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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170128
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】空気処理システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/003 20210101AFI20241129BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20241129BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241129BHJP
   F24F 1/0328 20190101ALI20241129BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20241129BHJP
   F24F 8/15 20210101ALN20241129BHJP
   F24F 120/10 20180101ALN20241129BHJP
【FI】
F24F7/003
F24F11/72
B01D53/14 200
F24F1/0328
F24F7/007 B
F24F8/15
F24F120:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087124
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七里 彰俊
(72)【発明者】
【氏名】張本 和芳
【テーマコード(参考)】
3L051
3L056
3L260
4D020
【Fターム(参考)】
3L051BC07
3L056BD01
3L056BD07
3L260AA04
3L260AA05
3L260AB17
3L260BA09
3L260CA03
3L260FB45
3L260FC06
3L260FC21
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB10
4D020BC10
4D020CC09
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB01
4D020DB02
4D020DB03
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】在室者数が少ない場合であっても、二酸化炭素の回収量が著しく低下することを防止する。
【解決手段】建物の空気処理システムであって、空気中の二酸化炭素を回収する複数の二酸化炭素回収器と、前記二酸化炭素回収器毎に、前記二酸化炭素回収器に対する空気の供給経路を、第一の供給経路と第二の供給経路とで切り替える供給経路切替手段と、を備え、前記第一の供給経路は、前記建物の居室から前記二酸化炭素回収器に空気を供給する経路であり、前記第二の供給経路は、前記建物の外部から前記二酸化炭素回収器に空気を供給する経路である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の空気処理システムであって、
空気中の二酸化炭素を回収する複数の二酸化炭素回収器と、
前記二酸化炭素回収器毎に、前記二酸化炭素回収器に対する空気の供給経路を、第一の供給経路と第二の供給経路とで切り替える供給経路切替手段と、を備え、
前記第一の供給経路は、前記建物の居室から前記二酸化炭素回収器に空気を供給する経路であり、
前記第二の供給経路は、前記建物の外部から前記二酸化炭素回収器に空気を供給する経路である、
ことを特徴とする空気処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空気処理システムであって、
前記二酸化炭素回収器毎に、前記二酸化炭素回収器からの空気の排出経路を、第一の排出経路と第二の排出経路とで切り替える排出経路切替手段を備え、
前記第一の排出経路は、前記二酸化炭素回収器からの空気の少なくとも一部を前記居室に排出する経路であり、
前記第二の排出経路は、前記二酸化炭素回収器からの空気の全部を前記建物の外部に排出する経路である、
ことを特徴とする空気処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空気処理システムであって、
前記居室に前記建物の外気を導入する外調機を備え、
前記第一の排出経路は、
前記二酸化炭素回収器からの空気の一部を前記居室に、残りを前記建物の外部に排出する経路であり、
前記外調機は、
前記居室に導入される外気と、前記第一の排出経路によって前記建物の外部に排出される空気との間の熱交換を行う熱交換器を備える、
ことを特徴とする空気処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の空気処理システムであって、
前記居室の在室人数情報に基づいて、前記供給経路切替手段、前記排出経路切替手段及び前記外調機を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記供給経路を前記第一の供給経路に切り替える前記二酸化炭素回収器については、前記排出経路を前記第一の排出経路に切り替え、
前記供給経路を前記第二の供給経路に切り替える前記二酸化炭素回収器については、前記排出経路を前記第二の排出経路に切り替える、
ことを特徴とする空気処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の居室の空気から二酸化炭素を回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地球全体のカーボンニュートラル化のため、空気中の二酸化炭素を回収する様々な技術が提案されている(特許文献1~3)。人間が在室する建物の居室内の空気は、大気中に比べて二酸化炭素が高濃度である。したがって、居室内の空気から二酸化炭素を回収することで、カーボンニュートラル化への貢献度を高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-52808号公報
【特許文献2】特開2020-89891号公報
【特許文献3】特開2017-154093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、建物の居室の在室者数は、時間帯や曜日によって変動する。二酸化炭素回収器の回収能力を居室の最大収容人数で設計した場合、夜間や休日には二酸化炭素の回収量が著しく低下する。夜間や休日に二酸化炭素回収器を停止したならば、二酸化炭素の回収自体ができない。
【0005】
本発明の目的は、在室者数が少ない場合であっても、二酸化炭素の回収量が著しく低下することを防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
建物の空気処理システムであって、
空気中の二酸化炭素を回収する複数の二酸化炭素回収器と、
前記二酸化炭素回収器毎に、前記二酸化炭素回収器に対する空気の供給経路を、第一の供給経路と第二の供給経路とで切り替える供給経路切替手段と、を備え、
前記第一の供給経路は、前記建物の居室から前記二酸化炭素回収器に空気を供給する経路であり、
前記第二の供給経路は、前記建物の外部から前記二酸化炭素回収器に空気を供給する経路である、
ことを特徴とする空気処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、在室者数が少ない場合であっても、二酸化炭素の回収量が著しく低下することを防止する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る空気処理システムの概要図。
図2図1の空気処理システムの制御系のブロック図。
図3図2の制御ユニットの処理例を示すフローチャート。
図4図1の空気処理システムの動作説明図。
図5図1の空気処理システムの動作説明図。
図6図1の空気処理システムの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<システムの概要>
図1は本発明の一実施形態に係る空気処理システム1の概要図である。空気処理システム1は建物内に構築され、建物の居室100の換気を行うシステムである。建物としては例えばオフィスビル、工場等を例示することができ、居室100としては執務室、作業室等、人間の出入りのある室を例示することができる。
【0011】
空気処理システム1は、居室100の状態を検知するセンサを備える。具体的には、人検知センサ10、二酸化炭素センサ11及び温湿度センサ12を備えている。人検知センサ10は例えば赤外線センサやカメラ(撮像センサ)であり、居室100に在室する人間を検知する。二酸化炭素センサ11は居室100の空気の二酸化炭素濃度を検知する。温湿度センサ12は居室100の空気の気温と湿度を検知する。
【0012】
空気処理システム1は、空気中の二酸化炭素を回収する複数の二酸化炭素回収器2A~2Eを備える。本実施形態では五つの二酸化炭素回収器2A~2Eが設けられているが、その数は四つ以下でもよく、また、六つ以上であってもよい。二酸化炭素回収器2A~2Eは、供給される空気から二酸化炭素を回収し、二酸化炭素回収後の空気を排出する。二酸化炭素は、例えば、ボンベなどに蓄積される。二酸化炭素を回収する方式としては公知の方式を利用することができ、例えば、アミン化合物の溶液等の吸収液と気体を接触させ、吸収液に吸収された二酸化炭素を放出させて回収する方式であってもよい。
【0013】
二酸化炭素回収器2A~2Eには、二つの供給経路のうち、供給経路切替ユニット3によって選択された一つの供給経路から空気が供給される。供給経路の一つは、居室100から空気を供給する経路であり、居室100→送風機81→分岐ボックス61→切替ユニット3(ダンパ31A~31E)→配管群63→二酸化炭素回収器2A~2E、の経路である。もう一つの供給経路は、建物の外部から空気を供給する経路であり、建物外部→送風機82→分岐ボックス62→切替ユニット3(ダンパ32A~32E)→配管群63→二酸化炭素回収器2A~2E、の経路である。
【0014】
二酸化炭素回収器2A~2Eから排出される、二酸化炭素回収済みの空気は、二つの排出経路のうち、排出経路切替ユニット4によって選択された一つの供給経路を通って排出される。排出経路の一つは、二酸化炭素回収済みの空気の少なくとも一部を居室100に排出し、残りを外部に排出する経路であり、二酸化炭素回収器2A~2E→配管群73→分岐ボックス71→外調機5→居室100・建物外部、の経路である。もう一つの排出経路は、二酸化炭素回収済みの空気の全部を建物の外部に排出する経路であり、二酸化炭素回収器2A~2E→配管群73→分岐ボックス72→送風機83→建物外部、の経路である。
【0015】
供給経路切替ユニット3は、二酸化炭素回収器2A~2Eと、分岐ボックス61及び62との間の配管類63の接続関係を切り替えるユニットであり、本実施形態の場合、モータ等のアクチュエータを駆動源とした電動のダンパ31A~31E及び32A~32Eを備える。ダンパ31A~31Eは二酸化炭素回収器2A~2Eに対応しており、分岐ボックス61と二酸化炭素回収器2A~2Eとの間の連通状態・遮断状態を個別に切り替える。ダンパ32A~32Eは二酸化炭素回収器2A~2Eに対応しており、分岐ボックス62と二酸化炭素回収器2A~2Eとの間の連通状態・遮断状態を個別に切り替える。
【0016】
分岐ボックス61は、一つの空気入口と、五つの空気出口とを有する中空体である。空気入口には送風機81から居室100内の空気が導入され、導入された空気は空気出口に分配されて排出される。五つの空気出口はダンパ31A~31Eに対応している。ダンパ31A~31Eが全て連通状態に切り替えられると、分岐ボックス61の五つの空気出口が、対応する二酸化炭素回収器2A~2Eと連通し、居室100の空気が二酸化炭素回収器2A~2Eに供給される。ダンパ31Aを連通状態とし、ダンパ31B~31Eが全て遮断状態に切り替えられると、分岐ボックス61の五つの空気出口のうち、二酸化炭素回収器2Aに対応する空気出口と二酸化炭素回収器2Aの組み合わせのみが連通し、居室100の空気が二酸化炭素回収器2Aに供給される。
【0017】
分岐ボックス62は、一つの空気入口と、五つの空気出口とを有する中空体である。空気入口には送風機82から建物外部の空気が導入され、導入された空気は空気出口に分配されて排出される。五つの空気出口はダンパ32A~32Eに対応している。ダンパ32A~32Eが全て連通状態に切り替えられると、分岐ボックス62の五つの空気出口が、対応する二酸化炭素回収器2A~2Eと連通し、建物外部の空気が二酸化炭素回収器2A~2Eに供給される。ダンパ32Aを連通状態とし、ダンパ32B~32Eが全て遮断状態に切り替えられると、分岐ボックス62の五つの空気出口のうち、二酸化炭素回収器2Aに対応する空気出口と二酸化炭素回収器2Aの組み合わせのみが連通し、建物外部の空気が二酸化炭素回収器2Aに供給される。
【0018】
排出経路切替ユニット4は、二酸化炭素回収器2A~2Eと、分岐ボックス71及び72との間の配管類73の接続関係を切り替えるユニットであり、本実施形態の場合、モータ等のアクチュエータを駆動源とした電動のダンパ41A~41E及び42A~42Eを備える。ダンパ41A~41Eは二酸化炭素回収器2A~2Eに対応しており、分岐ボックス71と二酸化炭素回収器2A~2Eとの間の連通状態・遮断状態を個別に切り替える。ダンパ42A~42Eは二酸化炭素回収器2A~2Eに対応しており、分岐ボックス72と二酸化炭素回収器2A~2Eとの間の連通状態・遮断状態を個別に切り替える。
【0019】
分岐ボックス71は、五つの空気入口と、一つの空気出口とを有する中空体である。五つの空気入口はダンパ41A~41Eに対応している。導入された空気は合流して空気出口から外調機5の分配器56に排出される。ダンパ41A~41Eが全て連通状態に切り替えられると、分岐ボックス71の五つの空気入口が、対応する二酸化炭素回収器2A~2Eと連通し、二酸化炭素回収器2A~2Eで二酸化炭素が回収された空気が分岐ボックス71に導入される。ダンパ41Aを連通状態とし、ダンパ41B~41Eが全て遮断状態に切り替えられると、分岐ボックス71の五つの空気入口のうち、二酸化炭素回収器2Aに対応する空気入口と二酸化炭素回収器2Aの組み合わせのみが連通し、二酸化炭素回収器2Aで二酸化炭素が回収された空気のみが分岐ボックス71に導入される。
【0020】
分岐ボックス72は、五つの空気入口と、一つの空気出口とを有する中空体である。五つの空気入口はダンパ42A~42Eに対応している。導入された空気は合流して空気出口から送風機83を介して建物外部に排出される。ダンパ42A~42Eが全て連通状態に切り替えられると、分岐ボックス72の五つの空気入口が、対応する二酸化炭素回収器2A~2Eと連通し、二酸化炭素回収器2A~2Eで二酸化炭素が回収された空気が分岐ボックス72に導入される。ダンパ42Aを連通状態とし、ダンパ42B~42Eが全て遮断状態に切り替えられると、分岐ボックス72の五つの空気入口のうち、二酸化炭素回収器2Aに対応する空気入口と二酸化炭素回収器2Aの組み合わせのみが連通し、二酸化炭素回収器2Aで二酸化炭素が回収された空気のみが分岐ボックス72に導入される。
【0021】
外調機5は、建物外の外気を居室100に供給する。外調機5は、送風機51、熱交換器53、合流ボックス55、分配器56、及び、温調器52を備える。送風機51は建物外部の空気を熱交換器53に導入し、導入された空気は合流ボックス55、温調器52を介して居室100へ供給される。
【0022】
分配器56は、分岐ボックス71から排出される空気を、所定の比率で熱交換器53と合流ボックス55とに分配して排出する。比率は本実施形態の場合、熱交換器53:合流ボックス55=1:2である。
【0023】
分配器56から熱交換器53へ排出された空気は送風機54によって建物外部へ排出される。熱交換器53において、分配器56から熱交換器53へ排出された空気と、送風機51により熱交換器53に導入された建物外部の空気との熱交換が可能である。
【0024】
分配器56から合流ボックス55へ排出された空気は、送風機51により導入される建物外部の空気と共に温調器52に導入され、温度が調整されてから居室100へ戻される。温調器52は空気の冷却と加熱とが可能であり、例えば、温湿度センサ12の検知結果に基づいて空気の温度を調整する。一例を挙げると、冬季のように気温が低いと温調器52に導入される空気を加熱して居室100に供給し、また、夏季のように気温が高いと温調器52に導入される空気を冷却して居室100に供給する。
【0025】
次に、本実施形態における空気処理システム1による換気及び内気循環の態様と、各切替ユニット3及び4の動作規則と、について説明する。
【0026】
本実施形態の場合、居室100から分岐ボックス61を介して二酸化炭素回収器2A~2Eのいずれかに供給された空気は、二酸化炭素が回収された後、分岐ボックス71を介して外調機5に供給される。そして、分配器56による分配の比率にしたがって、二酸化炭素回収済みの空気の一部が内気循環され、残りが建物外部に排出される。
【0027】
具体的には、分配器56から合流ボックス55に排出された二酸化炭素回収済みの空気は、送風機51により導入される建物外部の空気と共に温調器52に導入され、温度が調整されて居室100へ供給される。二酸化炭素回収済みの空気は、それまでに温度が調整された空気であるので、温調器52における冷却又は加熱に必要なエネルギを削減できる。
【0028】
分配器56から熱交換器53へ排出された空気は送風機54によって建物外部へ排出される。熱交換器53において、分配器56から熱交換器53へ排出された空気と、送風機51により熱交換器53に導入された建物外部の新気との熱交換が可能であり、温調器52における新気の冷却又は加熱に必要なエネルギを削減できる。
【0029】
次に、本実施形態の場合、建物外部から分岐ボックス62を介して二酸化炭素回収器2A~2Eのいずれかに供給された空気は、二酸化炭素が回収された後、分岐ボックス72を介して建物外部に排出される。したがって、二酸化炭素回収済みの空気は居室100には供給されない。
【0030】
こうした換気及び内気循環の態様に対応した各切替ユニット3及び4の動作規則について説明する。
【0031】
ダンパ31A~31Eと、ダンパ32A~32Eとは、排他的に切り替えられる。例えば、ダンパ31Aを連通状態とする場合、ダンパ32Aは遮断状態とされる。逆に、ダンパ32Aを連通状態とする場合、ダンパ31Aは遮断状態とされる。同様に、ダンパ31Cを連通状態とする場合、ダンパ32Cは遮断状態とされる。また、ダンパ32Cを連通状態とする場合、ダンパ31Cは遮断状態とされる。
【0032】
ダンパ41A~41Eと、ダンパ42A~42Eとは、排他的に切り替えられる。例えば、ダンパ41Aを連通状態とする場合、ダンパ42Aは遮断状態とされる。逆に、ダンパ42Aを連通状態とする場合、ダンパ41Aは遮断状態とされる。同様に、ダンパ41Cを連通状態とする場合、ダンパ42Cは遮断状態とされる。また、ダンパ42Cを連通状態とする場合、ダンパ41Cは遮断状態とされる。
【0033】
ダンパ31A~31Eとダンパ41A~41Eとは、同期的に切り替えられる。例えば、ダンパ31Aを連通状態とする場合、ダンパ41Aも連通状態とされ、ダンパ31Aを遮断状態とする場合、ダンパ41Aも遮断状態とされる。同様に、ダンパ31Cを連通状態とする場合、ダンパ41Cも連通状態とされ、ダンパ31Cを遮断状態とする場合、ダンパ41Cも遮断状態とされる。
【0034】
ダンパ32A~32Eとダンパ42A~42Eとは、同期的に切り替えられる。例えば、ダンパ32Aを連通状態とする場合、ダンパ42Aも連通状態とされ、ダンパ32Aを遮断状態とする場合、ダンパ42Aも遮断状態とされる。同様に、ダンパ32Cを連通状態とする場合、ダンパ42Cも連通状態とされ、ダンパ32Cを遮断状態とする場合、ダンパ42Cも遮断状態とされる。
【0035】
<制御系>
図2は空気処理システム1の制御系のブロック図である。空気処理システム1は、その全体を制御する制御ユニット13を備える。制御ユニット13は、処理部131と、記憶部132と、インタフェース部133とを含む。処理部131はCPUに代表されるプロセッサであり、記憶部132に記憶されたプログラムを実行する。記憶部132は半導体メモリ等の記憶デバイスであり、処理部131が実行するプログラムや処理に使用されるデータ等が格納される。インタフェース部133は処理部131と、制御ユニット13の外部のデバイスとのデータの入出力を行う。処理部131は、人検知センサ10、二酸化炭素センサ11、温湿度センサ12の各検知結果に基づいて、外調機5、送風機81~83、各切替ユニット3及び4の切替アクチュエータ14(例えばダンパ毎のモータ)を制御する。
【0036】
入力ユニット15は、空気処理システム1の管理者の指示を受け付けるユニットであり、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル等である。表示ユニット16は管理者に情報を表示するユニットであり、例えば、LCD等の電子画像表示装置である。
【0037】
<回収器の回収量の向上と制御例>
居室100の換気と二酸化炭素濃度について説明する。居室100は、その二酸化炭素濃度が許容濃度を超えないように換気する必要がある。居室100の換気を、建物外部の外気のみで行った場合、外気の導入量Qは以下の式により演算することができる。
Q=M/(Ci-Co)
ここで、Mは居室100での二酸化炭素の発生量であり、M=在室者数×0.02CMH(Cubic Meter per Hour)と表すことができる。Ciは居室100における二酸化炭素の許容濃度であり、一般には1000ppmである。Coは外気の二酸化炭素濃度であり、例えば350ppmである。居室100の在室者が2人の場合、Q=60CMH、と演算することができる。
【0038】
本実施形態の場合、上記のとおり、居室100の空気から二酸化炭素を二酸化炭素回収器2A~2Eで回収して、居室100に戻すことができる。すなわち、居室100の換気を、建物外部の外気のみと、二酸化炭素回収済みの内気とで行うことができる。仮に、二酸化炭素の回収効率を50%とすると、外気の導入量Q’は以下の式により演算することができる。
Q’=0.5×M/(Ci-Co)
居室100の在室者が2人の場合、Q=30CMH、と試算でき、居室100の換気を、建物外部の外気のみで行った場合に比べて外気の導入量を半減することができる。外気の導入量が少なければ少ない程、その温度調整のためのエネルギ消費を削減することができ、省エネルギ化を図れる。
【0039】
一方、空気処理システム1は、居室100の最大在室者数に基づいて処理能力が設計される。最大在室者数は例えば居室100の床面積から算出される。しかし、居室100には、常に最大在室者数相当の人間が在室しているわけではなく、夜間、休日は在室者数が著しく減る場合がある。二酸化炭素回収器2A~2Eの常時運転を想定した場合、夜間、休日といった在室者数が少ない期間は、二酸化炭素回収器2A~2Eにおける二酸化炭素の回収量(回収効率)が低下する。
【0040】
そこで、本実施形態では、居室100の二酸化炭素の回収について二酸化炭素回収器2A~2Eの余力がある場合、外気から二酸化炭素を回収する。これにより、居室100の在室者数が少ない場合であっても、二酸化炭素回収器2A~2Eの回収量が著しく低下することを防止する。
【0041】
図3は制御ユニット13の処理部131の処理例を示すフローチャートであり、空気処理システム1の自動制御例を示す。
【0042】
S1では初期設定が行われる。ここでは、管理者による居室100の建築情報の設定と、建築情報に基づく空気処理システム1の基本動作設定とが受け付けられる。建築情報には例えば居室100の最大在室者数、目標室温範囲、目標湿度範囲等が含まれる。基本動作設定には、居室100の在室者数に応じた外調機5の風量、送風機81~83の風量、各切替ユニット3及び4の切り替え条件等が含まれる。
【0043】
S1の初期設定が完了すると空気処理システム1の稼働が開始される。S2では、人検知センサ10、二酸化炭素センサ11、温湿度センサ12の各検知結果が取得される。S3では、S2で取得した各検知結果に基づいて、外調機5、送風機81~83、各切替ユニット3及び4の運転条件が決定される。S4では、S3で決定された運転条件に従って、外調機5、送風機81~83、各切替ユニット3及び4が駆動される。S5では、駆動態様の更新タイミングか否かが判定される。更新タイミングは、例えば、数十分毎、或いは、数時間毎である。更新タイミングが到来したと判定されると、処理はS2へ戻って同様の処理が繰り返される。
【0044】
図4図6は、図3の処理例に基づく空気処理システム1の動作例を示す説明図である。
【0045】
図4は居室100の在室者率が100%の場合を示している。在室者率は、(居室100の検知人数/居室100の最大在室者数)×100で表される。居室100の検知人数は人検知センサ10の検知結果に基づき推定される。居室100の最大在室者数は例えば100人である。在室者率が100%の場合、居室100の換気量は3000CMHと設定されており、換気量が3000CMHとなるように外調機5、送風機81~83及び各切替ユニット3及び4が駆動される。供給経路切替ユニット3のダンパ31A~31Eは連通状態に切り替えられ、ダンパ32A~32Eは遮断状態に切り替えられる。排出経路切替ユニット4のダンパ41A~41Eは連通状態に切り替えられ、ダンパ42A~42Eは遮断状態に切り替えられる。
【0046】
送風機81によって居室100の空気が3000CHMの流量で排出され、分岐ボックス61を介して二酸化炭素回収器2A~2Eに均等に供給される(各600CMH)。二酸化炭素回収器2A~2Eで二酸化炭素が回収された空気は、分岐ボックス71を介して分配器56へ排出され(3000CMH)、ここで、1000CMHの空気は送風機54によって熱交換器53を通って建物外部へ排出される。残りの2000CMHの空気は合流ボックス55に排出される。合流ボックス55には、また、送風機51によって建物外部の新気が熱交換器53を通って導入される。合流ボックス55から合計で3000CHMの空気が温調器52に導入され、温調器52で温度が調整された3000CMHの空気が居室100へ供給される。
【0047】
図5は居室100の在室者率が80%の場合を示している。在室者率が80%の場合、居室100の換気量は2400(=3000×0.8)CMHとなり、換気量が2400CMHとなるように外調機5、送風機81~83及び各切替ユニット3及び4が駆動される。二酸化炭素回収器2A~2Eの二酸化炭素回収能力は在室者率が100%の場合を想定しており、回収能力に余力がある。よってその80%を居室100の空気の二酸化炭素の回収に用い、残りの20%を外気の二酸化炭素の回収に用いる。供給経路切替ユニット3のダンパ31Aは遮断状態に切り替えられ、ダンパ31B~31Eは連通状態に切り替えられる。ダンパ32Aは連通状態に切り替えられ、ダンパ32B~32Eは遮断状態に切り替えられる。排出経路切替ユニット4のダンパ41Aは遮断状態に切り替えられ、ダンパ41B~41Eは連通状態に切り替えられる。ダンパ42Aは連通状態に切り替えられ、ダンパ42B~42Eは遮断状態に切り替えられる。
【0048】
送風機81によって居室100の空気が2400CHMの流量で排出され、分岐ボックス61を介して二酸化炭素回収器2B~2Eに均等に供給される(各600CMH)。送風機82が建物外部の空気を600CMHで分岐ボックス62に導入し、導入された空気は分岐ボックス62からダンパ32Aを通って二酸化炭素回収器2Aに供給される(600CMH)。
【0049】
二酸化炭素回収器2Aで二酸化炭素が回収された空気は、送風機83によってダンパ42A、分岐ボックス72を通って建物外部に排出される(600CMH)。二酸化炭素回収器2B~2Eで二酸化炭素が回収された空気は、分岐ボックス71を介して分配器56へ排出され(2400CMH)、ここで、800CMHの空気は送風機54によって熱交換器53を通って建物外部へ排出される。残りの1600CMHの空気は合流ボックス55に排出される。合流ボックス55には、また、送風機51によって建物外部の新気が熱交換器53を通って導入される(800CMH)。合流ボックス55から合計で2400CHMの空気が温調器52に導入され、温調器52で温度が調整された2400CMHの空気が居室100へ供給される。
【0050】
図6は居室100の在室者率が0%の場合を示している。在室者率が0%の場合、居室100を換気する必要はなく、換気量が0CMHとなるように外調機5、送風機81~83及び各切替ユニット3及び4が駆動される。居室100の空気から二酸化炭素を回収する意味がないので、二酸化炭素回収器2A~2Eの全てを外気の二酸化炭素の回収に用いる。供給経路切替ユニット3のダンパ31A~31Eは遮断状態に切り替えられ、ダンパ32A~32Eは連通状態に切り替えられる。排出経路切替ユニット4のダンパ41A~41Eは遮断状態に切り替えられ、ダンパ42A~42Eは連通状態に切り替えられる。
【0051】
送風機81は駆動されず、居室100から空気は排出されない。外調機5の運転は停止される。送風機82が建物外部の空気を3000CMHで分岐ボックス62に導入し、導入された空気は分岐ボックス62から二酸化炭素回収器2A~2Eに均等に供給される(各600CMH)。二酸化炭素回収器2A~2Eで二酸化炭素が回収された空気は、送風機83によってダンパ42A~42E、分岐ボックス72を通って建物外部に排出される(3000CMH)。
【0052】
以上のとおり、本実施形態では、居室100の在室者数が少ない場合であっても、外気の二酸化炭素を二酸化炭素回収器2A~2Eのいずれかで回収することで、二酸化炭素の回収量が著しく低下することを防止することができる。また、二酸化炭素を回収した居室100の空気を内気循環することで、建物の外部から導入する新気の量を減らして居室100の換気を行うことができ、省エネルギ化を図れる。更に、空気処理システム1を自動制御により運転することで、管理者の負担を減らすことができる。
【0053】
<他の実施形態>
上記実施形態では、人検知センサ10として、居室100の在室者を検知するセンサを例示したが、居室100の入退場者を検知するセンサでもよく、入退場者をカウントして在室者数を特定してもよい。
【0054】
上記実施形態では、空気処理システム1の自動制御例を示したが、全部又は一部が管理者の手動により行われてもよい。例えば、各切替ユニット3及び4のダンパの状態切り替えは管理者が入力ユニット15を用いて指示するようにしてもよい。この場合、居室100の在室者数は表示ユニット16に表示される形態としてもよいし、管理者が居室100を目視で確認してもよい。
【0055】
上記実施形態では、分岐ボックス71から排出される二酸化炭素回収済みの空気の一部を、分配器56による分配の比率にしたがって内気循環し、残りを建物外部に排出される構成としたが、分岐ボックス71から排出される二酸化炭素回収済みの空気の全部を、常時或いは所定時間毎の間、内気循環してもよい。
【0056】
上記実施形態では、各切替ユニット3及び4を、配管を開閉するダンパで構成したが、上流側の流路と接続される下流側の複数の流路との間で、接続関係を切り替えるバルブで構成してもよい。
【0057】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 空気処理システム、2A~2E 二酸化炭素回収器、3 供給経路切替ユニット、100 居室
図1
図2
図3
図4
図5
図6