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特開2024-170090キャパシタおよびキャパシタの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170090
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】キャパシタおよびキャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20241129BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 547
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087057
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑野 舞子
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AC05
5E082EE17
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE37
5E082EE39
5E082FF05
5E082FG25
5E082FG44
5E082GG10
5E082GG11
(57)【要約】
【課題】ディッシング発生の影響を抑制または回避できる、キャパシタおよびキャパシタの製造方法を提供する。
【解決手段】キャパシタ1は、第1主面3および第2主面4を有する基材2と、基材2を厚さ方向Zに貫通する複数の貫通電極6と、貫通電極6の周囲において第1主面3および第2主面4を形成する第1絶縁膜16、ならびに第1絶縁膜16を被覆する第1絶縁膜16とは膜質の異なる第2絶縁膜17の積層構造18とを含む。キャパシタ1は、隣り合う貫通電極6の間の容量部7を利用している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面およびその反対側の第2主面を有する基材と、
前記基材を厚さ方向に貫通する複数の貫通電極と、
前記貫通電極の周囲において少なくとも前記第1主面および前記第2主面の一方を形成する第1絶縁膜、ならびに前記第1絶縁膜を被覆する前記第1絶縁膜とは膜質の異なる第2絶縁膜の積層構造とを含み、
隣り合う前記貫通電極の間の容量部を利用した、キャパシタ。
【請求項2】
前記第2絶縁膜の表面から前記第2絶縁膜と前記貫通電極との境界を横切って前記貫通電極へ向かって下り傾斜する凹面を有する凹部が形成されており、
前記凹部の周囲において前記第2絶縁膜の前記表面は、研磨により形成された平滑面である、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記凹部の底部が、前記基材の厚さ方向に前記第1絶縁膜と間隔を空けて形成されている、請求項2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記第2絶縁膜が、前記第1絶縁膜を被覆して前記第1主面および前記第2主面の前記一方を形成しており、
前記第1絶縁膜が前記貫通電極に接しており、
前記第2絶縁膜が、前記第1絶縁膜と前記貫通電極との境界よりも外側において、前記貫通電極に接している、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記第2絶縁膜が、前記第1絶縁膜を被覆して前記第1主面および前記第2主面の前記一方を形成する第1領域と、前記第1絶縁膜と前記貫通電極とによって前記第1主面に沿う方向に挟まれた第2領域とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記第2領域の膜厚が、前記第1領域の膜厚よりも薄い、請求項5に記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記基材が、導電部を有し、
前記第1絶縁膜が、前記基材において前記導電部を被覆する、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記基材が前記第1絶縁膜によって形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記第2絶縁膜の膜厚が、500nm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項10】
前記第1絶縁膜が、熱酸化膜によって形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項11】
前記第2絶縁膜が、堆積膜によって形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項12】
複数の前記貫通電極が、第1貫通電極と第2貫通電極とを含み、
前記第1主面に配置され、前記第1貫通電極が電気的に接続された第1外部電極と、
前記第2主面に配置され、前記第2貫通電極が電気的に接続された第2外部電極とをさらに含み、
前記第1絶縁膜が、隣り合う前記第1貫通電極および前記第2貫通電極によって前記第1主面に沿う方向に挟まれている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項13】
複数の前記貫通電極が、平面視でストライプ状に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項14】
複数の前記貫通電極が、平面視で格子状に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項15】
一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する基板に、前記基板を厚さ方向に貫通する複数の貫通穴を形成する第1工程と、
複数の前記貫通穴が形成されている前記基板を熱酸化して、前記基板における前記貫通穴の周囲の部分に第1絶縁膜を形成する第2工程と、
少なくとも前記第1主面および前記第2主面の一方において、前記第1絶縁膜と膜質の異なる第2絶縁膜であって前記第1絶縁膜を被覆する第2絶縁膜を形成し、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜の積層構造を形成する第3工程と、
前記第1主面および前記第2主面の前記一方において前記第2絶縁膜を覆う導電膜を形成し、前記導電膜によって複数の前記貫通穴の内部を埋める第4工程と、
前記第1主面および前記第2主面の前記一方が露出するまで前記導電膜を研磨する第5工程とを含む、キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャパシタおよびキャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の貫通孔を有する基板と、貫通孔に充填された貫通電極と、基板の第1主面上に形成された絶縁性カバー膜と、絶縁性カバー膜の上に形成されたキャパシタ構造と、キャパシタ構造を覆う保護絶縁膜と、キャパシタ構造と電気的に接続され、かつ対応する貫通電極と電気的に接続される複数の接続パッドとを備える、貫通電極付きキャパシタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/110288号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一実施形態は、ディッシング発生の影響を抑制または回避できる、キャパシタおよびキャパシタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、第1主面およびその反対側の第2主面を有する基材と、前記基材を厚さ方向に貫通する複数の貫通電極と、前記貫通電極の周囲において少なくとも前記第1主面および前記第2主面の一方を形成する第1絶縁膜、ならびに前記第1絶縁膜を被覆する前記第1絶縁膜とは膜質の異なる第2絶縁膜の積層構造とを含む、キャパシタを提供する。前記キャパシタが、隣り合う前記貫通電極の間の容量部を利用している。
【0006】
本開示の一実施形態は、一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する基板に、前記基板を厚さ方向に貫通する複数の貫通穴を形成する第1工程と、複数の前記貫通穴が形成されている前記基板を熱酸化して、前記基板における前記貫通穴の周囲の部分に第1絶縁膜を形成する第2工程と、少なくとも前記第1主面および前記第2主面の一方において、前記第1絶縁膜と膜質の異なる第2絶縁膜であって前記第1絶縁膜を被覆する第2絶縁膜を形成し、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜の積層構造を形成する第3工程と、前記第1主面および前記第2主面の前記一方において前記第2絶縁膜を覆う導電膜を形成し、前記導電膜によって複数の前記貫通穴の内部を埋める第4工程と、少なくとも前記第1主面および前記第2主面の前記一方が露出するまで前記導電膜を研磨する第5工程とを含む、キャパシタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、ディッシング発生の影響を抑制または回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係るキャパシタの模式的な平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う模式的な断面図である。
図3図3は、図2の一点鎖線IIIで囲まれた部分の拡大図である。
図4図4は、図2の一点鎖線IVで囲まれた部分の拡大図である。
図5A図5Aは、本開示の第1実施形態に係るキャパシタの製造工程の一部を示す断面図であって、図2に対応する図である。
図5B図5Bは、図5Aの次の工程を示す断面図である。
図5C図5Cは、図5Bの次の工程を示す断面図である。
図5D図5Dは、図5Cの次の工程を示す断面図である。
図5E図5Eは、図5Dの次の工程を示す断面図である。
図5F図5Fは、図5Eの次の工程を示す断面図である。
図5G図5Gは、図5Fの次の工程を示す断面図である。
図5H図5Hは、図5Gの次の工程を示す断面図である。
図5I図5Iは、図5Hの次の工程を示す断面図である。
図5J図5Jは、図5Iの次の工程を示す断面図である。
図5K図5Kは、図5Jの次の工程を示す断面図である。
図6図6は、参考形態に係るキャパシタの模式的な断面図であって、図3に対応する図である。
図7図7は、本開示の第2実施形態に係るキャパシタの模式的な断面図であって、図2に対応する図である。
図8図8は、図7の一点鎖線VIIIで囲まれた部分の拡大図である。
図9A図9Aは、本開示の第2実施形態に係るキャパシタの製造工程の一部を示す断面図であって、図7に対応する図である。
図9B図9Bは、図9Aの次の工程を示す断面図である。
図9C図9Cは、図9Bの次の工程を示す断面図である。
図9D図9Dは、図9Cの次の工程を示す断面図である。
図10図10は、本開示の第3実施形態に係るキャパシタの模式的な平面図である。
図11図11は、図10のXI-XI線に沿う模式的な断面図である。
図12図12は、図10のXII-XII線に沿う模式的な断面図である。
図13図13は、図11の一点鎖線XIIIで囲まれた部分の拡大図である。
図14図14は、図11の一点鎖線XIVで囲まれた部分の拡大図である。
図15図15は、本開示の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の第1実施形態に係るキャパシタ1の模式的な平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な断面図である。
【0010】
キャパシタ1は、直方体形状の基材2を含む。基材2は、一方側の第1主面3、他方側の第2主面4、ならびに第1主面3および第2主面4を接続する側面5A,5B,5C,5Dを有している。キャパシタ1は、ディスクリートキャパシタとも称される。
【0011】
第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。側面5Aおよび側面5Cは、第1方向Xに沿って延び、第1方向Xに交差する第2方向Yに対向している。側面5Bおよび側面5Dは、第2方向Yに沿って延び、第1方向Xに対向している。第2方向Yは、具体的には、第1方向Xに直交している(垂直である)。
【0012】
この実施形態では、基材2は、平面視において正方形状である。この実施形態では、基材2の一辺の長さLは、たとえば1mm以上10mm以下であり、この実施形態ではたとえば10mmである。また、基材2の厚さT(図2参照)は、たとえば100μm以上1mm以下であり、この実施形態ではたとえば500μmである。基材2のサイズをこのようなサイズにすることにより、キャパシタ1をいわゆるチップ部品として構成できる。そのため、キャパシタ1を多種の用途に適用できる。基材2の平面形状が長方形であってもよい。また、基材2の平面形状は四角形状に限られず、たとえば円形状であってもよい。
【0013】
図1および図2を参照して、キャパシタ1は、複数の貫通電極6をさらに含む。複数の貫通電極6は、基材2を厚さ方向(法線方向Z)に貫通する電極であり、互いに間隔を空けて形成されている。複数の貫通電極6は、平面視において第1方向Xに間隔を空けて配列され、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。つまり、複数の貫通電極6は、第2方向Yに延びるストライプ状に配列されている。
【0014】
複数の貫通電極6は、第1貫通電極8と、第2貫通電極9とを含む。図1および図2の例では、貫通電極6の個数は3つである。複数の貫通電極6は、2つの第1貫通電極8と、1つの第2貫通電極9とを含む。図1および図2の例では、2つの第1貫通電極8によって1つの第2貫通電極9が、第1方向Xに挟まれている。複数の貫通電極6は、基材2を厚さ方向(法線方向Z)に貫通する複数(この実施形態では、3つ)の貫通穴10に埋め込まれた導電体によって形成されている。図1において、第1貫通電極8と第2貫通電極9とを識別し易くするために、第1貫通電極8および第2貫通電極9は、互いに異なるハッチングを用いて示されている。
【0015】
複数の貫通穴10は、平面視において、第2方向Yに延びるストライプ状に形成されている。貫通穴10は、第1方向Xに等間隔に並んでいる。貫通穴10の第1方向Xの幅W1は、たとえば5μm以上200μm以下であり、この実施形態ではたとえば100μmである。貫通穴10の幅W1は、基材2の厚さ方向に均一である。貫通穴10の内面10a(図2参照)は、第1主面に直交な平坦面である。隣り合う貫通穴10の間隔W2は、たとえば1μm以上400μm以下であり、この実施形態ではたとえば200μmである。間隔W2は、隣り合う貫通電極6の電極間距離である。
【0016】
貫通電極6は、貫通穴10の内部に埋め込まれた導電体である。貫通電極6は、貫通穴10の内面10aを覆う薄い導電層11と、導電層11を挟んで貫通穴10の内部に埋め込まれた電極層12とを含む。導電層11は、たとえばCuである。導電層11は、Ni、NiCr、Co等であってもよい。電極層12は、たとえばCuである。電極層12は、たとえばNi等であってもよい。
【0017】
貫通電極6のうち第1貫通電極8は、後述する第1外部電極23に電気的に接続されており、後述する第2外部電極26から絶縁されている。貫通電極6のうち第2貫通電極9は、第2外部電極26に電気的に接続されており、第1外部電極23から絶縁されている。
【0018】
キャパシタ1は、第1絶縁膜16と第2絶縁膜17との積層構造18をさらに含む。基材2の内部には、複数のシリコン部(導電部)19が形成されている。複数のシリコン部19は、基材2において隣り合う貫通電極6の間、および貫通電極6と側面5B,5Dとの間に形成されている。なお、基材2のベース材料がシリコン基板以外の導電材料である場合、シリコン部19は、導電部と称されてもよい。
【0019】
第1絶縁膜16は、複数のシリコン部19の周囲を包囲している。第1絶縁膜16は、基材2の第1主面3、第2主面4、側面5A,5B,5C,5Dおよび貫通穴10の内面10aを形成している。これにより、複数のシリコン部19は、それぞれ、第1絶縁膜16により完全に被覆され、外部との導通が第1絶縁膜16により遮断されている。第1絶縁膜16は、熱酸化膜である。第1絶縁膜16は酸化シリコン(SiO)である。第1絶縁膜16の膜厚t1は、0.5μm以上2μm以下であり、この実施形態ではたとえば1.2μmである。
【0020】
基材2において、各貫通電極6は、第1絶縁膜16によって第1方向Xに挟まれている。つまり、第1貫通電極8および第2貫通電極9は、第1絶縁膜16によって第1方向Xに挟まれている。貫通電極6は、第1境界6cにおいて第1絶縁膜16に接している。第1境界6cは、たとえば平坦面からなる境界面である。
【0021】
第2絶縁膜17は、堆積膜により形成されている。第2絶縁膜17は、酸化シリコン(SiO)である。つまり、積層構造18は、第1絶縁膜16と、第1絶縁膜16を被覆し、第1絶縁膜16と異なる膜質の第2絶縁膜17との積層構造である。ここで、異なる膜質とは、たとえば、第1絶縁膜16および第2絶縁膜17の緻密性が互いに異なっていてもよい。この形態では、第1絶縁膜16が、相対的に高い緻密性を有し、第2絶縁膜17が、第1絶縁膜16よりも相対的に低い緻密性を有している。
【0022】
第1絶縁膜16と第2絶縁膜17との間には、図2に示すように明確に定義できる膜界面が存在していてもよいし、存在していなくてもよい。膜の緻密性は、たとえば、共通のエッチングガスまたはエッチング液で第1絶縁膜16および第2絶縁膜17をエッチングし、そのときのエッチングレートの差に基づいて比較することができる。たとえば、共通のエッチングガスまたはエッチング液で第1絶縁膜16および第2絶縁膜17をエッチングしたときに、相対的に高い緻密性を有する第1絶縁膜16のエッチングレートが、第2絶縁膜17のエッチングレートよりも遅くてもよい。なお、第1絶縁膜16および第2絶縁膜17が共に酸化シリコンからなる場合、共通のエッチングガスとして、フッ酸(HF)を使用することができる。
【0023】
第2絶縁膜17は、SiN、SiONであってもよい。第2絶縁膜17の膜厚t2は、500nm以上2μm以下である。第2絶縁膜17(第1膜171および第2膜172)の膜厚t2は、次に述べるディッシングによる凹部31,41の最深部31c,32c(図3および図4参照)が第1絶縁膜16に達しない程度の厚さに設定されている。
【0024】
第2絶縁膜17は、第1絶縁膜16の第1主面3を形成する第1表面16aを被覆する第1膜171と、第1絶縁膜16の第2主面4を形成する第2表面16bを被覆する第2膜172とを備えている。この実施形態では、第2絶縁膜17は、貫通電極6と第1絶縁膜16とによって第1方向Xに挟まれていない。
【0025】
図3は、図2の一点鎖線IIIで囲まれた部分の拡大図である。
【0026】
図2および図3を参照して、第1膜171は、第1絶縁膜16の第1表面16aの全域に形成されている。第1膜171の表面171aは、貫通電極6の第1主面3側の第1端面6a(第1貫通電極8の第1端面6aおよび第2貫通電極9の第1端面6a)と面一である。第1膜171は、第1境界6cよりも第2主面4側と反対側(外側)に位置する第2境界6dにおいて、それぞれ貫通電極6(第1貫通電極8および第2貫通電極9)に接している。
【0027】
図2および図3を参照して、第1主面3には、凹部31が形成されている。具体的には、凹部31は、貫通電極6の第1主面3側の第1端面6aと、第1膜171の表面171aのうち第1端面6aの周囲の部分とに跨って形成されている。凹部31は、いわゆるディッシングにより発生した凹部である。
【0028】
図3を参照して、凹部31は、第1方向Xの中央部が第2主面4側に凹む凹面32を有している。凹面32の最深部(底部)32cは、第1端面6aにおいて第1方向Xの中央部に形成されている。凹面32は、貫通電極6に対し第1方向Xの両側に隣接する第1膜171の表面171aから、第1膜171と貫通電極6との第2境界6dを横切って、最深部32cへ向かって下り傾斜している。
【0029】
凹面32は、第1凹面部32aと、第1凹面部32aの両端に連続する2つの第2凹面部32bとを含む。第1凹面部32aは、貫通電極6の第1端面6aに形成されている。第1凹面部32aは、貫通電極6の第1端面6aの全域に形成されている。第2凹面部32bは、第2絶縁膜17の第1膜171の表面171aにおいて、貫通電極6の第1端面6aの周囲の部分に形成されている。
【0030】
図3を参照して、第1膜171の表面171aは、平滑面171bと、第2凹面部32bとを含む。平滑面171bと第2凹面部32bとは連続している。平滑面171bは、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等による研磨後の平坦かつ滑らかな面である。第1膜171は、第2境界6dにおいて最小膜厚t3を有している。第1膜171の最小膜厚t3は、200nm以上400nm以下である。第1膜171の最小膜厚t3は、第2凹面部32bの第1方向Xの幅W3よりも小さくてもよい。第1膜171の最小膜厚t3は、第2凹面部32bの最大深さD1よりも小さくてもよい。
【0031】
第2凹面部32bは、第1絶縁膜16の表面16aに達していない。別の言い方では、凹部31の最深部32cが、基材2の厚さ方向(法線方向Z)に第1絶縁膜16と間隔を空けて形成されている。さらに別の言い方では、第2凹面部32bと第1絶縁膜16との間に第2絶縁膜17の第1膜171がある。
【0032】
図4は、図2の一点鎖線IVで囲まれた部分の拡大図である。
【0033】
図2および図4を参照して、第2膜172は、第1絶縁膜16の第2表面16bの全域に形成されている。第2膜172の表面172aは、貫通電極6の第2主面4側の第2端面6b(第1貫通電極8の第2端面6bおよび第2貫通電極9の第2端面6b)と面一である。第2膜172は、第1境界6cよりも第1主面3側と反対側(外側)に位置する第3境界6eにおいて、それぞれ貫通電極6(第1貫通電極8および第2貫通電極9)に接している。
【0034】
図2および図4を参照して、第2主面4には、凹部41が形成されている。具体的には、凹部41は、貫通電極6の第2主面4側の第2端面6bと、第2膜172の表面172aのうち第2端面6bの周囲の部分とに跨って形成されている。凹部41は、いわゆるディッシングにより発生した凹部である。
【0035】
図4を参照して、凹部41は、第1方向Xの中央部が第1主面3側に凹む凹面42を有している。凹面42の最深部(底部)42cは、第2端面6bにおいて第1方向Xの中央部に形成されている。凹面42は、貫通電極6に対し第1方向Xの両側に隣接する第2膜172の表面172aから、第2膜172と貫通電極6との第3境界6eを横切って、最深部42cへ向かって下り傾斜している。
【0036】
凹面42は、第3凹面42aと、第3凹面42aの両端に連続する2つの第4凹面42bとを含む。第3凹面42aは、貫通電極6の第2端面6bに形成されている。第3凹面42aは、貫通電極6の第2端面6bの全域に形成されている。第4凹面42bは、第2絶縁膜17の第2膜172の表面172aにおいて、貫通電極6の第2端面6bの周囲の部分に形成されている。
【0037】
図4を参照して、第2膜172の表面172aは、平滑面172bと、第4凹面42bとを含む。平滑面172bと第4凹面42bとは連続している。平滑面172bは、CMP法等による研磨後の平坦かつ滑らかな面である。第2膜172は、第3境界6eにおいて最小膜厚t4を有している。第2膜172の最小膜厚t4は、200nm以上400nm以下である。第2膜172の最小膜厚t4は、第4凹面42bの第1方向Xの幅W4よりも小さくてもよい。第2膜172の最小膜厚t4は、第4凹面42bの最大深さD2よりも小さくてもよい。
【0038】
第4凹面42bは、第1絶縁膜16の第2表面16bに達していない。別の言い方では、凹部41の最深部42cが、基材2の厚さ方向(法線方向Z)に第1絶縁膜16と間隔を空けて形成されている。さらに別の言い方では、第4凹面42bと第1絶縁膜16との間に第2絶縁膜17の第2膜172がある。
【0039】
図2を参照して、基材2の第1主面3上には、第2貫通電極9の第1端面6aを被覆するように、第3絶縁膜21が形成されている。第3絶縁膜21には、第1貫通電極8の第1端面6aを露出させる第1コンタクト穴22が形成されている。第3絶縁膜21は、たとえば酸化シリコン(SiO)である。第3絶縁膜21は、SiN、SiONであってもよい。第3絶縁膜21によって、第2貫通電極9と次に述べる第1外部電極23とが絶縁される。
【0040】
図2を参照して、第3絶縁膜21上には、第1外部電極23が形成されている。第1外部電極23は、全ての第1貫通電極8の第1端面6aを被覆するように、かつ第3絶縁膜21の露出面のうち、第3絶縁膜21の表面周縁部および外側面以外の露出面を被覆するように形成されている。この実施形態では、第1外部電極23は、平面視で、基材2の第1主面3において周端縁を除くほぼ全域に形成されている。第1外部電極23は、第3絶縁膜21の第1コンタクト穴22の内部に入り込み、第1コンタクト穴22の内部で第1貫通電極8の第1端面6aに接している。これにより、第1外部電極23は、第1貫通電極8に電気的に接続されている。
【0041】
第1外部電極23は、この実施形態では、Cuである。第1外部電極23が、Al、Pt、Au、Ag、Ni等であってもよい。
【0042】
図2を参照して、基材2の第2主面4上には、第1貫通電極8の第2端面6bを被覆するように、第4絶縁膜24が形成されている。第4絶縁膜24には、第2貫通電極9の第2端面6bを露出させる第2コンタクト穴25が形成されている。第4絶縁膜24は、たとえば酸化シリコン(SiO)である。第4絶縁膜24は、SiN、SiONであってもよい。第4絶縁膜24によって、第1貫通電極8と次に述べる第2外部電極26とが絶縁される。
【0043】
図2を参照して、第4絶縁膜24上には、第2外部電極26が形成されている。第2外部電極26は、全ての第2貫通電極9の第2端面6bを被覆するように、かつ第4絶縁膜24の露出面のうち、第4絶縁膜24の表面周縁部および外側面以外の露出面を被覆するように形成されている。この実施形態では、第2外部電極26は、平面視で、基材2の第2主面4において周端縁を除くほぼ全域に形成されている。第2外部電極26は、第4絶縁膜24の第2コンタクト穴25の内部に入り込み、第2コンタクト穴25の内部で第2貫通電極9の第2端面6bに接している。これにより、第2外部電極26は、第2貫通電極9に電気的に接続されている。
【0044】
第2外部電極26は、この実施形態では、Cuである。第2外部電極26が、Al、Pt、Au、Ag、Ni等であってもよい。
【0045】
図2を参照して、隣り合う第1貫通電極8および第2貫通電極9において、第1貫通電極8に含まれる貫通穴10の内面10aと、第2貫通電極9に含まれる貫通穴10の内面10aとは第1方向Xに対向している。そして、これら互いに対向する内面10a同士によって挟まれた部分にある第1絶縁膜16が、容量部7を構成している。容量部7は、容量膜と称されてもよい。キャパシタ1の容量が所定になるように、第1絶縁膜16の寸法が設定されている。すなわち、第1絶縁膜16の寸法によって、キャパシタ1の容量が規定される。
【0046】
第1方向Xに対向する一組の第1貫通電極8および第2貫通電極9と、それらの間の容量部7とによって、一つのキャパシタ要素が構成されている。そして、第1貫通電極8が第1外部電極23に電気的に接続され、かつ第2貫通電極9が第2外部電極26に電気的に接続されているため、全てのキャパシタ要素が並列に接続されたキャパシタ1を得ることができる。これにより、キャパシタ1の小型化および大容量化を図ることができる。
【0047】
図5A図5Kは、本開示の第1実施形態に係るキャパシタ1の製造工程を説明するための断面図であり、図2に対応する図である。
【0048】
図5Aを参照して、キャパシタ1を製造するには、基材2のベースになるシリコン基板(基板)100が用意される。シリコン基板100は、第1主面101と、第1主面101と反対側の第2主面102と、第1主面101と第2主面102とを連結する4つの側面103とを含む。
【0049】
次に、図5Bを参照して、シリコン基板100が選択的に除去されることにより、第1主面101と第2主面102とを貫通する貫通穴10が、シリコン基板100に複数個(この実施形態では3つ)形成される(第1工程)。複数の貫通穴10は、第2方向Yに沿って帯状に延びている。複数の貫通穴10は、電気化学エッチング(Electrochemical Etching)法によって形成される。複数の貫通穴10は、レーザー加工、ドライエッチング法等によって形成されてもよい。
【0050】
次に、図5Cを参照して、熱酸化法により、シリコン基板100が酸化される。具体的には、シリコン基板100の第1主面101、第2主面102、4つの側面103および複数の貫通穴10の内面10aから、酸化膜が成長する。これにより、シリコン基板100に、酸化シリコン(SiO)からなる第1絶縁膜16が形成される(第2工程)。シリコン基板100の内部のうち酸化膜が形成されなかった部分が、シリコン部19になる。
【0051】
次に、図5Dを参照して、シリコン基板100の第1主面101上に、第1ベース絶縁膜105が堆積される。第1ベース絶縁膜105によって第1主面101が被覆される。この工程では、貫通穴10の内面10aに堆積膜が形成されないように、成膜時の温度や流量等が調整される。第1ベース絶縁膜105は、堆積膜である。第1ベース絶縁膜105は、CVD法によって形成されてもよい。第1ベース絶縁膜105は、スパッタ法によって形成されてもよい。第1ベース絶縁膜105は、酸化シリコン(SiO)であってよいし、SiN、SiONであってもよい。
【0052】
また、シリコン基板100の第2主面102上に、第2ベース絶縁膜106が堆積される。第2ベース絶縁膜106によって第2主面102が被覆される。この工程では、貫通穴10の内面10aに堆積膜が形成されないように、成膜時の温度や流量等が調整される。第2ベース絶縁膜106は、堆積膜である。第2ベース絶縁膜106は、CVD法によって形成されてもよい。第2ベース絶縁膜106は、スパッタ法によって形成されてもよい。第2ベース絶縁膜106は、酸化シリコン(SiO)であってよいし、SiN、SiONであってもよい。
【0053】
第1ベース絶縁膜105が、第1絶縁膜16の第1表面16aの上に積層される第1膜171になる。第2ベース絶縁膜106が、第1絶縁膜16の第2表面16bの上に積層される第2膜172になる。第1ベース絶縁膜105および第2ベース絶縁膜106は堆積膜である。第1膜171および第2膜172は、第2絶縁膜17に含まれる。これにより、第1絶縁膜16と、第1絶縁膜16を被覆し、第1絶縁膜16と異なる膜質の第2絶縁膜17との積層構造18が形成される(第3工程)。
【0054】
第1膜171の表面171aが、基材2の第1主面3とされる。第2膜172の表面172aが、基材2の第2主面4とされる。シリコン基板100の4つの側面103が、基材2の側面5A,5B,5C,5Dとされる(図1を併せて参照)。
【0055】
次に、図5Eを参照して、複数の貫通穴10の内面10a、基材2の第1主面3および第2主面4に、導電層11(図2参照)のベースとなるシード層(導電膜)107が形成される。シード層107は、たとえばCu層、Ni層等である。シード層107は、たとえば、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、CVD法、めっき法等によって形成される。
【0056】
次に、図5Fを参照して、シード層107上に、電極層12(図2参照)の材料層である導電膜108が形成される。導電膜108は、たとえばCu層、Ni層等である。導電膜108は、たとえばめっき法によって形成される。導電膜108によって、複数の貫通穴10の内部が埋められる(第4工程)。導電膜108の形成は、複数の貫通穴10の内部が導電膜108によって埋め尽くされるまで続けられる。導電膜108は、CVD法によって形成されてもよい。
【0057】
次に、図5Gを参照して、第1主面101上および第2主面102上のシード層107および導電膜108が除去される。この工程は、研磨法によって第1主面3および第2主面4においてそれぞれ第1膜171の表面171aおよび第2膜172の表面172aが露出するまで続行される(第5工程)。研磨法は、CMP法であってもよい。これにより、貫通穴10の内部に、導電層11および電極層12を含む第1貫通電極8(貫通電極6)が埋め込まれた構成が得られる。また、貫通穴10の内部に、導電層11および電極層12を含む第2貫通電極9(貫通電極6)が埋め込まれた構成が得られる。
【0058】
このとき、導電膜(シード層107および導電膜108)の研磨レートと、絶縁膜(第1ベース絶縁膜105および第2ベース絶縁膜106)の研磨レートとの間に差がある。そのため、導電膜の表面や絶縁膜の表面の一部が平坦化されずに凹む、いわゆるディッシングが生じるおそれがある。この場合、研磨後において、第1主面3を構成する第1膜171の表面171a、および第2主面4を構成する第2膜172の表面172aに、図5Gに示すように凹部31,41が形成されることがある。
【0059】
次に、図5Hを参照して、たとえばスパッタ法により、基材2の第1主面3上に、第1主面3と、第1貫通電極8の第1主面3側の第1端面6aと、第2貫通電極9の第1主面3側の第1端面6aとを覆うように、第3絶縁膜21が形成される。第3絶縁膜21は、CVD法によって形成されてもよい。第3絶縁膜21は、たとえば酸化シリコン(SiO)である。
【0060】
次に、たとえばスパッタ法により、基材2の第2主面4上に、第2主面4と、第2貫通電極9の第2主面4側の第2端面6bと、第2貫通電極9の第2主面4側の第2端面6bとを覆うように、第4絶縁膜24が形成される。第4絶縁膜24は、CVD法によって形成されてもよい。第4絶縁膜24は、たとえば酸化シリコン(SiO)である。
【0061】
次に、図5Iを参照して、第3絶縁膜21の上に、第1マスク109が積層される。第1マスク109は、第3絶縁膜21において第1コンタクト穴22を形成すべき領域を露出させ、それら以外の領域を被覆している。
【0062】
次に、第1マスク109を介するエッチング法によって、第3絶縁膜21が選択的に除去される。これにより、第1コンタクト穴22が形成される。エッチング法は、ウェットエッチング法であってよい。第1コンタクト穴22の形成後、第1マスク109は除去される。
【0063】
次に、図5Jを参照して、第4絶縁膜24の上に、第2マスク110が積層される。第2マスク110は、第4絶縁膜24において第2コンタクト穴25を形成すべき領域を露出させ、それら以外の領域を被覆している。
【0064】
次に、第2マスク110を介するエッチング法によって、第4絶縁膜24が選択的に除去される。これにより、第2コンタクト穴25が形成される。エッチング法は、ウェットエッチング法であってよい。第2コンタクト穴25の形成後、第2マスク110は除去される。
【0065】
次に、図5Kに示すように、たとえばめっき法によって、基材2の第1主面3を覆う第1外部電極23が形成される。また、たとえばめっき法によって、基材2の第2主面4を覆う第2外部電極26が形成される。第1外部電極23は、第3絶縁膜21の露出面(外側面を除く)および全ての第1貫通電極8の第1端面6aを覆うように形成される。第2外部電極26は、第4絶縁膜24の露出面(外側面を除く)および全ての第2貫通電極9の第1端面6aを覆うように形成される。以上を含む工程によって、図1および図2に示されるキャパシタ1が得られる。
【0066】
以上により、第1絶縁膜16および第2絶縁膜17の積層構造18を有するキャパシタ1を容易に製造できる。
【0067】
図6は、参考形態に係るキャパシタ151の模式的な断面図であって、図3に対応する図である。図6に示すキャパシタ151は、第2絶縁膜17(第1膜171および第2膜172)を形成していない点において、図1および図2に示すキャパシタ1と相違している。図6では、参考のため、キャパシタ151において、図3に示すキャパシタ1の各部に対応する構成に同一の参照符号を付している。
【0068】
キャパシタ151では、第1絶縁膜16の第1表面16aが第1主面3に露出しているので、ディッシングによる凹部131が第1絶縁膜16の第1表面16aに形成されるおそれがある。第1絶縁膜16は容量膜であり、第1絶縁膜16によってキャパシタ151の容量は設計されている。そのため、ディッシングによる凹部(凹部131)が第1絶縁膜16に形成されると、キャパシタ151の容量が所期の容量値から変化するおそれがある。
【0069】
また、ディッシングによる凹部(凹部131)が深く形成されて、仮にシリコン部19(導電部)に達する場合、貫通電極6(第1貫通電極8および第2貫通電極9)がシリコン部19に電気的に接続してしまい、その結果、キャパシタ151が短絡するおそれもある。
【0070】
これに対し、この実施形態では、第1絶縁膜16および第1絶縁膜16を被覆する第2絶縁膜17の積層構造18が基材2に形成されている。この積層構造18にディッシングが発生しても、ディッシングによる凹部31,41は第2絶縁膜17に形成される。そのため、容量部7として機能する第1絶縁膜16においてディッシングによる凹部の発生を抑制または防止できる。そのため、キャパシタ1の容量が所期の容量値から変化したり、キャパシタ1に短絡が発生したりすることを防止できる。これにより、ディッシング発生の影響を抑制または回避できる。
【0071】
そして、凹部31,41の最深部(底部)31c,32cと第1絶縁膜16とが、基材2の厚さ方向(法線方向Z)に間隔を空けて形成されている。そのため、凹部31,41の底部が、第1絶縁膜16の表面16a,16bに達していない。すなわち、ディッシングによる凹部31,41が第1絶縁膜16に形成されない。これにより、ディッシングによる影響を確実に回避できる。
【0072】
また、第1絶縁膜16が熱酸化膜により形成されている。第1絶縁膜16を第1絶縁膜16が高品質の熱酸化膜で形成されているので、容量膜として機能する第1絶縁膜16の容量値を適当な値に設定できる。
【0073】
一方、第2絶縁膜17(第1膜171および第2膜172)は、堆積膜により形成されている。堆積膜として設けるので、第2絶縁膜17を所定の厚みに設定することができる。これにより、第2絶縁膜17(第1膜171および第2膜172)の膜厚t2を、ディッシングによる凹部31,41の最深部31c,32cが第1絶縁膜16に達しない程度の厚さに設定できる。
【0074】
また、第1膜171は、第1境界6cよりも第2主面4側と反対側(外側)に位置する第2境界6dにおいて、貫通電極6(第1貫通電極8および第2貫通電極9)に接している。また、第2膜172は、第1境界6cよりも第1主面3側と反対側(外側)に位置する第3境界6eにおいて、貫通電極6(第1貫通電極8および第2貫通電極9)に接している。すなわち、第2絶縁膜17が、第1絶縁膜16と貫通電極6とによって第1方向Xに挟まれていない。そのため、第2絶縁膜17がキャパシタ1の容量にほとんど影響を及ぼさない。これにより、キャパシタ1の容量の設計を容易にできる。
【0075】
図7は、本開示の第2実施形態に係るキャパシタ201の断面図であって、図2に対応する図である。図8は、図7の一点鎖線VIIIで囲まれた部分の拡大図である。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを主として説明し、今まで説明した構成と同じ構成には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
第2実施形態に係るキャパシタ201が第1実施形態に係るキャパシタ1と相違する点は、第2絶縁膜217が、第1膜(第1領域)171および第2膜(第1領域)172に加え、第3膜273(第2領域。図8参照)を含む点である。第2絶縁膜217は、堆積膜により形成されている。つまり、キャパシタ201は、第1絶縁膜16と、第1絶縁膜16を被覆し、第1絶縁膜16と異なる膜質の第2絶縁膜217との積層構造218を有している。
【0077】
図8を参照して、第3膜273は、貫通穴10の内面10aに形成されている。第3膜273は、キャパシタ201の深さ方向(法線方向Z)の中央部に向かうに従って、膜厚が薄くなっている。そのため、第3膜273の表面273aは、キャパシタ201の深さ方向(法線方向Z)の中央部に向かうに従ってシリコン部19に接近するような傾斜面である。第3膜273は、貫通穴10の開口端付近において最大膜厚t5を有している。第3膜273の最大膜厚t5は、第2膜172の膜厚t2よりも薄い。
【0078】
貫通電極6の導電層11は、第2絶縁膜217の第3膜273の表面273aに沿う形状である。すなわち、貫通電極6の導電層11は、キャパシタ201の深さ方向(法線方向Z)の中央部に向かうに従ってシリコン部19に接近するような傾斜状である。
【0079】
図9A図9Dは、本開示の第2実施形態に係るキャパシタ201の製造工程を説明するための断面図であり、図7に対応する図である。
【0080】
キャパシタ201の製造工程は、キャパシタ1の製造工程と一部共通している。キャパシタ201の製造工程においては、まず、キャパシタ1の製造工程のうち、図5A図5Cに示す工程が行われる。図5A図5Cを用いて説明した工程の説明は既に終了しているので、これらの工程の説明を省略する。
【0081】
図5A図5Cを用いて説明した工程の後、図9Aに示すように、シリコン基板100の第1主面101上に、第3ベース絶縁膜115が堆積される。第3ベース絶縁膜115は第1主面101を被覆する。この工程では、第3ベース絶縁膜115は、第1主面101上だけでなく、貫通穴10の内面10aにも堆積される。第3ベース絶縁膜115は、貫通穴10の内面10aを被覆する。第3ベース絶縁膜115は、堆積膜である。第3ベース絶縁膜115は、CVD法によって形成されてもよい。第3ベース絶縁膜115は、スパッタ法によって形成されてもよい。第3ベース絶縁膜115は、酸化シリコン(SiO)であってよいし、SiN、SiONであってもよい。
【0082】
第3ベース絶縁膜115のうち貫通穴10の内面10aに形成される第2領域115bの膜厚は、第1主面101上に形成される第1領域115aの膜厚よりも薄い。また、第2領域115bの膜厚は、第2主面102に向かうに従って薄くなる。
【0083】
次に、図9Bを参照して、シリコン基板100の第2主面102上に、第4ベース絶縁膜116が堆積される。第4ベース絶縁膜116は第2主面102を被覆する。この工程では、第4ベース絶縁膜116は、第2主面102上だけでなく、貫通穴10の内面10aにも堆積される。第4ベース絶縁膜116は、貫通穴10の内面10aを被覆する。第4ベース絶縁膜116は、堆積膜である。第4ベース絶縁膜116は、CVD法によって形成されてもよい。第4ベース絶縁膜116は、スパッタ法によって形成されてもよい。第4ベース絶縁膜116は、酸化シリコン(SiO)であってよいし、SiN、SiONであってもよい。
【0084】
第4ベース絶縁膜116のうち貫通穴10の内面10aに形成される第4領域116bの膜厚は、第1主面101上に形成される第3領域116aの膜厚よりも薄い。また、第4領域116bの膜厚は、第1主面101に向かうに従って薄くなる。
【0085】
第3ベース絶縁膜115の第1領域115aが、第1絶縁膜16の第1表面16aの上に積層される第1膜171になる。第4ベース絶縁膜116の第3領域116aが、第1絶縁膜16の第2表面16bの上に積層される第2膜172になる。第3ベース絶縁膜115の第2領域115bおよび第4ベース絶縁膜116の第4領域116bが、貫通穴10の内面10aに積層される第3膜273になる。第3ベース絶縁膜115および第4ベース絶縁膜116は堆積膜である。第1膜171、第2膜172および第3膜273は、第2絶縁膜217に含まれる。これにより、第1絶縁膜16と、第1絶縁膜16を被覆し、第1絶縁膜16と異なる膜質の第2絶縁膜217との積層構造218が形成される(第3工程)。
【0086】
第1膜171の表面171aが、基材2の第1主面3とされる。第2膜172の表面172aが、基材2の第2主面4とされる。シリコン基板100の4つの側面103が、基材2の側面5A,5B,5C,5Dとされる(図1を併せて参照)。
【0087】
次に、図9Cを参照して、複数の貫通穴10の内面10a、基材2の第1主面3および第2主面4に、導電層11(図7参照)のベースとなるシード層107が形成される。シード層107は、たとえばCu層、Ni層等である。シード層107は、たとえば、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、CVD法、めっき法等によって形成される。シード層107は、基材2の深さ方向の中央部に向かうに従ってシリコン部19に接近するような傾斜状である。
【0088】
その後の工程は、図5F図5Jを用いて説明した工程と同じである。図5F図5Jを用いて説明した工程の説明は既に終了しているので、これらの工程の説明を省略する。
【0089】
図5F図5Jを用いて説明した工程の後、図9Dを参照して、たとえばめっき法によって、基材2の第1主面3を覆う第1外部電極23が形成される。また、たとえばめっき法によって、基材2の第2主面4を覆う第2外部電極26が形成される。第1外部電極23は、第3絶縁膜21の露出面(外側面を除く)および全ての第1貫通電極8の第1端面6aを覆うように形成される。第2外部電極26は、第4絶縁膜24の露出面(外側面を除く)および全ての第2貫通電極9の第2端面6bを覆うように形成される。以上を含む工程によって、図7に示されるキャパシタ201が得られる。
【0090】
本開示の第2実施形態に係るキャパシタ201によれば、第1実施形態に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
【0091】
図10は、本開示の第3実施形態に係るキャパシタ301の模式的な平面図である。図11は、図10のXI-XI線に沿う模式的な断面図である。図12は、図10のXII-XII線に沿う模式的な断面図である。第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを主として説明し、今まで説明した構成と同じ構成には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0092】
第3実施形態に係るキャパシタ301が第1実施形態に係るキャパシタ1と相違する点は、複数の貫通電極306が、平面視で行列状(格子状)に形成されている点である。
【0093】
図10図12を参照して、キャパシタ301は、複数の貫通電極306を含む。複数の貫通電極306は、基材2を厚さ方向(法線方向Z)に貫通する電極であり、互いに間隔を空けて形成されている。複数の貫通電極306は、平面視において第1方向Xおよび第2方向Yに間隔を空けて形成されている。複数の貫通電極306は、第1方向Xおよび第2方向Yに沿う行列状に配列されている。
【0094】
複数の貫通電極306は、第1貫通電極308と、第2貫通電極309とを含む。図10図12の例では、貫通電極306の個数は9つである。複数の貫通電極306は、5つの第1貫通電極308と、4つの第2貫通電極309とを含む。複数の第1貫通電極308および複数の第2貫通電極309は、平面視において、第1方向Xおよび第2方向Yに関して交互に並んでいる。基材2には、基材2を厚さ方向(法線方向Z)に貫通する複数(この実施形態では、9つ)の貫通穴310に埋め込まれた導電体によって形成されている。図10において、第1貫通電極308と第2貫通電極309とを識別し易くするために、第1貫通電極308および第2貫通電極309は、互いに異なるハッチングを用いて示されている。
【0095】
複数の貫通穴310は、平面視において、第1方向Xおよび第2方向Yに沿う行列状に形成されている。貫通穴310は、第1方向Xおよび第2方向Yに等間隔に並んでいる。各貫通穴310の平面形状は、この実施形態では、正方形である。その一辺の長さL1は、たとえば5μm以上200μm以下であり、この実施形態ではたとえば100μmである。各貫通穴310の横断面形状は、基材2の厚さ方向に均一である。貫通穴310の内面310a(図11および図12参照)は、第1主面3に垂直な平坦面である。隣り合う貫通穴310の第1方向Xの間隔W12は、たとえば1μm以上400μm以下であり、この実施形態ではたとえば200μmである。図11に示すように、間隔W12は、第1方向Xに隣り合う貫通電極306の電極間距離である。図12に示すように、間隔W12は、第2方向Yに隣り合う貫通電極306の電極間距離である。
【0096】
貫通電極306は、貫通穴310の内部に埋め込まれた導電体である。貫通電極306は、貫通穴310の内面310aを覆う導電層311と、導電層311を挟んで貫通穴310の内部に埋め込まれた電極層312とを含む。導電層311は、たとえばCuである。導電層311は、Ni、NiCr、Co等であってもよい。電極層312は、たとえばCuである。電極層312は、たとえばNi等であってもよい。
【0097】
貫通電極306のうち第1貫通電極308は、第1外部電極23に電気的に接続されており、第2外部電極26から絶縁されている。貫通電極306のうち第2貫通電極309は、第2外部電極26に電気的に接続されており、第1外部電極23から絶縁されている。
【0098】
キャパシタ301は、第1絶縁膜316と第2絶縁膜317との積層構造318をさらに含む。基材2の内部には、複数のシリコン部319が形成されている。複数のシリコン部319は、基材2において隣り合う貫通電極306の間、および貫通電極306と側面5A,5B,5C,5Dとの間に形成されている。複数のシリコン部319は、基材2において隣り合う貫通電極306の間、および貫通電極306と側面5A,5B,5C,5Dとの間に形成されている。
【0099】
第1絶縁膜316は、複数のシリコン部319の周囲を包囲している。第1絶縁膜316は、基材2の第1主面3、第2主面4、側面5A,5B,5C,5Dおよび貫通穴310の内面310aを形成している。第1絶縁膜316は、熱酸化膜である。第1絶縁膜316は酸化シリコン(SiO)である。第1絶縁膜316の膜厚t1は、0.5μm以上2μm以下であり、この実施形態ではたとえば1.2μmである。
【0100】
基材2において、各貫通電極306は、第1絶縁膜316によって第1方向Xおよび第2方向Yに挟まれている。つまり、第1貫通電極308および第2貫通電極309は、第1絶縁膜316によって第1方向Xおよび第2方向Yに挟まれている。貫通電極306は、第1境界306cにおいて第1絶縁膜316に接している。第1境界306cは、たとえば平坦面からなる境界面である。
【0101】
第2絶縁膜317は、堆積膜により形成されている。つまり、積層構造318は、第1絶縁膜316と、第1絶縁膜316を被覆し、第1絶縁膜316と異なる膜質の第2絶縁膜317との積層構造である。第2絶縁膜317は、酸化シリコン(SiO)である。第2絶縁膜317は、SiN、SiONであってもよい。第2絶縁膜317の膜厚t2は、500nm以上2μm以下である。第2絶縁膜317(第1膜371および第2膜372)の膜厚t2は、ディッシングによる凹部331,341の最深部331c,332c(図13および図14参照)が第1絶縁膜316に達しない程度の厚さに設定されている。
【0102】
第2絶縁膜317は、第1絶縁膜316の第1主面3を形成する第1表面316aを被覆する第1膜371と、第1絶縁膜316の第2主面4を形成する第2表面316bを被覆する第2膜372とを備えている。この実施形態では、第2絶縁膜317は、貫通電極306と第1絶縁膜316とによって第1方向Xおよび第2方向Yに挟まれていない。
【0103】
図13は、図11の一点鎖線XIIIで囲まれた部分の拡大図である。
【0104】
図11図13を参照して、第1膜371は、第1絶縁膜316の第1表面316aの全域に形成されている。第1膜371の表面371aは、貫通電極306の第1主面3側の第1端面306a(第1貫通電極308の第1端面306aおよび第2貫通電極309の第1端面306a)と面一である。第1膜371は、第1境界306cよりも第2主面4側と反対側(外側)に位置する第2境界306dにおいて、それぞれ貫通電極306(第1貫通電極308および第2貫通電極309)に接している。
【0105】
図11図13を参照して、第1主面3には、凹部331が形成されている。具体的には、凹部331は、貫通電極306の第1主面3側の第1端面306aと、第1膜371の表面371aのうち第1端面306aの周囲の部分とに跨って形成されている。凹部331は、いわゆるディッシングにより発生した凹部である。
【0106】
図13を参照して、凹部331は、中央部が第2主面4側に凹む凹面332を有している。凹面332の最深部(底部)332cは、第1端面306aにおいて第1方向Xおよび第2方向Yの中央部に形成されている。凹面332は、貫通電極306に対し第1方向Xおよび第2方向Yに隣接する第1膜371の表面371aから、第1膜371と貫通電極306との平面視円状の第2境界306dを横切って、最深部332cへ向かって下り傾斜している。
【0107】
凹面332は、第1凹面部332aと、第1凹面部332aの周端に連続する第2凹面部332bとを含む。第1凹面部332aは、貫通電極306の第1端面306aに形成されている。第1凹面部332aは、貫通電極306の第1端面306aの全域に形成されている。第2凹面部332bは、第2絶縁膜317の第1膜371の表面371aにおいて、貫通電極306の第1端面306aの周囲の部分に形成されている。
【0108】
図13を参照して、第1膜371の表面371aは、平滑面371bと、第2凹面部332bとを含む。平滑面371bと第2凹面部332bとは連続している。平滑面371bは、CMP法等による研磨後の平坦かつ滑らかな面である。第1膜371は、第2境界306dにおいて最小膜厚t3を有している。第1膜371の最小膜厚t3は、200nm以上400nm以下である。第1膜371の最小膜厚t3は、第2凹面部332bの第1方向Xの幅W5および第2方向Yの幅W5よりも小さくてもよい。第1膜371の最小膜厚t3は、第2凹面部332bの最大深さD3よりも小さくてもよい。
【0109】
第2凹面部332bは、第1絶縁膜316の第1表面316aに達していない。別の言い方では、凹部331の最深部332cが、基材2の厚さ方向(法線方向Z)に第1絶縁膜316と間隔を空けて形成されている。さらに別の言い方では、第2凹面部332bと第1絶縁膜316との間に第2絶縁膜317の第1膜371がある。
【0110】
図14は、図11の一点鎖線XIVで囲まれた部分の拡大図である。
【0111】
図11図12および図14を参照して、第2膜372は、第1絶縁膜316の第2表面316bの全域に形成されている。第2膜372の表面372aは、貫通電極306の第2主面4側の第2端面306b(第1貫通電極308の第2端面306bおよび第2貫通電極309の第2端面306b)と面一である。第2膜372は、第1境界306cよりも第1主面3側と反対側(外側)に位置する第3境界306eにおいて、それぞれ貫通電極306(第1貫通電極308および第2貫通電極309)に接している。
【0112】
図11図12および図14を参照して、第2主面4には、凹部341が形成されている。具体的には、凹部341は、貫通電極306の第2主面4側の第2端面306bと、第2膜372の表面372aのうち第2端面306bの周囲の部分とに跨って形成されている。凹部341は、いわゆるディッシングにより発生した凹部である。
【0113】
図14を参照して、凹部341は、中央部が第1主面3側に凹む凹面342を有している。凹面342の最深部(底部)342cは、第2端面306bにおいて第1方向Xおよび第2方向Yの中央部に形成されている。凹面342は、貫通電極306に対し第1方向Xおよび第2方向Yに隣接する第2膜372の表面372aから、第2膜372と貫通電極306との平面視円状の第3境界306eを横切って、最深部342cへ向かって下り傾斜している。
【0114】
凹面342は、第3凹面部342aと、第3凹面部342aの両端に連続する第4凹面部342bとを含む。第3凹面部342aは、貫通電極306の第2端面306bに形成されている。第3凹面部342aは、貫通電極306の第2端面306bの全域に形成されている。第4凹面部342bは、第2絶縁膜317の第2膜372の表面372aにおいて、貫通電極306の第2端面306bの周囲の部分に形成されている。
【0115】
図14を参照して、第2膜372の表面372aは、平滑面372bと、第4凹面部342bとを含む。平滑面372bと第4凹面部342bとは連続している。平滑面372bは、CMP法等による研磨後の平坦かつ滑らかな面である。第2膜372は、第3境界306eにおいて最小膜厚t4を有している。第2膜372の最小膜厚t4は、200nm以上400nm以下である。第2膜372の最小膜厚t4は、第4凹面部342bの第1方向Xの幅W6および第2方向Yの幅W6よりも小さくてもよい。第2膜372の最小膜厚t3は、第4凹面部342bの最大深さD4よりも小さくてもよい。
【0116】
第4凹面部342bは、第1絶縁膜316の第2表面316bに達していない。別の言い方では、凹部341の最深部342cが、基材2の厚さ方向(法線方向Z)に第1絶縁膜316と間隔を空けて形成されている。さらに別の言い方では、第4凹面部342bと第1絶縁膜316との間に第2膜372がある。
【0117】
図11および図12を参照して、基材2の第1主面3上には、第2貫通電極309の第1端面306aを被覆するように、第3絶縁膜21が形成されている。第3絶縁膜21には、第1貫通電極308の第1端面306aを露出させる第1コンタクト穴322が形成されている。図11および図12の例では、第1コンタクト穴322の平面形状は、第1貫通電極8の平面形状の大きさとほぼ等しい正方形状である。第1コンタクト穴322の平面形状は、第1貫通電極308の平面形状の大きさよりも若干小さな正方形状であってもよい。第1外部電極23は、第3絶縁膜21の第1コンタクト穴322の内部に入り込み、第1コンタクト穴322の内部で第1貫通電極308の第1端面306aに接している。これにより、第1外部電極23は、第1貫通電極308に電気的に接続されている。
【0118】
図11および図12を参照して、基材2の第2主面4上には、第1貫通電極308の第2端面306bを被覆するように、第4絶縁膜24が形成されている。第4絶縁膜24には、第2貫通電極309の第2端面306bを露出させる第2コンタクト穴325が形成されている。図11および図12の例では、第2コンタクト穴325の平面形状は、第1貫通電極308の平面形状の大きさとほぼ等しい正方形状である。第2コンタクト穴325の平面形状は、第2貫通電極309の平面形状の大きさよりも若干小さな正方形状であってもよい。第2外部電極26は、第4絶縁膜24の第2コンタクト穴325の内部に入り込み、第2コンタクト穴325の内部で第2貫通電極309の第2端面306bに接している。これにより、第2外部電極26は、第2貫通電極309に電気的に接続されている。
【0119】
図11を参照して、第1方向Xに隣り合う第1貫通電極308および第2貫通電極309において、第1貫通電極308に含まれる貫通穴310の内面310aと第2貫通電極309に含まれる貫通穴310の内面310aとは、第1方向Xに対向している。そして、これら互いに対向する内面310a同士によって挟まれた部分にある第1絶縁膜316が、容量部307Aを構成している。容量部307Aは、容量膜と称されてもよい。第1方向Xに対向する一組の第1貫通電極308および第2貫通電極309と、それらの間の容量部307Aとによって、一つのキャパシタ要素が構成されている。
【0120】
図12を参照して、第2方向Yに隣り合う第1貫通電極308および第2貫通電極309において、第1貫通電極308に含まれる貫通穴310の内面310aと第2貫通電極309に含まれる貫通穴310の内面310aとは、第2方向Yに対向している。そして、これら互いに対向する内面310a同士によって挟まれた部分にある第1絶縁膜316が、容量部307Bを構成している。容量部307Bは、容量膜と称されてもよい。第2方向Yに対向する一組の第1貫通電極308および第2貫通電極309と、それらの間の容量部307Bとによって、一つのキャパシタ要素が構成されている。
【0121】
そして、第1貫通電極308が第1外部電極23に電気的に接続され、かつ第2貫通電極309が第2外部電極26に電気的に接続されているため、全てのキャパシタ要素が並列に接続されたキャパシタ301を得ることができる。これにより、キャパシタ301の小型化および大容量化を図ることができる。
【0122】
本開示の第3実施形態に係るキャパシタ301は、第1実施形態に係るキャパシタ1の製造方法(図5A図5Kに示す製造方法)と、同等の製造方法を用いて製造される。
【0123】
本開示の第3実施形態に係るキャパシタ301によれば、第1実施形態に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
【0124】
第3実施形態は、第2実施形態と組み合わされていてもよい。すなわち、第3実施形態のキャパシタ301の第2絶縁膜317に、第2実施形態の第2絶縁膜217の特徴が組み合わされてもよい。すなわち、第2絶縁膜317の一部が、貫通電極306と第1絶縁膜316とによって第1方向Xおよび第2方向Yに挟まれていてもよい。
【0125】
本開示は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0126】
第1実施形態において、3つの貫通電極6が、1つの第1貫通電極8と、2つの第2貫通電極9とを含む構成であってもよい。すなわち、1つの第1貫通電極8が、2つの第2貫通電極9によって第1方向Xに挟まれてもよい。
【0127】
第1実施形態において、貫通電極6の個数を4つ以上としてもよい。
【0128】
第3実施形態において、貫通電極306の平面形状が、円形状であってもよい。この場合、貫通穴310の横断面形状は、円形状である。また、貫通電極306の平面形状が、正六角形状であってもよい。この場合、貫通穴310の横断面形状は、正六角形状である。
【0129】
また、第3実施形態において、9つの貫通電極306を3行3列に配列した構成を示しているが、行数および列数の数は、任意に変更できる。
【0130】
また、第3実施形態において、複数の貫通電極306が、平面視において、千鳥状(格子状)に配列されていてもよい。
【0131】
第1実施形態では、基材2がシリコン部(導電部)19を有し、第1絶縁膜16,316が、基材2においてシリコン部19を被覆する構成を例に挙げて説明した。図15に示す変形例のように、基材402にシリコン部(導電部)19が形成されていなくてもよい。すなわち、基材402が、第1絶縁膜16によって形成されていてもよい。図15に示す変形例は、第2実施形態および第3実施形態に組み合わせていてもよい。図15に示す変形例が第3実施形態に組み合わされる場合、図11および図12において、基材(基材2)からシリコン部319が省略された構成になる。すなわち、基材(基材2)が、第1絶縁膜316によって形成されていてもよい。
【0132】
この明細書および図面の記載から以下に付記する特徴が抽出され得る。
【0133】
[付記1-1]
第1主面(3)およびその反対側の第2主面(4)を有する基材(2,402)と、
前記基材(2,402)を厚さ方向(Z)に貫通する複数の貫通電極(6,306)と、
前記貫通電極(6,306)の周囲において少なくとも前記第1主面(3)および前記第2主面(4)の一方を形成する第1絶縁膜(16,316)、ならびに前記第1絶縁膜(16,316)を被覆する前記第1絶縁膜(16,316)とは膜質の異なる第2絶縁膜(17,217,317)の積層構造(18,218,318)とを含み、
隣り合う前記貫通電極(6,306)の間の容量部(7,307A,307B)を利用した、キャパシタ(1,201,301,401)。
【0134】
この構成によれば、第1絶縁膜(16,316)および第1絶縁膜(16,316)を被覆する第2絶縁膜(17,217,317)の積層構造(18,218,318)が基材(2,402)に形成されている。この積層構造(18,218,318)にディッシングが発生しても、ディッシングによる凹部(31,41,331,341)は第2絶縁膜(17,217,317)に形成される。そのため、容量部(7,307A,307B)として機能する第1絶縁膜(16,316)においてディッシングによる凹部の発生を抑制または防止できる。これにより、ディッシング発生の影響を抑制または回避できる。
【0135】
[付記1-2]
前記第2絶縁膜(17,217,317)の表面(171a,172a,371a,372a)から前記第2絶縁膜(17,317)と前記貫通電極(6,306)との境界(6d,6e,306d,306e)を横切って前記貫通電極(6,306)へ向かって下り傾斜する凹面(32,42,332,342)を有する凹部(31,41,331,341)が形成されており、
前記凹部(31,41,331,341)の周囲において前記第2絶縁膜(17,217,317)の前記表面(171a,172a,371a,372a)は、研磨により形成された平滑面(171b,371b)である、付記1-1に記載のキャパシタ(1,201,301,401)。
【0136】
[付記1-3]
前記凹部(31,41,331,341)の底部(32c,42c,332c,342c)が、前記基材(2,402)の厚さ方向(Z)に前記第1絶縁膜(16,316)と間隔を空けて形成されている、付記1-2に記載のキャパシタ(1,201,301,401)。
【0137】
[付記1-4]
前記第2絶縁膜(17,317)が、前記第1絶縁膜(16,316)を被覆して前記第1主面(3)および前記第2主面(4)の前記一方を形成しており、
前記第1絶縁膜(16,316)が前記貫通電極(6,306)に接しており、
前記第2絶縁膜(17,317)が、前記第1絶縁膜(16,316)と前記貫通電極(6,306)との境界(6c,306c)よりも外側において、前記貫通電極(6,306)に接している、付記1-1~付記1-3のいずれか一項に記載のキャパシタ(1,301,401)。
【0138】
[付記1-5]
前記第2絶縁膜(17,317)が、前記第1絶縁膜(16,316)を被覆して前記第1主面(3)および前記第2主面(4)の前記一方を形成する第1領域(171,172)と、前記第1絶縁膜(16,316)と前記貫通電極(6,306)とによって前記第1主面(3)に沿う方向に挟まれた第2領域(273)とを含む、付記1-1~付記1-3のいずれか一項に記載のキャパシタ(201,401)。
【0139】
[付記1-6]
前記第2領域(273)の膜厚(t5)が、前記第1領域(171,172)の膜厚(t2)よりも薄い、付記1-5に記載のキャパシタ(1,201,301,401)。
【0140】
[付記1-7]
前記基材(2)が、導電部(19)を有し、
前記第1絶縁膜(16,316)が、前記基材(2)において前記導電部(19)を被覆する、付記1-1~付記1-6のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【0141】
[付記1-8]
前記基材(402)が前記第1絶縁膜(16,316)によって形成されている、付記1-1~付記1-6のいずれか一項に記載のキャパシタ(401)。
【0142】
[付記1-9]
前記第2絶縁膜(17,317)の膜厚(t2)が、500nm以上である、付記1-1~付記1-8のいずれか一項に記載のキャパシタ(1,201,301,401)。
【0143】
[付記1-10]
前記第1絶縁膜(16,316)が、熱酸化膜によって形成されている、付記1-1~付記1-9に記載のキャパシタ(1,201,301,401)。
【0144】
[付記1-11]
前記第2絶縁膜(17,317)が、堆積膜によって形成されている、付記1-1~付記1-9のいずれか一項に記載のキャパシタ(1,201,301,401)。
【0145】
[付記1-12]
複数の前記貫通電極(6,306)が、第1貫通電極(8,308)と第2貫通電極(9,309)とを含み、
前記第1主面(3)に配置され、前記第1貫通電極(8,308)が電気的に接続された第1外部電極(23)と、
前記第2主面(4)に配置され、前記第2貫通電極(9,309)が電気的に接続された第2外部電極(26)とをさらに含み、
前記第1絶縁膜(16,316)が、隣り合う前記第1貫通電極(8,308)および前記第2貫通電極(9,309)によって前記第1主面(3)に沿う方向に挟まれている、付記1-1~付記1-11のいずれか一項に記載のキャパシタ(1,201,301,401)。
【0146】
[付記1-13]
複数の前記貫通電極(6,306)が、平面視でストライプ状に形成されている、付記1-1~付記1-12のいずれか一項に記載のキャパシタ(1,201,401)。
【0147】
[付記1-14]
複数の前記貫通電極(6,306)が、平面視で格子状に形成されている、付記1-1~付記1-13のいずれか一項に記載のキャパシタ(301)。
【0148】
[付記1-15]
一方側の第1主面(101)および他方側の第2主面(102)を有する基板(100)に、前記基板(100)を厚さ方向(Z)に貫通する複数の貫通穴(10,310)を形成する第1工程と、
複数の前記貫通穴(10,310)が形成されている前記基板(100)を加熱して、前記基板(100)における前記貫通穴(10,310)の周囲の部分に第1絶縁膜(16,316)を形成する第2工程と、
少なくとも前記第1主面(3)および前記第2主面(4)の一方において、前記第1絶縁膜(16,316)と膜質の異なる第2絶縁膜(17,217,317)であって前記第1絶縁膜(16,316)を被覆する第2絶縁膜(17,217,317)を形成し、前記第1絶縁膜(16,316)および前記第2絶縁膜(17,217,317)の積層構造(18,218,318)を形成する第3工程と、
前記第1主面(3)および前記第2主面(4)の前記一方において前記第2絶縁膜(17,317)を覆う導電膜(108)を形成し、前記導電膜(108)によって複数の前記貫通穴(10,310)の内部を埋める第4工程と、
前記第1主面(3)および前記第2主面(4)の前記一方が露出するまで前記導電膜(108)を研磨する第5工程とを含む、キャパシタ(1,201,301,401)の製造方法。
【0149】
この方法によれば、第1絶縁膜(16,316)および第2絶縁膜(17,217,317)の積層構造(18,218,318)を有するキャパシタ(1,201,301,401)を製造できる。
【符号の説明】
【0150】
1 :キャパシタ
2 :基材
3 :第1主面
4 :第2主面
5A :側面
5B :側面
5C :側面
5D :側面
6 :貫通電極
6a :第1端面
6b :第2端面
6c :第1境界(第1絶縁膜と貫通電極との境界)
6d :第2境界(第2絶縁膜と貫通電極との境界)
6e :第3境界(第2絶縁膜と貫通電極との境界)
7 :容量部
8 :第1貫通電極
9 :第2貫通電極
10 :貫通穴
10a :内面
11 :導電層
12 :電極層
16 :第1絶縁膜
16a :第1表面
16b :第2表面
17 :第2絶縁膜
18 :積層構造
19 :シリコン部(導電部)
21 :第3絶縁膜
22 :第1コンタクト穴
23 :第1外部電極
24 :第4絶縁膜
25 :第2コンタクト穴
26 :第2外部電極
31 :凹部
31c :最深部
32 :凹面
32a :第1凹面部
32b :第2凹面部
32c :最深部(底部)
41 :凹部
42 :凹面
42a :第3凹面
42b :第4凹面
42c :最深部(底部)
100 :シリコン基板(基板)
101 :第1主面
102 :第2主面
103 :側面
105 :第1ベース絶縁膜
106 :第2ベース絶縁膜
107 :シード層(導電膜)
108 :導電膜
109 :第1マスク
110 :第2マスク
115 :第3ベース絶縁膜
115a :第1領域
115b :第2領域
116 :第4ベース絶縁膜
116a :第3領域
116b :第4領域
131 :凹部
151 :キャパシタ
171 :第1膜
171a :表面
171b :平滑面
172 :第2膜
172a :表面
172b :平滑面
201 :キャパシタ
210a :内面
217 :第2絶縁膜
218 :積層構造
273 :第3膜
301 :キャパシタ
306 :貫通電極
306a :第1端面
306b :第2端面
306c :第1境界(第1絶縁膜と貫通電極との境界)
306d :第2境界(第2絶縁膜と貫通電極との境界)
306e :第3境界(第2絶縁膜と貫通電極との境界)
307A :容量部
307B :容量部
308 :第1貫通電極
309 :第2貫通電極
310 :貫通穴
310a :内面
311 :導電層
312 :電極層
316 :第1絶縁膜
316a :第1表面
316b :第2表面
317 :第2絶縁膜
318 :積層構造
322 :第1コンタクト穴
325 :第2コンタクト穴
331 :凹部
331c :最深部(底部)
332 :凹面
332a :第1凹面部
332b :第2凹面部
332c :最深部(底部)
341 :凹部
342 :凹面
342a :第3凹面部
342b :第4凹面部
342c :最深部(底部)
371 :第1膜
371a :表面
371b :平滑面
372 :第2膜
372a :表面
372b :平滑面
401 :キャパシタ
402 :基材
D1 :最大深さ
D2 :最大深さ
D3 :最大深さ
D4 :最大深さ
T :厚さ
W1 :幅
W2 :幅
W3 :幅
W4 :幅
W5 :幅
W6 :幅
W12 :幅
X :第1方向
Y :第2方向
Z :法線方向
t1 :膜厚
t2 :膜厚
t3 :最小膜厚
t4 :最小膜厚
t5 :最大膜厚
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14
図15