(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170093
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】走行制御方法及び走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
B60W30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087060
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】韓 京達
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】西田 雪徳
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
(57)【要約】
【課題】過去に車両が走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルに基づいて速度プロファイルの利点を生かしつつ、より滑らかな速度プロファイルを生成する。
【解決手段】走行制御方法では、過去に車両が走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルに基づいて、目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第1速度プロファイルを生成し(S3)、第1速度プロファイルに基づいて、目標走行軌道上の上限及び下限速度のプロファイルである上限プロファイルと下限プロファイルとを設定し(S4)、上限プロファイルと下限プロファイルとの間に挟まれた速度設定領域内に設定され、且つ車両の加速度及びジャークの少なくとも一方の制約条件を満足するように、目標走行軌道上の目標速度のプロファイルである第2速度プロファイルを生成する(S5)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速である自車速を検出し、
前記自車両の目標走行軌道を設定し、
過去に車両が走行したときの走行軌跡と前記走行軌跡上における前記車両の速度プロファイルに基づいて、前記目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第1速度プロファイルを生成し、
前記第1速度プロファイルに基づいて、前記目標走行軌道に沿った位置における上限速度のプロファイルである上限プロファイルと下限速度のプロファイルである下限プロファイルとを設定し、
前記上限プロファイルと前記下限プロファイルとの間に挟まれた領域である速度設定領域内に設定され、且つ前記自車両の加速度及びジャークの少なくとも一方について予め設定した制約条件を満足するように、前記目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第2速度プロファイルを生成し、
前記目標走行軌道に沿って前記第2速度プロファイルに従う車速で走行するように前記自車両を制御する、
ことを特徴とする走行制御方法。
【請求項2】
前記制約条件として、前記自車両の加速度及びジャークの少なくとも一方を変数に含んだ評価関数が最小又は閾値未満になるように前記第2速度プロファイルを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項3】
前記速度設定領域の幅である速度設定領域幅を、前記第1速度プロファイルの形状に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項4】
前記第1速度プロファイル上の複数の点の近似直線を生成し、
前記第1速度プロファイル上の点から前記近似直線までの距離に基づいて前記速度設定領域幅を設定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の走行制御方法。
【請求項5】
前記第1速度プロファイル上の隣接する3つの点を含むグループを複数個設定し、
前記隣接する3つの点のうち第1点と第3点との間に挟まれる第2点から前記第1点と前記第3点とを結んだ直線までの距離を前記グループ毎に算出し、
前記第2点から前記第1点と前記第3点とを結んだ直線までの前記距離の最大値に基づいて前記速度設定領域幅を設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の走行制御方法。
【請求項6】
前記第1速度プロファイル上の少なくとも3つの点の近似直線を生成し、
前記少なくとも3つの点の各々を、これらの点から前記近似直線へ向かうそれぞれの方向へ前記速度設定領域幅だけ移動させた点を、前記速度設定領域の境界点として設定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の走行制御方法。
【請求項7】
前記速度設定領域の上限及び下限の境界点のうちの何れか一方である第1境界点として、前記第1速度プロファイル上の点を設定し、
前記速度設定領域の上限及び下限の境界点のうち他方である第2境界点として、前記少なくとも3つの点の各々を、これらの点から前記近似直線へ向かうそれぞれの方向へ前記速度設定領域幅だけ移動させた点を設定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の走行制御方法。
【請求項8】
前記境界点における車速が許容上限速度を超える場合には前記許容上限速度に補正することを特徴とする請求項6に記載の走行制御方法。
【請求項9】
前記第1境界点又は前記第2境界点における車速が許容上限速度を超える場合には前記許容上限速度に補正することを特徴とする請求項7に記載の走行制御方法。
【請求項10】
前記第1速度プロファイル上の複数の点の近似直線を生成し、
前記第1速度プロファイル上の点から前記近似直線までの距離が閾値以上である第1区間と、前記距離が閾値未満である第2区間とを設定し、
前記第1区間では前記速度設定領域内に前記第2速度プロファイルを生成し、
前記第2区間では前記第1速度プロファイル上の点を通過する前記第2速度プロファイルを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項11】
過去に車両が走行したときの走行軌跡と前記走行軌跡上における前記車両の速度プロファイルとを学習した学習モデルに、前記目標走行軌道と前記自車速とを入力することにより、前記第1速度プロファイルを生成することを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項12】
自車両の車速である自車速を検出するセンサと、
前記自車両の目標走行軌道を設定し、過去に車両が走行したときの走行軌跡と前記走行軌跡上における前記車両の速度プロファイルに基づいて、前記目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第1速度プロファイルを生成し、前記第1速度プロファイルに基づいて、前記目標走行軌道に沿った位置における上限速度のプロファイルである上限プロファイルと下限速度のプロファイルである下限プロファイルとを設定し、前記上限プロファイルと前記下限プロファイルとの間に挟まれた領域である速度設定領域内に設定され、且つ前記自車両の加速度及びジャークの少なくとも一方について予め設定した制約条件を満足するように、前記目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第2速度プロファイルを生成し、前記目標走行軌道に沿って前記第2速度プロファイルに従う車速で走行するように前記自車両を制御するコントローラと、
を備えることを特徴とする走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御方法及び走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下記特許文献1には、過去の手動運転時の走行車速を学習して、自動走行時の走行速度を、手動運転で走行したときの走行速度に基づいて設定する車両走行制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過去に車両が手動運転で走行した走行速度を学習した学習モデルを用いて自車両の目標車速の速度プロファイルを設定することにより、乗員の意図に近い車速で自車両を走行させることができる。
しかしながら、学習モデルを用いて生成された速度プロファイルが必ずしも滑らかなプロファイルになるとは限らず、加速度やジャークが大きくなって乗り心地が悪くなる虞がある。
本発明は、過去に車両が走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルに基づいて生成された速度プロファイルの利点を生かしつつ、より滑らかな速度プロファイルを生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による走行制御方法では、自車両の車速である自車速を検出し、自車両の目標走行軌道を設定し、過去に車両が走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルに基づいて、目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第1速度プロファイルを生成し、第1速度プロファイルに基づいて、目標走行軌道に沿った位置における上限速度のプロファイルである上限プロファイルと下限速度のプロファイルである下限プロファイルとを設定し、上限プロファイルと下限プロファイルとの間に挟まれた領域である速度設定領域内に設定され、且つ車両の加速度及びジャークの少なくとも一方について予め設定した制約条件を満足するように、目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第2速度プロファイルを生成し、目標走行軌道に沿って第2速度プロファイルに従う車速で走行するように自車両を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、過去に車両が走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルに基づいて生成された速度プロファイルの利点を生かしつつ、より滑らかな速度プロファイルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の走行制御装置の一例の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態のコントローラの機能構成の一例のブロック図である。
【
図3】(a)は第1速度プロファイルの一例を模式的に表すグラフであり、(b)は速度設定領域及び第2速度プロファイルの一例の模式図である。
【
図4】第1実施形態の走行制御方法の一例のフローチャートである。
【
図5】第2実施形態のコントローラの機能構成の一例のブロック図である。
【
図6】学習モデルの学習データの一例を説明する模式図である。
【
図7】第1速度プロファイルの一例の模式図である。
【
図8】速度設定領域幅の設定方法の一例を説明する模式図である。
【
図9】速度設定領域の設定方法の一例を説明する模式図である。
【
図10】速度設定領域の設定方法の一例を説明する模式図である。
【
図11】速度設定領域の設定方法の一例を説明する模式図である。
【
図12】第2実施形態の走行制御方法の一例のフローチャートである。
【
図13】(a)及び(b)は、第3実施形態の走行制御方法の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、実施形態の走行制御装置の例の概略構成図である。自車両1は、自車両1の走行を制御する走行制御装置10を備える。走行制御装置10による走行制御は、自車両1が走行する車線である走行車線の車線形状に基づいて目標走行軌道を設定し、自車両1が目標走行軌道に沿って走行するように自車両1の加速、減速及び操舵を制御する自動制御を含む。例えば、走行制御装置10による走行制御は、自車両1の周辺の走行環境に基づいて、運転者が関与せずに自車両1を自動で運転する自律運転制御であってよい。
【0010】
走行制御装置10は、外界センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース(地
図DB)14と、ナビゲーション装置15、アクチュエータ17と、コントローラ18とを備える。
外界センサ11は、自車両1に搭載されたレーザレーダやミリ波レーダ、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、自車両1の周辺の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。
【0011】
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の車速を検出する車速センサ、自車両1のタイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、自車両1の横加速度Gy及び縦加速度Gxを検出する加速度センサ、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ、操向輪の転舵角を検出する転舵角センサ、自車両1の角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車両のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0012】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、道路地図データを記憶している。例えば地図データベース14は、自動運転用の地図情報として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という)を記憶してよい。地図データベース14は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という)を記憶してもよい。
【0013】
ナビゲーション装置15は、測位装置13により自車両1の現在位置を認識し、その現在位置における地図情報を地図データベース14から取得する。ナビゲーション装置15は、乗員が入力した目的地までの目標経路を設定し、この目標経路に従って乗員に経路案内を行う。また、ナビゲーション装置15は、設定した目標経路の情報をコントローラ18へ出力する。自律運転制御を実行する場合に、コントローラ18はナビゲーション装置15が設定した目標経路に沿って走行するように自車両1を自動で運転する。
【0014】
アクチュエータ17は、コントローラ18からの制御信号に応じて、自車両のステアリングホイール、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両の車両挙動を発生させる。アクチュエータ17は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、自車両のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータは、自車両のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、自車両のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0015】
コントローラ18は、自車両1の走行制御を行う電子制御ユニットである。コントローラ18は、プロセッサ18aと、記憶装置18b等の周辺部品とを含む。プロセッサ18aは、例えばCPUやMPUであってよい。
記憶装置18bは、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置18bは、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等のメモリを含んでよい。
【0016】
以下に説明するコントローラ18の機能は、例えばプロセッサ18aが、記憶装置18bに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントローラ18を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。例えば、コントローラ18は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ18はFPGA等のPLD等を有していてもよい。
【0017】
図2は、第1実施形態のコントローラ18の機能構成の一例のブロック図である。コントローラ18は、目標走行軌道設定部30と、第1速度プロファイル生成部31と、速度設定領域設定部32と、第2速度プロファイル生成部33と、車両制御部34と、を備える。
目標走行軌道設定部30は、自車両1前方の走行車線において自車両1が走行すべき軌道の目標値である目標走行軌道を設定する。目標走行軌道設定部30は、設定した目標走行軌道を、第1速度プロファイル生成部31と、車両制御部34に出力する。
【0018】
例えば目標走行軌道設定部30は、外界センサ11のカメラによる撮像画像や、レーザレーダやミリ波レーダ、LIDAR等の測距装置による測距データに基づいて、自車両1前方の走行車線の車線形状を検出してよい。
例えば目標走行軌道設定部30は、過去に車両が手動運転で走行した車線の車線形状と走行軌跡とを学習した学習モデルに、検出した自車両1前方の車線形状を入力することによって目標走行軌道を設定してよい。
【0019】
第1速度プロファイル生成部31は、過去に車両が走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルに基づいて、目標走行軌道に沿った位置における各々の目標速度を表すプロファイルである第1速度プロファイルを生成する。
図3(a)を参照する。一点鎖線Vtは、過去に車両が走行した際の速度プロファイルを示している。速度プロファイルは、車両の走行位置(走行距離)若しくは走行時間に対する車両の速度の時系列である。
また、丸プロットVa0~Va11は、目標走行軌道に沿った位置P0~P11における各々の目標速度を表す第1速度プロファイルである。
【0020】
本明細書では速度プロファイルとして、走行位置に対する車両の速度の時系列を用いて実施形態を説明するが、走行時間に対する車両の速度の時系列を速度プロファイルとして用いてもよい。
例えば第1速度プロファイル生成部31は、過去に車両が走行したときの走行軌跡、車速、車両の横加速度及び縦加速度、車両の前方の車線形状の検出距離、並びに車両の前方の道路勾配と、走行軌跡上における車両の速度プロファイルとを学習した学習モデル31aを有してよい。例えば過去に車両が手動運転で走行したときに学習した学習モデル31aを有してよい。
学習モデル31aの学習データ(走行軌跡、車速、横加速度、縦加速度、車線形状の検出距離、道路勾配、速度プロファイル)は、自車両1を手動運転で走行させたときのデータであってもよく、自車両1以外の他の車両を手動運転で走行させたときのデータであってもよい。
【0021】
例えば学習モデル31aは、少なくとも入力層と出力層とを含む多階層のニューラルネットワークであってよい。例えば、目標走行軌道設定部30が設定した目標走行軌道と、車両センサ12が検出した自車両1の車速、横加速度Gy及び縦加速度Gxと、車線形状の検出距離の算出結果と、道路勾配の情報を入力層に入力すると、学習モデル31aは、学習した速度履歴を、第1速度プロファイルVa0~Va11として出力層から出力する。以下の説明において、第1速度プロファイルVa0~Va11を総称して「第1速度プロファイルVa」と表記することがある。
【0022】
例えば入力層には、自車両1前方の走行車線70mの区間における目標走行軌道上の略等間隔の30個の通過点のX座標(車線方向の座標)及びY座標(車線幅方向の座標)と、車速、横加速度Gy及び縦加速度Gxと、車線形状の検出距離の算出結果と、道路勾配の情報を入力する。
例えば、第1速度プロファイル生成部31は、外界センサ11による車線境界線の検出結果に基づいて車線形状の検出距離を算出してよい。また例えば第1速度プロファイル生成部31は、地図データベース14に記憶されている自車両1の走行車線の前方の曲率に基づいて車線形状の検出距離を算出してよい。第1速度プロファイル生成部31は、自車両1の前方の道路勾配の情報を取得してよい。例えば第1速度プロファイル生成部31は、地図データベース14から道路勾配の情報を取得してよい。
出力層は、自車両1前方の所定の区間(例えば70m)の目標走行軌道上の略等間隔の30個の通過点の各々における目標速度を第1速度プロファイルVaとして出力する。
【0023】
このような学習モデル31aを用いて第1速度プロファイルVaを生成する場合には、特に過去に走行したことの無いルートを走る場合や、過去に走行したことがあっても学習時の入力と走行時の入力が大きく異なる場合に、速度プロファイルが滑らかにならないという課題が発生することがある。
なお、学習モデル31aに学習させる過去の手動運転のデータ(走行軌跡、車速、横加速度、縦加速度、車線形状の検出距離、道路勾配、速度プロファイル)としては、速度変化や加速度が所定値以上となる走行を含んだ所定の区間(例えば70m)ごとの自車両1の走行データを用いてよい。
【0024】
図3(a)のグラフの横軸は、目標走行軌道に沿った自車両1の走行位置を示し、縦軸は目標速度を示し、丸プロットが目標走行軌道に沿った位置P0~P11における目標速度を示している。なお、位置P0は自車両1の現在位置であり、位置P0における目標速度は、車速センサが検出した現在の自車速Va0に拘束される。
【0025】
また例えば第1速度プロファイル生成部31は、過去に車両が走行した速度プロファイルをそのまま第1速度プロファイルVaとして生成してもよい。過去に車両が走行した速度プロファイルは、例えば手動運転により走行した場合の速度プロファイルであってもよく、車両の速度制御や加減速制御を支援する走行支援により走行した場合の速度プロファイルであってもよい。
【0026】
図2を参照する。速度設定領域設定部32は、第1速度プロファイル生成部31が設定した第1速度プロファイルVaに基づいて、目標走行軌道に沿った位置P0~P11における上限速度のプロファイルである上限プロファイルPUと下限速度のプロファイルである下限プロファイルPLとを設定する。
図3(b)の破線PU及びPLは、それぞれ上限プロファイルと下限プロファイルを模式的に表している。
【0027】
速度設定領域設定部32は、上限プロファイルPUと下限プロファイルPLとの間に挟まれた領域を速度設定領域Rtとして設定する。
図3(b)においてハッチングを施された領域Rvが、上限プロファイルPUと下限プロファイルPLとの間に挟まれた速度設定領域を表す。
上限プロファイルPUは速度設定領域Rvの上限の境界線を形成し、下限プロファイルPLは速度設定領域Rvの下限の境界線を形成する。すなわち速度設定領域設定部32は、上限プロファイルPUと下限プロファイルPLとにより、速度設定領域Rvの境界を画定する。
【0028】
例えば速度設定領域設定部32は、第1速度プロファイル上の目標速度Va0~Va11を交互に上限プロファイルPUと下限プロファイルPLとに割り振って、上限プロファイルPUと下限プロファイルPLとを形成する目標速度の点列を設定してもよい。また例えば速度設定領域設定部32は、第1速度プロファイル上の目標速度Va0~Va11のうち過去に車両が走行した際の実際の速度プロファイルVtよりも高い目標速度を上限プロファイルPUに割り振り、速度プロファイルVtよりも低い目標速度を下限プロファイルPLに割り振ることにより、上限プロファイルPUと下限プロファイルPLとを形成する点列を設定してもよい。
【0029】
そして速度設定領域設定部32は、上限プロファイルPUに割り振った点列に基づいて上限プロファイルPUを生成し、下限プロファイルPLに割り振った点列に基づいて下限プロファイルPLを生成してもよい。例えば上限プロファイルPUに割り振った点列を直線で接続することにより上限プロファイルPUを生成し、下限プロファイルPLに割り振った点列同士を直線で接続することにより下限プロファイルPLを生成してもよい。また、上限プロファイルPUに割り振った点列に基づいて近似曲線や近似直線を形成して上限プロファイルPUを生成し、下限プロファイルPLに割り振った点列に基づいて近似曲線や近似直線を形成して下限プロファイルPLを生成してもよい。
【0030】
図2を参照する。第2速度プロファイル生成部33は、速度設定領域設定部32が設定した速度設定領域Rv内に、目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第2速度プロファイルを設定する。
このとき第2速度プロファイル生成部33は、自車両1の加速度及びジャークの少なくとも一方について予め設定した制約条件を満足するように、第2速度プロファイルを生成する。
図3(b)の実線Vbは、速度設定領域Rv内に設定された第2速度プロファイルを表している。
車両制御部34は、目標走行軌道設定部30が生成した目標走行軌道に沿って第2速度プロファイルVbに従う車速で自車両1が走行するようにアクチュエータ17の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ17に出力する。
【0031】
このように、第1速度プロファイルVaに基づいて設定された速度設定領域Rv内に第2速度プロファイルVbを設定することにより、過去に車両が手動運転で走行したときの走行速度を学習した学習モデル31aにより生成された第1速度プロファイルVaの利点を、第2速度プロファイルVbに生かすことができる。例えば乗員の意図に近い車速プロファイルを生成できる。
また、自車両1の加速度及びジャークの少なくとも一方が、予め設定した制約条件を満足するように第2速度プロファイルVbを生成することにより、滑らかな第2速度プロファイルVbを生成できる。
【0032】
(動作)
図4は、第1実施形態の走行制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において車両センサ12の車速センサは、自車両1の現在の自車速Va0を検出する。
ステップS2において目標走行軌道設定部30は、自車両1前方の走行車線における目標走行軌道を設定する。
ステップS3において第1速度プロファイル生成部31は、目標走行軌道設定部30が設定した目標走行軌道と、現在の自車速Va0とを、学習モデル31aに入力することにより、第1速度プロファイルVaを生成する。
【0033】
ステップS4において速度設定領域設定部32は、第1速度プロファイルVaに基づいて速度設定領域Rvを設定する。
ステップS5において第2速度プロファイル生成部33は、速度設定領域Rv内に設定され、且つ自車両1の加速度及びジャークの少なくとも一方について予め設定した制約条件を満足するように、第2速度プロファイルVbを生成する。
ステップS6において車両制御部34は、目標走行軌道に沿って第2速度プロファイルVbに従う車速で自車両1が走行するように自車両1を制御する。その後に処理は終了する。
【0034】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態のコントローラ18の機能構成の一例のブロック図である。第2実施形態のコントローラ18は、第1実施形態のコントローラ18に類似する構成を有しており同一又は類似の構成要素には同じ参照符号を付与して、重複する説明を省略する。第2実施形態のコントローラ18は、許容上限速度設定部35を備える。
【0035】
上記のとおり学習モデル31aは、過去に車両が手動運転で走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルとを学習した学習モデルである。学習モデル31aは、例えばニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、サポートベクタマシン等により構成してよい。
【0036】
図6(a)は、学習モデル31aの学習データの一例を説明する模式図である。例えば過去に車両が手動運転で走行した際に、車両が実際に走行した所定長Lの走行軌跡上の位置p0~p11の位置データを取得する。例えば位置p0及びp11は所定長Lの走行軌跡の始点及び終点であってよく、位置p0~p11は走行軌跡上の等間隔の位置であってよい。取得したこれらの位置p0~p11の位置データを、走行軌跡の学習データとして学習モデル31aに学習させる。
【0037】
なお、所定長Lの走行軌跡上の位置データの数は12個に限定されず、12個よりも多くても少なくてもよい。
一方で、走行軌跡上における車両の速度プロファイルVtの学習データとしては、走行軌跡上の位置p0~p11のそれぞれにおける車両の車速Vt0~Vt11を学習モデル31aに学習させてよい。
【0038】
目標走行軌道設定部30は、自車両1前方の走行車線における自車両1の目標走行軌道を設定する。目標走行軌道設定部30は、設定した目標走行軌道を第1速度プロファイル生成部31と、許容上限速度設定部35に出力する。
【0039】
第1速度プロファイル生成部31は、目標走行軌道設定部30が設定した目標走行軌道と、車両センサ12の車速センサが検出した現在の自車速Va0とを、学習モデル31aに入力する。
例えば第1速度プロファイル生成部31は、自車両1の現在位置P0を始点とする所定長Lの目標走行軌道上の位置P0~P11の位置データを、目標走行軌道のデータとして学習モデル31aに入力してよい。
学習モデル31aは、現在位置P0における目標速度を現在の自車速Va0とし、目標走行軌道上の位置P1~P11における目標速度をそれぞれVa1~Va11とする第1速度プロファイルを生成する。
【0040】
図7において、丸プロットVa0~Va11が第1速度プロファイルVaを表している。第1速度プロファイル生成部31は、第1速度プロファイルVaを、速度設定領域設定部32に出力する。
許容上限速度設定部35は、目標走行軌道設定部30が設定した目標走行軌道に基づいて、目標走行軌道上の各位置P0~P11における許容上限速度をそれぞれ設定する。例えば許容上限速度設定部35は、各位置P0~P11における目標走行軌道の曲率を算出し、各位置P0~P11において自車両1に発生する横加速度が所定の上限値となる速度を許容上限速度として設定してよい。
【0041】
第2実施形態の速度設定領域設定部32は、領域幅設定部32aと、領域境界設定部32bを備える。
領域幅設定部32aは、第1速度プロファイルVaの時系列の変動の大きさに基づいて、速度設定領域Rvの幅である速度設定領域幅Wを設定する。例えば領域幅設定部32aは、第1速度プロファイルVaの滑らかさに基づいて速度設定領域幅Wを設定してよい。例えば第1速度プロファイルVaがより滑らかな場合における速度設定領域幅Wに比べて、より滑らかでない場合における速度設定領域幅Wを大きくしてもよい。
【0042】
例えば領域幅設定部32aは、第1速度プロファイルVa上の点Va0~Va11のうち複数の点を選択して、これら複数の点の近似直線を生成する。そして第1速度プロファイルVa上の点から近似直線までの距離に基づいて速度設定領域幅Wを設定してよい。例えば第1速度プロファイルVa上の点から近似直線までの距離の統計値(最大値、平均値、中間値など)に基づいて速度設定領域幅Wを設定してよい
【0043】
図8は、第1速度プロファイルVa上の複数の点の近似直線に基づく速度設定領域幅Wの設定方法の一例を説明する模式図である。
例えば、領域幅設定部32aは、第1速度プロファイルVa上の点Va0~Va11のうち隣接する3つの点を含むグループを複数個設定する。以下の説明において、第1速度プロファイルVa上の点Va0~Va11のそれぞれを「プロファイル点」と表記することがある。
【0044】
図8の例では、プロファイル点Va0、Va1及びVa2からなるグループと、プロファイル点Va1、Va2及びVa3からなるグループと、プロファイル点Va2、Va3及びVa4からなるグループと、プロファイル点Va3、Va4及びVa5からなるグループと、プロファイル点Va4、Va5及びVa6からなるグループと、プロファイル点Va5、Va6及びVa7からなるグループと、プロファイル点Va6、Va7及びVa8からなるグループと、プロファイル点Va7、Va8及びVa9からなるグループと、プロファイル点Va8、Va9及びVa10からなるグループと、プロファイル点Va9、Va10及びVa11からなるグループを設定している。
【0045】
領域幅設定部32aは、隣接する3つのプロファイル点のうち両端の第1点と第3点とを結んだ直線を算出し、第1点と第3点との間に挟まれる第2点から第1点と第3点とを結んだ直線までの距離を算出する。
図8の例では、プロファイル点Va0、Va1及びVa2からなるグループに関して、第1点Va0と第3点Va2とを結んだ直線La1を算出し、第2点Va1から直線La1までの距離D1を算出する。また、プロファイル点Va1、Va2及びVa3からなるグループに関して、第1点Va1と第3点Va3とを結んだ直線La2を算出し、第2点Va2から直線La2までの距離D2を算出する。以下、残りのグループについても同様に距離D3~D10を算出する。
領域幅設定部32aは、複数のプロファイル点のグループについてそれぞれ算出した距離D1~D10の統計値(最大値、平均値、中間値など)に基づいて速度設定領域幅Wを設定する。
【0046】
領域境界設定部32bは、領域幅設定部32aが設定した速度設定領域幅Wと、第1速度プロファイルVaとに基づいて、速度設定領域Rvの上限の境界線を形成する上限プロファイルPUと、速度設定領域Rvの下限の境界線を形成する下限プロファイルPLとを設定する。
図9は、上限プロファイルPUと下限プロファイルPLを形成する境界点の設定方法の一例を説明する模式図である。
【0047】
まず領域境界設定部32bは、速度設定領域Rvの上限及び下限を画定する境界点(すなわち上限プロファイルPUを形成する境界点と下限プロファイルPLを形成する境界点)のうちの何れか一方である第1境界点として、第1速度プロファイルVa上の各プロファイル点Va1~Va11(丸プロット)を設定する。
但し、自車両1の現在位置P0におけるプロファイル点Va0は、現在位置P0における第2速度プロファイルVbの拘束点(境界条件)として設定する。
【0048】
次に領域境界設定部32bは、第1速度プロファイルVa上の少なくとも3つのプロファイル点(丸プロット)のグループを設定して、グループに含まれる少なくとも3つのプロファイル点の近似直線(破線)を生成する。
領域境界設定部32bは、少なくとも3つのプロファイル点の各々を、これらのプロファイル点から近似直線へ向かうそれぞれの方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点(四角プロット)を、速度設定領域Rvの上限及び下限を画定する境界点のうちの他方である第2境界点として設定する。
【0049】
図9の例では、3つのプロファイル点Va0、Va1及びVa2のグループに対して、プロファイル点Va0、Va1及びVa2の近似直線Lb1を算出する。例えば領域境界設定部32bは、最小二乗法に基づいて近似直線Lb1を算出してよい。領域境界設定部32bは、プロファイル点Va1を、プロファイル点Va1から近似直線Lb1へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb1(四角プロット)を、第2境界点として設定する。
また領域境界設定部32bは、プロファイル点Va2を、プロファイル点Va2から近似直線Lb1へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb2を、第2境界点として設定する。
【0050】
同様に、3つのプロファイル点Va3、Va4及びVa5のグループに対して、プロファイル点Va3、Va4及びVa5の近似直線Lb2を算出する。領域境界設定部32bは、プロファイル点Va3を、プロファイル点Va3から近似直線Lb2へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb3を、第2境界点として設定する。プロファイル点Va4を、プロファイル点Va4から近似直線Lb2へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb4を、第2境界点として設定する。プロファイル点Va5を、プロファイル点Va5から近似直線Lb2へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb5を、第2境界点として設定する。
【0051】
同様に、3つのプロファイル点Va6、Va7及びVa8のグループに対して、プロファイル点Va6、Va7及びVa8の近似直線Lb3を算出する。領域境界設定部32bは、プロファイル点Va6を、プロファイル点Va6から近似直線Lb3へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb6を、第2境界点として設定する。プロファイル点Va7を、プロファイル点Va7から近似直線Lb3へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb7を、第2境界点として設定する。プロファイル点Va8を、プロファイル点Va8から近似直線Lb3へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb8を、第2境界点として設定する。
【0052】
同様に、3つのプロファイル点Va9、Va10及びVa11のグループに対して、プロファイル点Va9、Va10及びVa11の近似直線Lb4を算出する。領域境界設定部32bは、プロファイル点Va9を、プロファイル点Va9から近似直線Lb4へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb9を、第2境界点として設定する。プロファイル点Va10を、プロファイル点Va10から近似直線Lb4へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb10を、第2境界点として設定する。プロファイル点Va11を、プロファイル点Va11から近似直線Lb4へ向かう方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb11を、第2境界点として設定する。
【0053】
領域境界設定部32bは、第1境界点と、第1境界点を移動させて設定した第2境界点とのうちより大きな方を上限境界点として設定し、より小さな方を下限境界点として設定する。
領域境界設定部32bは、上限境界点同士を接続して上限プロファイルPUを設定するとともに、下限境界点同士を接続して下限プロファイルPLを設定することにより、
図10に示すような速度設定領域Rvを設定する。
【0054】
なお、第1速度プロファイルVa上のプロファイル点Va1~Va11や、上記のようにプロファイル点Va1~Va11を速度設定領域幅Wだけ移動させた点Vb1~Vb11が、目標走行軌道設定部30により設定された許容上限速度を超える場合がある。
図11は、プロファイル点Va4や、プロファイル点Va9を移動した点Vb9が、目標走行軌道設定部30により設定された許容上限速度VaUを超えた場合の例を示している。このような場合に領域境界設定部32bは、位置P4における許容上限速度VaUを位置P4における第1境界点Vc4として設定し、位置P9における許容上限速度VaUを位置P9における第2境界点Vc9として設定してよい。
【0055】
図5を参照する。第2速度プロファイル生成部33は、速度設定領域設定部32が設定した速度設定領域Rv内に第2速度プロファイルVbを生成する。
例えば、第2速度プロファイル生成部33は、自車両1の加速度及びジャークの少なくとも一方が予め設定された制約条件を満足するか、又は自車両1の加速度及びジャークのそれぞれについて予め設定された制約条件の両方を満足する第2速度プロファイルVbを生成してよい。
【0056】
加速度に関する制約条件は、例えば自車両1の加速度を変数に含んだ評価関数が最小値になることであってもよく、所定の許容範囲内の値になることであってもよい。同様に、ジャークに関する制約条件は、例えば自車両1のジャークを変数に含んだ評価関数が最小値になることであってもよく、所定の許容範囲内の値になることであってもよい。
第2速度プロファイル生成部33は、制約条件を満足する第2速度プロファイルVbを、例えば最適化計算手法により生成してもよい。例えば第2速度プロファイル生成部33は、最適化計算手法により自車両1の加速度及びジャークを変数に含んだ評価関数が最小になるように第2速度プロファイルVbを生成してよい。
また例えば第2速度プロファイル生成部33は、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、サポートベクタマシン等の学習モデルを用いて、制約条件を満足する第2速度プロファイルVbを生成してもよい。
【0057】
図12は、第2実施形態の走行制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS11において車両センサ12は、自車両1の自車速Va0を検出する。
ステップS12において目標走行軌道設定部30は、自車両1前方の走行車線における目標走行軌道を設定する。
ステップS13において第1速度プロファイル生成部31は、目標走行軌道と自車速Va0とを学習モデル31aに入力することにより第1速度プロファイルVaを生成する。
【0058】
ステップS14において速度設定領域設定部32の領域幅設定部32aは、速度設定領域幅Wを設定する。
ステップS15において領域境界設定部32bは、第1速度プロファイルVaと速度設定領域幅Wに基づいて速度設定領域Rvの境界点を設定することにより、速度設定領域Rvを設定する。
ステップS16において第2速度プロファイル生成部33は、第2速度プロファイルVbを生成する。
ステップS17において車両制御部34は、目標走行軌道に沿って第2速度プロファイルVbに従う車速で自車両1が走行するように自車両1を制御する。その後に処理は終了する。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態のコントローラ18は、第1速度プロファイル生成部31が生成した第1速度プロファイルVaが滑らかでない区間においては、速度設定領域Rv内に第2速度プロファイルVbを生成し、第1速度プロファイルVaが滑らかな区間おいては、第1速度プロファイルVa上の点を通過するように第2速度プロファイルVbを生成する。
第3実施形態のコントローラ18は、第1実施形態及び第2実施形態のコントローラ18に類似する構成を有しており同一又は類似の構成要素には同じ参照符号を付与して、重複する説明を省略する。
【0060】
図13(a)を参照する。速度設定領域設定部32は、第1速度プロファイルVa上の複数のプロファイル点の近似直線(破線)Lcを生成する。第1速度プロファイルVa上のプロファイル点から近似直線までの距離Dが閾値以上である第1区間と、閾値未満である第2区間とを設定する。
第1区間においては、第1速度プロファイルVaが比較的滑らかでない形状を有し、第2区間においては、第1速度プロファイルVaが比較的滑らかな形状を有する。
【0061】
図13(a)の例では、第1速度プロファイルVa上の3つのプロファイル点のグループを設定して、グループに含まれる3つのプロファイル点の近似直線Lcを生成する。例えば、プロファイル点Va0、Va1及びVa2からなるグループと、プロファイル点Va3、Va4及びVa5からなるグループと、プロファイル点Va5、Va6及びVa7からなるグループと、プロファイル点Va7、Va8及びVa9からなるグループと、プロファイル点Va9、Va10及びVa11からなるグループを設定している。
【0062】
速度設定領域設定部32は、第1目標走行軌道上のプロファイル点から近似直線Lcまでの距離Dを算出し、距離Dが閾値以上である第1区間Sa1、Sa2及びSa3と、閾値未満である第2区間Sb1及びSb2とを設定する。
第2速度プロファイル生成部33は、第1区間Sa1、Sa2及びSa3では速度設定領域Rv内を走行するように第2速度プロファイルVbを生成し、第2区間Sb1及びSb2では第1速度プロファイルVa上の点を通過するように第2速度プロファイルVbを生成する。なお、速度設定領域設定部32は、第2区間Sb1及びSb2において速度設定領域Rvの設定を省略してもよい。
【0063】
(実施形態の効果)
【0064】
(1)車両センサ12は、自車両1の車速である自車速を検出する。コントローラ18は、自車両1の目標走行軌道を設定し、過去に車両が走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルに基づいて、目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第1速度プロファイルVaを生成し、第1速度プロファイルVaに基づいて、目標走行軌道に沿った位置における上限速度のプロファイルである上限プロファイルPUと下限速度のプロファイルである下限プロファイルPLとを設定し、上限プロファイルPUと下限プロファイルPLとの間に挟まれた領域である速度設定領域Rv内に設定され、且つ自車両1の加速度及びジャークの少なくとも一方について予め設定した制約条件を満足するように、目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第2速度プロファイルVbを生成し、目標走行軌道に沿って第2速度プロファイルVbに従う車速で走行するように自車両1を制御する。
例えば、過去に車両が手動運転で走行したときの走行軌跡と走行軌跡上における車両の速度プロファイルとを学習した学習モデル31aに、目標走行軌道と自車速とを入力することにより、目標走行軌道に沿った位置における目標速度のプロファイルである第1速度プロファイルVaを生成してよい。
【0065】
このように、第1速度プロファイルVaに基づいて設定された速度設定領域Rv内に第2速度プロファイルVbを設定することにより、過去に車両が手動運転で走行したときの走行速度を学習した学習モデル31aにより生成された第1速度プロファイルVaの利点を、第2速度プロファイルVbに生かすことができる。例えば乗員の意図に近い車速プロファイルを生成できる。
また、自車両1の加速度及びジャークの少なくとも一方が予め設定した制約条件を満足するように第2速度プロファイルVbを生成することにより、滑らかな第2速度プロファイルVbを生成できる。
【0066】
(2)コントローラ18は、制約条件として、自車両1の加速度及びジャークの少なくとも一方を変数に含んだ評価関数が最小又は閾値未満になるように第2速度プロファイルVbを生成してよい。
これにより、滑らかで乗り心地のよい第2速度プロファイルVbを生成できる。
【0067】
(3)コントローラ18は、速度設定領域Rvの幅である速度設定領域幅Wを、第1速度プロファイルVaの形状に基づいて設定してよい。
例えばコントローラ18は、第1速度プロファイルVa上の複数の点の近似直線を生成し、第1速度プロファイルVa上の点から近似直線までの距離に基づいて速度設定領域幅Wを設定してよい。
【0068】
例えばコントローラ18は、第1速度プロファイルVa上の隣接する3つの点を含むグループを複数個設定し、隣接する3つの点のうち第1点と第3点との間に挟まれる第2点から第1点と第3点とを結んだ直線までの距離をグループ毎に算出し、第2点から第1点と第3点とを結んだ直線までの距離の最大値に基づき速度設定領域幅Wを設定してよい。
これにより、第1速度プロファイルVaが滑らかでない区間ほど速度設定領域Rvの幅をより広く設定することができ、この結果、第2速度プロファイルVbの通過点の自由度が大きくして滑らかな第2速度プロファイルVbを生成できる。
【0069】
(4)コントローラ18は、第1速度プロファイルVa上の少なくとも3つの点の近似直線を生成し、少なくとも3つの点の各々を、これらの点から近似直線へ向かうそれぞれの方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点を、速度設定領域Rvの境界点として設定してよい。
例えばコントローラ18は、速度設定領域Rvの上限及び下限の境界点のうちの何れか一方である第1境界点として、第1速度プロファイルVa上の点を設定し、速度設定領域Rvの上限及び下限の境界点のうち他方である第2境界点として、少なくとも3つの点の各々を、これらの点から近似直線へ向かうそれぞれの方向へ速度設定領域幅Wだけ移動させた点を設定してよい。
これにより、第1速度プロファイルVaの形状と概略的に類似する特徴を有する形状の速度設定領域Rvを設定できる。また、速度設定領域Rvの速度設定領域幅Wを第1速度プロファイルVaの滑らかさに応じて調整できる。
【0070】
(5)コントローラ18は、境界点における車速が許容上限速度を超える場合には許容上限速度に補正してよい。
またコントローラ18は、第1境界点又は第2境界点における車速が許容上限速度を超える場合には許容上限速度に補正してよい。
これにより、許容上限速度を超える第2速度プロファイルVbの生成を防止できる。
【0071】
(6)コントローラ18は、第1速度プロファイルVa上の複数の点の近似直線を生成し、第1速度プロファイルVa上の点から近似直線までの距離が閾値以上である第1区間と、距離が閾値未満である第2区間とを設定し、第1区間では速度設定領域Rv内に第2速度プロファイルVbを生成し、第2区間では第1速度プロファイルVa上の点を通過する第2速度プロファイルVbを生成してよい。
これにより、第1速度プロファイルVaが滑らかである区間では、より第1速度プロファイルVaに近い速度プロファイルを第2速度プロファイルVbとして生成するので、より乗員の意図に合致した目標速度に従って自車両1を走行させることができる。また、第1速度プロファイルVaが滑らかである区間では、速度設定領域Rvの算出を省略できるので、コントローラ18の演算負荷を低減できる。
【0072】
(7)学習モデル31aは、過去に車両が手動運転で走行したときの走行軌跡と、走行軌跡上における車両の速度プロファイルと、車両の横加速度及び縦加速度とを学習したニューラルネットワークであってよい。コントローラ18は、目標走行軌道と、自車速と、自車両1の横加速度と縦加速度と、をニューラルネットワークに入力することにより第1速度プロファイルVaを生成してよい。
これにより、乗員が意図する目標速度を予測して速度プロファイルを生成できる。
【0073】
(12)学習モデル31aは、過去に車両が手動運転で走行したときの走行軌跡と、走行軌跡上における車両の速度プロファイルと、車両の前方の車線形状の検出距離と、を学習したニューラルネットワークであってよい。コントローラ18は、目標走行軌道と、自車速と、自車両1の前方の車線形状の検出距離と、をニューラルネットワークに入力することにより第1速度プロファイルVaを生成してよい。
これにより、車線形状の検出距離に応じた最適な速度プロファイルを生成できる。
【0074】
(13)学習モデル31aは、過去に車両が手動運転で走行したときの走行軌跡と、走行軌跡上における車両の速度プロファイルと、車両の前方の道路勾配と、を学習したニューラルネットワークであってよい。コントローラ18は、目標走行軌道と、自車速と、自車両1の前方の道路勾配と、をニューラルネットワークに入力することにより第1速度プロファイルVaを生成してよい。
これにより、道路勾配に応じた最適な速度プロファイルを生成できる。
【符号の説明】
【0075】
1…自車両、10…走行制御装置、11…外界センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…ナビゲーション装置、17…アクチュエータ、18…コントローラ、18a…プロセッサ、18b…記憶装置、30…目標走行軌道設定部、31…第1速度プロファイル生成部、31a…学習モデル、32…速度設定領域設定部、32a…領域幅設定部、32b…領域境界設定部、33…第2速度プロファイル生成部、34…車両制御部、35…許容上限速度設定部