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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170134
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】樹脂材料の判別方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
G01N22/00 S
G01N22/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087130
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】勝部 史也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
(72)【発明者】
【氏名】檜和田 貫児
(57)【要約】
【課題】樹脂の材質判別用のセンサが一種類で済み、かつ、被判別対象の樹脂が黒色の近赤外光を吸収しやすい樹脂同士であっても、樹脂同士の材質の判別を明瞭に行うことのできる樹脂材料の判別方法及びその装置の提供。
【解決手段】材質の異なる複数の樹脂片Gが混在した状態で搬送されてくる途中において、個々の樹脂片Gの材質を判別し、搬送終端においては、当該判別された樹脂片ごとに分別を行うように形成された樹脂材料の判別装置1であって、
樹脂片Gを搬送するための搬送部2と、搬送部2により搬送途中の樹脂片Gに電磁波を照射するとともに、電磁波の反射波を検知する検知部4と、検知部4において検知された信号から樹脂片Gの材質の種類を判別する判別部5と、判別部5により判別された樹脂片Gの材質に基づいて搬送部2の搬送終端において樹脂片Gの材質ごとに樹脂片Gの分別を行う分別部6と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質の異なる複数の樹脂片が混在した状態で搬送されてくる途中において、個々の樹脂片の材質を判別し、搬送終端においては、当該判別された樹脂片ごとに分別を行うように形成された樹脂材料の判別装置であって、
前記樹脂片を搬送するための搬送部と、前記搬送部により搬送途中の樹脂片に電磁波を照射するとともに、電磁波の反射波を検知する検知部と、前記検知部において検知された信号から樹脂片の材質の種類を判別する判別部と、前記判別部により判別された樹脂片の材質に基づいて前記搬送部の搬送終端において樹脂片の材質ごとに樹脂片の分別を行う分別部と、を備えたことを特徴とする樹脂材料の判別装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記樹脂片に照射する電磁波として、ミリ波を適用してなる請求項1記載の樹脂材料の判別装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記搬送部により搬送途中の樹脂片の各々にミリ波の電磁波を照射する発信器と、前記樹脂片に照射されたミリ波の電磁波の反射波を受光する受信器と、を備えてなる請求項2記載の樹脂材料の判別装置。
【請求項4】
前記判別部は、前記検知部で検知した樹脂片からの反射波の強度、座標、方向、深度のうち少なくともいずれか一つ、又は、強度、座標、方向、深度のうちの複数種を比較・解析して、樹脂の有無または前記樹脂片の材質を特定するとともに、前記樹脂片の材質の種類を判別してなる請求項1記載の樹脂材料の判別装置。
【請求項5】
前記判別部は、前記検知部により前記樹脂片からの反射波を検知中にあっては、前記搬送部を停止するよう制御してなる請求項1から3のいずれかに記載の樹脂材料の判別装置。
【請求項6】
材質の異なる複数の樹脂片が混在した状態で搬送されてくる途中において、個々の樹脂片の材質を判別し、搬送終端においては、当該判別された樹脂片ごとに分別を行うように形成された樹脂材料の判別方法であって、
搬送される途中の前記樹脂片に電磁波を照射するとともに、電磁波の反射波を検知し、検知された反射波の信号から前記樹脂片の材質を判別し、判別された樹脂片の材質に基づいて搬送終端において、前記樹脂片の材質ごとに前記樹脂片の分別を行うことを特徴とする樹脂材料の判別方法。
【請求項7】
前記樹脂片に照射する電磁波として、ミリ波を適用してなる請求項6記載の樹脂材料の判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックなど樹脂材料の判別方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電化製品をはじめ、食品包装類、自動車部品、建築材、医療機器等広く樹脂材料が利用されている。その一方で、それらの製品が廃棄されることにより大量のプラスチック材が棄てられ、十分なリサイクルには至っていないのが現状である。そこで、プラスチック類の識別方法として、目視によらず、近赤外光の光学吸収により識別する方法が種々提案されている。
【0003】
特許文献1は、破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得するなどして、多数の異なる材質を含むプラスチック破砕片群から、濃い色のプラスチック破砕片であっても分別することが可能なプラスチックの分別方法を提供するものである。
【0004】
すなわち、プラスチック破砕片の輪郭内領域に対して、明度分布を算出し、算出したプラスチック破砕片の輪郭内領域の明度分布から、明度が高いプラスチック破砕片の座標を特定する。つまり、プラスチックを破砕機によって破砕するとプラスチック破砕片の破断面が白化するので、プラスチック破砕片の破断面が、プラスチック自身が持つ色より白くなる。そして、明度が高いプラスチック破砕片の破断面に相当する座標に対応する近赤外カメラから取得した画像データの座標を特定し、特定した座標に対する近赤外スペクトルデータからプラスチックの材質を判別する、というものである。
【0005】
また、特許文献2は、光源としてハロゲンランプを、受光手段として、近赤外カメラ(第一の撮像手段)、カラーカメラ(第二の撮像手段)を、搬送コンベア上にそれぞれ設けたものである。
【0006】
これにより、近赤外カメラにより撮像された画像情報から、PVCの特徴吸収帯域である第一の特徴吸収帯域L1に光強度差があるものをPVC候補とし、PVC候補の内、PVC以外のプラスチックの特徴吸収帯域である第二の特徴吸収帯域L2に光強度差がないものをPVCとして選別する。したがって、PVCの吸光度と近い吸光度を有するプラスチック(PP、PC)を確実にPVCと分別できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-94634号公報
【特許文献2】特開2005-121587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術にあっては、いずれも、近赤外カメラ(第一の撮像手段)と、カラーカメラ(第二の撮像手段)との複数種(二種類)の撮像手段を設けなければならず、製造コスト高であるといった問題があった。
【0009】
また、両者とも、近赤外光を樹脂に照射すると、樹脂の材質によって異なる特徴吸収帯域を示すことを利用して、近赤外カメラなどで特徴吸収帯域を比較することで樹脂の材質を判別するものである。このため、被判別対象の樹脂が黒色の樹脂であった場合、近赤外光を吸収してしまい、特徴吸収帯域を判別し難くなって樹脂同士の判別が困難になるといった問題もあった。
【0010】
本発明は上記問題点にかんがみ、樹脂の材質判別用のセンサが一種類で済み、かつ、被判別対象の樹脂が黒色の近赤外光を吸収しやすい樹脂同士であっても、樹脂同士の材質の判別を明瞭に行うことのできる樹脂材料の判別方法及びその装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では、材質の異なる複数の樹脂片が混在した状態で搬送されてくる途中において、個々の樹脂片の材質を判別し、搬送終端においては、当該判別された樹脂片ごとに分別を行うように形成された樹脂材料の判別装置であって、
前記樹脂片を搬送するための搬送部と、前記搬送部により搬送途中の樹脂片に電磁波を照射するとともに、電磁波の反射波を検知する検知部と、前記検知部において検知された信号から樹脂片の材質の種類を判別する判別部と、前記判別部により判別された樹脂片の材質に基づいて前記搬送部の搬送終端において樹脂片の材質ごとに樹脂片の分別を行う分別部と、を備える、という技術的手段を講じた。
【0012】
請求項2記載の発明では、前記検知部は、前記樹脂片に照射する電磁波として、ミリ波を適用するものとした。
【0013】
請求項3記載の発明では、前記検知部は、前記搬送部により搬送途中の樹脂片の各々にミリ波の電磁波を照射する発信器と、前記樹脂片に照射されたミリ波の電磁波の反射波を受光する受信器と、を備えるものとした。
【0014】
請求項4記載の発明では、前記判別部は、前記検知部で検知した樹脂片からの反射波の強度、座標、方向、深度のうち少なくともいずれか一つ、又は、強度、座標、方向、深度のうちの複数種を比較・解析して、樹脂の有無または前記樹脂片の材質を特定するとともに、前記樹脂片の種類を判別するものとした。
【0015】
請求項5記載の発明では、前記樹脂片を搬送するための搬送部は、前記検知部により前記樹脂片の材質の検知中にあっては、前記搬送部を停止するものとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂材料の判別装置によれば、材質の異なる複数の樹脂片が混在した状態で搬送されてくる途中において、個々の樹脂片の材質を判別し、搬送終端においては、当該判別された樹脂片ごとに分別を行うように形成された樹脂材料の種類の判別装置であって、
前記樹脂片を搬送するための搬送部と、前記搬送部により搬送される途中の樹脂片に電磁波を照射するとともに、電磁波の反射波を検知する検知部と、前記検知部において検知された信号から樹脂片の材質を判別する判別部と、前記判別部により判別された樹脂片の材質に基づいて前記搬送部の搬送終端において樹脂片の材質ごとに樹脂片の分別を行う分別部と、を備えているので、樹脂の材質判別用のセンサが一種類で済み、かつ、被判別対象の樹脂が黒色の近赤外光を吸収しやすい樹脂同士であっても、樹脂同士の材質の判別を明瞭に行うことのできる樹脂材料の判別装置を提供することが可能となった。
【0017】
特に、請求項2のごとく、前記検知部は、前記樹脂片に照射する電磁波として、ミリ波を適用することで、テラヘルツ波(光と電波の中間の周波数帯域にある電磁波。周波数は1THz、波長は300μm前後。)の電磁波を利用した高価な機器ではなく、電波の周波数帯域に近い、ミリ波(周波数は30~300GHz、波長は1~10mm)の電磁波を利用した安価な機器により、黒色の樹脂同士の材質の判別を明瞭に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂材料の判別装置を示す図である。
図2】検知部の概略構成を示したブロック図である。
図3】樹脂材料の判別装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図4】分別部の回収容器の変形例を示す説明図である。
図5】樹脂材料を種類別にミリ波を照射したときの反射強度を比較した比較例(ベルトが停止状態のとき)である。
図6】樹脂材料を種類別にミリ波を照射したときの反射強度を比較した比較例(ベルトが駆動状態のとき)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本質的な例示に過ぎない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂材料の判別装置を示す図である。
図1に示すように本実施形態の樹脂材料の選別装置1は、材質の異なる複数の樹脂片Gを搬送する搬送部2と、前記搬送部2に樹脂片Gを供給する供給部3と、前記搬送部2により搬送途中の樹脂片Gに電磁波を照射するとともに、電磁波の反射波を検知して樹脂片Gの材質を検知する検知部4と、前記検知部4において検知された信号から樹脂片Gの材質を判別する判別部5と、前記判別部により判別された樹脂片Gの材質に基づいて前記搬送部2の搬送終端において樹脂片Gの材質ごとに樹脂片Gの分別を行う分別部6と、を備えて構成される。
【0021】
前記搬送部2は、例えば、駆動プーリ2a及び従動プーリ2bに無端状のベルト2cを巻回したベルトコンベア装置を採用することができる。前記駆動プーリ2aには駆動用のモータ2dを連絡するとともに、前記モータ2dには該モータ2dの回転を制御するモータ制御装置2eを電気的に接続する。そして、前記モータ制御装置2eと前記判別部5との間を電気的に接続する。これにより、前記判別部5と前記検知部4とが互いに電気的に接続されていることから、前記検知部4の検知信号や、前記判別部5からの指令がモータ制御装置2eに伝達される。そして、モータ制御装置2eからは、前記ベルトコンベア装置2の搬送スピードが高速又は低速となる制御や、前記ベルトコンベア装置2の搬送を停止する制御が行われる。
【0022】
前記供給部3は、例えば、材質の異なる複数の樹脂片Gが混在した状態で収容する原料ホッパ3aと、前記原料ホッパ3a底部から樹脂片Gを取り出して横方向に搬送する第1振動フィーダ3bと、前記第1振動フィーダ3bから供給された樹脂片Gを受けて更に一定条件で横方向に搬送させて前記搬送部2(ベルトコンベア装置)に供給するための第2振動フィーダ3cと、を備えて構成される。このように、原料ホッパ3aから取り出した樹脂片Gを、第1振動フィーダ3b及び第2振動フィーダ3cを用いて搬送部2に供給しているから、第1振動フィーダ3bでは樹脂片G同士が2層以上に重なったとしても、第2振動フィーダ3cでは2層以上に重なった樹脂片Gを1層状態に、かつ、樹脂片G同士の間隔をとりながら疎(まば)ら状態にして搬送部2に供給することができる。つまり、供給部3は、後工程の検知部4及び判別部5において、樹脂片Gの個々の材質を精度よく判別する上で有利な構成となっている。
【0023】
また、前記第1振動フィーダ3bの第1振動部3b1、及び前記第2振動フィーダ3cの第2振動部3c1は、前記判別部5からの電気信号が連絡されている。これにより、前記前記検知部4の検知信号や、前記判別部5からの指令が第1振動部3b1,第2振動部3c1に伝達され、振動数及び/又は周波数が高・低となる制御を行って加振量の調節を行うことができる。つまり、前記第1振動フィーダ3b及び前記第2振動フィーダ3cによる搬送量及び/又は樹脂片G同士の重なり具合(疎・密状態)の制御を行うことができるようになっている。
【0024】
検知部4は、例えば、前記搬送部2の搬送下流側の上方に設置される。前記検知部4としては、前記搬送部2により搬送される途中の樹脂片Gに電磁波を照射するミリ波発生源4aと、前記ミリ波発生源4aにより樹脂片Gに照射されたミリ波の反射波を検知する検知センサ4bと、を備えて構成される。前記搬送部2の上方には、さらに、前記検知部4が設置される位置よりも搬送上流側に樹脂片Gの存在確認センサ4cを設置してもよい。この存在確認センサ4cを上流側に設けることにより、検知部4では、分別対象の樹脂片Gが搬送されてきた段階で、搬送部2の搬送スピードを低速にしたり、搬送部2を停止したりして検知を行う。これにより、検知部4での樹脂片Gの個々の材質を精度よく判別することができる。
【0025】
図2は、前記検知部4の概略構成を示したブロック図である。図2には、検知部4の電磁波の送信側となるミリ波発生源4a(図1)の概略構成と、検知部4の電磁波の受信側となる検知センサ4b(図1)の概略構成とが開示されている。ミリ波発生源4aとしては、例えば、周波数が30~300GHz、波長が1~10mmとなる電磁波、すなわち、ミリ波の周波数を発生させる低周波発生器401と、低周波発生手段401の出力を変調する変調器402と、変調器402からの出力を分配する出力分配器403と、送信用増幅器404と、送信アンテナ405とを備える。検知センサ4bとしては、電磁波が樹脂片Gに照射され、その反射波を受ける受信アンテナ406と、受信用増幅器407と、送信波と受信波を混合するミキサ408とを備える。符号409は出力端子であり、図1の判別部5に出力信号が送信される。
【0026】
前記検知部4のミリ波発生源4a及び検知センサ4bは、図2の構成に限定されることはなく、集積回路(IC)により構成されてもよい。例えば、集積回路(IC)であれば、1つのチップにより、複数のRFトランスミッタ、複数のRFレシーバ、そして、RF信号シンセサイザ回路及びRFルーフバック等を備えることができる。本発明者らは、後述する実施例において、米国 テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド社製の型式IWR1443(76GHz~81GHzミリ波センサの評価モジュール)のICチップを採用することとした。
【0027】
そして、検出部4は、図2のようなミリ波レーダに限定されることはなく、ミリ波よりも短い波長の電磁波であるレーザー光(赤外線)を照射するレーザーレーダ(いわゆるLiDAR)を検知する検出部を採用することとしてもよい。レーザー光(赤外線)は、ミリ波よりも波長が短い電磁波であり、一般的に、ミリ波レーダよりも小さい物体を検知することが可能であり、有用である。
【0028】
前記判別部5は、図3の電気的構成を示すブロック図に示すように、演算処理手段としてのCPU50、記憶手段としてのROM51、RAM52及び入出力インターフェース53を備えている。
このほか、判別部5には、Wi-Fi(登録商標)などの無線通信手段を介してインターネットに接続し、外部のクラウドサーバ54に格納された記憶手段と接続される構成としてもよい。クラウドサーバ54には、判定アルゴリズムなどの判定データベースを格納した判定パラメータDB55と、判別対象となる樹脂片Gの摩擦係数特性(樹脂片Gが供給部3及び搬送部4において搬送され易いか否か等の指標として利用され得る。)や、判別対象となる樹脂片Gの組成・化学式などの物性や、判別対象となる樹脂片Gに電磁波(例えば、ミリ波)を照射したときの反射の程度又は光学的異方性など光学的特性など、樹脂片Gの種類ごとに物性・特性を対応付けてデータベース化し、このデータベースを格納した樹脂の物性・特性DB56と、が備えられている。
【0029】
CPU50は、記憶手段となるROM51及び樹脂の物性・特性DB56から樹脂片Gの各種物性や特性などを読み出し、供給部3の第1振動フィーダ3bと第2振動フィーダ3cの制御と、前記搬送部2のモータ制御装置2eの制御と、を行い、想定される樹脂片Gに応じた、供給部3及び搬送部2の搬送制御が実行される。
【0030】
搬送制御が実行され、樹脂片Gがベルト2c上の検知部4に至ると、CPU50は、樹脂片Gに対し、ミリ波による電磁波を照射し、その反射波に基づいて樹脂の種別を判定する判定プログラム等を実行し、樹脂片Gの種別の判定を行う。
【0031】
分別部6は、前記搬送部2の搬送終端において材質ごとに樹脂片Gの分別を行うための分別装置6aと、前記搬送部2の搬送終端の下方に配置され、前記分別装置6aにより分別された被判別対象(目的物)となる樹脂片Gを回収する樹脂片回収容器6bと、被判別対象(目的物)としない樹脂片G等を回収するその他回収容器6cと、から構成される。
【0032】
前記分別装置6aは、判別部5により判別された被判別対象(目的物)となる樹脂片Gをベルト2c上から取り除くように設けられており、例えば、被判別対象(目的物)となる樹脂片Gに高圧の噴風エアを吹き付ける噴風エアノズルを採用することができる。噴風エアノズルの設置箇所としては、搬送部2のベルト2c搬送方向に対して、鉛直方向とする。これにより、噴風エアノズルにより噴風エアを吹き付けられた樹脂片Gが、前記樹脂片回収容器6bへ容易に回収される構成となる。一方、前記分別装置6aは、前記噴風エアノズルに代えて、例えば、電磁ソレノイドやエアシリンダ等を利用し、搬送部2のベルト2c上の樹脂片Gを排除することが可能な選別用アクチュエータを採用してもよい。
【0033】
図1には、分別部6の回収容器として、樹脂片回収容器6b、その他回収容器6cの2つの回収容器を設ける構成を示したが、これに限定されることはなく、例えば、図4のように、分別部6の回収容器として、複数の樹脂の材質に応じて樹脂片Gを回収することが可能な複数の樹脂片回収容器6b,6c,6d,6eを設けることとしてもよい。このような複数の樹脂片回収容器6b,6c,6d,6eを設ける場合、噴風エアノズルからなる分別装置6aを採用するのが好ましい。すなわち、噴風エアノズルであれば、空圧機器によって、その噴風圧力、噴風流量、噴風時間(噴風長さ)などを自在に制御することができる。これにより、搬送部2の搬送終端から飛翔された判別対象の樹脂片Gに対し、制御された噴風を送給することで、指定された樹脂片回収容器(樹脂片回収容器6b~6eのいずれか)に落下して収容されるようになり、材質ごとに分別回収することができる。
【0034】
従来の近赤外光の光学吸収により樹脂の材質を判別する判別方法では、可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得するなどして、多数の異なる材質を含むプラスチック破砕片群から、濃い色のプラスチック破砕片であっても分別することができるものであるが、近赤外カメラ(第一の撮像手段)と、カラーカメラ(第二の撮像手段)との複数種(二種類)の撮像手段を設けなければならず、製造コスト高であるといった問題点があった。
【0035】
これに対し、本実施形態のように、搬送部2により搬送途中の樹脂片Gに電磁波を照射するとともに、電磁波の反射波を検知して樹脂片Gの材質を検知する検知部4と、前記検知部4において検知された信号から樹脂片Gの材質を判別する判別部5と、前記判別部により判別された樹脂片Gの材質に基づいて前記搬送部2の搬送終端において樹脂片Gの材質ごとに樹脂片Gの分別を行う分別部6と、を備えて構成することで、樹脂の材質判別用のセンサが一種類で済み、かつ、被判別対象の樹脂が黒色の近赤外光を吸収しやすい樹脂同士であっても、樹脂同士の材質の判別を明瞭に行うことができる。
樹脂片Gに電磁波を照射する手段としては、低周波発生器401、変調器402、出力分配器403、送信用増幅器404及び送信アンテナ405を備えた回路として構成するか、または、集積回路(IC)を採用することができる。
樹脂片Gからの反射波を検知する手段としては、受信アンテナ406、受信用増幅器407及びミキサ408を備えた回路として構成するか、または、集積回路(IC)を採用することができる。
【0036】
樹脂の材質として、例えば、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)を比較すると、それらの材質の代表的な物性・特性は、以下の表1の傾向がみられる。
【表1】
【0037】
表1からPE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)及びPP(ポリプロピレン)の間では組成が異なり、その誘電特性も微妙に異なることが分かる。本発明者らは、樹脂の材質により異なる誘電特性があることを利用し、ミリ波による電磁波を被判別対象の樹脂に照射することにより、その反射波も異なるであろうという推測に基づいて本発明を完成するに至ったのである。
【0038】
以上説明したように、本実施形態における樹脂材料の種類の判別装置によれば、搬送部2により搬送される途中の樹脂片Gに電磁波(特に、ミリ波)を照射するとともに、電磁波の反射波を検知して樹脂片の材質を検知する検知部4と、前記検知部において検知された信号から樹脂片の材質を判別する判別部5と、を備えることにより、樹脂の材質判別用のセンサが一種類で済み、かつ、被判別対象の樹脂が黒色の近赤外光を吸収しやすい樹脂同士であっても、樹脂同士の材質の判別を明瞭に行うことができる。
【実施例0039】
[試験機]
試験機としては、図1に示したような樹脂材料の種類の判別装置を用いた。搬送部2のベルトコンベア装置としては、オークラ輸送機株式会社製の製品型式EMHを用いた。搬送速度は3.0~6.0m/minであった。
判別装置の要部となる検知部4は、米国 テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド社製の型式IWR1443(76GHz~81GHzミリ波センサの評価モジュール)のICチップを用いた。
[供試材料]
被判別対象(目的物)となる樹脂片Gとして、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)の3種を混在させて試験を行った。
各樹脂片Gの寸法は、幅方向が150~200mmであり、長さ方向(搬送方向とする)が200~300mmであり、厚さが0.5~1.5mmとした長方形をした平板である。
【0040】
[実施例1]
このような被判別対象(目的物)となる樹脂片Gに対し、試験機により樹脂片Gの存在を検出し、次いで、樹脂材料の種類の判別を行った(図5参照)。図5は、樹脂材料の種類ごとにミリ波の反射強度を比較した比較例である。図5の比較例では、搬送部2(ベルトコンベア装置)上のベルトに樹脂片Gを供給し、検知部4に至ったときにベルトコンベア装置のベルトを停止状態としたときのデータである。また、図5の横軸は、検知センサ4bで検知したときの時間(ミリ秒)を示し、図5の縦軸は、検知センサ4bで検知したときの反射強度のレベル(0から9までの相対的な数値レベル。数字が大きくなるほど反射強度が強い。)を示しており、時間ごとに検知センサ4bで検知された反射強度のデータをプロットしてある。また、図5(a)は、ベルト上に樹脂片Gを供給されていない、ベルト表面のデータである(すなわち、比較対照となるコントロールのデータとなる)。
【0041】
[ベルト表面について]
図5(a)に示すように、ベルト上に樹脂片Gを供給されていない、ベルト表面のデータは、ミリ波による電磁波の反射強度が、レベル8付近で特異的な反応を示すことが分かった。このベルト表面のデータは、各種樹脂材料を判別する際の基準点となる。
【0042】
[PE(ポリエチレン)について]
次に、図5(b)に示すように、樹脂片GがPE(ポリエチレン)であるときのデータでは、ミリ波による電磁波の反射強度が、レベル6付近で特異的な反応を示し、この付近以外では反応を示さなかった。よって、図5(a)のベルト表面と図5(b)のPE(ポリエチレン)とは明確に材質の区別ができる。
【0043】
[PVC(ポリ塩化ビニル)について]
そして、図5(c)に示すように、樹脂片GがPVC(ポリ塩化ビニル)であるときのデータでは、ミリ波による電磁波の反射強度が、レベル4.5~5.0付近において特異的な反応を示すことが分かった。よって、図5(a)のベルト表面と、図5(b)のPE(ポリエチレン)と、図5(c)のPVC(ポリ塩化ビニル)との間で明確に材質の区別ができる。
【0044】
[PP(ポリプロピレン)について]
さらに、図5(d)に示すように、樹脂片GがPP(ポリプロピレン)であるときのデータでは、ミリ波による電磁波の反射強度が、レベル7.5付近において特異的な反応を示すことが分かった。よって、図5(a)のベルト表面と、図5(b)のPE(ポリエチレン)と、図5(c)のPVC(ポリ塩化ビニル)と、図5(d)のPP(ポリプロピレン)との間で明確に材質の区別ができる。
【0045】
[機械学習]
上述の図5(a)から図5(d)で示すように、各樹脂材料別に取得した電磁波の反射強度データは、判別部5の記憶手段としてのROM51、又はクラウドサーバ54上の樹脂の物性・特性DB56に格納される。
[判別アルゴリズム設定作業]
ROM51又は樹脂の物性・特性DB56に格納された反射強度データに基づき、演算処理手段としてのCPU50が、樹脂材料の判別のための判別アルゴリズムの設定を自動で行う。このほか、CPU50によらず、オペレータにより人手を介して手動で判別アルゴリズムの設定を行っても良い。この判別アルゴリズムは、記憶手段としてのRAM52、又はクラウドサーバ54上の判定パラメータDB55に格納される。
[分別作業]
判別アルゴリズム設定後は、分別作業開始のプログラムが実行される。すなわち、検知部4に樹脂片Gが搬送されたときに、樹脂片Gに電磁波(特に、ミリ波)を照射するとともに、電磁波の反射波を検知し、その反射波が判別アルゴリズムに基づいて照合が行われ、当該樹脂片Gが何の樹脂材料であるか判定されることになる。
判定の結果、指定する樹脂材料と判明すれば、分別装置6aの噴風エアノズルが作動して搬送部2の搬送終端から飛翔された判別対象の樹脂片Gが、指定された回収容器(例えば、図4の符号6b)に回収されることとなる。
【0046】
[実施例2]
次に、試験機により樹脂片Gの存在を検出し、次いで、樹脂材料の種類の判別を行う際に、搬送部2(ベルトコンベア装置)上のベルトに樹脂片Gを供給し、ベルトコンベア装置のベルトを駆動状態として、樹脂片Gを検知部に至らせたときのデータである(図6参照)。図6は、図5と同様、横軸は、検知センサ4bで検知したときの時間(ミリ秒)を示し、縦軸は、検知センサ4bで検知したときの反射強度のレベル(0から16までの相対的な数値レベル。数字が大きくなるほど反射強度が強い。)を示し、時間ごとに検知センサ4bで検知された反射強度のデータをプロットした。図6(a)は、ベルト上に樹脂片Gを供給されていない、ベルト表面のデータである(すなわち、比較対照となるコントロールのデータとなる)。
【0047】
[ベルト表面について]
図6(a)に示すように、ベルト上に樹脂片Gを供給されていない、ベルト表面のデータは、時間0~14において、ミリ波による電磁波の反射強度の最大値がレベル11~レベル12付近を推移し、数値のバラツキが少ないことが分かった。このベルト表面のデータは、各種樹脂材料を判別する際の基準点となる。
【0048】
[PE(ポリエチレン)について]
次に、図6(b)に示すように、樹脂片GがPE(ポリエチレン)であるときのデータでは、時間0~8の区間で反射強度がレベル10~11であったものが、時間8~13の区間で反射強度がレベル14~15の最大値となり、時間13~14の区間では反射強度がレベル10~11に収束することが分かった。時間8~13の区間において樹脂片Gが検知部4を通過したものと推測される。このことから、図6(a)のベルト表面と図6(b)のPE(ポリエチレン)とは、ベルト駆動時においても明確に材質の区別ができる。
【0049】
[PVC(ポリ塩化ビニル)について]
また、図6(c)に示すように、樹脂片GがPVC(ポリ塩化ビニル)であるときのデータでは、時間0~8の区間で反射強度がレベル10~11であったものが、時間8~13の区間で反射強度がレベル13~14の最大値となり、時間13~14の区間では反射強度がレベル10~11に収束することが分かった。このことから、図6(a)のベルト表面と、図6(b)のPE(ポリエチレン)と、図6(c)のPVC(ポリ塩化ビニル)との間で、ベルト駆動時においても明確に材質の区別ができる。
【0050】
[PP(ポリプロピレン)について]
さらに、図6(d)に示すように、樹脂片GがPP(ポリプロピレン)であるときのデータでは、時間0~8の区間で反射強度がレベル10~11であったものが、時間8~13の区間で反射強度がレベル14~15の最大値となり、時間13~14の区間では反射強度がレベル10~11に収束することが分かった。このことから、図6(a)のベルト表面と、図6(b)のPE(ポリエチレン)と、図6(c)のPVC(ポリ塩化ビニル)と、図6(d)のPP(ポリプロピレン)との間で、ベルト駆動時においても明確に材質の区別ができる。
【0051】
機械学習及び分別作業については、実施例1と同様であるので説明は省略する。
実施例1と実施例2とを対比すれば、実施例1の樹脂片Gが動いていない静止状態の方が、実施例2の樹脂片Gが動いている(ベルト駆動時)ときよりも、樹脂の材質の判別・区別が明確であることが分かる。これは、被判別対象(目的物)となる樹脂片Gが動くことにより、検知部4の検知センサ4bでの検知の際、反射強度が分散・散乱して検知されてしまうことが原因と思われる。
よって、実施例1と実施例2との結果から、樹脂同士の材質の判別を明瞭に行うには、ベルトコンベア装置のスピードを落とすか、又は、静止状態での検査・判別を行うことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、樹脂材料の判別のほか、化学分野、食品分野を中心に目視では判別し難い材質の判別・特定に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 判別装置
2 搬送部
3 供給部
4 検知部
5 判別部
6 分別部
50 CPU
51 ROM
52 RAM
53 入出力インターフェース
54 クラウドサーバ
55 判定パラメータDB
56 樹脂の物性・特性DB
401 低周波発生器
402 変調器
403 出力分配器
404 送信用増幅器
405 送信アンテナ
406 受信アンテナ
407 受信用増幅器
408 ミキサ
409 出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6