(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170084
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】流体制御弁ユニット及びバルブタイミング変更装置
(51)【国際特許分類】
F16K 3/24 20060101AFI20241129BHJP
F01L 1/356 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F16K3/24 B
F01L1/356 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087049
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 弘二
【テーマコード(参考)】
3G018
3H053
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018BA33
3G018BA36
3G018DA24
3G018DA60
3G018DA68
3G018DA72
3G018DA73
3G018DA74
3G018DA83
3G018DA86
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA14
3G018GA17
3G018GA18
3H053AA25
3H053AA26
3H053AA31
3H053AA35
3H053BA03
3H053BB02
3H053BC03
3H053DA12
(57)【要約】
【課題】流体制御弁ユニットで、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化、組付け作業の簡素化を図り、異物の侵入を防止し、スリーブを所定位置に保持する。
【解決手段】流入口74,連通口75,76,底側端部70a及び開口側端部70bを有し軸線Sを画定するスリーブ70,スリーブ内に配置されて連通口を開閉するスプール80を含む流体制御弁Vと、スリーブを嵌合させる内周面51,連通口に通じる通路55,56,底側端部70aに対向する環状受け部53,開口部52を有する筒状の通路部材50と、底側端部70aと環状受け部53の間に配置されたフィルタ部材60と、通路部材50に収容されたスリーブ70の開口側端部70bを受けるストッパ部材110を備え、フィルタ部材60は、環状平板部61、環状平板部に囲まれたフィルタ部62、環状平板部から延出する板バネ片63を含むように金属板バネ材により一体的に形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口,外部に連通する連通口,底側端部,及び開口側端部を有し軸線を画定する有底筒状のスリーブ,前記スリーブ内に摺動自在に配置されて前記連通口を開閉するスプールを含む流体制御弁と、
前記スリーブを嵌合させる内周面,前記連通口に通じる流体の通路,前記軸線の方向において前記底側端部に対向する環状受け部,前記環状受け部に隣接して形成され流体を流入させる開口部を有する筒状の通路部材と、
前記底側端部と前記環状受け部の間に配置されたフィルタ部材と、
前記通路部材に収容された前記スリーブの前記開口側端部を受けるストッパ部材と、を備え、
前記フィルタ部材は、環状平板部,前記環状平板部に囲まれたフィルタ部,及び前記環状平板部から延出して前記軸線の方向に付勢力を及ぼす板バネ片を含むように,金属板バネ材により一体的に形成されている、
ことを特徴とする流体制御弁ユニット。
【請求項2】
前記通路部材は、前記軸線の方向において前記開口側端部に隣接し前記内周面よりも凹む環状溝部を有し、
前記ストッパ部材は、前記スプールを離脱可能に受けるべく,前記環状溝部に嵌め込まれたスナップリングである、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項3】
前記フィルタ部材は、前記環状平板部が前記環状受け部に当接し、前記板バネ片が前記底側端部に当接するべく配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項4】
前記フィルタ部は、エッチング処理により形成された複数の微小孔を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項5】
前記板バネ片は、前記環状平板部の外縁から延出して屈曲するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項6】
前記スリーブは、前記底側端部の領域において、前記フィルタ部材を通過した流体を前記流入口に供給するべく外壁に形成された肉抜き通路と、前記フィルタ部材の前記板バネ片を当接させる当接部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項7】
前記肉抜き通路は、前記軸線の周りに互いに離隔して形成された第1肉抜き通路及び第2肉抜き通路を含み、
前記当接部は、前記第1肉抜き通路と前記第2肉抜き通路の間に位置する幅狭当接部と、前記肉抜き通路から外れた幅広当接部を含み、
前記板バネ片は、前記環状平板部の周方向に等間隔で配置された、第1板バネ片、第2板バネ片、及び第3板バネ片を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項8】
前記第1板バネ片は、前記幅狭当接部に当接すると共に、前記幅狭当接部を挟み込む一対の挟持片を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項9】
前記流体制御弁は、前記流入口からの流体の流入を許容するべく,前記スリーブの内側に配置されたチェック弁を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項10】
前記スナップリングは、前記通路部材内に形成された排出通路を流れる流体を排出し得る排出口を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項11】
前記スナップリングは、前記軸線に垂直な方向に拡がる平板状に形成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項12】
前記スリーブは、前記連通口として、前記軸線の方向において前記流入口を挟んだ両側に位置する第1連通口及び第2連通口を含み、
前記スプールは、前記スリーブ内において往復動するロッドと、前記ロッドに設けられて前記流入口と前記第1連通口の間の通路を開閉する第1弁部と、前記ロッドに設けられて前記流入口と前記第2連通口の間の通路を開閉する第2弁部と、前記第1弁部を前記スナップリングに当接させる向きに付勢力を及ぼす付勢バネを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし11いずれか一つに記載の流体制御弁ユニット。
【請求項13】
前記スプールは、前記第1弁部と前記第2弁部の間に配置された圧縮バネを含み、
前記第1弁部は、前記第1連通口を閉塞し得る第1ランド及び前記第1ランドの内側に形成された第1内部通路を有すると共に前記ロッドに固定された第1固定部と、前記第1内部通路を開閉する第1蓋部を有すると共に前記ロッドに沿って可動に支持された第1可動部を含み、
前記第2弁部は、前記第2連通口を閉塞し得る第2ランド及び前記第2ランドの内側に形成された第2内部通路を有すると共に前記ロッドに固定された第2固定部と、前記第2内部通路を開閉する第2蓋部を有すると共に前記ロッドに沿って可動に支持された第2可動部を含み、
前記圧縮バネは、前記第1蓋部を閉弁させると共に前記第2蓋部を閉弁させる付勢力を及ぼすように配置されている、
ことを特徴とする請求項12に記載の流体制御弁ユニット。
【請求項14】
カムシャフトにより駆動される吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミングを変更するバルブタイミング変更装置であって、
前記カムシャフトと同軸上で回転するハウジングロータと、
前記ハウジングロータと協働して進角室及び遅角室を画定すると共に前記カムシャフトと一体的に回転するベーンロータと、
前記進角室及び遅角室に対する作動油の供給及び排出を制御するべく,請求項12に記載の流体制御弁ユニットと、を備え、
前記流体制御弁ユニットの前記流入口は、作動油が供給される供給ポートであり、
前記流体制御弁ユニットの前記第1連通口は、前記遅角室に連通する遅角ポートであり、
前記流体制御弁ユニットの前記第2連通口は、前記進角室に連通する進角ポートである、
ことを特徴とするバルブタイミング変更装置。
【請求項15】
前記ベーンロータを前記カムシャフトに締結する締結ボルトを含み、
前記締結ボルトは、前記流体制御弁ユニットの前記通路部材である、
ことを特徴とする請求項14に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項16】
前記流体制御弁ユニットの前記流体制御弁は、前記カムシャフトが受ける変動トルクにより前記遅角室と前記進角室との間で作動油を往復させると共に供給された作動油の一部を排出し得るトルク駆動及び油圧駆動型の流体制御弁である、
ことを特徴とする請求項15に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項17】
前記スプールは、前記第1弁部が開弁すると共に前記第2弁部が閉弁する遅角モードに位置付けられた状態において、前記カムシャフトが逆回りのトルクを受けるとき前記第2弁部が開弁して前記進角ポートから前記遅角ポートへの作動油の流れを許容し、かつ、前記第1弁部が閉弁すると共に前記第2弁部が開弁する進角モードに位置付けられた状態において、前記カムシャフトが順回りのトルクを受けるとき前記第1弁部が開弁して前記遅角ポートから前記進角ポートへの作動油の流れを許容すべく形成されている、
ことを特徴とする請求項16に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項18】
前記スプールは、前記第1弁部が前記遅角ポートを閉塞すると共に前記第2弁部が前記進角ポートを閉塞する中立保持モードに位置付けられた状態において、前記遅角室と前記進角室との間での作動油の往復を遮断するべく形成されている、
ことを特徴とする請求項17に記載のバルブタイミング変更装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁ユニット及び流体制御弁ユニットを用いた内燃エンジンのバルブタイミング変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流体制御弁ユニットとしては、軸線を中心とする挿通孔を有するバルブボディと、バルブボディ内に密接して挿入された有底円筒状のスリーブと、スリーブ内に摺動自在に配置されたスプール弁体と、スプール弁体を軸線方向に付勢するべくスリーブ内に配置されたバルブスプリングと、バルブボディの先端部(底壁)とスリーブの一端部(底側端部)の間に配置されたチェック弁と、スリーブの他端部(開口側端部)に当接する固定部材と、チェック弁とバルブボディの底壁の間に配置された弾性部材(Oリングをなすシール部材)を備えた油圧制御バルブが知られている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この油圧制御バルブにおいて、チェック弁は、円筒状のボディ部と、ボディ部内において軸線方向に移動自在に配置されたボール弁体と、ボール弁体を閉弁方向に付勢するコイルばねと、ボディ部に対してかしめ固定されたフィルタ部材を備えている。
そして、スリーブは、軸線方向における一端部がバルブボディの先端部(底壁)とチェック弁のボディ部の間に配置された弾性部材(シール部材)により保持され、軸線方向における他端部がバルブボディの内壁面に圧入された環状の固定部材により保持された構造になっている。
【0004】
ここで、スリーブの一端部に付勢力を及ぼすシール部材は、チェック弁のボディ部を介して付勢力を及ぼす構造であり、又、フィルタ部材は、ボディ部にカシメ固定される構造であるため、構成部品が多く、構造が複雑であり、又、組付け作業が煩雑である。また、スリーブの他端部を保持する固定部材は、バルブボディの内壁面に圧入により固定されているため、スプール弁体の往復動による衝撃や経時変化等により、固定部材が脱落する虞がある。
【0005】
また、他の流体制御弁ユニットとしては、軸線を中心とする挿通孔を有する連結ボルトと、連結ボルト内に収容されたスプール及びリテーナと、スプールとリテーナの間に配置されたスプールスプリングと、リテーナにOリングを挟んで接続されたチェックバルブを備え、チェックバルブが、ボールホルダと、ボールホルダに設けられた円錐状のオイルフィルタと、チェックボールと、チェックスプリングを含む制御弁が知られている。(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
この制御弁において、ボールホルダ及びオイルフィルタの形状が複雑であり、又、軸線方向に付勢力を及ぼす弾性部材としてOリングを採用しているため、構成部品が多く、構造が複雑であり、組付け作業が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-124643号公報
【特許文献2】特開2017-122418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化、組付け作業の簡素化を図り、異物の侵入を防止し、スリーブを所定位置に保持して機能上の信頼性を確保できる、流体制御弁ユニット及びそれを用いたバルブタイミング変更装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流体制御弁ユニットは、流入口,外部に連通する連通口,底側端部,及び開口側端部を有し軸線を画定する有底筒状のスリーブ,スリーブ内に摺動自在に配置されて連通口を開閉するスプールを含む流体制御弁と、スリーブを嵌合させる内周面,連通口に通じる流体の通路,軸線の方向において底側端部に対向する環状受け部,環状受け部に隣接して形成され流体を流入させる開口部を有する筒状の通路部材と、底側端部と環状受け部の間に配置されたフィルタ部材と、通路部材に収容されたスリーブの開口側端部を受けるストッパ部材とを備え、フィルタ部材は、環状平板部,環状平板部に囲まれたフィルタ部,及び環状平板部から延出して軸線の方向に付勢力を及ぼす板バネ片を含むように,金属板バネ材により一体的に形成されている、構成となっている。
【0010】
上記流体制御弁ユニットにおいて、通路部材は、軸線の方向においてスリーブの開口側端部に隣接し内周面よりも凹む環状溝部を有し、ストッパ部材は、スプールを離脱可能に受けるべく環状溝部に嵌め込まれたスナップリングである、構成を採用してもよい。
【0011】
上記流体制御弁ユニットにおいて、フィルタ部材は、環状平板部が環状受け部に当接し、板バネ片が底側端部に当接するべく配置される、構成を採用してもよい。
【0012】
上記流体制御弁ユニットにおいて、フィルタ部は、エッチング処理により形成された複数の微小孔を含む、構成を採用してもよい。
【0013】
上記流体制御弁ユニットにおいて、板バネ片は、環状平板部の外縁から延出して屈曲するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0014】
上記流体制御弁ユニットにおいて、スリーブは、底側端部の領域において、フィルタ部材を通過した流体を流入口に供給するべく外壁に形成された肉抜き通路と、フィルタ部材の板バネ片を当接させる当接部を含む、構成を採用してもよい。
【0015】
上記流体制御弁ユニットにおいて、肉抜き通路は、軸線の周りに互いに離隔して形成された第1肉抜き通路及び第2肉抜き通路を含み、当接部は、第1肉抜き通路と第2肉抜き通路の間に位置する幅狭当接部と、肉抜き通路から外れた幅広当接部を含み、板バネ片は、環状平板部の周方向に等間隔で配置された、第1板バネ片、第2板バネ片、及び第3板バネ片を含む、構成を採用してもよい。
【0016】
上記流体制御弁ユニットにおいて、第1板バネ片は、幅狭当接部に当接すると共に、幅狭当接部を挟み込む一対の挟持片を含む、構成を採用してもよい。
【0017】
上記流体制御弁ユニットにおいて、流体制御弁は、流入口からの流体の流入を許容するべく,スリーブの内側に配置されたチェック弁を含む、構成を採用してもよい。
【0018】
上記流体制御弁ユニットにおいて、スナップリングは、通路部材内に形成された排出通路を流れる流体を排出し得る排出口を有する、構成を採用してもよい。
【0019】
上記流体制御弁ユニットにおいて、スナップリングは、軸線に垂直な方向に拡がる平板状に形成されている、構成を採用してもよい。
【0020】
上記流体制御弁ユニットにおいて、スリーブは、連通口として、軸線の方向において流入口を挟んだ両側に位置する第1連通口及び第2連通口を含み、スプールは、スリーブ内において往復動するロッドと、ロッドに設けられて流入口と第1連通口の間の通路を開閉する第1弁部と、ロッドに設けられて流入口と第2連通口の間の通路を開閉する第2弁部と、第1弁部をスナップリングに当接させる向きに付勢力を及ぼす付勢バネを含む、構成を採用してもよい。
【0021】
上記流体制御弁ユニットにおいて、スプールは、第1弁部と第2弁部の間に配置された圧縮バネを含み、第1弁部は、第1連通口を閉塞し得る第1ランド及び第1ランドの内側に形成された第1内部通路を有すると共にロッドに固定された第1固定部と、第1内部通路を開閉する第1蓋部を有すると共にロッドに沿って可動に支持された第1可動部を含み、第2弁部は、第2連通口を閉塞し得る第2ランド及び第2ランドの内側に形成された第2内部通路を有すると共にロッドに固定された第2固定部と、第2内部通路を開閉する第2蓋部を有すると共にロッドに沿って可動に支持された第2可動部を含み、圧縮バネは、第1蓋部を閉弁させると共に第2蓋部を閉弁させる付勢力を及ぼすように配置されている、構成を採用してもよい。
【0022】
本発明のバルブタイミング変更装置は、カムシャフトにより駆動される吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミングを変更するバルブタイミング変更装置であって、カムシャフトと同軸上で回転するハウジングロータと、ハウジングロータと協働して進角室及び遅角室を画定すると共にカムシャフトと一体的に回転するベーンロータと、進角室及び遅角室に対する作動油の供給及び排出を制御するべく,スリーブが流入口及び第1連通口並びに第2連通口を含み、スプールが第1弁部及び第2弁部を含む構成をなす上記流体制御弁ユニットとを備え、流体制御弁ユニットの流入口は、作動油が供給される供給ポートであり、流体制御弁ユニットの前記第1連通口は、遅角室に連通する遅角ポートであり、流体制御弁ユニットの第2連通口は、進角室に連通する進角ポートである、構成となっている。
【0023】
上記バルブタイミング変更装置において、ベーンロータをカムシャフトに締結する締結ボルトを含み、締結ボルトは、流体制御弁ユニットの通路部材である、構成を採用してもよい。
【0024】
上記バルブタイミング変更装置において、流体制御弁ユニットの流体制御弁は、カムシャフトが受ける変動トルクにより遅角室と進角室との間で作動油を往復させると共に供給された作動油の一部を排出し得るトルク駆動及び油圧駆動型の流体制御弁である、構成を採用してもよい。
【0025】
上記バルブタイミング変更装置において、スプールは、第1弁部が開弁すると共に第2弁部が閉弁する遅角モードに位置付けられた状態において、カムシャフトが逆回りのトルクを受けるとき第2弁部が開弁して進角ポートから遅角ポートへの作動油の流れを許容し、かつ、第1弁部が閉弁すると共に第2弁部が開弁する進角モードに位置付けられた状態において、カムシャフトが順回りのトルクを受けるとき第1弁部が開弁して遅角ポートから進角ポートへの作動油の流れを許容すべく形成されている、構成を採用してもよい。
【0026】
上記バルブタイミング変更装置において、スプールは、第1弁部が遅角ポートを閉塞すると共に第2弁部が進角ポートを閉塞する中立保持モードに位置付けられた状態において、遅角室と進角室との間での作動油の往復を遮断するべく形成されている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0027】
上記構成をなす流体制御弁ユニットによれば、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化、組付け作業の簡素化を達成でき、異物の侵入を防止し、スリーブを所定位置に保持して機能上の信頼性を確保できる。また、上記構成をなす流体制御弁ユニットを備えたバルブタイミング変更装置によれば、装置の小型化等を達成しつつ、スリーブを所定位置に保持して機能上の信頼性を確保でき、所望の動作を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流体制御弁ユニットを備えたバルブタイミング変更装置が適用されるエンジンの構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す構成において、電磁アクチュエータ、流体制御弁が内蔵された締結ボルト、バルブタイミング変更装置及びカムシャフトを、カムシャフトと反対側の斜め前方から視た分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す構成において、電磁アクチュエータ、流体制御弁が内蔵された締結ボルト、バルブタイミング変更装置及びカムシャフトを、カムシャフト側の斜め後方から視た分解斜視図である。
【
図4】本発明のバルブタイミング変更装置に含まれるハウジングロータ、ベーンロータ、回転付勢バネ及びカムシャフトを、カムシャフトと反対側の斜め前方から視た分解斜視図である。
【
図5】本発明のバルブタイミング変更装置に含まれるハウジングロータ、ベーンロータ、回転付勢バネ及びカムシャフトを、カムシャフト側の斜め後方から視た分解斜視図である。
【
図6】本発明のバルブタイミング変更装置が締結ボルトによりカムシャフトに締結固定された状態において、ロック機構が作動したロック状態を示す断面図である。
【
図7】本発明のバルブタイミング変更装置が締結ボルトによりカムシャフトに締結固定された状態において、流体制御弁ユニットの周りの領域の通路を示す断面図である。
【
図8】一実施形態に係る流体制御弁ユニットを示す外観斜視図である。
【
図9】一実施形態に係る流体制御弁ユニットを、バルブタイミング変更装置が取り付けられるカムシャフトと反対側の斜め前方から視た分解斜視図である。
【
図10】一実施形態に係る流体制御弁ユニットを、バルブタイミング変更装置が取り付けられるカムシャフト側の斜め後方から視た分解斜視図である。
【
図11】本発明の流体制御弁ユニットに含まれるフィルタ部材を示すものであり、環状平板部側から視た斜視図である。
【
図12】一実施形態に係る流体制御弁ユニットに含まれるフィルタ部材を示すものであり、複数の板バネ片側から視た斜視図である。
【
図13】一実施形態に係る流体制御弁ユニットに含まれるフィルタ部材を金属板バネ材としてのバネ鋼板から打ち抜いて折り曲げ加工を施す前の状態を示す平面図である。
【
図14】一実施形態に係る流体制御弁ユニットにおいて、スリーブの底側端部に隣接して配置されたフィルタ部材を示す斜視図である。
【
図15】一実施形態に係る流体制御弁ユニットにおいて、スリーブとフィルタ部材を示す分解斜視図である
【
図16】一実施形態に係る流体制御弁ユニットを示すものであり、第1連通口及び第2連通口に連通し得る排出通路の領域における断面図である。
【
図17】一実施形態に係る流体制御弁ユニットを示すものであり、スプールを付勢する付勢バネが配置された領域に連通する排出通路の領域における断面図である。
【
図18】一実施形態に係る流体制御弁ユニットを示すものであり、肉抜き通路及び流入口(供給ポート)の領域における断面図である。
【
図19】一実施形態に係る流体制御弁ユニットを示すものであり、第1連通口(遅角ポート)及び第2連通口(進角ポート)の領域における断面図である。
【
図20】本発明の流体制御弁ユニットに含まれるスプールを示すものであり、軸線を含む面で切断した斜視断面図である。
【
図21】ベーンロータが、ハウジングロータに対して中間位置にロックされた状態を示す断面図である。
【
図22】ベーンロータが、ハウジングロータに対して最遅角位置に位置する状態を示す断面図である。
【
図23】ベーンロータが、ハウジングロータに対して最進角位置に位置する状態を示す断面図である。
【
図24】遅角モードにおいて、カムシャフトが逆回りのトルクを受けるとき、流体制御弁のスプールと、遅角ポート、進角ポート、遅角室及び進角室内の作動油の流れの関係を示す模式図である。
【
図25】遅角モードにおいて、カムシャフトが順回りのトルクを受けるとき、流体制御弁のスプールと、遅角ポート、進角ポート、遅角室及び進角室内の作動油の流れの関係を示す模式図である。
【
図26】進角モードにおいて、カムシャフトが逆回りのトルクを受けるとき、流体制御弁のスプールと、遅角ポート、進角ポート、遅角室及び進角室内の作動油の流れの関係を示す模式図である。
【
図27】進角モードにおいて、カムシャフトが順回りのトルクを受けるとき、流体制御弁のスプールと、遅角ポート、進角ポート、遅角室及び進角室内の作動油の流れの関係を示す模式図である。
【
図28】中立保持モードにおいて、カムシャフトが逆回りのトルクを受けるとき、流体制御弁のスプールと、遅角ポート、進角ポート、遅角室及び進角室内の作動油の流れ呉の関係を示す模式図である。
【
図29】中立保持モードにおいて、カムシャフトが順回りのトルクを受けるとき、流体制御弁のスプールと、遅角ポート、進角ポート、遅角室及び進角室内の作動油の流れの関係を示す模式図である。
【
図30】本発明の流体制御弁ユニットに含まれるフィルタ部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
一実施形態に係る流体制御弁ユニットUを備えたバルブタイミング変更装置Mは、
図1に示すように、内燃エンジンのカムシャフト1に取り付けられて、カムシャフト1により駆動される吸気バルブ又は排気バルブの開閉時期、すなわち、バルブタイミングを変更するものである。
【0030】
内燃エンジンは、吸気バルブ又は排気バルブを開閉駆動するカムシャフト1、作動油を溜めるオイルパン2、オイルパン2内の流体としての作動油をカムシャフト1に向けて供給する供給通路3、供給通路3の途中に設けられ作動油を吸引して加圧及び吐出するオイルポンプ4、流量制御弁ユニットUから排出される作動油をオイルパン2に戻す排出通路5、バルブタイミング変更装置Mを覆うチェーンカバー6、チェーンカバー6に固定された電磁アクチュエータ7を備えている。
【0031】
カムシャフト1は、
図1ないし
図7に示すように、軸線Sを中心として一方向CRに回転するものであり、嵌合軸部1a、通路1b,1c、雌ネジ部1d、位置決めピンPを嵌合させる嵌合穴1eを備えている。
供給通路3は、内燃エンジンのシリンダブロック及びシリンダヘッド等に形成される。
排出通路5は、内燃エンジンのシリンダブロック及びシリンダヘッドとチェーンカバー6の間に画定され、流量制御弁ユニットUから排出された余分な作動油をオイルパン2に戻す。
電磁アクチュエータ7は、チェーンカバー6に固定されるものであり、
図3に示すように、軸線S方向に移動する駆動シャフト7a、駆動シャフト7aを駆動する励磁用のコイル(不図示)を備えている。
【0032】
バルブタイミング変更装置Mは、
図2ないし
図7に示すように、ハウジングロータ10、ベーンロータ20、回転付勢バネ30、ロック機構40、流体制御弁ユニットUを備えている。
流体制御弁ユニットUは、通路部材としての締結ボルト50、フィルタ部材60、流体制御弁V、ストッパ部材としてのスナップリング110を備えている。
流体制御弁Vは、通路を切り換えて作動油の流れを制御するものであり、スリーブ70、スプール80、付勢バネ90、チェック弁100を備えている。
【0033】
ハウジングロータ10は、カムシャフト1の軸線S上で回転可能に支持され、チェーンを介してクランクシャフトの回転に連動し、ベーンロータ20を介してクランクシャフトの回転駆動力をカムシャフト1に伝達する。
ハウジングロータ10は、
図4ないし
図7に示すように、円板状の第1ハウジング11と、第1ハウジング11に結合される有底円筒状の第2ハウジング12とからなる二分割構造をなす。そして、ハウジングロータ10は、ベーンロータ20を最遅角位置と最進角位置の間の角度範囲において相対的に回転可能に収容すると共に、ベーンロータ20と協働して進角室AC及び遅角室RCを画定する。
【0034】
第1ハウジング11は、スプロケット11a、嵌合孔11b、内壁面11c、ロック穴11d、ロック穴11dに連続して形成された凹部11e、ネジbを通す三つの円孔11f、位置決めピンP2を嵌合させる位置決め孔11gを備えている。
嵌合孔11bは、カムシャフト1の嵌合軸部1aに回動自在に嵌合される。内壁面11cは、ベーンロータ20の背面24と摺動自在に接触する。ロック穴11dは、ロック機構40のロックピン41が微小隙間をおいて嵌合する。凹部11eは、ロック穴11dの周りに形成されて、ロック穴11dに嵌合したロックピン41の先端受圧部41aに作動油を導く。
【0035】
第2ハウジング12は、
図4ないし
図7に示すように、円筒壁12a、前壁12b、開口部12c、ネジbを捩じ込む三つのネジ孔12d、三つのシュー部12e、掛止溝12f、凹部12g、第1ハウジング11の内壁面11cに接合される環状接合部12h、位置決めピンP
2を嵌合させる位置決め穴12iを備えている。
【0036】
開口部12cは、締結ボルト50を通すべく、軸線Sを中心とする円形孔をなす。
三つのシュー部12eは、前壁12bの内側において、円筒壁12aから中心に向かって突出すると共に周方向において等間隔に配置して形成されている。
一つのシュー部12eは、ベーンロータ20のベーン部22を当接させて最大遅角位置を規定し、他の一つのシュー部12eは、ベーンロータ20のベーン部22を当接させて最大進角位置を規定する。
掛止溝12fは、回転付勢バネ30の第1端部32を掛止するべく、開口部12cの一部を切り欠いて形成されている。凹部12gは、回転付勢バネ30のコイル部31の一部を収容する。
【0037】
ベーンロータ20は、ハウジングロータ10の内側に配置され、ハウジングロータ10と協働して進角室AC及び遅角室RCを画定すると共に、ワッシャWを挟んで締結ボルト50でカムシャフト1に固定され、カムシャフト1と一体的に回転する。
ベーンロータ20は、
図4ないし
図7に示すように、ハブ部21、三つのベーン部22、前面23、環状凹部23a、掛止溝23b、背面24、嵌合孔25、凹部26、溝通路27、遅角通路28、進角通路29を備えている。
【0038】
ベーン部22は、ハウジングロータ10のシュー部12eと協働して進角室AC及び遅角室RCを画定する。前面23は、第2ハウジング12の前壁12bの内壁面に摺動自在に接触して配置される。環状凹部23aは、回転付勢バネ30のコイル部31の一部を収容するべく前面23を環状に肉抜きして形成されている。掛止溝23bは、回転付勢バネ30の第2端部33を掛止するべく前面23の一部を肉抜きして形成されている。
【0039】
背面24は、軸線Sに垂直な平面に形成され、カムシャフト1の端面に接合されると共に第1ハウジング11の内壁面11cに摺動自在に接触して配置される。また、背面24には、カムシャフト1の嵌合穴1eに組み付けられる位置決めピンPが嵌合される嵌合穴24aが設けられている。嵌合孔25は、締結ボルト50の円筒部50aが密接して嵌合される内径寸法に形成されている。
凹部26は、
図5及び
図6に示すように、一つのベーン部22において、ロック機構40を収容するように形成され、ロック機構40に含まれる付勢バネ42を受ける受け部26a、ベーンロータ20の外部に連通する連通路26bを備えている。
【0040】
溝通路27は、環状溝通路27a及び直線溝通路27bにより形成され、カムシャフト1の端面及びハウジングロータ10の内壁面11cと協働して、作動油をロック機構40に向けて供給し又ロック機構40から排出する。すなわち、溝通路27は、ロック機構40に対して、供給される作動油の流れ方向において流体制御弁Vよりも上流側で、締結ボルト50の貫通路54を通して導かれた作動油を供給してロックを解除し、又、ロック時に排出する役割をなす。溝通路27は、ベーンロータ20の背面24に形成されているため、加工が容易であり、又、内壁面11cの摺動領域に潤滑作用をもたらす。
【0041】
遅角通路28は、遅角室RCに対する作動油の供給及び排出を行うものであり、
図22に示すように、嵌合孔25の内周面に形成された環状溝28aと、環状溝28aからハブ部21を径方向に貫通する貫通路28bにより形成されている。
進角通路29は、進角室ACに対する作動油の供給及び排出を行うものであり、
図23に示すように、嵌合孔25の内周面に形成された環状溝29aと、環状溝29aからハブ部21を径方向に貫通する貫通路29bにより形成されている。
【0042】
回転付勢バネ30は、
図4ないし
図7に示すように、コイル部31、第1端部32、第2端部33を有するコイルバネである。
そして、回転付勢バネ30は、コイル部31がベーンロータ20の環状凹部23a及びハウジングロータ10の凹部12gに収容され、第1端部32がハウジングロータ10の掛止溝12fに掛止され、第2端部33がベーンロータ20の掛止溝23bに掛止されている。これにより、回転付勢バネ30は、ベーンロータ20をハウジングロータ10に対して進角方向に回転付勢する。
【0043】
このように、進角方向に付勢する回転付勢バネ30を採用することにより、進角させる際の作動トルクをアシストすることで応答性を向上させることができる。また、作動トルクと負荷トルクとの差が、進角時と遅角時とで略同等となるように回転付勢バネ30の荷重を設定することにより、制御性を向上させることができる。
【0044】
ロック機構40は、
図6に示すように、ロックピン41、付勢バネ42、円筒ホルダ43を備えている。そして、ロック機構40は、
図21に示すように、ベーンロータ20をハウジングロータ10に対して最遅角位置と最進角位置の間の中間位置にロックする。
ロックピン41は、略円柱状をなし、先端受圧部41aを有する。そして、ロックピン41は、ハウジングロータ10のロック穴11dに嵌合し得るべく、ベーンロータ20の背面24に対して軸線S方向に出没自在に保持される。付勢バネ42は、ロックピン41を突出する向きに付勢する。
円筒ホルダ43は、付勢バネ42により付勢されたロックピン41を往復動自在に保持するべくベーンロータ20の凹部26に嵌め込まれて固定される。また、円筒ホルダ43は、
図5及び
図6に示すように、ロックピン41の周りにおいて直線溝通路27bに連通する環状油溜りCを画定するべく、ベーンロータ20の背面24から没入するように配置されている。環状油溜りCを設けることで、ロックピン41の周りに作動油が充填されてロックを円滑に解除することができる。
【0045】
そして、エンジンの起動により、オイルポンプ4で加圧された作動油が、カムシャフト1の通路1b,1c、締結ボルト50の開口部52、フィルタ部材60のフィルタ部62、肉抜き通路71aにより画定される隙間通路Cp、締結ボルト50の貫通路54、及びベーンロータ20の背面24に形成された溝通路27及び環状油溜りCを通してロック機構40に導かれ、ロックピン41の先端受圧部41aに加わる油圧が上昇すると、ロックピン41がロック穴11dから離脱してロックが解除される。
一方、エンジンの停止により、供給される作動油の油圧が低下すると、ロックピン41に作用していた作動油は、溝通路27及び貫通路54、隙間通路Cp、フィルタ部62、開口部52、通路1c,1bを通して流れ出し、ロックピン41を押圧する油圧が低下する。すると、ロックピン41が付勢バネ42により付勢されてハウジングロータ10のロック穴11dに嵌合し、ベーンロータ20はハウジングロータ10に対して中間位置にロックされる。
【0046】
締結ボルト50は、
図2、
図3、
図6ないし
図10に示すように、軸線Sを中心とする円筒部50a、流体制御弁Vを嵌合する内周面51、開口部52、環状受け部53、貫通路54、遅角通路55、進角通路56、鍔付き頭部57、雄ネジ部58、位置決め凹部59a、環状溝部59bを備えている。
【0047】
円筒部50aは、ベーンロータ20の嵌合孔25に密接して嵌合される外径寸法に形成されている。内周面51は、スリーブ70を嵌合させるべく軸線Sを中心とする円筒面をなす。
開口部52は、軸線S方向において環状受け部53に隣接して内周面51よりも小径の円形孔に形成され、フィルタ部材60よりも上流側において作動油を締結ボルト50内に流入させる通路として機能する。
【0048】
環状受け部53は、軸線S方向において開口部52よりも内側で、スリーブ70の底側端部70aに対向するように、円環状凹部でかつ受け面が軸線Sに垂直な平坦面として形成されている。
貫通路54は、ロック機構40に対して作動油を導入又は排出するものであり、円筒部50aにおいて軸線Sに垂直な径方向に貫通する。
遅角通路55は、ベーンロータ20の遅角通路28に連通するべく、円筒部50aにおいて軸線Sに垂直な径方向に貫通する。
進角通路56は、ベーンロータ20の進角通路29に連通するべく、円筒部50aにおいて軸線Sに垂直な径方向に貫通する。
【0049】
鍔付き頭部57は、ワッシャWを挟んでベーンロータ20の前面23に当接する。雄ネジ部58は、カムシャフト1の雌ネジ部1dに螺合される。
位置決め凹部59aは、流量制御弁Vに含まれるスリーブ70の位置決め凸部79及びスナップリング110の嵌合凸部114を嵌合させるように形成されている。
環状溝部59bは、フィルタ部材60の板バネ片63を圧縮しつつ内周面51に嵌合されたスリーブ70の開口側部70bにスナップリング110が当接するように、スナップリング110を嵌め込むべくスリーブ70の開口側端部70bに隣接すると共に内周面51よりも凹むように形成されている。
【0050】
フィルタ部材60は、オイルポンプ4により供給される作動油に混入する異物を捕獲するものであり、金属板バネ材、例えば、ステンレス鋼(SUS301等)のバネ鋼板を用いて形成され、
図6、
図7、
図11、
図12に示すように、環状平板部61、フィルタ部62、板バネ片63、板バネ片63の付け根領域に形成された湾曲切欠き部64を備えている。
【0051】
環状平板部61は、軸線Sを中心とする円環状の平板をなし、締結ボルト50の環状受け部53に密接してシール部材として機能する。
フィルタ部62は、環状平板部61に囲まれた円形状の領域に形成された複数の微小孔62aからなる。微小孔62aの孔径は、作動油に混入することが想定される異物の大きさよりも小さく、かつ、通路抵抗が大きくならない程度の寸法に形成される。
板バネ63は、環状平板部61の外縁から軸線S方向に延出すると共にその先端部が軸線Sの内側に向けて伸長するように、すなわち、環状平板部61の外縁から延出して屈曲するように形成されている。これにより、板バネ63は、軸線S方向に付勢力を及ぼすようになっている。
【0052】
ここでは、板バネ片63は、環状平板部61の周方向に等間隔(120度間隔)で配置された、第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、及び第3板バネ片63cを含むように形成されている。
そして、第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、及び第3板バネ片63cは、その一つがスリーブ70の幅狭当接部72a4に当接し、他の二つがスリーブ70の幅広当接部72a5に当接するように配置される。
湾曲切欠き部64は、板バネ片63が環状平板部61から延出する付け根領域に形成されており、板バネ片63が弾性変形する際に付け根領域で生じる応力集中を緩和して、亀裂等が発生するのを防止する。
【0053】
フィルタ部材60の製造については、例えば、板厚が0.2mm~0.3mm程度のステンレス鋼(SUS301等)のバネ鋼板が、打ち抜き加工機を用いて、
図13に示すように、平板状の未加工材Bmとして打ち抜かれる。ここで、未加工品Bmは、円板部Bm
1、円板部Bm
1から径方向に伸長する三つの伸長片Bm
2を含む形状をなす。
そして、未加工材Bmには、円板部Bm
1の外側の環状領域の内側(フィルタ部62に対応する領域)に複数の微小孔を備えたレジスト膜が塗布され、その外側からエッチング処理(ウェットエッチング又はドライエッチング)が施される。これにより、フィルタ部62には、複数の微小孔62aが形成される。ここで、微小孔62aは、例えば、内径が0.2mm程度の円孔として形成される。
続いて、エッチング処理が終了すると、レジスト膜が取り除かれる。
その後、曲げ加工機を用いて、伸長片Bm
2が折り曲げ加工され、板バネ片63(第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、第3板バネ片63c)が形成される。
【0054】
そして、フィルタ部材60は、流体制御弁ユニットUとして組み付けられた状態において、スリーブ70の底側端部70a(当接部としての幅狭当接部70a4及び幅広当接部70a5)と締結ボルト50の環状受け部53とに挟持される。
これにより、フィルタ部62の領域が、締結ボルト50の開口部52とスリーブ70の肉抜き通路71aに臨む領域に位置決めされ、板バネ片63(第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、第3板バネ片63c)が、締結ボルト50に対してスリーブ70を軸線S方向に付勢する付勢力を及ぼす。
【0055】
このように、フィルタ部材60が、環状平板部61、フィルタ部62、及び複数の板バネ片63を含むように、金属板バネ材により一体的に形成されているため、種々の部品及び材料を組み合わせて形成されたフィルタ部材に比べて、構造の簡素化、低コスト化を達成することができる。
ここでは、板バネ片63が、複数(三つ)の板バネ片として、すなわち、第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、及び第3板バネ片63cを含むように形成されているため、構造の簡素化を達成しつつ容易にバネ力を発生させることができ、環状平板部61の周方向における全域を環状受け部53に密着させることができる。
【0056】
流体制御弁Vは、進角室AC及び遅角室RCに対して作動油を供給又は排出するべく通路を切り換えるものであり、
図9、
図10、
図16ないし
図20に示すように、スリーブ70、スプール80、付勢バネ90、チェック弁100を備えている。
【0057】
スリーブ70は、アルミニウム又はその他の金属材料を用いて、軸線Sを画定する有底円筒状に形成され、軸線S方向の両端をなす底側端部70a及び開口側端部70b、外壁71、肉抜き通路71a,71b,71c、排出通路の一部をなす第1溝通路71d及び貫通路71d1,71d2、排出通路の一部をなす第2溝通路71e及び貫通路71e1、嵌合孔71f、嵌合ピン71g、排出通路の一部をなす連通凹部71h、内周面72、環状溝部72a,72b,72c、開口部73、供給ポート74、遅角ポート75、進角ポート76、ストッパ壁77、バネ受け部78、位置決め凸部79を備えている。
【0058】
底側端部70aは、
図14及び
図15に示すように、端面70a
1、内壁部70a
2,70a
3、幅狭当接部70a
4、幅広当接部70a
5、二つの肉抜き部70a
6により構成されている。
端面70a
1は、組付け状態において、環状受け部53に対して軸線S方向に所定隙間をおいて、例えば、フィルタ部材60の板厚と同程度の隙間をおいて対向するように形成されている。
内壁部70a
2,70a
3は、軸線Sに垂直な方向において、板バネ片63の外側面が微小隙間をおいて入り込むように形成され、フィルタ部材60を軸線Sに垂直な方向において位置決めする。
【0059】
幅狭当接部70a4は、軸線S方向から視て第1肉抜き通路及び第2肉抜き通路としての二つの肉抜き通路71a,71aの間に位置し、軸線Sに垂直な方向に伸長すると共に矩形断面をなす突条平坦面として形成されている。
そして、幅狭当接部70a4は、第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、及び第3板バネ片63cのうちの一つを受ける。
幅広当接部70a5は、二つの肉抜き通路71a,71aから外れた領域において、幅狭当接部70a4と同一面において軸線Sに垂直な半円状の平坦面として形成されている。
そして、幅広当接部70a5は、第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、及び第3板バネ片63cのうちの残りの二つを受ける。
二つの肉抜き部70a6は、幅狭当接部70a4の両側において、作動油の通路として二つの肉抜き通路71a,71aにそれぞれ連通するように形成されている。
【0060】
開口側端部70bは、
図9、
図16ないし
図19に、軸線Sを中心とする環状でかつ軸線Sに垂直な平坦面をなし、スナップリング110の環状受け部111と当接するように形成されている。そして、開口側端部70bは、スリーブ70が組付けられた状態において、軸線S方向において締結ボルト50の環状溝部59bに嵌め込まれたスナップリング110の環状受け部111で受け止められる。
【0061】
外壁71は、軸線Sを中心とする円筒面として形成され、締結ボルト50の内周面51に密接して嵌合される。
二つの肉抜き通路71aは、底壁の外側である底側端部70aの中央領域から肉抜き部70a6を介して二股に分かれるように伸長し供給ポート74(第1供給ポート74a及び第2供給ポート74b)に臨む領域に亘って、外壁71の一部を肉抜きして形成され、締結ボルト50の内壁と協働して隙間通路Cpを画定する。
肉抜き通路71bは、遅角ポート75から締結ボルト50の遅角通路55に臨む領域において、外壁71の一部を肉抜きして形成され、遅角ポート75と遅角通路55の間の通路として機能する。
肉抜き通路71cは、進角ポート76から締結ボルト50の進角通路56に臨む領域において、外壁71の一部を肉抜きして形成され、進角ポート76と進角通路56の間の通路として機能する。
【0062】
溝通路71dは、外壁71において軸線S方向に伸長して形成され、貫通路71d1と協働して、第1弁部82が閉弁したとき遅角ポート75と連通して作動油を排出し得ると共に、貫通路71d2と協働して、第2弁部83が閉弁したとき進角ポート76と連通して作動油を排出し得る排出通路として機能する。
溝通路71eは、溝通路71dから離れた位置の外壁71において軸線S方向に伸長して形成され、貫通路71e1と協働して、付勢バネ90が配置された領域に溜まった作動油を排出し得ると共に呼吸路をなす排出通路として機能する。
【0063】
嵌合孔71fは、嵌合ピン71gを嵌合させるものであり、環状溝部72aの底壁において径方向に貫通する二段孔として形成されている。
嵌合ピン71gは、鉄又は鋼材料等を用いて、外径の異なる二つの円柱が一体形成された段付きピンをなし、嵌合孔71fに密接に嵌合され、スプール80と干渉しないように、環状溝部72aの底面から径方向内側に突出する。
連通凹部71hは、開口部73近傍の外壁71において、第1溝通路71dと第2溝通路71eを周方向において連通させるように形成されている。
【0064】
内周面72は、軸線Sを中心とする円筒状に形成され、スプール80の第1弁部82(第1ランド82a1)及び第2弁部83(第2ランド83a1)を密接させて摺動自在にガイドする。
環状溝部72aは、流入口としての供給ポート74に臨む領域において軸線S方向において供給ポート74の開口幅よりも幅広で内周面72から凹むように環状に肉抜きして円筒面として形成され、その内側にチェック弁100が配置される。
環状溝部72bは、第1連通口としての遅角ポート75に臨む領域において、内周面72から凹むように環状に肉抜きして形成され、作動油の通路として機能する。
環状溝部72cは、第2連通口としての進角ポート76に臨む領域において、内周面72から凹むように環状に肉抜きして形成され、作動油の通路として機能する。
【0065】
開口部73は、スプール80のロッド81を軸線S方向に突出させる。
供給ポート74は、流体としての作動油が流入する流入口として機能し、隙間通路Cpと連通すると共に隙間通路Cpにおいて貫通路54よりも下流側に配置されている。
また、供給ポート74は、
図10に示すように、軸線S回りに互いに隔てて設けられた、第1流入口としての第1供給ポート74aと、第2流入口としての第2供給ポート74bを含む。
【0066】
遅角ポート75は、流体としての作動油を通すべく外部に連通する第1連通口として機能し、肉抜き通路71bを介して締結ボルト50の遅角通路55と連通し、又、ベーンロータ20の遅角通路28を経て遅角室RCと連通する。
進角ポート76は、流体としての作動油を通すべく外部に連通する第2連通口として機能し、肉抜き通路71cを介して締結ボルト50の進角通路56と連通し、又、ベーンロータ20の進角通路29を経て進角室ACと連通する。
ここで、遅角ポート75と進角ポート76は、
図18及び
図19に示すように、軸線Sの方向において、供給ポート74を挟んだ両側に位置するように配置されている。すなわち、流体を通すべく外部に連通する連通口は、軸線Sの方向において流入口(供給ポート74)を挟んだ両側に位置する第1連通口(遅角ポート75)及び第2連通口(進角ポート76)を含む。
ストッパ壁77は、スプール80の第2弁部83の端面83a
2を受け止めて、スプール80を進角モードに対応する最奥位置に停止させる。
バネ受け部78は、付勢バネ90の端部を受ける。
位置決め凸部79は、スリーブ70が締結ボルト50の内周面51に嵌め込まれる際に、締結ボルト50に対してスリーブ70を軸線S回りの所定位置に位置決めするべく、締結ボルト50の位置決め凹部59aに嵌合される。
【0067】
上記のように、スリーブ70には、外壁71において、外部に排出する作動油を通す排出通路(第1溝通路71d、第2溝通路71e、連通凹部71h)が形成されているため、通路部材としての締結ボルト50に排出通路を設ける必要がなく、それ故に、既存の種々の通路部材に対して当該スリーブ70を含む流体制御弁Vを適用することができる。
【0068】
スプール80は、
図16ないし
図20に示すように、スリーブ70の内側において内周面72と摺動自在に配置され、軸線S方向に伸長するロッド81、ロッド81に設けられた第1弁部82及び第2弁部83、第1弁部82と第2弁部83の間に配置された圧縮バネ84を備えている。
ロッド81は、軸線S方向に伸長するように形成され、外側に露出する端部81aを備えている。端部81aには、電磁アクチュエータ7の駆動シャフト7aが係合して、付勢バネ90の付勢力に抗して駆動力が及ぼされる。
【0069】
第1弁部82は、供給ポート74と遅角ポート75の間の通路を開閉するものであり、ロッド81に固定された第1固定部82aと、ロッド81に沿って可動に支持されて圧縮バネ84により付勢される第1可動部82bを備えている。
第1固定部82aは、内周面72に密接して摺動する第1ランド82a1、端面82a2、第1内部通路82a3、端面82a4を備えている。
第1ランド82a1は、軸線Sを中心とし内周面72の内径と略同径又は僅かに小さい外径の円筒面でかつ遅角ポート75を閉塞する幅寸法に形成され、遅角ポート75を開放又は閉塞する。
第1可動部82bは、圧縮バネ84と協働して逆止弁として機能するものであり、ロッド81に摺動自在に嵌合された第1嵌合部82b1、第1内部通路82a3を開閉するべく端面82a4に離脱可能に当接する第1蓋部82b2を備えている。
【0070】
第2弁部83は、供給ポート74と進角ポート76の間の通路を開閉するものであり、ロッド81に固定された第2固定部83aと、ロッド81に沿って可動に支持されて圧縮バネ84により付勢される第2可動部83bを備えている。
第2固定部83aは、内周面72に密接して摺動する第2ランド83a1、端面83a2、第2内部通路83a3、端面83a4を備えている。
第2ランド83a1は、軸線Sを中心として内周面72の内径と略同径又は僅かに小さい外径の円筒面でかつ進角ポート76を閉塞する幅寸法に形成され、進角ポート76を開放又は閉塞する。
第2可動部83bは、圧縮バネ84と協働して逆止弁として機能するものであり、ロッド81に摺動自在に嵌合された第2嵌合部83b1、第2内部通路83a3を開閉するべく端面83a4に離脱可能に当接する第2蓋部83b2を備えている。
【0071】
圧縮バネ84は、圧縮型のコイルバネであり、第1弁部82の第1可動部82bと第2弁部83の第2可動部83bの間に配置されて、第1蓋部82b2が第1内部通路82a3を閉塞し、第2蓋部83b2が第2内部通路83a3を閉塞するように付勢力を及ぼす。
【0072】
ここで、圧縮バネ84の付勢力と排出通路の一部をなす貫通路71d1及び貫通路71d2の通路抵抗の関係について説明する。
第1弁部82が閉弁状態において、遅角ポート75から流れ込む作動油の圧力が大きいときは、第1蓋部82b2が開弁して、排出通路(貫通路71d1)から排出される作動油は少なく、進角ポート76側へ積極的に作動油が流れ込み、一方、遅角ポート75から流れ込む作動油の圧力が小さいときは、第1蓋部82b2が閉弁して、排出通路(貫通路71d1)から積極的に作動油が排出される。
また、第2弁部83が閉弁状態において、進角ポート76から流れ込む作動油の圧力が大きいときは、第2蓋部83b2が開弁して、排出通路(貫通路71d2)から排出される作動油は少なく、遅角ポート75側へ積極的に作動油が流れ込み、一方、進角ポート76から流れ込む作動油の圧力が小さいときは、第2蓋部83b3が閉弁して、排出通路(貫通路71d2)から積極的に作動油が排出される。
上記動作をなすように、圧縮バネ84の付勢力と貫通路71d1,71d2の通路抵抗が設定されている。
【0073】
付勢バネ90は、圧縮型のコイルバネであり、
図16ないし
図19に示すように、一端部がスプール80の端面83a
2に当接し、他端部がスリーブ70のバネ受け部78に当接するように組み付けられている。そして、付勢バネ90は、休止状態にあるとき、スプール80の端面82a
2をスナップリング110の突起状受け部112,113に当接させる休止位置、すなわち遅角モードに対応する位置にスプール80を停止させる付勢力を及ぼす。
【0074】
チェック弁100は、バネ鋼からなる長尺な板バネを円環状に湾曲させて両端を対向させ所定隙間の切欠き部を形成すると共に環状溝部72aの内径よりも大きい外径をなすように予め湾曲成形された、C形状板バネである。
そして、チェック弁100は、切欠き部の隙間に嵌合ピン71gが位置するように縮径可能にスリーブ70の環状溝部72aに配置され、スリーブ70の供給ポート74を経て内部に供給される作動油の流れのみを許容する逆止弁として機能する。
【0075】
尚、チェック弁100は、供給される作動油が、通路1b,1c、開口部52、フィルタ部62、肉抜き部70a6、肉抜き通路71aにより画定される隙間通路Cp及び供給ポート74を経て流体制御弁V内に流れ込み、遅角ポート75から遅角室RC又は進角ポート76から進角室ACに供給された後で、貫通路54及び溝通路27に満たされた作動油の油圧がロック機構40を解除可能な油圧に達したときにロックが解除されるように、その開弁特性が設定されている。
【0076】
スナップリング110は、締結ボルト50の環状溝部59bに嵌め込まれるものであり、バネ鋼等により形成され、
図8ないし
図10に示すように、軸線Sに垂直な方向に拡がる平板状をなすと共に所定隙間の切欠き部110aを有する略C形状に形成されている。
そして、スナップリング110は、環状受け部111、軸線S回りにおいて略等間隔で環状受け部111から径方向内向きに突出する複数(ここでは、五つ)の突起状受け部112,113、嵌合凸部114を備えている。
【0077】
環状受け部111は、締結ボルト50の内周面51に挿入されたスリーブ70の開口側端部70bを受けるものである。
二つの突起状受け部112及び三つの突起状受け部113は、それぞれ、付根側領域においてスリーブ70の開口側端部70bを受けると共に先端側領域においてスプール80の端面82aを離脱可能に受けるものである。
二つの突起状受け部112は、切欠き部110aを画定する両端部の近傍に設けられて、二つの円孔112a,112bが形成されている。
二つの円孔112a,112bは、スナップリング110を環状溝部59bに取り付ける際に使用する工具(例えば、スナップリングプライヤ)の先端を挿入するものである。
【0078】
上記構成をなすスナップリング110において、切欠き部110a及び二つの円孔112a,112bは、排出通路(第1溝通路71d、第2溝通路71e、連通凹部71h)を流れる作動油を排出し得る排出口としても機能する。
嵌合凸部114は、軸線S回りの角度位置において、排出口(切欠き部110a及び二つの円孔112a,112b)を、排出通路(第1溝通路71d、第2溝通路71e、連通凹部71h)に対応させるべく、締結ボルト50の位置決め凹部59aに嵌合されるように形成されている。
【0079】
すなわち、スナップリング110は、
図10、
図16ないし
図19に示すように、フィルタ部材60がスリーブ70の底側端部70aに嵌め込まれ、流体制御弁V(スリーブ70、スプール80、付勢バネ90、チェック弁100)が締結ボルト50の内周面51に嵌め込まれてスリーブ70の底側端部70aがフィルタ部材60を軸線S方向に押圧した状態で、締結ボルト50の環状溝部59bに嵌め込まれることで、締結ボルト50に収容されたスリーブ70の開口側端部70bを受けると共にスプール80を離脱可能に受け、又、締結ボルト50内に形成された排出通路(第1溝通路71d、第2溝通路71e、連通凹部71h)を流れる作動油を排出し得るようになっている。
【0080】
このように、スリーブ70は、締結ボルト50内で軸線S方向において、底側端部70aが板バネ片63を含むフィルタ部材60を挟んで環状受け部53と対向し、開口側端部70bが締結ボルト50の環状溝部59bに嵌め込まれたスナップリング110に当接して、軸線S方向に板バネ片63の付勢力が及ぼされた状態で固定される。
【0081】
以上述べたように、上記流体制御弁ユニットUによれば、流体制御弁Vと、筒状の通路部材としての締結ボルト50と、スリーブ70の底側端部70aと締結ボルト50の環状受け部53の間に配置されたフィルタ部材60と、締結ボルト50に収容されたスリーブ70の開口側端部70bを受けるストッパ部材を備え、フィルタ部材60が、環状平板部61,環状平板部61に囲まれたフィルタ部62,及び環状平板部61から延出して軸線S方向に付勢力を及ぼす板バネ片63を含むように金属板バネ材により一体的に形成されている。
これによれば、一つの部品であるフィルタ部材60を締結ボルト50の環状受け部53とスリーブ70の底側端部70aの間に組み付けるだけで、バネ付勢力を及ぼす保持機能、フィルタ機能、及びシール機能を得ることができ、構造の簡素化、部品点数の削減、組付け作業の簡素化、異物の侵入防止、機能上の信頼性向上等を達成することができる。
特に、フィルタ部材60が、単一の金属板バネ材により形成されているため、複数の部材を結合して形成されたものに比べて、低コスト化を達成でき、耐久性を向上させることができる。
【0082】
また、通路部材としての締結ボルト50が、軸線S方向において開口側端部70bに隣接し内周面72よりも凹む環状溝部72aを有し、ストッパ部材として、スプール80を離脱可能に受けるべく環状溝部72aに嵌め込まれたスナップリング110が採用されている。
これによれば、締結ボルト50内において軸線S方向におけるスリーブ70のガタツキを防止することができる。それ故に、締結ボルト50の通路(遅角通路55及び進角通路56)に対してスリーブ70に設けられた連通孔(遅角ポート75、進角ポート76)を所定位置に位置決めすることができる。
また、スプール80を予め設定された移動量だけ移動させることで開閉動作を確実に行うことができ、スプール80の制御性が向上する。
さらに、スナップリング110が、締結ボルト50の環状溝部59bに嵌め込まれているため、軸線S方向における耐衝撃性が高まり、スリーブ70を所定位置に確実に位置決めして固定することができる。
【0083】
また、フィルタ部材60は、環状平板部61が環状受け部53に当接し、板バネ片63が底側端部70aに当接するべく配置されることにより、環状平板部61を環状受け部53に密着させることができる。これにより、開口部52から流れ込む作動油内の異物が、隙間からフィルタ部材60の下流側に流れ込まないようにシール性能を確保することができる。
【0084】
また、フィルタ部材60のフィルタ部62は、エッチング処理により形成された複数の微小孔62aを含むように形成され、板バネ片63は、環状平板部61の外縁から延出して屈曲するように形成されている。
これによれば、金属板バネ材を打ち抜いた未加工材Bmに対して、エッチング処理を適宜調整することで所望する孔径の微小孔62aを形成することができ、又、曲げ加工を施すだけで板バネ片63を形成することができ、全体としてフィルタ部材60を容易に製造することができる。
【0085】
また、スリーブ70が、底側端部70aの領域において、フィルタ部材60を通過した流体を流入口(供給ポート74)に供給するべく外壁71に形成された肉抜き通路71aと、フィルタ部材60の板バネ片63を当接させる当接部を含み、肉抜き通路は、軸線S周りに互いに離隔して形成された第1肉抜き通路及び第2肉抜き通路としての二つの肉抜き通路71a,71aを含み、当接部は、第1肉抜き通路(肉抜き通路71a)と第2肉抜き通路(肉抜き通路71a)の間に位置する幅狭当接部70a4と、肉抜き通路から外れた幅広当接部70a5を含み、板バネ片63は、環状平板部61の周方向に等間隔で配置された、第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、及び第3板バネ片63cを含むように形成されている。
これによれば、作動油の流れる通路を十分に確保しつつも、構造の簡素化を達成しつつ容易にバネ力を発生させることができ、環状平板部61の周方向における全域を環状受け部53に密着させることができる。
【0086】
また、流体制御弁Vが、流入口(供給ポート74)からの作動油の流入を許容するべくスリーブ70の内側に配置されたチェック弁100を含むため、スリーブ70の外側にチェック弁を備える従来例のような構成に比べて、小型化、集約化等を達成できる。
また、スナップリング110が、通路部材(締結ボルト50)内に形成された排出通路(第1溝通路71d、第2溝通路71e、連通凹部71h)を流れる作動油を排出し得る排出口(切欠き部110a、円孔112a,112b)を有するため、バルブタイミング変更装置Mにおいてバルブタイミングを変更する際に、余分な作動油を留まることなくスムーズに排出させることができ、所望の変更動作を得ることができる。
さらに、スナップリング110が、軸線Sに垂直な方向に拡がる平板状に形成されているため、有底筒状のようなものに比べて軸線S方向の薄型化を達成でき、流体制御弁ユニットUとしての小型化に寄与する。
【0087】
次に、上記流体制御弁ユニットUを搭載したバルブタイミング変更装置Mの動作について説明する。
内燃エンジンが停止した状態においては、
図21に示すように、ベーンロータ20は、ロック機構40によりハウジングロータ10に対して中間位置にロックされている。
これにより、ベーンロータ20のバタツキ等を防止しつつ、内燃エンジンを円滑に始動させることができる。また、内燃エンジンの停止状態において、遅角室RC内には、隙間等から漏れ出る分を除き、休止位置での第1弁部82の開弁(第1溝通路71d及び貫通路71d
1と遅角ポート75の連通が遮断された状態)及びチェック弁100の逆流防止機能により基本的に作動油が充填されている。
【0088】
続いて、内燃エンジンの始動により、通路1b,1c、開口部52、肉抜き部70a6、肉抜き通路71aにより画定される隙間通路Cpを通して供給された作動油が、チェック弁100を開弁させて供給ポート74から流体制御弁Vの内部に流れ込み、遅角ポート75から遅角室RC又は進角ポート76から進角室ACに供給される。
その後、貫通路54及び溝通路27を通してロック機構40に導かれる作動油の油圧が解除可能油圧になると、ロックピン41がロック穴11dから離脱してロックが解除される。そして、内燃エンジンの始動後は、電磁アクチュエータ7の駆動シャフト7aを介して流体制御弁Vのスプール80の位置が適宜制御されて、ベーンロータ20及びカムシャフト1が遅角側へ又は進角側へ或は所定の角度位置に保持されるように位相制御が行われる。
【0089】
先ず、内燃エンジンが例えば低速運転状態にあるときの動作について説明する。この低速運転状態においては、カムシャフト1が及ぼすトルク変動(ΔT、-ΔT)に追従して、遅角室RC及び進角室AC内の作動油が往復動し得る状態である。
例えば、遅角モードの場合は、
図24及び
図25に示すように、スプール80は付勢バネ90の付勢力により休止位置に位置付けられる。
遅角モードにおいて、第1弁部82は、供給ポート74と遅角ポート75の間の通路を開放した開弁状態に設定され、第2弁部83は、供給ポート74と進角ポート76の間の通路を閉塞した閉弁状態に、具体的には、第2固定部83aの第2ランド83a
1が進角ポート76を開放し、第2可動部83bの第2蓋部83b
2が第2内部通路83a
3を閉塞した状態に設定される。また、排出通路(第1溝通路71d及び貫通路71d
2)は、進角ポート76と連通して進角室AC内の作動油を排出し得る状態にある。
【0090】
この状態において、カムシャフト1が順回転方向CRと逆回りのトルク(-ΔT)を受けると、進角室AC内の作動油の油圧が上昇する。したがって、
図24に示すように、進角室AC内の作動油は、圧縮バネ84の付勢力に抗しつつ第2可動部83bの第2蓋部83b
2を第2固定部83aから離脱させる。これにより、第2内部通路83a
3が開放され、進角ポート76から遅角ポート75へ作動油が積極的に流れ込む。このとき、遅角ポート75へ向かう作動油よりも少ない量の作動油が、排出通路(貫通路71d
2及び第1溝通路71d、連通凹部71h)を通り、スナップリング110の排出口(切欠き部110a、円孔112a)から排出される。また、付勢バネ90が配置された領域に漏れ出た作動油は、適宜、排出通路(貫通路71e
1及び第2溝通路71e、連通凹部71h)を通り、スナップリング110の排出口(切欠き部110a、円孔112b)から排出される。
【0091】
一方、カムシャフト1が順回りのトルク(ΔT)を受けると、遅角室RC内の作動油の油圧が上昇する。ただし、
図25に示すように、遅角室RC内の作動油は、第2可動部83bを第2固定部83aに当接させる向きに作用するため、第2内部通路83a
3は閉塞された状態にあり、遅角ポート75から進角ポート76への作動油の流れは生じない。
【0092】
上記逆回りのトルク(-ΔT)と順回りのトルク(ΔT)とを連続的に受けることにより、進角室AC内の作動油が遅角室RC内に移動して、ベーンロータ20は、
図22に示す最遅角位置に位置付けられる。この過程で、作動油を補充するべく、チェック弁100は適宜開弁して、供給ポート74からの作動油の流入を許容する。
【0093】
次に、進角モードの場合は、
図26及び
図27に示すように、スプール80は、付勢バネ90の付勢力に抗して、電磁アクチュエータ7の駆動シャフト7aにより、軸線S方向の最奥位置に位置付けられる。
進角モードにおいて、第2弁部83は、供給ポート74と進角ポート76の間の通路を開放した開弁状態に設定され、第1弁部82は、供給ポート74と遅角ポート75の間の通路を閉塞した閉弁状態、具体的には、第1固定部82aの第1ランド82a
1が遅角ポート75を開放し、第1可動部82bの第1蓋部82b
2が第1内部通路82a
3を閉塞した状態に設定される。また、排出通路(溝通路71d及び貫通路71d
1)は、遅角ポート75と連通して遅角室RC内の作動油を排出し得る状態にある。
【0094】
この状態において、カムシャフト1が順回転方向CRと逆回りのトルク(-ΔT)を受けると、進角室AC内の作動油の油圧が上昇する。ただし、
図26に示すように、進角室AC内の作動油は、第1可動部82bを第1固定部82aに当接させる向きに作用するため、第1内部通路82a
3は閉塞された状態にあり、進角ポート76から遅角ポート75への作動油の流れは生じない。
【0095】
一方、カムシャフト1が順回りのトルク(ΔT)を受けると、遅角室RC内の作動油の油圧が上昇する。したがって、
図27に示すように、遅角室RC内の作動油は、圧縮バネ84の付勢力に抗しつつ第1可動部82bの第1蓋部82b
2を第1固定部82aから離脱させる。これにより、第1内部通路82a
3が開放され、遅角ポート75から進角ポート76へ作動油が積極的に流れ込む。このとき、進角ポート76へ向かう作動油よりも少ない量の作動油が、排出通路(貫通路71d
1及び第1溝通路71d、連通凹部71h)を通り、スナップリング110の排出口(切欠き部110a、円孔112a)から排出される。また、付勢バネ90が配置された領域に漏れ出た作動油は、適宜、排出通路(貫通路71e
1及び第2溝通路71e、連通凹部71h)を通り、スナップリング110の排出口(切欠き部110a、円孔112b)から排出される。
【0096】
上記逆回りのトルク(-ΔT)と順回りのトルク(ΔT)とを連続的に受けることにより、遅角室RC内の作動油が進角室AC内に移動して、ベーンロータ20は、
図23に示す最進角位置に位置付けられる。この過程で、作動油を補充するべく、チェック弁100は適宜開弁して、供給ポート74からの作動油の流入を許容する。
【0097】
すなわち、流体制御弁Vのスプール80は、第1弁部82が開弁すると共に第2弁部83が閉弁する遅角モードに位置付けられた状態において、カムシャフト1が逆回りのトルク(-ΔT)を受けるとき第2弁部83が開弁して進角ポート76から遅角ポート75への作動油の流れを許容し、かつ、第1弁部82が閉弁すると共に第2弁部83が開弁する進角モードに位置付けられた状態において、カムシャフト1が順回りのトルク(ΔT)を受けるとき第1弁部82が開弁して遅角ポート75から進角ポート76への作動油の流れを許容すべく形成されている。
【0098】
上記一連の動作は、内燃エンジンが例えば低速運転状態にあるときの動作であるが、内燃エンジンが例えば高速運転状態にあるときは、カムシャフト1が及ぼすトルク変動(ΔT、-ΔT)が小さくて、遅角室RC及び進角室AC内の作動油の往復移動が生じず、トルク変動による第1弁部82及び第2弁部83の開閉動作が行われ難くなる。
その結果、チェック弁100の開弁により、供給ポート74から供給される作動油が、積極的に遅角室RC又は進角室ACに流入し、一方で、進角室AC又は遅角室RC内の作動油が排出通路(貫通路71d2又は貫通路71d1及び第1溝通路71d)を通り、スナップリング110の排出口(切欠き部110a、円孔112a)から積極的に外部に排出される。また、付勢バネ90が配置された領域に漏れ出た作動油は、適宜、排出通路(貫通路71e1及び第2溝通路71e、連通凹部71h)を通り、スナップリング110の排出口(切欠き部110a、円孔112b)から排出される。
【0099】
次に、中立保持モードの場合、
図28及び
図29に示すように、スプール80は、付勢バネ90の付勢力に抗して、電磁アクチュエータ7の駆動シャフト7aにより、軸線S方向の中間位置に位置付けられる。
中立保持モードにおいて、第1弁部82は、供給ポート74と遅角ポート75の間の通路を閉塞した閉弁状態に設定され、第2弁部83は、供給ポート74と進角ポート76の間の通路を閉塞した閉弁状態に設定される。
具体的には、第1弁部82は、第1固定部82aの第1ランド82a
1が遅角ポート75を閉塞し、第1可動部82bの第1蓋部81b
2が第1内部通路82a
3を閉塞した状態に設定される。また、第2弁部83は、第2固定部83aの第2ランド83a
1が進角ポート76を閉塞し、第2可動部83bの第2蓋部83b
2が第2内部通路83a
3を閉塞した状態に設定される。また、排出通路(溝通路71d及び貫通路71d
1)と遅角ポート75との連通は遮断され、排出通路(溝通路71d及び貫通路71d
2)と進角ポート76との連通は遮断されている。
【0100】
この状態において、カムシャフト1が順回転方向CRと逆回りのトルク(-ΔT)を受けると、進角室AC内の作動油の油圧が上昇する。ただし、
図28に示すように、進角ポート76は、第2弁部83の第2ランド83a
1により閉塞されているため、進角室AC内の作動油は、進角ポート76から遅角ポート75へ移動できず、進角室AC内に留まる。
【0101】
一方、カムシャフト1が順回りのトルク(ΔT)を受けると、遅角室RC内の作動油の油圧が上昇する。ただし、
図29に示すように、遅角ポート75は、第1弁部82の第1ランド82a
1により閉塞されているため、遅角室RC内の作動油は、遅角ポート75から進角ポート76へ移動できず、遅角室RC内に留まる。
【0102】
上記のように、中立保持モードにおいては、遅角室RCと進角室ACとの間での作動油の往復が遮断されると共に排出通路(貫通路71d1,71d2)も閉塞されるため、ベーンロータ20は、ハウジングロータ10に対して、最遅角位置と最進角位置の間の所望の中間位置に保持される。
すなわち、流体制御弁Vにおいて、スプール80は、第1弁部82が遅角ポート75を閉塞すると共に第2弁部83が進角ポート76を閉塞する中立保持モードに位置付けられた状態において、遅角室RCと進角室ACとの間での作動油の往復を遮断するべく形成されている。
【0103】
以上述べたように、流体制御弁Vは、カムシャフト1が受ける変動トルクにより遅角室RCと進角室ACとの間で作動油を往復させると共に供給された作動油の一部を排出し得るトルク駆動及び油圧駆動型の流体制御弁であるため、十分な変動トルクが得られる運転状態(低速運転時等)においては作動油を遅角室RC及び進角室ACの間で往復動させ、十分な変動トルクが得られ難い運転状態(例えば高速運転時)においては作動油を積極的に排出させてバルブの開閉タイミングを所望するタイミングに変更することができる。
【0104】
図30は、流体制御弁ユニットUに含まれるフィルタ部材の他の実施形態を示すものであり、前述のフィルタ部材と同一の構成ついては同一符号を付して説明を省略する。
この実施形態に係るフィルタ部材160は、
図30に示すように、環状平板部61、フィルタ部62、板バネ片63(第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、第3板バネ片63c)、第1板バネ片63aに一体的に形成された一対の挟持片63a
1を備えている。
【0105】
そして、フィルタ部材160は、スリーブ70の底側端部70aに組み付けられた状態で、第1板バネ片63aが幅狭当接部70a4に当接し、第2板バネ片63b及び第3板バネ片63cが幅広当接部70a5に当接するようになっている。
この組付け状態において、一対の挟持片63a1は、幅狭当接部70a4を両側から挟み込むように組み込まれるため、フィルタ部材160を軸線S周りの所定の角度位置に位置決めすることができる。これにより、第1板バネ片63aを、幅狭当接部70a4から逸脱することなく、幅狭当接部70a4に確実に当接するように組み付けることができる。
【0106】
上記実施形態においては、フィルタ部材60,160が、板バネ片63として、三つの板バネ片(第1板バネ片63a、第2板バネ片63b、及び第3板バネ片63c)を含む構成を示したが、これに限定されるものではなく、その他の個数の板バネ片を採用してもよい。
【0107】
上記実施形態においては、フィルタ部材60,160は、環状平板部61が通路部材(締結ボルト50)の環状受け部53に当接し、板バネ片63がスリーブ70の底側端部70a(幅狭当接部70a4、幅広当接部70a5)に当接する構成を示したが、シール機能を確保できる形態であれば、逆に、板バネ片63が通路部材(締結ボルト50)の環状受け部53に当接し、環状平板部61がスリーブ70の底側端部70a(幅狭当接部70a4、幅広当接部70a5)に当接する構成を採用してもよい。
この例としては、例えば、フィルタ部材には、環状平板部61の外周領域に円筒部等のシール機能をなす部分を一体的に設け、通路部材には、円筒部が密接する内周壁を環状受け部に連続して設ける構成を採用することができる。
【0108】
上記実施形態においては、ロック機構40が中間位置にロックする場合を示したが、これに限定されるものではなく、最遅角位置又はその他の位置であってもよい。
上記実施形態においては、ベーンロータ20を回転付勢する回転付勢バネとして、進角方向に付勢力を及ぼす回転付勢バネ30を示したが、これに限定されるものではなく、逆に遅角方向に付勢力を及ぼす回転付勢バネを採用してもよい。
上記実施形態においては、流体制御弁としてトルク駆動及び油圧駆動型の流体制御弁Vを示したが、これに限定されるものではなく、作動油の供給及び排出を行うものであればその他の形態をなす流体制御弁を採用してもよい。
【0109】
上記実施形態においては、流体制御弁ユニットとして、流体制御弁Vが通路部材としての締結ボルト50の内側に配置された流体制御弁ユニットUを示したが、これに限定されるものではなく、流体制御弁Vが他の通路部材やエンジンのシリンダブロックに配置された構成においても、本発明を適用することができる。
上記実施形態においては、流体制御弁ユニットが制御する流体として、作動油を取り扱う場合を示したが、これに限定されるものではなく、その他の流体の流れを制御する際に適用されてもよい。
【0110】
以上述べたように、本発明の流体制御弁ユニットは、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化、組付け作業の簡素化を達成でき、異物の侵入を防止し、スリーブを所定位置に保持して機能上の信頼性を確保できるため、自動車等に搭載された内燃式のエンジンに適用できるのは勿論のこと、二輪車等に搭載された内燃エンジン、その他の流体の流れを制御する機器あるいは装置においても有用である。
【符号の説明】
【0111】
1 カムシャフト
M バルブタイミング変更装置
AC 進角室
RC 遅角室
S 軸線
10 ハウジングロータ
20 ベーンロータ
U 流体制御弁ユニット
50 締結ボルト(通路部材、流体制御弁ユニット)
51 内周面
52 開口部
53 環状受け部
55 遅角通路(流体の通路)
56 進角通路(流体の通路)
59b 環状溝部
V 流体制御弁(流体制御弁ユニット)
60,160 フィルタ部材(流体制御弁ユニット)
61 環状平板部
62 フィルタ部
62a 微小孔
63 板バネ片
63a 第1板バネ片
63a1 一対の挟持片
63b 第2板バネ片
63c 第3板バネ片
64 湾曲切欠き部
70 スリーブ(流体制御弁)
70a 底側端部
70a1 端面
70a2,70a3 内壁部
70a4 幅狭当接部
70a5 幅広当接部
70a6 肉抜き部
70b 開口側端部
71 外壁
71a,71a 二つの肉抜き通路(第1肉抜き通路、第2肉抜き通路)
71d 第1溝通路(排出通路)
71d1,71d2 貫通路(排出通路)
71e 第2溝通路(排出通路)
71e1 貫通路(排出通路)
71h 連通凹部(排出通路)
72 内周面
73 開口部
74 供給ポート(流入口)
75 遅角ポート(第1連通口)
76 進角ポート(第2連通口)
77 ストッパ壁
78 バネ受け部
79 位置決め凸部
80 スプール(流体制御弁)
81 ロッド
81a 端部
82 第1弁部
82a 第1固定部
82a1 第1ランド
82a3 第1内部通路
82b 第1可動部
82b2 第1蓋部
83 第2弁部
83a 第2固定部
83a1 第2ランド
83a3 第2内部通路
83b 第2可動部
83b2 第2蓋部
84 圧縮バネ
90 付勢バネ(流体制御弁)
100 チェック弁(流体制御弁)
110 スナップリング(ストッパ部材、流体制御弁ユニット)