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特開2024-170111野菜のえぐみの低減剤、野菜のえぐみの低減用液状調味料、およびえぐみが低減された食品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170111
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】野菜のえぐみの低減剤、野菜のえぐみの低減用液状調味料、およびえぐみが低減された食品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20241129BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20241129BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241129BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20241129BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20241129BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 D
A23L19/00 A
A23L5/00 H
A23L29/269
A23L29/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087093
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】西森 友希
【テーマコード(参考)】
4B016
4B035
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG05
4B016LG10
4B016LK01
4B016LK06
4B016LK07
4B016LK08
4B016LK09
4B016LK10
4B016LK11
4B016LK17
4B016LK20
4B016LP04
4B016LP05
4B035LC01
4B035LG02
4B035LG07
4B035LG14
4B035LG19
4B035LG20
4B035LG21
4B035LG23
4B035LG27
4B035LG32
4B035LG44
4B035LG48
4B035LK01
4B035LK04
4B035LP01
4B035LP21
4B041LC01
4B041LH02
4B041LH07
4B041LH16
4B041LK02
4B041LK11
4B041LK13
4B041LK18
4B041LK27
4B041LK37
4B041LP01
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG01
4B047LG08
4B047LG10
4B047LG15
4B047LG23
4B047LG27
4B047LG30
4B047LG39
4B047LG44
4B047LG46
4B047LG51
4B047LG59
4B047LG60
4B047LP02
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】野菜のえぐみを簡便にかつ良好に低減し得る、野菜のえぐみの低減剤、さらには、えぐみのある野菜や、えぐみのある野菜を食材として含有する食品の風味や色調に影響を及ぼすことなく、えぐみを低減し得る液状調味料、およびえぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を提供する。
【解決手段】カルシウム塩および増粘剤を含有する野菜のえぐみの低減剤とし、カルシウムイオン濃度に換算して0.02重量%~1重量%のカルシウム塩と増粘剤とを含有し、25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sである、野菜のえぐみの低減用液状調味料とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム塩および増粘剤を含有する、野菜のえぐみの低減剤。
【請求項2】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の低減剤。
【請求項3】
増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の低減剤。
【請求項4】
加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項3に記載の低減剤。
【請求項5】
さらに、イソ吉草酸を含有する、請求項1または2に記載の低減剤。
【請求項6】
野菜の調理に用いられる水、調味液または液状調味料に対し、カルシウムイオン濃度が0.02重量%~1重量%、および前記水、調味液または液状調味料の25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sとなるように添加される、請求項1または2に記載の低減剤。
【請求項7】
カルシウムイオン濃度に換算して0.02重量%~1重量%のカルシウム塩と増粘剤とを含有し、25℃における粘度が800mPa・s~10,000mPa・sである、野菜のえぐみの低減用液状調味料。
【請求項8】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の液状調味料。
【請求項9】
増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項7または8に記載の液状調味料。
【請求項10】
加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項9に記載の液状調味料。
【請求項11】
さらに、イソ吉草酸を含有する、請求項7または8に記載の液状調味料。
【請求項12】
えぐみのある野菜100gに対し、15g~70g添加される、請求項7または8に記載の液状調味料。
【請求項13】
えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を製造する方法であって、えぐみのある野菜を調理する工程、および、えぐみのある野菜に野菜のえぐみの低減剤を添加する工程を含み、野菜のえぐみの低減剤がカルシウム塩および増粘剤を含有する、方法。
【請求項14】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
野菜のえぐみの低減剤が、さらにイソ吉草酸を含有する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項18】
野菜のえぐみの低減剤を添加する工程において、前記低減剤が水または調味液とともに、あるいは水または調味液に溶解または分散もしくは懸濁されて、えぐみのある野菜に添加され、水または調味液に対し、カルシウムイオン濃度が0.02重量%~1重量%、および前記水または調味液の25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sとなるように添加される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項19】
えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を製造する方法であって、えぐみのある野菜を調理する工程、および、えぐみのある野菜に野菜のえぐみの低減用液状調味料を添加する工程を含み、前記液状調味料が、カルシウムイオン濃度に換算して0.02重量%~1重量%のカルシウム塩と増粘剤とを含有し、25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sである、方法。
【請求項20】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
野菜のえぐみの低減用液状調味料が、さらにイソ吉草酸を含有する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項24】
野菜のえぐみの低減用液状調味料を添加する工程において、前記液状調味料が、えぐみのある野菜100gに対し、15g~70g添加される、請求項19または20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜のえぐみの低減剤、野菜のえぐみの低減用液状調味料、および、えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウレンソウ等の葉菜類等、シュウ酸を含み、えぐみがある野菜は、通常下茹でしてから調理に供される。しかし、下茹でという工程が加わることは調理操作の簡便性を損ない、調理に要する時間の増加を招き、また、下茹ですることにより、水溶性ビタミンやミネラル等の栄養素が流出してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、野菜に含まれ、えぐみの原因となるシュウ酸を除去するために、カルシウムイオンを生成し得るカルシウム化合物を添加して、シュウ酸カルシウムを生成させ、遠心分離して除去する技術(特許文献1)、酸性白土および/または活性白土を含有する処理剤に接触させて、生成するシュウ酸カルシウムをろ過して除去する技術(特許文献2)が提案されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術は、シュウ酸とカルシウムイオンとにより生成するシュウ酸カルシウムを除去するために、ろ過や遠心分離といった操作を要し、通常の調理に容易に応用し得る技術であるとは言い難いものであった。
【0004】
また、澱粉加水分解物、糖蜜または糖類の炭水化物を熱処理、または酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られるクラスIのカラメルに、シュウ酸由来のえぐみをマスキングする効果があることが報告され、カラメルを呈味改善剤として、シュウ酸含有食品に添加する技術が提案されている(特許文献3)。
しかし、特許文献3に記載された技術は、食品の風味や色調に影響を及ぼす恐れがあった。
【0005】
それゆえ、えぐみのある野菜や、えぐみのある野菜を食材として含有する食品において、食品の風味や色調に影響を及ぼすことなく、かつ簡便にえぐみを改善し得る技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3-195483号公報
【特許文献2】特開2011-019469号公報
【特許文献3】特開2020-198859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、野菜のえぐみを簡便にかつ良好に低減し得るえぐみの低減剤を提供し、さらには、えぐみのある野菜や、えぐみのある野菜を食材として含有する食品の風味や色調に影響を及ぼすことなく、えぐみを低減し得る液状調味料、およびえぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、カルシウム塩および増粘剤を含有する組成物を、えぐみのある野菜の調理に用いる水や調味液に対し、カルシウムイオン濃度にして0.02重量%~1重量%、25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sとなるように添加することにより、シュウ酸による野菜のえぐみを低減し得ることを見出し、さらに検討して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]カルシウム塩および増粘剤を含有する、野菜のえぐみの低減剤。
[2]カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、[1]に記載の低減剤。
[3]増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、[1]または[2]に記載の低減剤。
[4]加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、[3]に記載の低減剤。
[5]さらに、イソ吉草酸を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の低減剤。
[6]野菜の調理に用いられる水、調味液または液状調味料に対し、カルシウムイオン濃度が0.02重量%~1重量%、および前記水、調味液または液状調味料の25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sとなるように添加される、[1]~[5]のいずれかに記載の低減剤。
[7]カルシウムイオン濃度に換算して0.02重量%~1重量%のカルシウム塩と増粘剤とを含有し、25℃における粘度が800mPa・s~10,000mPa・sである、野菜のえぐみの低減用液状調味料。
[8]カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、[7]に記載の液状調味料。
[9]増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、[7]または[8]に記載の液状調味料。
[10]加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、[9]に記載の液状調味料。
[11]さらに、イソ吉草酸を含有する[7]~[10]のいずれかに記載の液状調味料。
[12]えぐみのある野菜100gに対し、15g~70g添加される、[7]~[11]のいずれかに記載の液状調味料。
[13]えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を製造する方法であって、えぐみのある野菜を調理する工程、および、えぐみのある野菜に野菜のえぐみの低減剤を添加する工程を含み、野菜のえぐみの低減剤がカルシウム塩および増粘剤を含有する、方法。
[14]カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、[13]に記載の方法。
[15]増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、[13]または[14]に記載の方法。
[16]加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、[15]に記載の方法。
[17]野菜のえぐみの低減剤が、さらにイソ吉草酸を含有する、[13]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]野菜のえぐみの低減剤を添加する工程において、前記低減剤が水または調味液とともに、あるいは水または調味液に溶解または分散もしくは懸濁されて、えぐみのある野菜に添加され、水または調味液に対し、カルシウムイオン濃度が0.02重量%~1重量%、および前記水または調味液の25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sとなるように添加される、[13]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を製造する方法であって、えぐみのある野菜を調理する工程、および、えぐみのある野菜に野菜のえぐみの低減用液状調味料を添加する工程を含み、前記液状調味料が、カルシウムイオン濃度に換算して0.02重量%~1重量%のカルシウム塩と増粘剤とを含有し、25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sである、方法。
[20]カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物からなる群より選択される1種以上である、[19]に記載の方法。
[21]増粘剤が、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよび加工デンプンからなる群より選択される1種以上である、[19]または[20]に記載の方法。
[22]加工デンプンがアセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンおよびリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上である、[21]に記載の方法。
[23]野菜のえぐみの低減用液状調味料が、さらにイソ吉草酸を含有する、[19]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24]野菜のえぐみの低減用液状調味料を添加する工程において、前記液状調味料が、えぐみのある野菜100gに対し、15g~70g添加される、[19]~[23]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、シュウ酸に起因する野菜のえぐみを簡便にかつ良好に低減し得る、野菜のえぐみの低減剤を提供することができる。
また、本発明により、えぐみのある野菜や、えぐみのある野菜を食材として含有する食品において、風味や色調に影響を及ぼすことなくえぐみを低減し得る、野菜のえぐみの低減用液状調味料を提供することができる。
さらに本発明により、えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、野菜のえぐみの低減剤(以下、本明細書にて「本発明の低減剤」ともいう)を提供する。
本発明の低減剤は、カルシウム塩および増粘剤を含有する。
【0012】
本発明の低減剤により、えぐみが低減され得る「野菜」は、シュウ酸を含有し、それによるえぐみが問題となり得る野菜であり、たとえば、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス等の葉菜類;ブロッコリー、カリフラワー等の花菜類;ナス等の果菜類;サツマイモ、ダイコン、カブ等の根菜類等が例示される。
本発明の低減剤は、シュウ酸含有量が多く、喫食した際にえぐみが強く感じられるホウレンソウのえぐみの改善に、特に好ましく用いられる。
【0013】
本発明の低減剤に含有されるカルシウム塩としては、カルシウムイオンを構成イオンとして含む塩であって、可食性の塩であれば、特に制限されることなく用いることができ、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム等の無機カルシウム塩;乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の有機カルシウム塩;およびこれらの水和物を挙げることができる。
本発明の低減剤には、カルシウム塩は、1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択して組み合わせて用いてもよい。
上記したようなカルシウム塩としては、各社より提供されている市販の製品を用いることができる。
【0014】
水や調味液、液状調味料等に対する溶解性や、これらのpHに及ぼす影響の観点からは、本発明の低減剤において、カルシウム塩として、塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよびこれらの水和物が好ましく用いられ、さらに呈味に及ぼす影響が少ないことから、乳酸カルシウムおよびその水和物がより好ましく用いられる。
なお、乳酸カルシウムおよびその水和物としては、L-乳酸カルシウム、DL-乳酸カルシウムおよびこれらの水和物が好ましく用いられ、L-乳酸カルシウムおよびその水和物がより好ましく用いられる。
【0015】
本発明の低減剤におけるカルシウム塩の含有量は、水や調味液、液状調味料等に対し、カルシウムイオンの濃度が後述する濃度となる量を添加し得る量として設定される。
【0016】
本発明の低減剤に含有される増粘剤としては、食品添加物として使用可能な増粘剤であって、本発明の低減剤が添加される水や調味液、液状調味料等に対し、後述する範囲の粘度を付与し得るものであれば、特に制限されることなく用いることができ、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ウェランガム、カードラン、カラギーナン、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム、セルロース、微結晶セルロース、セルロース誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、タマリンドシードガム、タラガム、プルラン、ペクチン、ローカストビーンガム、デンプン(馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン等)、加工デンプン(たとえばアセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン等)等の増粘多糖類およびそれらの修飾物;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の合成の高分子化合物等を例示することができる。
上記したような増粘剤は、1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択して組み合わせて用いてもよい。
上記したような増粘剤としては、各社より提供されている市販の製品を用いることができる。
【0017】
本発明の低減剤が添加される食品の食感に及ぼす影響の観点からは、増粘剤として、キサンタンガム、グアガム、デンプンおよびアセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン等の加工デンプンが好ましく用いられ、キサンタンガム、グアガム、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン等がより好ましく用いられる。
【0018】
本発明の低減剤における増粘剤の含有量は、水や調味液、液状調味料等に対し、後述する範囲の粘度を付与し得る量として設定される。
【0019】
本発明の低減剤は、さらにイソ吉草酸を含有し得る。
本発明の低減剤に含有され得るイソ吉草酸、すなわち3-メチルブタン酸は、多くの植物、精油に見られる天然の脂肪酸であり、市販の製品を利用することができる。
本発明の低減剤において、カルシウム塩および増粘剤とともにイソ吉草酸を用いることにより、野菜に含まれるシュウ酸とカルシウム塩とにより生成するシュウ酸カルシウムに由来するえぐみをマスキングすることができ、野菜のえぐみの低減効果を増強することができる。
本発明の低減剤におけるイソ吉草酸の含有量は、水や調味液、液状調味料等に対し、後述する濃度となる量を添加し得る量として設定される。
【0020】
本発明の低減剤は、カルシウム塩および増粘剤に、またはカルシウム塩、増粘剤ならびにイソ吉草酸に、必要に応じて、また、本発明の特徴を損なわない範囲で、製剤化に際して用いられる一般的な添加剤または食品の製造に際して用いられる一般的な食品添加物、水等を加えて、粉末状、顆粒状、タブレット状等の固形状の形態、クリーム状、ペースト状等の半固形状の形態、または溶液状、乳濁液状、懸濁液状、分散液状等の液状の形態として、提供することができる。
【0021】
上記した一般的な添加剤としては、賦形剤(たとえば、炭酸マグネシウム、糖類(グルコース、ラクトース、コーンスターチ等)、糖アルコール(ソルビトール、マンニトール等)等)、結合剤(たとえば、ゼラチン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、セルロースおよびその誘導体(結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)等)、崩壊剤(たとえば、クロスポビドン、ポビドン、結晶セルロース等)、滑沢剤(たとえば、タルク、ステアリン酸マグネシウム等)、乳化剤(たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン等)、pH調整剤(たとえば、塩酸、リン酸、クエン酸、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、保存剤(たとえば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ε-ポリリシン等)、酸化防止剤(たとえば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン等)等が挙げられる。
また、一般的な食品添加物としては、後述する呈味・調味成分、だし、エキス、食用油脂、甘味料、酸味料、苦味料、香辛料、香辛料抽出物、香料、着色料等が挙げられる。
上記したような添加剤および食品添加物は、1種または2種以上を用いることができ、その添加量についても、かかる添加剤または添加物の通常の使用量に準じて設定することができる。
【0022】
また、水としては、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水等、食品製造用水として適合する水が用いられる。
【0023】
本発明の低減剤は、その形態に応じ、一般的な製剤化手段、たとえば第十八改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条に記載された方法等に準じて製造することができる。
【0024】
本発明の低減剤は、上記したえぐみのある野菜の調理に際し、水や調味液、液状調味料等に添加して用いられる。
本発明の低減剤は、上記水や調味液、液状調味料等に対し、カルシウムイオン濃度が0.02重量%~1重量%、および、上記水や調味液、液状調味料等の25℃における粘度が800mPa・s~10000mPa・sとなるように添加される。
えぐみのある野菜の調理に際して用いられる水や調味液、液状調味料等におけるカルシウムイオン濃度、および前記水や調味液、液状調味料等の25℃における粘度が上記範囲内であると、シュウ酸に起因する野菜のえぐみを良好に低減することができる。
野菜のえぐみの低減効果の観点からは、本発明の低減剤は、えぐみのある野菜の調理に際して用いられる水や調味液、液状調味料等に対し、カルシウムイオン濃度が好ましくは0.05重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%となるように添加される。
また、野菜のえぐみの低減効果および取扱い性の観点からは、本発明の低減剤は、えぐみのある野菜の調理に際して用いられる水や調味液、液状調味料等に対し、前記水や調味液、液状調味料等の25℃における粘度が好ましくは4000mPa・s~10000mPa・s、より好ましくは6000mPa・s~9500mPa・sとなるように添加される。
なお、本発明の低減剤が添加される水や調味液、液状調味料等の粘度は、ブルックフィールド回転粘度計にて、No.4のローターを用い、60rpmにて25℃で30秒間回転させた際の測定値より求めることができる。
【0025】
本発明の低減剤がさらにイソ吉草酸を含有する場合、本発明の低減剤は、えぐみのある野菜の調理に際して用いられる水や調味液、液状調味料等に対し、イソ吉草酸の濃度が好ましくは0.05ppm~2750ppmとなるように添加され、より好ましくは0.12ppm~100ppmとなるように添加される。
【0026】
本発明の低減剤は、後述する液状調味料として、えぐみのある野菜の調理に用いることもできる。
【0027】
本発明の低減剤は、上記したえぐみのある野菜の調理に際し、水や調味液、液状調味料等に添加して用いることにより、また、液状調味料として用いることにより、シュウ酸に起因する野菜のえぐみを、下茹で等の前処理を要することなく、簡便にかつ良好に低減することができる。
【0028】
本発明はまた、野菜のえぐみの低減用液状調味料(以下、本明細書にて「本発明の調味料」ともいう)を提供する。
本発明の調味料は、カルシウム塩および増粘剤を含有する。本発明の調味料に含有されるカルシウム塩および増粘剤につては、本発明の低減剤について上記した通りである。
また、本発明の調味料は、さらにイソ吉草酸を含有することができる。本発明の調味料に含有され得るイソ吉草酸については、本発明の低減剤について上記した通りである。
【0029】
本発明の調味料におけるカルシウム塩の含有量は、カルシウムイオン濃度に換算して0.02重量%~1重量%である。本発明の調味料におけるカルシウム塩の含有量が、前記範囲の濃度のカルシウムイオンを生成し得る量であると、前記調味料を用いてえぐみのある野菜を調理した際に、シュウ酸に起因する野菜のえぐみを良好に低減することができる。野菜のえぐみの低減効果の観点からは、本発明の調味料におけるカルシウム塩の含有量は、カルシウムイオン濃度に換算して、好ましくは0.05重量%~0.5重量%であり、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%である。
【0030】
また、本発明の調味料の25℃における粘度は、800mPa・s~10000mPa・sである。本発明の調味料の25℃における粘度が前記範囲であると、前記調味料を用いてえぐみのある野菜を調理した際に生成するシュウ酸カルシウムを、舌の味蕾細胞にてえぐみを感知することなく、また、口腔内にて物理的な刺激を生じることなく嚥下することができ、その結果、シュウ酸に起因する野菜のえぐみが良好に低減される。前記えぐみの低減効果および液状調味料の取扱い性の観点から、本発明の調味料の25℃における粘度は、好ましくは4000mPa・s~10000mPa・sであり、より好ましくは6000mPa・s~9500mPa・sである。
本発明の調味料の粘度の測定方法については、本発明の低減剤において上記した通りである。
本発明の調味料における増粘剤の含有量は、含有される増粘剤の種類や物性に応じて、本発明の調味料の25℃における粘度が上記の範囲となるように設定することができる。
たとえば、本発明の調味料に含有される増粘剤として、キサンタンガムおよびリン酸架橋デンプンを選択する場合、キサンタンガムは0.1重量%~0.2重量%、リン酸架橋デンプンは2重量%~6重量%の範囲で用いることにより、本発明の調味料の粘度を上記範囲の粘度に調整することができる。
【0031】
本発明の調味料がさらにイソ吉草酸を含有する場合、本発明の調味料におけるイソ吉草酸の濃度は、好ましくは0.05ppm~2750ppmであり、より好ましくは0.12ppm~100ppmである。
【0032】
本発明の調味料は、上記カルシウム塩および増粘剤とともに、あるいは上記カルシウム塩および増粘剤ならびにイソ吉草酸とともに、呈味・調味成分、だし、エキス、食用油脂、乳製品、甘味料、酸味料、苦味料、香辛料、香辛料抽出物、香料、着色料等を含有する。
【0033】
呈味・調味成分としては、食塩、砂糖、味噌、酢、醤油、アミノ酸(L-グルタミン酸ナトリウム等)、核酸(イノシン酸、グアニル酸等)等が挙げられる。
だしとしては、昆布だし、かつおだし、さばだし、煮干だし等が挙げられる。
エキスとしては、野菜(たとえば、ニンジン、タマネギ、セロリ、ハクサイ、キャベツ等)、海藻(たとえば、コンブ、ワカメ等)、キノコ(たとえば、マツタケ、シイタケ、シメジ等)、魚介類(たとえば、カツオ、サバ、アジ、イワシ、エビ、ホタテ、カキ等)、畜肉(たとえば、ビーフ、ポーク、チキン等)等のエキスが挙げられ、液状、粉状、顆粒状等、種々の形態で用いることができる。
食用油脂としては、動物性油脂(たとえば、魚油、鯨油、ヘット、ラード等)、植物性油脂(たとえば、オリーブ油、エゴマ油、カカオ脂、コーン油、ゴマ油、シアバター、大豆油、ナタネ油、ベニバナ油等)等が挙げられる。
乳製品としては、牛乳、バター等が挙げられる。
甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、カンゾウ抽出物等が挙げられる。
酸味料としては、クエン酸、酢酸、酒石酸等が挙げられる。
苦味料としては、カフェイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物等が挙げられる。
香辛料としては、アニス、オールスパイス、オレガノ、セージ、タイム、ターメリック、ニンニク、ブラックペッパー、ホワイトペッパー等が挙げられる。
香辛料抽出物としては、上記香辛料から、水、エタノール等の有機溶剤もしくは二酸化炭素により抽出したもの、水蒸気蒸留により得られたもの等が挙げられる。
香料としては、合成香料(たとえば、アセト酢酸エチル、アニスアルデヒド等)、天然香料(たとえば、ローレル等)等が挙げられる。
着色料としては、アナトー色素、ウコン色素、クチナシ色素等が挙げられる。
上記呈味・調味成分等は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を選択し、組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明の調味料は、上記したカルシウム塩および増粘剤、あるいは上記したカルシウム塩および増粘剤、ならびにイソ吉草酸と、上記した呈味・調味成分等とを、水に添加して混合し、適宜加温または加熱して溶解し、均一として袋体や容器に充填し、滅菌・殺菌処理を施して製造することができ、液状の形態で提供される。
なお、水としては、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水等、食品製造用水として適合する水が用いられる。滅菌・殺菌処理としては、熱間充填(ホットパック)、加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)、アセプティック殺菌等、食品の製造において通常採用される滅菌・殺菌処理を採用することができる。
また、本明細書にて「液状」とは、やや粘性を有する液状から流動性を有するペースト状の状態の液体をいう。
【0035】
本発明の調味料は、えぐみのある野菜を調理する際に添加される。「調理」としては、煮る、蒸す、焼く、炒める等の加熱調理、混ぜる、和える等の非加熱下での調理が挙げられる。
本発明の調味料は、えぐみのある野菜100gに対し、15g~70g添加することが好ましく、20g~60g添加することがより好ましい。
【0036】
えぐみのある野菜の調理に際し、本発明の調味料を添加することにより、下茹で等の前処理を行わずともえぐみを良好に低減することができる。その結果、調理操作を簡便化して調理時間を短縮することができ、下茹で等の前処理による栄養素の流出を防ぐことができる。
また、本発明の調味料は、食品の風味や色調に影響する成分を含有することを要しないので、えぐみのある野菜や、えぐみのある野菜を食材として含有する食品の風味や色調に影響を及ぼすことが少ない。
【0037】
さらに本発明は、えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を製造する方法(以下、本明細書にて「本発明の製造方法」ともいう)を提供する。
本発明の製造方法は、第一の態様として、えぐみのある野菜を調理する工程、および、えぐみのある野菜に本発明の低減剤を添加する工程を含む。
【0038】
本態様の製造方法において、えぐみのある野菜は、他の食材とともに調理され得、本発明の低減剤を添加する工程においても、えぐみのある野菜は、他の食材とともに存在していてもよい。
えぐみのある野菜を調理する工程における「調理する工程」は、煮る、蒸す、焼く、炒める等の加熱調理する工程や、混ぜる、和える等の非加熱下で調理する工程を含み、必要に応じて、えぐみのある野菜等を洗う、切る、刻む、すり潰す等の処理工程も含まれる。前記加熱調理する工程は、鍋、蒸し器、フライパン、オーブン、コンベクションオーブン、スチームコンベクションオーブン等の調理器具や調理機器を用いて、通常の加熱条件、方法等に従って行うことができる。また、非加熱下で調理する工程は、サラダスピナー、フードプロセッサー等の調理器具や調理機器を用いて、通常の混合条件、方法等により行うことができる。
本発明の添加剤を添加する工程において、えぐみのある野菜に添加される本発明の低減剤については、上記した通りである。
本工程において、本発明の低減剤は、水や調味液とともに、または水や調味液に添加、混合されて、えぐみのある野菜に添加される。かかる場合、本発明の低減剤は、水や調味液におけるカルシウムイオン濃度、および25℃における粘度が、本発明の低減剤について上記した範囲となるように添加される。
また、本工程において、本発明の低減剤は、本発明の調味料として調製されて、後述する第二の態様におけるように添加されてもよい。
本態様の製造方法において、えぐみのある野菜に本発明の低減剤を添加する工程は、えぐみのある野菜を調理する工程の前および後のいずれに行ってもよく、えぐみのある野菜を調理する工程の中で行うこともできる。しかし、本発明の低減剤が水や調味液とともに、または水や調味液に溶解されまたは分散もしくは懸濁されて、えぐみのある野菜に添加される場合は、本工程の後にえぐみのある野菜を調理する工程を行うことが好ましい。
【0039】
また、本発明の製造方法は、第二の態様として、えぐみのある野菜を調理する工程、および、えぐみのある野菜に本発明の調味料を添加する工程を含む。
本態様の製造方法においても、えぐみのある野菜は、他の食材とともに調理され得、本発明の調味料を添加する工程においても、えぐみのある野菜は、他の食材とともに存在していてもよい。
えぐみのある野菜を調理する工程については、第一の態様における場合と同様である。
本発明の調味料を添加する工程において、えぐみのある野菜に添加される本発明の調味料については、上記した通りである。本工程において、本発明の調味料は、えぐみのある野菜100gに対し、上記した範囲の添加量にて添加される。
本態様の製造方法においては、えぐみのある野菜に本発明の調味料を添加する工程は、えぐみのある野菜を調理する工程の前および後のいずれに行ってもよく、えぐみのある野菜を調理する工程の中で行うこともできるが、えぐみのある野菜を調理する工程の後またはえぐみのある野菜を調理する工程の中で行うことが好ましく、えぐみのある野菜を調理する工程の中で行うことがより好ましい。
【0040】
本発明の製造方法により、えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが良好に低減された食品を、下茹で処理等の前処理を行うことなく、簡便に提供することができる。
【実施例0041】
以下、実施例および試験例により、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0042】
[実施例1~20]液状調味料
表1に示す調味料組成物に、キサンタンガムおよびリン酸架橋デンプンを表2に示す量添加して混合し、85℃に加熱して均一に溶解して、表2に示す各粘度の調味料組成物を調製した。調味料組成物の粘度は、ブルックフィールド回転粘度計にて、No.4のローターを用い、60rpmにて25℃で30秒間回転させた際の測定値より求めた。
なお、表1中、キサンタンガムとしては、「キサンタンガムST」(ユンブンスラウアー(JUNGBUNZLAUER)社)を用い、リン酸架橋デンプンとしては、「フードスターチF403」(松谷化学工業株式会社)を用いた。その他の食品原料としては、食品用として提供されている市販の製品を用いた。
表2に示す各粘度の調味料組成物に乳酸カルシウム五水和物(昭和化工株式会社)を添加し、均一に混合して、表3に示す実施例1~20の液状調味料を調製した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
[試験例1]ホウレンソウのえぐみの低減効果の評価
実施例1~20の各液状調味料について、下記の通りホウレンソウのえぐみの低減効果を評価した。
(1)試料の調製
フライパンにサラダ油大さじ1/2を入れて中火で熱し、ホウレンソウ200g(下茹で処理したホウレンソウについては160g)を入れて火が通るまで炒め、一旦火を止めて各液状調味料50gを加え、均一となるよう混合した後、再度中火で温め、試料とした。
また、表3に示す比較例および参考例の液状調味料についても、同様にホウレンソウのえぐみの低減効果を評価した。その際、粘度が0mPa・sである調味料組成物において、乳酸カルシウム五水和物を添加しない場合を対照とした。
なお、ホウレンソウの下茹で処理は、日本家政学会誌 65(7) 339-345 (2014)の記載を参考に、シュウ酸残存率が約75重量%となる処理条件を設定し、ホウレンソウを10重量倍の沸騰水にて1分間茹でた後、3分間流水で冷却し、次いで80重量%まで水を絞ることにより行った。
(2)えぐみの強さの評価
上記(1)で調製した各試料を、4名の訓練されたパネリストがそれぞれ喫食し、その際に感じるえぐみの強さについて、下記評価基準に従い評価し、協議により評点を決した。
<評価基準>
下茹で処理を行わないホウレンソウを上記と同様に炒め、喫食した際に感じるえぐみの強さを10点、下茹で処理したホウレンソウを上記と同様に炒め、喫食した際に感じるえぐみの強さを2点とし、下茹で処理した場合に比べ、えぐみの低減度が50%であると感じた場合を6点とした。
(3)評価結果
各試料についてえぐみの強さを評価した結果を、表3に併せて示した。
【0046】
【表3】
【0047】
表3に示されるように、乳酸カルシウムをカルシウムイオン濃度にて0.02重量%~0.2145重量%含有し、25℃における粘度が800mPa・sである液状調味料を用いてホウレンソウを加熱調理した場合には、ホウレンソウのえぐみは、対照の1/2以下に低減された。
乳酸カルシウムをカルシウムイオン濃度にて0.5重量%含有し、25℃における粘度が3120mPa・sである液状調味料を用いてホウレンソウを加熱調理した場合には、ホウレンソウのえぐみは、下茹で処理を行ったホウレンソウを加熱調理した場合とほぼ同程度まで低減され、乳酸カルシウムをカルシウムイオン濃度にて0.05重量%~0.1重量%含有し、25℃における粘度が4430mPa・sである液状調味料を用いてホウレンソウを加熱調理した場合には、ホウレンソウのえぐみは、下茹で処理を行ったホウレンソウを加熱調理した場合とほぼ同程度~同程度まで低減された。
また、乳酸カルシウムをカルシウムイオン濃度にて0.02重量%以上含有し、25℃における粘度が7635mPa・sまたは9510mPa・sである液状調味料を用いてホウレンソウを加熱調理した場合には、ホウレンソウのえぐみは、下茹で処理を行ったホウレンソウを加熱調理した場合とほぼ同程度~それ以下に低減されることが示された。
【0048】
一方、乳酸カルシウムをカルシウムイオン濃度にて0.02重量%含有するものの、粘度が付与されていない比較例1の液状調味料、25℃における粘度が800mPa・s、3120mPa・sまたは4430mPa・sであるものの、乳酸カルシウムを含有しない比較例2~4の液状調味料を用いた場合には、加熱調理したホウレンソウのえぐみの低減効果は十分ではなかった。
また、乳酸カルシウムをカルシウムイオン濃度にて0.035重量%~0.2145重量%含有するものの、粘度が付与されていない参考例1~3の液状調味料を用いてホウレンソウを加熱調理した場合には、下茹で処理を行ったホウレンソウを用いた場合の1/2程度にえぐみが低減され、25℃における粘度が7635mPa・sまたは9510mPa・sであり、乳酸カルシウムを含有しない参考例4、5の液状調味料を用いてホウレンソウを加熱調理した場合にも、えぐみの低減効果は認められた。しかし、いずれの場合も、同程度の濃度の乳酸カルシウムを含有する実施例の液状調味料、および同程度の粘度が付与された実施例の液状調味料を用いた場合に比べて、えぐみの低減効果は小さいものであった。
【0049】
[実施例21]液状調味料
表1に示す調味料組成物において、25℃における粘度が7635mPa・sとなるように、表2に示す量のキサンタンガムおよびリン酸架橋デンプンを添加し、85℃に加熱して均一とした後、塩化カルシウム二水和物(富田製薬株式会社)0.79重量%(カルシウムイオン濃度=0.2145重量%)を添加し、実施例21の液状調味料とした。
【0050】
[試験例2]ホウレンソウのえぐみの低減効果の評価
実施例21の液状調味料について、上記試験例1の場合と同様に、ホウレンソウのえぐみの低減効果を評価した。
その結果、えぐみの強さの評点は1.0点であり、乳酸カルシウム五水和物を添加した上記実施例17の液状調味料と同等のえぐみの低減効果が認められた。なお、実施例21の液状調味料を用いてホウレンソウを加熱調理した場合、塩化物由来の塩味が付与され、後味にミネラル感が認められた。
【0051】
[実施例22~46、比較例5~24]液状調味料
表1に示す調味料組成物において、25℃における粘度が800mPa・s、4430mPa・s、7635mPa・sおよび9510mPa・sとなるように、表2に示す量のキサンタンガムおよびリン酸架橋デンプンをそれぞれ添加し、85℃に加熱して均一とした後、表4に示す量の乳酸カルシウム五水和物(昭和化工株式会社)およびイソ吉草酸(シグマ-アルドリッチジャパン合同会社)をそれぞれ添加し、実施例22~46の液状調味料とした。
一方、表1に示す調味料組成物において、25℃における粘度が0mPa・s、800mPa・s、3120mPa・sおよび4430mPa・sとなるように、表2に示す量のキサンタンガムおよびリン酸架橋デンプンをそれぞれ添加し、85℃に加熱して均一とした後、表4に示す量のイソ吉草酸を添加し、比較例5~24の液状調味料とした。
【0052】
[試験例3]ホウレンソウのえぐみの低減効果の評価
実施例22~46および比較例5~24の各液状調味料について、上記試験例1の場合と同様にホウレンソウのえぐみの低減効果を評価した。評価結果は、表4に併せて示した。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示されるように、25℃における粘度が800mPa・s、4430mPa・s、7635mPa・sまたは9510mPa・sであり、乳酸カルシウムに加えてイソ吉草酸が添加された実施例22~46の液状調味料では、イソ吉草酸が添加されていない各実施例の液状調味料に比べて、ホウレンソウのえぐみの低減効果が増強されることが認められた。
一方、粘度が付与されていない液状調味料にイソ吉草酸のみを添加した場合、2750ppmの濃度を添加しても、ホウレンソウのえぐみの低減効果は認められなかった(比較例6)。
また、25℃における粘度が800mPa・s、3120mPa・sまたは4430mPa・sである場合、乳酸カルシウムを添加することなく、イソ吉草酸を0.05ppm~2750ppmの濃度で添加しても、有効なえぐみの低減効果は認められなかった(比較例7~24)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上、詳述したように、本発明により、シュウ酸に起因する野菜のえぐみを、簡便にかつ良好に低減し得る、えぐみの低減剤を提供することができる。
また、本発明により、えぐみのある野菜や、えぐみのある野菜を食材として含有する食品において、風味や色調に影響を及ぼすことなく、えぐみを低減し得る液状調味料を提供することができる。
さらに本発明により、えぐみのある野菜を含有しながら、えぐみが低減された食品を提供することができる。