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  • 特開-制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170099
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087068
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】六浦 圭太
(72)【発明者】
【氏名】竹本 敬介
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730CC01
5H730CC12
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE72
5H730FD31
5H730ZZ01
5H730ZZ04
5H730ZZ07
(57)【要約】
【課題】制御系の信号が流れる電気回路と、比較的大きい電流が流れる電気回路とを共通の基板上に配置しつつ、制御部の信頼性の確保を図る。
【解決手段】40A未満の制御系の信号が流れる第1電気回路と、40A以上の電流が流れる第2電気回路とを、一の回路基板上に含み、第1電気回路のグランド電位を形成する第1グランド部と、第2電気回路のグランド電位を形成する第2グランド部とは、別々に設けられる、制御装置が開示される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40A(アンペア)未満の制御系の信号が流れる第1電気回路と、40A以上の電流が流れる第2電気回路とを、一の回路基板上に含み、
前記第1電気回路のグランド電位を形成する第1グランド部と、前記第2電気回路のグランド電位を形成する第2グランド部とは、別々に設けられる、制御装置。
【請求項2】
前記第2電気回路は、動作時に発熱する発熱素子を含み、
前記第1電気回路は、温度に応じた電気信号を発生するセンサ素子を含み、
前記発熱素子と前記センサ素子とは、前記第1グランド部及び前記第2グランド部の間の境界を挟んで隣り合う、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記発熱素子は、複数のパワー半導体素子を含み、
前記複数のパワー半導体素子を冷却する冷媒が流れる冷媒流路を更に含み、
前記複数のパワー半導体素子のうちの、前記冷媒流路における最も下流側のパワー半導体素子と前記センサ素子とが、前記境界を挟んで隣り合う、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1グランド部は、基板表面に対して垂直方向に視て、前記回路基板の一方側の辺の全長にわたって延在し、
前記第2グランド部は、基板表面に対して垂直方向に視て、前記一方側の辺に対して対向する前記回路基板の他方側の辺の全長にわたって延在し、
前記冷媒流路は、基板表面に対して垂直方向に視て、前記一方側の辺から前記他方側の辺に向かって前記冷媒が流れるように形成される、請求項3に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧領域、低電圧領域、及び一対のグランド領域を含む基板において、高圧側スイッチング素子と低圧側スイッチング素子とを、共通のグランド領域上に実装する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-89145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御系の信号が流れる電気回路(制御部)と、比較的大きい電流が流れる電気回路(大電流通電部)とが、共通の基板上に混在する場合がありうる。このような場合、上記のような従来技術と同様にグランド領域が制御部と大電流通電部の間で共用されると、グランド電位が不安定となりえ(すなわち、いわゆるグラウンドバウンスとも呼ばれるグランド電位の揺れが生じえ)、制御部の信頼性の低下を招くおそれがある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、制御系の信号が流れる電気回路と、比較的大きい電流が流れる電気回路とを共通の基板上に配置しつつ、制御部の信頼性の確保を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、40A未満の制御系の信号が流れる第1電気回路と、40A以上の電流が流れる第2電気回路とを、一の回路基板上に含み、
前記第1電気回路のグランド電位を形成する第1グランド部と、前記第2電気回路のグランド電位を形成する第2グランド部とは、別々に設けられる、制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、制御系の信号が流れる電気回路と、比較的大きい電流が流れる電気回路とを共通の基板上に配置しつつ、制御部の信頼性の確保を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車載電源システムの概略構成を示す図である。
図2】本実施例の制御装置の構成を示す図である。
図3】本実施例による制御装置を実現する回路基板の構成を示す概略図であり、基板表面に対して垂直方向に視た平面図である。
図4】比較例による制御装置を実現する回路基板の構成を示す概略図であり、基板表面に対して垂直方向に視た平面図である。
図5】本実施例に好適な冷媒流路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
図1は、車載電源システム1の概略構成を示す図である。
【0011】
車載電源システム1は、AC/DC変換回路11と、絶縁型のDC/DC変換回路12とを備える。AC/DC変換回路11は、商用電源のような交流電源15に電気的に接続可能とされる。なお、AC/DC変換回路11は、力率改善回路すなわちPFC(Power Factor Correction)回路を内蔵してよい。車載電源システム1は、交流電源15からの電力に基づいて、高圧バッテリ13及び低圧バッテリ14を充電できる。なお、車載電源システム1は、高圧バッテリ13等の電力に基づいて、外部に提供可能な電源を生成する機能を有してもよい。
【0012】
図2は、本実施例の制御装置8の構成を示す図である。図2では、制御装置8とともに低圧バッテリ14が併せて図示されている。
【0013】
本実施例の制御装置8は、DC/DC変換回路12の回路部20と、制御部80、チップサーミスタ82とを含む。なお、制御装置8は、ECU(Electronic Control Unit)のようなユニットの形態で実現されてよい。
【0014】
回路部20は、交流電源15からの電力に基づいて、入力電圧を直流電圧に変換しつつ降圧して低圧バッテリ14に出力(充電)する機能を有する。例えば、回路部20は、400Vから12Vへの降圧を実現し、低圧バッテリ14を充電してよい。
【0015】
回路部20は、図2に示すように、トランス21、パワー半導体素子22、コイル23、及びコンデンサ24を備える。また、トランス21の中点タップからのラインには、コイル23に直列にシャント抵抗25が設けられる。シャント抵抗25は、電流検出用に設けられる。
【0016】
制御部80は、回路部20と同じ低圧系の電圧で動作する。制御部80は、回路部20の動作を制御する。具体的には、制御部80は、シャント抵抗25からの電気信号や、チップサーミスタ82からのセンサ信号に基づいて、パワー半導体素子22を制御する。例えば、制御部80は、チップサーミスタ82からのセンサ情報に基づいて、センサ情報が示す温度が閾値を超えない範囲内で、パワー半導体素子22を制御する。パワー半導体素子22は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のような半導体スイッチング素子であってよい。図2に示す例では、パワー半導体素子22は、4つ設けられる。
【0017】
チップサーミスタ82は、温度に応じた電気信号を生成する。本実施例では、チップサーミスタ82は、パワー半導体素子22の近傍に配置される。チップサーミスタ82の好ましい配置例は後述する。
【0018】
なお、ここでは、図2を参照して一例による回路部20の構成を説明したが、回路部20の構成は、図2に示した構成に限られず、多様な変更が可能である。
【0019】
図3は、本実施例による制御装置8を実現する回路基板90の構成を示す概略図であり、基板表面に対して垂直方向に視た平面図である。図3には、回路基板90の長手方向に沿ったX方向が定義されるとともに、X1側とX2側が定義されている。図4は、比較例の説明図であり、図3と同様の平面図である。
【0020】
回路基板90は、単層又は多層基板であってよい。回路基板90は、図3に示すように、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向を長手方向とする矩形の形態である。ただし、回路基板90の形態は任意であり、他の形態であってもよい。回路基板90は、例えば4隅の取付穴96を通る締結具(図示せず)により筐体(図示せず)に固定されてもよい。この場合、筐体はグランド電位を有する部材である。
【0021】
本実施例では、回路基板90は、図3に模式的に示すように、制御系の信号が流れる制御系回路部91と、大電流通電用の回路部92(以下、「大電流回路部92」とも称する)とを含む。
【0022】
制御系回路部91は、40A未満、好ましくは10A以下の電流が流れる回路である。制御系回路部91は、図2を参照して上述した制御部80やチップサーミスタ82を含む。なお、制御系回路部91に係る詳細な配線パターンは、図3には図示されていないが、後述するグランド部101に係る配線パターンとともに、図3に示すハッチング領域R1内に形成されてよい。
【0023】
大電流回路部92は、40A以上、好ましくは、100Aを超える電流が流れる。大電流回路部92は、図2を参照して上述したパワー半導体素子22を含む。なお、大電流回路部92に係る詳細な配線パターンは、図3には図示されていないが、後述するグランド部102に係る配線パターンとともに、図3に示すハッチング領域R2内に形成されてよい。
【0024】
本実施例では、制御系回路部91のグランド電位を形成するグランド部101と、大電流回路部92のグランド電位を形成するグランド部102とは、別々に設けられる。すなわち、グランド部101及びグランド部102は、互いに連続しない態様で、回路基板90に設けられる。
【0025】
なお、グランド部101は、制御部80やチップサーミスタ82に接続される。グランド部102は、パワー半導体素子22に接続される。
【0026】
グランド部101及びグランド部102は、それぞれ、回路基板90の表面上に実装されるパターンにより形成されてもよい。あるいは、回路基板90が多層基板である場合、グランド部101及びグランド部102は、回路基板90の内層に形成されてもよい。この場合も、グランド部101とグランド部102とは、基板表面に対して垂直方向に視て、互いに重複しない態様で設けられてよい。
【0027】
ところで、近年、車両性能より小型かつ高性能なシステムが要求されている。特に高圧系のコンポネントの1パッケージ化が進んでいる。そのコンポネントとして、インバータ、DC/DCコンバータ、オンボードチャージャ(OBC:On Board Charger)などが挙げられる。例えば、図1に示した車載電源システム1は、このようなコンポネントの1パッケージ化が可能なシステムの一例である。
【0028】
このようなシステムでは、インバータやOBC等を動作させるためのそれぞれのドライブ基板には大電流通電用の回路部と制御系の回路部が混在することがある。特に、DC/DCコンバータの出力部では、本実施例の回路基板90のように、100Aを超過する大電流部と、電流や温度検出をするセンサ素子などの制御系の回路部とが、実装される可能性がある。そのため、センサ情報の信頼性/精度を確保するためには、大電流によるノイズの影響やグランド電位の揺れを抑えることが有用である。
【0029】
この点、図4に示す比較例では、制御系回路部91に係るグランド部101’と、大電流回路部92に係るグランド部102’とが共通である。この場合、制御系回路部91に係るグランド部101’のグランド電位は、大電流回路部92の動作の影響を受けるので、グランド電位の揺れが生じやすくなる。その結果、制御系回路部91の動作の信頼性が低下するおそれがある。
【0030】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、制御系回路部91に係るグランド部101と、大電流回路部92に係るグランド部102とが、別々に設けられる。これにより、制御系回路部91に係るグランド部101のグランド電位は、大電流回路部92の影響を受けない。従って、本実施例によれば、制御系回路部91に係るグランド部101において、大電流回路部92の大電流に起因したグランド電位の揺れを抑えることができる。このようにして、本実施例によれば、大電流回路部92の大電流によるノイズの影響も受け難い制御系回路部91を実現できる。
【0031】
また、本実施例では、グランド部101は、基板表面に対して垂直方向に視て、回路基板90の一方側(X1側)の辺の全長にわたって延在し、グランド部102は、基板表面に対して垂直方向に視て、回路基板90の他方側(X2側)の辺の全長にわたって延在する。すなわち、グランド部101及びグランド部102は、X方向のそれぞれの側に分かれて形成されている。これにより、グランド部101がグランド部102内に離散的に点在する場合に比べて、グランド部101のグランド電位の安定化を図ることができる。
【0032】
また、本実施例では、チップサーミスタ82は、図3に示すように、パワー半導体素子22に隣接して設けられる。すなわち、チップサーミスタ82とパワー半導体素子22は、グランド部101及びグランド部102の間の境界を挟んで隣り合う。なお、この場合、チップサーミスタ82とパワー半導体素子22の間には、他の素子などが配置されない。これにより、チップサーミスタ82がパワー半導体素子22から有意に離れて配置される場合に比べて、パワー半導体素子22の温度を精度良く検出できる。なお、この目的のため、グランド部101及びグランド部102の間の境界のX方向の長さ(幅)は、最小化されてよい。
【0033】
ここで、図5を参照して、回路基板90に対して好適な冷媒流路70を説明する。図5は、回路基板90に対して好適な冷媒流路70の一例を概略的に示す図である。図5に示すように、回路基板90は、冷媒流路70を流れる冷媒を介して冷却されてもよい。特にパワー半導体素子22は、動作時にオン/オフし、発熱する。従って、冷媒流路70を流れる冷媒によりパワー半導体素子22を冷却することで、回路部20の安定的な動作を確保できる。なお、冷媒は、冷却水であるが、油等のような他の冷媒が利用されてもよい。
【0034】
本実施例では、冷媒流路70は、X方向に延在し、X2側からX1側へと冷媒を流す(矢印R50参照)ように形成される。すなわち、冷媒の流れ方向でX2側が上流側となる。この場合、4つのパワー半導体素子22のうちの、最も下流側のパワー半導体素子22は、最も高い温度となりやすい。これは、冷媒の温度は、下流に向かうほど高くなるためである。本実施例では、チップサーミスタ82は、最も下流側のパワー半導体素子22に対して隣接するので、4つのパワー半導体素子22のうちの、最も高い温度(異常等の検知のためのクリティカルな温度)を精度良く検出できる。
【0035】
冷媒流路70は、基板表面に対して垂直方向で、回路基板90に接する態様で形成されてもよい。例えば、冷媒流路70は、管部材により形成されてもよいし、金属プレート等から形成されてもよい。また、冷媒流路70は、フィン等を備えてもよい。
【0036】
なお、本実施例では、チップサーミスタ82による温度検出対象は、4つのパワー半導体素子22のうちの、最も下流側のパワー半導体素子22であるが、他のパワー半導体素子22であってもよい。また、チップサーミスタ82による温度検出対象は、他の発熱素子であってもよい。
【0037】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0038】
例えば、上述した実施例では、大電流回路部92は、100Aを超える電流が流れるが、10Aを超える程度の電流の場合も同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
8・・・制御装置、22・・・パワー半導体素子(発熱素子)、70・・・冷媒流路、82・・・チップサーミスタ(センサ素子)、90・・・回路基板、91・・・制御系回路部(第1電気回路)、92・・・大電流回路部(第2電気回路)、101・・・グランド部(第1グランド部)、102・・・グランド部(第2グランド部)
図1
図2
図3
図4
図5