(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170125
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/51 20230101AFI20241129BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20241129BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241129BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20241129BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20241129BHJP
【FI】
H04N23/51
H04N23/50
G03B15/00 P
G03B17/55
G03B17/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087115
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】守矢 怜子
【テーマコード(参考)】
2H104
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H104CC00
2H105AA06
2H105EE05
5C122EA02
5C122EA05
5C122GE01
5C122GE09
5C122GE11
5C122GE20
5C122HA75
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性能と加熱性能とを効果的に両立させ、過酷な環境下でも鮮明な画像を取得することのできる撮像装置を実現する。
【解決手段】ドームカメラ100は、筐体、ドームカバー140、カメラユニット200、第1の熱伝導部材170、及びヒータ180を備え、ドームカバー140は略半球状のドーム部141と、ドーム部141と接続されるドームフランジ部142を有し、第1の熱伝導部材170は中心が開口した略円環形状で形成されており、ドームフランジ部142の上側に配置され、ヒータ180はドームフランジ部142と第1の熱伝導部材170との間に配置され、第1の熱伝導部材170は、ドームフランジ部142を加熱する第1の加熱部171と、ドーム部141のカメラユニット撮影範囲外を加熱する第2の加熱部142を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラユニットと、
略半球状のドーム部と、前記ドーム部に接続される環状の縁部分とを有し、前記カメラユニットを覆うドームカバーと、
前記縁部分に配置されており、前記縁部分を通じて前記ドームカバーを加熱するヒータと、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記ドームカバーの一部と近接するように配置されており、前記ヒータの熱を前記ドームカバーに伝達する第1の熱伝導部材を更に備える、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の熱伝導部材は、
前記ヒータに配置される第1の加熱部と、
前記第1の熱伝導部と接続されて前記ドームカバーの下方領域に配置される第2の加熱部と、
を有する、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2の加熱部は、前記カメラユニットによる撮影範囲外の領域に位置する、
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の熱伝導部材は、前記縁部分に沿った環状に形成されている、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記縁部分は、頂部から底面に向かうほど厚みが漸増する形状を有しており、
前記ヒータは、前記底面の下方に位置する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ドームカバーは、前記縁部分であって前記ドーム部に接続されたドームフランジ部を有しており、
前記ヒータは、前記ドームフランジ部の上方に配置されている、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記ドームカバーと前記第2の加熱部との間に、押圧された状態で配置されている第2の熱伝導部材を更に備える、
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記カメラユニットの撮像領域が露出するように前記ドームカバーを覆う筐体を更に備える、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の熱伝導部材と前記筐体との間に配置され、前記第1の熱伝導部材を前記ヒータに対して押圧する弾性部材を更に備える、
請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記弾性部材は断熱材料を有している、
請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記弾性部材は、前記ヒータの一部と当接する突出部を有している、
請求項10又は11に記載の撮像装置。
【請求項13】
断熱材料を有するドームホルダを更に備えており、
前記ドームカバーは、前記ドームホルダによって前記筐体に固定されている、
請求項9に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記ドームホルダに近接配置するように、前記筐体に固定されたベースカバーを更に備える、
請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記ヒータは接続部を有しており、
前記接続部が前記ドームホルダの下方に配置された第1のヒータ基板に接続されている、
請求項13に記載の撮像装置。
【請求項16】
第2のヒータ基板と、
前記第1のヒータ基板と前記第2のヒータ基板とを電気的に接続する電気接点と、
を更に備えており、
前記第1のヒータ基板と前記第2のヒータ基板とが通電し、前記ヒータの発熱が可能とされる、
請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記ヒータは、複数の発熱領域を有している、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記カメラユニットの撮影方向を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記撮影方向に応じて、各々の前記発熱領域の発熱を選択的に制御する制御部と、
を有する発熱制御機構を更に備える、
請求項17に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外で用いられるドームカメラは、ドームカバーへの氷雪の付着や結露の発生によって所望の撮影画像が取得できない虞がある。そのため、氷雪や結露を除去する目的でドームカバーを加熱する構造が必要とされてきた。
【0003】
従来より、ドームカバーの加熱方法としては、赤外照明や撮像素子等を加熱部品として利用する方法や、ヒータを用いて加熱する方法が採用されてきた。しかしながら、赤外照明や撮像素子等をドームカバーに対する加熱部品として利用する方法は発熱量が小さく、ドームカバーを十分に加熱することができない。そのため、より多くの熱量を得るためにはヒータを搭載する方法が効果的である。ヒータを用いる方法としては、熱伝導部材を用いてヒータの熱をドームカバーに伝える方法、ドームカバー内側へ透明な導電膜のコーティングやフィルム状ヒータの付着を行う方法等がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、ドーム内面に透明のヒータを配置してドームカバーの加熱を行うドームカメラが開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のドームカメラでは、透明電動膜ヒータや、視認されない電熱線をパターニングしたフィルムヒータを用いてドームカバーを加熱している。しかしながら、ドームは半球形状であるため、衝撃が加わった時に変形量が大きい。そのため、ドームの内側にヒータを付着させると、ドームにクラックや剥離が生じ易い。その結果、断線によってヒータが機能しなくなったり、剥離によってドームへの加熱が不十分となったりする虞がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ドームカバーに衝撃が加わった際にも、ドームカバーを加熱することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像装置は、カメラユニットと、略半球状のドーム部と、前記ドーム部に接続される環状の縁部分とを有し、前記カメラユニットを覆うドームカバーと、前記縁部分に配置されており、前記縁部分を通じて前記ドームカバーを加熱するヒータと、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐衝撃性能と加熱性能とを両立し、過酷な環境下でも鮮明な画像を取得することができる撮像装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態による撮像装置の第1の態様の基本概念を示す概略断面図である。
【
図2】本実施形態による撮像装置の第2の態様の基本概念を示す概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係るドームカメラを模式的に示す断面図である。
【
図4】本実施形態のドームカメラに係る上カバーユニットを分解して示す斜視図である。
【
図5】本実施形態のドームカメラに係るヒータ及びその周辺構成の詳細を示す断面図である。
【
図6】本実施形態のドームカメラに係るヒータ及びその周辺構成の他の例を示す断面図である。
【
図7】本実施形態に係るヒータの発熱部を模式的に示す上面図である。
【
図8】本実施形態のドームカメラに係るヒータにおいて所期の発熱領域を選択的に発熱させる発熱制御機構を模式的に示すブロック図である。
【
図9】本実施形態のドームカメラに係る下カバーユニットの斜視図である。
【
図10】本実施形態のドームカメラに係るヒータ接続部の詳細構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態について詳述するにあたり、先ず、本実施形態における撮像装置の基本概念について説明する。
【0012】
-本実施形態による撮像装置の基本概念-
本実施形態による撮像装置は、例えば、撮影を行うカメラユニット及びカメラユニットを覆う略半球郭状の透明のドームカバー等を備えたドームカメラである。この撮像装置は主に屋外で使用されるものであることから、氷雪や結露等を除去すべくドームカバーを加熱するためのヒータを備えている。本実施形態では、ドームカバーの平面視で環状の縁部分に、当該縁部分の形状や位置等に適合してヒータが配置されている。この縁部分にヒータを配置することにより、縁部分を通じてドームカバーが適宜加熱される。
【0013】
このように、本実施形態の撮像装置では、ドームカバー内に収容されるカメラユニットとは非接触状態の別体としてヒータが配置されているため、カメラユニットに影響を及ぼすことなくカメラユニットを電動で自在に動作させることができる。本実施形態では、ヒータがドームカバーの縁部分に配置されており、ヒータが衝撃の影響を受け易いドームカバーの内面等に配置される場合に比べて耐衝撃性に優れている。本実施形態におけるヒータは、ドームカバーの縁部分の形状や位置等に適合して当該縁部分に配置されており、当該縁部分からドームカバーを効率良く加熱することが可能であって、加熱性能に優れている。このように、本実施形態によれば、耐衝撃性能と加熱性能とを両立し、過酷な環境下でも鮮明な画像を取得することができる撮像装置が実現する。
【0014】
本実施形態の撮像装置としては、例えば以下のような諸態様が考えられる。
【0015】
[第1の態様]
図1は、本実施形態による撮像装置の第1の態様の基本概念を示す概略断面図である。
図1では、第1の態様に係るドームカメラ1について、カメラユニット、カメラユニットを覆うドームカバー、及びドームカバーを適宜加熱するヒータにのみ符号を付する。
【0016】
ドームカメラ1においては、撮影を行うカメラユニット11を覆う透明のドームカバー12が設けられている。ドームカバー12は、略半球郭状のドーム部12aに縁部分12bが接続されて構成されている。縁部分12bは、平面視で円環状であり、ドーム部12aと略同じ厚みとされた頂部12aAから底面12aBに向かうほど厚みが漸増する形状、第1の態様では略断面三角形状とされている。ヒータ13は、底面12aBに適合して底面12aBの幅と略同じ幅の円環状とされており、縁部分12bの下方で例えば底面12aBに当接して設けられている。
【0017】
ここで、ヒータ13下に所定の弾性部材を設けるようにしてもよい。これにより、ドーム部12aが衝撃を受けた場合に、当該衝撃が弾性部材で吸収され、ヒータ13に与えられる衝撃が緩和される。
【0018】
このように、第1の態様に係る撮像装置では、ヒータ13がドームカバー12の縁部分12bに設けられているため、ドーム部12aが衝撃を受けた場合にヒータ13は縁部分12bで保護されており、衝撃の影響を受け難い構造とされている。ヒータ13はドームカバー12において最も幅広とされた縁部分12bの底面12aBに配置されているため、ヒータ13の駆動により縁部分12bを起点としてドーム部12aを効率良く加熱することができる。このように、第1の態様によれば、比較的簡易な構成で耐衝撃性能と加熱性能とを両立する撮像装置が実現する。
【0019】
[第2の態様]
図2は、本実施形態による撮像装置の第2の態様の基本概念を示す概略断面図である。
図2では、第2の態様に係るドームカメラ1について、カメラユニット、カメラユニットを覆うドームカバー、及びドームカバーを適宜加熱するヒータにのみ符号を付する。
【0020】
ドームカメラ1においては、撮影を行うカメラユニット11を覆う透明のドームカバー12が設けられている。ドームカバー12は、略半球郭状のドーム部12aに縁部分12cが接続されて構成されている。縁部分12cは、平面視で円環状であり、ドーム部12aの端部から外方へ突出したフランジとして設けられている。ヒータ13は、縁部分12cの上面12cAに適合した円環状とされており、上面12cAの上方で例えば上面12cAに当接して設けられている。
【0021】
ここで、ヒータ13上に所定の弾性部材を設けるようにしてもよい。これにより、ドーム部12aの側面でヒータ13を覆う上カバーが衝撃を受けた場合に、当該衝撃が弾性部材で吸収され、ヒータ13に与えられる衝撃が緩和される。
【0022】
このように、第2の態様に係る撮像装置では、ヒータ13がドームカバー12の縁部分12cに設けられている。そのため、ドーム部12aが衝撃を受けた場合にヒータ13はドーム部12aから離れた縁部分12cで保護されており、衝撃の影響を受け難い状態とされている。ヒータ13はドームカバー12において幅広とされたフランジ状の縁部分12cの上面12cA上に配置されているため、ヒータ13の駆動により縁部分12cを起点としてドーム部12aを効率良く加熱することができる。このように、第2の態様によれば、比較的簡易な構成で耐衝撃性能と加熱性能とを両立する撮像装置が実現する。
【0023】
-本実施形態による撮像装置の具体的構成-
以下、本発明を適用できる好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、上述した第2の態様に係る撮像装置の具体例を開示する。なお、以下の説明において、複数の図面に亘って共通する構成部材については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成部材を説明し、共通の符号を付した構成部材については適宜説明を省略する。
【0024】
ここでは、撮像装置の例として、ドームカメラを挙げて説明する。
図3は、本実施形態に係るドームカメラを模式的に示す断面図である。
ドームカメラ100は、映像の撮影と記録が可能である。ドームカメラ100は、上カバー110及び下カバー120を有して構成される筐体を備えている。上カバー110及び下カバー120はそれぞれ、例えば金属ダイキャストやPC等の樹脂成型で作製することができる。上カバー110と下カバー120との間には、降雪や降雨時の筐体内部への水の侵入を防ぐための防水部材130が配置されている。防水部材130は、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料を用いて作製される。そして、上カバー110と下カバー120とは、互いにネジやスナップフィット等で締結されている。
【0025】
上カバー110は、映像を撮影するための開口を有している。そして、筐体内部に収容されるレンズやその他の部品を衝撃やゴミから保護するために、上カバー110の開口部を塞ぐドームカバー140が配置されている。ドームカバー140は、例えばポリカーボネート等の透明樹脂材料で作製される。
【0026】
筐体内部には、フロントカバー210及びリアカバー220によって覆われたカメラユニット200が配置されている。筐体は、カメラユニット200の撮像領域が露出するようにドームカバー140を覆っている。カメラユニット200は、内部にレンズ230、センサ基板240に実装された撮像素子250、レンズホルダ260、及びセンサケーブル270を有している。カメラユニット200は、ドームカバー140を通じて受光した光を撮像素子250で電気信号に変換する。カメラユニット200は、パン、チルト、ローテーション等の各動作が可能である。手動または電動によってカメラユニット200を回転させることで、所望の撮影方向の画像を取得することが可能となっている。
【0027】
メイン基板310は、下カバー120に対してねじ等の固定部材により固定されている。メイン基板310は、電源供給、カメラ制御、ネットワークへの接続等、ドームカメラ100全体の制御機能を担っている。メイン基板310とセンサ基板240とはセンサケーブル270によって接続されており、撮像素子250によって取得された撮像データはメイン基板310へと伝送される。そして、受け取った撮像データの記録やネットワーク上への配信がメイン基板310によって行われる。
【0028】
ベースカバー410は、メイン基板310を覆うように下カバー120に対して固定されている。ベースカバー410は、メイン基板310に対する目隠し保護の役割や衝撃から保護する役割等を担っている。そのため、ベースカバー410は、例えばガラス繊維強化プラスチックや金属ダイキャスト等の高強度材料で作製される。
【0029】
図4は、本実施形態のドームカメラに係る上カバーユニットを分解して示す斜視図である。
図5は、本実施形態のドームカメラに係るヒータ及びその周辺構成の詳細を示す断面図である。
第1の熱伝導部材170、第2の熱伝導部材160、ヒータ180、ドームホルダ190、及び弾性部材150は、全て撮影範囲が開口している。ドームカバー140は、略半球状のドーム部141と、ドーム部141の縁部分としてドーム部141に接続されて外方に突出する平面視で円環形状のドームフランジ部142とを有している。ヒータ180は、発熱部181と、これに接続された接続部182とを有しており、発熱部181がドームフランジ部142上に当接して配置されている。
【0030】
第1の熱伝導部材170は、第1の加熱部171と第2の加熱部172とが接続された略円環形状を有する部材である。第1の熱伝導部材170は、優れた熱伝導率を有する材料、例えばアルミニウムや銅等の金属材料で作製されている。熱伝導性に優れたものであれば、非金属材料である例えば樹脂材料を用いてもよい。
【0031】
第1の熱伝導部材170は、ドームフランジ部142の上面からドーム部141の一部である下方領域に架けて近接配置されている。第1の加熱部171がドームフランジ部142の上方でヒータ180の発熱部181に当接し、第2の加熱部172がドーム部141の下方領域と対向している。これにより、発熱部181はドームフランジ部142と第1の熱伝導部材170の第1の加熱部171との夫々に近接した状態となる。そのため、発熱部181はドームフランジ部142を加熱するだけなく、第1の熱伝導部材170を通じてドーム部141の下方領域を加熱することができる。また、第2の加熱部172は、カメラユニット200による撮影範囲外の領域に位置している。そのため、第2の加熱部172はカメラユニット200の所期の撮影を妨げることなくドーム部141を加熱することができる。
【0032】
ヒータ180を駆動することにより、発熱部181が当接するドームフランジ部142から発熱部181の熱がドーム部141に伝達することに加えて、発熱部181が近接する第1の熱伝導部材170を通じて発熱部181の熱がドーム部141に伝達する。このように、ヒータ180は、ドームカバー140の縁部分であるドームフランジ部142のみならず、ドーム部141の天頂により近い位置であるドーム部141の下方領域に熱を与える。ヒータ180と共に第1の熱伝導部材170を用いることで、より確実にドーム部141における撮影範囲の全域を加熱することができる。
【0033】
更に、第1の加熱部171が発熱部181に対して押圧させた状態にして固定されている。これにより、発熱部181との間に熱伝導率の低い空気層が形成されることを防ぐことができるため、より効果的にドーム部141を加熱することができる。
【0034】
更に、第2の加熱部172とドーム部141との間に、第2の熱伝導部材160が配置されている。第2の熱伝導部材160は、熱伝導率に優れた弾性ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料、放熱グリス等の液状潤滑剤で作製することができる。第2の加熱部172をドーム部141の全周に完全に接触するように加工することは難しく、ドーム部141と第2の加熱部172との間には微小な隙間が生じる可能性がある。この隙間は熱伝導率の低い空気層となるため、第2の加熱部172からドーム部141への熱伝導の妨げとなる。そこで、弾性材料である第2の熱伝導部材160を第2の加熱部172とドーム部141の間に配置することで、空気層の形成を防ぐことができる。これにより、第2の加熱部172からドーム部141への加熱効率を向上させることができる。ただし、第2の加熱部172を近接するだけも使用用途に十分な加熱を行うことができれば、第2の熱伝導部材160は省略することができる。
【0035】
第2の熱伝導部材160は、ドーム部141と第2の加熱部172との間から筐体内部への降雪や降雨時の水の侵入を防ぐ役割も担うことができる。このとき、水圧に対抗できる安定した圧力を形成させるため、第2の熱伝導部材160をドームフランジ部142まで延長してもよい。また、第2の熱伝導部材160を上カバー110と第1の熱伝導部材170との間に延長することで水の侵入を防ぐようにしてもよい。第2の熱伝導部材160を省略した場合には、ドームカバー140と第1の熱伝導部材170との間に、これに代わる弾性部材または接着剤等を配置することで水の侵入を防ぐことができる。或いは、第2の熱伝導部材160と防水用の別部材とを同時に併用してもよい。
【0036】
第1の熱伝導部材170と上カバー110との間には、突出部151を有する弾性部材150が配置されている。弾性部材150は、弾性ゴムや熱可塑性エラストマ―などの弾性材料で形成することができる。弾性部材150は上カバー110に衝撃が印加されたときに緩衝材の役割を果たすためことができるため、発熱部181へのダメージを軽減させることができる。更に、弾性部材150を熱伝導率の低い例えば断熱材料で形成することによって、発熱部181の熱が上カバー110へと拡散してドーム部141への加熱が不十分となることを防止することができる。また、この弾性部材150によって上カバー110と第1の熱伝導部材170の間から筐体内部への水を侵入することも防止することができる。
【0037】
ドームカバー140は、ドームホルダ190によって上カバー110へと固定されている。これにより、ドームカバー140と共に、第1の熱伝導部材170、第2の熱伝導部材160、ヒータ180、及び弾性部材150は全て上カバー110に対して固定された状態となる。ドームホルダ190は、熱伝導率の低い樹脂等の例えば断熱材料で作製される。これにより、ドームカバー140へ伝達された熱がドームホルダ190を通じて上カバー110へと拡散してドーム部141への加熱が不十分となることを防止することができる。
【0038】
ベースカバー410には、ドームホルダ190に近接した受けリブ411が形成されている。近接させることで、受けリブ411はドーム部141に衝撃が加わった際にドームホルダ190を受け止めることができる。そのため、ドームカバー140やドームホルダ190の変形を抑制することができ、発熱部181や第2の加熱部172の接触が離れて加熱が不十分となることを防止することが可能となる。
【0039】
なお、例えば
図6に示すように、ヒータ180の発熱部181と、第1の熱伝導部材170の第1の加熱部171との配置箇所を入れ替えることも考えられる。この場合、第1の加熱部171がドームフランジ部142上に当接し、第1の加熱部171上に発熱部181が当接する。発熱部181は、第1の熱伝導部材170を通じてドームカバー140を加熱する。具体的には、第1の加熱部171を通じてドームフランジ部142を、第2の加熱部172を通じてドーム部141の下方領域をそれぞれ加熱する。これにより、確実にドーム部141における撮影範囲の全域を加熱することができる。
【0040】
更にこの場合、発熱部181は第1の加熱部171と弾性部材150との間に位置することになるところ、発熱部181が弾性部材150と直接的に接触して押圧を受けて安定して保護される。この場合、発熱部181が弾性部材150により弾性的に保持されているため、上カバー110に衝撃が印加された際に、発熱部181の受ける衝撃の影響が弾性部材150によって緩和される。
【0041】
以下、本実施形態に係るヒータの構成及びその機能について説明する。
図7は、本実施形態に係るヒータの発熱部を模式的に示す上面図であり、(a)が発熱部の第1例を、(b)が発熱部の第2例をそれぞれ表している。
図7では、ヒータの発熱部181に電気的に接続された接続部の図示を省略している。
【0042】
図7(a)の第1例では、発熱部181は、円環状の導体板21上に複数(図示の例では4つ)の発熱領域22a,22b,22c,22dを有している。これらの発熱領域22a,22b,22c,22dは、それぞれ選択的に発熱可能とされている。ヒータ181は、例えばフレキシブルプリント配線板(FPC)を用いて作製されたFPCヒータであり、非導体のベースフィルム(不図示)の間に導体がパターニングされてなる発熱領域22a,22b,22c,22dを有するヒータである。発熱部181は、発熱領域22a,22b,22c,22dに電圧を印加することによって発熱する構造とされている。
【0043】
発熱部181では、発熱領域22a,22b,22c,22dの線幅や密度によって抵抗値を変えることで加熱能力を変化させることが可能である。発熱部181は導体がパターニングされている部分であり、パターンの線幅を小さくして密度を大きくすることで抵抗値を大きくしている。この状態で電圧を印加することにより、発熱領域22a,22b,22c,22dを発熱させてヒータとして機能させる。一方、導体板21と接続された接続部182(
図4で図示されており、
図7では不図示)は、そのパターンの線幅を大きくして抵抗値を小さくすることで、電圧が印加されても発熱を抑えた構成とされている。この構成により、接続部182の接続先が加熱されて破損することが防止される。本実施形態では、ヒータ180はFPCで形成されたヒータを例として挙げているが、シリコンラバーヒータ等、ヒータとしての役割を担うものであればこれに限らない。
【0044】
図7(b)の第2例では、発熱部181は、各々の円環状の導体板上に発熱領域22a,22b,22c,22dが独立に設けられた、複数の例えばFPCヒータ部からなる。第1例と同様に、これらの発熱領域22a,22b,22c,22dは、それぞれ選択的に発熱可能とされている。
【0045】
図8は、本実施形態のドームカメラに係るヒータにおいて所期の発熱領域を選択的に発熱させる発熱制御機構を模式的に示すブロック図である。
本実施形態では、例えばメイン基板310または後述する第2のヒータ基板340に発熱制御機構30が設けられている。発熱制御機構30は、カメラユニット200の撮影方向検出部31と、ヒータ180のヒータ制御部32とを有している。撮影方向検出部31は、カメラユニット200のレンズ230が向けられた撮影方向を検出する。ヒータ制御部32は、ヒータ180の各発熱領域について、それぞれ独立に発熱制御を行うことができる。ここでは、ヒータ制御部32は、撮影方向検出部31で検出された撮影方向に対応するドーム部141の部分を特定し、ヒータ180の複数の発熱領域のうちで当該部分の加熱を担当する発熱領域を選択して電圧印加し、当該発熱領域を発熱させる。このように、発熱制御機構30を用いることにより、撮影が行われる方向に対応したドーム部141の加熱を必要とする部分の発熱領域を選択して発熱させて、当該部分について融雪や結露除去を適宜行うことができる。なお、発熱制御機構30等の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールにより構成されて良い。プロセッサは、例えば、GPU(Graphical Processing Unit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等であっても良い。また、当該各構成要素は、ASIC等の特定の機能を果たす回路等によって構成されても良い。
【0046】
ここで、状況によっては、カメラユニット200の撮影方向に対応するドーム部141の部分の加熱を担当する発熱領域のみでは、ドーム部141の加熱が十分とはいえない場合も考えられる。このような場合を想定して、ヒータ制御部32は、当該発熱領域と共に、当該発熱領域に隣接する(左右の一方側または両側)に配設されている発熱領域も発熱させるようにしてもよい。このとき、ヒータ制御部32は、撮影方向に対応するドーム部141の部分の加熱を担当する発熱領域の発熱量を大きく設定し、隣接する発熱領域についてはこれよりも小さい発熱量に設定することも可能である。必要に応じて全ての発熱領域を発熱させることもできる。このように、必要な発熱領域を目的に応じて選択的に発熱させることができるため、ヒータ180の使用時の電力を削減することが可能となる。
【0047】
図9は、本実施形態のドームカメラに係る下カバーユニットの斜視図である。
図10は、本実施形態のドームカメラに係るヒータ接続部の詳細構成を示す断面図である。
ドームホルダ190下には、第1のヒータ基板320が固定されている。ヒータ基板320にはコネクタ330が実装されており、接続部182をコネクタ330へと挿入することにより、ヒータ180と第1のヒータ基板320とが電気的に接続される。ヒータ180と第1のヒータ基板320とが接続されるのであれば、接続部182にはケーブル等の別部品を用いてもよい。例えば、第1のヒータ基板320は、ヒータ180に通電を行うための中継基板の役割を担っている。そのため、第1のヒータ基板320には金メッキ等で導通部が形成されている。
【0048】
第2のヒータ基板340は、下カバー120側に配置されるようにベースカバー410上に固定され、ケーブルコネクタやBtoBコネクタ等によってメイン基板310と電気的に接続されている。下カバー120側に固定されるのであれば、ベースカバー410に限らず他の部品や下カバー120に固定するようにしてもよい。例えば、第2のヒータ基板340は、ヒータ180への電源供給や温度制御等の役割を担っている。そして、第2のヒータ基板340上にはピン形状の電気接点350が実装されている。この電気接点350は弾性構造体であり、力を加えるとピンが上下にスライドするように構成されている。電気接点350は、弾性構造体であれば板バネやコイルバネ等で構成されてもよい。
【0049】
一方、第1のヒータ基板320はドームホルダ190下に固定されている。そして、第1のヒータ基板320は、上カバー110と下カバー120とを組み合わせた状態で第2のヒータ基板340上に位置するように配設されている。これにより、第1のヒータ基板320の導通部が電気接点350と接触した状態とすることができる。これにより、上カバー110と下カバー120とを組み合わせることにより、電気接点350を通じて第2のヒータ基板340から第1のヒータ基板320へと電流を流すことが可能である。そして、接続部182を通じて発熱部181を発熱させることができる。
【0050】
接続部182と上カバー110との間には、弾性部材150の突出部151が配置されている。上カバー110に衝撃が印加されたときに、突出部151は緩衝材の役割を果たすためことができるため、発熱部181へのダメージを軽減させることができる。接続部182に対する衝撃を緩和することができるのであれば、弾性部材150とは別の弾性部材を設けて接続部182を保護するようにしてもよい。
【0051】
以上の構成により、衝撃が印加されてもヒータ180の機能が損なわれず、発熱部181の熱を第1の熱伝導部材170を通じてドームカバー140に与えることで、ドーム部141を効率良く加熱することのできるドームカメラ100が実現する。
【0052】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
カメラユニットと、
略半球状のドーム部と、前記ドーム部に接続される環状の縁部分とを有し、前記カメラユニットを覆うドームカバーと、
前記縁部分に配置されており、前記縁部分を通じて前記ドームカバーを加熱するヒータと、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
(構成2)
前記ドームカバーの一部と近接するように配置されており、前記ヒータの熱を前記ドームカバーに伝達する第1の熱伝導部材を更に備える、
構成1に記載の撮像装置。
(構成3)
前記第1の熱伝導部材は、
前記ヒータに配置される第1の加熱部と、
前記第1の熱伝導部と接続されて前記ドームカバーの下方領域に配置される第2の加熱部と、
を有する、
構成2に記載の撮像装置。
(構成4)
前記第2の加熱部は、前記カメラユニットによる撮影範囲外の領域に位置する、
構成3に記載の撮像装置。
(構成5)
前記第1の熱伝導部材は、前記縁部分に沿った環状に形成されている、
構成2~4のいずれか1つに記載の撮像装置。
(構成6)
前記縁部分は、頂部から底面に向かうほど厚みが漸増する形状を有しており、
前記ヒータは、前記底面の下方に位置する、
構成1に記載の撮像装置。
(構成7)
前記ドームカバーは、前記縁部分であって前記ドーム部に接続されたドームフランジ部を有しており、
前記ヒータは、前記ドームフランジ部の上方に配置されている、
構成1~6のいずれか1つに記載の撮像装置。
(構成8)
前記ドームカバーと前記第2の加熱部との間に、押圧された状態で配置されている第2の熱伝導部材を更に備える、
構成3に記載の撮像装置。
(構成9)
前記カメラユニットの撮像領域が露出するように前記ドームカバーを覆う筐体を更に備える、
構成2~8のいずれか1つに記載の撮像装置。
(構成10)
前記第1の熱伝導部材と前記筐体との間に配置され、前記第1の熱伝導部材を前記ヒータに対して押圧する弾性部材を更に備える、
構成9に記載の撮像装置。
(構成11)
前記弾性部材は断熱材料を有している、
構成10に記載の撮像装置。
(構成12)
前記弾性部材は、前記ヒータの一部と当接する突出部を有している、
構成10又は11に記載の撮像装置。
(構成13)
断熱材料を有するドームホルダを更に備えており、
前記ドームカバーは、前記ドームホルダによって前記筐体に固定されている、
構成9~12のいずれか1つに記載の撮像装置。
(構成14)
前記ドームホルダに近接配置するように、前記筐体に固定されたベースカバーを更に備える、
構成13に記載の撮像装置。
(構成15)
前記ヒータは接続部を有しており、
前記接続部が前記ドームホルダの下方に配置された第1のヒータ基板に接続されている、
構成13に記載の撮像装置。
(構成16)
第2のヒータ基板と、
前記第1のヒータ基板と前記第2のヒータ基板とを電気的に接続する電気接点と、
を更に備えており、
前記第1のヒータ基板と前記第2のヒータ基板とが通電し、前記ヒータの発熱が可能とされる、
構成15に記載の撮像装置。
(構成17)
前記ヒータは、複数の発熱領域を有している、
構成1~16のいずれか1つに記載の撮像装置。
(構成18)
前記カメラユニットの撮影方向を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記撮影方向に応じて、各々の前記発熱領域の発熱を選択的に制御する制御部と、
を有する発熱制御機構を更に備える、
構成17に記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0053】
100:ドームカメラ
140:ドームカバー 141:ドーム部 142:ドームフランジ部
150:弾性部材
170:第1の熱伝導部材 171:第1の加熱部 172:第2の加熱部
180:ヒータ 181:発熱部 182:接続部
190:ドームホルダ
200:カメラユニット