(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170132
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】グリップテープ及びその巻き付け方法
(51)【国際特許分類】
A63B 60/14 20150101AFI20241129BHJP
A63B 53/14 20150101ALI20241129BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20241129BHJP
A63B 102/02 20150101ALN20241129BHJP
A63B 102/04 20150101ALN20241129BHJP
A63B 102/18 20150101ALN20241129BHJP
A63B 102/16 20150101ALN20241129BHJP
A63B 102/22 20150101ALN20241129BHJP
【FI】
A63B60/14
A63B53/14 B
A63B102:32
A63B102:02
A63B102:04
A63B102:18
A63B102:16
A63B102:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087128
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中井 利匡
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA06
2C002GG04
2C002MM01
(57)【要約】
【課題】 長期に亘って使用することができ、べたつき感、短期間での剥離、接着跡の残存が少ないグリップテープ及びその巻き付け方法を提供する。
【解決手段】 ゴルフクラブ10のグリップテープ1を、テープ形に成形されてゴルフクラブ10のグリップ部13にスパイラル巻きに巻回される自己融着性シリコーンゴム2とし、この自己融着性シリコーンゴム2の両面のうち、グリップ部13に接触する裏面を凹凸のない平坦面に形成し、表面4を中央部5から左右両側部に向かうにしたがい徐々に薄くなる断面半楕円形の山形曲面に湾曲形成する。グリップテープ1が、引張って巻き付けられることでシリコーン素材同士が融着して一体化する自己融着性シリコーンゴム2なので、劣化が実に少なく、例え高温多湿の環境下で使用しても、長期に亘って使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ形に成形された自己融着性シリコーンゴムからなることを特徴とするグリップテープ。
【請求項2】
自己融着性シリコーンゴムの両面のうち、一方の面を平坦面とするとともに、他方の面を中央部から両側部に向かうにしたがい徐々に薄くなる略山形曲面とし、
自己融着性シリコーンゴムを、平均組成式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンとホウ酸化合物とを含有するシリコーン組成物を硬化させた硬化物とした請求項1記載のグリップテープ。
R1
nSiO(4-n)/2 (I)
(平均組成式(I)のR1は炭素数1~10の炭化水素基、nは1.98~2.02である)
【請求項3】
40℃、600時間の条件下で試験機により紫外線を照射して耐候性を試験した場合に、600時間経過後に外観変化が略認められない請求項1又は2記載のグリップテープ。
【請求項4】
JIS K6251に準拠して測定した場合の引張強さが50N以上、JIS K6251に準拠して測定した場合の伸び率が300%以上である請求項1又は2記載のグリップテープ。
【請求項5】
グリップ部に請求項1又は2記載のグリップテープを巻き付けるグリップテープの巻き付け方法であって、
グリップ部の一端周面にグリップテープの端部を圧接して引張り、グリップテープを巻いてグリップテープ同士を融着し、その後、グリップテープをその幅が狭くなるよう引張りながら厚みを薄くし、グリップ部の一端から他端方向に巻き付けることを特徴とするグリップテープの巻き付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ、テニスラケット、バトミントンラケット、野球のバット等のグリップ部に巻かれるグリップテープ及びその巻き付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ球技で使用されるゴルフクラブのグリップは、ゴルファーが握り持つ部分であり、ボールの方向性や飛距離に大きな役割を果たすが、温度、紫外線、汗、油等の影響により劣化する性質がある。したがって、ゴルフクラブのグリップは、使用頻度にもよるが、定期的(例えば、1~2年)に交換する必要がある。係る点を踏まえ、従来よりグリップを形成する様々なグリップテープが開発され、製造されている(特許文献1、2、3、4、5参照)。
【0003】
従来におけるゴルフクラブのグリップテープは、図示しないが、例えばテープ形の基材層に多孔質のポリウレタン層が積層され、基材層がゴルフクラブのグリップ部に接着層を介してスパイラル巻きに巻着されることにより、吸水性やコントロール性を向上させるよう機能する。接着層は、両面接着テープに形成されて基材層に積層されたり、あるいは基材層に接着剤が塗布されて乾燥硬化することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012‐005774号公報
【特許文献2】特開2013‐135771号公報
【特許文献3】特開平11‐128422号公報
【特許文献4】特開平11‐18909号公報
【特許文献5】実開平4‐51971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来におけるグリップテープは、以上のように構成され、多孔質のポリウレタン層が使用されるので、吸水性や柔軟性には優れるものの、高温多湿等の環境下では劣化が速いという問題がある。また、長期に亘って使用すると、接着層の成分がポリウレタン層の表面に浮き出るので、グリップテープに不快なべたつき感が生じることがある。さらに、接着層の組成によっては、短期間で剥離することがあるし、新たなグリップテープと交換するために剥離すると、べたついたり、接着跡が残ることもある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、長期に亘って使用することができ、べたつき感、短期間での剥離、接着跡の残存が少ないグリップテープ及びその巻き付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、テープ形に成形された自己融着性シリコーンゴムからなることを特徴としている。
【0008】
なお、自己融着性シリコーンゴムの両面のうち、一方の面を平坦面とするとともに、他方の面を中央部から両側部に向かうにしたがい徐々に薄くなる略山形曲面とし、
自己融着性シリコーンゴムを、平均組成式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンとホウ酸化合物とを含有するシリコーン組成物を硬化させた硬化物であることが好ましい。
R1
nSiO(4-n)/2 (I)
(平均組成式(I)のR1は炭素数1~10の炭化水素基、nは1.98~2.02である)
【0009】
また、グリップテープは、40℃、600時間の条件下で試験機により紫外線を照射して耐候性を試験した場合に、600時間経過後に外観変化が略認められないことが好ましい。
また、グリップテープは、JIS K6251に準拠して測定した場合の引張強さが50N以上、JIS K6251に準拠して測定した場合の伸び率が300%以上であることが好ましい。
【0010】
また、グリップテープは、ゴルフクラブのグリップ部、テニスラケットのグリップ部、バトミントンラケットのグリップ部、卓球用ラケットのグリップ部、野球のバットのグリップ部、ホッケー競技のスティックのグリップ部、及びスキー競技のスティックのグリップ部の少なくともいずれかに巻き付けられると良い。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、グリップ部に請求項1又は2記載のグリップテープを巻き付けるグリップテープの巻き付け方法であって、
グリップ部の一端周面にグリップテープの端部を圧接して引張り、グリップテープを巻いてグリップテープ同士を融着・一体化し、その後、グリップテープをその幅が狭くなるよう引張って厚みを調整しながら薄くし、グリップ部の一端から他端方向に巻き付けることを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における自己融着性シリコーンゴムは、透明と半透明のいずれでも良く、着色したり、模様を印刷することが可能である。また、グリップテープは、鉄道車両用材料燃焼性試験を実施した場合に難燃性であり、50mmのテストピースで絶縁性試験を実施した場合に23℃における絶縁破壊強さが29kV/mm以下、好ましくは22kV/mm以上27kV/mm以下であり、食品、添加物等の規格基準(厚生省告示370号)に適合することが好ましい。また、JIS K7114に準拠し、24時間浸漬の条件で試験した場合の耐薬品性が弱酸性、弱アルカリ性のときに外観変化の認められないことが好ましい。
【0013】
グリップ部には、少なくとも各種スポーツ用具、各種生活用品、各種工具等のグリップ部が含まれる。このグリップ部に既にグリップテープが巻かれている場合、既に巻かれたグリップテープを剥離してからグリップテープを巻き付けても良いし、既に巻かれたグリップテープをそのままにしてグリップテープを巻き付けても良い。また、グリップ部の一端は、下端でも良いし、上端でも良い。グリップ部の他端は、上端でも良いし、下端でも良い。さらに、グリップテープは、2層、3層、4層、5層等の多層に巻き付けることができる。このグリップテープを巻き付ける場合には、スパイラル巻きしたり、部分的に重ねてスパイラル巻きすることができる。
【0014】
本発明によれば、グリップテープが、伸ばされて巻き付けられることでシリコーン素材同士が融着して一体化する自己融着性シリコーンゴムなので、劣化が少なく、接着剤や粘着剤を省略することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、グリップテープが自己融着性シリコーンゴムなので、グリップテープを長期に亘って使用することができ、しかも、グリップテープにべたつき感、短期間での剥離、接着跡の残存が生じるのを防ぐことができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、グリップテープを形成する自己融着性シリコーンゴムの他方の面が山形曲面なので、グリップテープの引張り性の向上を図ることができる。また、自己融着性シリコーンゴムが、平均組成式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンとホウ酸化合物とを含有するシリコーン組成物が硬化した硬化物なので、粘着剤や可塑剤等を省略することができ、グリップテープのべたつき感、短期間での剥離、接着跡の残存を防ぐことができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、グリップテープが耐候性に優れるので、長期に亘って性能を維持することができる。
請求項4記載の発明によれば、グリップテープの引張強さがJIS K6251に準拠して測定した場合に50N以上、グリップテープの伸び率がJIS K6251に準拠して測定した場合に300%以上なので、自己融着性シリコーンゴムの自己融着性が低下するのを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るグリップテープ及びその巻き付け方法の実施形態における使用状態を模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明に係るグリップテープの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図3】本発明に係るグリップテープの実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【
図4】本発明に係るグリップテープ及びその巻き付け方法の第2の実施形態における使用状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるグリップテープ1は、
図1ないし
図3に示すように、テープ形に成形されてゴルフクラブ10のグリップ部13に巻き付けられる単層の自己融着性シリコーンゴム2からなることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0020】
グリップテープ1である自己融着性シリコーンゴム2は、引張って巻き付けられることによりシリコーン素材同士が融着して一体化するシリコーンゴムであり、長さ2m以上15m以下、好ましくは2m以上10m以下、より好ましくは2m以上5m以下の半透明の帯形に溶融押出成形され、必要に応じ、図示しない透明の離型フィルムに剥離可能に積層されて出荷・保管される。
【0021】
係る自己融着性シリコーンゴム2は、
図2や
図3に示すように、両面のうち、ゴルフクラブ10のグリップ部13に接触する裏面3が凹凸のない平坦面に形成され、表面4が中央部5から左右両側部に向かうにしたがい徐々に薄くなる断面略半楕円形の柔軟な山形曲面に湾曲形成されており、この膨らんだ柔らかい山形曲面が引張り性やフィット感等に貢献する。表面4の膨らんだ中央部5には、グリップテープ1を重ね巻きする場合の目安となる基準線6が必要に応じて長手方向に印刷される。
【0022】
自己融着性シリコーンゴム2は、シリコーン組成物が硬化した硬化物により形成される。より具体的には、べたつき感、短期間での剥離、接着跡の残存を防止する観点から、平均組成式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンとホウ酸化合物とを含有するシリコーン組成物が硬化した硬化物により形成され、粘着剤や可塑剤等を省略することができる。
R1
nSiO(4-n)/2 (I)
【0023】
式(I)におけるR1は、炭素数1~10、好ましくは1~8の炭化水素基である。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基等があげられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等があげられる。また、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等があげられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が該当する。また、アリール基としては、フェニル基やトリル基等が該当する。
【0024】
R1は、炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基でも良い。シリコーン組成物を硬化させる際、後述する有機過酸化物で硬化を促進させる場合には、R1がアルケニル基又はアルケニル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基で置換された基が好ましい。
【0025】
式(I)におけるnは、1.98~2.02が良い。これは、nが係る範囲から外れると、自己融着性が得られないことがあるからである。また、ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、100~100,000,000cStであることが好ましく、100,000~10,000,000cStであることがより好ましい。これは、ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が係る範囲内であれば、硬化前の取り扱い性と硬化後の機械的物性に優れるからである。
【0026】
ホウ酸化合物としては、ホウ酸、無水ホウ酸の誘導体等があげられる。ホウ酸としては、無水ホウ酸、ピロホウ酸、オルトホウ酸等があげられる。また、無水ホウ酸の誘導体としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、トリメトキシボロキシン等があげられる。また、ホウ酸化合物としては、ジメチルジメトキシシラン又はジメチルジエトキシシラン等のオルガノアルコキシシランと無水ホウ酸とを縮合させて得たポリオルガノボロシロキサンを用いることもできる。ホウ酸化合物は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0027】
シリコーン組成物におけるホウ酸化合物の含有割合は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、0.5~30質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。これは、ホウ酸化合物の含有割合が下限値以上であれば、充分な自己融着性を確保することができ、上限値以下であれば、機械的物性の低下を抑制することができるからである。
【0028】
シリコーン組成物は、シリコーン組成物の硬化を促進するために、有機過酸化物を含んでも良い。この有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が該当する。これらの有機過酸化物は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0029】
シリコーン組成物における有機過酸化物の含有割合は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~3.0質量部であることがより好ましい。これは、有機過酸化物の含有割合が下限値以上であれば、充分に硬化を促進することができるという理由に基づく。但し、上限値を越えても、含有割合に応じた硬化促進は見られなくなる。
【0030】
このような自己融着性シリコーンゴム2は、幅が15mm以上60mm以下、好ましくは20mm以上55mm以下、より好ましくは25mm以上50mm以下に成形されると良い。これは、幅が15mm以上60mm以下の範囲であれば、ゴルフクラブ10のグリップ部13に対する巻き付け回数を抑制し、無駄を省くことができるという理由に基づく。
【0031】
自己融着性シリコーンゴム2の厚さは、0.5mm以上2.0mm以下が良い。具体的には、中央部5の厚さが0.8mm以上2.0mm以下、好ましくは1.0mm以上1.5mm以下が良く、側部の厚さは0.1mm以上0.5mm以下が良い。これは、厚さが0.5mm以上2.0mm以下の範囲であれば、グリップテープ1の巻き付け作業の作業性に資するからである。
【0032】
自己融着性シリコーンゴム2は、優れた耐候性を得る観点から、40℃、600時間の条件下で超促進耐候性試験機により紫外線を照射して試験した場合に、600時間経過後に外観変化が認められないことが好ましい。また、優れた耐熱性を得る観点から、JIS K6257に準拠して測定した場合の耐熱温度が-60℃以上260℃以下、好ましくは-55℃以上230℃以下、より好ましくは-50℃以上200℃以下が良い。
【0033】
自己融着性シリコーンゴム2の23℃における引張強さは、自己融着性シリコーンゴム2の幅が25mmの場合には、JIS K6251に準拠して測定したときに50N以上、好ましくは75N以上、より好ましくは100N以上が良い。自己融着性シリコーンゴム2の幅が50mmの場合には、JIS K6251に準拠して測定したときに100N以上が良い。これらは、引張強さが50N未満の場合には、自己融着性シリコーンゴム2の自己融着性に問題が生じるからである。
【0034】
自己融着性シリコーンゴム2の23℃における伸び率は、JIS K6251に準拠して測定した場合に300%以上、好ましくは450%以上、より好ましくは500%以上、さらに好ましくは600%以上が最適である。これは、伸び率が300%未満の場合には、自己融着性シリコーンゴム2に充分な自己融着性を付与することができないからである。また、自己融着性シリコーンゴム2の23℃における硬度(IRHD(国際ゴム硬度))は、タック感やフィット感を満足させる観点から、JIS K6253に準拠して測定した場合に50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下が最適である。
以上のような自己融着性シリコーンゴム2の製品例としては、ポリママルチテープ〔信越ポリマー株式会社製:製品名(登録商標)〕等があげられる。
【0035】
ゴルフクラブ10は、例えば
図1に示す一般的なフェアウェイウッドの場合、金属製の細長いシャフト11の先端部にクラブヘッド12が装着され、シャフト11の末端部に取付領域となるグリップ部13が区画形成される。このグリップ部13の周面には両面接着テープが巻着され、この両面接着テープには細長い有底円筒形のグリップカバーが挿入して接着されるが、このグリップカバーがグリップを形成する。ゴルフクラブ10には、
図1に示すフェアウェイウッドの他、ドライバー、アイアン、ユーティリティ、ウェッジ、パター等の種類があるが、シャフト11にグリップ部13が形成されているのであれば、特に限定されるものではない。
【0036】
上記構成において、ゴルフクラブ10のグリップをグリップテープ1に交換する場合には、先ず、ゴルフクラブ10のシャフト11から不用となったグリップカバーをカッターでカットして綺麗に除去し、シャフト11のグリップ部13に貼り付いている両面テープを丁寧に剥離して除去し、グリップ部13を清掃する。こうしてグリップ部13を清掃したら、グリップテープ1を用意してその端部を斜めにカットし、グリップテープ1から離型フィルムを剥離する。
【0037】
次いで、ゴルフクラブ10のグリップ部13の下端14周面にグリップテープ1の先端部裏面3を圧着して引張り、グリップテープ1を引張りながら一周以上平巻にきつく巻き、グリップテープ同士を融着して一体化する。こうしてグリップテープ同士が融着して一体化したら、グリップテープ1を短めに持ち、グリップテープ1の幅が2/3~1/3程度になるよう、グリップテープ1を強く引張って厚みを調整しながら薄くし、グリップテープ1をグリップ部13の下端14から上端15方向に少しずつ移動させつつきつくスパイラル巻きし、その後、グリップ部13の上端15でグリップテープ1を引張りながら一周以上平巻にきつく巻いてグリップテープ同士を融着・一体化すれば、ゴルフクラブ10のグリップをグリップテープ1に交換することができる。この際、劣化したグリップがグリップテープ1で巻かれるので、新しいグリップのように感じられる。
【0038】
スパイラル巻きの際には、グリップテープ1の隣接する一側部と他側部とが部分的に重なるよう重ね巻きすることが好ましい。この重ね巻きにより、グリップテープ1の側部同士が融着するので、グリップテープ1の形態の安定化を図ることができる。また、ゴルフクラブ10のグリップを太くしてプレー時の方向性を安定させたり、掌の大きさに適合させたい場合には、グリップ部13の上端15から下端14方向にグリップテープ1を少しずつ移動させながら2層目をスパイラル巻きしたり、2層目のスパイラル巻きの終了後にグリップ部13の下端14から上端15方向にグリップテープ1を再度移動させながら3層目をスパイラル巻きすれば良い。グリップテープ1を4層や5層にスパイラル巻きする場合にも同様の作業を実施すれば良い。
【0039】
上記構成によれば、グリップテープ1が多孔質のポリウレタン層ではなく、引張って薄く巻き付けられることでシリコーン素材同士が融着して一体化する自己融着性シリコーンゴム2なので、殆ど劣化せず、例え高温多湿の環境下で使用しても、長期に亘って好適に使用することができる。また、粘着剤を省略することができるので、グリップテープ1を長期に亘って使用しても、接着成分がグリップテープ1の表面4に浮き出ることがなく、グリップテープ1に不快なべたつき感が生じることがない。
【0040】
また、自己融着性シリコーンゴム2が耐候性に優れ、殆ど劣化しないので、長期に亘って高い性能を維持することができ、グリップテープ1が短期間で剥離することもない。また、新たなグリップテープ1と交換するためにグリップテープ1を剥離しても、べたついたり、接着跡が残ることがない。また、自己融着性シリコーンゴム2の23℃における硬度が50以下なので、グリップテープ1が滑りにくく、しかも、良好なタック感やフィット感を得ることができる。さらに、グリップ部13の周面にグリップテープ1が粘着しないので、巻き付け作業に精通していない者でもグリップテープ1を簡単に交換することが可能となる。
【0041】
次に、
図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、テニスラケット20のグリップテープが汚れて滑り止め効果が低下した場合に、テニスラケット20のグリップ部21にグリップテープ1を巻回するようにしている。
グリップテープ1は、テニスラケット20のグリップ部21に既にグリップテープが巻回されている場合には、既存のグリップテープを剥離した後に巻回して元グリップとしても良いし、既存のグリップテープに巻回してオーバーグリップとしても良い。
【0042】
上記構成において、テニスラケット20のグリップ部21にグリップテープ1を巻き付けてオーバーグリップとしたい場合には、先ず、グリップテープ1を用意して離型フィルムを剥離し、テニスラケット20のグリップ部21の下端22周面にグリップテープ1の先端部裏面3を圧着して引張り、グリップテープ1を引張りながら一周以上平巻にきつく巻き、グリップテープ同士を融着して一体化する。
【0043】
こうしてグリップテープ同士が融着したら、グリップテープ1を短めに持ち、グリップテープ1の幅や厚みが2/3~1/3程度になるよう、強く引張って厚みを調整しながら薄くし、グリップテープ1をグリップ部21の下端22から上端23方向に少しずつ移動させつつ重ねてスパイラル巻きし、その後、グリップ部21の上端23でグリップテープ1を引張りながら一周以上平巻にきつく巻いてグリップテープ同士を融着・一体化すれば、テニスラケット20のグリップ部21にグリップテープ1を巻き付けてオーバーグリップを得ることができる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、テニスラケット20の滑り止め効果や耐候性等を向上させることができるのは明らかである。
【0044】
なお、上記実施形態ではゴルフクラブ10のシャフト11から不用となったグリップカバーを除去したが、グリップカバーを交換せず、既存のグリップカバーに新規のグリップテープ1を巻回しても良い。また、上記実施形態ではゴルフクラブ10やテニスラケット20のグリップ部13・21にグリップテープ1を巻回したが、何らこれに限定されるものではなく、他のスポーツ競技の用具等のグリップ部に巻回しても良い。例えば、バトミントンラケット、卓球用ラケット、野球のバット、各種ホッケー競技のスティック、各種スキー競技のスティックのグリップ部等に適宜巻回しても良い。また、自転車やオイートバイのグリップ部、杖のグリップ部、刀剣のグリップ部、釣竿のグリップ部、ハンマー等からなる工具のグリップ部、太鼓のバチのグリップ部等に巻回しても良い。
【0045】
また、自己融着性シリコーンゴム2の表裏両面は、それぞれ平坦面でも良い。また、自己融着性シリコーンゴム2の裏面3には、深さ1μm以下の微細な凹部と、高さ1μm以下の微細な凸部の少なくともいずれかを形成することができる。また、基準線6は、左右両側部方向にずらしたり、複数本にしたり、省略することができる。また、グリップテープ1を強く引張りながらグリップ部13の上端15から下端14方向にスパイラル巻きすることもできる。さらに、グリップテープ1のスパイラル巻きが終了したら、グリップテープ1を一周以上平巻に巻くのではなく、グリップテープ1の末端部を握って引張り、これまでに巻いたグリップテープ1の全幅にグリップテープ1がかかるよう末端部を押さえて圧着することにより、グリップテープ1の交換作業を終了することもできる。
【実施例0046】
以下、本発明に係るグリップテープの実施例を説明する。
〔実施例1〕
先ず、グリップテープを製造するため、平均組成式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンとホウ酸化合物とを含有する未架橋のミラブル型シリコーンゴム組成物〔信越化学工業株式会社製:製品名KE-1614H-U〕に、有機過酸化物として信越化学工業社製C-23Nを添加してシリコーン組成物を得た。こうしてシリコーン組成物を得たら、このシリコーン組成物を押出機により溶融混練し、ジオルガノポリシロキサンを硬化させて硬化物とし、この硬化物を押出機のダイスからテープ形に吐出させることにより、
図2や
図3に示す半透明の自己融着性シリコーンゴムからなるグリップテープを製造した。
【0047】
製造したグリップテープの大きさを温度23℃±2℃、相対湿度50%RH±5%RHの環境下でメータにより測定したところ、幅が25mm、中央部の厚さが1.0mm、側部の厚さが0.5mmであった。
【0048】
また、グリップテープから50mmサイズの試験片を切り出して超促進耐候性試験機にセットし、40℃、600時間(実暴露20年相当)の条件下で超促進耐候性試験機から紫外線を照射して耐候性を試験した。超促進耐候性試験機としては、メタリングウェザーメータMV3000〔スガ試験株式会社製:製品名〕を用いた。試験の結果、600時間経過後の外観変化は何ら確認されなかった。
【0049】
また、グリップテープの23℃における引張強さをJIS K6251に準拠して測定した。測定は、引張速度50mm/分、温度23℃±2℃、相対湿度50%RH±5%RHの条件下で実施した。測定したところ、86Nであった。また、グリップテープの23℃における伸び率をJIS K6251に準拠して測定した。測定は、引張速度50mm/分、温度23℃±2℃、相対湿度50%RH±5%RHの条件下で実施した。測定したところ、620%であった。これらの測定には、荷重‐変位測定ユニットFSAシリーズ〔株式会社イマダ製:製品名〕を用いた。
【0050】
また、グリップテープの23℃における硬度(IRHD)をJIS K6253に準拠して測定したところ、測定値は28であった。硬度の測定には、全自動IRHDマイクロゴム硬さ測定システム〔高分子計器株式会社製:製品名〕を使用した。
【0051】
次に、製造したグリップテープを用いてゴルフクラブのグリップを交換した。先ず、スプーンと呼ばれる3番ウッドのゴルフクラブを用意し、このゴルフクラブのシャフトからエラストマー製のグリップカバーを先端部の曲がった専用のカッターでクラブヘッド側からカットして除去し、シャフトのグリップ部に接着している両面テープをドライヤで温めながら剥離して除去し、グリップ部をホワイトガソリンと呼ばれる溶剤で清掃した。こうしてグリップ部を清掃したら、ゴルフクラブのグリップ部の下端周面にグリップテープの先端部裏面を圧着して引張り、グリップテープを引張りながら一周平巻に巻いてグリップテープ同士を融着・一体化した。
【0052】
次いで、グリップテープの幅や厚みが2/3~1/3程度になるよう、強く引張りながら薄くし、グリップテープをグリップ部の下端から上端方向に少しずつ移動させつつスパイラル巻きし、その後、グリップ部の上端でグリップテープを引張りながら一周平巻に巻いてグリップテープ同士を融着・一体化することにより、ゴルフクラブのグリップをグリップテープに交換した。スパイラル巻きの際、グリップテープの隣接する一側部と他側部とが部分的に重なるよう重ね巻きした。グリップ部の周面にグリップテープが粘着しなかったので、グリップテープを簡単に交換することができた。
【0053】
次に、ゴルフクラブの交換したグリップテープをオーバーラッピンググリップと呼ばれる一般的な握り方で握り、握り具合を確認した。すると、グリップテープが実に滑りにくく、満足できるタック感とフィット感を得ることができた。
【0054】
本実施例のグリップテープは、耐候性に優れる自己融着性シリコーンゴムからなり、しかも、23℃における引張強さが86N、23℃における伸び率が620%なので、高温多湿の環境下で使用しても、長期に亘って好適に使用できると推定される。また、粘着剤を省略しているので、グリップテープを長期間使用しても、不快なべたつき感が生じないと推定される。さらに、グリップテープが短期間で剥離したり、後にグリップテープを剥離しても、べたついたり、接着跡が残ることがない。
【0055】
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様のグリップテープを製造したが、グリップテープの幅を50mmに変更した。グリップテープを製造したら、実施例1と同様、グリップテープの耐候性を試験するとともに、引張強さ、伸び率、硬度(IRHD)をそれぞれ測定した。その結果、グリップテープの耐候性は実施例1と同様であったが、23℃における引張強さは110N、23℃における伸び率は600%、23℃における硬度は29であった。
【0056】
次に、製造したグリップテープを用いてゴルフクラブのグリップを交換した。基本的には実施例1と同様だが、ゴルフクラブのグリップを太くするため、1層目のスパイラル巻きが終了した後、グリップ部の上端から下端方向にグリップテープを少しずつ移動させながら2層目をスパイラル巻きし、その後、グリップ部の下端でグリップテープを引張りながら一周平巻に巻いてグリップテープ同士を融着・一体化することにより、ゴルフクラブのグリップを2層のグリップテープに交換した。
【0057】
次に、ゴルフクラブの交換したグリップテープをオーバーラッピンググリップで握り、握り具合を確認した。すると、グリップテープが実に滑りにくく、満足できるタック感とフィット感を得ることができた。
【0058】
本実施例のグリップテープは、耐候性に優れる自己融着性シリコーンゴムからなり、しかも、23℃における引張強さが110N、23℃における伸び率が600%なので、高温多湿の環境下で使用しても、長期に亘って好適に使用できる。また、粘着剤を使用しないので、グリップテープを長期間使用しても、不快なべたつき感の生じることがない。さらに、グリップテープが短期間で剥離したり、後にグリップテープを剥離しても、べたついたり、接着跡の残存がない。