだベーンロータ10を挿入する。そして、ベーンロータ10の四つのシール挿入溝18に、それぞれシール部材18aを嵌め込む。
続いて、ベーンロータ10の後面10bを覆うように、ハウジング部材20に歯付き部材30を対向させ、円板状凸部34を環状凹部28に嵌合させる。そして、四つのネジbを円孔33に通してネジ孔24に捩じ込み、歯付き部材30をハウジング部材20に固定する。
以上により、バルブタイミング変更装置Mの組付けが完了する。尚、組付け手順としては、上記の手順に限るものではなく、その他の手順で行ってもよい。
【0047】
上記のように、組付けが完了したバルブタイミング変更装置Mにおいて、軸線S回りのアンバランス量は、図13に示すように、ベーンロータ10のアンバランス量m1が軸線Sを挟んで一方側に生じ、ハウジング部材20のアンバランス量m2及び歯付き部材30のアンバランス量m3が軸線Sを挟んで他方側に生じる。
すなわち、ハウジング部材20は、ベーンロータ10のアンバランス量m1を相対的に減じる側にその重心が軸線Sから偏心して形成され、又、歯付き部材30は、ベーンロータ10のアンバランス量m1を相対的に減じる側にその重心Cが軸線Sから偏心して形成されている。
【0048】
ここで、ベーンロータ10のアンバランス量m1に対する歯付き部材30のアンバランス量m3の配置位置の選定について、図14を参照しつつ説明する。
図14には、ベーンロータ10のアンバランス量m1に対して、歯付き部材30のアンバランス量m3だけを設けた場合のバルブタイミング変更装置Mとしてのアンバランス量maが示されている。
【0049】
ベーンロータ10が最遅角位置(位相角度0deg)に位置する状態で、アンバランス量m1を相対的に減じる側にアンバランス量m3を設けた形態1の場合(□印のグラフ)、バルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maは、最遅角位置(0deg)で最も小さくなり、最進角位置(Δθdeg)で最も大きくなる。
ベーンロータ10が最進角位置(位相角度Δθdeg)に位置する状態で、アンバランス量m1を相対的に減じる側にアンバランス量m3を設けた形態2の場合(△印のグラフ)、バルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maは、最遅角位置(0deg)で最も大きくなり、最進角位置(Δθdeg)で最も小さくなる。
【0050】
一方、ベーンロータ10が中間位置(位相角度Δθ/2deg)に位置する状態で、アンバランス量m1を相対的に減じる側にアンバランス量m3を設けた形態3の場合(〇印のグラフ)、バルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maは、最遅角位置(0deg)と最進角位置(Δθdeg)で最も大きくなり、中間位置(位相角度Δθ/2deg)で最も小さくなり、又、形態1及び形態2に比べて、アンバランス量maの最大値が小さくなる。
【0051】
したがって、歯付き部材30のアンバランス量m3を設定する位置としては、ベーンロータ10が可動角度Δθの中央に位置する状態、すなわち、最遅角位置と最進角位置の中間位置に位置する状態で、軸線Sに対してアンバランス量m1と反対側にアンバランス量m3を配置する形態が好ましい。
すなわち、歯付き部材30の重心Cは、可動角度Δθと対頂角αをなす領域において、対頂角αの中央の角度位置α/2(=Δθ/2)に位置付けられるのが好ましい。
【0052】
次に、ベーンロータ10のアンバランス量m1に対するハウジング部材20のアンバランス量m2と歯付き部材30のアンバランス量m3の配置位置について、図15を参照しつつ説明する。
図15には、図14に示す中間位置に配置された歯付き部材30のアンバランス量m3に加えて、同様に、ハウジング部材20のアンバランス量m2を中間位置に設定した場合のバルブタイミング変更装置Mとしてのアンバランス量ma(▽印のグラフ)が示されている。尚、比較のために、歯付き部材30のアンバランス量m3だけを中間位置に設定した結果(〇印のグラフ)も示されている。
【0053】
図15から明らかなように、バルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maは、最遅角位置(0deg)と最進角位置(Δθdeg)で最も大きくなり、中間位置(位相角度Δθ/2deg)で最も小さくなり、又、歯付き部材30のアンバランス量m3を設けただけの形態3(〇印のグラフ)に比べて、アンバランス量maの最大値及び最小値を共に小さくすることができる。
これによれば、ベーンロータ10のアンバランス量m1に対して、ハウジング部材20のアンバランス量m2及び歯付き部材30のアンバランス量m3を設けることで、バルブタイミング変更装置Mとしてのアンバランス量Maを全体的に低減して小さくすることができ、特に位相角度が中間位置にある運転状態においてはアンバランス量Maを解消することができる。
【0054】
次に、バルブタイミング変更装置Mの動作について、図16ないし図18を参照しつつ説明する。
内燃エンジンが停止した状態においては、進角室AC及び遅角室RC内の作動油が排出されて、図16に示すように、ベーンロータ10は最遅角位置に位置付けられる。
また、ロックユニット40のロックピン42が嵌合穴36に嵌合して(図5を参照)、ベーンロータ10がハウジングロータHrに対してロックされた状態にある。
これにより、内燃エンジンの始動時には、ベーンロータ10のバタツキ等を防止しつつ、円滑に始動させることができる。
【0055】
続いて、内燃エンジンの始動により、進角通路16及び通路35を通して、作動油がロックピン42の先端に供給されると、ロックピン42が押圧されて嵌合穴36から外れてロック状態が解除される。
そして、内燃エンジンの始動後は、油圧制御弁2aが適宜切り替えられて、ベーンロータ10及びカムシャフト1が、進角側へ又は遅角側へあるいは所定の角度位置に、例えば、図17に示す中間位置に保持されるように位相制御が行われる。
【0056】
例えば、内燃エンジンは高負荷運転モードの場合には、遅角通路15及び遅角側通路2cを経て、遅角室RC内の作動油が排出されると共に、進角側通路2b及び進角通路16を経て、進角室AC内に作動油が供給される。
これにより、ベーンロータ10は、進角室AC内の作動油の油圧により、図18に示すように、ハウジングロータHrに対して時計回りに、すなわち、進角側に回転する。
【0057】
また、内燃エンジンが中負荷運転モードの場合には、進角通路16及び進角側通路2bを経て進角室AC内の作動油が排出される動作と共に、遅角側通路2c及び遅角通路15を経て遅角室RC内に作動油が供給され動作が適宜制御される。
例えば、ベーンロータ10を最進角位置と最遅角位置との間の中間位置に保持する保持モードの場合には、油圧制御弁2aが切り替えられて、進角室AC及び遅角室RCに作動油が供給され、進角室AC及び遅角室RC内の作動油の油圧により、図17に示すように、ベーンロータ10は中間位置に保持される。
中負荷運転モードは、一般に高負荷運転モードよりも頻繁に使用される領域であり、この状態においてバルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maは小さく又は解消されているため、振動等を生じない円滑な回転動作を得ることができる。
【0058】
一方、内燃エンジンが低負荷運転モードの場合には、進角通路16及び進角側通路2bを経て進角室AC内の作動油が排出されると共に、遅角側通路2c及び遅角通路15を経て、遅角室RC内に作動油が供給される。
これにより、ベーンロータ10は、遅角室RC内の作動油の油圧により、図16に示すように、ハウジングロータHrに対して反時計回りに、すなわち、遅角側に回転する。
尚、ベーンロータ10が最遅角位置に移動した場合、ロックピン42は嵌合穴36に対向するが、遅角室RC内の作動油が通路14bを通してロックピン42を埋没させる方向に作用しているため、ロックピン42は嵌合穴36に嵌合することなくロックの解除状態が維持される。
【0059】
上記実施形態に係るバルブタイミング変更装置Mによれば、カムシャフト1と一体的にカムシャフト1の軸線S回りに回転すると共にロックピン42を含むベーンロータ10と、ベーンロータ10に対して軸線S回りに所定の可動角度Δθの範囲を相対的に回転可能でかつロックピン42により相対的な回転がロックされるハウジングロータHrを備え、ハウジングロータHrは、駆動力が及ぼされる歯列31を有する歯付き部材30と、歯付き部材30に固定されてベーンロータ10を収容する有底円筒状のハウジング部材20を含み、ハウジング部材20は、ベーンロータ10のアンバランス量m1を相対的に減じる側にその重心が軸線Sから偏心して形成されている。
これによれば、バルブタイミング変更装置M全体としてのアンバランス量maを低減することができる。
【0060】
また、ハウジング部材20が、円筒壁10aを画定するべく、軸線Sを中心とする内周面21と、軸線Sから平行に偏倚した偏倚軸線S2を中心とする外周面22を有するため、内周面と外周面とが軸線上に中心を有する形態に比べて、大型化や重量増加を招くことなく、アンバランス量m1を相対的に減じて、バルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maを小さくすることができる。
【0061】
また、ベーンロータ10が、ロックピン42が配置されて可動角度Δθの範囲を移動し得るベーン部11aを有し、軸線S及び偏倚軸線S2に直交する直交線Lが、軸線Sに対して可動角度Δθと対頂角αをなす領域内に位置付けられ、特に、直交線Lが対頂角αの中央の角度位置に位置付けられていることにより、バルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maをさらに小さくすることができる。
【0062】
また、ベーンロータ10は、ロックピン42が配置されたベーン部11aを有し、ハウジング部材20は、ベーン部11aの移動を可動角度Δθの範囲に規制するべく内周面21から突出する一対のシュー部11a,11bを有し、軸線S及び偏倚軸線S2に直交する直交線Lが、軸線Sに垂直で一対のシュー部11a,11bにより画定される空間領域Aの中央を通る直線D上に位置付けられている。
これによれば、上記条件を満たすように、ハウジング部材20を製造するだけで、ベーンロータ10のアンバランス量m1を相対的に減じるアンバランス量m2を設定することができる。
【0063】
また、歯付き部材30は、軸線S方向に突出する円板状凸部34を有し、ハウジング部材20は、円板状凸部34を嵌合させる環状凹部28を有し、外周面22は、環状凹部28から外れた外側の領域に形成されている。
これによれば、内周面21と外周面22とにより画定される円筒壁10aの肉厚が薄くなる領域が形成されたとしても、ハウジング部材20と歯付き部材30とのシール幅を、全周において一定のシール幅Tに維持することができるため、シール機能が保証され、接合面からの作動油の漏れ等を防止することができる。
【0064】
歯付き部材30は、ベーンロータ10のアンバランス量m1を相対的に減じる側にその重心Cが軸線Sから偏心して形成されており、具体的には、歯付き部材30が、アンバランス量m1を相対的に減じるべく形成された肉抜き部37を有する。これにより、歯付き部材30の重心Cが、軸線Sに対して可動角度Δθと対頂角αをなす領域内に位置付けられ、特に、対頂角αの中央の角度位置に位置付けられている。
これによれば、ハウジング部材20のアンバランス量m2に加えて、歯付き部材30のアンバランス量M3を、効果的に、ベーンロータ10のアンバランス量m1を相対的に減じる位置に設けることができ、バルブタイミング変更装置Mのアンバランス量maをさらに小さく又は解消することができる。
【0065】
上記実施形態においては、ハウジング部材20にアンバランス量M2を設ける形態として、外周面22の中心を軸線Sから偏倚させた形態を示したが、これに限定されるものではなく、他の形態によりアンバランス量を設定してもよい。
上記実施形態においては、ハウジング部材20のアンバランス量m2及び歯付き部材30のアンバランス量m3の設定位置を、ベーンロータ10が最遅角位置と最進角位置の中間位置に位置する状態に対応させたが、これに限定されるものではなく、最遅角位置と最進角位置の間のいずれかの角度位置に対応させて設定されもよい。
【0066】
上記実施形態においては、ロックユニットとして、円筒ホルダ41、ロックピン42、コイルバネ43を含むと共に最遅角位置にロックするロックユニット40を示したが、これに限定されるものではない。例えば、ベーンロータ10とハウジングロータHrとの相対的な回転をロックし得る構成であれば、その他のロックユニットを採用してもよく、又、ロック位置としては、最遅角位置に限らず、最進角位置あるいは必要に応じてその他の位置であってもよい。
【0067】
以上述べたように、本発明のバルブタイミング変更装置は、大型化及び重量化を招くことなく、簡単な構造にて、アンバランス量を減じることができるため、自動車等に搭載された内燃エンジンに適用できるのは勿論のこと、二輪車等に搭載された小型の内燃エンジン、その他の車両又は船舶等に搭載の内燃エンジンにおいても有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 カムシャフト
S 軸線
S2 偏倚軸線
Δθ 可動角度
α 対頂角
L 直交線
M バルブタイミング変更装置
10 ベーンロータ
11 ベーン部
11a ロックピンが配置されたベーン部
Hr ハウジングロータ
20 ハウジング部材(ハウジングロータ)
21 内周面
22 外周面
25 シュー部
25a,25b 一対のシュー部
A 空間領域
D 直線
28 環状凹部
30 歯付き部材(ハウジングロータ)
C 重心
31 歯列
34 円板状凸部
37 肉抜き部
40 ロックユニット
41 円筒ホルダ
42 ロックピン
43 コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18