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特開2024-170096燃料電池モジュールの制御装置、燃料電池モジュールの制御方法
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  • 特開-燃料電池モジュールの制御装置、燃料電池モジュールの制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170096
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】燃料電池モジュールの制御装置、燃料電池モジュールの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20241129BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241129BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20241129BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20241129BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241129BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/04 H
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087063
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127CC07
5H127DB03
5H127DC02
5H127DC04
5H127DC56
(57)【要約】
【課題】供給配管の内圧を好適に低下させるとともに、循環流路から排気された水素ガスの濃度を低下させる。
【解決手段】診断ツール200は、ラジエータファン73を駆動させ、インジェクタ62から水素ガスを噴射させた後にインジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させ、インジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させた状態で排気排水弁67を開弁させることによって循環流路64から水素ガスを排気させた後に排気排水弁67を閉弁させて、供給配管63の内圧を低下させる内圧低下処理を行い、内圧低下処理の後に供給配管63の内圧が所定内圧以上であると、内圧低下処理を再び行い、内圧低下処理の後に供給配管の内圧が所定内圧未満であると、供給配管63の内圧の低下が完了したと判定する内圧判定処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、
水素ガスを噴射するインジェクタと、
前記インジェクタに一端が接続され、水素ガス供給部に他端が接続され、前記水素ガス供給部から供給された水素ガスを前記インジェクタに供給する供給配管と、
前記供給配管の内圧を検出する内圧センサと、
前記インジェクタから噴射された水素ガスを前記燃料電池スタックに循環させる循環流路と、
前記循環流路から水素ガスを排気させる排気排水弁と、を備えた燃料電池モジュールを制御する燃料電池モジュールの制御装置であって、
前記燃料電池モジュールは、前記排気排水弁を介して前記循環流路から排気された水素ガスを攪拌させるファンを備え、
前記制御装置は、
前記供給配管の内圧低下要求があった場合に行う処理であって、前記ファンを駆動させ、前記インジェクタから水素ガスを噴射させた後に前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させ、前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させた状態で前記排気排水弁を開弁させることによって前記循環流路から水素ガスを排気させた後に前記排気排水弁を閉弁させて、前記供給配管の内圧を低下させる内圧低下処理を行い、
前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が所定内圧以上であると、前記内圧低下処理を再び行い、前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が前記所定内圧未満であると、前記供給配管の内圧の低下が完了したと判定する内圧判定処理を行う、ことを特徴とする燃料電池モジュールの制御装置。
【請求項2】
前記燃料電池モジュールは、前記燃料電池スタックを冷却するための冷媒を空気と熱交換させるラジエータを備え、
前記ファンは、前記ラジエータに向けて送風することによって前記ラジエータに空気を供給するラジエータファンである、請求項1に記載の燃料電池モジュールの制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記内圧判定処理において、前記供給配管の内圧の低下が完了したと判定されずに前記内圧低下処理が行われた回数が所定回数以上であると、異常と判定する、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池モジュールの制御装置。
【請求項4】
前記燃料電池モジュールは、前記インジェクタからの水素ガスの噴射と、前記排気排水弁の開閉と、を制御する制御部を備え、
前記制御装置は、前記制御部に接続された状態で前記制御部に前記供給配管の内圧低下要求を指令することで前記内圧低下処理を開始する診断ツールである、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池モジュールの制御装置。
【請求項5】
水素ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、
水素ガスを噴射するインジェクタと、
前記インジェクタに一端が接続され、水素ガス供給部に他端が接続され、前記水素ガス供給部から供給された水素ガスを前記インジェクタに供給する供給配管と、
前記供給配管の内圧を検出する内圧センサと、
前記インジェクタから噴射された水素ガスを前記燃料電池スタックに循環させる循環流路と、
前記循環流路から水素ガスを排気させる排気排水弁と、を備えた燃料電池モジュールを制御装置によって制御する燃料電池モジュールの制御方法であって、
前記燃料電池モジュールは、前記排気排水弁を介して前記循環流路から排気された水素ガスを攪拌させるファンを備え、
前記供給配管の内圧低下要求があった場合に行う処理であって、
前記制御装置が前記ファンを駆動させるステップと、
前記制御装置が前記インジェクタから水素ガスを噴射させた後に前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させるステップと、
前記制御装置が前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させた状態で前記排気排水弁を開弁させることによって前記循環流路から水素ガスを排気させた後に前記排気排水弁を閉弁させるステップと、を含み、前記供給配管の内圧を低下させる内圧低下処理を行い、
前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が所定内圧以上であると、前記制御装置が前記内圧低下処理を再び行うステップと、
前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が前記所定内圧未満であると、前記制御装置が前記供給配管の内圧の低下が完了したと判定するステップと、を含む内圧判定処理を行う、ことを特徴とする燃料電池モジュールの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールの制御装置、燃料電池モジュールの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の燃料電池モジュールは、水素ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、水素ガスを噴射するインジェクタと、水素ガス供給部から供給された水素ガスをインジェクタに供給する供給配管と、循環流路と、排気排水弁と、を備える。循環流路は、インジェクタから噴射された水素ガスを燃料電池スタックに循環させる。排気排水弁は、水素ガスを含む排ガスを循環流路の内部から排気させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-172027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池モジュールから供給配管を取り外す場合などには、供給配管の内圧を低下させる必要がある。また、仮に供給配管の内部の水素ガスが循環流路を介して排気排水弁から排気されると、排気された水素ガスの濃度を低下させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池モジュールの制御装置は、水素ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、水素ガスを噴射するインジェクタと、前記インジェクタに一端が接続され、水素ガス供給部に他端が接続され、前記水素ガス供給部から供給された水素ガスを前記インジェクタに供給する供給配管と、前記供給配管の内圧を検出する内圧センサと、前記インジェクタから噴射された水素ガスを前記燃料電池スタックに循環させる循環流路と、前記循環流路から水素ガスを排気させる排気排水弁と、を備えた燃料電池モジュールを制御する燃料電池モジュールの制御装置であって、前記燃料電池モジュールは、前記排気排水弁を介して前記循環流路から排気された水素ガスを攪拌させるファンを備え、前記制御装置は、前記供給配管の内圧低下要求があった場合に行う処理であって、前記ファンを駆動させ、前記インジェクタから水素ガスを噴射させた後に前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させ、前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させた状態で前記排気排水弁を開弁させることによって前記循環流路から水素ガスを排気させた後に前記排気排水弁を閉弁させて、前記供給配管の内圧を低下させる内圧低下処理を行い、前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が所定内圧以上であると、前記内圧低下処理を再び行い、前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が前記所定内圧未満であると、前記供給配管の内圧の低下が完了したと判定する内圧判定処理を行う、ことを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決する燃料電池モジュールの制御方法は、水素ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、水素ガスを噴射するインジェクタと、前記インジェクタに一端が接続され、水素ガス供給部に他端が接続され、前記水素ガス供給部から供給された水素ガスを前記インジェクタに供給する供給配管と、前記供給配管の内圧を検出する内圧センサと、前記インジェクタから噴射された水素ガスを前記燃料電池スタックに循環させる循環流路と、前記循環流路から水素ガスを排気させる排気排水弁と、を備えた燃料電池モジュールを制御装置によって制御する燃料電池モジュールの制御方法であって、前記燃料電池モジュールは、前記排気排水弁を介して前記循環流路から排気された水素ガスを攪拌させるファンを備え、前記供給配管の内圧低下要求があった場合に行う処理であって、前記制御装置が前記ファンを駆動させるステップと、前記制御装置が前記インジェクタから水素ガスを噴射させた後に前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させるステップと、前記制御装置が前記インジェクタからの水素ガスの噴射を停止させた状態で前記排気排水弁を開弁させることによって前記循環流路から水素ガスを排気させた後に前記排気排水弁を閉弁させるステップと、を含み、前記供給配管の内圧を低下させる内圧低下処理を行い、前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が所定内圧以上であると、前記制御装置が前記内圧低下処理を再び行うステップと、前記内圧低下処理の後に前記内圧センサから検出された前記供給配管の内圧が前記所定内圧未満であると、前記制御装置が前記供給配管の内圧の低下が完了したと判定するステップと、を含む内圧判定処理を行う、ことを特徴とする。
【0007】
上記の構成および上記の方法によれば、内圧低下処理において、供給配管の内部の水素ガスをインジェクタによって循環流路に供給することで、供給配管の内圧を低下させることができる。内圧低下処理において、排気排水弁を開弁させることで、循環流路の内部の水素ガスを循環流路から排気させることができる。内圧判定処理において、内圧センサから検出された供給配管の内圧が所定内圧未満になるまで内圧低下処理が繰り返し行われる。これにより、内圧センサから検出された供給配管の内圧が所定内圧未満になるまで、インジェクタからの水素ガスの噴射による供給配管の内圧の低下と、排気排水弁の開弁による循環流路からの水素ガスの排気と、を繰り返し行える。したがって、供給配管の内圧を好適に低下させることができる。また、制御装置は、内圧低下処理において、ファンを駆動させる。これにより、ファンにて発生する送風によって、循環流路から排気された水素ガスを攪拌させることができる。したがって、循環流路から排気された水素ガスの濃度を低下させることができる。
【0008】
燃料電池モジュールの制御装置において、前記燃料電池モジュールは、前記燃料電池スタックを冷却するための冷媒を空気と熱交換させるラジエータを備え、前記ファンは、前記ラジエータに向けて送風することによって前記ラジエータに空気を供給するラジエータファンであってもよい。
【0009】
上記の構成によれば、排気排水弁を介して循環流路から排気された水素ガスを攪拌させるために、ラジエータファンとは別にファンを燃料電池モジュールに設ける場合と比較して、燃料電池モジュールに搭載される部品点数を低減できる。
【0010】
燃料電池モジュールの制御装置において、前記制御装置は、前記内圧判定処理において、前記供給配管の内圧の低下が完了したと判定されずに前記内圧低下処理が行われた回数が所定回数以上であると、異常と判定してもよい。
【0011】
上記の構成によれば、制御装置による異常との判定をうけて、作業者が燃料電池モジュールに異常が生じていることを認識できる。
燃料電池モジュールの制御装置において、前記燃料電池モジュールは、前記インジェクタからの水素ガスの噴射と、前記排気排水弁の開閉と、を制御する制御部を備え、前記制御装置は、前記制御部に接続された状態で前記制御部に前記供給配管の内圧低下要求を指令することで前記内圧低下処理を開始する診断ツールであってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、内圧低下処理及び内圧判定処理の実行を、診断ツールを所持し且つ制御部に接続可能な特定の作業員のみに制限できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、供給配管の内圧を好適に低下させることができるとともに、循環流路から排気された水素ガスの濃度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、燃料電池モジュールを示す模式図である。
図2図2は、制御装置が行う処理の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、制御装置が行う処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、燃料電池モジュールの制御装置および燃料電池モジュールの制御方法を具体化した実施形態を図面にしたがって説明する。本実施形態における燃料電池モジュールは、産業車両に搭載されている。なお、以下では、説明の都合上、燃料電池モジュールが搭載される産業車両についての説明を、燃料電池モジュールの説明よりも先に行う。
【0016】
<燃料電池モジュールが搭載される産業車両>
図1に示すように、産業車両1は、燃料電池モジュール10と、筐体11と、キースイッチ15と、車両負荷92と、を備えている。車両負荷92は、電力によって駆動する装置である。車両負荷92は、例えば、電力によって駆動する電動機である。この電動機の駆動によって産業車両1は走行する。産業車両1は、例えば、フォークリフト、又はトーイングトラクタである。
【0017】
キースイッチ15は、産業車両1のユーザによって操作される。ユーザによる操作によって、キースイッチ15のオンとオフとが切り替えられる。以下の説明において、キースイッチ15がオンされることをキーオンと称し、キースイッチ15がオフされることをキーオフと称する場合がある。
【0018】
筐体11は、燃料電池モジュール10を収容する。筐体11の壁部には、通気孔が形成されている。通気孔は、筐体11の壁部を貫通している。筐体11の壁部に形成される通気孔は、1つであってもよいし、複数であってもよい。通気孔を介して、筐体11の内部と外部とは連通されている。そのため、筐体11の内部は密閉されていない空間である。
【0019】
<燃料電池モジュール>
燃料電池モジュール10は、アノード系60と、冷却系70と、電気系90と、希釈器69と、を備える。燃料電池モジュール10は、燃料電池スタック21を備える。燃料電池スタック21は、例えば、固体高分子形燃料電池である。燃料電池スタック21は、複数の燃料電池セル22を備える。燃料電池セル22は、アノードガスとしての水素ガスが供給されるアノード極と、カソードガスが供給されるカソード極と、アノード極とカソード極との間に配置されている電解質膜と、を備える。燃料電池セル22は、セパレータによって挟まれている。
【0020】
燃料電池モジュール10は、図示しないカソード系を備えている。カソード系は、例えば、カソードガスが流れる図示しないカソード流路を備える。カソード流路は、例えば、燃料電池スタック21におけるカソード極に向かい合うセパレータに設けられている。
【0021】
アノード系60は、水素ガスが流れるアノード流路26を備える。アノード流路26は、例えば、燃料電池スタック21におけるアノード極に向かい合うセパレータに設けられている。
【0022】
アノード流路26を流れる水素ガスと、カソード流路を流れるカソードガスと、が反応することにより、燃料電池スタック21は発電を行う。したがって、燃料電池スタック21は、水素ガスを用いて発電を行う。なお、カソードガスは、酸素ガスである。
【0023】
カソード系は、図示しない供給流路を備えている。供給流路には、カソードガスを含む気体が流れる。カソードガスを含む気体は、例えば空気である。カソードガスを含む気体は、供給流路を介してカソード流路に供給される。これにより、カソードガスは燃料電池スタック21に供給される。供給流路には、図示しない電動圧縮機が設けられている。
【0024】
カソード系は、図示しない排出流路を備えている。排出流路の一端はカソード流路の下流端に接続され、排出流路の他端は希釈器69に接続されている。排出流路には、カソード流路からカソード排ガスが流入する。カソード排ガスは、未反応の酸素ガスと、生成水と、を含む。カソード排ガスは、排出流路を介して希釈器69に供給される。
【0025】
アノード系60は、水素タンク61と、手動弁12と、主止弁13と、インジェクタ62と、供給配管63と、循環流路64と、気液分離器65と、循環ポンプ66と、排気排水弁67と、を備えている。すなわち、燃料電池モジュール10は、インジェクタ62と、供給配管63と、循環流路64と、排気排水弁67と、を備えている。水素タンク61は、水素ガス供給部に相当する。
【0026】
水素タンク61には、水素ガスが貯留されている。インジェクタ62は、水素ガスを噴射する。インジェクタ62は、燃料電池スタック21に供給される水素ガスの量を調整するための部材である。燃料電池スタック21に供給される水素ガスの量は、インジェクタ62が制御されることで調整される。
【0027】
供給配管63の一端がインジェクタ62に接続され、供給配管63の他端が水素ガス供給部としての水素タンク61に接続されている。手動弁12及び主止弁13は、供給配管63に設けられている。主止弁13は、供給配管63のうち、手動弁12が設けられた部分とインジェクタ62に接続された端部との間に設けられている。手動弁12は、供給配管63のうち、水素タンク61に接続された端部と主止弁13が設けられた部分との間に設けられている。手動弁12は、例えば、水素タンク61と一体化されていてもよいし、水素タンク61とは別体として水素タンク61から離れていてもよい。
【0028】
手動弁12は、作業者によって開閉可能な開閉弁である。手動弁12が開弁状態にされると、供給配管63における手動弁12の上流側から下流側へと水素ガスが流れる。手動弁12が閉弁状態にされると、供給配管63における手動弁12の上流側から下流側へと水素ガスが流れない。なお、手動弁12は、作業者によって閉弁されない限り、開弁状態で維持される。手動弁12は、例えば、燃料電池モジュール10のメンテナンスを行う際に作業者によって閉弁され、燃料電池モジュール10のメンテナンスが終了したら作業者によって開弁される。
【0029】
主止弁13は電磁開閉弁である。主止弁13が開弁状態にされると、供給配管63における主止弁13の上流側から下流側へと水素ガスが流れる。主止弁13が閉弁状態にされると、供給配管63における主止弁13の上流側から下流側へと水素ガスが流れない。
【0030】
手動弁12及び主止弁13の両方が開弁状態にされることで、供給配管63を介して水素タンク61からインジェクタ62に水素ガスが供給される。こうして、供給配管63は、水素ガス供給部としての水素タンク61から供給された水素ガスをインジェクタ62に供給する。インジェクタ62は、供給配管63を介して水素タンク61から供給された水素ガスを噴射する。
【0031】
循環流路64は、第1循環流路64aと、第2循環流路64bと、アノード流路26と、を含む。第1循環流路64aの一端はインジェクタ62に接続され、第1循環流路64aの他端はアノード流路26の上流端に接続されている。第2循環流路64bの一端はアノード流路26の下流端に接続され、第2循環流路64bの他端は第1循環流路64aの両端部の間に接続されている。
【0032】
第1循環流路64aには、インジェクタ62から噴射された水素ガスが流入する。水素ガスは、第1循環流路64aを介してアノード流路26に供給される。言い換えると、循環流路64は、インジェクタ62から噴射された水素ガスを燃料電池スタック21に循環させる。
【0033】
第2循環流路64bには、アノード流路26からアノード排ガスが流入する。アノード排ガスは、未反応の水素ガスと、生成水と、を含む。生成水は、燃料電池スタック21での発電によって生成される水である。アノード排ガスに含まれる未反応の水素ガスは、第2循環流路64bを介して第1循環流路64aに戻される。こうして、水素ガスは、第1循環流路64a、アノード流路26、及び第2循環流路64bの順で循環する。
【0034】
気液分離器65は、第2循環流路64bに設けられている。気液分離器65は、アノード排ガスを水素ガスと生成水とに分離する。アノード排ガスから分離された生成水は、気液分離器65に貯留される。循環ポンプ66は、第2循環流路64bに設けられている。循環ポンプ66は、気液分離器65によってアノード排ガスから分離された水素ガスを第1循環流路64aに供給する。
【0035】
排気排水弁67は、気液分離器65に接続されている。排気排水弁67は、開状態と閉状態に切り替えられる。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65から生成水が排出される。排気排水弁67は、気液分離器65に貯留される生成水の量が閾値を上回った場合に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。排気排水弁67は、所定の時間間隔毎に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65に貯留された生成水と共に、第2循環流路64b内のアノード排ガスが循環流路64外に排気される。すなわち、排気排水弁67は、循環流路64から水素ガスを排気させる。
【0036】
気液分離器65は、希釈器69に接続されている。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65に貯留された生成水及びアノード排ガスが希釈器69に供給される。希釈器69は、気液分離器65から供給されたアノード排ガスを、排出流路から希釈器69に供給されたカソード排ガスによって希釈して排出する。
【0037】
希釈器69には排出口39が接続されている。排出口39は、筐体11内に開口している。希釈器69にてカソード排ガスによって希釈されたアノード排ガスは、排出口39を介して筐体11内に排出される。
【0038】
冷却系70は、冷媒循環路71と、ラジエータ72と、ラジエータファン73と、冷媒ポンプ74と、を備える。言い換えると、燃料電池モジュール10は、ラジエータ72と、ファンとしてのラジエータファン73と、を備えている。
【0039】
冷媒循環路71は、燃料電池スタック21とラジエータ72とを接続している。冷媒ポンプ74は、冷媒循環路71に冷媒を循環させる。冷媒としては、例えば、水、不凍液、及び空気のいずれかが用いられる。冷媒ポンプ74は、図示しない電動モータによって駆動される。
【0040】
ラジエータ72は、燃料電池スタック21を冷却するための冷媒を空気と熱交換させる。ラジエータファン73は、図示しない電動モータによって回転する。ラジエータファン73は、例えば、ラジエータ72に隣接する。ラジエータファン73は、ラジエータ72に向けて送風することによってラジエータ72に空気を供給する。ラジエータファン73からの送風によって、ラジエータ72の内部の冷媒の冷却効率が高められる。ラジエータ72にて冷却された冷媒が冷媒循環路71を介して燃料電池スタック21に供給されることにより、燃料電池スタック21は冷却される。
【0041】
ファンとしてラジエータファン73は、排気排水弁67を介して循環流路64から排気された水素ガスを攪拌させる。詳細には、カソード排ガスによって希釈されたアノード排ガスは、排出口39から筐体11内に排気された後、ラジエータファン73からの送風によって攪拌される。これにより、筐体11の内部におけるアノード排ガスの水素濃度が下げられる。水素濃度が下げられたアノード排ガスは、筐体11に形成された通気孔を介して筐体11の内部から外部へと排出される。なお、ラジエータファン73と排出口39との位置関係は、排出口39から排気されたアノード排ガスにラジエータファン73からの送風が作用する位置関係にある。例えば、ラジエータファン73にて発生する送風の流れ方向において、ラジエータファン73よりも下流側に排出口39が設けられていてもよい。
【0042】
電気系90は、DC/DCコンバータ91と、蓄電装置96と、充電状態検出部98と、を備える。DC/DCコンバータ91は、燃料電池スタック21に接続されている。DC/DCコンバータ91は、燃料電池スタック21の出力電圧を変圧して出力する。DC/DCコンバータ91からの出力電力は、車両負荷92に供給される。
【0043】
蓄電装置96は、DC/DCコンバータ91に接続されている。蓄電装置96は、DC/DCコンバータ91に対して補機97と並列に接続されている。DC/DCコンバータ91からの出力電力が車両負荷92及び補機97の消費電力を上回っている場合、蓄電装置96は余剰の電力によって充電される。DC/DCコンバータ91からの出力電力が車両負荷92及び補機97の消費電力を下回っている場合、蓄電装置96は放電を行う。蓄電装置96は、充放電可能であれば、どのようなものを用いてもよい。蓄電装置96としては、例えば、二次電池及びキャパシタを挙げることができる。補機97は、例えば、カソード系における電動圧縮機、循環ポンプ66、主止弁13、排気排水弁67、及びインジェクタ62を含む。
【0044】
充電状態検出部98は、蓄電装置96の充電状態を検出する。充電状態検出部98は、例えば、バッテリマネジメントシステムである。充電状態検出部98は、センサと、センサの検出結果から蓄電装置96の状態を導出する導出部と、を含む。センサは、例えば、電流センサ及び電圧センサである。導出部は、センサの検出結果から蓄電装置96の充電率を導出可能である。導出部は、蓄電装置96の充電率として、充電電圧Vを導出する。充電率の導出手法としては、例えば、蓄電装置96の開回路電圧を用いる手法、電流積算法、あるいは、これらの組み合わせを挙げることができる。
【0045】
燃料電池モジュール10は、内圧センサとしての第1内圧センサ41を備えている。第1内圧センサ41は、供給配管63の内圧を検出する。詳細には、第1内圧センサ41は、供給配管63のうち、主止弁13が設けられる部分とインジェクタ62に接続される端部との間の内圧を検出する。第1内圧センサ41は、供給配管63の内圧として第1内圧P1を検出する。
【0046】
燃料電池モジュール10は、第2内圧センサ42と、水素濃度センサ43と、を備えている。第2内圧センサ42は、循環流路64の内圧を検出する。詳細には、第2内圧センサ42は、第1循環流路64aのうち、インジェクタ62に接続される端部と第2循環流路64bが接続される部分との間の内圧を検出する。第2内圧センサ42は、循環流路64の内圧として第2内圧P2を検出する。
【0047】
水素濃度センサ43は、筐体11の内部の水素濃度である水素濃度Hを検出する。水素濃度センサ43は、例えば、筐体11の内部のうち、排出口39の付近など、水素濃度が高くなりやすい箇所の水素濃度Hを検出するものであってもよい。
【0048】
<制御部>
燃料電池モジュール10は、制御部80を備えている。制御部80は、プロセッサ81と、記憶部82と、を備える。記憶部82は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部82は、処理をプロセッサ81に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部82、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部80は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部80は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0049】
制御部80は、各種の検出部及び各種のスイッチからの出力に基づいて各種の制御を行う。上記の各種の検出部は、第1内圧センサ41、第2内圧センサ42、水素濃度センサ43、及び充電状態検出部98を含む。上記の各種のスイッチは、キースイッチ15を含む。
【0050】
制御部80は、燃料電池モジュール10の制御を行う。例えば、制御部80は、燃料電池スタック21の出力電力[kW]を制御する。燃料電池スタック21の出力電力は、燃料電池スタック21に供給されるカソードガスの量と、燃料電池スタック21に供給される水素ガスの量と、によって変化する。制御部80は、インジェクタ62からの水素ガスの噴射を制御する。これにより、燃料電池スタック21への水素ガスの供給量を制御する。制御部80は、カソード系における電動圧縮機を制御することで、燃料電池スタック21へのカソードガスの供給量を制御する。制御部80は、排気排水弁67の開閉を制御する。制御部80は、主止弁13の開閉を制御する。制御部80は、ラジエータファン73の回転を制御する。
【0051】
制御部80は、燃料電池スタック21への水素ガスの供給とカソードガスの供給とを停止することにより、燃料電池スタック21の発電を停止する。制御部80は、例えば、キーオフされたことを条件に、燃料電池スタック21の発電を停止する。燃料電池スタック21の発電停止に際して、制御部80は、例えば、インジェクタ62からの水素ガスの噴射の停止、主止弁13の閉弁、循環ポンプ66の駆動停止、及び排気排水弁67の閉弁を行う。さらに制御部80は、燃料電池スタック21の発電停止に際して、ラジエータファン73の回転停止と、冷媒ポンプ74の駆動停止と、を行ってもよい。燃料電池スタック21の発電停止に際して、制御部80は、例えば、カソード系における電動圧縮機の駆動停止を行う。さらに制御部80は、燃料電池スタック21の発電停止に際して、カソード系における供給流路及び排出流路の少なくとも一方に設けられた図示しない開閉弁を閉弁させてもよい。
【0052】
制御部80は、燃料電池スタック21への水素ガスの供給とカソードガスの供給とを行うことにより、燃料電池スタック21の発電を行う。制御部80は、例えば、キーオンされたことを条件に、燃料電池スタック21の発電を開始する。燃料電池スタック21の発電開始に際して、制御部80は、例えば、インジェクタ62からの水素ガスの噴射、主止弁13の開弁、及び循環ポンプ66の駆動を行う。さらに制御部80は、燃料電池スタック21の発電開始に際して、ラジエータファン73の回転と、冷媒ポンプ74の駆動と、を行ってもよい。燃料電池スタック21の発電開始に際して、制御部80は、例えば、カソード系における電動圧縮機の駆動を行う。さらに制御部80は、燃料電池スタック21の発電開始に際して、カソード系における供給流路及び排出流路の少なくとも一方に設けられた図示しない開閉弁を開弁させてもよい。
【0053】
<診断ツール>
制御部80における図示しないポートには、診断ツール200が接続可能である。診断ツール200は、産業車両1の外部から制御部80のポートに接続される。診断ツール200は、産業車両1の異常状態を診断するためのツールである。診断ツール200は、産業車両1における各種の検出部及び各種のスイッチからの出力結果、及び産業車両1の診断結果などを表示する表示部200aを備えている。表示部200aに表示された診断結果を確認することにより、作業者は診断結果に応じた処置を産業車両1に施すことができる。
【0054】
作業者は、産業車両1の異常状態を診断するに際して、産業車両1がキーオフされている状況下で制御部80に診断ツール200を接続させる。作業者は、産業車両1の異常状態の診断を終えたら、制御部80から診断ツール200を取り外す。
【0055】
診断ツール200が制御部80に接続された状態で、診断ツール200が作業者によって操作されることにより、診断ツール200から制御部80に対して診断モードの設定が指示される。制御部80が診断モードに設定されると、診断ツール200は制御部80を制御することで燃料電池モジュール10を制御する。これにより産業車両1の各種の診断が行われる。そのため、インジェクタ62からの水素ガスの噴射の停止、循環ポンプ66の駆動停止、及び排気排水弁67の閉弁、ラジエータファン73の回転停止、及び冷媒ポンプ74の駆動停止が行われた状態で、上記の各種の診断は開始される。本実施形態においては、燃料電池モジュール10を診断ツール200によって制御する。そのため、診断ツール200が制御装置に相当する。
【0056】
上記の各種の診断は、供給配管63の内圧が正常に低下したか否かを診断する供給配管63の内圧診断を含む。供給配管63の内圧診断は、例えば、主止弁13が閉弁された状態で行われる場合と、主止弁13が開弁され且つ手動弁12が閉弁された状態で行われる場合と、がある。主止弁13が閉弁された状態で供給配管63の内圧診断が行われる場合、供給配管63のうち、主止弁13が設けられた部分とインジェクタ62に接続された端部との間の内圧診断が行われる。なお、この場合の内圧診断に際しては、主止弁13は閉弁状態で維持される。
【0057】
主止弁13が開弁され且つ手動弁12が閉弁された状態で供給配管63の内圧診断が行われる場合、供給配管63のうち、手動弁12が設けられた部分とインジェクタ62に接続された端部との間の内圧診断が行われる。なお、この場合の内圧診断に際しては、作業者によって手動弁12が閉弁されるとともに、診断ツール200による制御部80の制御によって主止弁13が開弁される。
【0058】
<供給配管の内圧診断の一例>
作業者による診断ツール200の操作に伴って制御部80が診断モードに設定された状態で、診断ツール200によって供給配管63の内圧診断が行われる。供給配管63の内圧診断は、供給配管63の内圧低下要求があった場合に行われる。本実施形態において、供給配管63の内圧低下要求があった場合は、作業者による診断ツール200の操作によって、診断ツール200から制御部80に供給配管63の内圧低下要求がなされた場合である。
【0059】
診断ツール200によって行われる供給配管63の内圧診断の処理の一例を図2及び図3にしたがって説明する。なお、図2及び図3に示す処理は、作業者による診断ツール200の操作によって開始される。また、図2に示す処理は、診断ツール200によって制御部80が制御されることで行われる。そのため、図2に示す処理は、診断ツール200が行うものといえる。
【0060】
図2及び図3に示すように、供給配管63の内圧診断が開始されると、診断に用いる各種部材に故障が生じていないか否かを判断する(ステップS110)。診断に用いる各種部材に故障が生じていないと判断すると(ステップS110:YES)、診断ツール200は、ラジエータファン73の駆動を開始させる(ステップS120)。その後、診断ツール200は、蓄電装置96の充電電圧Vが所定電圧Vp以上であるか否かを判断する(ステップS130)。蓄電装置96の充電電圧Vが所定電圧Vp以上であると判断すると(ステップS130:YES)、第2内圧P2が第1所定内圧Pt1以上である、またはインジェクタ62の噴射回数NTが所定噴射回数NTp以上であるか否かを判断する(ステップS140)。
【0061】
第2内圧P2が第1所定内圧Pt1未満であると判断するか、インジェクタ62の噴射回数NTが所定噴射回数NTp未満であると判断すると(ステップS140:NO)、インジェクタ62を噴射させた後に噴射を停止させる(ステップS150)。さらに、診断ツール200は、第2内圧P2が所定昇圧量Pt以上昇圧したか否かを判断する(ステップS160)。第2内圧P2が所定昇圧量Pt以上昇圧したと判断すると(ステップS160:YES)、診断ツール200は、インジェクタ62からの噴射が行われてから第1所定時間T1以上経過したか否かを判断する(ステップS170)。インジェクタ62からの噴射が行われてから第1所定時間T1以上経過していないと判断する間は(ステップS170:NO)、診断ツール200はステップS170の処理を繰り返し行う。インジェクタ62からの噴射が行われてから第1所定時間T1以上経過したと判断すると(ステップS170:YES)、診断ツール200は、ステップS140の処理を再び行う。
【0062】
第2内圧P2が第1所定内圧Pt1以上であると判断するか、噴射回数NTが所定噴射回数NTp以上であると判断すると(ステップS140:YES)、診断ツール200は、水素濃度Hが所定濃度Hp未満であるか否かを判断する(ステップS180)。水素濃度Hが所定濃度Hp以上であると判断すると(ステップS180:NO)、診断ツール200は、第2所定時間T2以上が経過したか否かを判断する(ステップS190)。第2所定時間T2以上が経過していないと判断すると(ステップS190:NO)、診断ツール200は、ステップS180の処理を再び行う。
【0063】
水素濃度Hが所定濃度Hp未満であると判断すると(ステップS180:YES)、診断ツール200は、前回の排気排水弁67の開弁から第3所定時間T3以上経過したか否かを判断する(ステップS200)。前回の排気排水弁67の開弁から第3所定時間T3以上経過していないと判断する間は(ステップS200:NO)、診断ツール200は、ステップS200の処理を繰り返し行う。
【0064】
前回の排気排水弁67の開弁から第3所定時間T3以上経過したと判断すると(ステップS200:YES)、診断ツール200は、排気排水弁67を開弁させる(ステップS210)。その後、診断ツール200は、第2内圧P2が第2所定内圧Pt2未満か否かを判断する(ステップS220)。第2内圧P2が第2所定内圧Pt2以上であると判断すると(ステップS220:NO)、診断ツール200は、第4所定時間T4以上が経過したか否かを判断する(ステップS230)。第4所定時間T4以上が経過していないと判断すると(ステップS230:NO)、診断ツール200は、ステップS220の処理を再び行う。
【0065】
第2内圧P2が第2所定内圧Pt2未満であると判断する(ステップS220:YES)、もしくは第4所定時間T4以上が経過したと判断すると(ステップS230:YES)、診断ツール200は、排気排水弁67を閉弁させる(ステップS240)。その後、診断ツール200は、第1内圧P1が第3所定内圧Pt3未満であるか否かを判断する(ステップS250)。第1内圧P1が第3所定内圧Pt3未満であると判断すると(ステップS250:YES)、診断ツール200は、正常判定を行う(ステップS260)。
【0066】
第1内圧P1が第3所定内圧Pt3以上であると判断すると(ステップS250:NO)、診断ツール200は、処理回数Nに1を加算する(ステップS270)。その後、診断ツール200は、処理回数Nが所定回数Np以上であるか否かを判断する(ステップS280)。処理回数Nが所定回数Np未満であると判断すると(ステップS280:NO)、診断ツール200は、ステップS130の処理を再び行う。処理回数Nが所定回数Np以上であると判断すると(ステップS280:YES)、診断ツール200は、異常判定を行う(ステップS290)。
【0067】
診断に用いる各種部材に故障が生じていると判断すると(ステップS110:NO)、診断ツール200は、ステップS290の処理を行う。蓄電装置96の充電電圧Vが所定電圧Vp未満であると判断すると(ステップS130:NO)、診断ツール200は、ステップS250の処理を行う。第2内圧P2が所定昇圧量Pt以上昇圧していないと判断すると(ステップS160:NO)、診断ツール200は、ステップS250の処理を行う。第2所定時間T2以上が経過したと判断すると(ステップS190:YES)、診断ツール200は、ステップS250の処理を行う。
【0068】
ステップS260の処理またはステップS290の処理を行った後、診断ツール200は、表示部200aに判定結果を表示した後(ステップS300)、本処理を終了する。
<供給配管の内圧診断の詳細>
ステップS110において、故障の有無が判断される各種部材は、例えば、内圧診断に用いられる各種センサ、リレー、コンタクタなどである。これら各種部材に故障が生じている場合、内圧診断を正常に行えないおそれがある。そのため、診断ツール200は、ステップS110にてNOと判断すると、ステップS120~ステップS280の処理を行わずに、ステップS290にて異常判定を行う。これにより、診断ツール200は、各種部材に故障が生じている場合に内圧診断が行われることを抑制している。診断ツール200は、ステップS110にてYESと判断すると、ステップS120以降の処理を進める。これにより、診断ツール200は、各種部材に故障が生じていない場合に内圧診断を行うことができる。
【0069】
ステップS120にて、診断ツール200は、ラジエータファン73の駆動を開始させる。これにより、ラジエータファン73から発生する送風によって、筐体11の内部の空気が攪拌される。
【0070】
ステップS130にて判断に用いられる所定電圧Vpは、例えば、内圧診断の開始から終了までに必要な蓄電装置96の充電電圧Vの電圧量に設定されている。所定電圧Vpは、予め設定された設定値である。そのため、診断ツール200は、ステップS130にてNOと判断すると、ステップS140~ステップS240の処理を行わずに、ステップS250にて第1内圧P1が第3所定内圧Pt3未満であるか否かを判断する。これにより、ステップS150におけるインジェクタ62からの噴射、ステップS210における排気排水弁67の開弁、及びステップS240における排気排水弁67の閉弁が行われない。蓄電装置96の充電電圧Vの電圧量が比較的低いため、排気排水弁67の開閉とインジェクタ62からの噴射とを正常に行えないおそれのある場合に、これら排気排水弁67の開閉とインジェクタ62からの噴射とを内圧診断から省略できる。一方、診断ツール200は、ステップS130にてYESと判断すると、ステップS140に処理を進める。充電電圧Vが排気排水弁67の開閉とインジェクタ62からの噴射とを正常に行える電圧量である場合、ステップS150のインジェクタ62の噴射、ステップS210の排気排水弁67の開弁、及びステップS240の排気排水弁67の閉弁が可能となる。
【0071】
ステップS140にて判断に用いられる第1所定内圧Pt1は、例えば、循環流路64を構成する部材の圧力強度に基づいて設定された設定値である。ステップS140にて第2内圧P2が第1所定内圧Pt1以上であると判断されるとき、循環流路64の内圧は、循環流路64を構成する部材の性能低下が生じない圧力であって、かつ大気圧よりも上昇した圧力となっている。
【0072】
ステップS140にて判断に用いられるインジェクタ62の噴射回数NTは、内圧診断が開始されてからステップS150の処理を行うごとに1だけ加算される。すなわち、噴射回数NTは、内圧診断が開始されてからステップS150の処理が行われた回数に相当する。なお、噴射回数NTは、内圧診断が終了されると0(ゼロ)にリセットされる。所定噴射回数NTpは、例えば、インジェクタ62の噴射回数NTが所定噴射回数NTp以上であるときに、循環流路64の内圧が十分に上昇したと推定される値である。所定噴射回数NTpは、予め設定された設定値である。診断ツール200は、ステップS140にてYESと判断すると、循環流路64の内圧が十分に上昇しているとしてステップS180に処理を進める。一方、ステップS140にてNOと判断すると、診断ツール200は、循環流路64の内圧が十分に上昇していないとしてステップS150に処理を進める。
【0073】
ステップS150において、インジェクタ62からは予め設定された一定量の水素ガス量が予め設定された一定時間だけ噴射された後、インジェクタ62の噴射が停止される。ステップS150におけるインジェクタ62からの噴射は、ステップS160およびステップS170の処理の後、ステップS140にて診断ツール200がYESと判断するまで繰り返し行われる。そのため、ステップS140にて、第2内圧P2が第1所定内圧Pt1以上であると判断されるか、インジェクタ62の噴射回数NTが所定噴射回数NTp以上であると判断されるまで、ステップS150にてインジェクタ62からの噴射が行われる。インジェクタ62からの水素ガスの噴射が行われる度に、第1内圧P1が低下するとともに第2内圧P2が上昇する。
【0074】
ステップS160にて行われる第2内圧P2が所定昇圧量Pt以上昇圧したか否かの判断は、直前に行われたステップS150の処理前の第2内圧P2と処理後の第2内圧P2との差圧が所定昇圧量Pt以上であるか否かを判断することで行われる。ステップS160にて用いられる所定昇圧量Ptは、予め設定された設定値である。例えば、第1内圧P1が比較的高圧である状況下でステップS150にてインジェクタ62の噴射が行われると、第2内圧P2は所定昇圧量Pt以上昇圧する。その一方で、第1内圧P1が比較的低圧である状況下でステップS150にてインジェクタ62の噴射が行われると、第1内圧P1が比較的高圧である場合よりもインジェクタ62から噴射される水素ガスの量が減る。これにより、第1内圧P1の値によっては、第2内圧P2の昇圧量が所定昇圧量Pt未満になることがある。そのため、ステップS160にて行われる判断は、インジェクタ62の噴射による第2内圧P2の昇圧量に基づいて、供給配管63の内圧を低下させる処理が必要か否かを判断するものである。
【0075】
診断ツール200は、ステップS160にてNOと判断すると、ステップS170~ステップS240の処理を行わずに、ステップS250に処理を移行させる。これにより、ステップS150における2回目以降のインジェクタ62からの噴射、ステップS210における排気排水弁67の開弁、及びステップS240における排気排水弁67の閉弁が行われない。したがって、供給配管63の内圧が低いために、供給配管63の内圧を低下させる処理が不要である場合には、排気排水弁67の開閉と2回目以降のインジェクタ62からの噴射とを内圧診断から省略できる。
【0076】
ステップS170におけるインジェクタ62からの噴射が行われてから第1所定時間T1以上経過したか否かの判断は、直近に行われたステップS150における処理の実行から第1所定時間T1以上経過したか否かを判断することで行われる。ステップS170にて判断に用いられる第1所定時間T1は、予め設定された設定値である。診断ツール200は、ステップS170にてYESと判断したら、ステップS140に処理を移行させる。これにより、インジェクタ62の噴射間隔が第1所定時間T1以上に維持される。
【0077】
ステップS180にて判断に用いられる所定濃度Hpは、例えば、水素濃度Hが所定濃度Hp未満であるときに、筐体11の内部の水素ガスの濃度が十分に低下していると判断できる値に設定されている。ステップS190における第2所定時間T2以上が経過したか否かの判断は、例えば、今回の内圧診断が開始されて初めてステップS190の判断が行われてから第2所定時間T2以上経過したか否かを判断することで行われる。ステップS190にて判断に用いられる第2所定時間T2は、例えば、ラジエータファン73を駆動させた状態で第2所定時間T2以上が経過したときに、筐体11の内部の水素ガスが十分に攪拌されると想定される時間に設定されている。診断ツール200がステップS190にてNOと判断する間は、ステップS180での判断が繰り返し行われる。これにより、ラジエータファン73からの送風によって筐体11の内部の水素ガスを攪拌させつつ、水素濃度Hが所定濃度Hp未満になるまで処理をステップS200に進めずに待機させることができる。ステップS180にて水素濃度Hが所定濃度Hp未満であると判断されたら、筐体11の内部の水素濃度Hが十分に低下したとして、ステップS200に処理を進めることができる。
【0078】
診断ツール200は、ステップS190にてYESと判断すると、ステップS200~ステップS240の処理を行わずに、ステップS250に処理を移行させる。これにより、ステップS210における排気排水弁67の開弁、及びステップS240における排気排水弁67の閉弁が行われない。したがって、第2所定時間T2以上が経過しても筐体11の内部の水素濃度Hが十分に低下されていないと判断される場合には、排気排水弁67の開閉を内圧診断から省略できる。これにより、筐体11の内部の水素濃度Hが比較的高い状況下で、排気排水弁67の開弁により筐体11の内部の水素濃度Hがさらに高まることを抑制できる。
【0079】
ステップS200にて判断に用いられる第3所定時間T3は、例えば、前回の排気排水弁67の開弁から第3所定時間T3以上経過したときに、筐体11の内部の水素ガスの濃度が十分に低下していると判断できる値に設定されている。診断ツール200は、ステップS200にてNOと判断する間は、ステップS200の判断を繰り返し行う。これにより、前回の排気排水弁67の開弁から第3所定時間T3以上経過することで、筐体11の内部の水素ガスの濃度が十分に低下したと想定される状況下で、ステップS210に処理を進めることができる。
【0080】
ステップS210にて排気排水弁67が開弁されることにより、循環流路64内の水素ガスが希釈器69を介して排出口39から筐体11の内部に排出される。これにより、第2内圧P2が低下する。なお、循環ポンプ66は駆動されていないものの、循環流路64の内圧と筐体11の内圧との差圧が十分にあるため、排気排水弁67の開弁によって循環流路64内の水素ガスを筐体11の内部に排出できる。なお、ステップS210の処理の実行直前における循環流路64の内圧は、例えばおおよそ200KPaである。筐体11の内圧は、例えばおおよそ100KPaである。
【0081】
ステップS220にて判断に用いられる第2所定内圧Pt2は、例えば、第2内圧P2が第2所定内圧Pt2未満であるときに、循環流路64の内部の水素ガスの量が十分に低下したと判断できる値に設定されている。なお、第2所定内圧Pt2は、例えば110KPaである。ステップS230における第4所定時間T4以上が経過したか否かの判断は、直近に行われたステップS210における処理の実行から第4所定時間T4以上経過したか否かを判断することで行われる。ステップS230にて判断に用いられる第4所定時間T4は、例えば、排気排水弁67が開弁されてから第4所定時間T4が経過したときに、循環流路64の内部の水素ガスの量が十分に低下したと判断できる値に設定されている。診断ツール200は、ステップS220にてNOと判断し、かつステップS230にてNOと判断する間は、ステップS220及びステップS230の判断を繰り返し行う。これにより、第2内圧P2が第2所定内圧Pt2未満になった、もしくは排気排水弁67が開弁されてから第4所定時間T4が経過したことで、循環流路64の内部の水素ガスの量が十分に低下したと想定される状況下で、ステップS240に処理を進められる。したがって、循環流路64の内部の水素ガスの量が十分に低下したと想定される状況下で、ステップS240にて、診断ツール200は排気排水弁67を閉弁させることができる。
【0082】
ステップS250にて判断に用いられる第3所定内圧Pt3は、例えば、第1内圧P1が第3所定内圧Pt3未満であるときに、供給配管63の内圧が十分に低下したと判断できる値に設定されている。なお、第3所定内圧Pt3は、例えば110KPaである。第3所定内圧Pt3は、第2所定内圧Pt2と同じ値であってもよいし、第2所定内圧Pt2とは異なる値であってもよい。診断ツール200がステップS250にてYESと判断すると、供給配管63の内圧が十分に低下したと想定される状況下で、ステップS260に処理を進めることができる。ステップS260にて正常判定を行うことによって、診断ツール200は、供給配管63の内圧の低下が完了したと判定する。正常判定がされた旨の判定結果がステップS300にて表示部200aに表示される。作業者は、この表示を確認することで、供給配管63を燃料電池モジュール10から取り外し可能であると認識できる。供給配管63の内圧が十分に低下した状態で、作業者は供給配管63を燃料電池モジュール10から取り外すことができる。さらに、作業者は、制御部80に対する診断ツール200の接続を解除させる。
【0083】
診断ツール200がステップS250にてNOと判断すると、ステップS270にて処理回数Nに1が加算される。これにより、ステップS270の処理が行われる度に処理回数Nが1ずつ加算される。なお、処理回数Nは、内圧診断が終了されると0(ゼロ)にリセットされる。ステップS280にて判断に用いられる所定回数Npは、例えば、処理回数Nが所定回数Np以上であるときに、供給配管63の内圧が正常に低下していないと判断できる値に設定されている。ステップS280にて診断ツール200がNOと判断すると、ステップS130に処理が移行される。これにより、ステップS250にてYESと判断されるか、ステップS280にてYESと判断されるまでの間、ステップS130~ステップS240の処理が繰り返し行われる。仮に、ステップS130~ステップS240の処理が所定回数Npだけ繰り返し行われることで、インジェクタ62からの噴射が所定回数Np行われるとともに排気排水弁67の開閉が所定回数Np行われると、供給配管63の内圧は十分に低下すると想定される。そのため、診断ツール200がステップS250にてNOと判断し、且つステップS280にてYESと判断する場合、供給配管63の内圧が正常に低下していないと想定される。なお、供給配管63の内圧が正常に低下しない原因としては、例えば、手動弁12及び主止弁13の両方が開弁された状態で内圧診断が行われたことにより、内圧診断の実行中に水素タンク61から供給配管63への水素ガスの供給が継続された場合が挙げられる。
【0084】
診断ツール200がステップS280にてYESと判断すると、ステップS290に処理を進めることができる。ステップS290にて異常判定が行われるとともに、異常判定がされた旨の判定結果がステップS300にて表示部200aに表示される。作業者は、この表示を確認することで、供給配管63の内圧が十分に低下していないおそれがあるため、供給配管63を燃料電池モジュール10から取り外しできないと認識できる。表示部200aに異常判定がされた旨の判定結果が表示されたことをもって、作業者は、燃料電池モジュール10に生じている異常を解消するための作業を行ってもよい。この作業としては、例えば、手動弁12及び主止弁13のいずれか一方を閉弁させることが挙げられる。こうした作業を行ったうえで、作業者によって診断ツール200が操作されることにより、内圧診断が再び行われてもよい。
【0085】
<内圧低下処理>
上記の内圧診断は、供給配管63の内圧を低下させる内圧低下処理を含んでいる。すなわち、制御装置としての診断ツール200は、内圧低下処理を行う。上述の通り、内圧診断は供給配管63の内圧低下要求があった場合に行われる。そのため、内圧低下処理は、供給配管63の内圧低下要求があった場合に行う処理であるといえる。制御装置としての診断ツール200は、制御部80に接続された状態で制御部80に供給配管63の内圧低下要求を指令することで内圧低下処理を開始する。
【0086】
内圧低下処理において、制御装置としての診断ツール200は、ファンとしてのラジエータファン73を駆動させる。すなわち、内圧低下処理は、制御装置としての診断ツール200がファンとしてのラジエータファン73を駆動させるステップを含む。このステップは、ステップS120に相当する。
【0087】
内圧低下処理において、制御装置としての診断ツール200は、インジェクタ62から水素ガスを噴射させた後にインジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させる。すなわち、内圧低下処理は、制御装置としての診断ツール200がインジェクタ62から水素ガスを噴射させた後にインジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させるステップを含む。このステップは、ステップS150に相当する。
【0088】
内圧低下処理において、制御装置としての診断ツール200は、インジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させた状態で排気排水弁67を開弁させることによって循環流路64から水素ガスを排気させた後に排気排水弁67を閉弁させる。すなわち、内圧低下処理は、制御装置としての診断ツール200がインジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させた状態で排気排水弁67を開弁させることによって循環流路64から水素ガスを排気させた後に排気排水弁67を閉弁させるステップを含む。このステップは、ステップS210及びステップS240に相当する。
【0089】
<内圧判定処理>
上記の内圧診断は内圧判定処理を含んでいる。すなわち、制御装置としての診断ツール200は、内圧判定処理を行う。
【0090】
内圧判定処理において、制御装置としての診断ツール200は、内圧低下処理の後に内圧センサとしての第1内圧センサ41から検出された供給配管63の内圧としての第1内圧P1が所定内圧としての第3所定内圧Pt3以上であると、内圧低下処理を再び行う。すなわち、内圧判定処理は、内圧低下処理の後に内圧センサとしての第1内圧センサ41から検出された供給配管63の内圧としての第1内圧P1が所定内圧としての第3所定内圧Pt3以上であると、診断ツール200が内圧低下処理を再び行うステップを含む。このステップは、ステップS250、ステップS270、及びステップS280に相当する。
【0091】
内圧判定処理において、診断ツール200は、内圧低下処理の後に第1内圧センサ41から検出された供給配管63の内圧としての第1内圧P1が所定内圧としての第3所定内圧Pt3未満であると、供給配管63の内圧の低下が完了したと判定する。すなわち、内圧判定処理は、内圧低下処理の後に第1内圧センサ41から検出された供給配管63の第1内圧P1が所定内圧としての第3所定内圧Pt3未満であると、診断ツール200が供給配管63の内圧の低下が完了したと判定するステップを含む。このステップは、ステップS250、及びステップS260に相当する。
【0092】
制御装置としての診断ツール200は、内圧判定処理において、供給配管63の内圧の低下が完了したと判定されずに内圧低下処理が行われた回数としての処理回数Nが所定回数Np以上であると、異常と判定する。すなわち、内圧判定処理は、供給配管63の内圧が低下したと判定されずに内圧低下処理が行われた回数としての処理回数Nが所定回数Np以上であると、制御装置としての診断ツール200が異常と判定するステップを含む。このステップは、ステップS280、及びステップS290に相当する。
【0093】
[実施形態の作用及び効果]
上記実施形態によれば以下の作用及び効果を得ることができる。
(1)制御装置としての診断ツール200は、供給配管63の内圧を低下させる内圧低下処理と、内圧判定処理と、を行う。内圧低下処理において、診断ツール200は、インジェクタ62から水素ガスを噴射させた後にインジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させる。内圧低下処理において、診断ツール200は、インジェクタ62からの水素ガスの噴射を停止させた状態で排気排水弁67を開弁させることによって循環流路64から水素ガスを排気させた後に排気排水弁67を閉弁させる。内圧判定処理において、診断ツール200は、内圧低下処理の後に内圧センサとしての第1内圧センサ41から検出された供給配管63の内圧としての第1内圧P1が所定内圧としての第3所定内圧Pt3以上であると、内圧低下処理を再び行う。内圧判定処理において、診断ツール200は、内圧低下処理の後に第1内圧センサ41から検出された供給配管63の内圧としての第1内圧P1が所定内圧としての第3所定内圧Pt3未満であると、供給配管63の内圧の低下が完了したと判定する。そのため、内圧低下処理において、供給配管63の内部の水素ガスをインジェクタ62によって循環流路64に供給することで、供給配管63の内圧を低下させることができる。内圧低下処理において、排気排水弁67を開弁させることで、循環流路64の内部の水素ガスを循環流路64から排気させることができる。内圧判定処理において、内圧センサとしての第1内圧センサ41から検出された供給配管63の内圧としての第1内圧P1が所定内圧としての第3所定内圧Pt3未満になるまで内圧低下処理が繰り返し行われる。これにより、第1内圧センサ41から検出された供給配管63の第1内圧P1が第3所定内圧Pt3未満になるまで、インジェクタ62の噴射による供給配管63の内圧低下と、排気排水弁67の開弁による循環流路64からの水素ガスの排気と、を繰り返し行える。したがって、供給配管63の内圧を好適に低下させることができる。また、制御装置としての診断ツール200は、内圧低下処理において、ファンとしてのラジエータファン73を駆動させる。これにより、ラジエータファン73にて発生する送風によって、循環流路64から排気された水素ガスを攪拌させることができる。したがって、循環流路64から排気された水素ガスの濃度を低下させることができる。
【0094】
(2)ファンは、ラジエータ72に向けて送風することによってラジエータ72に空気を供給するラジエータファン73である。そのため、排気排水弁67を介して循環流路64から排気された水素ガスを攪拌させるために、ラジエータファン73とは別にファンを燃料電池モジュール10に設ける場合と比較して、燃料電池モジュール10に搭載される部品点数を低減できる。
【0095】
(3)制御装置としての診断ツール200は、内圧判定処理において、供給配管63の内圧の低下が完了したと判定されずに内圧低下処理が行われた回数としての処理回数Nが所定回数Np以上であると、異常と判定する。そのため、制御装置としての診断ツール200による異常との判定をうけて、作業者が燃料電池モジュール10に異常が生じていることを認識できる。
【0096】
(4)燃料電池モジュール10は、インジェクタ62からの水素ガスの噴射と、排気排水弁67の開閉と、を制御する制御部80を備える。制御装置は、制御部80に接続された状態で制御部80に供給配管63の内圧低下要求を指令することで内圧低下処理を開始する診断ツール200である。そのため、内圧低下処理及び内圧判定処理の実行を、診断ツール200を所持し且つ制御部80に接続可能な特定の作業者のみに制限できる。
【0097】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0098】
○ 第2内圧センサ42が内圧を検出する箇所は、第1循環流路64aのうち、インジェクタ62に接続される端部と第2循環流路64bが接続される部分との間の部分に限らない。例えば、第2内圧センサ42は、第1循環流路64aのうち、第2循環流路64bが接続される部分よりも下流側の部分の内圧を検出してもよい。例えば、第2内圧センサ42は、第2循環流路64bの内圧を検出してもよい。
【0099】
図2に示す処理からステップS110を省略してもよい。
図2に示す処理において、ステップS120をステップS130以降に変更してもよい。この場合のステップS120はステップS210が行われる前に実行されることが好ましい。
【0100】
○ 充電電圧Vの低下が懸念されない場合には、図2に示す処理からステップS130を省略してもよい。
図2に示す処理のステップS140において、第2内圧P2が第1所定内圧Pt1以上であるか否かと、インジェクタ62の噴射回数NTが所定噴射回数NTp以上であるか否かと、のいずれか一方のみを判断してもよい。
【0101】
図2に示す処理のステップS160は、図2に示す処理が開始されてから初回のインジェクタ62の噴射時に限って行われてもよい。
図2に示す処理からステップS160を省略してもよい。この場合、ステップS150の処理が行われると、ステップS170に処理が移行される。
【0102】
図2に示す処理からステップS170を省略してもよい。この場合、ステップS160にてYESと判断されると、ステップS140に処理が移行される。
図2に示す処理からステップS190を省略してもよい。この場合、例えば、ステップS180にてNOと判断されると、ステップS180の処理が再び実行されてもよい。さらに、図2に示す処理からステップS180を省略してもよい。この場合、例えば、ステップS140にてYESと判断されると、ステップS200に処理が移行される。
【0103】
図2に示す処理からステップS200を省略してもよい。
図3に示す処理からステップS220およびステップS230の少なくとも一方を省略してもよい。図3に示す処理からステップS220を省略する場合、例えばステップS210の処理が行われると、ステップS230に処理が移行されてもよい。図3に示す処理からステップS230を省略する場合、例えば、ステップS220にてNOと判断されると、ステップS220の処理が再び行われてもよい。図3に示す処理からステップS220およびステップS230の両方を省略する場合、ステップS210の処理が行われると、ステップS240に処理が移行される。
【0104】
図3に示す処理からステップS290を省略してもよい。この場合、例えば、ステップS280にてYESと判断されると、ステップS300を行わずに処理が終了されてもよい。
【0105】
図3に示す処理からステップS270及びステップS280を省略してもよい。この場合、例えば、ステップS250にてNOと判断されると、ステップS130またはステップS140に処理が移行されてもよい。
【0106】
図3に示す処理のステップS300において、表示部200aでの表示以外の手段によって判定結果を作業者に知らせてもよい。この場合、判定結果を作業者に知らせる手段としては、例えば、音声による通知、及びライトの点滅などが挙げられる。
【0107】
○ 内圧低下処理および内圧判定処理は、診断ツール200が制御部80に接続されない状態で行われる処理であってもよい。この変更例においては、例えば、制御部80に指令可能なウェブページがあり、作業者がタブレット端末からインターネットを経由して制御部80を制御する。制御部80がウェブページから供給配管63の内圧低下要求を受けた場合に、制御部80が内圧低下処理と内圧判定処理とを行ってもよい。この場合、制御部80が制御装置に相当する。なお、制御部80は通信端末等によってインターネットに接続されている。
【0108】
○ 供給配管63の接続先は水素タンク61に限らない。例えば、供給配管63の端部は、水素ガスを供給可能なインフラ設備に接続されていてもよい。この場合の供給配管63は、インフラ設備から供給された水素ガスをインジェクタ62に供給するものである。なお、この変更例においては、インフラ設備が水素ガス供給部に相当する。
【0109】
○ 燃料電池モジュール10は、乗用車、船舶、鉄道などに搭載されていてもよい。
○ 燃料電池モジュール10は、定置式の発電装置として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0110】
N…回数としての処理回数、Np…所定回数、10…燃料電池モジュール、21…燃料電池スタック、41…内圧センサとしての第1内圧センサ、61…水素ガス供給部としての水素タンク、62…インジェクタ、63…供給配管、64…循環流路、67…排気排水弁、72…ラジエータ、73…ファンとしてのラジエータファン、80…制御部、200…制御装置としての診断ツール。
図1
図2
図3