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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170104
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ドレン処理装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20241129BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F02M37/00 331A
B63H21/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087078
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 直也
(57)【要約】
【課題】液化ガス燃料のドレンから油成分を分離して除去することができるドレン処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様であるドレン処理装置は、舶用内燃機関から排出される液化ガス燃料と油成分とを含有するドレンを受け入れて収容する容器と、前記容器の内部で前記ドレンから蒸発した前記液化ガス燃料の気化ガスを、前記容器の外部へ排出するガス出口管と、を備える。前記ドレンは、前記液化ガス燃料の蒸発によって前記気化ガスと前記油成分とに分離される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用内燃機関から排出される液化ガス燃料と油成分とを含有するドレンを受け入れて収容する容器と、
前記容器の内部で前記ドレンから蒸発した前記液化ガス燃料の気化ガスを、前記容器の外部へ排出するガス出口管と、
を備え、
前記ドレンは、前記液化ガス燃料の蒸発によって前記気化ガスと前記油成分とに分離される、
ことを特徴とするドレン処理装置。
【請求項2】
前記容器の内部に収容された前記ドレンを加熱する加熱部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のドレン処理装置。
【請求項3】
前記容器の内部の温度または圧力を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果をもとに、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了したか否かを判断し、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了するまで前記ドレンを加熱するように前記加熱部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のドレン処理装置。
【請求項4】
前記容器の内部をパージするためのパージガスを前記容器の内部へ供給するパージ部をさらに備え、
前記ガス出口管は、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了した状態にある前記容器の内部に残留する前記気化ガスを、前記パージガスとともに前記容器の外部へ排出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のドレン処理装置。
【請求項5】
前記容器の内部の温度または圧力を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果をもとに、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了したか否かを判断し、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了した場合に前記容器の内部をパージするように、前記パージ部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載のドレン処理装置。
【請求項6】
前記気化ガスとの分離によって前記容器の内部に貯留された前記油成分の液面レベルを検出するレベル検出部と、
前記容器の外部へ前記油成分を排出する油成分排出管と、
前記油成分排出管を開閉する排出弁と、
を備え、
前記排出弁は、検出された前記液面レベルが所定の基準レベル以下である場合、前記油成分排出管を閉状態にし、検出された前記液面レベルが前記基準レベルを超過する場合、前記油成分排出管を開状態にする、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のドレン処理装置。
【請求項7】
前記容器の内部の温度または圧力を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果をもとに、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了したか否かを判断し、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了した場合に前記油成分の液面レベルを検出するように、レベル検出部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載のドレン処理装置。
【請求項8】
前記容器は、検出された前記液面レベルが前記基準レベル以下である場合、前記舶用内燃機関から新たに前記ドレンを受け入れる、
ことを特徴とする請求項7に記載のドレン処理装置。
【請求項9】
検出された前記液面レベルが前記基準レベルを超過したことを報知する報知部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項6に記載のドレン処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用内燃機関に適用されるドレン処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、船舶の分野においては、二酸化炭素の排出量を削減するために、従来の化石燃料を代替する代替燃料として液化ガス燃料を適用可能な舶用内燃機関が開発されつつある。ここでいう液化ガス燃料とは、例えばアンモニア、液化石油ガス(LPG)または液化天然ガス(LNG)等、化石燃料に比べて燃焼時における二酸化炭素の排出量が少ない燃料である。
【0003】
このような舶用内燃機関のシリンダには、燃焼室に通じる燃料噴射弁が設けられ、燃料噴射弁には、化石燃料用ポンプと液化ガス燃料用ポンプとが、それぞれ個別の配管(噴射管)を介して接続されている。化石燃料および液化ガス燃料は、各ポンプの作用により、必要に応じて燃料噴射弁から燃焼室内に噴射される。上記各ポンプとしては、例えば、作動油の圧力を利用して油圧ピストンが油圧シリンダの内部で駆動(摺動)する油圧式ポンプが用いられる。一般に、油圧式ポンプにおいては、油圧シリンダと油圧ピストンとの摺動部位に潤滑油が供給され、これにより、油圧シリンダの内部における油圧ピストンの円滑な摺動が確保される。特に、液化ガス燃料用ポンプにおいては、油圧シリンダと油圧ピストンとの隙間から液化ガス燃料が漏洩することを防止するために、油圧シリンダと油圧ピストンとの間にシール油が形成されている。
【0004】
また、船舶には、液化ガス燃料を舶用内燃機関へ供給するための燃料供給システムが搭載されている。燃料供給システムは、一般に、舶用内燃機関の液化ガス燃料用ポンプに通じる循環型の配管や供給ポンプ等の設備を備える。燃料供給システムは、供給ポンプの作用により、循環型の配管を通じて舶用内燃機関との間で液化ガス燃料を循環させつつ、舶用内燃機関の運転に必要な量の液化ガス燃料を液化ガス燃料用ポンプへ供給する。燃料供給システムから供給された液化ガス燃料は、液化ガス燃料用ポンプから噴射管を介して燃料噴射弁に圧送され、当該燃料噴射弁から舶用内燃機関の燃焼室内へ噴射される。
【0005】
舶用内燃機関は、上記のように燃焼室内へ噴射された液化ガス燃料を消費(専焼または化石燃料と混焼)して、船舶の推進力を発生させる。また、舶用内燃機関は、化石燃料用ポンプの作用によって燃料噴射弁から燃焼室内へ噴射された化石燃料のみを燃焼(専焼)して、船舶の推進力を発生させる場合もある。この場合、液化ガス燃料用ポンプ、噴射管および燃料噴射弁の各内部の液化ガス燃料は、舶用内燃機関の燃焼燃料として使用されない。このため、当該液化ガス燃料は、舶用内燃機関から燃料供給システムへ戻され、その後、燃料供給システムから除害装置へ排出される。例えば、液化ガス燃料用ポンプおよび噴射管の各内部の液化ガス燃料は、窒素ガスの導入により、これらの各内部から除去され、ドレンとして、上記循環型の配管から燃料供給システムを介して除害装置へ排出される。また、燃料噴射弁内の液化ガス燃料は、噴射管等の配管を介して燃料供給システムから除害装置へ排出される。上記のように舶用内燃機関から排出された液化ガス燃料のドレンは、除害装置によって除害される。
【0006】
ここで、液化ガス燃料用ポンプにおいては、上述したように油圧シリンダと油圧ピストンとの間にシール油や潤滑油が存在するため、これらシール油や潤滑油が液化ガス燃料に混ざる場合がある。また、燃料噴射弁の内部には、上述したように化石燃料および液化ガス燃料が供給されるため、燃料噴射弁からドレンとして排出される液化ガス燃料には、化石燃料が混ざる場合がある。このようにシール油や潤滑油、或いは化石燃料等の油成分が混ざった液化ガス燃料のドレンが上記循環型の配管を通じて燃料供給システムおよび除害装置へ送出されてしまうと、当該ドレン中の油成分により、燃料供給システムおよび除害装置の劣化や故障を招来する可能性がある。したがって、当該ドレンが燃料供給システムや除害装置へ送出される前に、当該ドレンから油成分を除去する必要がある。
【0007】
なお、液化ガス燃料のドレンから油成分を除去する従来技術としては、例えば、繊維状活性炭が充填された吸着塔内に液化ガス燃料のドレンを導入して、当該ドレン中の油成分を繊維状活性炭に吸着させ、これにより、当該ドレンから油成分を除去する手法(吸着法)が開示されている(特許文献1参照)。その他に、液化ガス燃料のドレンから油成分を除去する従来技術としては、例えば、容器内のフィルタにドレンを通して当該ドレンを液化ガス燃料と油成分とに分離する手法(濾過法)や、沈殿槽内にドレンを貯留し、当該ドレンを沈殿によって液化ガス燃料と油成分とに分離する手法(沈殿法)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3811580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の吸着法または濾過法では、吸着塔内の繊維状活性炭や容器内のフィルタを交換する等のメンテナンスを定期的に行う必要があり、このメンテナンスの際に、繊維状活性炭またはフィルタ、あるいは吸着塔内または容器内に付着した液化ガス燃料と接触する可能性がある。当該液化ガス燃料は、常温常圧下において気化ガスを発生させる有毒性または可燃性の液体燃料であるから、上記メンテナンスには危険が伴うという問題がある。
【0010】
また、上述した沈殿法では、ドレンを収容する大容積の沈殿槽が必要であり、船舶内という限られた空間内において、当該大容積の沈殿槽の設置スペースを確保することは困難である。さらには、船舶の航行時の揺動に伴って沈殿槽が揺動することから、ドレンを沈殿法によって液化ガス燃料と油成分とに分離するために必要な静的環境を確保することが困難である。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、液化ガス燃料のドレンから油成分を分離して除去することができるドレン処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るドレン処理装置は、舶用内燃機関から排出される液化ガス燃料と油成分とを含有するドレンを受け入れて収容する容器と、前記容器の内部で前記ドレンから蒸発した前記液化ガス燃料の気化ガスを、前記容器の外部へ排出するガス出口管と、を備え、前記ドレンは、前記液化ガス燃料の蒸発によって前記気化ガスと前記油成分とに分離される、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、前記容器の内部に収容された前記ドレンを加熱する加熱部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、前記容器の内部の温度または圧力を検出する検出部と、前記検出部の検出結果をもとに、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了したか否かを判断し、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了するまで前記ドレンを加熱するように前記加熱部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、前記容器の内部をパージするためのパージガスを前記容器の内部へ供給するパージ部をさらに備え、前記ガス出口管は、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了した状態にある前記容器の内部に残留する前記気化ガスを、前記パージガスとともに前記容器の外部へ排出する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、前記容器の内部の温度または圧力を検出する検出部と、前記検出部の検出結果をもとに、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了したか否かを判断し、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了した場合に前記容器の内部をパージするように、前記パージ部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、前記気化ガスとの分離によって前記容器の内部に貯留された前記油成分の液面レベルを検出するレベル検出部と、前記容器の外部へ前記油成分を排出する油成分排出管と、前記油成分排出管を開閉する排出弁と、を備え、前記排出弁は、検出された前記液面レベルが所定の基準レベル以下である場合、前記油成分排出管を閉状態にし、検出された前記液面レベルが前記基準レベルを超過する場合、前記油成分排出管を開状態にする、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、前記容器の内部の温度または圧力を検出する検出部と、前記検出部の検出結果をもとに、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了したか否かを判断し、前記気化ガスと前記油成分との分離が完了した場合に前記油成分の液面レベルを検出するように、レベル検出部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、前記容器は、検出された前記液面レベルが前記基準レベル以下である場合、前記舶用内燃機関から新たに前記ドレンを受け入れる、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るドレン処理装置は、上記の発明において、検出された前記液面レベルが前記基準レベルを超過したことを報知する報知部をさらに備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液化ガス燃料のドレンから油成分を分離して除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係るドレン処理装置の一構成例を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るドレン処理方法の一例を示すフロー図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るドレン処理方法を具体的に説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係るドレン処理装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るドレン処理装置の一構成例を示す図である。図1には、本実施形態に係るドレン処理装置10に加え、このドレン処理装置10が適用される舶用内燃機関101および燃料供給システム110が図示されている。なお、図1において、流体の流通および配管は実線矢印によって適宜図示され、電気信号線は破線によって適宜図示される。以下、舶用内燃機関101および燃料供給システム110について順次説明し、その後、ドレン処理装置10について説明する。
【0025】
(舶用内燃機関)
舶用内燃機関101は、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラを駆動回転させる推進用の機関である。具体的には、舶用内燃機関101は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド型内燃機関等に例示される2ストローク内燃機関であり、船舶の機関室に設置される。特に、舶用内燃機関101は、化石燃料および液化ガス燃料の少なくとも1つを燃焼室内で燃焼して運転するタイプの内燃機関であり、シリンダおよびピストン等の駆動系統(図示せず)と、この駆動系統の燃焼室内へ化石燃料および液化ガス燃料の少なくとも1つを噴射する燃料噴射系統とを備えている。例えば図1に示すように、舶用内燃機関101は、上記燃料噴射系統の構成部として、燃料噴射弁102と、化石燃料用の第1燃料ポンプ103および第1噴射管104と、液化ガス燃料用の第2燃料ポンプ105および第2噴射管109とを備える。
【0026】
なお、化石燃料は、ディーゼル燃料、留出油、残渣油等、原油から精製され得る燃料一般である。液化ガス燃料は、化石燃料を代替する代替燃料であり、例えば液体アンモニア、LPGまたはLNG等、化石燃料に比べて燃焼時における二酸化炭素の排出量が少ない燃料である。また、本実施形態において、船舶といえば、特に説明がない限り、舶用内燃機関101、燃料供給システム110およびドレン処理装置10を搭載した船舶を意味する。
【0027】
燃料噴射弁102は、舶用内燃機関101の燃焼室内へ燃料を噴射するものである。例えば図1に示すように、燃料噴射弁102は、第1噴射管104を介して化石燃料用のポンプ(第1燃料ポンプ103)と連通し、第2噴射管109を介して液化ガス燃料用のポンプ(第2燃料ポンプ105)と連通している。特に図示しないが、燃料噴射弁102は、噴射口および内部流路を有し、この噴射口を舶用内燃機関101の燃焼室内へ向けた態様で駆動系統のシリンダに設けられている。燃料噴射弁102は、第1燃料ポンプ103から第1噴射管104を通じて供給された化石燃料を燃焼室内へ噴射し、第2燃料ポンプ105から第2噴射管109を通じて供給された液化ガス燃料を燃焼室内へ噴射する。燃料噴射弁102から燃焼室内に対する燃料噴射としては、第1噴射管104からの化石燃料のみを噴射するものと、第2噴射管109からの液化ガス燃料のみを噴射するものと、これらの化石燃料および液化ガス燃料を順次噴射(例えば層状噴射)するものと、が例示される。
【0028】
第1燃料ポンプ103は、燃料噴射弁102の内部へ化石燃料を供給するための化石燃料用ポンプである。例えば、第1燃料ポンプ103は、油圧式ポンプであり、図1に示すように、第1噴射管104を介して燃料噴射弁102と連通する。第1噴射管104は、化石燃料を高圧で流通させることが可能な二重管(例えば二重構造の高圧管)である。第1燃料ポンプ103は、船舶内の燃料タンク(図示せず)から配管を通じて供給された化石燃料を、第1噴射管104を通じて燃料噴射弁102へ圧送する。特に図示しないが、上記圧送された化石燃料は、燃料噴射弁102の内部流路中に注入される。また、第1燃料ポンプ103は、上記化石燃料の供給機能に加え、燃料噴射弁102から燃焼室内に対する燃料噴射を行うポンプとしての機能を兼ね備える。燃料噴射弁102は、第1燃料ポンプ103の作用(化石燃料の圧送時の圧力)により、化石燃料および液化ガス燃料の少なくとも1つを燃焼室内へ噴射する。また、二重管である第1噴射管104の外側管には、後述するドレン処理装置10のドレン入口管2に通じる第1ドレン排出管21が接続されている。例えば、第1噴射管104の内側管から化石燃料が漏洩した場合、この化石燃料は、外側管によって外気中への漏洩が防止されるとともに、燃料噴射弁102内の液化ガス燃料とともにドレンとして第1ドレン排出管21へ排出される。
【0029】
第2燃料ポンプ105は、燃料噴射弁102の内部へ液化ガス燃料を供給するための液化ガス燃料用ポンプである。例えば、第2燃料ポンプ105は、油圧式ポンプであり、図1に示すように、油圧シリンダ106と油圧ピストン108とを備える。油圧シリンダ106は、図1に示すように、油圧ピストン108を摺動可能に収容するシリンダであり、吐出対象の液化ガス燃料200を貯留する吐出室107を内部に有する。吐出室107は、第2噴射管109を介して燃料噴射弁102と連通している。第2噴射管109は、液化ガス燃料200を高圧で流通させることが可能な配管である。特に、液化ガス燃料200の漏洩防止の観点から、第2噴射管109は、二重構造の高圧管(二重管)によって構成される。油圧ピストン108は、作動油の圧力等を利用して、油圧シリンダ106の内部で往復運動する。この油圧ピストン108の作用により、第2燃料ポンプ105は、吐出室107内の液化ガス燃料200を、第2噴射管109を通じて燃料噴射弁102へ圧送する。これにより、第2燃料ポンプ105は、燃料噴射弁102の内部流路中に液化ガス燃料を供給する。特に、燃料噴射弁102から燃焼室内に対して化石燃料および液化ガス燃料を噴射する場合において、第2燃料ポンプ105は、燃料噴射弁102の内部流路に供給されている化石燃料中に液化ガス燃料を注入する。
【0030】
また、図1に示すように、油圧シリンダ106の内壁部と油圧ピストン108の外壁部との間には、船舶内のタンク(図示せず)から配管等を通じて潤滑油201が供給される。この潤滑油201により、油圧シリンダ106と油圧ピストン108との円滑な摺動が確保される。また、油圧シリンダ106の内壁部(油圧ピストン108との摺動部)には、その周方向に沿って溝部が設けられており、当該水部の内部にはシール油202が供給される。シール油202は、油圧シリンダ106と油圧ピストン108との隙間をシールし、これにより、当該隙間から液化ガス燃料200が漏洩することを防止する。なお、シール油202としては、上記潤滑油201が用いられてもよい。以下では、第2燃料ポンプ105の潤滑油201およびシール油202、並びに上述した第1噴射管4内の化石燃料を総称して、油成分203と適宜いう。
【0031】
また、油圧シリンダ106には、図1に示すように、吐出室107内の液化ガス燃料200をドレンとして排出するためのドレン経路106aが形成されている。ドレン経路106aは、後述のドレン処理装置10におけるドレン入口管2と連通する。これにより、液化ガス燃料200のドレンは、吐出室107からドレン経路106aを通じて第2ドレン排出管22へ流入し、第2ドレン排出管22を通じてドレン入口管2へ流入し得る。また、図1に示すように、吐出室107は、後述の燃料供給システム110における供給管114と連通する。吐出室107には、供給管114を介して燃料供給システム110から液化ガス燃料200が供給される。
【0032】
上述した燃料噴射系統を備える舶用内燃機関101は、燃焼室内に噴射された化石燃料または液化ガス燃料、或いは、これらの両方を燃焼して駆動する。すなわち、舶用内燃機関101の運転モードには、化石燃料のみを燃焼するモードと、液化ガス燃料のみを燃焼するモードと、化石燃料および液化ガス燃料を燃焼(混焼)するモードとが含まれる。
【0033】
(燃料供給システム)
燃料供給システム110は、舶用内燃機関101へ液化ガス燃料を供給するシステムである。例えば図1に示すように、燃料供給システム110は、燃料循環系統111と、供給管114と、供給ポンプ115と、排出管116と、排出弁117と、除害装置118とを備える。
【0034】
燃料循環系統111は、舶用内燃機関101との間で液化ガス燃料を循環させる配管である。例えば図1に示すように、燃料循環系統111は、燃料供給システム110側から舶用内燃機関101側に向けて液化ガス燃料を送出する送出管112と、舶用内燃機関101側から燃料供給システム110側に向けて液化ガス燃料を戻す戻り管113と、を備える。また、燃料循環系統111には、送出管112および戻り管113と舶用内燃機関101の液化ガス燃料用ポンプ(第2燃料ポンプ105)とを連通する供給管114と、液化ガス燃料を流通させる供給ポンプ115とが設けられている。燃料供給システム110は、供給ポンプ115の作用により、液化ガス燃料を燃料循環系統111内で循環させつつ、舶用内燃機関101の運転に必要な量の液化ガス燃料を、供給管114を通じて第2燃料ポンプ105の吐出室107内へ供給する。特に図示しないが、燃料供給システム110は、液化ガス燃料を貯留するタンクを備えている。燃料循環系統111には、このタンクから液化ガス燃料が必要に応じて供給される。
【0035】
排出管116および排出弁117は、燃料循環系統111を通じて舶用内燃機関101側から戻された液化ガス燃料の一部を燃料循環系統111から排出するための設備である。例えば図1に示すように、排出管116は、戻り管113と除害装置118とを連通するように設けられる。排出弁117は、排出管116を開閉する弁であり、排出管116の中途部に設けられる。排出弁117が開状態である場合、戻り管113を通じて戻された液化ガス燃料のうち一部は、戻り管113から排出管116を通じて除害装置118へ排出される。排出弁117が閉状態である場合、戻り管113を通じて戻された液化ガス燃料は、送出管112内へ流入する。なお、排出弁117の開閉駆動は、ドレン処理装置10の制御部15または別の制御部(図示せず)によって自動制御されてもよいし、作業者によって手動操作されてもよい。
【0036】
除害装置118は、燃料循環系統111から排出された液化ガス燃料を除害するための装置である。例えば図1に示すように、除害装置118は、排出管116を通じて戻り管113から排出された液化ガス燃料を受け入れ、受け入れた液化ガス燃料を除害する。例えば、液化ガス燃料がアンモニアである場合、除害装置118は、受け入れたアンモニアを水との混合によって除害する。
【0037】
(ドレン処理装置)
ドレン処理装置10は、舶用内燃機関101から排出された液化ガス燃料のドレン(以下、処理対象ドレンという)を処理する装置である。詳細には、図1に示すように、ドレン処理装置10は、処理対象ドレン210を液化ガス燃料の気化ガスと油成分とに分離処理するための処理容器1と、処理対象ドレン210を処理容器1内へ流入するドレン入口管2と、舶用内燃機関101の第1噴射管104とドレン入口管2とを連通する第1ドレン排出管21と、舶用内燃機関101の第2燃料ポンプ105とドレン入口管2とを連通する第2ドレン排出管22と、第2ドレン排出管22を開閉するパージ制御弁23とを備える。また、ドレン処理装置10は、処理対象ドレン210から分離した液化ガス燃料の気化ガスを排出するガス出口管3と、処理容器1内の処理対象ドレン210を加熱する加熱部4と、処理容器1の内部状態を検出する状態検出部5と、処理容器1の内部をパージするためのパージ部6とを備える。また、ドレン処理装置10は、処理容器1の内部に貯留された油成分の液面レベルを検出するレベル検出部7と、当該油成分を処理容器1から排出するための油成分排出管8および排出弁9とを備える。また、ドレン処理装置10は、処理容器1内に残留する液化ガス燃料の気化ガスを検知するガス検知部11と、処理容器1の内部圧力を調整するためのリリーフ管12およびリリーフ弁13と、処理容器1内における油成分の液面レベルに関する情報を報知する報知部14と、処理対象ドレン210を処理するための各種制御を行う制御部15とを備える。
【0038】
処理容器1は、舶用内燃機関101から排出された液化ガス燃料のドレンを処理対象ドレン210として処理するための容器である。例えば、処理容器1は、接続された配管を介してのみ、液体やガス等の流体を出し入れ可能な密閉型の容器によって構成される。
【0039】
詳細には図1に示すように、処理容器1には、ドレン入口管2とガス出口管3と油成分排出管8とが接続される。このドレン入口管2には、例えば図1に示すように、二重構造の第1噴射管104の外側管に通じる第1ドレン排出管21と、第2燃料ポンプ105のドレン経路106aに通じる第2ドレン排出管22とが接続されている。処理容器1は、第1ドレン排出管21およびドレン入口管2を介して第1噴射管104の外側管内と連通し、第2ドレン排出管22およびドレン入口管2を介して第2燃料ポンプ105のドレン経路106aと連通する。処理容器1は、舶用内燃機関101から排出される液化ガス燃料200と油成分203とを含有する処理対象ドレン210を、ドレン入口管2から受け入れて収容する。当該処理対象ドレン210としては、例えば、第1噴射管104の外側管から第1ドレン排出管21を通じて排出される液化ガス燃料200と化石燃料とを含有するドレンと、第2燃料ポンプ105の吐出室107から第2ドレン排出管22を通じて排出される液化ガス燃料200と潤滑油201およびシール油202の少なくとも一つとを含有するドレンとが挙げられる。
【0040】
上記のような処理容器1の内部においては、ドレン入口管2から流入した処理対象ドレン210の温度が液化ガス燃料200の沸点に達することにより、処理対象ドレン210から液化ガス燃料200が蒸発する。処理対象ドレン210は、上記液化ガス燃料200の蒸発により、液化ガス燃料200の気化ガスと油成分203とに分離される。液化ガス燃料200の気化ガスは、ガス出口管3を介して処理容器1から排出される。油成分203は、処理容器1の内部に貯留され、その液面レベルが所定のレベル以上に上昇した場合に油成分排出管8を介して処理容器1から排出される。また、処理容器1内の油成分203の液面レベルが所定のレベル未満である場合、処理容器1は、ドレン入口管2を介して舶用内燃機関101から新たに処理対象ドレン210を受け入れて収容する。処理容器1の内部には、上記新たな処理対象ドレン210と、既に貯留されている油成分203とが混ざり合いながら収容される。
【0041】
ドレン入口管2は、舶用内燃機関101から排出された処理対象ドレン210を処理容器1の内部へ流入する配管である。詳細には、図1に示すように、ドレン入口管2の一端部(入側端部)は、第1ドレン排出管21および第2ドレン排出管22と合流する。すなわち、第1ドレン排出管21の入側端部は第1噴射管104の外側管に接続され、第2ドレン排出管21の出側端部はドレン入口管2の入側端部に接続される。第2ドレン排出管22の入側端部は第2燃料ポンプ105のドレン経路106aに接続され、第2ドレン排出管22の出側端部はドレン入口管2の入側端部に接続される。また、ドレン入口管2の他端部(出側端部)は、処理容器1の受入口に接続される。例えば、当該受入口は、処理容器1の上部(図1では天井部)に設けられている。このような構造により、ドレン入口管2は、第1ドレン排出管21を介して第1噴射管104の外側管の内部と処理容器1の内部とを連通させるとともに、第2ドレン排出管22を介して第2燃料ポンプ105の吐出室107と処理容器1の内部とを連通させる。例えば、ドレン入口管2は、第1噴射管104の内側管から漏洩した化石燃料(油成分203の一例)と混ざった液化ガス燃料200を、処理対象ドレン210の一種として第1噴射管104の外側管から処理容器1の内部へ流入させる。また、ドレン入口管2は、第2燃料ポンプ105において油成分203(具体的には潤滑油201やシール油202)と混ざった液化ガス燃料200を、処理対象ドレン210の一種として吐出室107から処理容器1の内部へ流入させる。
【0042】
また、ドレン入口管2には、図1に示すように、入口逆止弁2aが設けられている。入口逆止弁2aは、ドレン入口管2の内部を流れる流体について、第1ドレン排出管21および第2ドレン排出管22とドレン入口管2との合流部側から処理容器1側へ向かう方向の流れを許容し且つ当該方向とは逆方向の流れを禁止する。例えば、入口逆止弁2aは、ドレン入口管2を介して処理容器1の内部へ処理対象ドレン210が流入することを許容するとともに、処理容器1の内部からドレン入口管2を介して第1噴射管104側や吐出室107側へ処理対象ドレン210および液化ガス燃料200の気化ガスが逆流することを防止する。
【0043】
また、第2ドレン排出管22には、図1に示すように、パージ制御弁23が設けられている。パージ制御弁23は、第2ドレン排出管22を開閉することにより、第2燃料ポンプ105の吐出室107とドレン入口管2とを遮断可能に連通する。例えば、第2燃料ポンプ105が吐出室107内の液化ガス燃料200を燃料噴射弁102へ圧送する場合において、パージ制御弁23は、第2ドレン排出管22を閉じた閉状態であり、吐出室107とドレン入口管2との連通を遮断する。また、舶用内燃機関101の燃焼燃料として使用されない液化ガス燃料200を第2燃料ポンプ105等から除去する場合において、パージ制御弁23は、第2ドレン排出管22を開いた開状態であり、吐出室107とドレン入口管2とを連通する。このようなパージ制御弁23の動作は、例えば、制御部15によって制御される。
【0044】
ガス出口管3は、処理容器1の内部からガスを排出する配管である。詳細には、図1に示すように、ガス出口管3の一端部(入側端部)は処理容器1の排気口に接続され、ガス出口管3の他端部(出側端部)は除害装置118に接続される。例えば、当該排気口は、処理容器1の上部等、処理容器1内に処理対象ドレン210や油成分203が貯留された場合であっても気相となる部位(図1では天井部)に設けられている。このような構造により、ガス出口管3は、処理容器1と除害装置118とを連通させる。ガス出口管3は、処理容器1の内部において処理対象ドレン210から蒸発した液化ガス燃料200の気化ガスを処理容器1の外部へ排出する。ガス出口管3は、この気化ガスを除害装置118へ流入させる。
【0045】
また、ガス出口管3には、図1に示すように、出口逆止弁3aが設けられている。出口逆止弁3aは、ガス出口管3の内部を流れる流体について、処理容器1側から除害装置118側へ向かう方向の流れを許容し且つ当該方向とは逆方向の流れを禁止する。例えば、出口逆止弁3aは、ガス出口管3を介して処理容器1の内部から除害装置118へガスが流入することを許容するとともに、除害装置118側からガス出口管3を介して処理容器1の内部へガスが逆流することを防止する。当該ガスとしては、処理対象ドレン210から蒸発した液化ガス燃料200の気化ガス、処理容器1の内部をパージするパージガス等が挙げられる。
【0046】
加熱部4は、処理容器1の内部に収容された処理対象ドレン210を加熱するための装置である。例えば、加熱部4は、電熱線を有するヒータ等によって構成され、図1に示すように、処理容器1に設けられる。加熱部4は、処理容器1の本体とともに内部を加熱し、これにより、処理容器1内の処理対象ドレン210を加熱する。加熱部4は、この処理対象ドレン210の加熱により、処理対象ドレン210から液化ガス燃料200の気化ガスを発生(蒸発)させる。また、処理対象ドレン210がドレン入口管2から処理容器1の内部へ流入した際、この処理対象ドレン210の温度により、液化ガス燃料200の気化ガスが処理対象ドレン210から蒸発し始める。加熱部4は、この処理対象ドレン210を加熱することにより、処理対象ドレン210の温度を液化ガス燃料200の沸点以上の温度に維持して、処理対象ドレン210からの上記気化ガスの発生を促進させる。
【0047】
状態検出部5は、処理容器1の内部状態、具体的には処理容器1の内部の温度または圧力を検出するものである。詳細には、状態検出部5は、温度センサまたは圧力センサによって構成され、図1に示すように、処理容器1の内部に検出子を位置させた態様で処理容器1に設けられる。状態検出部5は、例えば処理容器1の内部の温度として、処理容器1の内部に存在する液化ガス燃料200の気化ガスの温度を、時系列に沿って連続的または断続的に検出する。その都度、状態検出部5は、検出した温度を示す検出信号を制御部15に送信する。
【0048】
なお、状態検出部5は、処理容器1の内部の温度として、処理容器1の内部に存在する処理対象ドレン210の温度を検出してもよいが、液体よりも気体の方が加熱によって温度上昇し易いため、上記気化ガスの温度を検出することが好ましい。この場合、上記気化ガスの温度を検出し易くするという観点から、状態検出部5は、図1に示すように、加熱部4の近傍に配置されることが好ましい。
【0049】
また、状態検出部5は、上述した温度の代わりに、処理容器1の内部の圧力を検出してもよい。この場合、状態検出部5は、処理容器1の内部に存在する液化ガス燃料200の気化ガスの圧力を、時系列に沿って連続的または断続的に検出する。その都度、状態検出部5は、検出した圧力を示す検出信号を制御部15に送信する。
【0050】
パージ部6は、処理容器1の内部等に残留する液化ガス燃料200の気化ガスを除去するものである。詳細には、図1に示すように、パージ部6は、導入管6aを有し、導入管6aを介して舶用内燃機関101の第2噴射管109と連通するように設けられる。なお、導入管6aの出口端部は、第2噴射管109の噴射端部(燃料噴射弁102側の端部)の近傍に接続されることが好ましい。パージ部6は、舶用内燃機関101の燃焼燃料として使用されない液化ガス燃料200を、処理対象ドレン210として舶用内燃機関101から排除する。具体的には、パージ部6は、導入管6aを介して第2噴射管109および第2燃料ポンプ105の吐出室107の各内部へパージガスを導入する。当該パージガスとしては、例えば、窒素ガス等が挙げられる。パージ部6は、上記パージガスの導入により、第2噴射管109および第2燃料ポンプ105の吐出室107の各内部に残留する液化ガス燃料200を、パージガスとともにドレン処理装置10へ押し流す。当該液化ガス燃料200は、処理対象ドレン210として、第2噴射管109および第2燃料ポンプ105の吐出室107からドレン経路106a、第2ドレン排出管22およびドレン入口管2を通じて処理容器1の内部へ流入する。
【0051】
なお、液化ガス燃料200が舶用内燃機関101の燃焼燃料として使用されない場合としては、例えば、舶用内燃機関101の運転モードが化石燃料のみを燃焼するモードである場合、液化ガス燃料用の第2燃料ポンプ105および第2噴射管109のメンテナンスが行われる場合等が挙げられる。このような場合においては、液化ガス燃料200の漏洩を防止するために、第2燃料ポンプ105および第2噴射管109の各内部から液化ガス燃料200が残らないように除去される。
【0052】
また、パージ部6は、処理容器1の内部をパージするためのパージガスの導入により、処理容器1の内部から液化ガス燃料200の気化ガスを除去する。詳細には、処理容器1内の処理対象ドレン210が液化ガス燃料200の気化ガスと油成分203とに分離完了した状態において、処理容器1の内部には、当該気化ガスが残留している場合がある。この場合、パージ部6は、導入管6aと第2噴射管109と第2燃料ポンプ105の吐出室107とドレン経路106aと第2ドレン排出管22とを介してドレン入口管2から、処理容器1の内部へパージガスを供給する。これにより、パージ部6は、上述した液化ガス燃料200の気化ガスと油成分203との分離が完了した状態にある処理容器1の内部をパージして、当該気化ガスを処理容器1の内部から除去する。このとき、ガス出口管3は、上記状態にある処理容器1の内部に残留する気化ガスを、パージガスとともに処理容器1の外部へ排出する。これら排出された気化ガスおよびパージガスは、ガス出口管3を介して除害装置118内へ流入する。なお、処理容器1の内部をパージするパージガスは、上述した第2噴射管109および第2燃料ポンプ105の吐出室107の各内部をパージするパージガス(例えば窒素ガス等)と同様である。
【0053】
レベル検出部7は、上述した気化ガスとの分離によって処理容器1の内部に貯留された油成分203の液面レベルを検出するものである。詳細には、図1に示すように、レベル検出部7は、一対の第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bによって構成される。第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bは、各々、レベルスイッチ等によって構成され、図1に示すように、処理容器1の内側に向かって互いに対向し且つ処理容器1における互いに同じ高さに位置するよう処理容器1に設けられる。
【0054】
例えば、第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bは、各々、処理容器1の内部に貯留された油成分203の液面と接触した場合にオン状態となり、当該油成分203の液面と接触していない場合にオフ状態となる。レベル検出部7は、第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bの両方がオン状態である場合において、当該油成分203の液面レベルが処理容器1における所定の基準レベルを超過することを検出する。また、レベル検出部7は、第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bの少なくとも1つがオフ状態である場合において、当該油成分203の液面レベルが上記基準レベル以下であることを検出する。なお、当該基準レベルは、例えば、処理容器1の容積等に基づいて、既に油成分203を貯留した状態にある処理容器1の内部に新たな処理対象ドレン210を流入することが可能な当該油成分203の液面レベルの上限以下に設定される。
【0055】
レベル検出部7は、上述した第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bのオンオフ状態に基づいて油成分203の液面レベルを検出することにより、船舶の揺動に伴う処理容器1内の油成分203の液面変動が生じても、油成分203の液面レベルの誤検出を防止して当該液面レベルを適正に検出することができる。このようなレベル検出部7による液面レベルの検出結果は、第1レベル検出部7aのオンオフ状態を示す第1検出信号と第2レベル検出部7bのオンオフ状態を示す第2検出信号とを制御部15に送信することにより、制御部15に入力される。
【0056】
油成分排出管8は、処理容器1の内部に貯留された油成分203を処理容器1の外部へ排出する配管である。詳細には、図1に示すように、油成分排出管8の入側端部は処理容器1の排液口に接続され、油成分排出管8の出側端部はビルジタンク120に接続される。例えば、当該排液口は、処理容器1の底部等、処理容器1の内部に貯留された油成分203の排出に適した部位に設けられている。このような構造により、油成分排出管8は、処理容器1とビルジタンク120とを連通させる。
【0057】
また、油成分排出管8には、図1に示すように、排出弁9が設けられている。例えば、排出弁9は、2つの第1排出弁9aおよび第2排出弁9bによって構成されるダブルロック構造の弁であり、油成分排出管8の中途部に設けられる。詳細には、図1に示すように、第1排出弁9aおよび第2排出弁9bは、油成分排出管8の中途部において互いに直列に配置されるように設けられる。第1排出弁9aおよび第2排出弁9bは、各々、作業者の操作によって開閉駆動し、これにより、油成分排出管8を開閉する。第1排出弁9aおよび第2排出弁9bの少なくとも1つが閉状態であれば、排出弁9は、油成分排出管8の閉状態を維持することができる。これにより、排出弁9は、処理容器1の内部の油成分203が油成分排出管8から意図せず排出される事態を回避して安全性を高めることができる。また、第1排出弁9aおよび第2排出弁9bの両方が開状態であれば、排出弁9は、油成分排出管8を開状態にすることができる。
【0058】
排出弁9は、レベル検出部7によって検出された油成分203の液面レベルが上記基準レベル以下である場合、油成分排出管8を閉状態にする。この場合、油成分203は、油成分排出管8から排出されず、処理容器1の内部に貯留された状態になる。この処理容器1には、処理対象ドレン210を新たに流入することが可能である。また、排出弁9は、レベル検出部7によって検出された油成分203の液面レベルが上記基準レベルを超過する場合、油成分排出管8を開状態にする。この場合、油成分203は、処理容器1の内部から油成分排出管8を介してビルジタンク120へ排出される。これにより、処理容器1は、空の状態になり、処理対象ドレン210を新たに流入することが可能である。ビルジタンク120は、船舶における不要な油含有液、所謂、ビルジを貯留するタンクであり、船舶内に設置される。処理容器1から排出された油成分203は、ビルジの1つとしてビルジタンク120に回収される。
【0059】
ガス検知部11は、処理容器1の内部に液化ガス燃料200の気化ガスが残留しているか否かを検知するための装置である。詳細には、図1に示すように、ガス検知部11は、処理容器1の内部に検出子を位置させた態様で処理容器1に設けられる。ガス検知部11は、処理対象ドレン210を液化ガス燃料200の気化ガスと油成分203とに分離完了した状態にある処理容器1内の当該気化ガスの濃度を計測する。ガス検知部11は、計測した当該気化ガスの濃度が所定値以上である場合、処理容器1内に当該気化ガスが残留していることを検知する。また、ガス検知部11は、計測した当該気化ガスの濃度が所定値未満である場合、処理容器1内に当該気化ガスが残留していないことを検知する。ガス検知部11は、上記の検知結果を示す検知信号を制御部15に送信する。
【0060】
リリーフ管12およびリリーフ弁13は、処理容器1の内部の圧力を過大に上昇しないよう調圧するための装置である。詳細には、図1に示すように、リリーフ管12の入側端部は、処理容器1の調圧口に接続される。例えば、当該調圧口は、処理容器1の上部等、処理容器1内に処理対象ドレン210や油成分203が貯留された場合であっても気相となる部位(図1では天井部)に設けられている。特に図示しないが、リリーフ管12の出側端部は、液化ガス燃料200の気化ガスを回収し得るタンク(図示せず)に接続される。なお、リリーフ管12の出側端部は、上述したガス出口管3または除害装置118に接続されてもよいし、燃料循環系統111の戻り管113に接続されてもよい。
【0061】
また、リリーフ管12には、図1に示すように、リリーフ弁13が設けられている。リリーフ弁13は、処理容器1の内部に残留するガスの圧力を利用して開閉する弁である。すなわち、リリーフ弁13は、所定値以上のガス圧力が加えられた場合に開状態となり、処理容器1の内部からリリーフ管12を介してガスを排出する。また、リリーフ弁13は、処理容器1の内部のガス圧力が上記所定値未満である場合に閉状態となり、リリーフ管12を閉じる。このような開閉駆動により、リリーフ弁13は、処理容器1の内部のガス圧力を、過大に上昇しないように調整する。
【0062】
報知部14は、処理容器1の内部における油成分203の液面レベルが上述の基準レベルを超過したことを報知するものである。例えば、報知部14は、上述したレベル検出部7によって検出された液面レベルが上述の基準レベルを超過した場合に、このことを知らせるための情報を発信する。報知部14によって発信される情報は、ブザー音や音声等の音情報であってもよいし、1以上の発光色や発光パターンの光情報であってもよいし、これらの音情報と光情報とを組み合わせたものであってもよい。
【0063】
制御部15は、ドレン処理装置10の各構成部の動作を制御するものである。詳細には、制御部15は、各種プログラムを実行するためのCPU、メモリおよびシーケンサ等によって構成される。制御部15は、舶用内燃機関101における液化ガス燃料200の使用状況、処理容器1の内部状態等に応じて、加熱部4、パージ部6、レベル検出部7、報知部14およびパージ制御弁23の各動作タイミングを制御する。
【0064】
例えば、制御部15は、状態検出部5の検出結果をもとに、処理容器1の内部における処理対象ドレン210の、液化ガス燃料200の気化ガスと油成分203との分離が完了したか否かを判断する。制御部15は、上記気化ガスと油成分203との分離が完了するまで処理対象ドレン210を加熱するように、加熱部4を制御する。
【0065】
状態検出部5が処理容器1の内部の温度を検出する場合、制御部15は、状態検出部5によって検出された温度が所定の基準温度以上であることに基づいて、上記気化ガスと油成分203との分離が完了したと判断する。この場合、上記基準温度は、処理容器1の内部における処理対象ドレン210中の液化ガス燃料200の沸点等をもとに、予め設定される。
【0066】
ここで、処理容器1の内部においては、上述したように、処理対象ドレン210から液化ガス燃料200の気化ガスが蒸発し、これにより、処理対象ドレン210が液化ガス燃料の気化ガスと油成分203とに分離される。上記液化ガス燃料200の蒸発中、液化ガス燃料200の気化ガスは、ガス出口管3から処理容器1の外部へ順次排出される。これに伴い、処理容器1の内部では、上記気化ガスによる気流が発生する。このような状況下においては、上記気化ガスが加熱部4によって加熱されても、上記気化ガスの蒸発および排出が順次行われるため、上記気化ガスの温度は、液化ガス燃料200の沸点を上回ることなく一定の状態(定常状態)である。また、ガス出口管3では、上記気化ガスの排出による圧力損失が発生する。これにより、処理容器1の内部の圧力は、当該圧力損失に応じて上昇する。このため、処理容器1の内部においては、液化ガス燃料200の沸点が、大気圧下での沸点よりも上昇する。
【0067】
例えば、液化ガス燃料200がアンモニア(液体アンモニア)であり、処理容器1の内部の圧力が圧力損失に応じて0.1MPaに上昇した場合、処理容器1の内部におけるアンモニアの沸点は、大気圧下でのアンモニアの沸点(-33℃)よりも高い温度(-18℃)になる。これと同様に、液化ガス燃料200がプロパン(LPGの一例)である場合、処理容器1の内部におけるプロパンの沸点は、大気圧下でのプロパンの沸点(-26℃)よりも高い温度になる。上記基準温度は、処理容器1の内部における液化ガス燃料200の沸点に所定のマージンを加算した温度を下限値として、当該沸点よりも高い温度に設定される。具体的には、液化ガス燃料200がアンモニアであれば、上記基準温度は-10℃以上に設定されてもよいし、液化ガス燃料200がプロパンであれば、上記基準温度は-15℃以上に設定されてもよい。
【0068】
また、上記液化ガス燃料200の蒸発が完了した後において、処理容器1の内部には、処理対象ドレン210由来の油成分203と液化ガス燃料200の気化ガスとが留まり、上記気化ガスによる気流は止まる。このような状況下においては、上記気化ガスが処理容器1の内部に留まった状態で加熱部4によって加熱されるため、上記気化ガスの温度は、液化ガス燃料200の沸点を上回る温度に上昇する。これとともに、上記油成分203が処理容器1の内部に留まった状態で加熱部4によって加熱され、これにより、上記油成分203の温度が上昇する。上記油成分203が過度に加熱された場合、発火する可能性がある。このため、上記基準温度は、処理容器1の内部に貯留された油成分203の引火点から所定のマージンを減算した温度を上限値として、当該引火点よりも低い温度に設定される。具体的には、油成分203が潤滑油201であれば、上記基準温度は、潤滑油201の引火点(70℃)よりも低い温度(例えば50℃)に設定されてもよい。また、油成分203が燃料油(化石燃料)であれば、上記基準温度は、燃料油の引火点(20℃)よりも低い温度(例えば0℃)に設定されてもよい。
【0069】
また、状態検出部5が処理容器1の内部の圧力を検出する場合、制御部15は、状態検出部5によって検出された圧力が所定の基準圧力未満であることに基づいて、上記気化ガスと油成分203との分離が完了したと判断する。例えば、処理容器1の内部の圧力は、上述したガス出口管3での圧力損失に応じて、大気圧よりも高い圧力に上昇する。その後、処理対象ドレン210からの液化ガス燃料200の蒸発が完了し、当該圧力損失がなくなれば、処理容器1の内部の圧力は、上記上昇していた圧力から低下(例えば大気圧に低下)する。上記基準圧力は、このような処理容器1の内部における圧力変化に基づいて、大気圧よりも高い圧力に設定される。
【0070】
また、制御部15は、舶用内燃機関101の燃焼燃料として液化ガス燃料200が使用されない場合において、第2燃料ポンプ105の吐出室107および第2噴射管109の各内部をパージするようにパージ部6を制御するとともに、第2ドレン排出管22を介して吐出室107とドレン入口管2とを連通する(開状態にする)ようにパージ制御弁23を制御する。これにより、当該各内部の液化ガス燃料200は、処理対象ドレン210として処理容器1の内部へ排除される。さらに、制御部15は、状態検出部5の検出結果をもとに、上述したように液化ガス燃料200の気化ガスと油成分203との分離が完了したか否かを判断し、上記気化ガスと油成分203との分離が完了した場合に処理容器1の内部をパージするように、パージ部6を制御する。
【0071】
また、制御部15は、状態検出部5の検出結果をもとに、上述したように液化ガス燃料200の気化ガスと油成分203との分離が完了したか否かを判断し、上記気化ガスと油成分203との分離が完了した場合に当該油成分203の液面レベルを検出するように、レベル検出部7を制御する。制御部15には、当該油成分203の液面レベルの基準とする上記基準レベルが予め設定されている。制御部15は、レベル検出部7によって検出された液面レベルが上記基準レベルを超過したか否かを判断し、当該液面レベルが上記基準レベルを超過した場合、このことを報知するように報知部14を制御する。
【0072】
(ドレン処理方法)
つぎに、上述したドレン処理装置10による処理対象ドレン210の処理方法について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るドレン処理方法の一例を示すフロー図である。図3は、本発明の実施形態に係るドレン処理方法を具体的に説明するための模式図である。液化ガス燃料200が舶用内燃機関101の燃焼燃料として使用されない場合、第2燃料ポンプ105の吐出室107および第2噴射管109の各内部に残留している液化ガス燃料200は、処理対象ドレン210として舶用内燃機関101から除去される。また、二重構造の第1噴射管104の内側管から化石燃料とともに液化ガス燃料200が漏洩した場合、当該漏洩した液化ガス燃料200は、圧力の高低差等により、処理対象ドレン210として舶用内燃機関101から除去される。ドレン処理装置10(図1参照)は、図2、3に示すステップS101~S107の各処理を適宜実行することにより、舶用内燃機関101から除去された処理対象ドレン210を処理する。
【0073】
詳細には、図2に示すように、ドレン処理装置10は、舶用内燃機関101から除去された処理対象ドレン210を受け入れる(ステップS101)。ステップS101において、制御部15は、舶用内燃機関101の操作部(図示せず)からパージの指令信号S(図1参照)を取得する。指令信号Sは、第2燃料ポンプ105の吐出室107および第2噴射管109の各内部のパージを指令する電気信号であり、液化ガス燃料200が舶用内燃機関101の燃焼燃料として使用されない場合に、上記操作部から制御部15へ入力される。指令信号Sとしては、例えば、舶用内燃機関101の運転モードが化石燃料のみを燃焼するモードのときにパージを指令するものでもよいし、舶用内燃機関101の第2燃料ポンプ105等のメンテナンスに際してパージを指令するものでもよい。
【0074】
制御部15は、上記取得した指令信号Sに基づいて、第2燃料ポンプ105の吐出室107および第2噴射管109の各内部をパージするように、パージ部6を制御する。また、制御部15は、上記取得した指令信号Sに基づいて、パージ制御弁23を開状態に制御する。パージ部6は、制御部15の制御に基づいて、導入管6aから第2噴射管109の内部へパージガスを導入し、さらに、第2噴射管109を介して吐出室107の内部へパージガスを導入する。パージ部6は、この導入したパージガスにより、第2噴射管109および吐出室107の各内部に残留している液化ガス燃料200を、処理対象ドレン210としてドレン経路106aから第2ドレン排出管22を介してドレン入口管2の内部へ押し出す。このとき、パージ制御弁23は、上記制御部15の作用によって開状態となり、第2ドレン排出管22を介してドレン経路106aとドレン入口管2とを連通した状態にある。ドレン入口管2は、図3に示すように、上記押し出された処理対象ドレン210を処理容器1の内部へ流入する。処理容器1は、このように舶用内燃機関101から第2ドレン排出管22およびドレン入口管2を介して、液化ガス燃料200と油成分203とを含有する処理対象ドレン210を受け入れる。
【0075】
また、二重構造の第1噴射管104の内側管から化石燃料とともに液化ガス燃料200が漏洩した場合、処理容器1は、当該漏洩した液化ガス燃料200と油成分203(この場合は化石燃料)とを含有する処理対象ドレン210を、舶用内燃機関101から第1ドレン排出管21およびドレン入口管2を介して受け入れる。例えば、制御部15は、状態検出部5によって検出される処理容器1の内部温度の低下または内部圧力の上昇等に基づいて、処理容器1が第1ドレン排出管21からの処理対象ドレン210を受け入れたことを認識することができる。
【0076】
上記のように処理容器1が処理対象ドレン210を受け入れたとき、制御部15は、処理容器1の内部に貯留(収容)された処理対象ドレン210の液面レベルを、油成分203の液面レベルとして誤検出しないように、レベル検出部7の検出を無効化する。また、油成分排出管8は、排出弁9によって閉状態になっている。
【0077】
ステップS101の処理手順を実行後、ドレン処理装置10は、処理容器1の内部の処理対象ドレン210を加熱する(ステップS102)。ステップS102において、制御部15は、処理対象ドレン210を受け入れた状態にある処理容器1に対する加熱処理を開始するように、加熱部4を制御する。例えば、制御部15は、上述したステップS101におけるパージガス導入の開始または終了から所定の時間が経過したタイミングに、加熱処理を開始するよう加熱部4を制御する。或いは、制御部15は、処理容器1が第1ドレン排出管21からの処理対象ドレン210を受け入れたタイミングに、加熱処理を開始するよう加熱部4を制御してもよい。加熱部4は、制御部15の制御に基づいて、図3に示すように、処理容器1自体を加熱するとともに処理容器1の内部を加熱し、これにより、当該内部の処理対象ドレン210を加熱する。
【0078】
ステップS102の処理手順を実行後、ドレン処理装置10は、処理対象ドレン210の分離が完了したか否かを判断する(ステップS103)。ステップS103において、制御部15は、状態検出部5から検出信号を取得し、取得した検出信号によって示される処理容器1の内部状態の検出結果をもとに、処理対象ドレン210の分離が完了したか否かを判断する。
【0079】
例えば、状態検出部5が処理容器1の内部の温度を検出する場合、図3に示すように、状態検出部5は、処理対象ドレン210から蒸発した液化ガス燃料200の気化ガス200aの温度を検出する。制御部15は、状態検出部5からの検出信号をもとに、処理容器1の内部で検出された気化ガス200aの温度(検出値)を取得し、取得した気化ガス200aの温度と上述した基準温度とを比較する。制御部15は、気化ガス200aの温度が基準温度未満である場合、処理対象ドレン210を気化ガス200aと油成分203とに分離完了していないと判断する。また、制御部15は、気化ガス200aの温度が基準温度以上である場合、処理対象ドレン210を気化ガス200aと油成分203とに分離完了したと判断する。
【0080】
或いは、状態検出部5が処理容器1の内部の圧力を検出する場合、図3に示すように、状態検出部5は、処理容器1の内部で発生した気化ガス200aの圧力を検出する。制御部15は、状態検出部5からの検出信号をもとに、処理容器1の内部における気化ガス200aの圧力(検出値)を取得し、取得した気化ガス200aの圧力と上述した基準圧力とを比較する。制御部15は、気化ガス200aの圧力が基準圧力以上である場合、上記気化ガス200aと油成分203との分離が完了していないと判断する。また、制御部15は、気化ガス200aの圧力が基準圧力未満である場合、上記気化ガス200aと油成分203との分離が完了したと判断する。
【0081】
処理対象ドレン210の分離が完了していない場合(ステップS103,No)、ドレン処理装置10は、上述したステップS102に戻り、このステップS102以降の処理を繰り返す。すなわち、制御部15は、処理容器1の内部における処理対象ドレン210の分離が完了するまで、ステップS102の加熱処理を加熱部4に継続して実行させる。図3に示すように、気化ガス200aは、処理容器1の内部の処理対象ドレン210から順次発生し、ガス出口管3を介して処理容器1から順次排出される。このとき、気化ガス200aは、入口逆止弁2aおよび出口逆止弁3aの各作用により、ドレン入口管2を逆流することなく、ガス出口管3から上述した除害装置118(図1参照)へ排出される。
【0082】
一方、処理対象ドレン210の分離が完了した場合(ステップS103,Yes)、ドレン処理装置10は、処理容器1の内部をパージする(ステップS104)。ステップS104において、制御部15は、まず、処理対象ドレン210の分離完了に基づいて加熱処理を終了するように加熱部4を制御し、ついで、処理容器1の内部をパージするようにパージ部6を制御する。このとき、パージ制御弁23は、制御部15によって開状態に制御されている。加熱部4は、上記処理対象ドレン210の分離が完了するまで処理容器1に対して継続していた加熱処理を終了する。パージ部6は、導入管6a、第2噴射管109および第2燃料ポンプの吐出室107等を介してドレン入口管2から処理容器1の内部へパージガスを導入する。図3に示すように、このパージガス220は、ドレン入口管2から処理容器1の内部に流入し、この内部に残留する気化ガス200aをガス出口管3から押し出して除去する。パージガス220は、気化ガス200aを除去するとともに、気化ガス200aとの混合ガス221としてガス出口管3から排出される。排出された混合ガス221は、ガス出口管3を介して上述した除害装置118へ流入する。
【0083】
また、ステップS104において、制御部15は、処理容器1の内部へのパージガス220の導入開始から所定時間が経過した後、処理容器1の内部のパージを終了するようにパージ部6を制御する。パージ部6は、制御部15の制御に基づいて、処理容器1の内部へのパージガス220の導入を終了する。このとき、パージ制御弁23は、制御部15によって開状態から閉状態に制御される。なお、制御部15は、上述したガス検知部11(図1参照)の検知結果をもとに、上記パージを終了するようにパージ部6を制御してもよい。この場合、制御部15は、ガス検知部11からの検知信号を取得し、取得した検知信号に基づいて、処理容器1の内部に気化ガス200aが残存しているか否かを判断する。制御部15は、気化ガス200aが残存する場合において上記パージを継続するようにパージ部6を制御し、気化ガス200aが残存しない場合において上記パージを終了するようにパージ部6を制御してもよい。
【0084】
ステップS104の処理手順を実行後、ドレン処理装置10は、処理対象ドレン210から分離した油成分203の液面レベルを検出する(ステップS105)。ステップS105において、制御部15は、上述したように無効化していたレベル検出部7の検出を有効化する。レベル検出部7は、処理容器1の内部に貯留した油成分203の液面レベルの検出結果として、第1レベル検出部7aの第1検出信号と第2レベル検出部7bの第2検出信号とを制御部15に入力する。制御部15は、第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bから各々取得した第1検出信号および第2検出信号に基づいて、上記油成分203の液面レベルが上述した基準レベル以下であるか否かを判断する(ステップS106)。
【0085】
例えば、図3に示すように、処理容器1内の油成分203の液面レベルAが第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bの各検出子よりも上方である場合、上記第1検出信号および上記第2検出信号は、ともにオン状態の信号である。制御部15は、これらオン状態の第1検出信号および第2検出信号に基づいて、液面レベルAが上述した基準レベルを超過していると判断する。
【0086】
また、図3に示すように、処理容器1内の油成分203の液面レベルAが第1レベル検出部7aおよび第2レベル検出部7bの各検出子よりも下方である場合、上記第1検出信号および上記第2検出信号は、ともにオフ状態の信号である。あるいは、図3の破線で示されるように、液面レベルAが、船舶の揺動に伴い変動して、第1レベル検出部7aの検出子よりも上方であり且つ第2レベル検出部7bの検出子以下である場合、上記第1検出信号はオン状態の信号であり、上記第2検出信号はオフ状態の信号である。これと同様に、液面レベルAが、船舶の揺動に伴い変動して、第1レベル検出部7aの検出子以下であり且つ第2レベル検出部7bの検出子よりも上方である場合、上記第1検出信号はオフ状態の信号であり、上記第2検出信号はオン状態の信号である。制御部15は、上記のように第1検出信号および第2検出信号の少なくとも1つがオフ状態である場合、液面レベルAが上述した基準レベル以下であると判断する。
【0087】
ステップS106において、液面レベルAが基準レベルを超過する場合(ステップS106,No)、ドレン処理装置10は、処理容器1から油成分203を排出し(ステップS107)、本処理を終了する。
【0088】
ステップS107において、制御部15は、液面レベルAが基準レベルを超過したことを報知するように報知部14を制御する。報知部14は、制御部15の制御に基づいて、液面レベルAが基準レベルを超過したことを示す情報を、視覚的または聴覚的に確認可能な形式によって出力する。これにより、報知部14は、上記情報を作業者へ知らせる。排出弁9は、図3に示すように、第1排出弁9aおよび第2排出弁9bの両方が開状態に操作されることにより、油成分排出管8を開状態にする。この場合、油成分排出管8は、図3に示すように、処理容器1の内部から上述したビルジタンク120(図1参照)の内部へ油成分203を排出する。その後、処理容器1は、空の状態になる。液化ガス燃料200が舶用内燃機関101の燃焼燃料として使用されない場合、その都度、ドレン処理装置10は、上述したステップS101~S107の各処理を適宜実行する。
【0089】
一方、ステップS106において、液面レベルAが基準レベル以下である場合(ステップS106,Yes)、ドレン処理装置10は、ステップS107を実行せずに本処理を終了する。この場合、排出弁9は、図3に示すように、油成分排出管8を閉状態にしている。したがって、油成分203は、油成分排出管8から排出されず、処理容器1の内部に貯留される。処理容器1は、ステップS105において検出された油成分203の液面レベルAが基準レベル以下である場合、この油成分203を貯留しつつ、舶用内燃機関101の第2燃料ポンプ105および第1噴射管104から新たに処理対象ドレン210を受け入れることが可能である。すなわち、液化ガス燃料200が舶用内燃機関101の燃焼燃料として使用されない場合、その都度、ドレン処理装置10は、上述したステップS101~S107の各処理を適宜実行する。処理対象ドレン210は、既に油成分203を貯留した状態の処理容器1の内部へ新たに流入して処理される。
【0090】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るドレン処理装置10は、舶用内燃機関101から排出される液化ガス燃料200と油成分203とを含有する処理対象ドレン210を受け入れて収容する処理容器1と、処理容器1の内部で処理対象ドレン210から蒸発した液化ガス燃料200の気化ガス200aを、処理容器1の外部へ排出するガス出口管3と、を備えている。このドレン処理装置10において、処理対象ドレン210は、処理容器1の内部で液化ガス燃料200の蒸発によって気化ガス200aと油成分203とに分離されるようにしている。
【0091】
このため、吸着法または濾過法によるドレンの分離において問題視される、メンテナンス時に有毒性または可燃性の気化ガスと接触する危険性を回避できるとともに、沈殿法によるドレンの分離に必要な静的環境を確保しなくとも、処理対象ドレン210を液化ガス燃料200の気化ガス200aと油成分203とに分離することができる。これにより、たとえ船舶の航行時の揺動に伴って処理容器1が揺動する状況下であっても、液化ガス燃料200のドレンから油成分203を分離して除去することができる。
【0092】
また、本発明の実施形態に係るドレン処理装置10は、処理容器1の内部に収容された処理対象ドレン210を加熱する加熱部4をさらに備えている。このため、加熱部4の加熱作用により、処理容器1内の処理対象ドレン210から液化ガス燃料200の気化ガス200aを安定して蒸発させ得るとともに、当該液化ガス燃料200の蒸発を促進することができる。
【0093】
また、本発明の実施形態に係るドレン処理装置10では、処理容器1の内部の温度または圧力を検出し、この検出結果をもとに、処理対象ドレン210が液化ガス燃料200の気化ガス200aと油成分203とに分離完了したか否かを判断している。このため、上記気化ガス200aと油成分203との分離が完了するまで、処理対象ドレン210を効率よく加熱することができる。
【0094】
また、本発明の実施形態に係るドレン処理装置10では、処理容器1の内部をパージするためのパージガスを処理容器1の内部へ供給し、液化ガス燃料200の気化ガス200aと油成分203との分離が完了した状態にある処理容器1の内部に残留する気化ガス200aを、ガス出口管3から上記パージガスとともに処理容器1の外部へ排出している。このため、処理容器1の内部に貯留した油成分203の排出を、有毒性または可燃性の気化ガス200aとともに排出することなく安全に行うことができる。
【0095】
また、本発明の実施形態に係るドレン処理装置10では、処理容器1の内部の温度または圧力の検出結果をもとに、液化ガス燃料200の気化ガス200aと油成分203との分離が完了したか否かを判断し、上記気化ガス200aと油成分203との分離が完了した場合に処理容器1の内部をパージしている。このため、処理対象ドレン210由来の油成分203から分離し終えた気化ガス200aを、パージガスとともに処理容器1の内部から効率よく除去することができる。
【0096】
また、本発明の実施形態に係るドレン処理装置10は、液化ガス燃料200の気化ガス200aとの分離によって処理容器1の内部に貯留された油成分203の液面レベルAを検出するレベル検出部7と、処理容器1の外部へ油成分203を排出する油成分排出管8と、油成分排出管8を開閉する排出弁9と、を備えている。このドレン処理装置10において、排出弁9は、検出された液面レベルAが所定の基準レベル以下である場合、油成分排出管8を閉状態にし、検出された液面レベルAが上記基準レベルを超過する場合、油成分排出管8を開状態にしている。このため、処理容器1の内部に、処理対象ドレン210の処理を阻害する程に過度な量の油成分203が貯留されることを防止できるとともに、排出弁9の開閉駆動の頻度を減らして、処理容器1からの油成分203の排出を効率よく行うことができる。
【0097】
また、本発明の実施形態に係るドレン処理装置10では、処理容器1の内部の温度または圧力の検出結果をもとに、液化ガス燃料200の気化ガス200aと油成分203との分離が完了したか否かを判断し、上記気化ガス200aと油成分203との分離が完了した場合に、処理容器1の内部に貯留される油成分203の液面レベルAを検出している。このため、処理容器1の内部に流入した処理対象ドレン210の液面レベルを、上記油成分203の液面レベルAとして誤検出することを防止して、当該液面レベルAを適正に検出することができる。
【0098】
なお、上述した実施形態では、ガス出口管3を除害装置118に接続していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ガス出口管3は、燃料供給システム110の燃料循環系統111の戻り管113と接続されてもよい。これにより、ガス出口管3を介して処理容器1と戻り管113とを連通させ、処理容器1からガス出口管3へ排出された気化ガス200aまたは混合ガス221が、戻り管113および排出管116を介して除害装置118へ送出されてもよい。または、ガス出口管3は、燃料供給システム110の除害装置118に通じる排出管116と接続されてもよい。これにより、ガス出口管3を介して処理容器1と排出管116とを連通させ、処理容器1からガス出口管3へ排出された気化ガス200aまたは混合ガス221が、排出管116を介して除害装置118へ送出されてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、舶用内燃機関101のポンプおよび配管に残留する液化ガス燃料を除去するためのパージ処理と、処理容器1の内部をパージするためのパージ処理とを1つのパージ部6によって実行していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記複数のパージ処理は、各々別体のパージ部によって行われてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、処理容器1の内部に流入した処理対象ドレン210を加熱することにより、処理対象ドレン210から液化ガス燃料200の気化ガス200aを蒸発させていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記処理対象ドレン210を加熱せず、処理容器1に流入した際の処理対象ドレン210の温度によって、液化ガス燃料200の気化ガス200aを蒸発させてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、処理容器1から油成分を排出するための油成分排出管8を開閉する排出弁9を、手動操作によって開閉駆動する弁としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、排出弁9は、制御部15の制御によって自動に駆動する弁であってもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、処理対象ドレン210を液化ガス燃料200の気化ガス200aと油成分203とに分離し終えた状態の処理容器1の内部を、パージガスによってパージしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、処理対象ドレン210から蒸発によって分離した気化ガス200aを液化ガス燃料200として再利用する場合、気化ガス200a(特にLPGまたはLNGの気化ガス)を高純度で回収する観点から、処理容器1の内部をパージガスによってパージしなくてもよい。すなわち、処理容器1の内部のパージ処理は、処理容器1から気化ガス200aとして回収される液化ガス燃料200の用途に応じて行ってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、処理容器1の内部に貯留された油成分203の液面レベルAが基準レベルを超過することを報知部14によって報知していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、報知部14は、上記報知に加え、ガス検知部11による検知結果(処理容器1の内部に気化ガス200aが残留するか否かの情報)を報知してもよい。または、ガス検知部11が、上記検知結果を視覚的または聴覚的に確認可能な形式で出力してもよい。
【0104】
また、上述した実施形態では、第1噴射管104から処理対象ドレン210を排出する第1ドレン排出管21と、第2燃料ポンプ105から処理対象ドレン210を排出する第2ドレン排出管22との双方をドレン入口管2に合流させていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ドレン入口管2は、第1ドレン排出管21または第2ドレン排出管22のいずれか一方と通じる配管であってもよい。
【0105】
また、上述した実施形態では、ドレン入口弁2に入口逆止弁2aが設けられていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、入口逆止弁2aの代わりに、第1ドレン排出管21および第2ドレン排出管22の各々に逆止弁を設けてもよい。これにより、第1ドレン排出管21および第2ドレン排出管22の各々からドレン入口管2への流体の流れを許可するとともに、当該流体の逆流と、第1ドレン排出管21から第2ドレン排出管22への流体の流れと、第2ドレン排出管22から第1ドレン排出管21への流体の流れとを禁止してもよい。
【0106】
また、上述した実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1 処理容器
2 ドレン入口管
2a 入口逆止弁
3 ガス出口管
3a 出口逆止弁
4 加熱部
5 状態検出部
6 パージ部
6a 導入管
7 レベル検出部
7a 第1レベル検出部
7b 第2レベル検出部
8 油成分排出管
9 排出弁
9a 第1排出弁
9b 第2排出弁
10 ドレン処理装置
11 ガス検知部
12 リリーフ管
13 リリーフ弁
14 報知部
15 制御部
21 第1ドレン排出管
22 第2ドレン排出管
23 パージ制御弁
101 舶用内燃機関
102 燃料噴射弁
103 第1燃料ポンプ
104 第1噴射管
105 第2燃料ポンプ
106 油圧シリンダ
106a ドレン経路
107 吐出室
108 油圧ピストン
109 第2噴射管
110 燃料供給システム
111 燃料循環系統
112 送出管
113 戻り管
114 供給管
115 供給ポンプ
116 排出管
117 排出弁
118 除害装置
120 ビルジタンク
200 液化ガス燃料
200a 気化ガス
201 潤滑油
202 シール油
203 油成分
210 処理対象ドレン
220 パージガス
221 混合ガス
A 液面レベル
S 指令信号
図1
図2
図3