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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170131
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】成形品の製造装置及び保持フレーム
(51)【国際特許分類】
   B29C 37/02 20060101AFI20241129BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B29C37/02
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087127
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小田嶋 智
【テーマコード(参考)】
4F201
4F206
【Fターム(参考)】
4F201AJ08
4F201BA08
4F201BC02
4F201BC12
4F201BD04
4F201BS05
4F201BS08
4F206AA28
4F206AA29
4F206AA34
4F206AG06
4F206AH06
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ90
4F206JW22
4F206JW24
(57)【要約】
【課題】 成形品の寸法精度を向上させたり、バリの残存を防止でき、製造作業の迅速化を図ることのできる成形品の製造装置及び保持フレームを提供する。
【解決手段】 樹脂含有の成形材料で成形された半導体ウェーハ用の保持フレーム1を面加工する成形品の製造装置10であり、作業テーブル11に回転可能に配置されて保持フレーム1を搭載するリング形のターンテーブル20と、ターンテーブル20を案内する複数のガイドピンと、ターンテーブル20に保持フレーム1を押圧する複数の押圧機構40と、保持フレーム1の内周面3を回転刃52で切削する加工機構50と、回転刃52に保持フレーム1を付勢する複数の付勢機構60とを備え、回転駆動軸51の上端部に、ターンテーブル20の内側に位置する回転刃52を装着し、回転駆動軸51の上端部と回転刃52の間に、保持フレーム1の内周面3に接触する拡径のスリーブ54を介在する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含有の成形材料により成形された成形品を面加工する成形品の製造装置であって、
作業テーブルに配置されて成形品を搭載するターンテーブルと、このターンテーブルに成形品を押圧する押圧機構と、ターンテーブルに搭載された成形品の周面を回転駆動軸に取り付けた回転刃で削る加工機構とを含み、この加工機構の回転駆動軸と回転刃との間に、回転刃よりも幅広のスリーブ部材を介在し、このスリーブ部材を成形品の周面に近接させて回転刃による削り量を調整するようにしたことを特徴とする成形品の製造装置。
【請求項2】
成形品を中空形とし、作業テーブルの作業台に、略リング形のターンテーブルを回転可能に配置するとともに、作業テーブルの作業台に、ターンテーブルの回転を案内する複数のガイド部材を取り付け、作業テーブルの作業台に、複数の押圧機構を取り付け、作業テーブルに、成形品の内周面を回転刃で削る加工機構を取り付け、作業テーブルの作業台に、加工機構の回転刃に成形品を付勢する付勢機構を取り付け、加工機構の回転駆動軸の端部に、ターンテーブルの内側に位置する回転刃を取り付けるとともに、回転駆動軸の端部と回転刃との間に、成形品の内周面に接触するスリーブ部材を介在した請求項1記載の成形品の製造装置。
【請求項3】
作業テーブルの作業台に、スライド可能な付勢ブロックをスライド穴を介して配置し、付勢ブロックにターンテーブルを回転可能に支持させ、加工機構の回転駆動軸の端部に、ターンテーブルの外側に位置する回転刃を取り付けるとともに、この回転刃方向に付勢ブロックを付勢するようにし、回転駆動軸の端部と回転刃との間には、成形品の周面に接触するスリーブ部材を介在した請求項1記載の成形品の製造装置。
【請求項4】
作業テーブルの作業台に、削り取られた塵用の集塵口を設けた請求項2又は3記載の成形品の製造装置。
【請求項5】
成形品を中空形とし、ターンテーブルを略円板形に形成してその表面周縁部付近に成形品を搭載可能とし、ターンテーブル表面の周縁部以外の領域の周方向に複数の押圧機構を所定の間隔で取り付けた請求項3記載の成形品の製造装置。
【請求項6】
樹脂含有の成形材料により中空形に成形されて物品を包囲可能な保持フレームであって、請求項1記載の成形品の製造装置により周面が削られて製造されたことを特徴とする保持フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の寸法精度を向上させたり、バリを除去する成形品の製造装置及び保持フレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形法は、加熱溶融させた成形材料を金型内に射出注入し、冷却固化させることにより、成形品を得る成形方法であり、複雑な形の成形品を大量生産するのに適しているが、(1)寸法誤差の発生、(2)バリの発生の点で問題がある。
【0003】
先ず、(1)の寸法誤差の発生について説明すると、射出成形法の場合、条件出しの度に様々な要素(例えば、金型の製作精度や充填圧力の違い等)が成形品に影響を及ぼすので、切削加工のような再現性を得るのは困難である(特許文献1参照)。例えば、本日製造する成形品の寸法数値に問題がなくても、次の日には寸法数値が大きく異なり、問題となることがある。この問題に鑑み、従来においては、成形品をやや肉厚に射出成形し、成形した成形品を工具による手作業で慎重に切削し、寸法誤差を抑制して寸法精度を向上させる方法が提案され、実施されている。
【0004】
次に、(2)のバリの発生について説明すると、金型を用いて射出成形する場合、弱い金型の締め付け力、金型の合わせ面の精度不良、金型の温度が高い等により、バリが発生する。例えば、図10に示すように、半導体の製造時に使用される半導体ウェーハ8用の保持フレーム1を射出成形法するとき(特許文献2、3参照)、保持フレーム1の内外周面3・4に大小のバリが発生する。特に、成形材料の樹脂がナイロン樹脂のときには、射出成形時にガスが発生するので、金型のパーティングラインに隙間を形成する必要があるが、この隙間の形成により、保持フレーム1の外周面4に無視し難いバリが発生することがある。
【0005】
係るバリをそのまま放置しておくと、保持フレーム1の品質低下を招くので、仕上げ工程でバリを除去し、高品質の良品を得る必要がある。この点に鑑み、従来においては、射出成形された保持フレーム1のバリを専用の工具による手作業で慎重に切削除去する方法が提案され、実施されている(特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002‐321254号公報
【特許文献2】特開2011‐071432号公報
【特許文献3】特開2007‐048884号公報
【特許文献4】特開2019‐014228号公報
【特許文献5】特開2017‐066426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における射出成形は、以上のように実施され、(1)、(2)の問題を解消するため、成形品を工具による手作業で切削する方法が提案されているが、この方法の場合には、切削作業の全てが作業員の個別の判断や熟練度に大きく左右されることとなる。したがって、切削を不慣れな作業員が担当する場合には、未熟な切削により、成形品が規格サイズよりも小さくなって寸法精度を維持できなくなったり、成形品のバリを適切に除去できなかったりするという問題が生じる。また、寸法精度を向上させるためには、切削作業に時間を要するので、製造作業の遅延を招くおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、成形品の寸法精度を向上させたり、バリの残存を防ぐことができ、しかも、製造作業の迅速化を図ることのできる成形品の製造装置及び保持フレームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、樹脂含有の成形材料により成形された成形品を面加工する装置であって、
作業テーブルに配置されて成形品を搭載するターンテーブルと、このターンテーブルに成形品を押圧する押圧機構と、ターンテーブルに搭載された成形品の周面を回転駆動軸に取り付けた回転刃で削る加工機構とを含み、この加工機構の回転駆動軸と回転刃との間に、回転刃よりも幅広のスリーブ部材を介在し、このスリーブ部材を成形品の周面に近接させて回転刃による削り量を調整するようにしたことを特徴としている。
【0010】
なお、成形品を中空形とし、作業テーブルの作業台に、略リング形のターンテーブルを回転可能に配置するとともに、作業テーブルの作業台に、ターンテーブルの回転を案内する複数のガイド部材を取り付け、作業テーブルの作業台に、複数の押圧機構を取り付け、作業テーブルに、成形品の内周面を回転刃で削る加工機構を取り付け、作業テーブルの作業台に、加工機構の回転刃に成形品を付勢する付勢機構を取り付け、加工機構の回転駆動軸の端部に、ターンテーブルの内側に位置する回転刃を取り付けるとともに、回転駆動軸の端部と回転刃との間に、成形品の内周面に接触するスリーブ部材を介在することができる。
【0011】
また、ターンテーブルの外周縁部に、成形品の外周面に接触可能な位置決め片を形成し、この位置決め片により、搭載された成形品の位置ずれを防止することができる。
また、作業テーブルの作業台に、スライド可能な付勢ブロックをスライド穴を介して配置し、付勢ブロックにターンテーブルを回転可能に支持させ、加工機構の回転駆動軸の端部に、ターンテーブルの外側に位置する回転刃を取り付けるとともに、この回転刃方向に付勢ブロックを付勢するようにし、回転駆動軸の端部と回転刃との間には、成形品の周面に接触するスリーブ部材を介在することもできる。
【0012】
また、作業テーブルの作業台に、削り取られた塵用の集塵口を設けることが可能である。
また、成形品を中空形とし、ターンテーブルを略円板形に形成してその表面周縁部付近に成形品を搭載可能とし、ターンテーブル表面の周縁部以外の領域の周方向に複数の押圧機構を所定の間隔で取り付けることが可能である。
【0013】
また、本発明においては上記課題を解決するため、樹脂含有の成形材料により中空形に成形されて物品を包囲可能なフレームであって、
請求項1記載の成形品の製造装置により周面が削られて製造されたことを特徴としている。
【0014】
ここで、特許請求の範囲における成形材料には、各種樹脂の他、必要な各種フィラー(例えば、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維等)が配合される。また、成形品には、少なくとも外周が多角形等の中空形、リング形、枠形、筒形、円板形等の成形品が含まれる。この成形品の周面には、内周面と外周面が含まれる。
【0015】
「削る」という用語には、切削、研削、研磨が含まれる。また、成形品が中空形の場合、各種物品、例えば機械部品、建築部品、電気部品、電子部品、光学部品、化学部品、日用品、これらの材料等を包囲可能であることが好ましい。例えば物品が電子部品のとき、少なくともφ100mm、200mm、300mmの半導体ウェーハ等の基板を包囲可能であることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、加工機構の回転刃を回転させて成形品の周面の少なくともバリを削り、この削る程度に応じてターンテーブルを回転させて成形品の削り位置を変更すれば、成形品のバリを削って面加工することができる。成形品を削る作業を半自動化し、スリーブ部材の位置変更により、回転刃の削る範囲や削り量を調整することができるので、削り作業が作業員の判断や熟練度に大きく左右されることが少なくなる。また、回転刃の活用により、削り作業に要する作業時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成形品の寸法精度を向上させたり、バリの残存を防ぐことができ、しかも、製造作業の迅速化を図ることができるという効果がある。また、押圧機構により成形品の少なくとも削る作業範囲の浮き上がりを規制して位置決めするので、寸法精度の向上が期待できる他、成形品の周面が位置ずれで凹凸等になるのを防止することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、中空形の成形品の内周面を削る作業を半自動化し、スリーブ部材の位置変更により、回転刃の削る範囲や削り量を調整することができるので、中空形の成形品が規格サイズよりも小さくなったり、中空形の成形品の内周面にバリが残存するのを防止することができ、これらを通じて中空形の成形品の寸法精度を向上させることができる。また、削り作業に要する時間を短縮することができるので、中空形の成形品の製造作業の迅速化を図ることができる。また、複数のガイド部材により、ターンテーブルを適切に位置決めしたり、ターンテーブルを円滑に回転させることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、成形品の周面又は外周面を削る作業を半自動化し、スリーブ部材の位置変更により、回転刃の削る範囲や削り量を簡易に調整できるので、成形品が規格サイズよりも縮小したり、成形品の周面又は外周面にバリが残存するのを防ぐことが可能となり、これらを通じて成形品の寸法精度の向上が期待できる。また、削り作業に要する時間を短縮することが可能となる。また、付勢ブロックにターンテーブルを回転可能に支持させるので、複数のガイド部材や専用の複数の付勢機構を省略することが可能となる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、成形品から削り取られた塵を作業台の集塵口に落下させれば、作業テーブルの作業台の汚染を防止し、成形品の製造作業の迅速化や容易化に資することが可能となる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、ターンテーブル表面の周縁部以外の領域の周方向に複数の押圧機構を所定の間隔で取り付けるので、ターンテーブルの表面周縁部付近に成形品を密接させて位置ずれや部分的な浮き上がりを防止することが可能となる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、保持フレームが規格のサイズよりも縮小して寸法精度が低下したり、保持フレームの周面にバリが残存するのを防ぐことができる。また、回転刃の活用により、削り作業に要する時間を短縮できるので、保持フレームの製造作業の迅速化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム内周面を削るタイプの製造装置を模式的に示す要部斜視図である。
図2】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム内周面を削るタイプの製造装置の保持フレーム、ターンテーブル、及び加工機構の関係を模式的に示す要部説明図である。
図3】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム内周面を削るタイプの製造装置の保持フレームとターンテーブルの外周縁部の関係を模式的に示す要部説明図である。
図4】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム内周面を削るタイプの製造装置の保持フレーム、ターンテーブル、複数の押圧機構、及び複数の付勢機構の関係を模式的に示す要部斜視図である。
図5】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム内周面を削るタイプの製造装置を模式的に示す平面図である。
図6】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム外周面を削るタイプの製造装置を模式的に示す斜視説明図である。
図7】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム外周面を削るタイプの付勢ブロックを模式的に示す斜視説明図である。
図8】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム外周面を削るタイプの製造装置の保持フレーム、ターンテーブル、及び加工機構の関係を模式的に示す要部説明図である。
図9】本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームの実施形態における保持フレーム外周面を削るタイプの製造装置のターンテーブル等を模式的に示す斜視説明図である。
図10】半導体ウェーハ用の保持フレームを模式的に示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における成形品の製造装置10は、図1ないし図10に示すように、成形品である保持フレーム1の露出面を作業テーブル11上で面加工する製造装置であり、基本的には、保持フレーム1搭載用のターンテーブル20・20Aと、このターンテーブル20・20Aに保持フレーム1を押圧する押圧機構40と、ターンテーブル20・20Aに搭載された保持フレーム1の周面を回転刃52で削る加工機構50とを備え、保持フレーム1の内周面3を削るタイプと、保持フレーム1の周面である外周面4を削るタイプとに別々に構成されることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0025】
保持フレーム1は、図1ないし図5図10に示すように、例えば樹脂含有の成形材料により半導体ウェーハ8を包囲する中空の平板に成形され、裏面に可撓性の粘着保持層7が成形後に粘着されており、この粘着保持層7の表面に半導体ウェーハ8が剥離可能に粘着して搭載される。この保持フレーム1を成形する成形材料の樹脂としては、例えばナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が使用される。また、保持フレーム1は、半導体ウェーハ8を包囲可能な大きさの平面略リング形に射出成形され、外周縁部の前後左右がそれぞれ直線的に形成されており、外周縁部の前方両側には、位置決めや整列を容易にする一対のノッチ2がそれぞれ平面略三角形に切り欠かれる。
【0026】
保持フレーム1は、例えば厚さ1.5mm以上3.5mm以下、好ましくは1.2mm以上2.5mm以下に形成され、内外周面3・4が成形後の金型からの脱型を容易にする観点からそれぞれ傾斜形成される。また、保持フレーム1の表面後部には、必要に応じ、RFIDタグやICタグ用の取付領域6が細長い平面矩形に形成される。さらに、粘着保持層7は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等からなる透明のエラストマーにより、半導体ウェーハ8よりも大きい平面円形の薄膜に成形される。このような保持フレーム1は、型締めされた金型に溶融した成形材料が射出して充填され、この成形材料が冷却固化した後、金型が型開きされ、この金型から突き出して脱型されることにより、規格サイズよりも僅かに大き目のサイズに製造される。
【0027】
保持フレーム1の内周面3を削るタイプの製造装置10Aは、図1ないし図5に示すように、作業テーブル11の上部に配置されて保持フレーム1を搭載するエンドレスのターンテーブル20と、このターンテーブル20の回転を案内する複数のガイドピン30と、ターンテーブル20に保持フレーム1を押圧する複数の押圧機構40と、ターンテーブル20に搭載された保持フレーム1の内周面3やバリ5を回転駆動軸51に取り付けた回転刃52で切削する加工機構50と、この加工機構50の回転刃52に保持フレーム1を付勢する複数の付勢機構60とを備え、加工機構50の回転駆動軸51と回転刃52との間に、回転刃52よりも幅広のスリーブ54が介在される。
【0028】
作業テーブル11は、図1図5に示すように、例えば表面が平坦な平面矩形の作業台12を備え、この作業台12の裏面四隅部には、下方に伸びる同じ長さの脚13がそれぞれ螺着される。この作業テーブル11の作業台12の表面中心から前後方向(図5の上下方向)に伸びる中心線上には、ターンテーブル20の内側に位置する回転刃52用の貫通露出孔14が丸孔に穿孔されるとともに、この貫通露出孔14の後方に位置する切削塵用の集塵口15が平面円形に穿孔され、この集塵口15に、図示しない切削塵吸引用の集塵機がホースを介して下方から接続される。また、作業台12の表面前部の中央部分と両側部分とには、付勢機構60用のスライド穴16がそれぞれ凹み形成され、各スライド穴16が平面矩形の長方形に形成される。
【0029】
ターンテーブル20は、保持フレーム1の規格サイズが複数の場合には、大きさの異なる複数サイズが形成される。このターンテーブル20は、図1図3図4図5に示すように、例えば保持フレーム1よりも幅広のリング形に形成されており、作業テーブル11の作業台12の表面中心にセンタリングして配置され、手動操作で回転する。ターンテーブル20は、基本的には表裏両面がそれぞれ平坦面に形成され、内周縁部21が作業台12の貫通露出孔14に近接しており、外周縁部には、保持フレーム1のバリ5無しの傾斜した外周面4に接触して位置決めする平面リング形の位置決め片22が必要に応じて突出形成される。
【0030】
複数のガイドピン30は、図5に示すように、作業テーブル11の作業台12の取付穴に着脱自在に挿入されてターンテーブル20の外周縁部の両側付近に近接し、各ガイドピン30が円柱形に形成される。この複数のガイドピン30は、ターンテーブル20を前後左右に位置決めするとともに、ターンテーブル20の回転時に回転を円滑に案内するよう機能する。
【0031】
複数の押圧機構40は、図1図4図5に示すように、例えば作業テーブル11の作業台12の表面前部に配置され、複数のスライド穴16の間に介在される。各押圧機構40は、作業台12の表面前部に螺着されてターンテーブル20の外周縁部に隣接する略凸字形の支持ブロック41と、この支持ブロック41の中央部の凹んだ溝孔内に支持されて上下方向に揺動可能なアーム42とを備え、このアーム42の先端部に、保持フレーム1の表面に摺接する押圧ローラ43が回転可能に軸支されており、この押圧ローラ43がターンテーブル20の表面に保持フレーム1の裏面を押圧して位置ずれや浮き上がりを防止する。
【0032】
加工機構50は、図1図2図4図5に示すように、例えば作業テーブル11の作業台12下方にモータ内蔵の本体ユニットが設置され、この本体ユニットが上方に向けられてそのモータの回転駆動軸51が作業台12の貫通露出孔14に回転可能に挿入されるとともに、この回転駆動軸51の上端部に、貫通露出孔14から露出してターンテーブル20の内側に位置する回転刃52が交換可能に装着されており、この回転刃52が保持フレーム1の傾斜した内周面3やバリ5に横方向から摺接して切削する。
【0033】
本体ユニットは、例えばトリマー等のアクチュエータからなり、回転刃52やスリーブ54の高さを容易に変更できるよう、作業台12下方に上下動可能に設置される。また、回転刃52は、様々な種類があるが、保持フレーム1の内周面3やバリ5を切削可能であれば、特に限定されるものではない。この回転刃52は、必要に応じ、集塵口15と共に着脱自在の細長いカバー53に被覆されて安全性が確保される。
【0034】
スリーブ54は、図2に示すように、回転刃52よりも拡径の円筒形に形成されて回転刃52の下部に回転可能に嵌入され、回転駆動軸51の上端部と回転刃52の上部との間に介在されており、保持フレーム1のバリ5無しの内周面3に横方向から接触して回転刃52の切削範囲を規制することにより、回転刃52の切削量を調整するよう機能する。このスリーブ54の具体的な調整法としては、加工機構50の本体ユニットの設置位置が下方に変更されると、この変更に伴い、下方に移動して回転刃52の切削範囲や切削量を増加させる。これに対し、本体ユニットの設置位置が上方に変更されると、この変更に伴い、上方に移動して回転刃52の切削範囲や切削量を減少させる。
【0035】
複数の付勢機構60は、図1図4図5に示すように、複数の押圧機構40や加工機構50の回転刃52と共に作業テーブル11の作業台前部に集約して配置され、保持フレーム1の切削範囲が位置ずれするのを防止する。各付勢機構60は、作業台12のスライド穴16にスライド可能に嵌入される平面矩形のスライドブロック61を備え、スライド穴16とスライドブロック61との間には、スライドブロック61をターンテーブル20の外周縁部方向に弾圧付勢するコイルバネ等のバネが介在されており、スライドブロック61の端部表面には、ターンテーブル20の外周縁部に摺接する付勢ローラ62が回転可能に軸支される。
【0036】
このような付勢ローラ62は、ターンテーブル20を加工機構50の回転刃52方向に付勢することにより、保持フレーム1の内周面3を回転刃52に付勢して常時接触させるよう機能する。
【0037】
保持フレーム1の外周面4を削るタイプの製造装置10Bは、図6ないし図9に示すように、作業テーブル11の作業台12に配置されて保持フレーム1を搭載するターンテーブル20Aと、ターンテーブル20Aに保持フレーム1を押圧する複数の押圧機構40と、ターンテーブル20Aに搭載された保持フレーム1の外周面4やバリ5を回転駆動軸51に取り付けた回転刃52で切削する加工機構50とを備え、この加工機構50の回転駆動軸51と回転刃52との間に、回転刃52よりも幅広のスリーブ54が介在される。
【0038】
作業テーブル11は、図6図9に示すように、例えば表面が平坦な平面矩形の作業台12を備え、この作業台12の裏面四隅部には、同じ長さの脚13がそれぞれ螺着される。この作業テーブル11の作業台12の表面中心から前後方向(図6の斜め上下方向)に伸びる中心線上には、ターンテーブル20Aの周縁部外側に位置する回転刃52用の貫通露出孔14が丸孔に穿孔されるとともに、この貫通露出孔14の近傍に位置する切削塵用の集塵口15が平面円形に穿孔され、この集塵口15に、図示しない切削塵吸引用の集塵機が下方からホースを介して接続される。また、作業台12表面の中心線上には、作業台12の中央部近傍に位置するスライド穴16が凹み形成され、このスライド穴16が作業台12の前後方向に伸びる平面矩形に形成される。
【0039】
ターンテーブル20Aは、図6図9に示すように、例えば保持フレーム1よりも幅の狭い縮径の円板に形成され、表面周縁部付近に保持フレーム1を搭載してその外周縁部を半径外方向に食み出させる。このターンテーブル20Aは、基本的には表裏両面がそれぞれ平坦面に形成されるが、表面の周縁部以外の領域23が平面円形の肉厚に高く形成され、裏面の中心部が付勢ブロック24に回転可能に軸支されており、手動操作で回転する。
【0040】
付勢ブロック24は、図7に示すように、平面略矩形のブロックに形成され、作業テーブル11の作業台12のスライド穴16にスライド可能に嵌入されており、このスライド穴16との間にコイルバネ等のバネが介在される。このような付勢ブロック24は、バネにより加工機構50方向に弾圧付勢され、ターンテーブル20Aの周縁部を作業台12の貫通露出孔14に近接させる。
【0041】
複数の押圧機構40は、図6図9に示すように、例えばターンテーブル20A表面の周縁部以外の領域23に配設され、ターンテーブル20Aの周方向に所定の間隔(90°間隔等)で配列される。各押圧機構40は、ターンテーブル20Aの領域23周縁部付近に螺着される支持ブロック41と、この支持ブロック41の中央部の凹んだ溝孔内に軸支されて上下方向に揺動可能なアーム42とを備え、このアーム42の先端部が保持フレーム1の表面を押圧する。このような押圧機構40は、ターンテーブル20Aの表面周縁部付近に保持フレーム1の裏面を密接させて位置ずれや浮き上がりを防止するよう機能する。
【0042】
加工機構50は、図6図8に示すように、例えば作業テーブル11の作業台12下方にモータ内蔵の本体ユニットが設置され、この本体ユニットが上方に向けられてそのモータの回転駆動軸51が作業台12の貫通露出孔14に回転可能に挿入されるとともに、この回転駆動軸51の上端部に、貫通露出孔14から露出してターンテーブル20Aの周縁部外側に位置する回転刃52が交換可能に装着されており、この回転刃52が付勢された保持フレーム1の傾斜した外周面4やバリ5に横方向から摺接して切削する。
【0043】
本体ユニットは、例えばトリマー等のアクチュエータからなり、回転刃52やスリーブ54の高さを簡易に変更できるよう、作業台12下方に上下動可能に設置される。また、回転刃52は、様々な種類があるが、保持フレーム1の外周面4やバリ5を切削することができるのであれば、特に限定されるものではない。この回転刃52は、必要に応じ、集塵口15と共に着脱自在の細長いカバー53に被覆されて安全性が担保される。
【0044】
スリーブ54は、回転刃52よりも拡径の円筒形に形成されて回転刃52の下部に回転可能に嵌入され、回転駆動軸51の上端部と回転刃52の上部との間に介在されており、保持フレーム1のバリ5無しの外周面4に横方向から接触して回転刃52の切削範囲を規制することにより、回転刃52の切削量を調整するよう機能する。具体的な調整としては、加工機構50の本体ユニットの設置位置が下方に変更されると、この変更に伴い、下方に移動して回転刃52の切削範囲や切削量を増加させる。これに対し、加工機構50の本体ユニットの設置位置が上方に変更されると、この変更に伴い、上方に移動して回転刃52の切削範囲や切削量を減少させる。
【0045】
上記構成において、射出成形された保持フレーム1の内外周面3・4を切削して寸法精度を確保したり、バリ5を除去する場合には、先ず、保持フレーム1の内周面3を削る製造装置10Aにより保持フレーム1の内周面3を切削するため、保持フレーム1の規格サイズに応じたターンテーブル20を用意し、このターンテーブル20を作業テーブル11上部の作業台12に配置して加工機構50の回転刃52と複数の付勢機構60の間に介在し、作業台12に複数のガイドピン30を挿入してターンテーブル20を前後左右に位置決めする。
【0046】
こうしてターンテーブル20を位置決めしたら、このターンテーブル20に保持フレーム1を搭載してその外周面4をターンテーブル20の位置決め片22に位置決め接触させ、複数の押圧機構40の押圧ローラ43を保持フレーム1の表面にそれぞれ摺接させて浮き上がらないようにし、加工機構50の回転刃52とスリーブ54の位置をそれぞれ調整する。
【0047】
次いで、加工機構50の本体ユニットを駆動して回転刃52を回転させるとともに、この回転刃52により保持フレーム1の内周面3のバリ5や内周面3を切削し、この切削の程度に応じてターンテーブル20を少しずつ回転させて保持フレーム1の切削位置を変更し、保持フレーム1の全てのバリ5や内周面3を切削した後、ターンテーブル20から保持フレーム1を取り外す。
【0048】
これらの作業の際、保持フレーム1の内周面3は、ターンテーブル20A表面の周縁部以外の領域23に保持フレーム1が嵌合する程度に切削される。必要性がなければ、保持フレーム1の内周面3のバリ5のみを切削し、内周面3の切削は省略しても良い。また、切削で発生する切削塵を集塵口15に適宜落下させれば、作業テーブル11の作業台12表面の汚染を防止し、切削作業の迅速化や容易化に資することができる。
【0049】
保持フレーム1の内側の切削が終了したら、保持フレーム1の外周面4を削る製造装置10Bで保持フレーム1の外周面4を切削するため、付勢ブロック24にターンテーブル20Aを回転可能に軸支させ、このターンテーブル20Aに保持フレーム1を搭載してその外周縁部をターンテーブル20Aの周縁部から食み出させる。
【0050】
ターンテーブル20Aに保持フレーム1を搭載したら、複数の押圧機構40のアーム先端部を保持フレーム1の表面にそれぞれ押圧して浮き上がらないようにし、付勢ブロック24をスライドさせて保持フレーム1の外周面4を加工機構50の回転刃52に近接させ、加工機構50の回転刃52とスリーブ54の位置をそれぞれ調整する。
【0051】
次いで、加工機構50の本体ユニットを駆動して回転刃52を回転させるとともに、この回転刃52で保持フレーム1の外周面4のバリ5や外周面4を切削し、この切削の程度に応じてターンテーブル20Aを少しずつ回転させて保持フレーム1の切削位置を変更し、保持フレーム1のバリ5や外周面4を切削した後、ターンテーブル20Aから保持フレーム1を取り外せば、保持フレーム1の内外周面3・4を切削して寸法精度を確保したり、バリ5を除去することができる。
【0052】
切削作業の際、保持フレーム1が規格サイズよりも大き目のサイズの場合には、寸法を調整して寸法精度を向上させる観点から、保持フレーム1の外周面4の切削量を増やすことが好ましい。切削量を増やす必要性がないときには、保持フレーム1の外周面4のバリ5のみを切削することができる。保持フレーム1のノッチ2のバリ5の除去が困難なときには、ノッチ2のバリ5を手作業で切削して除去すれば良い。
【0053】
切削作業の際、付勢ブロック24とバネの弾圧付勢により、加工機構50の回転刃52に保持フレーム1の外周面4のバリ5が常時接触するので、回転刃52からバリ5が離れて残存することがない。また、切削作業の際、切削で発生する切削塵を集塵口15に適宜落下させれば、作業テーブル11の作業台12表面の汚染を防止し、切削作業に支障を来すのを防止することができる。
【0054】
上記によれば、保持フレーム1を切削する作業を半自動化し、スリーブ54の位置調整により回転刃52の切削範囲や切削量を簡単に規制することができるので、切削作業が作業員の個別の判断や熟練度に大きく左右されることがきわめて少なくなる。したがって、保持フレーム1が規格サイズよりも小さくなったり、保持フレーム1のバリ5が残存するのを防止することができ、保持フレーム1の寸法精度を大幅に向上させることができる。
【0055】
また、回転する回転刃52の使用により、切削作業に要する時間を大幅に短縮することができるので、保持フレーム1の製造作業の迅速化を図ることができる。さらに、複数の押圧機構40により保持フレーム1の少なくとも切削作業範囲の浮き上がりを防止するので、寸法精度の向上が期待できる他、保持フレーム1の位置ずれに伴い周面が凹凸になるのを防止することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では射出成形されたバリ5付きの保持フレーム1を示したが、射出成形されてバリ5が既に除去された保持フレーム1の内外周面3・4を切削、研削、又は研磨しても良い。また、上記実施形態では半導体ウェーハ8を示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、液晶基板、ガラス板、水晶発振素子、半導体素子、セラミックコンデンサ、抵抗素子等でも良い。また、製造装置10A・10Bを順次使用しても良いが、成形品の構成や形に応じ、いずれか一方のみを使用しても良い。
【0057】
また、作業テーブル11の作業台12の集塵口15を省略し、カバー53の端部に集塵機を接続して切削塵を吸引するようにしても良い。また、上記実施形態ではターンテーブル20の外周縁部に、平面リング形の位置決め片22を突出形成したが、ターンテーブル20の外周縁部周方向に、複数の位置決め片22を所定の間隔で並べて形成することができる。さらに、作業テーブル11の作業台12表面に、平面円弧形のガイド片を着脱自在に複数取り付けてターンテーブル20の外周縁部に近接させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る成形品の製造装置及び保持フレームは、機械、建築、電気、電子、光学、化学、日用品の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0059】
1 保持フレーム(成形品)
3 内周面
4 外周面(周面)
5 バリ
8 半導体ウェーハ
10 成形品の製造装置
10A 保持フレームの内周面を削るタイプの製造装置
10B 保持フレームの外周面を削るタイプの製造装置
11 作業テーブル
12 作業台
15 集塵口
16 スライド穴
20 ターンテーブル
20A ターンテーブル
21 内周縁部
22 位置決め片
23 表面の周縁部以外の領域
24 付勢ブロック
30 ガイドピン(ガイド部材)
40 押圧機構
41 支持ブロック
42 アーム
43 押圧ローラ
50 加工機構
51 回転駆動軸
52 回転刃
53 カバー
54 スリーブ(スリーブ部材)
60 付勢機構
61 スライドブロック
62 付勢ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10