(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170102
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】事業特性解析システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0201 20230101AFI20241129BHJP
【FI】
G06Q30/0201
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087076
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江里子
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB01
5L049BB01
(57)【要約】
【課題】対象地域を事業の観点から解析することができるようにした事業特性解析システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】
複数の事業を含む対象地域の事業特性を解析する事業特性解析システム1は、事業種別と当該事業種別に関する少なくとも一つの特徴とを対応付けて記憶する事業種別特性情報131と指定された事業分類用の指標とを用いて、対象地域にある各事業の種別を分類する分類部121と、分類部の分類結果に基づいて、対象地域の事業の特性であるエリア事業特性を算出するエリア事業特性算出部1222と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の事業を含む対象地域の事業特性を解析する事業特性解析システムであって、
事業種別と当該事業種別に関する少なくとも一つの特徴とを対応付けて記憶する事業種別特性情報と指定された事業分類用の指標とを用いて、前記対象地域にある各事業の種別を分類する分類部と、
前記分類部の分類結果に基づいて、前記対象地域の事業の特性であるエリア事業特性を算出するエリア事業特性算出部と、
を備える事業特性解析システム。
【請求項2】
複数の事業を含む対象地域の事業特性を解析する事業特性解析システムであって、
前記対象地域にある各既存事業の属性情報を管理するエリア内事業情報に基づいて、所定位置における指定の事業と前記各既存事業との関連度を示す事業関連度を算出する事業関連度算出部と、
を備える事業特性解析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の前記分類部および前記エリア事業特性算出部と、請求項2に記載の事業関連度算出部とを備える
事業特性解析システム。
【請求項4】
前記エリア事業特性は、前記分類部による分類ごとの、前記対象地域における前記指定の事業による前記エリアの活性度の推定と前記指定の事業と前記既存事業との関連度を推定する情報とを含む
請求項3に記載の事業特性解析システム。
【請求項5】
前記事業関連度は、前記各既存事業の事業規模と前記所定位置から前記各既存事業までの距離とに基づいて算出される
請求項3に記載の事業特性解析システム。
【請求項6】
前記事業規模は、前記各既存事業の従業員数および人気度から算出される
請求項5に記載の事業特性解析システム。
【請求項7】
前記所定位置から前記各既存事業までの距離は、前記新事業の潜在顧客の移動手段に応じて算出される
請求項5に記載の事業特性解析システム。
【請求項8】
前記エリア事業特性算出部により算出されたエリア事業特性と、前記事業関連度算出部により算出された事業関連度とを出力する出力部をさらに備える
請求項3に記載の事業特性解析システム。
【請求項9】
前記各事業は、前記対象地域に商圏が含まれる所定の地域産業であり、前記各事業の従業員は他の事業の潜在顧客として取り扱われる
請求項1に記載の事業特性解析システム。
【請求項10】
コンピュータにより、複数の事業を含む対象地域の事業特性を解析する事業特性解析方法であって、
前記コンピュータは、
事業種別と当該事業種別に関する少なくとも一つの特徴とを対応付けて記憶する事業種別特性情報と指定された事業分類用の指標とを用いて、前記対象地域にある各事業の種別を分類し、
前記分類結果に基づいて、前記対象地域の事業の特性であるエリア事業特性を算出し、
前記対象地域にある各既存事業の属性情報を管理するエリア内事業情報に基づいて、前記対象地域内の所定位置で新事業を開業した場合における、前記各既存事業との関連度を示す事業関連度を算出する
事業特性解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事業特性解析システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の豊かさを考慮した街づくりのため、地域で生活する人に着目し、各地域の特性を算出するシステムが開発されている。例えば、基本属性と生活者意識から当該地域住民を分類し、ペルソナ及び潜在ニーズに応じた提供すべき商品または役務の内容と、その提供方法に関する情報を出力する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各地域の人の豊かさを考慮するためには、需要側の生活者の意識のみではなく、その生活地域に既にある供給側の事業所(例えば、生活するためのスーパー、飲食店、働く場所としての工場など)の特性を明らかにすることも重要であるが、従来技術では、これらの事業所に関して地域の特性情報を解析することができない。
【0005】
本開示は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、対象地域を事業の観点から解析することができるようにした事業特性解析システムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う事業特性解析システムは、複数の事業を含む対象地域の事業特性を解析する事業特性解析システムであって、事業種別と当該事業種別に関する少なくとも一つの特徴とを対応付けて記憶する事業種別特性情報と指定された事業分類用の指標とを用いて、対象地域にある各事業の種別を分類する分類部と、分類部の分類結果に基づいて、対象地域の事業の特性であるエリア事業特性を算出するエリア事業特性算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象地域の事業の特性であるエリア事業特性を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】事業種別を指定された観点にしたがって分類する処理のフローチャート。
【
図8】事業関連度を算出する処理のフローチャート。
【
図9】エリア事業特性を算出する処理のフローチャート。
【
図11】新事業の出店候補地点とその周囲の所定エリアを指定するデータの例。
【
図12】各エリアと当該各エリアにある各事業所との関係を示す説明図。
【
図13】事業種別を分類した結果の例を示すテーブル。
【
図14】分類ごとの統計量である事業の特徴の例を示すテーブル。
【
図15】新事業がパン製造である場合の事業関連度を示すテーブル。
【
図16】新事業が靴販売である場合の事業関連度を示すテーブル。
【
図18】新事業がパン製造の場合のエリア事業特性の算出結果の例を示すテーブル。
【
図19】新事業が靴販売の場合のエリア事業特性の算出結果の例を示すテーブル。
【
図21】出店候補地である所定位置ごとに競合度および活性度を表示する例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、地域社会にある各事業所の観点に基づいて地域社会の事業特性を解析する。本実施形態では、地域社会を理解するための情報を提供することもできる。本実施形態では、対象地域に存在する事業の特性を解析するが、それら各事業は所として地域産業である。地域産業とは、対象の地域を主な商圏とする産業であり、例えば、パンや靴などの小売業、美容室や病院などの対個人サービス業、個人客または中小の事業者を顧客とする金融業などである。本実施形態では、対象地域に存在する地域産業の特性を解析したり、対象地域に新事業を進出させた場合の周囲の地域産業との関係を解析したりすることができる。地域産業の解析は本実施形態の一つの例であり、本実施形態で述べる事業は地域産業に限られない。本実施形態に係る事業特性解析システムは、鉄道会社または不動産事業者などのいわゆるデベロッパーだけでなく、国や県、市町村の自治体などによっても好適に用いられる。
【実施例0010】
図1~
図22を用いて第1実施例を説明する。
図1は、本実施例に係る事業特性解析システム1の全体構成図である。事業特性解析システム1は、複数の事業を含む対象地域の事業特性、および/または、対象地域内に新事業を進出させた場合の周囲の既存事業との関連を算出する。
【0011】
事業特性解析システム1は、少なくとも一つのコンピュータを用いて構成されることができる。事業特性解析システム1を構成するコンピュータは、例えば、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、ユーザインターフェース14、通信インターフェース15を備えており、これら装置11~15は通信線16を介して接続されている。図中、インターフェースを「IF」と略記する。
【0012】
プロセッサ11は、コンピュータプログラムを実行する演算装置である。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)に限らず、GPU(Graphics Processing Unit)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを含んでもよい。
【0013】
主記憶装置12には、例えば、事業種別分類部121を実現するコンピュータプログラムと、事業特性算出部122を実現するコンピュータプログラムと、図示せぬオペレーティングシステムなどが記憶されている。プロセッサ11が主記憶装置12に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、事業種別分類部121および事業特性算出部122が実現される。
【0014】
補助記憶装置13には、各事業についての情報である事業情報130が記憶される。事業情報130には、例えば、各事業の特性を定義する事業種別特性情報131と、対象地域としての特定エリアに存在する各事業所の情報を示すエリア内事業所情報132とが含まれる。
【0015】
ユーザインターフェース14は、通信線18を介して入出力装置17に接続されており、入出力装置17との間で情報を送受信する。入出力装置17は、事業特性解析システム1のユーザが事業特性解析システム1との間で情報を交換するための装置である。入出力装置17は、ユーザが事業特性解析システム1へ情報を入力するための入力部171と、事業特性解析システム1からユーザへ情報を提供するための出力部172を備える。入力部171には、例えば、キーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイス、音声入力装置、視線入力装置がある。出力部172には、例えば、モニタディスプレイ、プリンタ、合成音声装置がある。入力部171と出力部172とは一つの装置に一体化されてもよいし、それぞれ別々に構成されてもよい。入出力装置17は、例えば、眼鏡型端末、ゴーグル型端末、時計型端末、腕輪型端末などのように、ウェアラブル端末として構成されてもよい。さらに、事業特性解析システム1への情報の入出力は、いわゆる仮想空間で行うこともできる。ユーザは、仮想空間の仮想キーボードなどから事業特性解析システム1へ指示を与えることができる。事業特性解析システム1は、仮想空間の仮想ディスプレイに情報を表示させることもできる。
【0016】
通信インターフェース15は、通信ネットワークCNを介して、例えば外部サーバ2および外部システム3と通信する装置である。外部サーバ2としては、例えば、都道府県や市町村の統計データを提供するサーバ、地図データを提供する地図サーバ、気象データを提供する気象情報サーバ、各交通機関の時刻表データを提供するサーバ、移動経路を自動計算して所要時間などを回答するサーバ、マーケティングデータを提供するサーバ、不動産価格を提供するサーバ、各市町村の都市計画などを公表するサーバなどがある。事業特性解析システム1は、例示したこれらのサーバの中から必要なサーバを適宜使用することができる。外部サーバ2の提供するデータの一部を補助記憶装置13に保持し、適宜最新データに同期させてもよい。
【0017】
外部システム3は、例えば、ネットワークストレージシステム、各種の計算を実行する計算システムなどがある。事業特性解析システム1は、事業特性の解析に必要な計算の少なくとも一部を外部システム3に委ね、その計算結果を外部システム3から受け取ってもよい。
【0018】
事業特性解析システム1は、記憶媒体MMと接続可能である。記憶媒体MMは、例えば、メモリ装置、ハードディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、磁気テープ装置などのように構成され、コンピュータプログラムおよびデータを非一時的に記憶することができる。記憶媒体MMは、事業特性解析システム1へコンピュータプログラムおよびデータを転送して記憶させることができる。事業特性解析システム1から記憶媒体MMへコンピュータプログラムおよびデータを転送して記憶させることもできる。事業特性解析システム1の機能を実現するコンピュータプログラムを記憶媒体MMへ格納し、その記憶媒体MMを他のコンピュータに接続し、記憶媒体MMに格納されたコンピュータプログラムを他のコンピュータにインストールすることにより、他のコンピュータを事業特性解析システム1として機能させることができる。
【0019】
図2は、事業特性解析システム1の機能構成を示す。入力部171から入力された所定情報は、事業種別分類部121へ引き渡される。事業種別分類部121は、所定情報と事業種別特性情報131を用いて、エリア内の事業種別を分類する。事業種別分類部121での分類結果と所定情報は、事業特性算出部122へ与えられる。事業特性算出部122は、事業関連度を算出する事業関連度算出部1221と、エリア事業特性を算出するエリア事業特性算出部1222のいずれか一方または両方を備える。事業特性算出部122は、所定情報と事業種別分類部121による分類結果とエリア内事業所情報132とを用いて、事業関連度および/またはエリア事業特性を算出する。事業特性算出部122での計算結果は、出力部172を介してユーザへ提供される。
【0020】
所定情報には、例えば、判断対象の事業の種別、判断対象の事業所の位置、既存事業との類似度を算出するための指標、判断対象となる特定エリアを指定する情報がある。これは、事業特性算出部122が事業関連度算出部1221とエリア事業特性算出部1222の両方を持つ場合の例である。
【0021】
事業特性算出部122がエリア事業特性算出部1222のみ持つ場合、または、事業特性算出部122が事業関連度算出部1221とエリア事業特性算出部1222のうちエリア事業特性算出部1222のみを実行させる場合、所定情報には、既存事業との類似度を算出するための指標と、特定エリアを指定する情報とが含まれる。
【0022】
事業特性算出部122が事業関連度算出部1221のみ持つ場合、または、事業特性算出部122が事業関連度算出部1221とエリア事業特性算出部1222のうち事業関連度算出部1221のみを実行させる場合、所定情報には、判断対象の事業の種別と、判断対象の事業所の位置と、類似度を算出する指標とが含まれる。
【0023】
事業関連度算出部1221では、エリア内事業所情報132を使用するが、あらかじめ特定の地域を指定する必要はない。例えば、事業所の位置を中心点として半径L[km]以内の範囲、または、道路網の長さがL[km]以内の範囲と設定してから、位置と距離とで、特定エリア内の事業所との関連を算出できるためである。
【0024】
事業特性算出部122は、上述の通り、事業関連度算出部1221とエリア事業特性算出部1222のいずれか一つまたは両方を備えることができる。エリア事業特性算出部1222によって、例えば、ある特定エリア(対象地域)が商業の活発な地域であるか知ることができる。そして、事業関連度算出部1221によって、その特定エリアの既存事業との競合の可能性を予測できる。本実施例では、事業関連度算出部1221とエリア事業特性算出部1222とが協調動作することができる。これにより、本実施例では、例えば、商業の活発な特定エリアであって、かつ既存事業との競争の少ない特定エリアの情報をユーザへ提供でき、新事業の事業所の進出に関するユーザ判断を客観的に支援することができる。
【0025】
なお、エリア事業特性算出部1222で使用される特定エリアを指定する情報と、事業関連度算出部1221で使用される位置情報とは完全に一致してもよいし、一部不一致でもよい。およその事業特性がわかれば、ユーザの判断を支援できるためである。
【0026】
図3は、事業種別特性情報131の例である。事業特性とは、各事業の特徴を示す。事業種別特性情報131には、事業の種別1310ごとに、各事業間の類似度を算出可能な特徴項目1311~1315が設定されている。
【0027】
例えば、項目「食品関連」1311は、事業が食品の製造または販売に関する事業であることを示す。項目「工場製造」1312は、事業が工場で製造される割合を示す。項目「店舗販売」1313は、販売する商品(製品。以下同じ。)が店頭で販売されるか否かを示す。項目「顧客」1314は、事業の顧客が個人または法人のいずれを対象とするかを示す。項目「利用頻度」1315は、例えば所定期間での商品販売の頻度を示す。
図3に挙げた項目以外の項目、例えば、「インターネットを介した通販の程度」、「月別売上予想」「平均購入単価」、「商圏の広さ」などを用いることもできる。
【0028】
図4は、特定エリア内にある各事業所の位置などの情報を示すエリア内事業情報の例である。エリア内事業所情報132は、例えば、管理番号1320、事業種別1321、東西方向の長さ1322、南北方向の長さ1323、従業員数1324、人気度1325を含む。
【0029】
管理番号1320は、特定エリア内の各事業に割りあてられた連続番号である。事業種別1321は、特定エリアに存在する各事業所の事業の種類を示す。事業種別1321には、例えば、「パン製造」、「洋菓子製造」、「靴製造」、「靴販売」、「スポーツ用品販売」などがある。これら以外に例えば、「コンビニエンスストア」、「スーパーマーケット」、「衣料品販売」、「レストラン」、「蕎麦屋」、「ラーメン屋」、「美容室」、「理容室」、「ダンス教室」、「スポーツ教室」なども、事業種別1321に用いることができる。
【0030】
東西方向の長さ1322および南北方向の長さ1323は、対象地域としての特定エリア内のどこに存在する事業所であるかを示す。
図5のマップに示すように、例えば、東西6キロメートル、南北6キロメートルのエリアのどこにどの種別の事業所が存在するかを表示することができる。この事業種別ごとの事業所配置を示すマップにより、特定エリアのどこにどのような種別の事業所が存在するかをユーザは簡単に把握できる。
【0031】
従業員数1324は、事業所で働く従業員の数である。人気度1325は、事業所の人気度である。事業所の人気度1325は、例えば、顧客吸引力、集客力、混雑率などと呼び変えてもよい。
【0032】
事業特性解析システム1が解析対象とする事業が地域との関連の高い地域産業である場合、特定エリア内の各事業所で働く従業員は、特定エリアまたは近隣エリアの住人である可能性が高い。したがって、各事業所で働く従業員は単なる労働力ではなく、他の事業所にとっての消費者でもある。さらに、人通りの多さは、そのエリアに活気と安心感を与え、消費行動を促す。したがって、特定エリアの各事業所での従業員は、そのエリア全体の集客と宣伝を担う役割も果たす。そこで、本実施例では、従来技術のように所定地域内の住民を生活者(消費者)としてのみ捉えるのではなく、エリア内の各事業所の従業員を労働者、消費者、集客宣伝員として多面的に捉えて解析する。ただし、本実施例の事業特性解析システム1はこのような効果を奏する場合に限られない。本実施例の範囲は特許請求の範囲の記載により定まる。
【0033】
図6は、事業種別を指定された観点にしたがって分類する処理S10を示すフローチャートである。例えば、ユーザがデベロッパーまたは不動産事業者などである場合、新事業の種別と新事業の事業所の位置(進出先候補地点)を入力部171から事業特性解析システム1へ入力する。さらに、ユーザは、
図3で説明した事業種別特性情報131の各特徴項目1311~1315中から所望の特徴項目を少なくとも一つ選択する。
【0034】
事業種別分類部121は、ユーザにより選択された特徴項目を、事業種別を分類するための観点となる指標として用いる(S11)。すなわち、ユーザにより選択される特徴項目は、「事業分類用の指標」として用いられる。
【0035】
事業種別分類部121は、事業種別特性情報131に記載された各事業種別を、選択された指標(特徴項目)に基づいてクラスタリング(分類)する(S12)。以下例えば、新事業が「パン製造」であり、事業種別を分類する指標として「食品関連」と「店舗販売」が選択された場合を説明する。
【0036】
事業種別分類部121は、ステップS11で選択された指標「食品関連」および「店舗販売」を用いて各事業種別をクラスタリングし、事業種別間の類似度を算出して分類する(S12)。この場合、(食品関連、店舗販売)=(1、1)が分類1、(1、0)が分類2、(0、0)が分類3、(0、1)が分類4となる。なお、クラスタリングには、階層型クラスタリングまたはK-meansなどを使用するが、この限りではない。
【0037】
事業種別分類部121は、クラスタリング後に、クラスタごとに(分類ごとに)、各指標の統計値を算出し、クラスタごとの特性を算出する(S13)。なお、この特性の算出には、ステップS11で選択された指標以外の指標、例えば、「工場製造」「顧客」「利用頻度」も対象とされる。
【0038】
図13は、分類の結果を示す。
図14は、分類ごとの特徴(分類特徴)を示す。これらの算出結果は、エリア事業特性の算出結果として、クラスタごとのエリアの事業特性(例えば、各クラスタに属する事業種別の従業員数)を示す際に使用される。すなわち、そのクラスタがどういう特徴をもったクラスタなのかを示す際に使用される。
【0039】
図13に示す分類結果134は、例えば、職種1340、各特徴項目1341~1345、分類番号1346を含む。項目「食品関連」1341、項目「工場製造」1342、項目「店舗販売」1343、項目「顧客」1344、項目「利用頻度」1345は上述の通りであるため、これ以上の説明を省略する。特定エリアにある既存事業の種別は、上記の例の場合、「分類1」、「分類2」、「分類3」、「分類4」の4つに分類される。パン製造と洋菓子製造は、共に工場で製造されることが大きく、かつ店頭で販売されることが多いため、「分類1」に属する。みそ製造と冷凍食品製造は、いずれも食品関連であるが店舗販売されることが少ないため、「分類2」に属する。靴販売とスポーツ用品販売は、食品関連ではないが、共に店頭で販売されることが多いため、「分類4」に属する。靴製造は、食品関連でもなく店頭で販売もされないため、「分類3」に属する。
【0040】
図14に示す各分類の特徴は、分類番号1350と、特徴項目1351~1355とを含む。特徴項目1351~1355は、
図3で述べた特徴項目1311~1315と同様のため説明を省略する。
図14の分類特徴は、分類ごとの特徴を示す。
【0041】
図17は、エリア事業特性の例を示すテーブル137である。このテーブル137は、分類種別1370ごとに、各候補地点のサブエリア内の従業員総数1371~1373を算出する。
【0042】
図18は、新事業がパン製造の場合のエリア事業特性の算出結果の例を示すテーブル138(1)である。このテーブル138(1)では、エリア活性度(サブエリアの活性度)と競合度とが、候補地点1381~1383ごとに算出されている。
図19は、新事業が靴販売の場合のエリア事業特性の算出結果の例を示すテーブル138(2)である。
【0043】
図20は、
図13,
図14の算出結果をレーダーチャートとして表示する画面G1の例である。エリア事業特性をグラフィカルに示す画面G1は、例えば、分類番号表示部GP11、分類特徴のレーダーチャート表示部GP12、エリア事業特性GP13を含む。分類特徴のレーダーチャート表示部GP12は、上述した特徴項目1351~1355を頂点とする五角形のレーダーチャートを表示する。五角形の外側に行くほど数値が大きい。一番上の頂点の特徴項目は「食品関連」、以下右回りに「工場製造」、「店舗販売」、「顧客」、「利用頻度」である。
【0044】
図6に戻る。事業種別分類部121は、判断対象の事業(新事業)が「パン製造」の場合、パン製造が属する分類1に属する他の事業種別に対して、「関連事業ラベル」を設定する(S14)。ここでは、「パン製造」に関連する事業種別して「洋菓子製造」が関連事業であるとして抽出される。関連事業ラベルとは、判断対象の事業と競合しうる事業種別であることを示す情報である。なお、判断対象事業が「靴製造」の場合、靴製造が属する分類4に属する他の事業種別に「関連事業ラベル」が設定される。「靴製造」に関連する事業種別として「スポーツ用品販売」が抽出される。関連事業ラベルは、図示を省略するが、
図4に示すエリア内事業所情報132に設定される。
【0045】
図7は、事業特性を算出する処理S20のフローチャートである。事業特性算出部122は、事業種別分類部121による分類結果と、入力部171から入力された情報とを受領し、エリア内事業所情報132から新事業の候補地点に関するサブエリアを選択する(S21)。
【0046】
サブエリアとは、対象地域である特定エリア内に含まれるエリアである。サブエリアの大きさは固定値でもよいし、適宜変更されてもよい。サブエリアの大きさは、例えば商圏の大小などに応じて設定されてもよい。サブエリアの大きさは、事業種別ごとに設定されてもよい。ここでは、例えば、エリア内の3つの地点(A地点,B地点,C地点)が新事業の事業所が設けられる候補地点として指定された場合を説明する。サブエリアは、例えば各候補地点A,B,Cを中心とする半径1.5キロメートルの広さの領域として選択される(S21)。
【0047】
事業特性算出部122は、各サブエリアに存在する既存事業についての情報をエリア内事業所情報132から抽出する(S22)。
図11は、ユーザにより指定された各候補地点1330と、各候補地点に対応するサブエリアの範囲1331,1332とを示すテーブル133である。
図12は、
図11のサブエリアと既存事業の配置関係とを示すマップである。例えば、東西方向2.5キロメートル、南北方向1.5キロメートルの交差する位置にある候補地点Aのサブエリアは、候補地点Aを中心とする半径1.5キロメートルの領域である。このサブエリアには、洋菓子製造、パン製造、靴販売といった既存事業所が存在する。候補地点Bは、東西方向1.5キロメートル、南北方向4.5キロメートルの交差する位置にあり、そのサブエリアには洋菓子製造の既存事業所が1つ存在する。候補地点Cは、東西方向5キロメートル、南北方向5キロメートルの交差する位置にあり、そのサブエリアには、靴製造とスポーツ用品販売の既存事業所が一つずつ存在する。
【0048】
なお、対象地域および候補地点の指定方法(選択方法)は、上述の方法に限らない。対象地域を複数のブロックに分けて、ブロック番号で指定してもよい。または、モニタディスプレイに表示させた対象地域のマップ上で、候補地点の位置をマウスなどで指定することもできる。住所の少なくとも一部または郵便番号の少なくとも一部などの、マップ上の位置を特定可能な情報を用いて、候補地点またはサブエリアを指定してもよい。標高、メインストリートに沿った範囲、歩道および自転車道の整備された範囲、公園から近い範囲などの少なくとも一つ以上の地点抽出指標から自動的に候補地点を算出し、算出された候補地点を事業特性算出部122に入力してもよい。
【0049】
図7に戻る。事業特性算出部122は、事業関連度算出部1221を用いて、判断対象の事業と関連事業との関連を示す事業関連度を算出させる(S23)。事業関連度の算出方法は、
図8で後述する。
【0050】
事業特性算出部122は、エリア事業特性算出部1222を用いて、「対象地域」に含まれるサブエリアのエリア事業特性を算出させる(S24)。
【0051】
事業特性算出部122は、指定された全ての候補地点について、事業関連度およびエリア事業特性を算出したか判定する(S25)。計算していない候補地点がある場合(S25:NO)、ステップS21へ戻る。全ての候補地点について計算が終了すると(S25:YES)、本処理を正常に終了する。
【0052】
図8は、事業関連度を算出する処理S23の詳細を示すフローチャートである。事業関連度算出部1221は、エリア内事業所情報132から関連事業ラベルの設定された既存事業所のデータを取得する(S231)。取得したデータの総数をNとする。
【0053】
事業関連度算出部1221は、変数Iに初期値1を設定する(S232)。事業関連度算出部1221は、変数Iがデータ取得数Nに達するまで(S233:YES)、判断対象の新事業と既存の関連事業iとの距離と、関連事業iの事業規模とを用いて、事業関連度Yiを算出する(S234)。事業関連度算出部1221は、算出された事業関連度Y1~YNを合計して事業関連度を得る(S235)。
【0054】
例を挙げて説明する。事業関連度算出部1221は、判断対象事業((1)パン製造)と関連事業(分類1のパン製造と洋菓子製造)との関連度を算出するため、サブエリア内で抽出された事業種別のうち、靴販売以外のパン製造および洋菓子製造と判断対象事業との関連度を算出する。
【0055】
事業関連度は、例えば、事業規模を候補地点から既存事業所までの距離で割った値として算出できる(事業関連度=事業規模/候補地点から既存事業所までの距離)。事業規模は、例えば、従業員数と人気度から算出することができる(事業規模=α×従業員数+β×人気度)。本実施例では、係数αは「5」、係数βは「1」として計算する。
【0056】
事業関連度の算出式は、上述の例に限らないが、上述の算出式を用いた結果を
図15に示す。
図15は、新事業がパン製造である場合の、事業関連度の計算結果を示すテーブル136(1)の例である。パン製造をA地点で行う場合、番号1360が「2」の事業関連度は「99」、番号1360が「4」の事業関連度が「120」となるため、事業関連度の合計は「219」となる。
【0057】
図16は、新事業が靴販売である場合の事業関連度を示すテーブル136(2)である。
図15で述べたと同様に、各候補地点での事業関連度が算出される。
【0058】
エリア事業特性算出部1222では、特定のサブエリア(例えばA地点から半径1.5キロメートル以内)のエリア事業特性を算出する。エリア事業特性は、例えば、特定のサブエリア内のクラスタごとの従業員数の合計(これは、エリアの活性度(需要を示す一つ)を評価するために使用している)しているが、算出方法はこの限りではない。
【0059】
パン製造をA地点で開始する場合、従業員数の合計は、分類1が「20」(#2)+「8」(#4)=28人、分類2と分類3はともに0人、分類4は100人(#7)となる。したがって、A地点のサブエリアで働く従業員の総数は128人となる。
【0060】
同様の処理を、他の候補地点B,Cでも実施し、事業関連度算出部1221での算出結果と、エリア事業特性算出部1222での算出結果との2つのデータをプロットしてユーザへ提供する。
【0061】
図21は、新事業としてのパン製造を各候補地点A,B,Cで実施する場合の、エリア活性度(サブエリアの活性度)と競合度との関係を示す。横軸はエリア活性度を示し、縦軸は競合度を示す。エリアの活性度は、「対象地域における新事業の活性化を予測する情報」の例である。競合度は、「新事業と既存事業との競合の可能性を予測する情報」の例である。
【0062】
なお、事業との関連度を示す事業関連度を競合度として用い、サブエリア内の従業員の総数をそのサブエリアの活性度として採用しているが、これに限定されない。例えば、車両または自転車などの交通量などの他の観点を採用してもよい。
【0063】
図21に示すグラフは出力例の一つであり、必ずしもこのグラフをユーザへ提供する必要はないが、
図21に示すグラフをユーザへ提供することにより、出店予定の各候補地点の優劣についてのユーザ判断を支援することができる。例えば、
図21の例では、ユーザは、B地点と同程度の競合度ではあるが、エリア活性度はC地点よりも高いA地点を、パン製造の事業所の出店先として選択することができる。
【0064】
図22は、新たに靴販売の事業所を出店する際の解析結果を示すグラフである。
図22の例では、ユーザは、エリア活性度は中程度あるが競合度の少ない地点Bが出店先候補として有利であると判断することができる。なお、上述したユーザ判断は、理解のための例示であって、常にそのように判断される訳ではない。候補地点の地価、階数、道幅の広さ、隣接する他の事業所の種別などの他の情報(他の観点)を総合的に考慮して、ユーザは新事業の出店先を検討する。事業特性解析システム1は、ユーザが出店先の検討材料にする地価などの参考情報の少なくとも一部を、外部サーバ2または外部システム3から取得して、ユーザへ提供することもできる。
【0065】
図9は、エリア事業特性を算出する処理S30の例を示す。上述のように、エリア事業特性算出部1222は、分類ごとに、従業員総数、エリア活性度、競合度に関するデータの統計値を算出する(S31)。
【0066】
図10は、出力部172からユーザへ解析結果などの情報を提供する処理S40の例を示す。
図20~
図22で説明したように、事業特性解析システム1は、ユーザの判断を支援するためのマップなどの情報画面を生成し、出力部172からユーザへ提供させる(S41)。
【0067】
このように構成される本実施例によれば、ユーザは、ある地域内の事業の全体的傾向または特性を容易に把握することができる。事業特性解析システム1は、ユーザが新事業の出店計画を立案する際の判断を客観的に支援することができる。
【0068】
本実施例の事業特性解析システム1は、事業関連度算出部1221とエリア事業特性算出部1222の両方を備えるため、対象エリアをエリア全体として把握しつつ、エリア内のサブエリアで新事業を出店する歳の事業環境も細かく把握することができ、ユーザの使い勝手が向上する。
【0069】
「エリア事業特性」としてのエリア事業特性は、エリア活性度と競合度の両面から解析されるため、ユーザは新事業の出店先を適切に判断できる。競合となる既存事業所がないからといって新事業の出店に適しているとは限らず、単に商圏内の消費者が少なすぎて既存事業所が過去に撤退した可能性もあるためである。
【0070】
事業特性解析システム1は、各既存事業所の事業規模と指定された候補地点から各既存事業所までの距離とに基づいて事業規模を算出するため、既存事業所の影響力を地理上の距離に応じて正確に把握することができる。例えば、候補地点から比較的離れた場所の既存事業所であっても、従業員数が大きかったり、人気度が高かったりする事業所の場合、候補地点に出店予定の新事業に対する影響は大きい。これに対し、小さくて人気のない既存事業所であっても、新事業所のすぐ近くにある場合は、新事業に与える影響は大きいと考えられる。新事業所と既存事業所とは、距離に応じた影響を与え合う。顧客を奪い合う関係になるか、あるいは同種の事業が集中することで相乗効果を発揮する関係になるかは、他の観点から検討することもできる。
【0071】
事業特性解析システム1では、「所定位置」としての候補地点から既存事業所までの距離を、新事業の潜在顧客が用いる移動手段に応じて算出することができる。例えば、顧客が徒歩で訪れて商品を購入する場合、顧客の移動手段は徒歩であるため、新事業所と既存事業所との距離は、徒歩で移動する場合の距離として算出される。地図上では一見近くに見えても、歩道橋や橋などを渡らないと移動できない場合、移動経路が長くなる。これに対し、顧客が乗用車などの車両を用いて移動する場合、新事業所と既存事業所の間の距離は、車両で移動する場合の距離として算出される。
実施例2を説明する。実施例2では、実施例1との相違を中心に述べる。事業特性解析システム1は、鉄道会社または不動産事業者などのいわゆるデベロッパーだけでなく、国や県、市町村などの自治体、施策を実行する行政組織においても好適に使用することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されず、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換することが可能である。さらに、各実施例は、明らかに矛盾しない限り、適宜組み合わせることができる。
なお、SNSまたは特許出願データベースなどから課題を抽出したり、foundationモデルなどを使ってニーズを生成したりしてもよい。交通手段および人流から、生活者(事業者・住民情報)の嗜好を特定してもよい。事業特性解析システムで解析された事業の配置後の需要予測を実施してもよい。SNSのデータを用いることで、店舗や施設の利用者の感情を分析し、その結果を解析結果に加えることもできる。
なお、判断対象の事業(新事業)と関連事業との距離と、関連事業の事業規模だけでなく、事業の相乗効果の有無と、関連事業の営業年数も用いて、事業関連度を算出してもよい。これにより例えば、ユーザは、競合度とエリア活性度だけでなく、相乗効果を期待しうる候補地点を新事業の出店先として選択できる。
さらに、競合度、エリア活性度だけでなく、関連事業の営業年数も考慮して、新事業の出店先を選択してもよい。例えば、営業年数の短い関連事業の場合は、新しい店舗と新しい商品を備える可能性があり、競合としての影響力が強いと考えられる。一方、営業年数の長い関連事業の場合は、固定客に長く愛されており、新事業が食い込む余地が少ないと考えることもできる。