(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170089
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ターボ形ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/12 20060101AFI20241129BHJP
F16J 15/34 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F04D29/12 B
F16J15/34 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087056
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 峻弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇治
【テーマコード(参考)】
3H130
3J041
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB42
3H130AB69
3H130AC30
3H130BA33F
3H130CA02
3H130DA02X
3H130DC02X
3H130DC04X
3H130DG02X
3H130EB01A
3J041DA01
3J041DA05
(57)【要約】
【課題】メカニカルシールの部分に注水をするための構成を安価に実現する。
【解決手段】ターボ形ポンプは、回転軸と、回転軸を支持する軸受と、回転軸に取り付けられた羽根車と、羽根車を囲むように設けられたケーシングと、ケーシングに設けられた吸込ノズル及び吐出ノズルを備える。また、ケーシングにおける吸込ノズル側を前記回転軸が貫通する部分に設けられ、回転軸とケーシングとの間の隙間をシールするメカニカルシールと、ケーシングに設けられ前記メカニカルシールを収容するメカニカルシール取付部と、メカニカルシール取付部におけるメカニカルシールの外周側に形成された冷却空間と、吸込ノズルから吸い込まれる吸込流体の流れの一部を取り込む吸込流体取込部と、吸込流体取込部から取り込まれた流体を前記冷却空間に導く導入流路を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸を支持する軸受と、前記回転軸に取り付けられた羽根車と、前記羽根車を囲むように設けられたケーシングと、前記ケーシングに設けられた吸込ノズル及び吐出ノズルとを備えるターボ形ポンプであって、
前記ケーシングにおける前記吸込ノズル側を前記回転軸が貫通する部分に設けられ、前記回転軸と前記ケーシングとの間の隙間をシールするメカニカルシールと、
前記ケーシングに設けられ前記メカニカルシールを収容するメカニカルシール取付部と、
前記メカニカルシール取付部における前記メカニカルシールの外周側に形成された冷却空間と、
前記吸込ノズルから吸い込まれる吸込流体の流れの一部を取り込む吸込流体取込部と、
前記吸込流体取込部から取り込まれた流体を前記冷却空間に導く導入流路と、
を備えることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ形ポンプであって、
前記吸込流体取込部は、前記ケーシングにおける吸込流路の壁面に設けられていることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のターボ形ポンプであって、
前記吸込流体取込部は、前記ケーシングにおける吸込流路の壁面に設けられた突起部で構成され、前記突起部は前記導入流路に隣接する下流側に配置されていることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載のターボ形ポンプであって、
前記突起部は前記吸込流路の壁面から吸込流路側に突出して形成され、前記突起部は吸込流体の流れの上流側に向いた方向に凹形状に形成されていることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載のターボ形ポンプであって、
前記突起部は吸込流体の流れの上流側に向いた三日月状に形成されていることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載のターボ形ポンプであって、
前記突起部は、前記吸込流路壁面に機械加工により形成するか、または三日月状の部品を前記吸込流路壁面に溶接して設けることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項7】
請求項4に記載のターボ形ポンプであって、
前記突起部は吸込流体の流れの上流側に向いた半円形状、V字形状またはU字形状の何れかの形状に構成されていることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項8】
請求項1に記載のターボ形ポンプであって、
前記吸込ノズルから流入する吸込流体が流れる吸込流路と前記冷却空間の上部とを連通するエア抜き穴が設けられ、前記吸込流体取込部は前記エア抜き穴に隣接する下流側に配置して、前記エア抜き穴を前記導入流路として利用することを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載のターボ形ポンプであって、
前記吸込ノズルから流入する吸込流体が流れる吸込流路と前記冷却空間とを連通し前記エア抜き穴とは異なる別の導入流路を設け、
前記吸込流体取込部は、前記エア抜き穴と前記エア抜き穴とは異なる別の前記導入流路のそれぞれに対して設けられ、
前記導入流路は、前記エア抜き穴と、前記エア抜き穴とは異なる別の前記導入流路により構成されていることを特徴とするターボ形ポンプ。
【請求項10】
請求項2に記載のターボ形ポンプであって、
前記吸込流体取込部は、前記ケーシングにおける吸込流路の壁面に設けられた凹み形状部で構成され、
前記凹み形状部は、前記導入流路から上流側に設けられ且つ前記導入流路に向かって次第に深くなる形状に構成されていることを特徴とするターボ形ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーシングにおける回転軸の貫通部にメカニカルシールを備えているターボ形ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーシングにおける回転軸の貫通部にメカニカルシールを備えている従来のターボ形ポンプ(例えば、遠心ポンプなど)としては、実開昭58-2392号公報(特許文献1)に記載のものなどがある。この特許文献1のものには、メカニカルシールにおける摺動部材の冷却及びメカニカルシールの部分の清浄のために、ポンプの高圧側(吐出側)の流体(水など)を、配管を介してメカニカルシールの部分に注水する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メカニカルシールを構成する摺動部材の冷却及び清浄のためには、メカニカルシールの摺動部材周辺の流体に流れが生じていないと十分な効果を発揮できない。このため、特許文献1のものでは、低圧側の圧力に近い軸貫通部に設けたメカニカルシールの部分に、高圧側の流体を注水することにより強制的に流れを生じさせている。
【0005】
しかし、高圧側の流体を低圧側のメカニカルシールの部分に導くためには配管を設置する必要があり、また配管からメカニカルシールの部分に流体を導入するための冷却流体導入穴をケーシングに設ける必要があった。このため、製作工数が掛かり設備コストも高くなる課題があった。
【0006】
本発明の目的は、メカニカルシールの部分に注水をするための構成を安価に実現することのできるターボ形ポンプを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、回転軸と、前記回転軸を支持する軸受と、前記回転軸に取り付けられた羽根車と、前記羽根車を囲むように設けられたケーシングと、前記ケーシングに設けられた吸込ノズル及び吐出ノズルとを備えるターボ形ポンプであって、前記ケーシングにおける前記吸込ノズル側を前記回転軸が貫通する部分に設けられ、前記回転軸と前記ケーシングとの間の隙間をシールするメカニカルシールと、前記ケーシングに設けられ前記メカニカルシールを収容するメカニカルシール取付部と、前記メカニカルシール取付部における前記メカニカルシールの外周側に形成された冷却空間と、前記吸込ノズルから吸い込まれる吸込流体の流れの一部を取り込む吸込流体取込部と、前記吸込流体取込部から取り込まれた流体を前記冷却空間に導く導入流路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メカニカルシールの部分へ注水をするための構成を安価に実現することができるターボ形ポンプを得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のターボ形ポンプの実施例1を示す縦断面図である。
【
図2】
図1のメカニカルシールの部分を拡大して示す要部拡大図である。
【
図3】
図2の吸込流体取込部周辺をA方向から見た要部拡大図である。
【
図4】一般的なターボ形ポンプの例を示す縦断面図である。
【
図5】
図4のメカニカルシールの部分を拡大して示す要部拡大図である。
【
図6】本発明のターボ形ポンプの実施例2を示す図で、
図2に相当する図である。
【
図7】
図6の吸込流体取込部周辺をA方向から見た要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のターボ形ポンプの実施例を図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
【実施例0011】
本発明のターボ形ポンプの実施例1を
図1~
図5を用いて説明する。
本発明の実施例1を説明する前に、まず、メカニカルシールを備えているターボ形ポンプの一般的な例を、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は一般的なターボ形ポンプとしての一軸多段遠心ポンプの例を示す縦断面図、
図5は
図4のメカニカルシールの部分を拡大して示す要部拡大図である。
【0012】
ターボ形ポンプとしての一軸多段遠心ポンプは、
図4に示すように、ケーシング1を貫通するように設けられた回転軸(主軸)2、前記回転軸2支持する軸受3、前記回転軸2に多段に取り付けられた複数枚の羽根車(遠心羽根車)4、多段の羽根車4のうちの初段の羽根車に吸込流体を導くための吸込ノズル5、多段の羽根車4のうちの最終段の羽根車から吐出される高圧の吐出流体を案内して使用する用途に送り出すための吐出ノズル6などにより大略構成されている。前記ケーシング1は多段に設けられた前記羽根車4を囲むように設けられ、吸込ノズル5及び吐出ノズル6は前記ケーシング1に設けられている。
【0013】
前記回転軸2はモータやエンジン等の駆動源(図示せず)により直接あるいはカップリング等を介して回転され、回転軸2に固定されている複数の羽根車4により、吸込ノズル5から吸い込まれた水などの流体を、初段の羽根車から最終段の羽根車によって順次昇圧して吐出ノズル6から吐出し、吐出配管を介して用途に送られる。
【0014】
また、前記回転軸2が前記ケーシング1の吸込側(吸込ノズル5側)を貫通する部分には、ケーシング1と回転軸2との間に形成される隙間をシールするためのメカニカルシール7が設けられている。このメカニカルシール7によりケーシング1の外部への流体の漏洩を抑制するように構成されている。
【0015】
前記メカニカルシール7を構成する摺動部材を冷却するために、前記メカニカルシール7の部分には、最終段の羽根車4から吐出された高圧の吐出流体の一部を、ケーシング1の外部に設けた配管8及び前記ケーシング1に形成された冷却流体導入穴9を介して導入するように構成されている。
【0016】
図4のメカニカルシール7の部分付近を拡大して示す要部拡大図である
図5により、メカニカルシール7の部分の構成を詳しく説明する。
図5に示すように、メカニカルシール7はケーシング1に固定された固定環7aと回転軸2に固定され回転軸と共に回転する回転環7bなどにより構成され、固定環7aと回転環7bを摺動部10で接触させて摺動させることにより、ケーシング1外部への流体の漏洩を抑制している。このため、メカニカルシール7における前記摺動部10が発熱する。
【0017】
なお、前記メカニカルシール7は前記ケーシング1の軸貫通部に設けられたメカニカルシール取付部11に設置されており、このメカニカルシール取付部11には前記メカニカルシール7の外周側に形成された冷却空間11aが備えられている。
【0018】
前記メカニカルシール7における摺動部10の発熱によるメカニカルシール7の過熱を防止するため、前記冷却空間11aに、吐出流体の一部を、配管8及び冷却流体導入穴9を介して矢印aで示すように導入する構成としている。矢印aで示す冷却流体の流れは、冷却空間11aを流れる際にメカニカルシール7を冷却し、その後回転軸2の外周部とケーシング1のとの隙間(軸外周隙間)12から流出して吸込ノズル5からの吸込流れbと合流し、羽根車4に吸い込まれるように構成されている。
【0019】
なお、前記冷却空間11aに流入した冷却流体の流れaは、メカニカルシール7の冷却だけでなく、メカニカルシール取付部11に滞留する異物を洗い流して清浄化する機能も有する。
【0020】
また、ターボ形ポンプの停止時にはケーシング1内に溜まっていた流体が抜けて、それに伴い外部空気等が流入し、前記冷却空間11aにも空気が溜まる。ターボ形ポンプの起動時に前記冷却空間11aに空気が溜まっていると、メカニカルシール7の冷却を十分に行えなくなる可能性がある。このため、ターボ形ポンプの起動時には冷却空間11aの空気を抜くエア抜きが必要となる。このエア抜きのため前記ケーシング1には前記冷却空間11aと吸込流路5a側(
図4参照)とを連通するエア抜き穴13が円周上の1か所(上部側)に設けられている。
【0021】
このエア抜き穴13を設けることにより、ターボ形ポンプの起動時にケーシング1内の水位を上昇させる際、冷却空間11aに滞留している空気を、前記エア抜き穴13を介して吸込流路5a側に抜くことができる。従って、前記冷却空間11aにエアが滞留してメカニカルシール7の冷却効果が低下するのを防止することが可能となる。
【0022】
なお、
図4に示す例では、遠心ポンプ自身の運転により昇圧された流体を、配管8を介して取り出す構成のものを示しているが、外部の高圧給水源から冷却流体を冷却流体導入穴9に供給する構成とする場合もある。
【0023】
上述した
図4,
図5に示したような一般的なターボ形ポンプでは、メカニカルシール7を構成する固定環7aや回転環7b等の摺動部材の冷却及び清浄のために、メカニカルシール7の部分に、最終段の羽根車4から吐出された吐出流体の一部を、配管8及びケーシング1に形成した冷却流体導入穴9を介して導入する構成としている。このため、
図4,
図5に示したようなターボ形ポンプでは、高圧側の流体を低圧側のメカニカルシール部に導くために、ケーシング1の外部に設ける配管8や、配管8からメカニカルシール取付部11に流体を導入するためにケーシング1に形成した冷却流体導入穴9を設ける必要があり、製作工数が掛かり設備コストも高くなるという課題がある。
【0024】
この課題を解決するための本発明のターボ形ポンプの実施例1を、
図1~
図3を用いて以下説明する。
図1は本発明のターボ形ポンプの実施例1を示す縦断面図、
図2は
図1のメカニカルシールの部分を拡大して示す要部拡大図、
図3は
図2の吸込流体取込部周辺をA方向から見た要部拡大図である。これら
図1~
図3に示す本実施例1のターボ形ポンプにおいて、上述した
図4,
図5と同一符号を付した部分は同一或いは相当する分部であり、本実施例1の説明においては、
図4,
図5と同一の部分についての説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0025】
本実施例1のターボ形ポンプ(一軸多段遠心ポンプ)は、
図1に示すように、
図4を用いて説明したターボ形ポンプと基本的構成は同一であり、回転軸2、回転軸2を支持する軸受3、回転軸2に取り付けられた羽根車4、羽根車4を囲むように設けられたケーシング1、ケーシング1に設けられた吸込ノズル5及び吐出ノズル6等を備えている。また
図1,
図2に示すように、回転軸2がケーシング1における吸込側(吸込ノズル5側)を貫通する部分には、回転軸2とケーシング1との間の隙間をシールするメカニカルシール7が設けられ、このメカニカルシール7はケーシング1に設けられたメカニカルシール取付部11に収容されている。また、前記メカニカルシール取付部11には、メカニカルシール7の外周側に冷却空間11aが形成されている。
【0026】
以上の構成は
図4,
図5に示すターボ形ポンプと同様であるが、本実施例のターボ形ポンプでは、
図4に示す配管8やケーシング1に形成した冷却流体導入穴9が設けられていない。その代わりに、本実施例においては、
図1,
図2に示すように、吸込ノズル5から羽根車4に吸い込まれる吸込流体の流れ(吸込流れ)bの一部を冷却空間11aに取り込むための吸込流体取込部14と、この吸込流体取込部14から取り込まれた流体を前記冷却空間11aに導くための導入流路15を備えている。なお、本実施例では、前記導入流路15はエア抜き穴13と兼用している例を示しているが、エア抜き穴13とは別に導入流路15をケーシング1に設けるようにしても良いし、吸込流体取込部14で取り込んだ吸込流れbの一部を配管で構成された導入流路を介して前記冷却空間11aに取り込むように構成しても良い。
【0027】
前記吸込流体取込部14は、本実施例では、ケーシング1に形成された吸込流路5aの壁面(吸込流路壁面)5bにおける前記導入流路15(エア抜き穴13)に近接する下流側に配置されている。また、前記吸込流体取込部14は前記吸込流路壁面5bから吸込流路5a側に突出した突起部(突起物)14aで構成されている。
【0028】
この吸込流体取込部14の構成を、
図3を用いて詳細に説明する。
図3は吸込流体取込部14周辺を
図2のA方向から見た図であり、突起部14aで構成された吸込流体取込部14は、A方向(吸込流路5a側)から見て三日月状に形成されている。即ち、前記吸込流体取込部14は、吸込流れbに向かう方向(吸込流れbの上流側に向いた方向)に凹形状に形成され、吸込流れbの一部を効率良く導入流路15(エア抜き穴13)に取り込めるように構成されている。
【0029】
なお、前記吸込流体取込部14は、ケーシング1における吸込流路壁面5bに機械加工により三日月状の突起部として造形すると良い。また、三日月状の部品を吸込流路壁面5bに溶接により接合して前記吸込流体取込部14を設けるように構成しても良い。
【0030】
なお、吸込流体取込部14から取り込まれた流体を冷却空間11aに導くための導入流路15として本実施例ではエア抜き穴13を利用しているが、エア抜き穴13は、吸込流路5aと冷却空間11aの上部側とのみ連通するようにケーシング1における円周上の上部側に1か所設けられている場合が一般的である。このため、メカニカルシール7の冷却効果を更に高めるには、吸込流路5aと、冷却空間11aの下部側や中間部側とも連通する導入流路15も設けることが好ましい。この場合、エア抜き穴13と、エア抜き穴13とは異なる別の導入流路15を設け、これらエア抜き穴13と別の導入流路15により、吸込流れの一部を冷却空間11aに導入する導入流路として構成すると良い。
【0031】
また、本実施例の上記説明では、前記吸込流体取込部14を三日月状の突起部14aで構成した例を示したが、吸込流体取込部14の形状は三日月状に限らず、半円形状やV字形状或いはU字形状等にしても良く、羽根車4への吸込流れbの上流側に向いた凹形状の突起部14aとして、吸込流れbの一部を、導入流路(エア抜き穴13や導入流路15)を介してメカニカルシール取付部11の冷却空間11aに導くことができる形状であれば良い。
【0032】
本実施例1では以上説明した構成としたことにより、吸込ノズル5から吸い込まれた水などの吸込流れbの一部は、吸込流路壁面5bに形成されている三日月状の突起部14aなどの吸込流体取込部14に衝突し、矢印cで示すように、吸込流体取込部14の上流側に設けられているエア抜き穴13(導入流路15)からメカニカルシール取付部11の冷却空間11aに流入する。冷却空間11aに流入した流体は、矢印cで示すように流れて、メカニカルシール7の摺動部10近傍を通過するときにメカニカルシール7の冷却を行う。また冷却空間11aに流入した流体は、メカニカルシール取付部11に滞留する異物も洗い流して清浄化する洗浄も行なう。
【0033】
その後、冷却空間11aの流体は、矢印cで示すように、ケーシング1と回転軸2との間の軸外周隙間12を通過して、吸込流路5aに流出し、吸込流れbと合流して羽根車4に吸い込まれる。羽根車4に吸い込まれた流体は、多段に設けられている羽根車4によって順次昇圧されて吐出ノズル6から吐出され、吐出配管を介して用途に送られる。
なお、ターボ形ポンプの起動時には、
図4,
図5で説明したターボ形ポンプと同様に、冷却空間11aの空気を抜くエア抜きが前記エア抜き穴13を介して行われる。
【0034】
本実施例では、前記エア抜き穴13を吸込流れbの一部を冷却空間11aに導入するための導入流路15と兼用している。従って、ターボ形ポンプの通常運転時には、吸込ノズル5から吸い込まれた吸込流れbの一部は、吸込流体取込部14に衝突し、その上流側に配置されているエア抜き穴13(導入流路15)から、矢印cで示すようにメカニカルシール取付部11の冷却空間11aに流入する。従って、冷却空間11a内には冷却流体の流れが生じるので、メカニカルシールの冷却及び洗浄を効果的に行うことができる。
【0035】
前記エア抜き穴13は、前述したように、吸込流路5aと冷却空間11aの上部側とのみ連通するようにケーシング1における円周上に1か所設けられているだけである。この1か所のエア抜き穴13だけでは、十分な量の流体を冷却空間11aに導入できない場合がある。この場合には、エア抜き穴13とは別に、吸込流路5aと、冷却空間11aの下部側や中間部側とも連通する1以上の導入流路15と吸込流体取込部14をケーシング1に設け、エア抜き穴13と導入流路15により、吸込流れの一部を冷却空間11aに導入するように構成すると良い。これによりメカニカルシール7の冷却効果や洗浄効果を更に高めることができる。
【0036】
なお、本実施例では、エア抜き穴13を通常運転時には、吸込流れbの一部を冷却空間11aに導く導入流路15と兼用させているが、エア抜き穴13を前記導入流路15と兼用せずに、導入流路15をエア抜き穴13と別に設けるように構成しても良い。
【0037】
本実施例によれば、羽根車4へ吸い込まれる吸込流れbの一部をメカニカルシール取付部11の冷却空間11aに導く構成としているので、メカニカルシール7の冷却や洗浄を行うために、吐出流体の一部をメカニカルシール取付部11の冷却空間11aに送るための前記配管8や前記冷却流体導入穴9を不要にすることができる。従って、メカニカルシール7の部分へ注水をするための構成を安価に実現することのできるターボ形ポンプを得ることができる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例ではターボ形ポンプとして一軸多段遠心ポンプに本発明を適用した例について説明したが、本発明は一軸多段遠心ポンプに限定されるものではなく、単段の遠心ポンプや斜流ポンプにも同様に適用できるものである。
また、吸込流体取込部14として、突起部14aや凹み形状部14bにより構成する例を説明したが、これらに限られるものでもなく、吸込流路5aの一部(例えば吸込流路壁面5bの一部)に形状の急変化部を設けて、吸込流れbの一部を強制的にメカニカルシール取付部11に導入する構成としても良い。また、前記吸込流体取込部は吸込流路壁面5bに設けられるものに限られず、吸込流路5aの中に配管等を介して設けることも可能であり、配管を設ける場合でも吸込流れを吸込側に設けたメカニカルシールの部分に導入するので、配管を短くできる効果がある。
更に、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。