(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170114
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】燃料改質システム
(51)【国際特許分類】
F02M 27/02 20060101AFI20241129BHJP
F02M 31/20 20060101ALI20241129BHJP
F02M 31/135 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F02M27/02 U
F02M27/02 F
F02M27/02 V
F02M31/20 B
F02M31/135 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087096
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 克樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 琢也
(72)【発明者】
【氏名】井上 高志
(57)【要約】
【課題】改質触媒における燃料を含むガスの改質効率が向上する技術を提供する。
【解決手段】内燃機関の吸気系に配置される燃料改質システムは、流路部材と、燃料噴射装置と、改質触媒と、ガス拡散装置と、を備える。燃料噴射装置は、流路部材が構成する吸気流路内に燃料を噴射するように構成される。改質触媒は、吸気流路内における燃料噴射装置よりも下流側に位置し、空気と燃料との混合ガスを改質した改質ガスを生成するように構成される。ガス拡散装置は、吸気流路内における燃料噴射装置よりも下流側、かつ、改質触媒よりも上流側に位置し、加熱部と、拡散部と、を有する。混合ガスを加熱する加熱部、及び、混合ガスを拡散する拡散部は、一体に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系に配置される燃料改質システムであって、
空気が流れる吸気流路を構成する流路部材と、
前記吸気流路内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射装置と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側に位置し、前記空気と前記燃料との混合ガスを改質した改質ガスを生成するように構成された改質触媒と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側、かつ、前記改質触媒よりも上流側に位置し、前記混合ガスを加熱するように構成された加熱部と、前記混合ガスを拡散するように構成された拡散部と、を有するガス拡散装置と、
を備え、
前記加熱部及び前記拡散部は、一体に形成される、燃料改質システム。
【請求項2】
内燃機関の吸気系に配置される燃料改質システムであって、
空気が流れる吸気流路を構成する流路部材と、
前記吸気流路内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射装置と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側に位置し、前記空気と前記燃料との混合ガスを改質した改質ガスを生成するように構成された改質触媒と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側、かつ、前記改質触媒よりも上流側に位置し、前記混合ガスを拡散するように構成されたガス拡散装置と、
を備え、
前記ガス拡散装置は、前記混合ガスに旋回流を生じさせる、燃料改質システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料改質システムであって、
前記ガス拡散装置は、前記流路部材の内面に固定される固定部と、前記固定部の下流側の端部から突出する複数の羽根と、を有し、
前記複数の羽根は、前記混合ガスを旋回するように案内し、前記混合ガスを拡散させる、燃料改質システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の燃料改質システムであって、
前記吸気流路内における前記改質触媒よりも下流側に位置し、前記改質ガスを冷却するように構成された熱交換器を更に備える、燃料改質システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガス加熱部、ガス噴射ノズル、燃料供給ノズル及び改質触媒部を備える燃料改質器が開示されている。ガス加熱部、ガス噴射ノズル、燃料供給ノズル及び改質触媒部は、この順にガスの流れ方向に並んで改質器ハウジング内に収容される。この燃料改質器では、ガス加熱部によりキャリアガスが加熱され、加熱されたキャリアガスがガス噴射ノズルから噴射される。そして、ガス噴射ノズルの先端に燃料供給ノズルにより燃料が供給されることで、当該燃料がガス噴射ノズルから噴射されたキャリアガスにより微粒子化される。その後、微粒子化された燃料が改質触媒部で分解されて還元ガスに改質される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した燃料改質器では、改質触媒部にキャリアガスが到達する前に、燃料及びガス噴射ノズルとの接触によって加熱したキャリアガスの温度が低下したり、噴射されたキャリアガスにより燃料の微粒子化が十分にできなかったりする場合がある。このような場合には、改質触媒部における燃料を含むガスの改質効率が低下しやすいという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、改質触媒における燃料を含むガスの改質効率が向上する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、内燃機関の吸気系に配置される燃料改質システムであって、流路部材と、燃料噴射装置と、改質触媒と、ガス拡散装置と、を備える。流路部材は、空気が流れる吸気流路を構成する。燃料噴射装置は、吸気流路内に燃料を噴射するように構成される。改質触媒は、吸気流路内における燃料噴射装置よりも下流側に位置し、空気と燃料との混合ガスを改質した改質ガスを生成するように構成される。ガス拡散装置は、吸気流路内における燃料噴射装置よりも下流側、かつ、改質触媒よりも上流側に位置し、加熱部と、拡散部と、を有する。加熱部は、混合ガスを加熱するように構成される。拡散部は、混合ガスを拡散するように構成される。加熱部及び拡散部は、一体に形成される。
【0007】
このような構成によれば、混合ガスを加熱可能であるため、改質触媒に流入する混合ガスの温度を低下しにくくすることができる。また、混合ガスを加熱することで燃料の蒸気化を促しつつ、混合ガスが拡散されるため、改質触媒に流入する混合ガスの流れの偏りを抑制して、混合ガスを改質触媒の広い範囲に接触させやすくすることができる。したがって、改質触媒における混合ガスの改質効率を向上させることができる。
【0008】
本開示の一態様は、内燃機関の吸気系に配置される燃料改質システムであって、流路部材と、燃料噴射装置と、改質触媒と、ガス拡散装置と、を備える。流路部材は、空気が流れる吸気流路を構成する。燃料噴射装置は、吸気流路内に燃料を噴射するように構成される。改質触媒は、吸気流路内における燃料噴射装置よりも下流側に位置し、空気と燃料との混合ガスを改質した改質ガスを生成するように構成される。ガス拡散装置は、吸気流路内における燃料噴射装置よりも下流側、かつ、改質触媒よりも上流側に位置し、混合ガスを拡散するように構成される。また、ガス拡散装置は、混合ガスに旋回流を生じさせる。
【0009】
このような構成によれば、混合ガスが旋回流によって拡散されやすいため、改質触媒に流入する混合ガスの流れの偏りを抑制して、混合ガスを改質触媒の広い範囲に接触させやすくすることができる。したがって、改質触媒における混合ガスの改質効率を向上させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、ガス拡散装置は、固定部と、複数の羽根と、を有してもよい。固定部は、流路部材の内面に固定される。複数の羽根は、固定部の下流側の端部から突出する。複数の羽根は、混合ガスを旋回するように案内し、混合ガスを拡散させてもよい。このような構成によれば、混合ガスが、複数の羽根により旋回するように案内されて、ガス拡散装置よりも下流側の吸気流路内へ拡散するように流出するため、混合ガスの流れの偏りを抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様は、吸気流路内における改質触媒よりも下流側に位置し、改質ガスを冷却するように構成された熱交換器を更に備えてもよい。このような構成によれば、改質ガスの熱を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】燃料改質システムを模式的に示す流れ方向に沿った断面図である。
【
図3】
図3Aはガス拡散装置における拡散板の斜視図である。
図3Bは拡散板をその中心軸と直交する方向から見た側面図である。
図3Cは拡散板をその中心軸に沿って吸気流路の下流側となる方向から見た背面図である。
【
図4】ガス拡散装置における電極の配置の変形例を示す図である。
【
図5】燃料噴射装置における燃料の噴射方向の変形例を示す図である。
【
図6】燃料噴射装置における燃料の噴射方向の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示す燃料改質システム100は、車両に搭載される内燃機関の吸気系に配置される。内燃機関の吸気系とは、内燃機関に吸気するための部分、例えば、内燃機関に供給する空気などを流通させる吸気流路等をいう。すなわち、燃料改質システム100は、外気を取り込み可能な吸気ポートよりもガスの流れ方向の下流側、かつ、内燃機関よりもガスの流れ方向の上流側に位置し、内燃機関に供給する改質ガスを生成するためのものである。改質ガスは、燃料と空気との混合ガスを、後述する改質触媒4を通して改質することによって、生成される。
【0014】
図1に示す矢印Fは、ガスの流れ方向(以下、流れ方向とする)を示す。以下の説明では、流れ方向の上流側及び下流側を、単に上流側及び下流側と記載する。燃料改質システム100は、流路部材1と、燃料噴射装置2と、ガス拡散装置3と、改質触媒4と、熱交換器6と、を備える。
【0015】
流路部材1は、空気及びガスが流れる吸気流路を形成する。
図2に示すように、流路部材1は、例えば円筒状に形成された管である。流路部材1の中心軸Aが延びる方向は、流れ方向と一致する。
【0016】
燃料噴射装置2は、吸気流路内に燃料を噴射する。具体的には、燃料噴射装置2は、吸気流路内における後述するガス拡散装置3よりも上流側へ燃料を供給する供給装置として機能する。ここでいう燃料は、内燃機関に対応する燃料であり、例えば、ガソリン燃料等である。
図1に示すように、燃料噴射装置2は、吸気流路内に燃料を噴射可能に流路部材1の壁に固定される。本実施形態では、燃料噴射装置2は、流れ方向に対して略垂直な方向を向いて燃料を噴射する。
【0017】
改質触媒4は、吸気流路内における燃料噴射装置2よりも下流側に位置し、流入した混合ガスを改質し、改質ガスを生成する。具体的には、改質触媒4は、内部に担持された触媒成分の作用により、混合ガスに含まれる燃料及び空気中の水分から水素を含む改質ガスを生成する。改質触媒4は、触媒保持マット5により吸気流路内に保持される。触媒保持マット5は、改質触媒4と流路部材1との間の隙間に配置され、改質触媒4の外面と、流路部材1の内面と、を覆う。
【0018】
ガス拡散装置3は、吸気流路内における燃料噴射装置2よりも下流側、かつ、改質触媒4よりも上流側に位置する。本実施形態では、ガス拡散装置3は、混合ガスを加熱しつつ、混合ガスに旋回流を生じさせる。
図2に示すように、ガス拡散装置3は、第1電極31aと、第2電極31bと、拡散板10と、を有する。
【0019】
第1電極31a及び第2電極31bは、後述する拡散板10に巻き付けられた図示を省略する電熱線に通電可能に流路部材1に固定される。本実施形態では、第1電極31a、第2電極31b、拡散板10及び拡散板10に巻き付けられた電熱線は、一体に形成される。本実施形態では、第1電極31a及び第2電極31bは、中心軸Aを挟んで互いに対向する位置に配置される。第1電極31aと第2電極31bとの間に通電を行うことで、拡散板10が加熱される。拡散板10が加熱されることによって、拡散板10を通過する混合ガスが加熱され、燃料が蒸気化される。
【0020】
拡散板10は、流入した混合ガスを旋回(攪拌)するように案内することで、ガス拡散装置3よりも下流側の吸気流路へ混合ガスを拡散するように流出させる。混合ガスが拡散するとは、混合ガス自体が吸気流路内に拡散すること、及び、混合ガス内における燃料が吸気流路内に略均一に拡散することを意味する。これにより、拡散板10は、改質触媒4に流入する混合ガスの偏りを抑制する(均一に近づける)。
図3A~
図3Cに示すように、拡散板10は、筒状体11と、案内部12と、を備える。なお、
図3A及び
図3Bにおける矢印Fは、拡散板10への流入位置におけるガスの流れ方向(中心軸Aに沿った方向)を示す。
【0021】
筒状体11は、流路部材1の内面に溶接等で接合固定される部分であり、流路部材1の内径に対応した(例えば流路部材1の内径と同じ又はやや小さい寸法の)外径の円筒状に形成されている。筒状体11は、流路部材1と同軸となるように(当該筒状体11の中心軸が中心軸Aと一致するように)配置される。
【0022】
案内部12は、混合ガスを旋回するように案内するために筒状体11から突出して設けられた複数の羽根121,122を備える。本実施形態では、案内部12は、5枚の第1種の羽根121と、第1種の羽根121よりも径方向に沿った長さが短い(換言すれば、中心軸Aから先端までの間隔が大きい)5枚の第2種の羽根122と、を備える。第1種の羽根121及び第2種の羽根122は、それぞれが筒状体11の円周方向に沿って等間隔に配置され、第1種の羽根121及び第2種の羽根122が1枚ずつ交互に配置されている。
【0023】
複数の羽根121,122は、それぞれ、筒状体11の下流側の端部から、中心軸Aへ近づく方向へ延びるように形成されている。
図3Cに示すように、中心軸Aに沿った方向から見て、各羽根121,122の先端部(筒状体11の中心に近い部分)は、中心に向かって細くなる形状である。そして、複数の羽根121,122は、中心軸Aに沿った方向から見て、互いに重なり合わず、羽根同士の僅かな隙間を除き、羽根121,122の存在しない部分(開口部)が形成されないように設計されている。
【0024】
また、
図3Bに示すように、複数の羽根121,122のそれぞれにおける混合ガスの流れ方向に対向する対向面は、平面状であり、筒状体11の中心軸(中心軸A)に対し、混合ガスの流れをより阻害しにくい角度(迎角)θ1に形成されている。
【0025】
ガス拡散装置3は、次に記載する(A)触媒暖機モード及び(B)燃料改質モードの2つの動作モードを備える。(A)及び(B)の2つのモードは、別々に動作させたり、同時に動作させたりすることが可能である。なお、同時に動作させるモードは、説明の便宜上、(C)同時モードとして以下に説明する。
【0026】
(A)触媒暖機モード
触媒暖機モードでは、燃料噴射装置2による燃料の噴射が行われない状態において、拡散板10の加熱により吸気流路内の空気が温められる。この温められた空気により、改質触媒4が温められる。なお、改質触媒4は、その機能を発揮するためには、所定の温度に温められている必要がある。触媒暖機モードにより改質触媒4を温めることで、改質触媒4の機能を十分に発揮させることができるため、改質触媒4における混合ガスの改質効率が向上しやすい。
【0027】
(B)燃料改質モード
燃料改質モードでは、拡散板10が加熱されない状態において、拡散板10を通過させることにより混合ガスに旋回流を生じさせる。混合ガスを旋回させることにより、混合ガス(すなわち、混合ガス内における燃料)が拡散される。燃料改質モードにより混合ガスを拡散させることで、改質触媒4に流入する混合ガスの流れの偏りが抑制され、混合ガスが改質触媒4の広い範囲に接触しやすくなるため、改質触媒4全体で反応が促進される。その結果、改質触媒4における混合ガスの改質効率が向上しやすい。
【0028】
(C)同時モード
同時モードでは、拡散板10の加熱により混合ガスを温めることで、燃料の蒸気化を促しつつ、温められた混合ガスを拡散板10によって旋回させることで、混合ガスを拡散させる。同時モードにより燃料を蒸気化及び混合ガスを拡散させることで、改質触媒4に流入する混合ガスの流れの偏りが抑制され、混合ガスが改質触媒4の広い範囲に接触しやすくなるため、改質触媒4全体で反応が促進される。その結果、改質触媒4における混合ガスの改質効率が向上しやすい。
【0029】
熱交換器6は、吸気流路内における改質触媒4よりも下流側に位置する。熱交換器6は、改質触媒4を通過したガス(つまり、改質ガス)を、例えば冷媒との熱交換により冷却する。本実施形態では、冷却水通路61を流れる冷却水との間で熱交換を行うことで改質ガスを冷却し、熱が回収される。熱交換器6により冷却された改質ガスは、内燃機関に流入する。熱交換器6により回収した熱は、車両の空調の暖機やエンジンの潤滑油の暖めなどに活用される。
【0030】
熱交換器6は、次に記載する(D)第1熱回収モード及び(E)第2熱回収モードの2つの動作モードを備える。(D)及び(E)の2つのモードは、別々に動作させたり、同時に動作させたりすることが可能である。なお、同時に動作させるモードは、説明の便宜上、(F)第3熱回収モードとして以下に説明する。
【0031】
(D)第1熱回収モード
第1熱回収モードは、ガス拡散装置3が(A)触媒暖機モードにあるときの熱回収モードである。第1熱回収モードでは、改質触媒4に伝わりきらずに、当該改質触媒4を通過した空気の熱を回収する。
【0032】
(E)第2熱回収モード
第2熱回収モードは、ガス拡散装置3が(B)燃料改質モードにあるときの熱回収モードである。第2熱回収モードでは、改質触媒4による混合ガスの改質反応により高温な状態で生成された改質ガスの熱を回収する。
【0033】
(F)第3熱回収モード
第3熱回収モードは、ガス拡散装置3が(C)同時モードにあるときの熱回収モードである。第3熱回収モードでは、上記(D)における改質触媒4を通過した空気の熱と、上記(E)における改質ガスの熱と、を回収する。
【0034】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、改質触媒4に流入する直前に混合ガスをガス拡散装置3により加熱及び拡散することが可能である。このため、空気の加熱後に燃料を噴射させたり、混合ガスを加熱せずに拡散する拡散装置等を通過させたりする構成と比較して、改質触媒4に流入する混合ガスの温度を低下しにくくすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、加熱した拡散板10を通過させて混合ガスを加熱することで燃料の蒸気化を促しつつ、拡散板10の複数の羽根121,122により生じる旋回流によって混合ガスが拡散される。このため、改質触媒4に流入する混合ガスの流れの偏りを抑制して、混合ガスを改質触媒4の広い範囲に接触させやすくすることができる。したがって、改質触媒4における混合ガスの改質効率を向上させることができる。
【0036】
(2b)本実施形態では、ガス拡散装置3において、第1電極31a、第2電極31b、拡散板10及び拡散板10に巻き付けられた電熱線が一体に形成される。このため、加熱装置と拡散装置が別体の構成と比較して、部品点数を少なくすることができる。したがって、燃料改質システム100を小型化しやすい。
【0037】
(2c)本実施形態では、燃料改質システム100が熱交換器6を備えるため、改質ガス等の熱を回収することができる。そして、熱交換器6により回収した熱は、車両の空調の暖機やエンジンの潤滑油の暖機などに活用することができる。これにより、燃料改質システム100が搭載される車両の燃費を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、第1電極31a、第2電極31b及び拡散板10に巻き付けられた電熱線が加熱部の一例に相当し、拡散板10が拡散部の一例に相当する。また、筒状体11が固定部の一例に相当し、案内部12、第1種の羽根121及び第2種の羽根122が複数の羽根の一例に相当する。
【0039】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0040】
(3a)上記実施形態では、ガス拡散装置3が備える、第1電極31a、第2電極31b、拡散板10及び拡散板10に巻き付けられた電熱線が一体に形成されていたが、ガス拡散装置の構成はこれに限定されるものではない。例えば、ガス拡散装置は、混合ガスに旋回流を生じさせることで、ガスを拡散する機能のみを有する構成であってもよい。この場合、例えば、燃料改質システムは、燃料噴射装置よりも下流側、かつ、ガス拡散装置よりも上流に位置し、混合ガスを加熱する加熱装置を備えてもよい。
【0041】
(3b)上記実施形態では、ガス拡散装置3の拡散板10が筒状体11及び複数の羽根121,122(すなわち、案内部12)を有する構成であったが、拡散板の構成はこれに限定されるものではない。例えば、拡散板は、混合ガスを拡散可能な構成であれば、様々な形を取り得る。
【0042】
(3c)上記実施形態では、燃料改質システム100が熱交換器6を備える構成を例示したが、例えば、燃料改質システムは、熱交換器を備えない構成であってもよい。
(3d)上記実施形態では、燃料改質システム100が車両に搭載される内燃機関の吸気系に配置される構成を例示したが、例えば、燃料改質システムは、発電機に搭載される内燃機関の吸気系に配置されてもよい。
【0043】
(3e)上記実施形態では、第1電極31aと第2電極31bとの間に通電を行い、拡散板10に巻き付けられた電熱線が加熱されることで、拡散板10が加熱される構成を例示したが、拡散板を加熱する方法はこれに限定されるものではない。例えば、拡散板を金属により形成し、拡散板自体に抵抗を持たせて、第1電極31aと第2電極31bとの間に通電し、拡散板に電流を流すことで発熱させてもよい。
【0044】
(3f)上記実施形態では、第1電極31a及び第2電極31bが、互いに対向する位置に配置されていたが、ガス拡散装置の構成はこれに限定されるものではない。例えば、
図4に示すように、ガス拡散装置3aにおける第1電極31a及び第2電極31bは、中心軸Aを中心とする周方向において、互いに近接する位置に配置されてもよい。このように、第1電極31a及び第2電極31bが近接して配置される場合、拡散板10aにおける第1電極31a及び第2電極31bの間には、切れ目が形成される。
【0045】
(3g)上記実施形態では、燃料噴射装置2による燃料の噴射が、流れ方向に対して略垂直な方向を向いて行われたが、燃料の噴射方向はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、燃料改質システム100bの燃料噴射装置2bは、上流側に向かうように、流れ方向に対して斜めを向いて燃料を噴射してもよい。また、例えば、
図6に示すように、燃料改質システム100cの燃料噴射装置2cは、下流側に向かうように、流れ方向に対して斜めを向いて燃料を噴射してもよい。
【0046】
(3h)上記実施形態では、拡散板10における複数の羽根121,122の流れ方向の対向面が平面状であったが、当該対向面は平面に限定されるものではない。例えば、複数の羽根の少なくとも一部は、対向面にエンボスなどの凹凸加工が施されていてもよい。これにより、複数の羽根の表面積を増加させることができるため、混合ガスへの伝熱量を増加させやすい。なお、複数の羽根における凹凸は、プレス等により形成されてもよいし、被膜を施すことによって形成されてもよい。
【0047】
(3i)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0048】
[4.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
内燃機関の吸気系に配置される燃料改質システムであって、
空気が流れる吸気流路を構成する流路部材と、
前記吸気流路内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射装置と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側に位置し、前記空気と前記燃料との混合ガスを改質した改質ガスを生成するように構成された改質触媒と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側、かつ、前記改質触媒よりも上流側に位置し、前記混合ガスを加熱するように構成された加熱部と、前記混合ガスを拡散するように構成された拡散部と、を有するガス拡散装置と、
を備え、
前記加熱部及び前記拡散部は、一体に形成される、燃料改質システム。
【0049】
[項目2]
内燃機関の吸気系に配置される燃料改質システムであって、
空気が流れる吸気流路を構成する流路部材と、
前記吸気流路内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射装置と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側に位置し、前記空気と前記燃料との混合ガスを改質した改質ガスを生成するように構成された改質触媒と、
前記吸気流路内における前記燃料噴射装置よりも下流側、かつ、前記改質触媒よりも上流側に位置し、前記混合ガスを拡散するように構成されたガス拡散装置と、
を備え、
前記ガス拡散装置は、前記混合ガスに旋回流を生じさせる、燃料改質システム。
【0050】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の燃料改質システムであって、
前記ガス拡散装置は、前記流路部材の内面に固定される固定部と、前記固定部の下流側の端部から突出する複数の羽根と、を有し、
前記複数の羽根は、前記混合ガスを旋回するように案内し、前記混合ガスを拡散させる、燃料改質システム。
【0051】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の燃料改質システムであって、
前記吸気流路内における前記改質触媒よりも下流側に位置し、前記改質ガスを冷却するように構成された熱交換器を更に備える、燃料改質システム。
【符号の説明】
【0052】
1…流路部材、2,2b,2c…燃料噴射装置、3,3a…ガス拡散装置、4…改質触媒、5…触媒保持マット、6…熱交換器、10,10a…拡散板、11…筒状体、12…案内部、31a…第1電極、31b…第2電極、61…冷却水通路、100,100b,100c…燃料改質システム、121,122…羽根、A…中心軸。