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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170112
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】水中沈殿物回収ロボット
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20241129BHJP
   E02F 5/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
E02F3/88 A
E02F5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087094
(22)【出願日】2023-05-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年6月2日、3日に2022年度 技術開発報告会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】西沢 孝壽
(72)【発明者】
【氏名】花岡 草
(72)【発明者】
【氏名】菊池 史朗
(72)【発明者】
【氏名】内島 大作
(72)【発明者】
【氏名】鎌原 健志
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 茂男
(72)【発明者】
【氏名】松平 昌之
(57)【要約】
【課題】水中に存在する障害物を乗り越えることができ、水中の沈殿物の回収作業を効率的に進めることが可能な水中沈殿物回収ロボットを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明にかかる水中沈殿物回収ロボット(回収ロボット100)の構成は、水中を走行可能なロボット本体110と、水底40bの沈殿物を回収する沈殿物吸込機構150と、ロボット本体110の上方に配置されたフロート140と、ロボット本体110とフロート140とを離接可能に連結する離接機構160と、ロボット本体110を水中で推進させるスクリュー190と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を走行可能なロボット本体と、
水底の沈殿物を回収する沈殿物吸込機構と、
前記ロボット本体の上方に配置されたフロートと、
前記ロボット本体と前記フロートとを離接可能に連結する離接機構と、
前記ロボット本体を水中で推進させるスクリューと、
を備えることを特徴とする水中沈殿物回収ロボット。
【請求項2】
前記フロートは、内部に電装品を収容可能であることを特徴とする請求項1に記載の水中沈殿物回収ロボット。
【請求項3】
前記離接機構は、前記エアシリンダと、該エアシリンダに圧縮空気を供給するバルブとを備え、
当該水中沈殿物回収ロボットはさらに、
圧縮空気タンクと、
前記圧縮空気タンクを開閉する開閉弁と、
前記バルブに送信される制御信号が途絶したら該開閉弁を開いて前記圧縮空気タンクからの圧縮空気を前記エアシリンダに供給する緊急制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の水中沈殿物回収ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に沈殿している沈殿物を回収する水中沈殿物回収ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水質汚染を防止するためや、水中に沈殿している有害物を除去するために、水中に沈殿している沈殿物を回収することが行われている。沈殿物を回収する手段としては、例えば特許文献1に汚泥回収装置および方法が開示されている。特許文献1の汚泥回収装置は、水中を移動可能であると共に水底の汚泥を吸引して回収可能な浚渫装置と、水中を移動可能であると共に浚渫装置により回収された汚泥から水分を除去した回収物を回収物受槽に貯蔵する処理装置と、処理装置に電力や高圧空気などを供給する設備車とを有している。
【0003】
ところで、例えば原子力発電所建屋では、水中の放射線量を低減するために、放射線物質を吸着する吸着材(例えばゼオライト)を袋に収納した土嚢を水中に載置することがある。この土嚢の内容物を回収する場合、内容物が土嚢に収容されたままであると、特許文献1の汚泥回収装置では、沈殿物を回収することができない。
【0004】
そこで発明者らは、「水中を走行可能なロボット本体と、ロボット本体に対して装着されたコンテナと、ロボット本体に搭載されコンテナを通じて沈殿物を吸引する内蔵ポンプと、ロボット本体の下部の前方に縦向きに軸支され自由回転可能なチップソーとを備えた」水中沈殿物回収ロボットを開発した(特許文献2)。
【0005】
特許文献2の水中沈殿物回収ロボットによれば、チップソーを押し当ててロボット本体が左右に回転運動することで土嚢の袋を破き、土嚢から流出した内容物をロボット本体の内蔵ポンプによって吸引して回収することができる。したがって、内容物が土嚢に収容された状態であっても内容物を効率的に回収することができ、沈殿物の回収作業を迅速に行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-125754号公報
【特許文献2】特開2022―147083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原子力発電所建屋等では、回収対象である沈殿物以外に、瓦礫や遺棄された機材などの障害物が水中に多数存在する場合がある。発明者らが特許文献2の水中沈殿物回収ロボットを試験運用した結果、障害物の高さが、ロボット本体のクローラ動輪(または車輪)の半径よりも大きい場合、水中沈殿物回収ロボットが障害物を乗り越えることが困難であった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、水中に存在する障害物を乗り越えることができ、水中の沈殿物の回収作業を効率的に進めることが可能な水中沈殿物回収ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる水中沈殿物回収ロボットの代表的な構成は、水中を走行可能なロボット本体と、水底の沈殿物を回収する沈殿物吸込機構と、ロボット本体の上方に配置されたフロートと、ロボット本体とフロートとを離接可能に連結する離接機構と、ロボット本体を水中で推進させるスクリューと、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記フロートは、内部に電装品を収容可能であるとよい。
【0011】
上記離接機構は、エアシリンダと、エアシリンダに圧縮空気を供給するバルブとを備え、当該水中沈殿物回収ロボットはさらに、圧縮空気タンクと、圧縮空気タンクを開閉する開閉弁と、バルブに送信される制御信号が途絶したら開閉弁を開いて圧縮空気タンクからの圧縮空気をエアシリンダに供給する緊急制御部と、を備えるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水中に存在する障害物を乗り越えることができ、水中の沈殿物の回収作業を効率的に進めることが可能な水中沈殿物回収ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】原子力発電所建屋の概略図である。
図2】本実施形態にかかる沈殿物回収ロボットの全体斜視図である。
図3】回収ロボットの枠体を説明する図である。
図4】離接機構について説明する図である。
図5】本実施形態の回収ロボットが水中を走行する様子を説明する模式図である。
図6】フロートを有さない比較例の沈殿物回収ロボットが水中を走行する様子を説明する模式図である。
図7】本実施形態の回収ロボットの回収方法について説明する図である。
図8】本実施形態の回収ロボットの制御回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(原子力発電所建屋)
図1は、原子力発電所建屋10の概略図である。なお、本実施形態では沈殿物を回収する施設として原子力発電所建屋10を例示したが、これに限定するものではない。水中に沈殿物が堆積している施設であれば、他の施設であっても上述した本実施形態にかかる沈殿物回収ロボット(以下、回収ロボット100と称する)を好適に用いることが可能である。
【0016】
図1に示すように、原子力発電所建屋10は、地上複数階、地下複数階建ての建物(図1では地上2階、地下2階建ての建物を例示)である。1Fは地上への出入り口であり、最地下のB2Fに滞留水が貯蔵されている。この滞留水の放射性物質を吸着するために、B2Fには袋に吸着材(例えばゼオライト等)を詰めた土嚢12が設置されている。本実施形態の回収ロボット100は、水中に沈殿した吸着材を沈殿物として回収する。
【0017】
原子力発電所建屋10のB2Fには、回収ロボット100が配置される。回収ロボット100は、1Fの天井に設置されている天井クレーン14によってB2Fに搬入される。回収ロボット100はB2Fに到着するとフック16から外れて水中を自走する。回収ロボット100にはフロートケーブル18が接続されて、電源盤20からの電源が供給されると共に、カメラの画像データや各種センサーの信号が遠隔制御装置22に送信される。
【0018】
図1に示す天井クレーン14は、回収ロボット100を、水中に搬入し且つ水中から搬出する。詳細には本実施形態では、回収ロボット100は、天井クレーン14に吊り下げられた状態で1FからB2Fに搬入される。回収ロボット100が、水中を走行しながら沈殿物を回収する。回収作業後の回収ロボット100は、フロートケーブル18が巻取装置24によって巻き取られ、シャワー26によって洗浄された後に、クレーン14のフックに掛けて引き上げられて搬出される。
【0019】
(沈殿物回収ロボット)
図2は、本実施形態にかかる沈殿物回収ロボット(回収ロボット100)の全体斜視図である。図2に示す本実施形態の回収ロボット100は、水中を走行可能なロボット本体110、フロート140、沈殿物吸込機構150、離接機構160、スクリュー190およびロボット制御部102を備える。
【0020】
図3は、回収ロボット100の枠体120を説明する図である。図2に示すように回収ロボット100は、枠体120およびクローラ130を含んで構成される。枠体120は、上部を構成する上部フレーム122、および下部を構成する下部フレーム124によって構成されている。上部フレーム122にフロート140が備えられ、下部フレーム124にロボット本体110が構成される。
【0021】
図3に示すように、上部フレーム122は、4つの縦材122a、および縦材122aを連結する横材122bを含んで構成される。下部フレーム124は、4つの縦材124a、縦材124aを連結する横材124b、および横材124bに固定されたストッパ124cを含んで構成される。上部フレーム122の縦材122aと下部フレーム124の縦材124aとは相対的にスライド可能となっている(例えば入れ子形状)。そしてストッパ124cが設けられていることにより、上部フレーム122が下部フレーム124を超えて下方に移動することを防ぐことができる。
【0022】
ロボット本体110は、下部フレーム124に沈殿物吸込機構150を搭載して構成される。沈殿物吸込機構150は、吸込口152、吸込ポンプ154およびジョイント装置156を含んで構成され、水底の沈殿物を回収する。吸込口152は、例えば吸引ノズルであって、ロボット本体110の下方においてクローラ130の間に配置されている。吸込口152には吸込ポンプ154が連結ホース154aを介して接続されている。これにより、吸込ポンプ154を駆動すると、水底の沈殿物が吸込口152に吸い込まれて回収される。
【0023】
なお、沈殿物の内容物が土嚢12に収容された状況において土嚢12から内容物を取り出したい場合は、クローラ130により土嚢12を踏みにじり、土嚢12を破いた後に吸込口152より内容物を回収するようにしてもよい。または、ロボット本体110の下部の前方にチップソーのような切断部材を取り付けるようにしてもよい。この場合、チップソーを用いて土嚢12を破き、吸込口152より内容物を回収することができる。
【0024】
図2に示すように上部フレーム122の内部にはフロート140が配置されている。フロート140は、中空の筐体であり、内部に空気が密封されている。これにより、フロート140が浮力源となり、水中で回収ロボット100を浮かせることが可能となる。
【0025】
フロート140の内部には、例えば回路基板や撮像装置等の電装品(不図示)を収容可能である。本実施形態では、遠隔制御装置22(図1参照)と接続されて当該回収ロボット100の動作を制御するロボット制御部102がフロート140の内部に収容されている。これにより、浸水による電装品の故障を好適に防ぐことができる。
【0026】
また上部フレーム122にはジョイント装置156が備えられていて、ホースリール30に支持された移送ホース28(図1参照)を吸込ポンプ154に連結する。本実施形態ではジョイント装置156は、上部フレーム122の内部に配置されていて、連結ホース158によって吸込ポンプ154に連結されている。これにより、上部フレーム122が下部フレーム124に対して離接(昇降)しても、吸込ポンプ154とジョイント装置156の接続が維持される。
【0027】
吸込ポンプ154によって回収された沈殿物は、移送ホース28を通じてB2Fの集積場所P(図1参照)に移送される。なお本実施形態では回収ロボット100によって回収した沈殿物を集積場所Pに移送する構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば原子力発電所建屋10の屋内または屋外に集積容器等を用意し、そこに沈殿物を移送する構成としてもよい。
【0028】
上述したロボット本体110とフロート140とは、離接機構160によって離接可能に連結されている。図3に示すように本実施形態の離接機構160は、エアシリンダ(上シリンダ162および下シリンダ164)、およびエアシリンダに圧縮空気を供給するバルブ(後述する図8参照)を含んで構成される。上シリンダ162および下シリンダ164はそれぞれ、内部を摺動する上ピストン162aおよび下ピストン164aを有する。
【0029】
図4は、離接機構160について説明する図である。図4(a)は、離接機構160の上取付板170と下取付板180が最も近接している状態を例示している。図4(b)は、離接機構160の上取付板170と下取付板180が最も離間している状態を例示している。
【0030】
図4(a)および(b)に示すように離接機構160は、上取付板170、下取付板180を有する。上取付板170および下取付板180の間には、支柱168によって連結された上ガイド板172および下ガイド板182が配置されている。
【0031】
上取付板170は、フロート140の下方で上部フレーム122の横材122bに取り付けられている。上取付板170の下側には、上ガイド棒174および上ピストン162aが取り付けられている。上ガイド板172は、上ガイド棒174が挿通される上ガイド穴172aを有し、下側に伸縮する下シリンダ164が取り付けられている。
【0032】
下取付板180は、クローラ130の上方で下部フレーム124の横材124bに取り付けられている。下取付板180の上側には、下ガイド棒184および下ピストン164aが取り付けられている。下ガイド板182は、下ガイド棒184が挿通される下ガイド穴182aを有し、上側に伸縮する上シリンダ162が取り付けられている。
【0033】
離接機構160では、通常時は図4(a)に示すように上ピストン162aおよび下ピストン164aはそれぞれ上シリンダ162および下シリンダ164に収容されている。これにより、上取付板170と下取付板180、ひいては図2に示すロボット本体110(厳密にはロボット本体110の下部フレーム124)とフロート140が最も近接している状態となる。
【0034】
上シリンダ162および下シリンダ164に圧縮空気が供給されると、図4(b)に示すように上ピストン162aは上シリンダ162に対して上方に移動し、下ピストン164aは下シリンダ164に対して下方に移動する。これにより、上取付板170および下取付板180が離間し、ロボット本体110(厳密にはロボット本体110の下部フレーム124)に対してフロート140が上方に離れた状態となる。
【0035】
また図2に示すように本実施形態の回収ロボット100は、ロボット本体110を水中で推進させるスクリュー190を有する。スクリュー190としては、例えばモータと一体型のものを好適に用いることができる。図2ではスクリュー190が側部に2つ、後部に2つ(1つは見えていない)を配置されている構成を例示するが、これに限定するものではなく、スクリュー190の数は必要に応じて適宜変更してよい。
【0036】
図5は、本実施形態の回収ロボット100が水中を走行する様子を説明する模式図である。図6は、フロート140を有さない比較例の沈殿物回収ロボット(以下、回収ロボット50と称する)が水中を走行する様子を説明する模式図である。なお、図6に示す比較例の回収ロボット50において、実施形態の回収ロボット100と共通する構成要素については同一の符号を付すことにより説明を省略する。また図5および図6では、滞留水の(水面40aから水底40bまでの)水深は1.5m程度を想定している。
【0037】
図6に例示する比較例の回収ロボット50は、フロート140および離接機構160を有さない構成である。障害物12aの高さをHとし、図6に示す比較例10のクローラの動輪132の半径をRとしたとき、障害物の高さHがクローラ130の動輪132の半径Rよりも大きいと(H>R)、クローラ130ひいては回収ロボット50は障害物を乗り越えることができない。
【0038】
これに対し本実施形態の回収ロボット100では、通常走行時には離接機構160を伸長させて、図5(a)に示すようにフロート140をロボット本体110から離間させる。これにより、回収ロボット100がクローラ130によって水底40bを走行する。
【0039】
前方における障害物の存在を検出されたら、ロボット制御部102は離接機構160を収縮させる。すると、フロート140がロボット本体110に近接して浮体が水没した状態となり、回収ロボット100全体がフロート140の浮力によって浮上する。
【0040】
そしてフロート140が近接した状態でスクリュー190によってロボット本体110を水中で推進させることにより、図5(c)に示すように障害物を乗り越える。このように本実施形態の回収ロボット100によれば、フロート140の浮力を利用することにより水中に存在する障害物を乗り越えることができるため、水中の沈殿物の回収作業を効率的に進めることが可能である。
【0041】
また本実施形態の回収ロボット100のようにフロート140に浮力が作用することにより、回収ロボット100の姿勢が傾いた際でも倒れてしまうことがなく、正しい姿勢に復帰することができる。このため、回収ロボット100の姿勢を安定した状態で維持することが可能である。
【0042】
図7は、本実施形態の回収ロボット100の回収方法について説明する図である。沈殿物の回収作業の完了後や回収ロボット100の故障時には、図7に示すように回収ロボット100を浮上させた上で、フロートケーブル18を巻取装置24(図1参照)によって巻き取る、または手繰り寄せる。これにより、回収ロボット100を安全且つ確実に回収することができる。
【0043】
図8は、本実施形態の回収ロボット100の制御回路の模式図である。図8では、エアシリンダとして下シリンダ164を例示している。通常時は、図8に示すように下シリンダ164(エアシリンダ)には、原子力発電所建屋10(図1参照)に設置されたエアコンプレッサ32からの圧縮空気が空圧供給経路34を通じて供給される。
【0044】
空圧供給経路34は回収ロボット100において2つに分岐していて、分岐した2つの経路には、エアシリンダに圧縮空気を供給するバルブである第1バルブ166aおよび第2バルブ166bが設けられている。なお、エアシリンダから空気を排出する排気弁や排気管は図示を省略している。第1バルブ166aおよび第2バルブ166bは、遠隔制御装置22からの信号を受信したロボット制御部102からの制御信号によって開閉する。
【0045】
第1バルブ166aが開状態であり、第2バルブ166bが閉状態のとき、圧縮空気が供給されると下ピストン164aが下シリンダ164内を摺動して下シリンダ164の外に進出する。第1バルブ166aが閉状態であり、第2バルブ166bが開状態のとき、圧縮空気が供給されると下ピストン164aが下シリンダ内を摺動して下シリンダ164内に収容される。
【0046】
本実施形態の特徴として、回収ロボット100は、圧縮空気タンク192および開閉弁194を備える。圧縮空気タンク192は、ロボット本体110の上部フレーム122の内部に配置されていて(図2参照)、上シリンダ162、下シリンダ164に圧縮空気を供給する。圧縮空気タンク192と上シリンダ162、下シリンダ164との間には、圧縮空気タンク192を開閉する開閉弁194が配置されている。
【0047】
開閉弁194は、通常時、すなわち遠隔制御装置22からの制御信号が受信されている状態では閉状態となっている。遠隔制御装置22からの制御信号が途絶したら、ロボット制御部102は緊急制御部102aとして機能し、開閉弁194を開き、圧縮空気タンク192からの圧縮空気を上シリンダ162、下シリンダ164に供給する。
【0048】
上記構成によれば、遠隔制御装置22が故障したり、回収ロボット100が故障したりした場合等の緊急時に、圧縮空気タンク192からの圧縮空気が上シリンダ162、下シリンダ164に供給される。これによりフロート140がロボット本体110に近接し、フロート140の浮力によって回収ロボット100が水面40aに浮上する。したがって、緊急時にロボット本体110をより確実に回収することが可能となる。
【0049】
なお、上記説明した離接機構160の構成は、これに限定するものではない。他の例としては離接機構160が、電動モータと、電動モータによって進退するボールねじを含む構成としてもよい。この場合、回収ロボット100が、電動モータに電力を供給するバッテリー、電動モータを制御する緊急制御部を備える構成とし、電動モータに送信される制御信号が途絶したら、緊急制御部が電動モータを動作させて前記ボールねじを進退させるとよい。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、水中に沈殿している沈殿物を回収する水中沈殿物回収ロボットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…原子力発電所建屋、12…土嚢、12a…障害物、14…天井クレーン、16…フック、18…フロートケーブル、20…電源盤、22…遠隔制御装置、24…巻取装置、26…シャワー、28…移送ホース、30…ホースリール、32…エアコンプレッサ、34…空圧供給経路、40a…水面、40b…水底、50…回収ロボット、100…回収ロボット、102…ロボット制御部、102a…緊急制御部、110…ロボット本体、120…枠体、122…上部フレーム、122a…縦材、122b…横材、124…下部フレーム、124a…縦材、124b…横材、124c…ストッパ、130…クローラ、132…動輪、140…フロート、150…沈殿物吸込機構、152…吸込口、154…吸込ポンプ、154a…連結ホース、156…ジョイント装置、158…連結ホース、160…離接機構、162…上シリンダ、162a…上ピストン、164…下シリンダ、164a…下ピストン、166a…第1バルブ、166b…第2バルブ、168…支柱、170…上取付板、172…上ガイド板、172a…上ガイド穴、174…上ガイド棒、180…下取付板、182…下ガイド板、182a…下ガイド穴、184…下ガイド棒、190…スクリュー、192…圧縮空気タンク、194…開閉弁、P…集積場所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8