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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170133
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】キャップ開閉装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
G01N35/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087129
(22)【出願日】2023-05-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「ウイルス変異を考慮した大量自動検査システムの研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】502245118
【氏名又は名称】学校法人国士舘
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 誠
(72)【発明者】
【氏名】野々山 良介
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CA02
(57)【要約】
【課題】多様なマイクロチューブのキャップ形状に適応するとともに、複数のマイクロチューブのキャップ開閉を行える装置を提供する。
【解決手段】キャップ開閉装置は、第1回転軸を中心に回転する第1回転部材に設けられ、それぞれが第1回転部材の回転の間にキャップと一時的に係合してマイクロチューブを開栓する複数の第1係合部と、第2回転軸を中心に回転する第2回転部材の回転の間に当該回転の力をキャップの上面を一時的に押す力に変換して前記マイクロチューブを閉栓する複数の閉栓部と、を備える。複数の第1係合部は、それぞれ第1回転部材の異なる回転位置でキャップと係合して第1回転部材が1回転するまでに複数のマイクロチューブを開栓する。複数の閉栓部は、それぞれ第2回転部材の異なる回転位置でキャップの上面を押して第2回転部材が1回転するまでに複数のマイクロチューブを閉栓する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロチューブのキャップを開閉する装置であって、
第1回転軸を中心に回転する第1回転部材と、
前記第1回転部材に設けられ、それぞれが前記第1回転部材の回転の間にキャップと一時的に係合してマイクロチューブを開栓する複数の第1係合部と、
前記第1回転軸と異なる第2回転軸を中心に回転する第2回転部材と、
それぞれが、前記第2回転部材の回転の間に当該回転の力を前記キャップの上面を一時的に押す力に変換して前記マイクロチューブを閉栓する複数の閉栓部と、を備え、
前記複数の第1係合部は、それぞれ前記第1回転部材の異なる回転位置で前記キャップと係合して前記第1回転部材が1回転するまでに前記複数のマイクロチューブを開栓し、前記複数の閉栓部は、それぞれ前記第2回転部材の異なる回転位置で前記キャップの上面を押して前記第2回転部材が1回転するまでに前記複数のマイクロチューブを閉栓する、ことを特徴とするキャップ開閉装置。
【請求項2】
前記複数の第1係合部のそれぞれが前記複数のマイクロチューブのそれぞれに対応して設けられる、または、前記複数の閉栓部のそれぞれが前記複数のマイクロチューブのそれぞれに対応して設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項3】
前記第1回転部材を保持し、前記第1回転軸と平行な第3回転軸を中心として回転する開栓アームと、
前記複数の第1係合部による開栓が終わった後の前記第1回転部材の所定の回転位置で前記キャップと係合する第2係合部をさらに備え、
前記開栓アームにより前記第1回転部材が前記第3回転軸を中心として回転する間、前記第2係合部は前記複数のマイクロチューブのそれぞれのキャップと係合した状態を維持する、ことを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項4】
前記第1回転部材は円柱部材であり、
前記複数の第1係合部と前記第2係合部は、前記円柱部材の側面に設けられる複数の凸部で構成される、ことを特徴とする請求項3に記載のキャップ開閉装置。
【請求項5】
前記第2係合部を構成する凸部は、前記第1回転軸と平行な方向に延び、前記複数のマイクロチューブの全てのキャップと係合する長さを有する、ことを特徴とする請求項4に記載のキャップ開閉装置。
【請求項6】
前記複数の閉栓部は、
前記第2回転部材に設けられる複数のカムと、
前記第2回転部材の回転の間に前記複数のカムにより付勢されると、押圧部材を介して前記キャップを押す複数のカムフォロアと、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項7】
前記複数の第1係合部の各々による前記複数のマイクロチューブの開栓の間、前記押圧部材の位置が前記キャップの上面から所定の距離を越えないように前記複数のカムの各々により前記複数のカムフォロアの各々の動きが制限される、ことを特徴とする請求項6に記載のキャップ開閉装置。
【請求項8】
前記第2回転部材と前記複数の閉栓部は、第4回転軸を中心として閉栓位置と退避位置との間を回転し、
前記閉栓位置は、前記複数の閉栓部により前記複数のマイクロチューブの閉栓を行うための位置であり、前記退避位置は、前記複数のマイクロチューブの本体容器の内部へのアクセスが可能なように、前記第2回転部材と前記複数の閉栓部が退避した位置である、ことを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項9】
前記第2回転部材と前記複数の閉栓部を装着し、前記第4回転軸を中心として回転する閉栓アームを備え、
前記閉栓アームは、前記第4回転軸を中心とした回転の間、前記キャップのヒンジ部の付近にとどまる部分を有する、ことを特徴とする請求項8に記載のキャップ開閉装置。
【請求項10】
前記複数の第1係合部による開栓の間、前記複数のマイクロチューブを側面から押圧して固定する保持機構部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項11】
前記保持機構部は、
第5回転軸を中心に回転する第3回転部材と、
前記第3回転部材の回転の力を前記複数のマイクロチューブの側面を押圧する力に変換する複数の変換機構と、を備えることを特徴とする請求項10に記載のキャップ開閉装置。
【請求項12】
前記複数の変換機構は、
前記第3回転部材に設けられた複数のカムと、
前記第3回転部材の回転の間に前記複数のカムにより付勢されると、保持部材を介して前記マイクロチューブの側面を押圧する複数のカムフォロアと、を備えることを特徴とする請求項11に記載のキャップ開閉装置。
【請求項13】
前記複数の変換機構は、前記複数の第1係合部により順次に開栓されるマイクロチューブを順次に保持するように動作することを特徴とする請求項11に記載のキャップ開閉装置。
【請求項14】
前記キャップ開閉装置に着脱可能であり、前記複数のマイクロチューブを1列に並べて保持するための複数の挿入孔が並ぶラックと、
前記ラックに保持される前記複数のマイクロチューブが前記複数の第1係合部により開栓されるように、前記ラックを装着する装着部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のキャップ開閉装置。
【請求項15】
前記ラックは、前記複数の挿入孔に挿入されたマイクロチューブの揺れを防止するための支持部を有することを特徴とする請求項14に記載のキャップ開閉装置。
【請求項16】
前記装着部は、前記ラックに保持されたマイクロチューブの揺れを防止するために、前記ラックが装着された状態において、前記マイクロチューブの下部を支持する支持部を有することを特徴とする請求項14に記載のキャップ開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチューブのキャップ開閉を行うキャップ開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス(COVID-19)や、将来的なさらなるウイルス変異や未知のウイルスに対応するために、PCR検査等を行うシステムの自動化は不可欠となっている。PCR検査等では、唾液や鼻咽頭ぬぐい液などの複数種の検体を処理するために、遠心管、凍結保存チューブ、マイクロチューブなど様々な容器が用いられる。特にマイクロチューブは検体の処理に利用される機会が多く、検査システムの自動化・効率化において、マイクロチューブの開閉を自動化することは、重要なポイントとなる。特に、検査作業の高スループット化を図るために、複数個のマイクロチューブの開閉をまとめて行えるキャップ開閉装置が求められている。
【0003】
特許文献1には、複数のマイクロチューブのキャップをまとめて開閉する開閉部を有する機構が開示されている。特許文献1の装置では、複数のマイクロチューブの並びに沿って延びる1枚の板部材の複数のマイクロチューブの並びに沿った縁部分をコの字に折り曲げた構造の開閉部が用いられる。開閉部のコの字により形成される空間部分へ複数のマイクロチューブのキャップ先端をスライドさせることにより開閉部とキャップを係合させ、この状態で開閉部を回転させることで複数のマイクロチューブのキャップが一度に開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-527339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロチューブの場合、容量が同じであれば、概ね容器の外形(直径、長さ)寸法は同等であるが、キャップの形状や寸法は、操作性やシール性などについて他社との差別化を図るために、メーカごとに微妙に異なっている。使用されるマイクロチューブを統一することができれば、キャップの開閉を自動化することは容易である。しかし、特定のメーカのマイクロチューブに限定すると、そのメーカからマイクロチューブを入手するのが困難な状況に陥ったときに、検査を実施できなくなるという致命的な状況を招く。また、マイクロチューブの形状を完全に規格化し、各社から同一のマイクロチューブを提供できるようにすることも容易ではない。したがって、様々なメーカのマイクロチューブを取り扱うことができるキャップ開閉機構を構築することが重要である。
【0006】
特許文献1では、複数のマイクロチューブのキャップを同時に開閉することはできるが、マイクロチューブのキャップ形状の変化に対応するための考慮はなされていない。例えば、特許文献1では、開閉部がコの字形状を有するため、キャップの上側から引っ掛けて開栓する構成を有しており、開閉可能なキャップの先端の厚みや形状が制限されてしまう。また、特許文献1では、開閉部が複数のマイクロチューブの開閉を同時に行うため、開栓時や閉栓時に開閉部を駆動するための負荷が大きくなる。
【0007】
本発明は、多様なマイクロチューブのキャップ形状に適応するとともに、比較的小さい負荷で複数のマイクロチューブのキャップの開閉を行う機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるキャップ開閉装置は以下の構成を備える。すなわち、
複数のマイクロチューブのキャップを開閉する装置であって、
第1回転軸を中心に回転する第1回転部材と、
前記第1回転部材に設けられ、それぞれが前記第1回転部材の回転の間にキャップと一時的に係合してマイクロチューブを開栓する複数の第1係合部と、
前記第1回転軸と異なる第2回転軸を中心に回転する第2回転部材と、
それぞれが、前記第2回転部材の回転の間に当該回転の力を前記キャップの上面を一時的に押す力に変換して前記マイクロチューブを閉栓する複数の閉栓部と、を備え、
前記複数の第1係合部は、それぞれ前記第1回転部材の異なる回転位置で前記キャップと係合して前記第1回転部材が1回転するまでに前記複数のマイクロチューブを開栓し、前記複数の閉栓部は、それぞれ前記第2回転部材の異なる回転位置で前記キャップの上面を押して前記第2回転部材が1回転するまでに前記複数のマイクロチューブを閉栓する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクロチューブの多様なキャップの形状に対して、より確実にキャップを開閉することができるとともに、一度に複数のマイクロチューブのキャップを開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施形態によるキャップ開閉装置の外観(前面側)を示す図である。
図1B】実施形態によるキャップ開閉装置の外観(背面側)を示す図である。
図2】実施形態によるキャップ開閉装置の開栓機構部の詳細を示す図である。
図3】実施形態によるキャップ開閉装置の閉栓機構部の詳細を示す図である。
図4】実施形態によるキャップ開閉装置の保持機構部の詳細を示す図である。
図5】開栓機構部、保持機構部、閉栓機構部の配置を説明する図である。
図6A】実施形態によるキャップ開閉装置の開栓/閉栓動作を説明する図である。
図6B】実施形態によるキャップ開閉装置の開栓/閉栓動作を説明する図である。
図6C】実施形態によるキャップ開閉装置の開栓/閉栓動作を説明する図である。
図7】ラックによる複数のマイクロチューブを搭載する構成を説明する図である。
図8】コントロールシステムの構成例を示すブロック図である。
図9】開栓動作および閉栓動作のための制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1Aおよび図1Bは、実施形態のキャップ開閉装置100の外観を示す図である。図1Aは開栓動作を終えた後のキャップ開閉装置100を前面側から見た図、図1Bは閉栓動作を終えた後または開栓動作の開始時におけるキャップ開閉装置100を背面側から見た図である。本実施形態では、8個のマイクロチューブ20のキャップ開閉を一回の開栓動作と閉栓動作により行う機構を説明するが、一回の開栓動作/閉栓動作にキャップが開閉されるマイクロチューブの数はこれに限られるものではなく、2つ以上であればよい。ベース部101には、開栓機構部200、閉栓機構部300、保持機構部400が組付けられている。開栓機構部200、閉栓機構部300、保持機構部400の詳細は図2~4の参照により後述する。ベース部101は、複数のマイクロチューブ20(上述のように本例では8個のマイクロチューブ20)を着脱可能に収容するための挿入孔105を有しており、図1Aでは、マイクロチューブがすべての挿入孔105に挿入された状態が示されている。ベース部101の下部に設けられたラック部102には、後述する各モータの駆動を制御するモータコントローラ103、パーソナルコンピュータなどの外部装置と通信するためのインターフェース104が収容されている。
【0013】
8個のマイクロチューブ20は、8個の挿入孔105に挿入さることにより開栓機構部200、閉栓機構部300、保持機構部400による開栓動作及び閉栓動作が可能な所定位置に配置される。前支持部106と後支持部107は、マイクロチューブ20が挿入孔105に挿入された際に、容器本体21の上縁(リム部22)を支持する。前支持部106はマイクロチューブ20のキャップ23の突起部側(容器本体とキャップ23を接続するヒンジ部24と反対側の部位)の位置で、後支持部107はマイクロチューブ20のヒンジ部24側の位置でそれぞれリム部22を支持する。前支持部106と後支持部107によってマイクロチューブ20のリム部22を支持することで、開栓機構部200の係合部(後述の凸部231)をキャップの突起部の下側に配置するための空間が確保される。以下、キャップ23を単にキャップと記載する。なお、前支持部106の上部は、係合部との干渉を防ぐためにテーパーを有している。また、後支持部107は、支持面に向かって狭くなるようにテーパーが付けられた一対のガイド部を備える。このような後支持部107の構成により、挿入孔105に挿入されるマイクロチューブ20のヒンジ部がガイド部の間に挟まれ、マイクロチューブ20の向きが安定する。
【0014】
開栓機構部200の詳細な構成を図2に示す。図2(a)は、開栓機構部200の外観を示す。開栓機構部200は、開栓アーム201と、開栓アーム201に取り付けられた開栓ローラ202を備える。開栓ローラ202は、第1開栓モータ211とギア部212により第1回転軸213を中心として回転する回転部材の一例である。第1回転軸213は、8個のマイクロチューブ20が挿入される複数の挿入孔105が並ぶ方向と平行である。回転位置検出ユニット214は、例えばフォトセンサと遮光板により構成され、開栓ローラ202の回転位置(原点位置等)を検出する。第1開栓モータ211は、例えばサーボモータ(インクリメンタルエンコーダ付ギヤードモータ)で構成され、例えば回転位置検出ユニット214の検出信号に基づいて原点復帰動作後、インクリメンタルエンコーダによる角度・速度検出によって回転制御される。例えば、回転位置検出ユニット214は、最初の原点復帰(原点サーチ)で使用され、開栓ローラ202の回転の原点位置が決定される。その後、第1開栓モータ211の回転制御がインクリメンタルエンコーダの信号に基づいて行われる。なお、実際には、フォトセンサの検出角度には組立誤差などが含まれるため、機体ごとにフォトセンサの検出位置から補正した位置を原点位置とすることが行われる。以上により開栓ローラ202の回転が制御される。
【0015】
開栓アーム201は、ベース部101に取り付けられており、第2開栓モータ221とギア部222(図1A)により第2回転軸223を中心として回転する。第2回転軸223は第1回転軸213と平行である。回転位置検出ユニット224は、例えばフォトセンサと遮光板により構成され、開栓アーム201の回転位置(原点位置等)を検出する。第2開栓モータ221は、例えばサーボモータ(インクリメンタルエンコーダ付ギヤードモータ)で構成され、例えば回転位置検出ユニット224の検出信号とインクリメンタルエンコーダの信号とに基づいて第1開栓モータ211と同様に回転制御される。これにより開栓アーム201の回転が制御される。
【0016】
図2(b)(c)は開栓ローラ202を取り出して示した図である。図2(b)は開栓ローラ202の外観を示す斜視図であり、図2(c)は開栓ローラ202を図2(b)のA方向から見た図である。開栓ローラ202は、円柱状(または円筒状)の回転部材である。開栓ローラ202の側面には、ベース部101に収容されている8個のマイクロチューブ20に対応するように8個の凸部231(a~h)が第1回転軸213の方向へ螺旋状に配置されている。図5により後述するように、凸部231(a~h)は、開栓ローラ202が回転する間に、開栓ローラ202の異なる回転位置で複数のマイクロチューブ20のキャップと係合する複数の係合部として機能する。凸部231(a~h)は、開栓ローラ202が第1回転軸213を中心として1回転するまでに、8個のマイクロチューブ20のキャップと順次に一時的に係合して、開栓する。また、開栓ローラ202の側面には、さらに、8個のマイクロチューブ20のキャップに一度に係合する、第1回転軸213の方向のほぼ全域にわたって延びる凸部232が設けられている。もちろん、8個のマイクロチューブ20のキャップに一度に係合することができれば、8個に分割した凸部でもよい。
【0017】
なお、図2(c)に示されるように、全ての凸部231と凸部232の何れも係合しない領域233が設けられている。領域233により、マイクロチューブを挿入孔105に挿入する時や挿入孔105から抜去する時、閉栓する時などに、開栓ローラ202の凸部231や凸部232が、マイクロチューブ20のキャップ23の突起部と干渉することを防止できる。領域233は、たとえば、後述の開栓ローラ202の回転の原点位置および初期位置に用いられる。また、本例では、開栓ローラ202として円柱状のローラを用いたがこれに限られるものではない。凸部231と凸部232を有する円板状の部材を回転軸方向に連結したような構成であっても構わない。
【0018】
なお、本実施形態における凸部の間隔・配置は次の通り設定している。凸部231(a~h)の間隔は、360度/13=27.69度で等間隔と設定しており、これにより、開栓ローラ202を一定の回転速度で回転させることで容易にマイクロチューブを順次に開栓できる。マイクロチューブを順次開栓することで、同時に複数の開栓をすることが避けられるため、モータトルクの低減や構造部材の軽量化が可能となる。また、凸部231hと232の間隔は、360度/13×2=55.38度、凸部232と231a間隔は、360度/13×4=110.77度に設定している。凸部231hと232の間隔は、凸部231(a~h)の間隔と同等でも支障はない。凸部232と231a間隔は、最も広く設定し、上述のマイクロチューブ20のキャップ23の突起部と干渉することなく通過することができるスペースを確保している。
【0019】
閉栓機構部300を図3に示す。図3(a)は閉栓機構部300の外観を示し、図3(b)は閉栓機構部300に組み込まれる閉栓ローラ302と閉栓カムフォロア303を示す図である。閉栓機構部300は、閉栓アーム301と、閉栓アーム301に取り付けられた閉栓ローラ302を備える。閉栓ローラ302は、第1閉栓モータ311とギア部312により第3回転軸313を中心として回転する回転部材である。第3回転軸313は、8個のマイクロチューブ20が挿入される複数の挿入孔105が並ぶ方向と平行である。回転位置検出ユニット314は、例えばフォトセンサと遮光板により構成され、閉栓ローラ302の回転位置(原点位置等)を検出する。第1閉栓モータ311は、例えばサーボモータ(インクリメンタルエンコーダ付きギヤードモータ)で構成され、例えば回転位置検出ユニット314の検出信号とインクリメンタルエンコーダの信号とに基づいて回転制御される。回転制御の具体例は第1開栓モータ211について上述したとおりである。これにより閉栓ローラ302の回転が制御される。
【0020】
閉栓アーム301は、ベース部101に取り付けられており、第2閉栓モータ321とギア部322(図1B)により第4回転軸323を中心として回転する。第4回転軸323は第3回転軸313と平行である。回転位置検出ユニット324は、例えばフォトセンサと遮光板により構成され、閉栓アーム301の回転位置(原点位置等)を検出する。第2閉栓モータ321は、例えばサーボモータ(インクリメンタルエンコーダ付きギヤードモータ)であり、例えば回転位置検出ユニット324の検出信号とインクリメンタルエンコーダの信号とに基づいて回転制御される。回転制御の具体例は第1開栓モータ211について上述したとおりである。これにより閉栓アーム301の回転が制御される。
【0021】
閉栓アーム301には、ベース部101に配置された8個のマイクロチューブに対応するように、8個の閉栓カムフォロア303(a~h)が設けられている。閉栓カムフォロア303側面には凹部、閉栓アーム301には凸部が設けられている。これにより、閉栓カムフォロア303は、閉栓アーム301に、矢印351の方向へスライド可能に取り付けられ、閉栓ローラ302の回転に応じて閉栓カム331により付勢される。閉栓カム331による閉栓カムフォロア303の付勢については図5でも後述する。また、閉栓アーム301の背面には、閉栓カムフォロア303が設けられている位置に対応して突起部304が設けられている。突起部304は、後述の第二開栓動作(図9のS906)において、マイクロチューブ20の浮き上がりを防止する機能を持つ。
【0022】
図3(c)(d)は閉栓ローラ302を取り出して示した図である。図3(c)は、閉栓ローラ302の外観を示す斜視図であり、図3(d)は閉栓ローラ302を回転軸方向から見た図である。閉栓ローラ302は、円柱状(または円筒状)の回転部材である。閉栓ローラ302の側面には、8個の閉栓カムフォロア303に対応するように8個の閉栓カム331(a~h)が第3回転軸313の方向へ螺旋状に配置されている。閉栓カム331(a~h)は、閉栓ローラ302が第3回転軸313を中心として1回転する間に、それぞれ異なる回転位置で対応する閉栓カムフォロア303(a~h)を付勢する。これにより、8個の閉栓カムフォロア303(a~h)の端部341が順次にマイクロチューブ20のキャップの上面中央部付近を押圧する押圧部材として機能し、マイクロチューブ20の閉栓が行われる。以上のような閉栓カムフォロア303と閉栓カム331を備える機構は、閉栓ローラ302の回転の力を、マイクロチューブ20のキャップを押す力に変換して閉栓を行う変換機構であり、複数の閉栓部の一例である。
【0023】
なお、図3(d)に示されるように、閉栓ローラ302には、いずれの閉栓カム331も閉栓カムフォロア303を付勢しない領域332が設けられており、後述の閉栓ローラ302の回転の原点位置および初期位置に用いられる。また、本例では、閉栓ローラ302として、閉栓カム331を回転軸方向に連結して円柱状の回転部材を構成する例を示したがこれに限られるものではない。例えば、開栓ローラ202のような円柱部材に閉栓カム331に対応した形状の凸部を設けた構成であっても構わない。
【0024】
なお、本実施形態における閉栓カム331(a~h)の間隔・配置は次の通り設定している。閉栓カム331(a~h)の間隔は、35度で等間隔と設定している。これにより、閉栓ローラ302を一定の回転速度で容易に順次閉栓できる。順次閉栓することで、同時に複数の閉栓をすることが避けられるため、モータトルクの低減や構造部材の軽量化が可能となる。また、閉栓カム331hと331aの間隔は、115度に設定している。これにより、すべての閉栓カムフォロア303(a~h)により付勢しない、または、付勢する状態とすることが可能である。すべての閉栓カムフォロア303(a~h)により付勢する場合は、閉栓アーム301を付勢する方向に回転させればよい。また、閉栓に必要なストロークとしてカムフォロアのストロークを2mmに設定した。
【0025】
保持機構部400の詳細な構成を図4に示す。保持機構部400は、開栓時にマイクロチューブ20が上方に移動しないように保持するための機構である。図4(a)に示されるように、保持機構部400は、複数の保持カム402(a~h)が設けられた保持ローラ401と、複数の保持カムフォロア403(a~h)を有する。保持カムフォロア403は対応する保持カム402の回転に応じて付勢され、支点シャフト404を中心に回転動作する。保持ローラ401は、保持モータ411により第5回転軸412を中心に回転する回転部材である。保持ローラ401には、図4(d)に示されるように、複数の保持カム402(a~h)が所定の回転角度ずつずれた状態で装着されている。これにより、保持ローラ401が1回転する間に、保持カム402(a~h)が複数の保持カムフォロア403(a~h)を順次に付勢する。回転位置検出ユニット413は、例えばフォトセンサと遮光板により構成され、保持ローラ401の回転位置(原点位置等)を検出する。保持モータ411は、例えばサーボモータ(インクリメンタルエンコーダ付きギヤードモータ)であり、例えば回転位置検出ユニット413の検出信号とインクリメンタルエンコーダの信号とに基づいて制御される。回転制御の具体例は第1開栓モータ211について上述したとおりである。これにより保持ローラ401の回転が制御される。
【0026】
なお、図4(d)に示されるように、保持ローラ401には、いずれの保持カム402も保持カムフォロア403を付勢しない領域421が設けられており、後述の保持ローラ401の回転の原点位置および初期位置に用いられる。また、本例では、保持ローラ401として、保持カム402を回転軸方向に連結して円柱状の回転部材を構成する例を示したがこれに限られるものではない。例えば、開栓ローラ202のような円柱部材に保持カム402に対応した形状の凸部を設けた構成であっても構わない。
【0027】
図4(b)(c)は、保持カム402と保持カムフォロア403によるマイクロチューブの固定動作を説明する図である。図4(b)(c)に示されるように、マイクロチューブ20の配置位置には、保持ピン405がマイクロチューブ20の側面へ向かって移動可能に設けられ、マイクロチューブ20を保持、固定する保持部材として機能する。保持カムフォロア403は、保持カム402の回転により図中の右方向へ付勢されると、支点シャフト404を中心に回転し、保持ピン405をマイクロチューブ20の側面へ向けて押し出す。図4(b)は保持カム402により保持カムフォロア403が付勢され、保持ピン405がマイクロチューブ20の側面を押圧している状態を示す。図示のように、保持カム402により保持カムフォロア403(力点)に加わる力を、てこの原理を利用して増大させて保持ピン405(作用点)の押し付け力として用いることで、小さい負荷で確実にマイクロチューブ20を保持することができる。この状態でマイクロチューブ20は、保持ピン405と挿入孔105の壁面との間に固定される。このように、開栓機構部200(凸部231)によるキャップの開栓時に、保持機構部400によりマイクロチューブ20を固定することにより、開栓時にマイクロチューブが動いてしまうことを防止する。図4(c)では、保持カムフォロア403は保持カム402による付勢の状態から解放されており、保持ピン405によるマイクロチューブ20への押圧が解除されている。この状態で、ベース部101(挿入孔105)へのマイクロチューブ20のロード、アンロードが可能となる。以上のような保持カム402と保持カムフォロア403とを備える機構は、保持ローラ401の回転の力を、マイクロチューブ20の側面を押す力に変換する変換機構である。
【0028】
なお、本実施形態における保持カム402(a~h)の間隔・配置は次の通り設定している。保持カム402(a~h)の間隔は、凸部231の間隔と同様に27.69度で等間隔と設定している。これにより、保持ローラ401を一定の回転速度で容易に順次保持できる。順次保持することで、同時に複数の保持をすることが避けられるため、モータトルクの低減や構造部材の軽量化が可能となる。また、保持カム402hと402aの間隔は、166.17度に設定している。これにより、すべての保持カムフォロア403(a~h)により付勢しない状態を維持することが可能であり、マイクロチューブのロード・アンロードが可能となる。保持に必要な保持ピン405のストロークとして、1mm程度を確保するために、保持カムフォロア403のストローク3mmを1/3程度に減速(3倍に増力)するリンク構成とした。
【0029】
なお、上記例では、閉栓カム331の間隔(35度)が開栓ローラ202に設けられる凸部231や保持カム402の間隔(27.69度)よりも大きくなっている。これは、閉栓の場合に強い押し付け力が必要であり、カムの傾斜をなるべく緩くしたいこと、閉栓時のキャップの最後の押し込みを1つずつ行いたいこと、領域332を設けることを考慮したためである。他方、開栓ローラ202には8個の凸部231(a~h)に加えて凸部232が設けられていること、十分な大きさの領域233を設けたいことから、本例では27.69度を選択している。一方、保持カム402は、保持カムフォロア403を介して保持ピン405を押すために十分なストローク(=3mm)が必要ではあるものの、多少は複数の保持カムフォロア403が押されてもよい。また、後述する開栓動作において、凸部231による開栓のタイミングと保持カム402によりマイクロチューブを保持するタイミングとを同期させやすくしたい(開栓ローラ202と保持ローラ401の回転速度を同じにすればよい)。以上から、保持カム402の間隔を、凸部231の間隔と同じ角度としている。なお、以上に示した各数値はあくまで一例にすぎず、これに限られないことは言うまでもない。
【0030】
図5は、ベース部101に組付けられた開栓機構部200、閉栓機構部300および保持機構部400と、ベース部101の挿入孔105にロードされたマイクロチューブ20との位置関係を示す模式図である。開栓アーム201の回転により開栓機構部200が図示の回転位置(以下、開栓位置)にある状態で凸部231による開栓動作が行われる。すなわち、開栓ローラ202が矢印501の方向へ回転する間にマイクロチューブ20のキャップの端部と開栓ローラ202の凸部231が一時的に係合することにより、マイクロチューブ20の容器本体からキャップが引き上げられる。これによりチューブ20が開栓される。また、閉栓アーム301の回転により閉栓機構部300が図5に示される回転位置(以下、閉栓位置)にある状態で閉栓動作が行われる。すなわち、閉栓ローラ302が回転し、閉栓カム331により閉栓カムフォロア303が矢印502の方向へ付勢されると、マイクロチューブ20のキャップが閉栓カムフォロア303により押下され、これにより、マイクロチューブ20が閉栓される。
【0031】
保持機構部400では、保持ローラ401の回転、すなわち保持カム402の回転により保持カムフォロア403が矢印503の方向へ付勢されると、マイクロチューブ20の側面を保持ピン405が押圧してマイクロチューブ20が固定される。開栓ローラ202と保持ローラ401の回転制御により、凸部231によるマイクロチューブ20の開栓のタイミンツに合わせて保持ピン405によるマイクロチューブ20の固定を行うようにすることができる。これにより、開栓機構部200によるマイクロチューブ20の開栓時にマイクロチューブ20を確実に固定することができ、マイクロチューブ20の内容物のはね、汚染などが防止される。
【0032】
図6A図6B図6Cは、本実施形態のキャップ開閉装置100による開栓動作および閉栓動作を説明する図である。以下、図6A図6C図6と総称する。図6に示される動作は、例えば、外部装置であるコントローラによるモータ制御により実現され得る。そこで、まず、実施形態のキャップ開閉装置100を制御するコントロールシステムについて説明する。
【0033】
図8は、本実施形態によるコントロールシステムを示すブロック図である。外部装置であるコントローラ801はインターフェース104を介してモータコントローラ103と通信可能に接続される。コントローラ801は、例えば、CPU、ROM、RAMなどにより構成され、CPUがROMなどに格納された所定のプログラムを実行することにより以下に説明される開閉制御を実現する。コントローラ801は、例えば、モータコントローラ103aを介して回転位置検出ユニット214のセンサからの信号を取得し、第1開栓モータ211の回転を制御する。コントローラ801からモータコントローラ103aへは、第1開栓モータ211の起動・停止、回転速度、回転方向などが指示される。同様に、コントローラ801は、モータコントローラ103b~103eを介して回転位置検出ユニット224、314、324、413のそれぞれからの信号を取得し、各モータ(221、311、321、411)の駆動を制御する。図9に示されるフローチャート共に図6に示される開閉動作を説明する。
【0034】
まず、S901において、コントローラ801は開栓アーム201、開栓ローラ202,閉栓アーム301、閉栓ローラ302、保持ローラ401の回転位置を原点位置に戻すことにより原点復帰を行う。各アームと各ローラの原点復帰は、上述したように、原点復帰は回転位置検出ユニット214、224、314、324、413の信号に基づいて行われる。原点復帰を終えた後、コントローラ801は、開栓アーム201、開栓ローラ202,閉栓アーム301、閉栓ローラ302、保持ローラ401をそれぞれの初期位置(ホームポジション)へ移動する。開栓アーム201、開栓ローラ202、閉栓アーム301、閉栓ローラ302、保持ローラ401のそれぞれが初期位置へ移動した状態を図6(a)に示す。図6(a)の状態は、装置の上方からマイクロチューブ20のロード、アンロードが可能な状態(以下、状態A)である。状態Aに示されるように、初期位置の状態において、開栓機構部200と閉栓機構部300はそれぞれ開栓位置と退避位置に回転移動している。また、状態A示される、開栓ローラ202、閉栓ローラ302、保持ローラ401の回転位置を、それぞれ初期位置とする。この状態では、凸部231a~231hはマイクロチューブ20のキャップと係合せず、保持カム402a~hは保持カムフォロア403a~hを付勢していない。また、開栓機構部200は開栓位置へ、閉栓機構部300は退避(初期)位置へ回転しており、マイクロチューブ20をロードまたはアンロードするためのロボットハンドのアクセスが可能である。
【0035】
コントローラ801は、S902で開栓指示を待つ。開栓指示を受け付けると(S902でYES)、S903において、コントローラ801は、閉栓アーム301を閉栓位置へ回転させる。そして、S904において、コントローラ801は、第一開栓動作を開始する。第一開栓動作を、図6(b)により説明する。
【0036】
図6(b)は、開栓機構部200によるチューブ20の開栓動作の開始時の状態(以下、状態B)を示す。保持機構部400では、保持ローラ401の回転により保持カム402が保持カムフォロア403を付勢し、これにより保持ピン405がマイクロチューブ20を押して固定する。開栓機構部200では、開栓ローラ202が回転し、保持ピン405によりマイクロチューブ20が固定されている間に、凸部231がマイクロチューブ20のキャップの端部と係合して開栓する。このとき、閉栓機構部300は、閉栓アーム301の回転により図6(a)の退避位置から図6(b)に示される位置(開栓補助位置)へ回転している。この開栓補助位置において、閉栓カムフォロア303はマイクロチューブ20の斜め上方に位置し、閉栓カム331は、凸部231のキャップへの係合(開栓)のタイミングで閉栓カムフォロア303を付勢している。これにより、凸部231によるマイクロチューブ20の開栓の間、端部341の位置がキャップの上面から所定の距離を越えないように制限される。この状態で凸部231による開栓が行われることにより、開栓時におけるキャップの跳ね上がりなどが防止され、マイクロチューブ内部の検体や試薬の飛沫、エアロゾル該飛散するリスクが低減する。
【0037】
なお、凸部231によるマイクロチューブ20の開栓の間、端部341の位置がキャップの上面から所定の距離を越えないように制限する方法は上記に限られない。例えば、閉栓ローラ302の位相を閉栓カム331hと331aの間にすることですべての閉栓カムフォロア(a~h)を所定の付勢状態としてもよい。この場合、閉栓ローラ302を回転する必要はなく、閉栓ローラ302の回転を開栓ローラ202の回転に同期させる制御は不要となる。
【0038】
開栓ローラ202が1回転するまでに、上述の開栓動作が、8個の凸部231(a~h)により8個のマイクロチューブ20に対して順次に行われる。以下、これを第一開栓動作と称する。すなわち、第一開栓動作では、開栓ローラ202の回転により、凸部231a~231hが順次に複数のマイクロチューブ20のキャップと係合し、開栓する。また、この第一開栓動作の間、保持機構部400では、凸部231が複数のマイクロチューブに順次に係合し開栓するタイミングに合わせて、保持ピン405によるマイクロチューブ20の押圧を順次に行う。コントローラ801は、S904において、以上のような第一開栓動作を実現するように、第1開栓モータ211、第1閉栓モータ311、保持モータ411の駆動を制御する。
【0039】
上述した第一開栓動作により8個のマイクロチューブ20の開栓を終えると、処理はS905へ進む。S905において、コントローラ801は、凸部232がマイクロチューブ20のキャップと係合する回転位置(第二閉栓動作位置)で開栓ローラ202を停止する。図6(c)は、凸部231による開栓を終えた後、開栓ローラ202を第二開栓動作位置で停止した状態(以下、状態C)を示す。第二開栓動作位置は、凸部232がマイクロチューブ20のキャップと係合する位置である。また、第一開栓動作を終えているので、閉栓機構部300の全ての閉栓カムフォロア303と保持機構部400の全ての保持カムフォロア403は、付勢されていない状態となっている。
【0040】
S906において、コントローラ801は、停止した開栓ローラ202の回転位置を維持しながら、開栓アーム201と閉栓アーム301を退避位置へ回転させる。これにより、開栓機構部200と閉栓機構部300はそれぞれ退避位置へ回転する。この状態(以下、状態D)を図6(d)に示す。このとき、凸部232がすべてのマイクロチューブ20のキャップと係合するため、開栓アーム201の回転によりマイクロチューブ20のキャップを大きく開けることができる。上述のように凸部232は複数のマイクロチューブ20の全てのキャップと係合するように開栓ローラ202の長手方向に延びており、開栓アーム201の回転により複数のマイクロチューブ20の全てのキャップを開かせることができる。なお、この時、マイクロチューブ20が上方に移動してしまう可能性がある。しかしながら、閉栓アーム301の背面に設けられた突起部304が、開栓アーム201の回転の間マイクロチューブ20のヒンジ部の付近にとどまるため、マイクロチューブ20が上方に移動してしまうことを抑制、回避することができる。あるいは、開栓時と同様に、保持機構部400の保持機能を利用してもよい。但し、この場合、保持ローラ401には全てのマイクロチューブ20を同時に保持するための保持カムを設ける必要がある。このように凸部232をキャップに係合させた状態で開栓アーム201を回転することによりキャップを開く動作を第二開栓動作と称する。
【0041】
第二開栓動作では、開栓機構部200と閉栓機構部300が退避位置(閉栓機構部300の初期位置)へ回転するため、マイクロチューブ20の上部が開放された状態となる。従って、第二開栓動作後は、8個のマイクロチューブ20のそれぞれの本体容器の内部へアクセスすることが可能となる。なお、図1Aに示されるキャップ開閉装置100の外観は第二開栓動作を終えた後の状態、すなわち状態Dに対応している。
【0042】
次に閉栓動作を説明する。S907においてコントローラ801は、閉栓開始の指示を待ち、閉栓開始の指示受け付けると(S907でYES)、処理はS908へ進む。S908において、コントローラ801は、開栓アーム201を開栓位置(開栓機構部200の初期位置)へ、閉栓アーム301を閉栓位置へ回転する。このとき、開栓アーム201の回転を先行して行い、開栓アーム201と閉栓機構部300との間に所定の角度差がついている間に開栓ローラ202を初期位置まで回転させる。これにより、閉栓機構部300による抑制のない状態で開栓ローラ202を回転させ、凸部232とキャップとの係合状態を安全に解放することができる。そして、コントローラ801は、S909において、閉栓動作を実行する。図6(e)は、閉栓動作を行っている状態(以下、状態E)を示す。図示のように、状態Dから開栓アーム201が開栓位置へ、閉栓アーム301が閉栓位置へ回転した後、コントローラ801は、閉栓ローラ302を回転させる。閉栓ローラ302の回転により、閉栓カム331a~hが順次に閉栓カムフォロア303a~hを付勢することにより、8個のマイクロチューブ20が順次に閉栓される。図6(e)では、閉栓カム331により閉栓カムフォロア303が付勢され、閉栓カムフォロア303の端部341がキャップの上面を押してマイクロチューブ20を閉栓した状態が示されている。閉栓動作を終えると、S910において、コントローラ801は、閉栓アーム301を退避位置(=初期位置)へ回転させてキャップ開閉装置100を状態A(図6(a))に戻し、処理を終える。なお、開栓、閉栓時の開栓ローラ202、閉栓ローラ302、保持ローラ401の回転の角度や回転速度は、カムや突起部の位相に合わせて、適宜、設定することは容易である。
【0043】
なお、図8のコントロールシステムをロボットと組み合わせたシステムに適用することができる。このようなシステムによれば、待機状態(挿入可能状態)、挿入完了、開栓完了、分注完了、閉栓完了、抜去完了などの動作状態をロボットコントローラとの通信により共有することで、分注の作業を含めた一連の動作を自動で実施することができる。また、動作指令をボタン操作で行うことで、マニュアル操作用マイクロチューブキャッパーとしても利用できる。
【0044】
以上のように、状態B~状態Cの第一開栓動作では、マイクロチューブ20の容器本体からキャップを外す動作が順次に行われるため、開栓時の負荷が少なくて済む。この時、保持機構部400による保持ピン405の押圧も、マイクロチューブ20に対する開栓動作に合わせて順次に行われるため、開栓時の保持動作に関する負荷が低減される。更に、状態Eの閉栓動作では、マイクロチューブ20の容器本体へキャップをはめる動作が順次に行われるため、閉栓時の負荷が少なくて済む。
【0045】
なお、上記では複数のマイクロチューブについて1つずつ開栓/閉栓を行う構成を示したが、これに限られるものではない。複数のマイクロチューブを複数のグループに分割して、グループごとに開栓/閉栓を行うようにしてもよい。例えば、8個のマイクロチューブのうち2つずつを同時に開栓するようにしてもよい。あるいは、例えば、8個のマイクロチューブを、3つ、2つ、2つ、1つのグループに分けて、それぞれのグループに属するマイクロチューブを同時に開栓/閉栓するようにしてもよい。また、グループに属する2つ以上のマイクロチューブは必ずしも隣り合っている必要はなく、例えば、1番目と5番目のマイクロチューブ、2番目と6番目のマイクロチューブというようにグルーピングされてもよい。さらに、開栓時と閉栓時とでグループの編成が異なっていてもよい。
【0046】
また、保持機構部400も複数のマイクロチューブの1つずつについて保持を行うが、これに限られるものではない。複数のマイクロチューブを同時に押圧して保持するような押圧部材を用いるようにしてもよい。その場合、必ずしもカム/カムフォロアによる機構が用いられなくてもよい。また、保持機構部400によるマイクロチューブによる固定で十分な場合は、図6Bに示したような閉栓機構部300の動作(開栓補助位置での動作)を省略してもよい。或いは、閉栓機構部300の開栓補助位置の動作でマイクロチューブの開栓に支障が無ければ、保持機構部400による押圧が省略されてもよい。
【0047】
なお、図1A図1Bに示されるキャップ開閉装置100は、8個のマイクロチューブ20を個別にロードする構成であるが、これに限られるものではない。例えば、複数のマイクロチューブを効率的にローディングするために、複数のマイクロチューブを搭載するラックが用いられてもよい。図7は、ラックによる複数のマイクロチューブを搭載する構成を説明する図である。
【0048】
図7(a)において、ラック701は、マイクロチューブ20を挿入するための1列に並ぶ複数の(本例では8個)挿入孔と、挿入されたマイクロチューブ20のヒンジ部を保持するための後支持部107を有する。ラック701の挿入孔はベース部101の挿入孔105(図1A)と同様である。
ベース部101は、ラック701に保持される複数のマイクロチューブが開栓機構部200、閉栓機構部300、保持機構部400により開栓/閉栓されるように、ラック701を装着するための装着部を有する。装着部にはガイドピン109が設けられており、ラック701のガイド穴702が、ベース部101に設けられたガイドピン109に嵌ることにより、ベース部101に載置されるラック701が位置決めされる。なお、ラック701にはロボットによるハンドリングを行うためのハンドリング用穴703が設けられており、ロボット等を用いてベース部101へラック701を装着することができる。図7(b)は、マイクロチューブ20がロードされたラック701をベース部101に装着した状態示す。なお、図7(a)のラック701では前支持部106が省略されているため、ロードされたマイクロチューブ20がふらつく可能性がある。そこで、マイクロチューブ20の容器本体の先端部を保持するための孔を有するプレート108をベース部101に設けて、ロードされたマイクロチューブ20のふらつきを防止している。なお、ラック701に前支持部106を設けてもよい。その場合、マイクロチューブ20のふらつきを抑えるためのプレート108は省略されてもよい。図7(c)は前支持部106を有するラック701がベース部101に装着された状態を示している。
【0049】
以上のようなラック701を用いれば、複数のマイクロチューブ20を一度にロード・アンロードできるようになるので、キャップ開閉装置100の動作効率が向上する。
【0050】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
100:キャップ開閉装置、101:ベース部、200:開栓機構部、201:開栓アーム、202:開栓ローラ、231~232:凸部、300:閉栓機構部、301:閉栓アーム、302:閉栓ローラ、321:閉栓カム、400:保持機構部、401:保持ローラ、保持カム402
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9