(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170101
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20241129BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20241129BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B60C11/03 100A
B60C11/13 B
B60C11/12 B
B60C11/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087074
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有安 智史
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC34
3D131EB11V
3D131EB14V
3D131EB18X
3D131EB22V
3D131EB24V
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB31X
3D131EB44X
3D131EB47X
3D131EB82V
3D131EB86V
3D131EB94V
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2はトレッド4を備える。トレッド4はクラウン周方向主溝14とショルダー周方向主溝12とを含む。トレッド4はクラウン陸部20とショルダー陸部22とを含む。クラウン陸部20はクラウン細溝24を有する。クラウン陸部20はクラウン細陸部34を有する。クラウン細陸部34はクラウンサイプ40を有する。クラウンサイプ40はクラウン周方向主溝14及びクラウン細溝24よりも浅い。クラウン細溝24は胴部本体32と拡大幅部28とを備える。ショルダー周方向主溝12における溝底12Tの軌跡LBは、内側頂点LBuと外側頂点LBsとを含み、内側頂点LBuと外側頂点LBsとを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、
前記トレッドが、軸方向に並び、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝を有し、
複数の前記周方向主溝が、赤道面上に位置するクラウン周方向主溝と、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー周方向主溝とを含み、
複数の前記周方向主溝が前記トレッドを複数の陸部に区分し、
複数の前記陸部が、前記赤道面に最も近い一対のクラウン陸部と、各前記ショルダー周方向主溝の軸方向外側に位置し、前記トレッド面の端を含む一対のショルダー陸部とを含み、
各前記クラウン陸部が、周方向に連続してのびるクラウン細溝を有し、
前記クラウン細溝が、前記クラウン陸部を2つのクラウン細陸部に区分し、
各前記クラウン細陸部が、前記クラウン細陸部を横断する複数のクラウンサイプを有し、各前記クラウンサイプが前記クラウン周方向主溝よりも浅く、
前記クラウン細溝が前記クラウンサイプよりも深く、
前記クラウン細溝が、胴部本体と、前記胴部本体の径方向内側に位置する拡大幅部とを備え、前記拡大幅部の溝幅が前記胴部本体の溝幅よりも広く、
各前記ショルダー周方向主溝が、前記赤道面に近い内側壁面と、前記トレッド面の端に近い外側壁面と、前記内側壁面と前記外側壁面との間を架け渡し、溝底を含む底面とを有し、
前記ショルダー周方向主溝における前記溝底の軌跡が、前記赤道面に近い内側頂点と、前記トレッド面の端に近い外側頂点とを含み、前記内側頂点と前記外側頂点とを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記クラウン周方向主溝が、前記トレッド面の第一端に近い第一頂点と、前記トレッド面の第二端に近い第二頂点とを含み、前記第一頂点と前記第二頂点とを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記クラウン細溝が、前記赤道面に近い内側縦溝と、前記トレッド面の端に近い外側縦溝と、前記内側縦溝と前記外側縦溝とを繋ぐ連結溝とを備え、
前記内側縦溝と前記外側縦溝とが周方向に交互に配置される、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記クラウン細溝の溝深さが、前記クラウン周方向主溝の溝深さと同じである、又は、前記クラウン細溝がクラウン周方向主溝よりも浅い、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記クラウンサイプが軸方向にのびる、又は、前記クラウンサイプが軸方向に対して傾斜する、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
2つの前記クラウン細陸部のうち、前記赤道面に近いクラウン細陸部が内側クラウン細陸部であり、前記トレッド面の端に近いクラウン細陸部が外側クラウン細陸部であり、
前記内側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きが、前記外側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きと逆である、
請求項5に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記クラウンサイプが軸方向に対して傾斜し、
2つの前記クラウン細陸部のうち、前記赤道面に近いクラウン細陸部が内側クラウン細陸部であり、前記トレッド面の端に近いクラウン細陸部が外側クラウン細陸部であり、
前記内側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きが、前記外側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きと逆であり、
前記クラウン細溝が、前記赤道面に近接する内側縦溝と、前記トレッド面の端に近接する外側縦溝と、前記内側縦溝と前記外側縦溝とを繋ぐ連結溝とを備え、
前記内側縦溝と前記外側縦溝とが周方向に交互に配置され、
前記内側クラウン細陸部における前記クラウンサイプが、前記クラウン周方向主溝の第二頂点と、前記クラウン細溝の外側縦溝とを繋ぎ、
前記外側クラウン細陸部における前記クラウンサイプが、前記クラウン細溝の内側縦溝と前記ショルダー周方向主溝とを繋ぐ、
請求項2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
前記ショルダー周方向主溝の前記内側壁面及び前記外側壁面が、前記ショルダー周方向主溝の溝口における前記トレッド面の法線に対して傾斜し、
前記ショルダー周方向主溝の前記溝底の軌跡に含まれる前記内側頂点において、前記内側壁面の傾斜角が、前記外側壁面の傾斜角と同じであるか、前記外側壁面の傾斜角よりも大きく、
前記ショルダー周方向主溝の前記溝底の軌跡に含まれる前記外側頂点において、前記内側壁面の傾斜角が、前記外側壁面の傾斜角よりも大きい、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項9】
前記ショルダー周方向主溝の前記溝底の軌跡が、前記ショルダー周方向主溝の溝口における溝幅の中心線と、前記溝口を構成する一対のエッジである前記トレッド面の端側のエッジと、の間に位置する、
請求項8に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項10】
前記ショルダー陸部が、前記ショルダー陸部を横断するショルダー横溝を有し、
前記ショルダー横溝が、前記赤道面側に位置する内側ショルダー横溝と、前記トレッド面の端側に位置する外側ショルダー横溝とを備え、
前記内側ショルダー横溝及び前記外側ショルダー横溝のそれぞれが、軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜する、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項11】
前記ショルダー横溝が前記クラウンサイプよりも浅い、
請求項10に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項12】
前記ショルダー陸部が、周方向に連続してのびるショルダー細溝を有し、
前記ショルダー細溝が前記クラウンサイプよりも浅く、
前記ショルダー細溝が前記ショルダー横溝と交差する、
請求項10又は11に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項13】
前記内側ショルダー横溝が、前記ショルダー細溝と前記ショルダー周方向主溝との間を繋ぎ、
前記外側ショルダー横溝が、前記トレッド面の端と前記ショルダー細溝との間を繋ぎ、
前記内側ショルダー横溝の傾斜角が、前記外側ショルダー横溝の傾斜角よりも大きい、
請求項12に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤはトレッドにおいて路面と接地する。トレッドに溝を刻むことで構成されるトレッドパターンは、タイヤの性能に影響する。
タイヤのトレッドには軸方向に並ぶ複数の周方向主溝が刻まれる。複数の周方向主溝はトレッドを複数の陸部に区分する。陸部を横断する横溝を陸部に刻むことで、陸部の剛性がコントロールされる。ミドル陸部に刻まれるミドル横溝の形状を調整することで、濡れた路面での走行性能(以下、ウェット性能)が向上するように設計された、重荷重用タイヤが知られている(例えば、下記の特許文献1)。
環境への影響が考慮され、タイヤの転がり抵抗を低減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる、重荷重用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る重荷重用タイヤは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備える。前記トレッドは、軸方向に並び、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝を有する。複数の前記周方向主溝は、赤道面上に位置するクラウン周方向主溝と、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー周方向主溝とを含む。複数の前記周方向主溝は前記トレッドを複数の陸部に区分する。複数の前記陸部は、前記赤道面に最も近い一対のクラウン陸部と、各前記ショルダー周方向主溝の軸方向外側に位置し、前記トレッド面の端を含む一対のショルダー陸部とを含む。各前記クラウン陸部は、周方向に連続してのびるクラウン細溝を有する。前記クラウン細溝は、前記クラウン陸部を2つのクラウン細陸部に区分する。各前記クラウン細陸部は、前記クラウン細陸部を横断する複数のクラウンサイプを有する。各前記クラウンサイプは前記クラウン周方向主溝よりも浅い。前記クラウン細溝は前記クラウンサイプよりも深い。前記クラウン細溝は、胴部本体と、前記胴部本体の径方向内側に位置する拡大幅部とを備える。前記拡大幅部の溝幅は前記胴部本体の溝幅よりも広い。各前記ショルダー周方向主溝は、前記赤道面に近い内側壁面と、前記トレッド面の端に近い外側壁面と、前記内側壁面と前記外側壁面との間を架け渡し、溝底を含む底面とを有する。前記ショルダー周方向主溝における前記溝底の軌跡は、前記赤道面に近い内側頂点と、前記トレッド面の端に近い外側頂点とを含み、前記内側頂点と前記外側頂点とを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる、重荷重用タイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤのトレッドの一部を示す展開図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図11】摩耗による、溝底の内側頂点でのショルダー周方向主溝の溝幅の変化を説明する図である。
【
図12】摩耗による、溝底の外側頂点でのショルダー周方向主溝の溝幅の変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0009】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0010】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0011】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0012】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0013】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0014】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
トレッド部の中央部分はクラウン部分とも呼ばれる。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも呼ばれる。
【0015】
[本発明の基礎となった知見]
タイヤのトレッドに、ウェット性能のような走行性能を重視したトレッドパターンを採用すると、トレッドの剛性が低下する傾向にある。走行性能を重視したトレッドパターンでは、トレッドにおいてエネルギーの損失が生じやすく、タイヤの転がり抵抗が増加するという懸念がある。
トレッドに構成される陸部の数を減らし、陸部1本あたりの体積を増加させれば、陸部の剛性を高めることができ、タイヤは転がり抵抗を低減できる。しかしトレッドは摩耗する。エッジ成分として機能していた溝は消失し、溝容積が減少する。環境性能を重視したトレッドパターンを採用すると、タイヤの転がり抵抗を低減できるという見込みがある一方で、摩耗によりタイヤのウェット性能が低下するという懸念がある。
環境への影響が考慮され、タイヤにおいては、環境性能としての転がり抵抗をさらに低下させることが求められている。
そこで、環境性能を重視したトレッドパターンでありながらも、摩耗による走行性能の低下を抑制できる技術を確立するために、本発明者はタイヤのトレッドパターンについて鋭意検討し、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0016】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、前記トレッドが、軸方向に並び、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝を有し、複数の前記周方向主溝が、赤道面上に位置するクラウン周方向主溝と、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー周方向主溝とを含み、複数の前記周方向主溝が前記トレッドを複数の陸部に区分し、複数の前記陸部が、前記赤道面に最も近い一対のクラウン陸部と、各前記ショルダー周方向主溝の軸方向外側に位置し、前記トレッド面の端を含む一対のショルダー陸部とを含み、各前記クラウン陸部が、周方向に連続してのびるクラウン細溝を有し、前記クラウン細溝が、前記クラウン陸部を2つのクラウン細陸部に区分し、各前記クラウン細陸部が、前記クラウン細陸部を横断する複数のクラウンサイプを有し、各前記クラウンサイプが前記クラウン周方向主溝よりも浅く、前記クラウン細溝が前記クラウンサイプよりも深く、前記クラウン細溝が、胴部本体と、前記胴部本体の径方向内側に位置する拡大幅部とを備え、前記拡大幅部の溝幅が前記胴部本体の溝幅よりも広く、各前記ショルダー周方向主溝が、前記赤道面に近い内側壁面と、前記トレッド面の端に近い外側壁面と、前記内側壁面と前記外側壁面との間を架け渡し、溝底を含む底面とを有し、前記ショルダー周方向主溝における前記溝底の軌跡が、前記赤道面に近い内側頂点と、前記トレッド面の端に近い外側頂点とを含み、前記内側頂点と前記外側頂点とを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
【0017】
このようにタイヤを整えることにより、転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる、タイヤが得られる。
【0018】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記クラウン周方向主溝が、前記トレッド面の第一端に近い第一頂点と、前記トレッド面の第二端に近い第二頂点とを含み、前記第一頂点と前記第二頂点とを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
【0019】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記クラウン細溝が、前記赤道面に近い内側縦溝と、前記トレッド面の端に近い外側縦溝と、前記内側縦溝と前記外側縦溝とを繋ぐ連結溝とを備え、前記内側縦溝と前記外側縦溝とが周方向に交互に配置される。
【0020】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記クラウン細溝の溝深さが、前記クラウン周方向主溝の溝深さと同じである、又は、前記クラウン細溝がクラウン周方向主溝よりも浅い。
【0021】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記クラウンサイプが軸方向にのびる、又は、前記クラウンサイプが軸方向に対して傾斜する。
【0022】
[構成6]
好ましくは、前述の[構成5]に記載の重荷重用タイヤにおいて、2つの前記クラウン細陸部のうち、前記赤道面に近いクラウン細陸部が内側クラウン細陸部であり、前記トレッド面の端に近いクラウン細陸部が外側クラウン細陸部であり、前記内側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きが、前記外側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きと逆である。
【0023】
[構成7]
好ましくは、前述の[構成2]から[構成4]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記クラウンサイプが軸方向に対して傾斜し、2つの前記クラウン細陸部のうち、前記赤道面に近いクラウン細陸部が内側クラウン細陸部であり、前記トレッド面の端に近いクラウン細陸部が外側クラウン細陸部であり、前記内側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きが、前記外側クラウン細陸部における前記クラウンサイプの傾斜の向きと逆であり、前記クラウン細溝が、前記赤道面に近接する内側縦溝と、前記トレッド面の端に近接する外側縦溝と、前記内側縦溝と前記外側縦溝とを繋ぐ連結溝とを備え、前記内側縦溝と前記外側縦溝とが周方向に交互に配置され、前記内側クラウン細陸部における前記クラウンサイプが、前記クラウン周方向主溝の第二頂点と、前記クラウン細溝の外側縦溝とを繋ぎ、前記外側クラウン細陸部における前記クラウンサイプが、前記クラウン細溝の内側縦溝と前記ショルダー周方向主溝とを繋ぐ。
【0024】
[構成8]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成7]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー周方向主溝の前記内側壁面及び前記外側壁面が、前記ショルダー周方向主溝の溝口における前記トレッド面の法線に対して傾斜し、前記ショルダー周方向主溝の前記溝底の軌跡に含まれる前記内側頂点において、前記内側壁面の傾斜角が、前記外側壁面の傾斜角と同じであるか、前記外側壁面の傾斜角よりも大きく、前記ショルダー周方向主溝の前記溝底の軌跡に含まれる前記外側頂点において、前記内側壁面の傾斜角が、前記外側壁面の傾斜角よりも大きい。
【0025】
[構成9]
好ましくは、前述の[構成8]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー周方向主溝の前記溝底の軌跡が、前記ショルダー周方向主溝の溝口における溝幅の中心線と、前記溝口を構成する一対のエッジである、前記トレッド面の端側のエッジと、の間に位置する。
【0026】
[構成10]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成9]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー陸部が、前記ショルダー陸部を横断するショルダー横溝を有し、前記ショルダー横溝が、前記赤道面側に位置する内側ショルダー横溝と、前記トレッド面の端側に位置する外側ショルダー横溝とを備え、前記内側ショルダー横溝及び前記外側ショルダー横溝のそれぞれが、軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜する。
【0027】
[構成11]
好ましくは、前述の[構成10]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー横溝が前記クラウンサイプよりも浅い。
【0028】
[構成12]
好ましくは、前述の[構成10]又は[構成11]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー陸部が、周方向に連続してのびるショルダー細溝を有し、前記ショルダー細溝が前記クラウンサイプよりも浅く、前記ショルダー細溝が前記ショルダー横溝と交差する。
【0029】
[構成13]
好ましくは、前述の[構成12]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記内側ショルダー横溝が、前記ショルダー細溝と前記ショルダー周方向主溝との間を繋ぎ、前記外側ショルダー横溝が、前記トレッド面の端と前記ショルダー細溝との間を繋ぎ、前記内側ショルダー横溝の傾斜角が、前記外側ショルダー横溝の傾斜角よりも大きい。
【0030】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2のトレッド4の一部を展開した平面図である。このタイヤ2はトラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2は重荷重用タイヤである。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
図1において周方向にのびる一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
図1の紙面上側がタイヤ2の周方向第一方向側であり、紙面下側がタイヤ2の周方向第二方向側である。
【0032】
図1はトレッド4に構成されたトレッドパターンを示す。
図1に示されたトレッドパターンを例にして、本発明のトレッドパターンが以下に説明される。本発明では、タイヤ2の内部構造は特に問わない。詳述しないが、このタイヤ2は、重荷重用タイヤの内部構造として一般的な内部構造を有する。
【0033】
トレッド4は、タイヤ2の径方向外側に位置し、周方向にのびる。トレッド4の外周面がトレッド面6である。タイヤ2は、トレッド面6において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面6を有する。
トレッド4は架橋ゴムからなる。トレッド4には溝8が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
【0034】
トレッド面6と赤道面との交点は赤道である。
図1に示されるように、赤道面上に溝8が位置する場合は、赤道面上に溝8がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて、赤道は特定される。
【0035】
符号TEで示される二点鎖線はトレッド面6の端を表す。
タイヤにおいて、外観上、トレッド面の端が識別不能な場合は、正規状態のタイヤに正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜とし、タイヤを平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端に対応するタイヤの外面上の位置がトレッド面の端として用いられる。
【0036】
図1に示されたトレッド面6においては、赤道面の左側に位置するトレッド面6の端TE(図示されず)が第一端TE1とも呼ばれる。赤道面の右側に位置する端TEが第二端TE2とも呼ばれる。
【0037】
図1において符号TWで示される長さは、トレッド面6の幅である。トレッド面6の幅TWは、トレッド面6の第一端TE1から第二端TE2までの軸方向距離である。トレッド面6の幅TWは、トレッド面6に沿って計測される長さで表される。
【0038】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
図2は、溝8、詳細には、後述するセンター周方向主溝の断面を示す。
図2に基づいて溝8の主たる構成が説明される。
【0039】
溝8は、溝口8Mを含む一対の壁面8Wと、溝底8Tを含む底面8Bとを有する。溝8の溝幅は、一対の壁面8Wである第一壁面8Wと第二壁面8Wとの間の距離、すなわち壁面間距離で表される。
図2において両矢印WGで示される長さは、溝口8Mにおける溝8の溝幅である。溝幅WGは、溝口8Mを構成する一対のエッジ間の最短距離で表される。なお、溝8の溝口8Mの部分がテーパー様に加工されている場合は、テーパー様に加工されていないと仮定して得られる仮想エッジに基づいて、溝8の溝口8Mにおける溝幅が表される。
両矢印DGで示される長さは、溝8の溝深さである。溝8の溝深さDGは、左右のエッジを結ぶ線分から溝8の溝底8Tまでの最短距離で表される。
溝8の位置、溝幅WG及び溝深さDGは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0040】
溝底8Tは、溝8の断面において最も深い位置である。溝口8Mを構成する左右のエッジを結ぶ線分の法線に沿って、この線分から底面8Bまでの距離が計測される。この線分から底面8Bまでの距離が最大となる位置が、溝底8Tである。
図2に示された底面8Bは曲面である。底面8Bが平面を含み、この平面が溝底8Tを含んでもよい。この場合、平面の幅中心が溝底8Tとして用いられる。
【0041】
溝口8Mにおいて1.0mm未満の溝幅WGを有する溝8はサイプとも呼ばれる。サイプ以外の溝8は普通溝とも呼ばれ、その溝口8Mにおいて1.0mm以上の溝幅WGを有する。
サイプが、溝口8Mと溝底8Tとの間に、1.0mm以上の溝幅を有する部分(以下、普通溝相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗して普通溝相当部分が露出することで、サイプが普通溝に切り替わる。
普通溝が、溝口8Mと溝底8Tとの間に、1.0mm未満の溝幅を有する部分(サイプ相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗してサイプ相当部分が露出することで、普通溝がサイプに切り替わる。
普通溝であっても、狭い溝幅を有し、タイヤが路面と接地すると一対の壁面が互いに接触できる普通溝は、細溝とも呼ばれる。広い溝幅を有し、タイヤが路面と接地しても一対の壁面が互いに接触することがない普通溝は主溝とも呼ばれる。
【0042】
図1に示されるように、このタイヤ2のトレッド4には、軸方向に並ぶ複数の周方向主溝10が刻まれる。各周方向主溝10は周方向に連続してのびる。周方向主溝10は前述の主溝である。トレッド4は、軸方向に並び、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝10を有する。
【0043】
周方向主溝10の溝深さは、例えば、10mm以上21mm以下である。タイヤ2が良好なウェット性能を発揮できる観点から、溝深さは13mm以上18mm以下であるのが好ましい。
【0044】
図1に示されたトレッド4は、軸方向に並ぶ3本の周方向主溝10を有する。3本の周方向主溝10のうち、軸方向において最も外側に位置する周方向主溝10がショルダー周方向主溝12である。赤道面上に位置する周方向主溝10がクラウン周方向主溝14である。このトレッド4に刻まれる複数の周方向主溝10は、クラウン周方向主溝14と、一対のショルダー周方向主溝12とを含む。
なお、クラウン周方向主溝14とショルダー周方向主溝12との間に周方向主溝がさらに設けられている場合は、この周方向主溝はミドル周方向主溝とも呼ばれる。
【0045】
図1において両矢印WGcで示される長さは、クラウン周方向主溝14の溝口での溝幅である。両矢印WGsで示される長さは、ショルダー周方向主溝12の溝口での溝幅である。
【0046】
クラウン周方向主溝14の溝幅WGcの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WGc/TW)は2.0%を超える。具体的には、比率(WGc/TW)は好ましくは4.0%以上10%以下である。
図1に示されるように、ショルダー周方向主溝12の溝幅WGsはクラウン周方向主溝14の溝幅WGcよりも広い。ショルダー周方向主溝12の溝幅WGsの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WGs/TW)は好ましくは5.0%以上11%以下である。
【0047】
図1に示されるように、クラウン周方向主溝14の底面には、底面から突出する突起16が設けられる。複数の突起16が周方向に所定の間隔をあけて配置される。突起16は、クラウン周方向主溝14に石が噛み込むことを防止する。
【0048】
前述したように、トレッド4は複数の周方向主溝10を有する。複数の周方向主溝10は、トレッド4を、複数の陸部18に区分する。
【0049】
図1に示されたトレッド4では、3本の周方向主溝10を刻むことで、4本の陸部18が構成される。4本の陸部18のうち、赤道面に最も近い陸部18がクラウン陸部20である。言い換えれば、クラウン周方向主溝14の両側に位置する陸部18がクラウン陸部20である。軸方向において最も外側に位置する陸部18がショルダー陸部22である。ショルダー陸部22は、ショルダー周方向主溝12の軸方向外側に位置し、トレッド面6の端TEを含む。このトレッド4に構成される複数の陸部18は、一対のクラウン陸部20と一対のショルダー陸部22とを含む。
なお、クラウン陸部20とショルダー陸部22との間に陸部がさらに設けられている場合は、この陸部はミドル陸部とも呼ばれる。
【0050】
図3は、
図1に示されたトレッド面6の一部を示す。
図3はクラウン陸部20を示す。
このタイヤ2のトレッド4に設けられる2本のクラウン陸部20はそれぞれ、周方向に連続してのびるクラウン細溝24を有する。クラウン細溝24は前述の細溝である。
【0051】
図3において両矢印WLCで示される長さは、クラウン陸部20の最大幅である。このタイヤ2のクラウン陸部20では、最大幅WLCの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WLC/TW)は、17%以上27%以下である。
図3において一点鎖線LCMは、クラウン陸部20の最大幅中心線である。クラウン細溝24は最大幅中心線LCM上に位置する。言い換えれば、クラウン細溝24は、径方向において、この最大幅中心線LCMと重複するように配置される。
【0052】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った、クラウン細溝24の断面図である。
図4は、クラウン細溝24の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、クラウン細溝24の断面を示す。
クラウン細溝24は、胴部26と拡大幅部28とを備える。
図4に示されたクラウン細溝24の胴部26は、テーパー部30と胴部本体32とを備える。
【0053】
テーパー部30は、クラウン細溝24の溝口24Mを含む。テーパー部30は溝口24Mから内側に向かって先細りである。
図4に示されたテーパー部30の壁面の輪郭は直線で表される。この輪郭が曲線で表されてもよい。
胴部本体32は、テーパー部30の径方向内側に位置する。胴部本体32はテーパー部30に連なる。胴部本体32は、クラウン細溝24の深さ方向にストレートにのびる。胴部本体32の壁面の輪郭は直線で表される。
【0054】
図4において符号PUで示される位置は、テーパー部30と胴部本体32との境界である。境界PUは、テーパー部30の壁面輪郭線と胴部本体32の壁面輪郭線との交点で表される。
図4に示されるように、テーパー部30と胴部本体32との境界部分が丸められている場合は、境界PUは、テーパー部30の壁面輪郭線の延長線と胴部本体32の壁面輪郭線の延長線との交点で表される。
【0055】
クラウン細溝24には、テーパー部30は設けられなくてもよい。この場合、胴部26は胴部本体32のみで構成される。
タイヤ2が、クラウン細溝24の溝容積を確保しながら、クラウン細溝24の溝口24Mへの歪の集中を効果的に抑制できる観点から、
図4に示されるように、クラウン細溝24にはテーパー部30が設けられるのが好ましい。
【0056】
図4において両矢印WDで示される長さは、胴部本体32の溝幅である。クラウン細溝24の溝口24Mの部分はテーパー様に加工されている。クラウン細溝24の溝口における溝幅は、胴部本体32の溝幅WDに等しい。
【0057】
拡大幅部28は、胴部26、詳細には、胴部本体32の径方向内側に位置する。拡大幅部28は胴部本体32に連なる。拡大幅部28は胴部本体32の溝幅WDよりも広い溝幅を有する。拡大幅部28は、クラウン細溝24の溝底24Tを含む。
【0058】
図4において符号PSで示される位置は、胴部本体32と拡大幅部28との境界である。前述したように、クラウン細溝24の断面において、胴部本体32の壁面輪郭線は直線である。本発明においては、拡大幅部28の壁面輪郭線が胴部本体32の壁面輪郭線に収束する位置が、胴部本体32と拡大幅部28との境界PSである。具体的には、胴部本体32から拡大幅部28にかけての溝幅において、胴部本体32の溝幅WDの1.1倍の溝幅を示す位置が、胴部本体32と拡大幅部28との境界PSとして表される。
【0059】
図4において両矢印WMで示される長さは、拡大幅部28の最大溝幅である。
図4において符号PMで示される位置は、拡大幅部28が最大溝幅WMを示す位置である。
拡大幅部28は、最大溝幅WMを示す部分から外向きに先細りである。最大溝幅位置PMから境界PSまでの部分において拡大幅部28は、その外側から内向きに窪むように湾曲する。
拡大幅部28は、最大溝幅WMを示す部分から内向きに先細りである。最大溝幅位置PMから溝底24Tまでの部分において拡大幅部28は、丸みを帯びた輪郭を有する。この部分において拡大幅部28は、その内側から外向きに膨らむように湾曲する。
拡大幅部28において、その外側から内向きに窪むように湾曲する部分と、その内側から外向きに膨らむように湾曲する部分との境界は、最大溝幅位置PMの径方向外側に位置する。
【0060】
図4において両矢印HMで示される長さはクラウン細溝24の溝深さである。両矢印HHで示される長さは、胴部26の溝深さである。両矢印HTで示される長さは、テーパー部30の溝深さである。
【0061】
タイヤ2が、クラウン細溝24の溝容積を確保しながら、クラウン細溝24の溝口24Mへの歪の集中を効果的に抑制できる観点から、テーパー部30の溝深さHTの、クラウン細溝24の溝深さHMに対する比(HT/HM)は、0.12以上0.14以下であるのが好ましい。
【0062】
前述したように、クラウン陸部20はクラウン細溝24を有する。クラウン細溝24は、クラウン陸部20を2つのクラウン細陸部34に区分する。2つのクラウン細陸部34のうち、赤道面に近いクラウン細陸部34は内側クラウン細陸部36であり、トレッド面6の端TEに近いクラウン細陸部34は外側クラウン細陸部38である。
【0063】
2つのクラウン細陸部34はそれぞれ、クラウン細陸部34を横断する複数のクラウンサイプ40を有する。複数のクラウンサイプ40は、クラウン細陸部34を複数のクラウンブロック42に区分する。
内側クラウン細陸部36に設けられるクラウンサイプ40は、内側クラウンサイプ44とも呼ばれる。内側クラウン細陸部36のクラウンブロック42は、内側クラウンブロック46とも呼ばれる。外側クラウン細陸部38に設けられるクラウンサイプ40は、外側クラウンサイプ48とも呼ばれる。外側クラウン細陸部38のクラウンブロック42は、外側クラウンブロック50とも呼ばれる。
【0064】
図5は、
図3のV-V線に沿った、クラウンサイプ40、詳細には、内側クラウンサイプ44の断面図である。
図5は、内側クラウンサイプ44の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、内側クラウンサイプ44の断面を示す。外側クラウンサイプ48の断面形状は内側クラウンサイプ44のそれと同じである。内側クラウンサイプ44を例にして、クラウンサイプ40の断面形状が説明される。
【0065】
クラウンサイプ40はその深さ方向にストレートにのびる。クラウンサイプ40は、溝口40Mを含む一対の壁面40Wと、溝底40Tを含む底面40Bとを有する。
図5において両矢印WGpは、クラウンサイプ40の溝口40Mでの溝幅である。両矢印DGpは、クラウンサイプ40の溝深さである。
このタイヤ2のクラウンサイプ40の溝幅WGpは1.0mm未満である。クラウン細陸部34に荷重が作用し、クラウン細陸部34が変形すると、クラウンサイプ40の壁面40W同士が接触し、互いに支え合う。
【0066】
このタイヤ2のトレッド4では、クラウン陸部20とショルダー陸部22との間にショルダー周方向主溝12が位置する。
図6は、
図3のVI-VI線に沿った断面である。
図6は、ショルダー周方向主溝12の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、ショルダー周方向主溝12の断面を示す。
図6において一点鎖線MLは、ショルダー周方向主溝12の溝口12Mにおける溝幅の中心線である。
【0067】
ショルダー周方向主溝12は、溝口12Mを含む一対の壁面12Wと、溝底12Tを含む底面12Bとを有する。一対の壁面12Wのうち、赤道面に近い壁面12Wは内側壁面52とも呼ばれ、トレッド面6の端TEに近い壁面12Wは外側壁面54とも呼ばれる。底面12Bは、内側壁面52と外側壁面54との間を架け渡す。
【0068】
内側壁面52及び外側壁面54のそれぞれは、溝口12Mにおけるトレッド面6の法線に対して傾斜する。
図6において角度θuは、溝口12Mにおける内側壁面52がトレッド面6の法線に対してなす角度である。角度θuは、内側壁面52の傾斜角とも呼ばれる。角度θsは、溝口12Mにおける外側壁面54がトレッド面6の法線に対してなす角度である。角度θsは、外側壁面54の傾斜角とも呼ばれる。
【0069】
図6において両矢印DGsで示される長さはショルダー周方向主溝12の溝深さである。
図2において両矢印DGcで示される長さはクラウン周方向主溝14の溝深さである。ショルダー周方向主溝12の溝深さDGsは、クラウン周方向主溝14の溝深さDGcと同じである。ショルダー周方向主溝12がクラウン周方向主溝14よりも浅くてもよいし、ショルダー周方向主溝12がクラウン周方向主溝14よりも深くてもよい。
【0070】
図3に示されるように、ショルダー周方向主溝12の溝口12Mを構成する一対のエッジ12Eはそれぞれ、周方向にストレートにのびる。
図3において実線LBは、ショルダー周方向主溝12の溝底12Tの軌跡である。
図3に示されるように、ショルダー周方向主溝12の溝底12Tの軌跡LBは、ジグザグにのびる。詳細には、軌跡LBは、赤道面に近い内側頂点LBuと、トレッド面6の端TEに近い外側頂点LBsとを含み、内側頂点LBuと外側頂点LBsとを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
【0071】
図3においてVI-VI線は内側頂点LBuを通る。
図6に示されたショルダー周方向主溝12の断面は、内側頂点LBuにおけるショルダー周方向主溝12の断面である。内側頂点LBuにおける内側壁面52の傾斜角θuは傾斜角θuuとも呼ばれる。外側壁面54の傾斜角θsは、傾斜角θsuとも呼ばれる。
【0072】
図6に示されるように、内側頂点LBuにおけるショルダー周方向主溝12の断面では、溝底12Tは、溝幅中心線MLと底面12Bとの交点に一致する。内側壁面52の傾斜角θuuは、外側壁面54の傾斜角θsuと同じである。内側頂点LBuにおけるショルダー周方向主溝12の断面形状は、溝幅中心線MLに対して対称である。
【0073】
図7は、
図3のVII-VII線に沿った、ショルダー周方向主溝12の断面である。
図3においてVII-VII線は、外側頂点LBsを通る。
図7に示されたショルダー周方向主溝12の断面は、外側頂点LBsにおけるショルダー周方向主溝12の断面である。外側頂点LBsにおける内側壁面52の傾斜角θuは傾斜角θusとも呼ばれる。外側壁面54の傾斜角θsは、傾斜角θssとも呼ばれる。
【0074】
図7に示されるように、外側頂点LBsにおけるショルダー周方向主溝12の断面では、溝底12Tは、溝幅中心線MLと底面12Bとの交点よりも、外側壁面54側、言い換えれば、トレッド面6の端TE側に位置する。内側壁面52の傾斜角θusは、外側壁面54の傾斜角θssよりも大きい。外側頂点LBsにおけるショルダー周方向主溝12の断面形状は、溝幅中心線MLに対して対称ではない。
【0075】
図6と
図7との対比から明らかなように、内側頂点LBuにおける内側壁面52の傾斜角θuuと、外側頂点LBsにおける内側壁面52の傾斜角θusとは相違する。内側頂点LBuにおける外側壁面54の傾斜角θsuと、外側頂点LBsにおける外側壁面54の傾斜角θssとは相違する。内側壁面52及び外側壁面54の傾斜の度合いが周方向において変動する。
【0076】
このタイヤ2のトレッド面6の幅TWであれば、通常、4本の周方向主溝10が設けられる。しかしこのタイヤ2のトレッド4には、前述したように、3本の周方向主溝10が設けられる。このトレッド4に構成される陸部18は、このトレッド4に4本の周方向主溝10を設けた場合に構成される陸部の体積に比べて、大きな体積を有する。
このタイヤ2の陸部18は、トレッド4に4本の周方向主溝10を設けた場合に構成される陸部の剛性に比べて、高い剛性を有する。陸部18の変形が抑制される。この陸部18は転がり抵抗の低減に貢献できる。
【0077】
前述したように、クラウン陸部20のクラウン細陸部34には、複数のクラウンサイプ40が設けられる。クラウンサイプ40は路面を掻くエッジ成分として機能できる。クラウンサイプ40はウェット性能の向上に貢献できる。
クラウンサイプ40はクラウン細陸部34の剛性低下を招くという懸念がある。しかしこのタイヤ2のクラウンサイプ40はクラウン周方向主溝14よりも浅い。クラウンサイプ40によるクラウン細陸部34の剛性への影響が抑制される。このタイヤ2のクラウン細陸部34は必要な剛性を有する。このタイヤ2の陸部18は転がり抵抗の低減に貢献できる。
【0078】
トレッド4は摩耗する。周方向主溝10の溝容積は低減し、エッジ成分として機能していたクラウンサイプ40は消失する。摩耗により、ウェット性能が低下するという懸念がある。しかし、このタイヤ2のクラウン細溝24は、クラウンサイプ40よりも深い。しかもクラウン細溝24は、その溝底24T側に、拡大幅部28を有する。
摩耗により周方向主溝10の溝容積が低減しても、クラウン細溝24の拡大幅部28が露出する。拡大幅部28は、クラウン細溝24の胴部本体32の溝幅よりも広い溝幅を有する。拡大幅部28が、低減した溝容積を補う。拡大幅部28は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制することに貢献できる。
【0079】
前述したように、ショルダー周方向主溝12において、溝底12Tの軌跡LBは、内側頂点LBuと外側頂点LBsとを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。内側壁面52及び外側壁面54の傾斜の度合いは周方向において変動する。内側壁面52及び外側壁面54のそれぞれは、ジグザグにのびる溝底12Tに呼応して、蛇行しながら周方向にのびる。トレッド4が摩耗することで露出するショルダー周方向主溝12のエッジは、蛇行して周方向にのびる。摩耗によりクラウンサイプ40が消失しても、ショルダー周方向主溝12の内側壁面52及び外側壁面54がエッジ成分として機能できる。ショルダー周方向主溝12の内側壁面52及び外側壁面54は、消失したエッジ成分を補う。内側壁面52及び外側壁面54は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制することに貢献できる。
【0080】
このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる。
【0081】
[好ましいトレッドパターン]
以下に、好ましいトレッドパターンが詳述される。
【0082】
図3に示されるように、このタイヤ2のクラウン周方向主溝14は、トレッド面6の第一端TE1(図示されず)に近い、第一頂点14aと、トレッド面6の第二端TE2に近い、第二頂点14bとを含む。クラウン周方向主溝14は、第一頂点14aと第二頂点14bとを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。前述したように、クラウン周方向主溝14は赤道面上に位置する。クラウン周方向主溝14が接地面に含まれるケースは多い。クラウン周方向主溝14の溝口14Mを構成する一対のエッジ14Eはそれぞれ、周方向にジグザグにのびる。
クラウン周方向主溝14は、トレッド4が摩耗してタイヤ2の交換が必要な状態(以下、摩耗末期状態)に到達するまで、エッジ成分として機能できる。クラウン周方向主溝14は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制することに貢献できる。この観点から、クラウン周方向主溝14は、トレッド面6の第一端TE1に近い第一頂点14aと、トレッド面6の第二端TE2に近い第二頂点14bとを含み、第一頂点14aと第二頂点14bとを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびるのが好ましい。
【0083】
図3に示されるように、クラウン細溝24は、ストレートではなく蛇行しながら周方向にのびる。特に、このタイヤ2のクラウン細溝24は、赤道面に近い内側縦溝56と、トレッド面6の端TEに近い外側縦溝58と、内側縦溝56と外側縦溝58とを繋ぐ連結溝60とを含む。
連結溝60のうち、周方向第一方向側に位置する内側縦溝56と、周方向第二方向側に位置する外側縦溝58とを繋ぐ連結溝60は第一連結溝60aとも呼ばれる。周方向第一方向側に位置する外側縦溝58と、周方向第二方向側に位置する内側縦溝56とを繋ぐ連結溝60は第二連結溝60bとも呼ばれる。
内側縦溝56、第一連結溝60a、外側縦溝58及び第二連結溝60bをこの順で繋げて構成されるユニットを溝ユニットとしたとき、この溝ユニットを複数、周方向に繋げることで、クラウン細溝24が構成される。内側縦溝56と外側縦溝58とは、周方向に交互に配置される。
【0084】
クラウン陸部20に力が作用しクラウン陸部20が変形すると、クラウン細溝24は、その胴部本体32において壁面同士が接触する。クラウン細溝24は、蛇行しながら周方向にのびるので、壁面同士が効果的に噛み合う。クラウン細溝24の両側に位置するクラウン細陸部34が互いに拘束し合う。クラウン陸部20の剛性が見かけ上高まる。クラウン陸部20の変形が効果的に抑制される。このタイヤ2は転がり抵抗をさらに低減できる。この観点から、クラウン細溝24は、内側縦溝56と、外側縦溝58と、内側縦溝56と外側縦溝58とを繋ぐ連結溝60とを備え、内側縦溝56と外側縦溝58とは周方向に交互に配置されるのが好ましい。
【0085】
このタイヤ2のクラウン細溝24の溝深さHMは、クラウン周方向主溝14の溝深さDGcと同じある、又は、クラウン細溝24は、クラウン周方向主溝14よりも浅い。前述したように、クラウン細溝24はその溝底24T側に拡大幅部28を有する。クラウン細溝24の拡大幅部28が、前述の摩耗末期状態において、低減した溝容積を補うことに効果的に貢献できる。このタイヤ2は、摩耗によるウェット性能の低下を効果的に抑制できる。
この観点から、クラウン細溝24の溝深さHMは、クラウン周方向主溝14の溝深さDGcと同じある、又は、クラウン細溝24は、クラウン周方向主溝14よりも浅いのが好ましい。言い換えれば、クラウン細溝24の溝深さHMの、クラウン周方向主溝14の溝深さDGcに対する比(HM/DGc)が1.0以下であることが好ましい。
摩耗末期の状態において、クラウン細溝24全体が消失することなく、拡大幅部28が低減した溝容積を補うことに効果的に貢献できる観点から、比(HM/DGc)は0.75以上であることが好ましい。
【0086】
クラウン細溝24の胴部26の溝深さHHの、クラウン細溝24の溝深さHMに対する比(HH/HM)は0.20以上0.50以下であるのが好ましい。
比(HH/HM)が0.20以上に設定されることにより、このタイヤ2は、拡大幅部28によるクラウン陸部20の剛性への影響を効果的に抑制できる。クラウン細溝24がクラウン陸部20の剛性を見かけ上高めることに効果的に貢献できる。このタイヤ2は転がり抵抗をさらに低減できる。この観点から、比(HH/HM)は0.25以上であるのがより好ましい。
比(HH/HM)が0.50以下に設定されることにより、拡大幅部28が、摩耗により低減する溝容積を補うことに効果的に貢献できる。この観点から、比(HH/HM)は0.45以下であるのがより好ましい。
【0087】
前述したように、クラウン細溝24はクラウンサイプ40よりも深い。クラウンサイプ40はクラウン細溝24よりも先に消失する。クラウンサイプ40からクラウン細溝24の拡大幅部28への切り替わりによる、転がり抵抗への影響と、ウェット性能への影響とを小さく抑制できる観点から、クラウンサイプ40の溝深さDGpの、クラウン細溝24の溝深さHMに対する比(DGp/HM)は、0.30以上であるのが好ましく、0.50以上であるのがより好ましい。同様の観点から、この比(DGp/HM)は、0.85以下であるのが好ましい。
【0088】
このタイヤ2では、クラウンサイプ40はクラウン細溝24の胴部26よりも深いのが好ましい。これにより、このタイヤ2は、クラウンサイプ40からクラウン細溝24の拡大幅部28への切り替わりによる、転がり抵抗への影響と、ウェット性能への影響とを小さく抑制できる。この観点から、クラウン細溝24の胴部26の溝深さHHの、クラウン細溝24の溝深さHMに対する比(HH/HM)は0.20以上0.50以下であり、クラウンサイプ40の溝深さDGpの、クラウン細溝24の溝深さHMに対する比(DGp/HM)は0.30以上0.85以下であり、クラウンサイプ40はクラウン細溝24の胴部26よりも深いのがより好ましい。
【0089】
前述したように、クラウン細溝24の溝深さHMは、クラウン周方向主溝14の溝深さDGcと同じある、又は、クラウン細溝24は、クラウン周方向主溝14よりも浅い。前述したように、クラウンサイプ40は、クラウン周方向主溝14よりも浅い。
【0090】
図3に示されるように、このタイヤ2の内側クラウンサイプ44は、クラウン周方向主溝14の第二頂点14bと、クラウン細溝24の外側縦溝58との間を繋ぐ。外側クラウンサイプ48は、ショルダー周方向主溝12と、クラウン細溝24の内側縦溝56との間を繋ぐ。前述したように、内側縦溝56と外側縦溝58とは周方向に交互に配置される。内側クラウンサイプ44と、外側クラウンサイプ48とは、周方向に交互に配置される。
【0091】
図3に示された内側クラウンサイプ44は、軸方向に対して傾斜する。外側クラウンサイプ48も、軸方向に対して傾斜する。クラウンサイプ40は軸方向に対して傾斜する。クラウンサイプ40は軸方向にのびてもよい。
軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜するクラウンサイプ40はエッジ成分として効果的に機能できる。このタイヤ2はウェット性能の向上を図ることができる。この観点から、クラウンサイプ40は、軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜するのが好ましい。クラウンサイプ40は、軸方向に対して傾斜するのがより好ましい。
【0092】
図3において、角度θucは、内側クラウンサイプ44が軸方向に対してなす角度を表す。角度θucは、内側クラウンサイプ44の傾斜角とも呼ばれる。角度θscは、外側クラウンサイプ48が軸方向に対してなす角度を表す。角度θscは、外側クラウンサイプ48の傾斜角とも呼ばれる。
内側クラウンサイプ44がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、内側クラウンサイプ44の傾斜角θucは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θucは45度以下であるのが好ましい。
外側クラウンサイプ48がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、外側クラウンサイプ48の傾斜角θscは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θscは45度以下であるのが好ましい。
【0093】
図3に示されるように、内側クラウンサイプ44のトレッド面6の端TE側の端は、内側クラウンサイプ44の赤道面側の端よりも周方向において第二方向側に位置する。外側クラウンサイプ48のトレッド面6の端TE側の端は、外側クラウンサイプ48の赤道面側の端よりも周方向において第一方向側に位置する。内側クラウンサイプ44の傾斜の向きは、外側クラウンサイプ48の向きと逆である。
このタイヤ2では、赤道面側からトレッド面6の端TEに向かってクラウン陸部20に力が作用した場合、外側クラウンサイプ48において壁面同士が接触し互いに支え合う。外側クラウン細陸部38が内側クラウン細陸部36の動きを効果的に拘束できる。これにより、クラウン陸部20の剛性が見かけ上高まる。トレッド面6の端TE側から赤道面に向かってクラウン陸部20に力が作用した場合、内側クラウンサイプ44において壁面同士が接触し互いに支え合う。内側クラウン細陸部36が外側クラウン細陸部38の動きを効果的に拘束できる。この場合においても、クラウン陸部20の剛性が見かけ上高まる。いずれの場合も、クラウン陸部20の変形が効果的に抑制される。このタイヤ2は転がり抵抗をさらに低減できる。この観点から、内側クラウン細陸部36におけるクラウンサイプ40の傾斜の向きは、外側クラウン細陸部38におけるクラウンサイプ40の傾斜の向きと逆であるのが好ましい。
【0094】
転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を効果的に抑制できる観点から、2つのクラウン細陸部34のそれぞれに設けられるクラウンサイプ40は軸方向に対して傾斜し、内側クラウンサイプ44の傾斜の向きは外側クラウンサイプ48の傾斜の向きと逆であり、内側クラウンサイプ44がクラウン周方向主溝14の第二頂点14bとクラウン細溝24の外側縦溝58との間を繋ぎ、外側クラウンサイプ48がクラウン細溝24の内側縦溝56とショルダー周方向主溝12とを繋ぐのがより好ましい。
【0095】
前述したように、ショルダー周方向主溝12の内側壁面52及び外側壁面54の傾斜の度合いは周方向において変動する。
ショルダー周方向主溝12の溝底12Tの軌跡LBにおける内側頂点LBuにおいては、内側壁面52の傾斜角θuuは外側壁面54の傾斜角θsuと同じであるか、内側壁面52の傾斜角θuuが外側壁面54の傾斜角θsuよりも大きく、外側頂点LBsにおいては、内側壁面52の傾斜角θusは外側壁面54の傾斜角θssよりも大きいのが好ましい。これにより、ショルダー周方向主溝12の内側壁面52及び外側壁面54がエッジ成分として効果的に機能できる。内側壁面52及び外側壁面54は、摩耗により消失したエッジ成分を補うことができる。内側壁面52及び外側壁面54は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制することに貢献できる。
【0096】
内側壁面52及び外側壁面54が、摩耗によるウェット性能の低下を抑制することに効果的に貢献できる観点から、
図3に示されるように、ショルダー周方向主溝12の溝底12Tの軌跡LBは、ショルダー周方向主溝12の溝口12Mにおける溝幅WGsの中心線MLと、溝口12Mを構成する一対のエッジ12Eのうち、トレッド面6の端TE側のエッジ12Eとの間に位置するのがより好ましい。
【0097】
図8は、
図1に示されたトレッド面6の一部を示す。
図8はショルダー陸部22を示す。このタイヤ2のトレッド4に設けられる2本のショルダー陸部22はそれぞれ、ショルダー横溝62を有する。
【0098】
図8において両矢印WLSで示される長さは、ショルダー陸部22の最大幅である。このタイヤ2のショルダー陸部22では、最大幅WLSの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WLS/TW)は、15%以上25%以下である。
図8において一点鎖線LSMは、ショルダー陸部22の最大幅中心線である。
【0099】
ショルダー横溝62は、ショルダー周方向主溝12とトレッド面6の端TEとの間を繋ぐ。ショルダー横溝62はショルダー陸部22を横断する。
図8に示されたショルダー横溝62では、その赤道面側の端部がトレッド面6の端TE側の端部よりも周方向第二方向側に位置する。ショルダー横溝62は、その赤道面側の端部がトレッド面6の端TE側の端部よりも周方向第二方向側に位置するように、軸方向に対して傾斜する。
【0100】
ショルダー横溝62は、赤道面側に位置する内側ショルダー横溝64と、トレッド面6の端側に位置する外側ショルダー横溝66とを備える。
内側ショルダー横溝64は、ショルダー周方向主溝12と外側ショルダー横溝66との間を繋ぐ。外側ショルダー横溝66は、内側ショルダー横溝64とトレッド面6の端TEとの間を繋ぐ。
【0101】
図9は、
図8のIX-IX線に沿った、内側ショルダー横溝64の断面図である。
図9は、内側ショルダー横溝64の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、内側ショルダー横溝64の断面を示す。外側ショルダー横溝66の断面形状は内側ショルダー横溝64のそれと同じである。内側ショルダー横溝64を例にして、ショルダー横溝62の断面形状が説明される。
【0102】
ショルダー横溝62はその深さ方向にストレートにのびる。ショルダー横溝62は、溝口62Mを含む一対の壁面62Wと、溝底62Tを含む底面62Bとを有する。
図9において両矢印WGyは、ショルダー横溝62の溝口62Mでの溝幅である。両矢印DGyは、ショルダー横溝62の溝深さである。
このタイヤ2のショルダー横溝62の溝幅WGyは1.0mm以上である。
【0103】
このタイヤ2のショルダー横溝62はクラウン細陸部34に設けられるクラウンサイプ40よりも浅い。ショルダー陸部22にショルダー横溝62を設けているにもかかわらず、ショルダー陸部22の剛性が適切に維持される。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図りながら、耐偏摩耗性の向上を図ることができる。この観点から、ショルダー横溝62はクラウンサイプ40よりも浅いのが好ましい。具体的には、ショルダー横溝62の溝深さDGyの、クラウンサイプ40の溝深さDGpに対する比(DGy/DGp)は0.50以下であるのが好ましく、0.30以下であるのがより好ましい。ショルダー横溝62がウェット性能の向上に効果的に貢献できる観点から、この比(DGy/DGp)は0.10以上であるのが好ましい。
【0104】
前述したように、このタイヤ2のショルダー横溝62は、内側ショルダー横溝64と外側ショルダー横溝66とを備える。
図8に示されるように、内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66のそれぞれは、軸方向に対して傾斜する。内側ショルダー横溝64が軸方向にのびるように、ショルダー陸部22が構成されてもよい。外側ショルダー横溝66が軸方向にのびるように、ショルダー陸部22が構成されてもよい。
【0105】
内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66のそれぞれは、エッジ成分として機能する。内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66を有するショルダー横溝62は、ウェット性能の向上に貢献できる。タイヤ2がウェット性能の向上を図ることができる観点から、ショルダー陸部22が、ショルダー陸部22を横断するショルダー横溝62を有し、ショルダー横溝62が、赤道面側に位置する内側ショルダー横溝64と、トレッド面6の端TE側に位置する外側ショルダー横溝66とを備え、内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66のそれぞれが、軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜するのが好ましい。
【0106】
図8において、角度θuyは、内側ショルダー横溝64が軸方向に対してなす角度を表す。角度θuyは、内側ショルダー横溝64の傾斜角とも呼ばれる。角度θsyは、外側ショルダー横溝66が軸方向に対してなす角度を表す。角度θsyは、外側ショルダー横溝66の傾斜角とも呼ばれる。
内側ショルダー横溝64がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θuyは45度以下であるのが好ましい。
外側ショルダー横溝66がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θsyは45度以下であるのが好ましい。
【0107】
図8に示されるように、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyは、外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyよりも大きい。これにより、ショルダー横溝62が全体として、エッジ成分として効果的に機能できる。このタイヤ2は、ウェット性能の向上を効果的に図ることができる。この観点から、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyは、外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyよりも大きいのが好ましい。
【0108】
図8に示されるように、ショルダー陸部22は、周方向に連続してのびるショルダー細溝68を有する。
図10は、
図8のX-X線に沿った、ショルダー細溝68の断面図である。
図10は、ショルダー細溝68の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、ショルダー細溝68の断面を示す。
ショルダー細溝68はその深さ方向にストレートにのびる。ショルダー細溝68は、溝口68Mを含む一対の壁面68Wと、溝底68Tを含む底面68Bとを有する。
図10において両矢印WGhは、ショルダー細溝68の溝口68Mでの溝幅である。両矢印DGhは、ショルダー細溝68の溝深さである。
このタイヤ2のショルダー細溝68の溝幅WGhは1.0mm以上である。
【0109】
このタイヤ2のショルダー細溝68はクラウン細陸部34に設けられるクラウンサイプ40よりも浅い。ショルダー横溝62に加えてショルダー細溝68をショルダー陸部22に設けているにもかかわらず、ショルダー陸部22の剛性が適切に維持される。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図りながら、耐偏摩耗性の向上を図ることができる。この観点から、ショルダー細溝68はクラウンサイプ40よりも浅いのが好ましい。具体的には、ショルダー細溝68の溝深さDGhの、クラウンサイプ40の溝深さDGpに対する比(DGh/DGp)は0.50以下であるのが好ましく、0.30以下であるのがより好ましい。ショルダー細溝68がウェット性能の向上に効果的に貢献できる観点から、この比(DGh/DGp)は0.10以上であるのが好ましい。
【0110】
図8に示されるように、ショルダー細溝68はショルダー横溝62と交差する。これにより、ウェット路面とタイヤ2との間に存在する水が、ショルダー横溝62を通じて効果的に排出される。このタイヤ2はウェット性能の向上を図ることができる。この観点から、ショルダー細溝68はショルダー横溝62と交差するのが好ましい。
【0111】
図8に示されたショルダー細溝68は、内側ショルダー横溝64と外側ショルダー横溝66との境界において、ショルダー横溝62と交差する。内側ショルダー横溝64は、ショルダー周方向主溝12とショルダー細溝68との間を繋ぐ。外側ショルダー横溝66は、ショルダー細溝68とトレッド面6の端TEとの間を繋ぐ。前述したように、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyは、外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyよりも大きい。このショルダー細溝68とショルダー細溝68との組み合わせは、転がり抵抗の低減と、耐偏摩耗性の向上とを図りながら、ウェット性能を向上させることに貢献できる。この観点から、ショルダー細溝68がショルダー横溝62と交差する場合、内側ショルダー横溝64がショルダー細溝68とショルダー周方向主溝12との間を繋ぎ、外側ショルダー横溝66がトレッド面6の端TEとショルダー細溝68との間を繋ぎ、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyが外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyが大きいのがより好ましい。この場合、ショルダー細溝68は、ショルダー陸部22の最大幅中心線LSMよりもトレッド面6の端TE側に位置するのがさらに好ましい。
【0112】
図11は、ショルダー周方向主溝12の断面を示す。この断面は、
図6に示されたショルダー周方向主溝12の断面と同じである。
図11に示された断面は、溝底12Tの内側頂点LBuにおけるショルダー周方向主溝12の断面である。
【0113】
図11において二点鎖線Suは、ショルダー横溝62の溝底62Tを表す。符号UAで示される位置は、溝底62Tに対応する内側壁面52上の位置である。符号UBで示される位置は、溝底62Tに対応する外側壁面54上の位置である。実線TLuは、ショルダー周方向主溝12の溝底12Tを通る、左右のエッジ12Eを結ぶ線分の法線である。
両矢印WUAは、法線TLuから内側壁面52上の位置UAまでの距離である。距離WUAは、位置UAと位置UBとを結ぶ線分に沿って計測される。両矢印WUBは、法線TLuから外側壁面54上の位置UBまでの距離である。距離WUBも、距離WUAと同様、位置UAと位置UBとを結ぶ線分に沿って計測される。
位置UA及び位置UBは、摩耗によりショルダー横溝62が消失し、溝底62Tのみになった際に、ショルダー周方向主溝12の溝口になる部分である。
距離WUAは、ショルダー横溝62が消失した時点での、溝底12Tから内側壁面52までの距離を表す。距離WUBは、ショルダー横溝62が消失した時点での、溝底12Tから外側壁面54までの距離を表す。
【0114】
図12は、ショルダー周方向主溝12の断面を示す。この断面は、
図7に示されたショルダー周方向主溝12の断面と同じである。
図12に示された断面は、溝底12Tの外側頂点LBsにおけるショルダー周方向主溝12の断面である。
【0115】
図12における二点鎖線Ssは、前述の二点鎖線Suと同様、ショルダー横溝62の溝底62Tを表す。符号SAで示される位置は、溝底62Tに対応する内側壁面52上の位置である。符号SBで示される位置は、溝底62Tに対応する外側壁面54上の位置である。実線TLsは、ショルダー周方向主溝12の溝底12Tを通る、左右のエッジ12Eを結ぶ線分の法線である。
両矢印WSAは、法線TLsから内側壁面52上の位置SAまでの距離である。距離WSAは、位置SAと位置SBとを結ぶ線分に沿って計測される。両矢印WSBは、法線TLsから外側壁面54上の位置SBまでの距離である。距離WSBも、距離WSAと同様、位置SAと位置SBとを結ぶ線分に沿って計測される。
位置SA及び位置SBは、摩耗によりショルダー横溝62が消失し、溝底62Tのみになった際に、ショルダー周方向主溝12の溝口になる部分である。この位置SA及び位置SBは、前述の位置UA及びUBとともに、摩耗によりショルダー横溝62が消失し、溝底62Tのみになった際に構成される、ショルダー周方向主溝12の溝口に含まれる。
距離WSAは、ショルダー横溝62が消失した時点での、溝底12Tから内側壁面52までの距離を表す。距離WSBは、ショルダー横溝62が消失した時点での、溝底12Tから外側壁面54までの距離を表す。
【0116】
溝底12Tの内側頂点LBuにおけるショルダー周方向主溝12の断面では、ショルダー横溝62が消失した時点において、溝底12Tから内側壁面52までの距離WUAの、溝底12Tから外側壁面54までの距離WUBに対する比(WUA/WUB)は0.8以上1.2以下であるのが好ましい。また、溝底12Tの外側頂点LBsにおけるショルダー周方向主溝12の断面では、ショルダー横溝62が消失した時点において、溝底12Tから内側壁面52までの距離WSAの、溝底12Tから外側壁面54までの距離WSBに対する比(WSA/WSB)は1.1以上1.7以下であるのが好ましい。
比(WUA/WUB)及び比(WSA/WSB)がそれぞれ、前述した範囲に設定されることにより、ショルダー周方向主溝12の内側壁面52及び外側壁面54が、エッジ成分として効果的に機能できる。内側壁面52及び外側壁面54は、摩耗により消失したエッジ成分を補うことができる。内側壁面52及び外側壁面54は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制することに貢献できる。この観点から、比(WUA/WUB)が0.9以上1.1以下であり、比(WSA/WSB)が1.2以上1.6以下であることがより好ましい。
【0117】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる、重荷重用タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上説明された、耐偏摩耗性の向上を図るとともに、摩耗の進行による外観品質及びトラクション性能の低下を抑制できる技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0119】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・トレッド面
10・・・周方向主溝
12・・・ショルダー周方向主溝
14・・・クラウン周方向主溝
18・・・陸部
20・・・クラウン陸部
22・・・ショルダー陸部
24・・・クラウン細溝
26・・・クラウン細溝24の胴部
28・・・クラウン細溝24の拡大幅部
30・・・胴部26のテーパー部
32・・・胴部26の胴部本体
34・・・クラウン細陸部
36・・・内側クラウン細陸部
38・・・外側クラウン細陸部
40・・・クラウンサイプ
42・・・クラウンブロック
44・・・内側クラウンサイプ
48・・・外側クラウンサイプ
52・・・内側壁面
54・・・外側壁面
56・・・内側縦溝
58・・・外側縦溝
62・・・ショルダー横溝
64・・・内側ショルダー横溝
66・・・外側ショルダー横溝
68・・・ショルダー細溝