(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170085
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20241129BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20241129BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H02K11/33
F04C15/00 L
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087050
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】安ヶ平 圭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 塁
【テーマコード(参考)】
3H044
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC14
3H044DD18
5H605AA11
5H605CC01
5H605EA10
5H605GG06
5H611TT01
(57)【要約】
【課題】構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化等を図りつつ、アース経路を短くでき、制御ユニットに対するノイズの発生等を抑制できる電動装置を提供する。
【解決手段】電気的に作動する電動部50、電動部を収容する導電性のハウジング本体10、ハウジング本体に収容された電動部を覆うと共にその一部を保持するべくハウジング本体に接合された非導電性のホルダカバー20、ホルダカバーの外側に配置されて電動部を駆動制御する制御ユニット76を搭載した回路基板70、電動部の周りに帯電した静電気を除去するアース経路を備え、アース経路は、回路基板をホルダカバーに締結すると共にハウジング本体に導通する導電性の締結ネジ80a、回路基板に設けられて締結ネジと導通する導電パターン72a、ホルダカバーに設けられて導電パターン72aと導通するアース端子29dを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に作動する電動部と、
前記電動部を収容する導電性のハウジング本体と、
前記ハウジング本体に収容された前記電動部を覆うと共にその一部を保持するべく前記ハウジング本体に接合された非導電性のホルダカバーと、
前記ホルダカバーの外側に配置されて前記電動部を駆動制御する制御ユニットを搭載した回路基板と、
前記電動部の周りに帯電した静電気を除去するアース経路と、を備え、
前記アース経路は、前記回路基板を前記ホルダカバーに締結すると共に前記ハウジング本体に導通する導電性の締結ネジと、前記回路基板に設けられて前記締結ネジと導通する導電パターンと、前記ホルダカバーに設けられて前記導電パターンと導通するアース端子を含む、
ことを特徴とする電動装置。
【請求項2】
前記締結ネジは、導電性のコイルバネを介して、前記ハウジング本体と電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動装置。
【請求項3】
前記ハウジング本体は、前記コイルバネの一端部を着座させる凹部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の電動装置。
【請求項4】
前記締結ネジに螺合される導電性のナットを含み、
前記コイルバネは、前記ハウジング本体と前記ナットの間において圧縮した状態で配置されている、
ことを特徴とする2に記載の電動装置。
【請求項5】
前記締結ネジに螺合される導電性のナットを含み、
前記コイルバネは、前記ハウジング本体の前記凹部と前記ナットの間において圧縮した状態で配置されている、
ことを特徴とする3に記載の電動装置。
【請求項6】
前記ホルダカバーは、前記ナットを回転不能に収容するナット収容凹部を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の電動装置。
【請求項7】
前記回路基板は、複数の締結ネジにより前記ホルダカバーに締結されており、
前記アース経路を形成する前記締結ネジは、前記複数の締結ネジのうち前記アース端子に最も近い位置に配置されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動装置。
【請求項8】
前記締結ネジは、前記導電パターンと導通するスルーホール又は前記スルーホールの端部に形成された環状のランドを介して、前記導電パターンと電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動装置。
【請求項9】
前記ホルダカバーには、前記回路基板を覆うべく外側カバーが接合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動装置。
【請求項10】
前記外側カバーは、導電性の材料により形成されると共に導電性の締結ボルトにより前記ハウジング本体に締結されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の電動装置。
【請求項11】
前記電動部は、回転駆動力を生じるモータであり、
前記モータの駆動軸により駆動される被駆動体を含み、
前記ハウジング本体は、前記被駆動体を収容する被駆動体収容凹部を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし10いずれか一つに記載の電動装置。
【請求項12】
前記ハウジング本体には、前記被駆動体収容凹部を覆うべく、導電性の被駆動体カバーが接合されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の電動装置。
【請求項13】
前記被駆動体は、流体を流動させるポンプユニットであり、
前記被駆動体収容凹部は、ポンプ収容凹部である、
ことを特徴とする請求項11に記載の電動装置。
【請求項14】
前記ポンプユニットは、前記駆動軸により回転させられるインナーロータ及び前記インナーロータに連動するアウターロータを含むトロコイドポンプを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の電動装置。
【請求項15】
前記ハウジング本体には、前記ポンプ収容凹部を覆うべく、導電性のポンプカバーが接合されている、
ことを特徴とする請求項13に記載の電動装置。
【請求項16】
前記ポンプカバーは、流体を吸入する吸入通路と、流体を吐出する吐出通路を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の電動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の電動部や回路基板を収容するハウジングに帯電した静電気を除去するアース経路を備えた電動装置に関し、特に電動ポンプ等においてハウジング等に帯電した静電気を除去するアース経路を備えた電動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動装置としては、導電性の金属材料により形成されたハウジング本体としてのポンプ本体と、樹脂成型されてロータ及びステータを含みポンプ本体に接合されたステータモジュールと、ステータモジュールをポンプ本体に締結する締結ボルトと、ステータモジュールに接合されたカバー体と、締結ボルトとカバー体の間に介在するコイルスプリングと、ステータモジュールとカバー体の間に収容された回路基板と、カバー体と回路基板上の導電パターンとの間に介在する導電性部材と、回路基板上の導電パターンに接続されたコネクタ端子を備え、ポンプ本体、締結ボルト、コイルスプリング、カバー体、導電性部材、回路基板の導電パターン、及びコネクタ端子により、ポンプ本体等に帯電した静電気を除去するアース経路(除電経路)を構成したポンプ装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
従来の電動装置においては、アース経路が、ハウジング本体から締結ボルト及びコイルスプリングに通じ、カバー体を経由し、導電性部材を介して回路基板上の導電パターンからコネクタ端子に通じる経路である。
したがって、アース経路を構成する部品数が多く、構造が複雑であり、又、アース経路が非常に長くなる。その結果、回路基板上の電子部品等を含む制御ユニットに対して、ノイズ発生の要因となる虞があるため、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-136975号公報
【特許文献2】特開2017-204954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化等を図りつつ、アース経路を短くでき、制御ユニットに対するノイズの発生等を抑制できる電動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動装置は、電気的に作動する電動部と、電動部を収容する導電性のハウジング本体と、ハウジング本体に収容された電動部を覆うと共にその一部を保持するべくハウジング本体に接合された非導電性のホルダカバーと、ホルダカバーの外側に配置されて電動部を駆動制御する制御ユニットを搭載した回路基板と、電動部の周りに帯電した静電気を除去するアース経路とを備え、アース経路は、回路基板をホルダカバーに締結すると共にハウジング本体に導通する導電性の締結ネジと、回路基板に設けられて締結ネジと導通する導電パターンと、ホルダカバーに設けられて導電パターンと導通するアース端子を含む、構成となっている。
【0007】
上記電動装置において、締結ネジは、導電性のコイルバネを介して、ハウジング本体と電気的に接続されている、構成を採用してもよい。
【0008】
上記電動装置において、ハウジング本体は、コイルバネの一端部を着座させる凹部を含む、構成を採用してもよい。
【0009】
上記電動装置において、締結ネジに螺合される導電性のナットを含み、コイルバネは、ハウジング本体とナットの間において圧縮した状態で配置されている、構成を採用してもよい。
【0010】
上記電動装置において、締結ネジに螺合される導電性のナットを含み、ハウジング本体は、コイルバネの一端部を着座させる凹部を含み、コイルバネは、ハウジング本体の凹部とナットの間において圧縮した状態で配置されている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記電動装置において、ホルダカバーは、ナットを回転不能に収容するナット収容凹部を含む、構成を採用してもよい。
【0012】
上記電動装置において、回路基板は、複数の締結ネジによりホルダカバーに締結されており、アース経路を形成する締結ネジは、複数の締結ネジのうちアース端子に最も近い位置に配置されたものである、構成を採用してもよい。
【0013】
上記電動装置において、アース経路を形成する締結ネジは、導電パターンと導通するスルーホール又はスルーホールの端部に形成された環状のランドを介して、導電パターンと電気的に接続されている、構成を採用してもよい。
【0014】
上記電動装置において、ホルダカバーには、回路基板を覆うべく、外側カバーが接合されている、構成を採用してもよい。
【0015】
上記電動装置において、外側カバーは、導電性の材料により形成されると共に導電性の締結ボルトによりハウジング本体に締結されている、構成を採用してもよい。
【0016】
上記電動装置において、電動部は、回転駆動力を生じるモータであり、モータの駆動軸により駆動される被駆動体を含み、ハウジング本体は、被駆動体を収容する被駆動体収容凹部を含む、構成を採用してもよい。
【0017】
上記電動装置において、ハウジング本体には、被駆動体収容凹部を覆うべく、導電性の被駆動体カバーが接合されている、構成を採用してもよい。
【0018】
上記電動装置において、被駆動体は、流体を流動させるポンプユニットであり、被駆動体収容凹部は、ポンプ収容凹部である、構成を採用してもよい。
【0019】
上記電動装置において、ポンプユニットは、駆動軸により回転させられるインナーロータ及びインナーロータに連動するアウターロータを含むトロコイドポンプを含む、構成を採用してもよい。
【0020】
上記電動装置において、ハウジング本体には、ポンプ収容凹部を覆うべく、導電性のポンプカバーが接合されている、構成を採用してもよい。
【0021】
上記電動装置において、ポンプカバーは、流体を吸入する吸入通路と、流体を吐出する吐出通路を含む、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成をなす電動装置によれば、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化等を達成しつつ、アース経路を短くでき、制御ユニットに対するノイズの発生等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動装置を示す外観斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る電動装置が、適用対象物に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る電動装置を分解してハウジング本体側から視た分解斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る電動装置を分解して外側カバー側から視た分解斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る電動装置において、外側カバー側から視た平面図である。
【
図6】一実施形態に係る電動装置において、外側カバーを取り外した状態を示す平面図である。
【
図7】一実施形態に係る電動装置において、回路基板を締結する一つの締結ネジを通ると共に駆動軸の軸線に平行な面で切断した断面図である。
【
図8】一実施形態に係る電動装置において、外側カバーを締結する一つの締結ボルトを通ると共に駆動軸の軸線に平行な面で切断した断面図である。
【
図9】一実施形態に係る電動装置において、駆動軸の軸線を通る面で切断した断面図である。
【
図10】一実施形態に係る電動装置に含まれるハウジング本体を示す外観斜視図である。
【
図11】一実施形態に係る電動装置に含まれるハウジング本体を駆動軸の軸線を通る面で切断した断面図である。
【
図12】一実施形態に係る電動装置に含まれるホルダカバーを外側から視た外観斜視図である。
【
図13】一実施形態に係る電動装置に含まれるホルダカバーを内側から視た外観斜視図である。
【
図14】一実施形態に係る電動装置において、締結ネジと、回路基板上の導体パターンと、アース端子の接続関係を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
一実施形態に係る電動装置Mは、流体としての非導電性の作動油を送出するビルトイン式の電動ポンプ装置であり、
図1ないし
図3に示すように、ハウジング本体10、ホルダカバー20、外側カバー30、被駆動体カバーとしてのポンプカバー40、電動部としてのモータ50、被駆動体としてのポンプユニット60、回路基板70、六つの締結ネジ80及びナット81、コイルバネ90、四つの締結ボルト100、三つの締結ボルト110を備えている。
ここでは、ハウジング本体10、ホルダカバー20、外側カバー30、ポンプカバー40より、電動装置Mの全体としてのハウジングが構成されている。
【0025】
また、電動装置Mが適用される適用対象物1は、
図2に示すように、電動装置Mの軸線Sに垂直な平面をなす接合部1a、嵌合凹部1b、作動油の貯留部1c、作動油を供給先に導く導入通路1d、取付けボルトを捩じ込む四つのネジ穴(不図示)を備えている。
適用対象物1は、例えば、車両の変速装置の冷却及び潤滑系、エンジンの冷却及び潤滑系、作動油の循環を必要とするその他の装置である。
【0026】
ハウジング本体10は、導電性の材料、例えば、鋼、鋳鉄、焼結鋼、アルミニウム合金等の金属材料を用いて形成されており、
図3、
図4、
図10、
図11に示すように、被駆動体収容凹部としてのポンプ収容凹部11、接合面12、モータ収容凹部13、仕切り壁部14、嵌合凹部15、フランジ部16、貫通孔17、四つのボス部18を備えている。
【0027】
ポンプ収容凹部11は、ポンプユニット60を回転可能に収容する領域であり、
図3及び
図11に示すように、内周面11a、底面11bを備えている。
内周面11aは、軸線Sから平行に偏倚した軸線を中心とする円筒面をなし、ポンプユニット60の一部をなすアウターロータ62の外周面を摺動自在に支持する。
底面11bは、軸線S方向において、ポンプユニット60(インナーロータ61及びアウターロータ62)の内側の端面を摺動自在に受ける。
接合面12は、ポンプ収容凹部11を覆うポンプカバー40を接合するべく、軸線Sに垂直な環状の平面として形成され、ポンプカバー40を締結する締結ボルト110をねじ込む三つのネジ穴12aを備えている。
【0028】
モータ収容凹部13は、モータ50を収容する領域であり、
図10及び
図11に示すように、内周面13a、内周面13b、内周面13cを備えている。
内周面13aは、モータ50のステータ51を嵌合して固定するべく、軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。
内周面13bは、モータ50の駆動軸53を回動自在に支持する軸受B
1を嵌合して固定するべく、軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。
内周面13cは、駆動軸53の周りをシールするリップ型シール部材Srを嵌合して固定するべく、軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。
【0029】
仕切り壁部14は、ポンプ収容凹部11とモータ収容凹部13とを仕切るように形成され、軸線Sを中心とする挿通孔14aを備えている。
挿通孔14aは、モータ50の駆動軸53を回動自在に挿通させるべく、軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。
【0030】
嵌合凹部15は、モータ収容凹部13の外端領域において、軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。そして、嵌合凹部15には、ホルダカバー20の嵌合凸部22が嵌合される。すなわち、ハウジング本体10の嵌合凹部15に、ホルダカバー20の嵌合凸部22が嵌合されることにより、ホルダカバー20に形成された軸受円筒部23の中心が、ハウジング本体10の軸線Sと同軸上に位置決めされる。
【0031】
フランジ部16は、
図3、
図4、
図10、
図11に示すように、モータ収容凹部13を画定する壁部13dから軸線Sに垂直な方向に平板状に張り出して形成されている。そして、フランジ部16は、接合面16a、接合面16b、四つのネジ穴16c、一つの凹部16d、八つの肉抜き部16eを備えている。
【0032】
接合面16aは、適用対象物1の接合部1aに接合されるべく、軸線Sに垂直な平面として形成されている。また、接合面16aには、接合部1aとの間に介在させられるシール部材SR3が嵌め込まれる環状溝16a1が形成されている。尚、シール部材SR3はゴム材料により成形されたOリングである。
接合面16bは、シール部材SR1を挟んで、ホルダカバー20が接合されるべく、軸線Sに垂直な平面として形成されている。
【0033】
ネジ穴16cは、ハウジング本体10に対して、ホルダカバー20を挟み込んだ状態で外側カバー30を締結する締結ボルト100を捩じ込むものである。
凹部16dは、円筒状の穴として形成され、六つの締結ネジ80のうちの一つの締結ネジ80aの先端側を受け入れると共にコイルバネ90の一端部を受け入れて着座させ、コイルバネ90が軸線Sに垂直な方向に位置ずれしないように規制する。
八つの肉抜き部16eは、接合面16bから軸線S方向に所定の深さに肉抜きされ、五つの肉抜き部16eは、組付け状態において五つの締結ネジ80の先端側を非接触にて受け入れる。
【0034】
貫通孔17は、ホルダカバー20に形成された筒状部26bが隙間をおいて途中まで挿入されるべく、フランジ部16において軸線Sに平行に伸長する円筒孔として形成されている。また、貫通孔17の周りには、接合面16bから軸線S方向に凹んだ肉抜き部17aが形成されている。そして、組付け状態において、回路基板70が配置された内部空間が、筒状部26b、貫通孔17、及び肉抜き部17aを経由して、外部に連通する通気孔として機能するようになっている。
ボス部18は、ハウジング本体10を適用対象物1の接合部1aに取り付ける取付けボルト(不図示)を通すべく円孔を備えている。
【0035】
ホルダカバー20は、ハウジング本体10のモータ収容凹部13に収容されたモータ50を覆うと共にその一部(軸受B
2を介して駆動軸53)を保持するべくハウジング本体10に接合されるものであり、非導電性の材料、例えば樹脂材料を用いて形成されている。
ホルダカバー20は、
図3、
図4、
図12、
図13に示すように、接合面21、嵌合凸部22、軸受円筒部23、開口部24、接合面25、通気部26、六つのボス部27、四つの円孔28、コネクタ部29を備えている。
【0036】
接合面21は、シール部材SR1を挟んでハウジング本体10の接合面16bに接合されるべく、軸線Sに垂直な平面として形成されている。また、接合面21には、シール部材SR1が収容される環状溝21a、環状溝21aよりも内側の領域においてナット81を回転不能に収容するナット収容凹部21bが形成されている。
尚、シール部材SR1は、ゴム材料により形成された環状の成型ゴム又は接合時に注入される液体シール剤である。
ナット収容凹部21bは、六角形の穴として形成され、ナット81を完全に収容すると共に組付け状態においてコイルバネ90の他端部を受け入れるように形成されている。
嵌合凸部22は、ハウジング本体10の嵌合凹部15に嵌合されて軸受円筒部23の中心を軸線S上に位置決めするべく、軸線Sを中心に周方向に等間隔で配列された八つの突出片として形成されている。
【0037】
軸受円筒部23は、モータ50の駆動軸53を支持する軸受B
2を嵌合して固定するべく、軸線Sを中心とする円筒面を画定する金属製の成型品を圧入して形成されている。
開口部24は、駆動軸53の端部に設けられた被検出部Dを回路基板70に設けられた検出センサ76b(
図9を参照)と対向させるべく、軸受円筒部23と同軸上において開口する円孔として形成されている。
【0038】
接合面25は、シール部材SR
2を挟んで外側カバー30の接合面31が接合されるべく、軸線Sに垂直な平面として形成されている。また、接合面25には、シール部材SR
2が配置される環状溝25a、外側カバー30を位置決めする二つの位置決めピン25bが形成されている。
尚、シール部材SR
2は、ゴム材料により形成された環状の成型ゴム又は接合時に注入される液体シール剤である。
通気部26は、回路基板70が収容された内部空間を外部に連通させる通気孔として機能するものであり、
図6、
図12、
図13に示すように、接合面25よりも内側の領域において円板状の防水通気膜Fを設置する外縁部を確定する環状凹部26a、環状凹部26aから外部に連通する通路を画定する筒状部26bを含む。
【0039】
六つのボス部27は、それぞれ、回路基板70を保持すると共に回路基板70を締結する締結ネジ80を通す円孔27aを画定する。また、二つのボス部27の近傍には、回路基板70を位置決めする二つの位置決めピン27bが形成されている。
四つの円孔28は、外側カバー30をハウジング本体10に締結する締結ボルト100を通すものである。
コネクタ部29は、外部と接続されるものであり、回路基板70の導電パターン72に接続された三つの駆動用端子29a,29b,29c及び一つのアース端子29dを収容すると共にそれらの中間領域を埋設して保持する。
【0040】
外側カバー30は、ホルダカバー20の外側に配置された回路基板70を覆うものであり、導電性の材料、例えばアルミニウム材料を用いて形成され、
図3、
図4、
図5、
図9に示すように、ホルダカバー20の接合面25に接合される接合面31、回路基板70を収容する収容部32、締結ボルト100を通す四つの円孔33、位置決めピン21bが嵌合される二つの位置決め孔34を備えている。
そして、外側カバー30は、回路基板70及び防水通気膜Fがホルダカバー20に取り付けられた状態で、シール部材SR
2を挟んで接合面31をホルダカバー20の接合面25に接合し、締結ボルト100によりハウジング本体10に締結して固定される。
【0041】
ポンプカバー40は、ハウジング本体10のポンプ収容凹部11を覆うべくハウジング本体10に接合されるものであり、導電性の材料、例えば、鋼、鋳鉄、焼結鋼、アルミニウム合金等の材料を用いて平板状に形成され、
図3及び
図4に示すように、筒部41、筒部42、内壁面43、駆動軸53の先端を受け入れる中央凹部44、締結ボルト110を通す三つの円孔45を備えている。
【0042】
筒部41は、作動油を吸入する吸入通路41aを画定すると共に適用対象物1の貯留部1c内に配置される。
筒部42は、作動油を吐出する吐出通路42aを画定すると共に適用対象物1の導入通路1dに嵌合される。
内壁面43は、ポンプ収容凹部11に収容されたポンプユニット60(インナーロータ61及びアウターロータ62)の外側の端面を摺動自在に受ける。
そして、ポンプカバー40は、ポンプ収容凹部11にポンプユニット60を収容した状態で、内壁面43をハウジング本体10の接合面12に接合して、締結ボルト110によりハウジング本体10に締結して固定される。尚、締結ボルト110は、導電性の金属材料により形成されている。
【0043】
モータ50は、
図3及び
図4に示すように、ステータ51、ロータ52、駆動軸53を備えた、三相のブラシレスモータである。
ステータ51は、磁性材料からなる鋼板を用いて形成されたステータコア、電気的絶縁性を有する樹脂材料を用いて形成されたボビン、ボビンの周りに巻回されたコイルを備えている。
ロータ52は、磁性材料からなる鋼板を用いて形成されたロータコア、ロータコアに嵌め込まれた永久磁石を備えている。
【0044】
駆動軸53は、鋼材料等を用いて軸線S方向に伸長する円柱状に形成され、ロータ52と一体的に回転するようにロータ52に嵌合されている。そして、駆動軸53は、ロータ52を挟んだ両側において、一方側がハウジング本体10に固定される軸受B1に支持され、他方側がホルダカバー20に固定される軸受B2に支持されて、軸線S回りに回動自在に支持されている。
また、駆動軸53は、軸受B1よりも先端側の領域がインナーロータ61の嵌合孔61aに嵌合されて、回転駆動力をポンプユニット60に伝達する。
【0045】
さらに、駆動軸53には、軸受B1と挿通孔14aの間の外周領域において、リップ型シール部材Srが配置され、ポンプ収容凹部11側からモータ収容凹部13に向けて作動油が流れ込まないように、又、モータ収容凹部13側からポンプ収容凹部11側に向けて空気等が吸い込まれないようにシールされている。
【0046】
ポンプユニット60は、作動油に対して、吸入、加圧、吐出のポンプ作用を及ぼすべくポンプ収容凹部11に配置されるものであり、
図3及び
図4に示すように、インナーロータ61及びアウターロータ62を含むトロコイドポンプである。
【0047】
インナーロータ61は、鋼又は焼結鋼等の金属材料を用いて、トロコイド曲線による歯形をもつ外歯車として形成されている。そして、インナーロータ61は、ハウジング本体10の底面11bを摺動する端面、ポンプカバー40の内壁面43を摺動する端面、駆動軸53を嵌合する嵌合孔61a、外周において歯列を備えている。そして、インナーロータ61は、軸線Sを中心として駆動軸53と一体的に回転する。
【0048】
アウターロータ62は、鋼又は焼結鋼等の金属材料を用いて、インナーロータ61に噛合し得る歯形をもつ内歯車として形成されている。そして、アウターロータ62は、ハウジング本体10の底面11bを摺動する端面、ポンプカバー40の内壁面43を摺動する端面、内周面11aに摺動自在に接触する円筒状の外周面、内周において歯列を備えている。
【0049】
そして、アウターロータ62は、軸線Sを中心として回転するインナーロータ61の回転に連動しつつ、インナーロータ61よりも遅い速度で、軸線Sから偏倚した軸線を中心として、インナーロータ61と同一方向に回転する。また、インナーロータ61とアウターロータ62とが部分的に噛合うことにより、両者の間において、吸入、加圧、及び吐出のポンプ作用が連続的に生じる。
【0050】
回路基板70は、
図4、
図6、
図7、
図14に示すように、平板状に形成されて、締結ネジ80を通す五つの円孔71、一方の面又は両方の面にプリントされた導電パターン72、導電パターン72に接続された一つのスルーホール73、導電パターン72に接続された四つのスルーホール74、導電パターン72に接続された三つのスルーホール75、外側及び内側の両表面に実装されてモータ50を駆動制御する制御ユニット76、位置決めピン27bが挿入される二つの位置決め孔77を備えている。
【0051】
導電パターン72は、制御ユニット76が電気的に接続されるプリント配線、及びスルーホール73,74,75が電気的に接続されるプリント配線等を画定する。
導電パターン72のうち一部の導電パターン72aは、ハウジング本体10に帯電した静電気を除去するアース経路の一部として機能する。
スルーホール73は、八つの締結ネジ80のうちの一つの締結ネジ80aが挿入されて電気的に接続されるものであり、端部に形成された環状のランド73aを備えている。
四つのスルーホール74は、駆動用端子29a,29b,29c及びアース端子29dがそれぞれ挿入されて電気的に接続されるものである。
三つのスルーホール75は、三つのコイル端子51a,51b,51cがそれぞれ挿入されて電気的に接続されるものである。
制御ユニット76は、両表面に実装された種々の電子部品76a、ホルダカバー20の開口部24と対向する内側面において検出センサ76bを含む。
検出センサ76bは、ロータ52の回転位置を検出するものであり、軸線S方向において被検出部Dと対向すると共に軸線Sを中心とする弧状に配列された三つのホール素子を含む。
【0052】
締結ネジ80は、導電性の材料、例えば、鋼、合金鋼、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。ナット81は、同様に導電性の材料、例えば、鋼、合金鋼、アルミニウム合金等の金属材料により略六角形に形成されており、ホルダカバー20のナット収容凹部21bに回転不能に嵌め込まれる。
そして、五つの締結ネジ80は、回路基板70をホルダカバー20に締結するべく、回路基板70がホルダカバー20のボス部27に当接された状態で、回路基板70の円孔71に通されて、ナット収容凹部21bに嵌め込まれたナット81に捩じ込まれる。
【0053】
また、一つの締結ネジ80、すなわち、アース端子29dに最も近い位置に配置される締結ネジ80aは、
図7に示すように、回路基板70がホルダカバー20のボス部27に当接された状態で、回路基板70のスルーホール73に通されて、ナット収容凹部21bに嵌め込まれたナット81に捩じ込まれ、その頭部がスルーホール83の端部に連続する環状のランド73aに密着する。
すなわち、締結ネジ80aは、モータ50の周りにおいてハウジング本体10に帯電した静電気を除去するアース経路の一部をなすものであり、スルーホール73及び/又は環状のランド73a及び導電パッド72aを介して、アース端子29dと電気的に接続される。尚、スルーホール73を単なる円孔71と同様に形成し、導電パッド72a及び環状のランド73aのみで、締結ネジ80aとアース端子29dを電気的に接続してもよい。
【0054】
コイルバネ90は、圧縮型のコイルバネであり、導電性の材料、例えばバネ鋼等により形成されている。そして、コイルバネ90は、
図7に示すように、ハウジング本体10の凹部16dに一端部が着座し、締結ネジ80aが螺合されたナット81に他端部が当接した状態で、すなわち、凹部16dとナット81の間において圧縮した状態で配置される。これにより、コイルバネ90は、ハウジング本体10に帯電した静電気を除去するアース経路の一部として機能し、締結ネジ80aは、コイルバネ90及びナット81を介して、ハウジング本体10と電気的に接続される。
【0055】
締結ボルト100は、導電性の材料、例えば、鋼、合金鋼、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。そして、締結ボルト100は、
図8に示すように、ハウジング本体10に対して、コイルバネ90、シール部材SR
1、回路基板70が固定されたホルダカバー20、シール部材SR
2、外側カバー30が配置された状態で、円孔33に通されてネジ穴16cに捩じ込まれる。
すなわち、外側カバー30は、導電性の材料により形成されると共に、導電性の締結ボルト100により、導電性のハウジング本体10に締結される。これにより、仮に、外側カバー30に静電気が帯電した場合は、その静電気は、締結ボルト100を通してハウジング本体10に流れるようになっている。
【0056】
次に、一実施形態に係る電動装置Mの組付け作業について説明する。
組付けに先立って、ハウジング本体10、三つの駆動用端子29a,29b,29c及び一つのアース端子29dを保持したホルダカバー20、外側カバー30、ポンプカバー40、モータ50(ステータ51、ロータ52、駆動軸53)、ポンプユニット60(インナーロータ61、アウターロータ62)、導電パターン72がプリントされかつ制御ユニット76(種々の電子部品等)が実装された回路基板70、防水通気膜F、軸受B1,B2、スラスト軸受としての波型バネSb、リップ型シール部材Sr、シール部材SR1,SR2、締結ネジ80、コイルバネ90、締結ボルト100,110が準備される。
【0057】
予め、サブアセンブリ工程において、駆動軸53は、ロータ52に嵌合されて固定され、駆動軸53には、軸受B1,B2及び被検出部Dが組み付けられる。また、ホルダカバー20に、回路基板70が配置され、三つの駆動用端子29a,29b,29c及び一つのアース端子29dがスルーホール74にそれぞれ挿入されて半田付けされ、締結ネジ80及びナット81を用いて回路基板70が固定され、防水通気膜Fが通気部26の環状凹部26aの外縁部に接着剤等を用いて固定される。
【0058】
そして、メインアセンブリ工程において、先ず、ハウジング本体10のモータ収容凹部13にモータ50が組み込まれる。具体的には、リップ型シール部材Srが内周面13cに嵌め込まれ、ステータ51が内周面13aに嵌合されて固定される。続いて、ロータ52を嵌合固定した駆動軸53が、波型バネSbを軸受B1とリップ型シール部材Srの間に挟むようにして挿入されて、駆動軸53の一方側に取り付けられた軸受B1が内周面13bに嵌合されて固定され、駆動軸53の先端側領域が挿通孔14aを通してポンプ収容凹部11内に突出させられる。
【0059】
続いて、ハウジング本体10の凹部16dにコイルバネ90を嵌め込んだ状態で、回路基板70及び防水通気膜Fを取り付けたホルダカバー20が、モータ収容凹部13を覆うように軸線S方向からハウジング本体10に近づけられる。
そして、締結ネジ80aの先端側がコイルバネ90の他端部に挿入され、ナット81によりコイルバネ90の他端部が押圧され、軸受円筒部23に駆動軸53の他方側に取り付けられた軸受B2が嵌合され、筒状部26bが貫通孔17に挿入され、嵌合凸部22が嵌合凹部15に嵌合され、接合面21がシール部材SR1を介在させてハウジング本体10の接合面16bに接合され、三つのコイル端子51a,51b,51cがスルーホール75に挿入される。そして、三つのコイル端子51a,51b,51cが半田付けされる。
【0060】
これにより、モータ50の駆動軸53は、ハウジング本体10及びホルダカバー20により、軸受B1,B2を介して軸線S回りに回動自在に支持される。
また、締結ネジ80aが、コイルバネ90及びナット81を介して、ハウジング本体10と電気的に接続される。
【0061】
続いて、外側カバー30が、回路基板70及び防水通気膜Fを覆うように軸線S方向からホルダカバー20に近づけられ、接合面31がシール部材SR2を介在させてホルダカバー20の接合面25に接合される。そして、締結ボルト100が円孔33,28を通してハウジング本体10のネジ孔16cに捩じ込まれる。
これにより、外側カバー30は、ホルダカバー20を挟んでハウジング本体10に固定され、締結ボルト100を介してハウジング本体10と電気的に接続される。
【0062】
続いて、インナーロータ61が、ハウジング本体10のポンプ収容凹部11に挿入されると共に駆動軸53に一体的に回転するように嵌合される。
続いて、アウターロータ62が、インナーロータ61と噛み合うようにポンプ収容凹部11に挿入される。
【0063】
続いて、ポンプカバー40が、ポンプ収容凹部11を覆うように、軸線S方向から近づけられて接合面12に接合され、締結ボルト110によりハウジング本体10に固定される。
以上により、電動装置Mの組み付けが完了する。尚、組付け手順は、上記の手順に限られるものではなく、その他の手順で組み付けられてもよい。
【0064】
上記のように組み付けられた電動装置Mにおいては、コイルバネ90と、締結ネジ80a及びナット81と、スルーホール73及び/又は環状のパッド73a、導電パターン72aと、ホルダカバー20に設けられて導電パターン72aと導通するアース端子29dにより、電動部としてのモータ50の周りに帯電した静電気を除去するアース経路が構成されている。
【0065】
上記構成をなす電動装置Mは、電動ポンプ装置として機能するため、モータ50が適宜駆動制御されてポンプユニット60が回転駆動されると、貯留部1cに溜まった作動油が吸入通路41aから吸入されて加圧され、吐出通路42aから吐出され、導入通路1dを経て供給先に供給される。
この電動によるポンプ動作の際に、モータ50においては、ロータ52がステータ51に対して相対的に移動するため静電気が発生する。そして、発生した静電気は、モータ50の周辺領域すなわちハウジング本体10に帯電する。
ここでは、帯電した静電気は、ハウジング本体10から、コイルバネ90、ナット81及び締結ネジ80a、環状パッド73a及び/又はスルーホール73、導電パッド72a、及びアース端子29dにより構成されるアース経路を通して、コネクタ部29に接続された外部に流れて除去される。
【0066】
上記構成をなす電動装置Mによれば、電動部(モータ50)の周りに帯電した静電気を除去するアース経路が、回路基板70をホルダカバー20に締結すると共にハウジング本体10に導通する導電性の締結ネジ80aと、回路基板70に設けられて締結ネジ80aと導通する導電パターン72aと、ホルダカバー20に設けられて導電パターン72aと導通するアース端子29bを含む。
これによれば、従来のアース経路に比べて、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化等を達成しつつ、アース経路を短くでき、制御ユニット76に対するノイズの発生等を抑制することができる。
【0067】
また、締結ネジ80aは、導電性のコイルバネ90を介して、ハウジング本体10と電気的に接続されている。したがって、締結ネジ80aがハウジング本体10に直接接続される場合に比べて、組付け誤差、寸法誤差等を吸収して、締結ネジ80aとハウジング本体10との導通を確実にすることができる。
また、ハウジング本体10がコイルバネ90の一端部を着座させる凹部16dを含むことにより、組付け時においてコイルバネ90の一端部を嵌め込んで着座させることで、コイルバネ90の脱落や位置ずれを防止することができ、組付け作業が容易になる。
【0068】
また、締結ネジ80aに螺合される導電性のナット81を採用し、コイルバネ90が、ハウジング本体10(又はハウジング本体10の凹部16d)とナット81の間において圧縮した状態で配置されるようにすることで、ナット81に対してコイルバネ90の他端部を確実に接触させることができ、締結ネジ80aの先端部に接触させる場合に比べて、電気的な接続を確実にすることができる。
また、ホルダカバー20が、ナット81を回転不能に収容するナット収容凹部21dを含むため、ナット81の組付けが容易になり、締結ネジ80(80a)の捩じ込み作業が簡単になる。
【0069】
また、回路基板70が複数の締結ネジ80によりホルダカバー20に締結される場合において、アース経路を形成する締結ネジ80aは、複数の締結ネジ80のうちアース端子29dに最も近い位置に配置されたものを採用することにより、他の締結ネジ80を採用する場合に比べて、アース経路をさらに短縮することができる。
また、締結ネジ80aが、導電パターン72aと導通するスルーホール73又はスルーホール73の端部に形成された環状のランド73aを介して、導電パターン72aと電気的に接続されることにより、締結ネジ80aと導電パターン72aとの導通を確実にすることができる。
【0070】
また、回路基板70を覆う外側カバー30が、導電性の材料により形成されると共に導電性の締結ボルト100によりハウジング本体10に締結されることにより、外側カバー30に静電気が帯電した場合は、その静電気を、締結ボルト100を通してハウジング本体10に流して除去することができる。
また、電動部としてのモータ50の駆動軸53により駆動される被駆動体(ポンプユニット60)を含み、ハウジング本体10が、被駆動体(ポンプユニット60)を収容する被駆動体収容凹部(ポンプ収容凹部11)を含み、ハウジング本体10には、被駆動体収容凹部(ポンプ収容凹部11)を覆うべく、導電性の被駆動体カバー(ポンプカバー40)が接合されている。
これによれば、被駆動体カバー(ポンプカバー40)に静電気が帯電したとしても、その静電気は、ハウジング本体10に流れ込むため、アース経路を通して除去することができる。
【0071】
上記実施形態においては、電動部としてモータ50を示したが、これに限定されるものではなく、電気的に作動する電動部であれば、往復動するアクチュエータ、その他の作動モジュールが適用される。
上記実施形態においては、モータ50により駆動される被駆動体として、ハウジング本体10のポンプ収容凹部11に収容されるポンプユニット60を示したが、これに限定されるものではなく、減速装置、その他の機構を採用してもよい。
【0072】
上記実施形態においては、締結ネジ80を螺合させるナット81を採用した構成を示したが、これに限定されるものではなく、ホルダカバーに雌ネジ孔を形成し、締結ネジが雌ネジ孔に直接捩じ込まれることで回路基板70を固定する構成を採用し、一つの締結ネジの先端側をコイルバネ90に直接接触させて電気的に接続してもよく、又、コイルバネ90を廃止して、締結ネジを直接ハウジング本体に電気的に接続してもよい。
【0073】
以上述べたように、本発明の電動装置は、構造の簡素化、部品点数の削減、低コスト化等を達成しつつ、アース経路を短くでき、制御ユニットに対するノイズの発生等を抑制することができるため、電動ポンプ装置として適用できるのは勿論のこと、ポンプ以外の機能を備えた電動減速装置、電動アクチュエータ装置、その他の電動機器としても有用である。
【符号の説明】
【0074】
M 電動装置
S 軸線
10 ハウジング本体
11 ポンプ収容凹部(被駆動体収容凹部)
13 モータ収容凹部
16 フランジ部
16d 凹部
20 ホルダカバー
21d ナット収容凹部
29 コネクタ部
29a,29b,29c 駆動用端子
29d アース端子
30 外側カバー
40 ポンプカバー(被駆動体カバー)
41a 吸入通路
42a 吐出通路
50 モータ(電動部)
51 ステータ
52 ロータ
53 駆動軸
60 ポンプユニット(被駆動体)
61 インナーロータ(トロコイドポンプ)
62 アウターロータ(トロコイドポンプ)
70 回路基板
72,72a 導電パターン
73,74,75 スルーホール
73a 環状のパッド
80 締結ネジ
80a アース端子に最も近い締結ネジ
81 ナット
90 コイルバネ
100,110 締結ボルト