(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017009
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コージェネレーションシステム
(51)【国際特許分類】
F01K 23/10 20060101AFI20240201BHJP
F01D 25/10 20060101ALI20240201BHJP
F01K 17/04 20060101ALI20240201BHJP
F01K 17/02 20060101ALI20240201BHJP
F01D 19/00 20060101ALI20240201BHJP
F02C 3/30 20060101ALI20240201BHJP
F02C 6/18 20060101ALI20240201BHJP
F02C 7/26 20060101ALI20240201BHJP
F23R 3/00 20060101ALI20240201BHJP
F02G 5/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F01K23/10 C
F01D25/10 A
F01K17/04 Z
F01K17/02
F01D19/00 R
F02C3/30 C
F02C6/18 B
F02C7/26 Z
F23R3/00 D
F02G5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119363
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 一朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】青山 敏明
(72)【発明者】
【氏名】里内 覚夫
(72)【発明者】
【氏名】間地 玲二
【テーマコード(参考)】
3G071
3G081
【Fターム(参考)】
3G071AB01
3G071CA01
3G071CA04
3G081BA02
3G081BA11
3G081BC07
3G081DA23
(57)【要約】
【課題】ガスタービンおよび排熱回収ボイラの立ち上げに要する時間を短縮するとともに、立ち上げ時の窒素酸化物の発生を抑制することができるコージェネレーションシステムを提供する。
【解決手段】ガスタービン2の起動に先立ち、ノズル蒸気配管72に、外部ボイラ5から水蒸気を導入して、ノズル蒸気配管72を予熱する予熱工程と、予熱工程に用いた水蒸気をノズル蒸気配管72から外部に排出した後、ガスタービン2を起動させた直後に、外部ボイラ5からの水蒸気を、ノズル蒸気配管72を介して、ノズル蒸気として燃料ノズル25に供給し、燃料ガスG1に混合して噴射しながら、ガスタービン2の出力を増大させる外部蒸気噴射工程と、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4が定常運転状態に達すると、ノズル蒸気を、外部ボイラ5からの水蒸気から、排熱回収ボイラ4からの水蒸気に切り替える切り替え工程と、をこの順に実施するシステムとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ノズルから噴射した燃料ガスを燃焼させてタービン軸を回転させるガスタービンと、
前記タービン軸の回転によって発電を行い、外部の電力需要部に電力を供給する発電機と、
前記ガスタービンの排熱を回収して水蒸気を発生させ、外部の水蒸気需要部に水蒸気を供給する排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラにて発生した水蒸気の一部を、窒素酸化物の発生抑制のために前記燃料ガスに混合するノズル蒸気として、前記ガスタービンの前記燃料ノズルに供給するノズル蒸気配管と、
前記排熱回収ボイラとは異なるボイラ装置として構成され、前記ノズル蒸気配管に水蒸気を導入可能な外部ボイラと、を有し、
前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラの運転が停止されているタービン停止状態から、前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラが定常運転状態で運転されるタービン運転状態へと遷移する立ち上げ時に、
前記ガスタービンの起動に先立ち、前記ノズル蒸気配管に、前記排熱回収ボイラからの水蒸気を導入していない状態で、前記外部ボイラから水蒸気を導入して、前記ノズル蒸気配管を予熱する予熱工程と、
前記予熱工程に用いた水蒸気を前記ノズル蒸気配管から外部に排出した後、前記ガスタービンを起動させた直後に、前記外部ボイラからの水蒸気を、前記ノズル蒸気配管を介して、ノズル蒸気として前記燃料ノズルに供給し、前記燃料ガスに混合して噴射しながら、前記ガスタービンの出力を増大させる外部蒸気噴射工程と、
前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラが定常運転状態に達すると、前記ノズル蒸気を、前記外部ボイラからの水蒸気から、前記排熱回収ボイラからの水蒸気に切り替える切り替え工程と、
をこの順に実施する、コージェネレーションシステム。
【請求項2】
前記外部ボイラは、定常運転状態における前記排熱回収ボイラと同じ温度および圧力で水蒸気を発生させて、前記予熱工程および前記外部蒸気噴射工程において、前記ノズル蒸気配管の内部にその水蒸気を供給する、請求項1に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項3】
前記外部ボイラは、前記タービン停止状態にある期間から前記外部蒸気噴射工程までの期間を含んで、運転を継続され、前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラの運転が定常運転状態に達した後に停止される、請求項1または請求項2に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項4】
前記外部ボイラは、前記タービン停止状態にある期間も、定常運転状態における前記排熱回収ボイラと同じ温度および圧力で水蒸気を発生させる状態を継続し、
前記タービン運転状態にある間は、前記排熱回収ボイラが前記水蒸気需要部に水蒸気を供給し、
前記タービン停止状態にある間は、前記外部ボイラが前記水蒸気需要部に水蒸気を供給する、請求項3に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項5】
前記コージェネレーションシステムは、電気ならびに水蒸気を駆動源として空気を圧縮するコンプレッサ装置をさらに備え、
前記コンプレッサ装置は、前記排熱回収ボイラから発生した水蒸気を電気とともに駆動源として駆動され、発生した圧縮空気を、外部の圧縮空気需要部に供給し、
前記排熱回収ボイラから発生した水蒸気は、前記コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、前記コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、前記水蒸気需要部に供給される、請求項1または請求項2に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項6】
前記外部ボイラは、前記タービン停止状態にある期間も、運転を継続され、
前記タービン運転状態にある間は、前記排熱回収ボイラから発生した水蒸気が、前記コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、前記コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、前記水蒸気需要部に供給され、
前記タービン停止状態にある間は、前記外部ボイラから発生した水蒸気が、前記コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、前記コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、前記水蒸気需要部に供給される、請求項5に記載のコージェネレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コージェネレーションシステムに関し、さらに詳しくは、ガスタービンと排熱回収ボイラとを備えたコージェネレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電と、水蒸気の発生とを同時に行うコージェネレーションシステムの1種として、ガスタービンと排熱回収ボイラを備えたものが用いられている。この種のコージェネレーションシステムにおいては、ガスタービンの燃焼器において燃料ガスを燃焼させることで、タービン軸に結合された発電機によって発電を行う。同時に、ガスタービンから発生する高温の排出ガスを排熱回収ボイラに導いて、排熱を回収することで水蒸気を生成する。この種のコージェネレーションシステムは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された形態においては、排熱回収ボイラにて生成された水蒸気は、外部へと供給されるが、その水蒸気の一部は、ガスタービンの燃焼器に噴射される。燃焼器への水蒸気の噴射によって、燃焼器よりタービンへ導かれるガスの質量流量を増大させ、それによってタービンの出力および発電機の発電量を増大させるためである。コージェネレーションシステムにおいて、排熱回収ボイラにて発生した水蒸気をガスタービンの運転に利用する形態としては、上記特許文献1のように、出力を増大させるためのケース蒸気として、燃焼器の内部に直接噴射する形態の他に、ノズル蒸気として、燃料ガスと混合したうえで、燃焼器内に燃料ノズルから噴射する形態がある。燃料ガスを燃焼させると、高温火炎中に窒素酸化物(以下、NOx)が生成するが、ノズル蒸気を混合することで、燃焼火炎温度を下げ、NOxの発生を低減することができる。
【0005】
ガスタービンと排熱回収ボイラを備えたコージェネレーションシステムにおいて、ガスタービンおよび排熱回収ボイラを、停止している状態から起動させる際に、ガスタービンおよび排熱回収ボイラの運転が定常運転状態に達するまでに、時間を要する。この立ち上げ期間の間は、タービンの出力、また発電機における発電量や発電効率を、増大させることができない。立ち上げ期間の間は、排熱回収ボイラから、所定の温度および圧力を有する水蒸気が得られないため、燃料ガスと混合するノズル蒸気として、排熱回収ボイラからの水蒸気を供給することができず、ノズル蒸気の混合によるNOx低減を利用できないためである。このように、ガスタービンおよび排熱回収ボイラが定常運転状態に達するまでに長い立ち上げ時間を要し、かつその立ち上げ時間の間、高濃度のNOxが生成されることは、大気環境の保全の観点から、避けることが好ましい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ガスタービンと排熱回収ボイラを備えたコージェネレーションシステムにおいて、ガスタービンおよび排熱回収ボイラの立ち上げに要する時間を短縮するとともに、立ち上げ時のNOxの発生を抑制することができるコージェネレーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]上記課題を解決するために、本発明にかかるコージェネレーションシステムは、燃料ノズルから噴射した燃料ガスを燃焼させてタービン軸を回転させるガスタービンと、前記タービン軸の回転によって発電を行い、外部の電力需要部に電力を供給する発電機と、前記ガスタービンの排熱を回収して水蒸気を発生させ、外部の水蒸気需要部に水蒸気を供給する排熱回収ボイラと、前記排熱回収ボイラにて発生した水蒸気の一部を、NOxの発生抑制のために前記燃料ガスに混合するノズル蒸気として、前記ガスタービンの前記燃料ノズルに供給するノズル蒸気配管と、前記排熱回収ボイラとは異なるボイラ装置として構成され、前記ノズル蒸気配管に水蒸気を導入可能な外部ボイラと、を有し、前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラの運転が停止されているタービン停止状態から、前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラが定常運転状態で運転されるタービン運転状態へと遷移する立ち上げ時に、前記ガスタービンの起動に先立ち、前記ノズル蒸気配管に、前記排熱回収ボイラからの水蒸気を導入していない状態で、前記外部ボイラから水蒸気を導入して、前記ノズル蒸気配管を予熱する予熱工程と、前記予熱工程に用いた水蒸気を前記ノズル蒸気配管から外部に排出した後、前記ガスタービンを起動させた直後に、前記外部ボイラからの水蒸気を、前記ノズル蒸気配管を介して、ノズル蒸気として前記燃料ノズルに供給し、前記燃料ガスに混合して噴射しながら、前記ガスタービンの出力を増大させる外部蒸気噴射工程と、前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラが定常運転状態に達すると、前記ノズル蒸気を、前記外部ボイラからの水蒸気から、前記排熱回収ボイラからの水蒸気に切り替える切り替え工程と、をこの順に実施する。
【0008】
[2]前記[1]の態様において、前記外部ボイラは、定常運転状態における前記排熱回収ボイラと同じ温度および圧力で水蒸気を発生させて、前記予熱工程および前記外部蒸気噴射工程において、前記ノズル蒸気配管の内部にその水蒸気を供給するとよい。
【0009】
[3]前記[1]または[2]の態様において、前記外部ボイラは、前記タービン停止状態にある期間から前記外部蒸気噴射工程までの期間を含んで、運転を継続され、前記ガスタービンおよび前記排熱回収ボイラの運転が定常運転状態に達した後に停止されるとよい。
【0010】
[4]前記[3]の態様において、前記外部ボイラは、前記タービン停止状態にある期間も、定常運転状態における前記排熱回収ボイラと同じ温度および圧力で水蒸気を発生させる状態を継続し、前記タービン運転状態にある間は、前記排熱回収ボイラが前記水蒸気需要部に水蒸気を供給し、前記タービン停止状態にある間は、前記外部ボイラが前記水蒸気需要部に水蒸気を供給するとよい。
【0011】
[5]前記[1]から[4]のいずれか1つの態様において、前記コージェネレーションシステムは、電気ならびに水蒸気を駆動源として空気を圧縮するコンプレッサ装置をさらに備え、前記コンプレッサ装置は、前記排熱回収ボイラから発生した水蒸気を電気とともに駆動源として駆動され、発生した圧縮空気を、外部の圧縮空気需要部に供給し、前記排熱回収ボイラから発生した水蒸気は、前記コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、前記コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、前記水蒸気需要部に供給されるとよい。
【0012】
[6]前記[5]の態様において、前記外部ボイラは、前記タービン停止状態にある期間も、運転を継続され、前記タービン運転状態にある間は、前記排熱回収ボイラから発生した水蒸気が、前記コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、前記コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、前記水蒸気需要部に供給され、前記タービン停止状態にある間は、前記外部ボイラから発生した水蒸気が、前記コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、前記コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、前記水蒸気需要部に供給されるとよい。
【発明の効果】
【0013】
[1]上記発明にかかるコージェネレーションシステムにおいては、排熱回収ボイラとは別のボイラ装置として、外部ボイラを設けている。そして、ガスタービンの起動に先立ち、排熱回収ボイラからガスタービンの燃料ノズルにノズル蒸気を供給するノズル蒸気配管に、外部ボイラからの水蒸気を導入して、ノズル蒸気配管を予熱している。さらに、ガスタービンおよび排熱回収ボイラが定常運転状態に達するまでの間は、外部蒸気噴射工程において、その予熱されたノズル蒸気配管を介して、外部ボイラからの水蒸気をノズル蒸気として燃料ノズルに供給し、ガスタービンの運転を行っている。このように、排熱回収ボイラとは独立した外部ボイラによって水蒸気を生成して、予熱したノズル蒸気配管を介して、ノズル蒸気として供給することで、排熱回収ボイラから発生する水蒸気が、まだ定常運転状態における温度および圧力に達していない立ち上げ時においても、ノズル蒸気を燃料ガスに混合して、ガスタービンの運転を行うことができる。その結果、ガスタービンの出力を早期に増大させることができ、立ち上げに要する時間を短縮することができる。また、燃料ガスにノズル蒸気を混合することで、立ち上げの初期から、NOxの発生を抑えることが可能となる。
【0014】
[2]ここで、外部ボイラが、定常運転状態における排熱回収ボイラと同じ温度および圧力で水蒸気を発生させて、予熱工程および外部蒸気噴射工程において、ノズル蒸気配管の内部にその水蒸気を供給する場合には、排熱回収ボイラの運転が定常運転状態に達してから、排熱回収ボイラからノズル蒸気配管を介してガスタービンにノズル蒸気を供給する際と同じ条件で、外部蒸気噴射工程においても、外部ボイラからの水蒸気を、ノズル蒸気配管を介して、ノズル蒸気として供給し、燃料ガスとともにガスタービンに噴射することができる。このため、定常運転状態に達するまでに要する期間のガスタービンの運転を、定常運転状態と同じ条件のガスを燃料ノズルから噴射しながら進めることができる。その結果、定常運転状態に達するまでの時間の短縮と、NOx発生の抑制を、効果的に達成することができる。また、切り替え工程において、ノズル蒸気を、外部ボイラからの水蒸気から排熱回収ボイラからの水蒸気へと切り替える際に、不要な条件の変動を抑え、切り替えを円滑に行うことができる。
【0015】
[3]外部ボイラが、タービン停止状態にある期間から外部蒸気噴射工程までの期間を含んで、運転を継続され、ガスタービンおよび排熱回収ボイラの運転が定常運転状態に達した後に停止される場合には、外部ボイラが、所定の温度および圧力を有する水蒸気を安定に供給できる状態で、予熱工程および外部蒸気噴射工程を実施することができる。その結果、それらの工程の実施によるガスタービンおよび排熱回収ボイラの立ち上げ期間の短縮、およびNOx発生の抑制を、効果的に達成することができる。排熱回収ボイラが定常運転状態に達すると、ガスタービンの運転に外部ボイラを使用する必要はなくなるので、停止させておくことで、外部ボイラの運転に要するエネルギーを削減することができる。
【0016】
[4]この場合に、外部ボイラが、タービン停止状態にある期間も、定常運転状態における排熱回収ボイラと同じ温度および圧力で水蒸気を発生させる状態を継続し、タービン運転状態にある間は、排熱回収ボイラが水蒸気需要部に水蒸気を供給し、タービン停止状態にある間は、外部ボイラが水蒸気需要部に水蒸気を供給する形態によれば、ガスタービンおよび排熱回収ボイラを停止している間も、外部ボイラから水蒸気を発生させ続け、排熱回収ボイラに代わって、外部の水蒸気需要部に供給し続けることができる。そして、タービン停止時状態から、ガスタービンおよび排熱回収ボイラを立ち上げる際には、その運転を継続している外部ボイラから、すでに所定の温度と圧力に達した水蒸気の供給を受けて、予熱工程および外部蒸気噴射工程を、効果的に実施することができる。工場等において、発電事業者からの電気の販売価格が高価である日中はコージェネレーションシステムによって発電と水蒸気発生の両方を行うが、コージェネレーションシステムで発電するよりも発電事業者から電気を購入した方が安価である夜間には、コージェネレーションシステムで水蒸気発生のみを行う場合等に、この形態を好適に適用することができる。
【0017】
[5]コージェネレーションシステムが、電気ならびに水蒸気を駆動源として空気を圧縮するコンプレッサ装置をさらに備え、コンプレッサ装置が、排熱回収ボイラから発生した水蒸気を電気とともに駆動源として駆動され、発生した圧縮空気を、外部の圧縮空気需要部に供給し、排熱回収ボイラから発生した水蒸気が、コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、水蒸気需要部に供給される場合には、排熱回収ボイラから発生した水蒸気の量や圧力が、水蒸気需要部で必要とされる量や圧力を上回っている場合でも、コンプレッサ装置の駆動の補助としてその水蒸気を利用することで、コンプレッサ装置の駆動に要する電力を削減することができ、水蒸気のエネルギーが有効利用されることになる。
【0018】
[6]この場合に、外部ボイラが、タービン停止状態にある期間も、運転を継続され、タービン運転状態にある間は、排熱回収ボイラから発生した水蒸気が、コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、水蒸気需要部に供給され、タービン停止状態にある間は、外部ボイラから発生した水蒸気が、コンプレッサ装置の駆動を補助するとともに、コンプレッサ装置の駆動によって減圧された成分を含んで、水蒸気需要部に供給される場合には、夜間等、ガスタービンおよび排熱回収ボイラが停止されている期間においても、外部ボイラから発生する水蒸気によって、水蒸気需要部への水蒸気の供給、またコンプレッサ装置の駆動の補助を継続することができる。そして、ガスタービンおよび排熱回収ボイラを立ち上げる際には、外部ボイラからの水蒸気を用いて、予熱工程と外部蒸気噴射工程を実施することで、上記のように、立ち上げ期間の短縮とNOx発生の低減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコージェネレーションシステムの構成を示す模式図である。
【
図2】上記コージェネレーションシステムの主要な構成要素について、状態の時間変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかるコージェネレーションシステムについて、図面を参照しながら説明する。
【0021】
[コージェネレーションシステムの構成]
図1に、本発明の一実施形態にかかるコージェネレーションシステム1の構成を示す。コージェネレーションシステム1は、ガスタービン2と、発電機3と、排熱回収ボイラ4と、外部ボイラ5とを有している。
【0022】
ガスタービン2は、燃焼器21と、圧縮機22と、タービン23と、を有している。燃焼器21には、燃料ノズル25を介して、燃料ガスG1が噴射され、圧縮機22で圧縮した空気によって、燃焼器21内で燃料ガスG1が燃焼される。この際、燃焼器21に導入される燃料ガスG1には、後に説明するノズル蒸気として、水蒸気が混合される。燃料ガスG1の燃焼によって生じた燃焼ガスは、燃焼器21からタービン23に導かれ、タービン23を駆動することで、タービン軸24を回転させる。
【0023】
発電機3には、ガスタービン2のタービン軸24が結合されており、タービン軸24の回転によって、発電機3が発電を行う。発電によって得られた電力は、外部の電力需要部D1に供給される。タービン軸24には、圧縮機22も同軸に結合されており、タービン軸24の回転は、発電機3における発電とともに、圧縮機22の駆動にも用いられる。
【0024】
排熱回収ボイラ4は、ガスタービン2の排熱を回収して、水蒸気を発生する。具体的には、ガスタービン2において、タービン23を駆動した後に排出される高温の排出ガスが、排ガス経路71を介して排熱回収ボイラ4に導入される。排熱回収ボイラ4は、この排出ガスの熱によって、水から水蒸気を生成する。排熱回収ボイラ4によって生成した水蒸気は、その一部が、水蒸気発生部41に接続された水蒸気供給配管75を介して、適宜、減圧弁76にて減圧されたうえで、外部の水蒸気需要部D2へと供給される。
【0025】
排熱回収ボイラ4によって生成した水蒸気のうち、水蒸気需要部D2に供給されない部分の少なくとも一部は、排熱回収ボイラ4とガスタービン2の間をつなぐノズル蒸気配管72を通って、ガスタービン2に供給される。具体的には、ノズル蒸気配管72は、一端において、水蒸気供給配管75と分岐する形で、排熱回収ボイラ4の水蒸気発生部41に接続され、他端において、ガスタービン2の燃料ノズル25に接続された配管として構成されている。排熱回収ボイラ4で発生した水蒸気の一部が、水蒸気供給配管75を通って、燃料ガスG1と混合されるノズル蒸気として、燃料ノズル25に供給される。ガスタービン2の燃焼器21に燃料ノズル25から噴射する燃料ガスG1に、ノズル蒸気として水蒸気を混合することで、燃料ガスG1が燃焼する際の燃焼火炎の温度を下げることができる。燃焼火炎温度の低下により、燃焼に伴うNOxの発生を低減することができる。
【0026】
外部ボイラ5は、排熱回収ボイラ4とは異なるボイラ装置として構成されている。つまり、外部ボイラ5は、排熱回収ボイラ4のようにガスタービン2からの排出ガスを熱源とするのではなく、都市ガスG2の燃焼等、ガスタービン2から独立した熱源によって、水を加熱して水蒸気を生成するものであり、排熱回収ボイラ4およびガスタービン2とは独立して運転される。
【0027】
外部ボイラ5にて発生した水蒸気は、外部蒸気導入配管74を介して、ノズル蒸気配管72に導入可能となっている。つまり、外部ボイラ5の水蒸気発生部51とノズル蒸気配管72が、外部蒸気導入配管74によって接続されており、ノズル蒸気配管72の内部と外部蒸気導入配管74の内部が、相互に連通可能となっている。外部蒸気導入配管74を介してノズル蒸気配管72に導入された外部ボイラ5からの水蒸気は、後に説明する予熱工程において、ノズル蒸気配管72の予熱に用いることができる。加えて、外部蒸気導入配管74を介してノズル蒸気配管72に導入された外部ボイラ5からの水蒸気は、後に説明する外部蒸気噴射工程において、ガスタービン2の燃料ノズル25に供給して、ノズル蒸気として利用することもできる。また、外部ボイラ5にて発生した水蒸気は、外部蒸気導入配管74および水蒸気供給配管75を介して、水蒸気需要部D2にも供給することができる。つまり、バルブ(図略)の切り替えによって、ノズル蒸気配管72を介して燃料ノズル25に供給するノズル蒸気、また水蒸気供給配管75を介して水蒸気需要部D2に供給する水蒸気として、排熱回収ボイラ4からの水蒸気と、外部ボイラ5からの水蒸気を、切り替えて供給することができる。
【0028】
任意の構成ではあるが、本コージェネレーションシステム1において、排熱回収ボイラ4で発生した水蒸気を、ノズル蒸気として使用するのに加えて、過熱水蒸気の状態で燃焼器21内に噴射するケース蒸気としても、使用することができる。つまり、ノズル蒸気配管72を中途部で分岐させて、ケース蒸気配管73を設けておき、そのケース蒸気配管73を介して排熱回収ボイラ4から供給される水蒸気を、混合器26にて、ガスタービン2の圧縮機22で生成した圧縮空気と混合し、過熱水蒸気として噴射できるように構成すればよい。そして、その過熱水蒸気を燃焼器21に噴射しながら、ガスタービン2の運転を行えばよい。ケース蒸気として、燃焼器21内の火炎の外側に相当する位置に、過熱水蒸気を噴射することで、タービン23の入口部分における過剰な温度上昇を抑制しながら、ガスタービン2に導入するガスの質量流量を増大させ、ガスタービン2の出力を増大させることができる。外部蒸気導入配管74を介してノズル蒸気配管72に導入された外部ボイラ5からの水蒸気は、ケース蒸気配管73にも導入することができる。
【0029】
さらに、任意の構成ではあるが、本コージェネレーションシステム1は、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4と独立に、コンプレッサ装置6を有するものとすることができる。コンプレッサ装置6は、電気とともに水蒸気を駆動源として駆動され、空気を圧縮する装置である。コンプレッサ装置6においては、内蔵されるエアコンプレッサ62が、電気駆動のモータ63の回転に加えて、水蒸気による蒸気タービン61の回転を駆動源として、外部から取り込んだ空気G3から圧縮空気を生成する。排熱回収ボイラ4の水蒸気発生部41から、水蒸気需要部D2へと水蒸気を供給する水蒸気供給配管75の中途部から分岐させて、コンプレッサ用配管77が設けられており、そのコンプレッサ用配管77を介して、水蒸気供給配管75に供給された水蒸気の一部が、コンプレッサ装置6の蒸気タービン61に導入される。蒸気タービン61に導入された水蒸気は、エアコンプレッサ62の駆動の補助に用いられることで減圧され、その減圧された水蒸気成分が、減圧水蒸気配管78を通って、コンプレッサ装置6の駆動の補助に用いられなかった水蒸気と合流されたうえで、水蒸気需要部D2に供給される。コンプレッサ装置6で生成された圧縮空気は、外部の圧縮空気需要部D3に供給される。コンプレッサ用配管77にも、水蒸気供給配管75を介して、排熱回収ボイラ4からの水蒸気と、外部ボイラ5からの水蒸気を、切り替えて供給することができる。
【0030】
[コージェネレーションシステムの運転]
次に、上記で説明したコージェネレーションシステム1の運転について説明する。本コージェネレーションシステム1においては、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4を運転し、発電機3による発電および排熱回収ボイラ4による水蒸気の生成を行う期間と、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4を停止しておく期間を設ける。例えば、日中はガスタービン2および排熱回収ボイラ4を運転し、夜間はそれらを停止しておく。
【0031】
図2に、コージェネレーションシステム1の主要な構成要素の状態を、時間に沿って模式的に示す。各装置については、運転状態を、縦軸に沿って、停止状態と定常運転状態との間で表示しており、縦軸の上方ほど装置の立ち上がりが進行し、定常運転状態に近づいていることを示している。
図2では、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4の運転が停止されたタービン停止状態から、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4が定常運転状態で運転される運転状態へと遷移する立ち上げ時を中心に表示している。
【0032】
夜間のタービン停止状態から日中のタービン運転状態へと遷移させるために、朝に行われる立ち上げ時において、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4の起動に先立ち、外部ボイラ5を運転状態とし、水蒸気を発生させておく。この初期状態において、ノズル蒸気配管72には、排熱回収ボイラ4からの水蒸気をはじめ、水蒸気が導入されていないものとする。
【0033】
時刻T1において、外部ボイラ5からの水蒸気を、ノズル蒸気配管72に導入することで、予熱工程を実行する。外部ボイラ5から導入した水蒸気を、ノズル蒸気配管72の中に通気させることで、その水蒸気によってノズル蒸気配管72の壁面が加熱を受け、低温の状態から予熱されることになる。予熱に際し、外部ボイラ5からノズル蒸気配管72に導入され、通気される水蒸気は、ノズル蒸気配管72を通った後、排出される。コージェネレーションシステム1が、ケース蒸気配管73を有している場合には、外部ボイラ5からの水蒸気は、ケース蒸気配管73にも導入され、ケース蒸気配管73も予熱される。なお、時刻T1においてノズル蒸気配管72への水蒸気の供給を開始するのに伴い、外部ボイラの蒸気流量は上昇される。
【0034】
予熱工程において、外部ボイラ5からの水蒸気によってノズル蒸気配管72が十分に予熱され、ノズル蒸気配管72の内部が所定の温度に達すると、時刻T2において、予熱工程を完了する。つまり、時刻T1から継続していた、外部ボイラ5からノズル蒸気配管72への水蒸気の導入および通気を停止する。なお、時刻T1から時刻T2の予熱工程において、予熱に用いた水蒸気は、燃料ノズル25や混合器26を介してガスタービン2は導入せず、コージェネレーションシステム1の外部へと排出される。
【0035】
その後、時刻T3において、ガスタービン2を起動し、運転を開始する。そして、ガスタービン2を起動させた直後、ガスタービンの回転数が定常運転状態の水準に達した時刻T4において、外部蒸気噴射工程を開始する。つまり、時刻T4からの時間において、ノズル蒸気配管72に外部ボイラ5からの水蒸気を再導入し、その外部ボイラ5からの水蒸気を、ノズル蒸気として、燃料ノズル25に供給する。そして、燃料ガスG1と混合して、燃焼器21内へ噴射する。このように、外部ボイラ5で生成された水蒸気をノズル蒸気として用いて、燃料噴射を行いながら、ガスタービン2の出力を徐々に増大させる。時刻T4において、ノズル蒸気と燃料ガスG1の噴射を開始するのとほぼ同時、あるいはその直後に、発電機3および排熱回収ボイラ4も運転を開始する。
【0036】
時刻T4からノズル蒸気と燃料ガスG1の噴射を開始した後、ガスタービン2の出力を増大させるのに伴って、発電機3の発電量が上昇する。さらに、少し遅れて、排熱回収ボイラ4で発生される水蒸気の温度および圧力も上昇する。
【0037】
その後、時刻T5において、発電機3および排熱回収ボイラ4の運転状態が、定常運転状態に達すると、時刻T6において、切り替え工程を実行する。つまり、燃料ノズル25に供給する水蒸気を、外部ボイラ5からの水蒸気から、排熱回収ボイラ4からの水蒸気へと切り替える。時刻T6以降、切り替え工程におけるノズル蒸気としての水蒸気源の切り替えを挟んで、定常運転状態でのガスタービン2の運転、および排熱回収ボイラ4の運転が継続される。
図2中に「排熱回収ボイラ 蒸気流量」として表示するように、排熱回収ボイラ4から燃料ノズル25および水蒸気需要部D2に供給する水蒸気の流量は、時刻T6から上昇して、外部ボイラ5と同じ流量に設定された定常状態に達する。すると、排熱回収ボイラ4からの水蒸気を水蒸気需要部D2へと供給しはじめればよい。排熱回収ボイラ4からの水蒸気を、ケース蒸気噴射にも用いる場合には、
図2に表示するように、その後さらに蒸気流量が上昇される。
【0038】
以上のように、本実施形態にかかるコージェネレーション装置においては、排熱回収ボイラ4とは別に外部ボイラ5を設けておき、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4の立ち上げ時に、その外部ボイラ5からの蒸気を用いて、予熱工程および外部蒸気噴射工程を実施することにより、従来のコージェネレーション装置よりも、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4の立ち上げに要する時間を短縮できるとともに、立ち上げ時に発生するNOxを低減することができる。従来のコージェネレーション装置においては、外部ボイラが設けられず、外部ボイラからの水蒸気を利用した予熱工程および外部蒸気噴射工程を行わない。従来のコージェネレーションシステムにおいては、ガスタービンおよび排熱回収ボイラを起動した後、排熱回収ボイラから発生する水蒸気によってノズル蒸気配管が十分に高温になるのを待ち、さらに、排熱回収ボイラが定常運転状態まで立ち上がり、所定の温度および圧力でノズル蒸気を供給できるようになるのを待ってから、ノズル蒸気配管を介して燃料ノズルにノズル蒸気を供給し、燃料ガスとともに噴射を行う。すると、それらの待ち時間の間、ノズル蒸気を混合せずに燃料ガスを噴射して、ガスタービンを運転することになり、その間、NOxが高濃度で発生してしまう。
【0039】
これに対し、上記で説明した本実施形態にかかるコージェネレーションシステム1においては、タービン停止状態からタービン運転状態へと遷移する立ち上げ時に、予熱工程を実施し、既に運転されている外部ボイラ5からの蒸気を利用して、ノズル蒸気配管72を予熱している。これにより、ノズル蒸気配管72の壁面での冷却によるノズル蒸気の凝縮を防止することができる。そのため、ガスタービン2の起動直後から、ノズル蒸気配管72を通して、ノズル蒸気を燃料ノズル25に供給しても、凝縮により生じた水滴の水蒸気への混入によって、質量流量の計測および制御の困難化や、燃焼火炎の過剰冷却等の問題が生じにくい。水蒸気の凝縮を避けることを目的として、排熱回収ボイラ4で生成される水蒸気によってノズル蒸気配管72が加熱されるのを待つ必要はない。さらに、外部蒸気噴射工程を実施することで、予熱工程によってノズル蒸気配管72が予熱された後、排熱回収ボイラ4が定常運転状態まで完全に立ち上がるのを待たなくても、その予熱されたノズル蒸気配管72に、外部ボイラ5から水蒸気を導入し、ノズル蒸気として、燃料ガスG1の燃焼火炎温度の低温化に利用することができる。
【0040】
このように、予熱工程と外部蒸気噴射工程を実施することで、排熱回収ボイラ4からの水蒸気によってノズル蒸気配管72が加熱されるまで待たなくても、さらに、ノズル蒸気に求められる所定の温度および圧力の水蒸気を発生できる定常運転状態に達するまで、排熱回収ボイラ4の立ち上がりを待たなくても、ガスタービン2を起動した直後から、燃料ガスG1にノズル蒸気を混合して、燃焼器21へと噴射することができる。すると、ガスタービン2および発電機3の出力を早期に増大させることができ、定常運転状態に至るまでに要する立ち上げ時間を、短縮することができる。外気温等による立ち上げ時間の変動も、抑制することができる。さらに、ガスタービン2を起動した直後から、燃料ガスG1にノズル蒸気を混合して噴射することができるため、燃焼火炎の低温化によるNOx発生の低減を、ガスタービン2の起動直後から実行することができる。立ち上げ時間の短縮と、NOx発生濃度の抑制の両方の効果により、立ち上げ時間に発生するNOxの総量を、効果的に低減することができる。
【0041】
さらに、コージェネレーションシステム1において、ケース蒸気配管73が設けられる場合に、予熱工程において、そのケース蒸気配管73も予熱しておくことで、ケース蒸気についても、配管の壁面での冷却による水蒸気の凝縮を抑制することができる。ケース蒸気は、過熱水蒸気の状態でガスタービン2に導入する必要があり、水蒸気の凝縮が起こると、タービン23の損傷につながる可能性がある。ケース蒸気配管73も、外部ボイラ5からの水蒸気によって予熱しておくことで、水蒸気の凝縮による影響を抑制して、安定した条件で制御しながら、ケース蒸気の噴射を行うことが可能となる。
【0042】
本実施形態において、外部ボイラ5は、予熱工程を開始する時刻T1において既に立ち上がっており、十分な温度と圧力を有する水蒸気を発生させることができれば、その性能や、立ち上げのタイミングは、特に限定されるものではない。しかし、外部ボイラ5は、予熱工程および外部蒸気噴射工程を実施するに際し、時刻T5以降に定常運転状態に達した際の排熱回収ボイラ4と同じ温度および圧力で水蒸気を発生させて、ノズル蒸気配管72の内部にその水蒸気を供給できるものであることが好ましい。すると、予熱工程において、定常運転状態に達した後と同じ状態にノズル蒸気配管72を加熱したうえで、外部蒸気噴射工程において、定常運転状態に達した後と同じ条件で、ノズル蒸気の供給を行いながら、ガスタービン2の出力を増大させることができる。その結果、予熱工程および外部蒸気噴射工程による立ち上げ時間の短縮およびNOx低減を、効率的に達成することができる。また、切り替え工程において、不要な条件の変動を回避して、円滑に水蒸気源の切り替えを行うことができる。
【0043】
外部ボイラ5は、タービン停止状態にある時刻T1より前の期間から、外部蒸気噴射工程を終える時刻T5までの期間を含めて運転を継続されていれば、予熱工程および外部蒸気噴射工程を実施するために水蒸気を供給し、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4の立ち上げ時間の短縮とNOxの低減を効果的に行うという役割を果たすことができる。排熱回収ボイラ4が定常運転状態に立ち上がった後は、ノズル蒸気の供給および水蒸気需要部D2への水蒸気の供給を、排熱回収ボイラ4が単独で行うことになり、外部ボイラ5を使用する必要はなくなる。よって、その後は、外部ボイラ5の運転は停止しておけばよい(時刻T6)。
【0044】
時刻T1より前のタービン停止状態にある期間、つまり夜間は、外部ボイラ5を停止しておいてもよいが、コージェネレーションシステム1が終夜稼働の工場に設けられる場合等、夜間も水蒸気需要部D2にて水蒸気の需要がある場合には、タービン停止状態にある間も、外部ボイラ5の運転を継続すればよい。
図2では、夕刻に相当する時刻T7において、ガスタービン2、排熱回収ボイラ4、発電機3の運転を停止し、タービン停止状態に移行している。外部ボイラ5は、この時刻T7の少し前から、再度起動される。そして、時刻T7以降のタービン停止状態にある期間を通じて、つまり次の朝まで(次の日の時刻T6まで)、外部ボイラ5の運転が継続される。
【0045】
外部ボイラ5は、時刻T7以降のタービン停止状態にある期間においても、定常運転状態にある際の排熱回収ボイラ4と同じ温度および圧力で水蒸気を発生する状態に、運転状態を維持しておくことが好ましい。そして、タービン運転状態にある間(日中)は、排熱回収ボイラ4が水蒸気需要部D2に水蒸気を供給し、タービン停止状態にある間(夜間)は、外部ボイラ5が水蒸気需要部D2に水蒸気を供給するように構成すればよい。すると、全期間を通じて、同じ条件で、水蒸気需要部D2への水蒸気の供給を継続することができる。また、夜間に、すでに外部ボイラ5が定常的な運転状態にあるので、朝になってガスタービン2および排熱回収ボイラ4を立ち上げる際に(次の日の時刻T1以降)、外部ボイラ5からの水蒸気が、既に十分な温度と圧力を有する状態になっており、時刻T1からの予熱工程および外部蒸気噴射工程に、そのまま用いることができる。排熱回収ボイラ4が、それらの工程を実施するのに十分な温度および圧力の水蒸気を発生させられる状態に達した後は、水蒸気需要部D2への水蒸気の供給を、外部ボイラ5から排熱回収ボイラ4に引き継ぎ、上記のように外部ボイラ5は停止させておけばよい。なお、終夜稼働の工場等、水蒸気需要部D2への水蒸気の供給が夜間も必要な施設においては、電力需要部D1への電気の供給も、終夜にわたって必要になることが多いが、夜間は発電事業者からの電気の販売価格が安価であるため、コージェネレーションシステム1の発電機3によって発電を行うのではなく、発電事業者から購入した電気により、電力需要部D1での需要を賄えばよい。
【0046】
さらに、コージェネレーションシステム1がコンプレッサ装置6を備え、排熱回収ボイラ4から発生した水蒸気の一部を利用して、そのコンプレッサ装置6の駆動を補助する場合には、余剰の水蒸気のエネルギーを有効に利用して、圧縮空気の製造を行うことができる。例えば、水蒸気需要部D2で必要とする水蒸気の圧力が、排熱回収ボイラ4で生成される水蒸気の圧力より低い場合には、減圧弁76で水蒸気を減圧したうえで水蒸気需要部D2に供給することになるが、減圧分のエネルギーを、コンプレッサ装置6の駆動補助に有効利用することができる。
【0047】
コンプレッサ装置6の駆動の補助は、排熱回収ボイラ4からの水蒸気の他に、外部ボイラ5からの水蒸気によっても、行うことができる。そこで、夜間等、タービン停止状態にある間も、外部ボイラ5の運転が継続される場合には、上記で時刻T7での水蒸気需要部D2への水蒸気の供給の切り替えについて説明したのと同様に、タービン運転状態にある日中には、排熱回収ボイラ4から発生した水蒸気が、コンプレッサ装置6の駆動を補助する一方、タービン停止状態にある夜間には、外部ボイラ5から発生した水蒸気が、コンプレッサ装置6の駆動を補助するように構成すればよい。いずれの期間においても、ボイラから発生した水蒸気は、コンプレッサ装置6の駆動の補助に用いるとともに、コンプレッサ装置6の駆動によって減圧された成分を含んで、水蒸気需要部D2に供給するように構成すればよい。このようにしておくことで、水蒸気需要部D2への水蒸気の供給に加え、水蒸気を駆動源の一部としたコンプレッサ装置6の駆動による圧縮空気の供給を、タービン停止状態となる夜間も、安定に継続することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記では、外部ボイラ5を用いて、予熱工程と外部蒸気噴射工程の両方を実施することで、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4の立ち上げ時間の短縮と、立ち上げ時のNOxの発生の抑制を、高度に達成できる。しかし、予熱工程と外部蒸気噴射工程のいずれか一方のみを実施する構成としても、ガスタービン2および排熱回収ボイラ4の立ち上げ時間の短縮、および立ち上げ時のNOxの発生の抑制に、ある程度の効果は得られる。また、予熱工程のみを実施する場合に、予熱のための熱源は、外部ボイラ5に限られるものではなく、任意の外部熱源を利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 コージェネレーションシステム
2 ガスタービン
21 燃焼器
22 圧縮機
23 タービン
24 タービン軸
25 燃料ノズル
26 混合器
3 発電機
4 排熱回収ボイラ
5 外部ボイラ
6 コンプレッサ装置
71 排ガス経路
72 ノズル蒸気配管
73 ケース蒸気配管
74 外部蒸気導入配管
75 水蒸気供給配管
D1 電力需要部
D2 水蒸気需要部
D3 圧縮空気需要部
G1 燃料ガス
G2 都市ガス
G3 空気