(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170097
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】車両用コンプレッサ制御方法
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20241129BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B60H1/32 624B
B60H1/32 623B
B60H1/32 623K
B60H1/32 624A
F25B1/00 341C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087065
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】縣 弘樹
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA21
3L211CA16
3L211DA23
3L211DA30
3L211EA50
3L211EA51
3L211EA75
3L211GA29
(57)【要約】
【課題】コンプレッサの不具合の発生を効率よく回避することが可能な車両用コンプレッサ制御方法を提供する。
【解決手段】当該制御方法は、ステップ142、144にてエアコンシステム100が低負荷運転か否か判定する。そして、コンデンサ110から膨張弁114に向かう高圧冷媒の圧力値を取得し、低負荷運転ではないときは、圧力値と第1高圧カット値P1とを比較し、圧力値が第1高圧カット値P1以上であれば第1高圧カット値P1未満になるまでコンプレッサ106を停止する。低負荷運転のときは、圧力値とより低い第2高圧カット値P2とを比較し、圧力値が第2高圧カット値P2以上であれば第2高圧カット値P2未満になるまでコンプレッサ106を停止することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用エアコンシステムのコンプレッサを制御する車両用コンプレッサ制御方法において、
前記車両用エアコンシステムが低負荷運転か否か判定し、
前記車両用エアコンシステムのコンデンサから膨張弁に向かう高圧冷媒の圧力値を取得し、
前記低負荷運転ではないときは、前記圧力値が所定の第1高圧カット値以上であれば該第1高圧カット値未満になるまで前記コンプレッサを停止し、
前記低負荷運転のときは、前記圧力値が前記第1高圧カット値よりも低い所定の第2高圧カット値以上であれば該第2高圧カット値未満になるまで前記コンプレッサを停止することを特徴とする車両用コンプレッサ制御方法。
【請求項2】
前記コンプレッサの動作はエンジンの動作に連動していて、
前記低負荷運転か否か判定する際には、
前記エンジンのエンジン回転数を取得し、
前記車両用エアコンシステムのエバポレータの温度を取得し、
前記エンジン回転数と前記エバポレータの温度から前記低負荷運転か否か判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用コンプレッサ制御方法。
【請求項3】
前記低負荷運転か否か判定する際には、
前記エンジン回転数が所定値未満かつ前記エバポレータの温度が所定値未満のときに前記低負荷運転と判定し、
前記エンジン回転数が所定値以上または前記エバポレータの温度が所定値以上のときに前記低負荷運転ではないと判定することを特徴とする請求項2に記載の車両用コンプレッサ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用コンプレッサ制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用エアコンシステムでは、コンプレッサから膨張弁に向かう高圧配管の冷媒の圧力を取得し、冷媒の圧力が想定以上に上昇したとき、当該システムの保護のためにコンプレッサの運転を強制的に停止する、いわゆる高圧カットと呼ばれる制御が行われている。例えば、特許文献1に記載の車両用空気調和装置では、段落0048および
図2に記載されているように、吐出圧力センサ42によって、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒の吐出冷媒圧力Pdを検出することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、エアコンシステム内は冷媒と共に潤滑オイルが循環する仕組みになっていて、コンプレッサの内部には潤滑オイルが貯まる貯油室が設けられている。潤滑オイルは、冷媒の圧力が高いほど、コンプレッサから持ち出される量が多くなる。一方で、潤滑オイルは、冷媒の流量が少ないほど、コンプレッサに戻り難くなる。
【0005】
例えば、山道などの悪路を走行する四輪駆動車などにおいて、泥や異物によるコンデンサファンの故障や目詰まり、さらには車両カバーの変形によってフロンドバンパグリルが塞がれるなどの事象が起こると、コンデンサでの正常な熱交換が妨げられ、冷媒の圧力が上昇することがある。このような場面において、車両がアイドリング状態になってエアコンシステムの低速運転が続けられると、エアコンシステムの冷媒が高圧かつ低流量の状態になり、コンプレッサ内から潤滑オイルが多く持ち出される一方、コンプレッサ内に潤滑オイルが戻り難くなり、コンプレッサ内で潤滑オイルが枯渇することがある。コンプレッサ内が貧潤滑の状態になると、摺動部が摩耗して異音やロックを招いたり、高温高圧状態のガスが貯油室から圧縮室に入り込んでエアコンホースを破損させたりするおそれがある。
【0006】
しかしながら、従来の車両用エアコンシステムでは、高圧配管の圧力値を基準にしてコンプレッサを制御していて、その制御に冷媒の流量などは反映されていない。そのため、エアコンシステムの負荷が低いときに低速運転が続いて冷媒が低流量の状態になった場合など、状況に合わせた制御が行えていなかった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、コンプレッサの不具合の発生を効率よく回避することが可能な車両用コンプレッサ制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用コンプレッサ制御方法の代表的な構成は、車両用エアコンシステムのコンプレッサを制御する車両用コンプレッサ制御方法において、車両用エアコンシステムが低負荷運転か否か判定し、車両用エアコンシステムのコンデンサから膨張弁に向かう高圧冷媒の圧力値を取得し、低負荷運転ではないときは、圧力値が所定の第1高圧カット値以上であれば第1高圧カット値未満になるまでコンプレッサを停止し、低負荷運転のときは、圧力値が第1高圧カット値よりも低い所定の第2高圧カット値以上であれば第2高圧カット値未満になるまでコンプレッサを停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンプレッサの不具合の発生を効率よく回避することが可能な車両用コンプレッサ制御方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用エアコンシステムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図1のエアコンシステムが実施する車両用コンプレッサ制御方法の処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用コンプレッサ制御方法造は、車両用エアコンシステムのコンプレッサを制御する車両用コンプレッサ制御方法において、車両用エアコンシステムが低負荷運転か否か判定し、車両用エアコンシステムのコンデンサから膨張弁に向かう高圧冷媒の圧力値を取得し、低負荷運転ではないときは、圧力値が所定の第1高圧カット値以上であれば第1高圧カット値未満になるまでコンプレッサを停止し、低負荷運転のときは、圧力値が第1高圧カット値よりも低い所定の第2高圧カット値以上であれば第2高圧カット値未満になるまでコンプレッサを停止することを特徴とする。
【0012】
上記構成では、低負荷運転ではないときは第1高圧カット値を基準にしてコンプレッサを制御し、低負荷運転のときにはより低い第2高圧カット値を基準にしてコンプレッサを制御することで、状況に合わせたコンプレッサの制御を行っている。この構成によれば、例えば冷媒が低流量のときはより低い第2高圧カット値を基準にコンプレッサを停止させることで、コンプレッサ内のオイルが枯渇して潤滑不良となるような事態を防ぎ、コンプレッサの不具合の発生を効率よく防止することが可能になる。
【0013】
上記のコンプレッサの動作はエンジンの動作に連動していて、低負荷運転か否か判定する際には、エンジンのエンジン回転数を取得し、車両用エアコンシステムのエバポレータの温度を取得し、エンジン回転数とエバポレータの温度から低負荷運転か否か判定する。
【0014】
上記構成によれば、エンジン回転数からコンプレッサの動作量を推定し、エバポレータの温度から膨張弁の開度を推定することで、当該エアコンシステムの冷媒の流量を推定し、コンプレッサの制御に反映させることが可能になる。
【0015】
上記低負荷運転か否か判定する際には、エンジン回転数が所定値未満かつエバポレータの温度が所定値未満のときに低負荷運転と判定し、エンジン回転数が所定値以上またはエバポレータの温度が所定値以上のときに低負荷運転ではないと判定する。
【0016】
上記構成では、エンジン回転数が少なくエバポレータの温度も低いときは、コンプレッサの動作量が少なく冷媒も低流量の状態になりやすいため、低負荷運転であるとしてより低い第2高圧カット値を基準にしてコンプレッサを制御する。これによって、走行中に確認しづらい異常な事態が発生していたとしても、コンプレッサの不具合の発生を回避して車両用エアコンシステムを保護することが可能になる。
【実施例0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る車両用エアコンシステム(以下、エアコンシステム100)の概略的な構成を示す図である。当該エアコンシステム100は、車両の室内側のHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニット102と、エンジンルーム側の各要素とを含んで構成されている。
【0019】
HVACユニット102は、暖房、冷房、換気、および空調などを行う機器であって、例えば室内のインストルメントパネル内に設けられている。
【0020】
コンプレッサ106は、低温低圧の冷媒を高温高圧の冷媒へと圧縮する機器である。コンプレッサ106は、ベルト108を通じてエンジン104から動力を得ることができ、それによって例えば内部でロータが回転する等して冷媒を圧縮する。コンプレッサ106の内部には貯油室なども設けられていて、エアコンシステム100内を冷媒と共に循環する潤滑オイルを貯めることが可能になっている。
【0021】
コンデンサ110は、コンプレッサ106から送られた冷媒を冷却する機器である。コンデンサ110は、冷媒の放熱処理を行うことで、高温高圧の冷媒を低温高圧の状態にする。コンデンサ110は、冷媒が通る蛇行した配管と、放熱用のフィンを有し、併設されたファン112からの送風によって冷媒を冷却する。
【0022】
膨張弁114は、コンデンサ110から送られた低温高圧の冷媒を膨張させて低温低圧にする機器である。膨張弁114を通った冷媒は、高圧状態から一気に低圧状態になることで熱エネルギーが奪われ、急激に温度が低下する。
【0023】
エバポレータ116は、低温低圧の冷媒を利用して空気を冷却する機器であり、併設された不図示のファンを利用して室内に温度調節した空気を供給する。
【0024】
制御部118は、CPUなどを有する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)であり、コンプレッサ106を含む当該エアコンシステム100の全体の制御を行う。
【0025】
図2は、
図1のエアコンシステム100が実施する車両用コンプレッサ制御方法の処理の流れを示したフローチャートである。
図2の各処理は、主に
図1の制御部118によって行われる。
【0026】
当該制御方法は、状況に合わせてコンプレッサ106(
図1参照)の強制停止を行うことで、コンプレッサ106の内部にて潤滑オイルが枯渇して貧潤滑となることを回避し、異音やロータのロックなどの発生を防いでいる。
【0027】
まず、ステップ140において、エアコンシステム100(
図1参照)がОNかОFFか、すなわちコンプレッサ106への作動要求の有無を判定する。エアコンシステム100がОFFの場合、コンプレッサ106への作動要求は無いとして、判定はNОとなり、処理は終了する。エアコンシステム100がОNの場合、コンプレッサ106に作動要求があるとして、判定はYESとなり、ステップ142に進む。
【0028】
ステップ142、144、146にかけて、エアコンシステム100が低負荷運転か否か判定する。まず、ステップ142では、コンプレッサ106(
図1)の動作量すなわちロータの回転数を考慮した制御を行うために、制御部118(
図1参照)はエンジン回転数が所定の閾値N以下か否か判定する。コンプレッサ106の動作は、ベルト108を通じてエンジン104の動作に連動しているからである。エンジン104のエンジン回転数は、エンジン104に併設されたクランク角センサ160によって取得することができる。
【0029】
エンジン回転数が閾値Nを超える場合、それに連動してコンプレッサ106(
図1参照)のロータの回転数も多くなるため、エアコンシステム100内は冷媒の流量が多い状態に保たれる。よって、冷媒と共にコンプレッサ106に戻るオイル量も多く、コンプレッサ106の内部が貧潤滑となるおそれは少ない。この場合、エアコンシステム100は低負荷運転ではないと判断し、ステップ142の判定はNOとなり、ステップ148に移行する。
【0030】
ステップ148では、制御部118(
図1参照)は圧力値が第1高圧カット値P1以上か否か判定する。このステップ148の処理は、エアコンシステム100が低負荷運転ではない場合における高圧カット制御である。圧力値は、コンデンサ110から膨張弁114に向かう高圧配管に併設された圧力センサ162によって、高圧冷媒から取得する。
【0031】
圧力値が第1高圧カット値P1以上である場合、ステップ148の判定はYESとなり、ステップ150にてコンプレッサ106(
図1参照)をOFFにして高圧カット制御が行われる。圧力値が第1高圧カット値P1未満である場合、ステップ148の判定はNOとなり、ステップ152にてコンプレッサ106をONにしてエアコンシステム100を運転させる。
【0032】
ステップ150およびステップ152の後は、それぞれステップ140に戻り、一連の処理が繰り返される。これら処理によって、エアコンシステム100が低負荷運転ではないときは、圧力値が第1高圧カット値P1を超えると、圧力値が第1カット値P1未満になるまでコンプレッサ106を停止するという制御が実現される。
【0033】
ステップ142に戻る。エンジン回転数が閾値N以下の場合、例えば車両がアイドリング状態のときなどには、それに連動してコンプレッサ106(
図1参照)のロータの回転数は少なくなり、エアコンシステム100内の冷媒の流量は低くなる。よって、冷媒と共にコンプレッサ106に戻るオイル量も少なくなるため、この状態が続くとコンプレッサ106の内部が貧潤滑になるおそれも生じる。この場合、エアコンシステム100は低負荷運転の可能性があると判断し、ステップ142の判定はYESとなり、ステップ144に移行する。
【0034】
ステップ144では、制御部118(
図1参照)はエバポレータ116の温度が所定の閾値T以下か否か判定する。エバポレータ116の温度は、エバポレータ116の近傍の低圧配管に併設された温度センサ164によって取得することができる。エバポレータ116の温度は、エバポレータ116を通過する低圧冷媒の温度に応じていて、膨張弁114の開度に比例している。
【0035】
エバポレータ116(
図1参照)の温度が閾値Tを超える場合、膨出弁114の開度は大きい状態にあり、エアコンシステム100内の冷媒の流量は多い状態になる。よって、コンプレッサ106(
図1参照)の内部が貧潤滑となるおそれは少ない。この場合、エアコンシステム100は低負荷運転ではないと判断し、ステップ144の判定はNOとなり、ステップ148に移行して前述した処理を行う。
【0036】
ステップ144にてエバポレータ116(
図1参照)の温度が閾値T以下の場合、膨出弁114の開度は小さい状態にあり、エアコンシステム100内の冷媒の流量は少ない状態になるおそれがある。この状態が続くと、コンプレッサ106(
図1参照)の内部が貧潤滑になるおそれも生じる。よって、この場合は、エアコンシステム100は低負荷運転の可能性があると判断し、ステップ144の判定はYESとなり、ステップ146に移行する。
【0037】
ステップ146では、制御部118(
図1参照)は圧力値が第2高圧カット値P2以上か否か判定する。このステップ146の処理は、エアコンシステム100が低負荷運転の場合における高圧カット制御である。第2高圧カット値P2は、ステップ148における第1高圧カット値P1よりも低く設定されている(P2<P1)。前述したように、圧力値は、圧力センサ162によって高圧配管の高圧冷媒から取得する。
【0038】
圧力値が第2高圧カット値P2以上である場合、ステップ146の判定はYESとなり、ステップ154にてコンプレッサ106(
図1参照)をOFFにして高圧カット制御が行われる。圧力値が第2高圧カット値P2未満である場合、ステップ146の判定はNOとなり、ステップ156にてコンプレッサ106をONにしてエアコンシステム100を運転させる。
【0039】
ステップ154およびステップ156の後は、それぞれステップ140に戻り、一連の処理が繰り返される。これら処理によって、エアコンシステム100が低負荷運転のときは、より値の低い第2高圧カット値P2を基準にコンプレッサ106の制御を行い、圧力値が第2高圧カット値P2を超えると、圧力値が第2高圧カット値未満になるまでコンプレッサ106を停止するという制御が実現される。
【0040】
なお、上記説明した閾値N、閾値T、第1高圧カット値P1、および第2高圧カット値P2には、コンプレッサ106(
図1参照)が作動と停止を繰り返すハンチング現象を避けるために、前回の判定に沿って値を補正するヒステリシス方式を採用することが可能である。
【0041】
これらのように、当該制御方法では、主にステップ142、144、146の処理を通じて冷媒の流量が少ないときを検出し、そのようなときには低負荷運転ではないときの第1高圧カット値P1よりも低い第2高圧カット値P2を基準にしてコンプレッサ106(
図1参照)を制御することで、コンプレッサ106の不具合の発生を防いでいる。特に、エンジン回転数が閾値N未満(ステップ142のYES)、かつエバポレータ116の温度が閾値T未満(ステップ144のYES)のときには、低負荷運転と判定して制御を行っている。また、エンジン回転数が閾値N以上(ステップ142のNO)、またはエバポレータ116の温度が閾値T以上(ステップ144のNO)のときには、低負荷運転ではないと判定して制御を行っている。
【0042】
当該制御方法では、低負荷運転ではないときはステップ148にて第1高圧カット値P1を基準にしてコンプレッサ106(
図1参照)を制御し、低負荷運転のときにはステップ146にてより低い第2高圧カット値P2を基準にしてコンプレッサ106を制御することで、状況に合わせたコンプレッサ106の制御を行っている。この構成によれば、例えば冷媒が低流量のときはより低い第2高圧カット値P2を基準にコンプレッサ106を停止させることで、コンプレッサ106内のオイルが枯渇して潤滑不良となるような事態を防ぎ、これによってコンプレッサ106の不具合の発生を効率よく防止している。
【0043】
当該制御方法では、ステップ142にてエンジン回転数からコンプレッサ106(
図1参照)の動作量を推定し、ステップ144にてエバポレータ116の温度から膨張弁114の開度を推定することで、当該エアコンシステム100の状態を推定し、コンプレッサ106の制御に反映させることが可能になっている。
【0044】
特に、当該制御方法では、エンジン回転数が少なくエバポレータ116の温度も低いときは、コンプレッサ106の動作量が少なく冷媒も低流量の状態になりやすいため、低負荷運転であるとしてステップ146にてより低い第2高圧カット値P2を基準にしてコンプレッサ106を制御している。これによって、走行中に確認しづらい異常な事態が発生していたとしても、コンプレッサ106の潤滑不良による焼き付けなどの不具合の発生を回避し、エアコンシステム100を保護することが可能になっている。
【0045】
図3は、
図2に示した処理の変形例である。
図3は、エンジン回転数、エバポレータ温度、および高圧カット値の関係を表に示している。
図2では第1高圧カット値P1および第2高圧カット値P2を例示していたが、当該制御方法では、より細分化した判定を行うことが可能になっている。
【0046】
図3の左蘭に示すエンジン回転数Nnは、下に向かって数字が大きくなるほど回転数が多くなっている。上欄に示すエバポレータTnは、右に向かって数字が大きくなるほど温度が高くなっている。高圧カット値Pnnは、下方かつ右方ほど値が大きくなっている。
【0047】
制御部118(
図1参照)は、クランク角センサ160から取得したエンジン回転数Nn、および温度センサ164から取得したエバポレータ温度Tnに沿って、記録部からより細分化した高圧カット値Pnnを呼びだし、圧力センサ162から取得した圧力値がこの高圧カット値Pnn以上か否か判定することができる。
【0048】
制御部118は、圧力値が高圧カット値Pnn以上の場合は、圧力値が高圧カット値Pnn未満になるまでコンプレッサ106を停止する制御を行う。この制御方法によれば、コンプレッサ106をより細かい基準値に沿って制御することで、不要な強制停止を回避し、エアコンシステム100の円滑な運転を行って室内をより快適に保つことが可能になる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100…エアコンシステム、102…HVACユニット、104…エンジン、106…コンプレッサ、108…ベルト、110…コンデンサ、112…ファン、114…膨張弁、116…エバポレータ、118…制御部、160…クランク角センサ、162…圧力センサ、164…温度センサ