(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170140
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】流通量制御装置およびCO2回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20241129BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
F23J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087144
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 賢志
(72)【発明者】
【氏名】新藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】金丸 真嘉
【テーマコード(参考)】
3K070
4D002
【Fターム(参考)】
3K070DA01
3K070DA12
3K070DA24
3K070DA58
3K070DA60
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA31
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB03
(57)【要約】
【課題】ボイラから供給ラインを介してCO
2回収装置へ排ガスを供給するようにしたシステムに設けられ、排ガスからCO
2の回収をより適切に行うことが可能となる流通量制御装置を提供する。
【解決手段】ボイラでの燃焼動作により生じる排ガスを供給ラインを介してCO
2回収装置へ供給して、当該排ガスからCO
2を回収するCO
2回収システムに設けられる装置であって、前記ボイラの燃焼量に応じた値を示す燃焼量情報を取得する情報取得部と、前記燃焼量情報に基づいて、前記供給ラインにおける気体の流通量を制御する制御部と、を備えた流通量制御装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラでの燃焼動作により生じる排ガスを供給ラインを介してCO2回収装置へ供給して、当該排ガスからCO2を回収するCO2回収システムに設けられる装置であって、
前記ボイラの燃焼量に応じた値を示す燃焼量情報を取得する情報取得部と、
前記燃焼量情報に基づいて、前記供給ラインにおける気体の流通量を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする流通量制御装置。
【請求項2】
前記CO2回収システムは、複数の前記ボイラを有するとともに、前記CO2回収装置に繋がるメイン供給ラインと、前記複数のボイラそれぞれを前記メイン供給ラインに接続する各サブ供給ラインと、を含む前記供給ラインを有するものであり、
前記情報取得部は、前記複数のボイラそれぞれの前記燃焼量情報を取得し、
前記制御部は、それぞれの前記ボイラの燃焼量情報に基づいて、そのボイラに対応した前記サブ供給ラインにおける気体の流通量を制御することを特徴とする請求項1に記載の流通量制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数のボイラそれぞれの前記燃焼量情報の値の合計値が所定のベース値に達していないとき、前記各サブ供給ラインにおける気体の流通を停止させることを特徴とする請求項2に記載の流通量制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記合計値が前記ベース値に達していないとき、前記CO2回収装置におけるCO2の回収動作を停止させることを特徴とする請求項3に記載の流通量制御装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、
前記ボイラにおいて生じる前記排ガスの温度、CO2濃度、またはO2濃度の情報を、当該ボイラの前記燃焼量情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の流通量制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の流通量制御装置を備え、
ボイラでの燃焼動作により生じる排ガスを供給ラインを介してCO2回収装置へ供給して、当該排ガスからCO2を回収することを特徴とするCO2回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの排ガスからCO2を回収するシステムに設けられる流通量制御装置、およびこれを有するCO2回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の排ガス等からCO2(二酸化炭素)を回収するCO2回収装置が提案されている。回収されたCO2は、例えばドライアイスの原料や各種工業用ガス等として有効に利用可能である。
【0003】
一例として特許文献1には、製鉄所の熱風炉から排出される排ガス(原料ガス)からCO2を回収するCO2回収装置が開示されている。なお特許文献1では、製鉄所の熱風炉に限らず、他の種類の燃焼炉(例えばボイラ等)や熱処理炉から排出される排ガス等からCO2を回収することについても言及されている(段落0083等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ボイラの燃焼動作により生じる排ガスからCO2を回収するため、ボイラから供給ラインを介してCO2回収装置へ排ガスを供給するようにしたシステムを構築することが考えられる。しかしながら、ボイラの燃焼動作における燃焼量(燃焼の強さの度合)は必ずしも安定するとは限らず、要求負荷の増減等によって不規則的に変動することも想定される。燃焼量が小さいときは、その分、燃焼動作によって生じる排ガスの量が少なくなる。
【0006】
そのため、ボイラの燃焼量に関わらず、供給ラインにおける気体の流通量を一定とすると、CO2の回収を適切に行うことが難しくなる虞がある。例えば、燃焼量が比較的小さいときには、供給ラインにおけるボイラ側からの気体の吸引量が多いと、ボイラの煙道から大気が吸い込まれるといった無駄な現象が生じ易い。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、ボイラから供給ラインを介してCO2回収装置へ排ガスを供給するようにしたシステムに設けられ、排ガスからCO2の回収をより適切に行うことが可能となる流通量制御装置、およびこれを有するCO2回収システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流通量制御装置は、ボイラでの燃焼動作により生じる排ガスを供給ラインを介してCO2回収装置へ供給して、当該排ガスからCO2を回収するCO2回収システムに設けられる装置であって、前記ボイラの燃焼量に応じた値を示す燃焼量情報を取得する情報取得部と、前記燃焼量情報に基づいて、前記供給ラインにおける気体の流通量を制御する制御部と、を備えた構成とする。
【0009】
本構成によれば、ボイラから供給ラインを介してCO2回収装置へ排ガスを供給するようにしたシステムに設けられ、排ガスからCO2の回収をより適切に行うことが可能となる。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記CO2回収システムは、複数の前記ボイラを有するとともに、前記CO2回収装置に繋がるメイン供給ラインと、前記複数のボイラそれぞれを前記メイン供給ラインに接続する各サブ供給ラインと、を含む前記供給ラインを有するものであり、前記情報取得部は、前記複数のボイラそれぞれの前記燃焼量情報を取得し、前記制御部は、それぞれの前記ボイラの燃焼量情報に基づいて、そのボイラに対応した前記サブ供給ラインにおける気体の流通量を制御する構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記制御部は、前記複数のボイラそれぞれの前記燃焼量情報の値の合計値が所定のベース値に達していないとき、前記各サブ供給ラインにおける気体の流通を停止させる構成としても良い。
【0012】
上記構成としてより具体的には、前記制御部は、前記合計値が前記ベース値に達していないとき、前記CO2回収装置におけるCO2の回収動作を停止させる構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記情報取得部は、前記ボイラにおいて生じる前記排ガスの温度、CO2濃度、またはO2濃度の情報を、当該ボイラの前記燃焼量情報として取得する構成としても良い。
【0013】
また本発明に係るCO2回収システムは、上記構成に係る流通量制御装置を備え、ボイラでの燃焼動作により生じる排ガスを供給ラインを介してCO2回収装置へ供給して、当該排ガスからCO2を回収する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る流通量制御装置によれば、ボイラから供給ラインを介してCO2回収装置へ排ガスを供給するようにしたシステムに設けられ、排ガスからCO2の回収をより適切に行うことが可能となる。また本発明に係るCO2回収システムによれば、本発明に係る流通量制御装置の利点を享受することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る流通量制御装置5を備えたCO
2回収システム100の概略的な構成図である。
【
図2】本実施形態に係る流通量調節部52の構成例に関する説明図である。
【
図3】流通量調節部52の別の構成例に関する説明図である。
【
図4】流通量調節部52の更に別の構成例に関する説明図である。
【
図5】CO
2回収システム100におけるボイラ1の概略的な構成図である。
【
図6】流通量制御装置5の動作に関するフローチャートである。
【
図7】流通量制御装置5の別の形態の動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の各実施形態に係る流通量制御装置、および当該流通量制御装置を備えたCO2回収システムについて、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るCO
2回収システム100の概略的な構成図である。CO
2回収システム100は、複数(本実施形態では一例として5台)のボイラ1、CO
2回収装置2、および排ガス供給ライン3を有しており、各ボイラ1での燃焼動作により生じる排ガスを排ガス供給ライン3を介してCO
2回収装置2へ供給して、当該排ガスからCO
2を回収するシステムとなっている。
【0018】
ボイラ1は、燃料を燃焼させる燃焼動作を行って熱を発生させ、この燃焼熱を用いて加熱対象である水を加熱して蒸気を生成し、外部へ供給する役割を果たす。ボイラ1において燃焼動作が行われる際には、原料ガス等の燃料を燃焼させることに伴い、CO2等を含む排ガスが生じることになる。ボイラ1の動作は、当該ボイラ1における制御部10によって制御される。
【0019】
CO2回収装置2は、ボイラ1が排出する排ガスからCO2を回収して、各種用途に利用可能とする役割を果たす。本実施形態のCO2回収装置2としては、CO2吸収材(例えばアミン系吸収液)を用いてCO2を吸着して回収する装置等が採用されるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々のCO2回収装置が採用され得る。CO2回収装置2の動作は、当該CO2回収装置2における制御部20によって制御される。
【0020】
なお、CO2吸収材を用いるCO2回収装置としては、例えば、TSA(Thermal Swing Adsorption)プロセスを採用したもの、PSA(Pressure Swing Adsorption)プロセスを採用したもの等が知られているが、本実施形態のCO2回収装置2は何れのプロセスを採用したものであっても良い。
【0021】
排ガス供給ライン3は、CO2回収装置2に繋がるメイン供給ライン32と、複数のボイラ1それぞれをメイン供給ライン32に接続する各サブ供給ライン31と、を含む。これにより、各ボイラ1から排出される排ガスは、そのボイラ1に対応するサブ供給ライン31を経てメイン供給ライン32に合流し、CO2回収装置2に纏めて流入する。
【0022】
更にCO2回収システム100は、システムコントローラ51、および複数個の流通量調節部52を備えた流通量制御装置5を有する。流通量制御装置5は、ボイラ1の燃焼量に応じた値を示す燃焼量情報Xを取得し、この燃焼量情報Xに基づいて排ガス供給ライン3における気体の流通量を制御する役割を果たす。
【0023】
システムコントローラ51は、各ボイラ1の燃焼動作における燃焼量(各ボイラ1の燃焼量)に応じた値を示す燃焼量情報Xを取得し、この燃焼量情報Xに基づいて各サブ供給ライン31における気体の流通量の目標値Vを求め、この目標値Vの情報を含んだ制御信号を各流通量調節部52に送信する。これにより、システムコントローラ51は各流通量調節部52の動作を制御し、排ガス供給ライン3における気体の流通量を制御することができる。システムコントローラ51は、何れかのボイラ1或いはCO2回収装置2に配置されても良く、これらとは別の場所に配置されても良い。また、ボイラ1の制御部10或いはCO2回収装置2の制御部20が、システムコントローラ51の機能を有するようにしても良い。
【0024】
複数個の流通量調節部52それぞれは、各サブ供給ライン31と一対一に対応するように配置されており、対応するサブ供給ライン31における気体の流通量を連続的または段階的に調節する。各流通量調節部52は、システムコントローラ51との通信が可能であり、システムコントローラ51から受ける制御信号に基づいて動作する。
【0025】
ここで流通量調節部52の具体的な構成例について、
図2~
図4を参照しながら以下に説明する。但し、流通量調節部52の具体的な構成は、
図2~
図4の例に限られるものではない。
【0026】
図2に示す例の流通量調節部52は、サブ供給ライン31において直列に配置された排ガスブロワ52aと流量計52bを有する。排ガスブロワ52aは、サブ供給ライン31において後段側(CO
2回収装置2に近づく側)へ気体を吸引する役割を果たし、この吸引量(すなわち、サブ供給ライン31における気体の流通量)が変更可能に構成されている。当該吸引量の制御(排ガスブロワ52aの回転数の制御)は、インバータ制御であっても良い。
図2に示す例の流通量調節部52においては、システムコントローラ51から制御信号を受けると、流量計52bによって検出される気体の流量が目標値Vに近づくように、排ガスブロワ52aの吸引量が制御される。なお、
図2に示す例の流通量調節部52においては、流量計52bの設置を省略し、システムコントローラ51からの制御信号によって、サブ供給ライン31における気体の流通量が目標値Vに近づくように、排ガスブロワ52aの吸引量が制御されるようにしても良い。
【0027】
図3に示す例の流通量調節部52は、サブ供給ライン31において直列に配置された排ガスブロワ52aと、気体の流量を調節可能とする調節弁52cを有する。
図3に示す例の流通量調節部52においては、排ガスブロワ52aの回転数は基本的に一定であり、システムコントローラ51から制御信号を受けると、サブ供給ライン31における気体の流通量が目標値Vに近づくように、調節弁52cが制御される。
【0028】
図4に示す例の流通量調節部52は、サブ供給ライン31に配置された排ガスブロワ52aと、排ガスブロワ52aの後段側からその前段側へ気体を流通させる戻りライン52dと、戻りライン52dに配置された調節弁52cを有する。
図4に示す例の流通量調節部52においても、排ガスブロワ52aの回転数は基本的に一定であり、システムコントローラ51から制御信号を受けると、サブ供給ライン31における気体の流通量が目標値Vに近づくように、調節弁52cが制御される。なお、
図2、
図3、または
図4に示す例の流通量調節部52を採用する場合には、排ガスブロワ52aが動いていない状況(例えば、対応するボイラ1が停止している状況等)において他のボイラ1からの排ガスの逆流を防ぐためのバルブ(対応するサブ供給ライン31を適宜閉鎖することのできるバルブ)を、例えば流通量調節部52の後段側に設置することが有効である。また
図3に示す例においては、当該バルブを設置する代わりに、調節弁52cが当該バルブの役割を兼ねるようにすることも可能である。
【0029】
図5は、ボイラ1の一例についての概略的な構成図である。本図に示すボイラ1は、ボイラ缶体11、セパレータ12、エコノマイザ13、煙道14、給水管15a、燃料供給管15b、空気供給管15c、降水管15d、ブロー配管15e、ブロー弁16、およびバーナ17を備える。
図5に示す例のボイラ1は多管式貫流ボイラであり、ボイラ缶体11は、上部管寄せ11aと下部管寄せ11bの間を複数の垂直な水管11cで連結した構造となっている。但し、本実施形態のボイラ1は、
図5に示す構成のものに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々のボイラが採用され得る。
【0030】
図5に示すボイラ1において、外部或いは給水タンク等から給水される補給水は、給水管15aを通ってボイラ缶体11の下部管寄せ11bから水管11c内に供給され、水管11c内の水位は所望の位置に維持される。一方でバーナ17には、外部から燃料供給管15bを介して燃料が供給されるとともに、外部から空気供給管15cを介して空気が供給される。バーナ17がこの空気を用いて燃料を燃焼させることにより、ボイラ1において燃焼動作が行われる。この燃焼動作によってボイラ缶体11に配置された水管11cが加熱され、当該水管11cを流通する補給水から蒸気を生成することが可能である。
【0031】
ボイラ缶体11において生成された蒸気は上部管寄せ11aからセパレータ12に流入して気水分離され、分離された水は降水管15dを介してボイラ缶体11に戻される。なお降水管15dからブロー配管15eが分岐して設けられており、ブロー配管15eにはブロー弁16が設けられている。ブロー弁16を適宜開くことにより、ブロー水を排出させることが可能である。
【0032】
セパレータ12内の蒸気は、所定の配管を介して外部の供給先(各種蒸気機器など)に供給される。なお、ボイラ1からの蒸気の供給量は、供給先における蒸気の需要量(要求負荷)によって変動することになる。そのためボイラ1における制御部10は、要求負荷を監視し、当該要求負荷に基づいて燃焼動作における燃焼量(燃焼の強さの度合)を調節する。
【0033】
すなわち制御部10は、蒸気の需要量が多いほどバーナ17に燃料等をより多く供給し、燃焼動作における燃焼量を大きくすることによって、より多くの蒸気を発生させて外部へ供給できるようにする。本実施形態の例では、制御部10は、そのボイラ1における最大の燃焼量の値を100%とし、そのときの上記要求負荷に基づいて、0%(燃焼動作を停止)~100%の範囲で燃焼量を設定する。そして制御部10は、この設定した燃焼量を実現させるように、燃焼動作を実行する。なお、燃焼量の制御形態は、本発明の趣旨を逸脱しない限り種々の形態が採用され得る。例えば段階的な制御を採用する場合、制御部10は、上記要求負荷に基づいて複数の段階(一例として、最も燃焼量の低い「低燃焼」、その次に燃焼量の高い「中燃焼」、および、最も燃焼量の高い「高燃焼」の3段階)の何れかに燃焼量を設定し、この設定した燃焼量を実現させるように、燃焼動作を実行するようにしても良い。
【0034】
なお制御部10は、要求負荷の変動に追従するように、定期的に燃焼量の設定値を更新する。また制御部10は、現時点における燃焼量の設定値を、そのボイラ1の燃焼動作における燃焼量に応じた値を示す燃焼量情報Xとして、システムコントローラ51に適宜送信可能である。
【0035】
燃焼動作によって生じた排ガスは、エコノマイザ13を経て煙道14に送られ、更に、煙道14に接続されているサブ供給ライン31へ送出される。なお、エコノマイザ13の内部には給水管15aが配置されており、エコノマイザ13を通る排ガスは、この給水管15aを通る補給水との熱交換により冷却された上で煙道14に送られる。また、煙道14に送られた排ガスは、全てがサブ供給ライン31へ送出されるようにしても良く、一部がサブ供給ライン31へ送出されて、残りは煙道14端部から外部へ排出されるようにしても良い。
【0036】
ここで、ボイラ1の燃焼動作における燃焼量は必ずしも安定するとは限らず、要求負荷の増減等によって不規則的に変動することも想定される。燃焼量が小さいときは、その分、燃焼動作によって生じる排ガスの量が少なくなる。そのため、ボイラ1の燃焼量が比較的小さいときに、排ガス供給ライン3におけるそのボイラ1からの気体の吸引量が多過ぎると、そのボイラ1の煙道14から大気が吸い込まれるといった無駄な現象が生じ易い。一方、ボイラ1の燃焼量が比較的大きいときに、排ガス供給ライン3におけるそのボイラ1からの気体の吸引量が少な過ぎると、CO2回収装置2への排ガスの供給が不十分になる虞がある。
【0037】
そこで本実施形態における流通量制御装置5(システムコントローラ51および流通量調節部52)は、各ボイラ1の燃焼量に応じて、排ガス供給ライン3におけるそのボイラ1側からの気体の吸引量が適量となるように制御する。この制御の動作の具体例について、
図6に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0038】
システムコントローラ51は、各ボイラ1から最新の燃焼量情報Xを取得する(ステップS11)。このとき、システムコントローラ51が各ボイラ1に対して燃焼量情報Xの送信を要求し、各ボイラ1が当該要求に応じて燃焼量情報Xをシステムコントローラ51へ送信するようにしても良い。
【0039】
次にシステムコントローラ51は、取得した燃焼量情報Xが示す燃焼量に基づいて、各サブ供給ライン31における気体の流通量の目標値Vを算出する(ステップS12)。なお、ボイラ1の排ガスの発生量を左右する燃焼量によって、当該ボイラ1側からの理想的な気体の吸引量(すなわち目標値V)が決まることから、システムコントローラ51には、燃焼量と目標値Vの関係を特定する情報(例えば、あらゆるパターンの燃焼量ごとの目標値Vを定めたテーブル情報、或いは、燃焼量と目標値Vの関係式など)が予め登録されている。システムコントローラ51は、この登録された情報を用いて、目標値Vを算出することが可能である。
【0040】
システムコントローラ51は、このようにして算出した目標値Vの情報を含む制御信号を各流通量調節部52に送信し、これにより各流通量調節部52は、目標値Vに近づくように、各サブ供給ライン31での気体の吸引量を調節する(ステップS13)。上述したステップS11~S13の動作が継続的に繰り返されることにより、各ボイラ1の燃焼量に応じて、排ガス供給ライン3におけるそのボイラ1側からの気体の吸引量が適量となるように制御される。
【0041】
また、排ガス供給ライン3における気体の吸引量の制御手法の別の具体例について、
図7に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。なお本フローチャートにおける初期状態では、全てのサブ供給ライン31において、気体の吸引が停止されているとする。
【0042】
システムコントローラ51は、各ボイラ1から最新の燃焼量情報Xを取得し(ステップS21)、各ボイラ1の燃焼量の合計値が所定のベース値Zに達したか否かを判別する(ステップS22)。本実施形態の例では、各ボイラ1における燃焼量の値は0~100(%)の範囲の値であり、ボイラ1の台数は計5台であることから、各ボイラ1の燃焼量の合計値は0~500(%)の範囲の値となり、ベース値Zは一例として100(%)に設定されるとする。
【0043】
各ボイラ1の燃焼量の合計値がベース値Zに達していない場合には(ステップS22のNo)、ステップS21の動作が繰り返される。一方、各ボイラ1の燃焼量の合計値がベース値Zに達していた場合には(ステップS22のYes)、流通量制御装置5は、直近のステップS21の動作で得られた燃焼量情報Xに基づいて、各サブ供給ライン31における気体の吸引量を調節する(ステップS23)。この調節は、先述したステップS12~S13と同様の動作により実現可能である。
【0044】
次に、システムコントローラ51は、各ボイラ1から最新の燃焼量情報Xを取得し(ステップS24)、各ボイラ1の燃焼量の合計値がベース値Zを下回ったか否かを判別する(ステップS25)。下回っていない場合には(ステップS25のNo)、ステップS23の動作が繰り返される。これにより、各ボイラ1の燃焼量の合計値がベース値Zを下回らない限り、各ボイラ1の燃焼量に応じて、排ガス供給ライン3におけるそのボイラ1側からの気体の吸引量が適量となるように制御される。
【0045】
一方、各ボイラ1の燃焼量の合計値がベース値Zを下回った場合には(ステップS25のYes)、流通量制御装置5は、全てのサブ供給ライン31において気体の吸引を停止させ(ステップS26)、ステップS21の動作に戻る。サブ供給ライン31における気体の吸引の停止は、そのサブ供給ライン31に対応した流通量調節部52における気体の流通を止めることにより実現可能である。
【0046】
このように流通量制御装置5は、複数のボイラ1それぞれの燃焼量(燃焼量情報Xの値)の合計値がベース値Zに達していないとき、各サブ供給ライン31における気体の流通を停止させる。各ボイラ1の燃焼量の合計値が小さ過ぎる状況下(ベース値Zに達していないとき)には、CO2回収装置2におけるCO2の回収効率が著しく悪くなる。上述したステップS21~S26の一連の動作によれば、このような状況下ではCO2回収装置2への排ガス供給を停止して、殆ど無駄となる排ガスブロワ52aの動作等を極力抑えることも可能となる。
【0047】
なお、システムコントローラ51は、各ボイラ1の燃焼量の合計値がベース値Zを下回ったときには(ステップS25のYes)、CO2回収装置2に対して動作停止信号を送信し、その後に当該合計値がベース値Zに達したときには(ステップS22のYes)、CO2回収装置2に対して動作開始信号を送信するようにしても良い。この場合にCO2回収装置2の制御部20は、当該動作停止信号を受信したときには、CO2の回収動作の全部または一部を停止させるようにし、当該動作開始信号を受信したときには、CO2の回収動作を開始させるようにする。
【0048】
このようにして流通量制御装置5は、複数のボイラ1それぞれの燃焼量(燃焼量情報Xの値)の合計値がベース値Zに達していないとき、CO2回収装置2におけるCO2の回収動作を停止させることができる。これにより、各ボイラ1の燃焼量の合計値が小さ過ぎて、CO2回収装置2におけるCO2の回収効率が著しく悪く状況下では、CO2回収装置2における動作の無駄も極力抑えることが可能となる。
【0049】
本実施形態では、ボイラ1において設定された燃焼量をそのボイラ1についての燃焼量情報Xとしたが、燃焼量情報Xはこれに限られるものではなく、ボイラ1の燃焼動作における燃焼量に応じた値を示す様々な情報を、燃焼量情報Xとして採用することが可能である。
【0050】
例えば、ボイラ1において生じる排ガスについての温度、CO2濃度、またはO2濃度は、そのボイラ1の燃焼動作における燃焼量と密接に関係しており、当該排ガスの温度、CO2濃度、またはO2濃度の値から、そのときの燃焼量を良好な精度で特定することが可能である。そこで流通量制御装置5は、ボイラ1において生じる排ガスの温度、CO2濃度、またはO2濃度の情報を当該ボイラ1の燃焼量情報Xとして取得し、この燃焼量情報Xに基づいて、排ガス供給ライン3における気体の流通量を制御するようにしても良い。
【0051】
具体的には、各サブ供給ライン31に温度、CO2濃度、またはO2濃度を検出するセンサを設置しておき、システムコントローラ51は当該センサの検出値を、そのサブ供給ライン31に対応するボイラ1の燃焼量情報Xとして取得する。これにより流通量制御装置5は、取得した燃焼量情報Xに基づいて、各ボイラ1に対応したサブ供給ライン31における気体の流通量を制御することが可能となる。また、流通量制御装置5は、ボイラ1において設定された燃焼量に基づいて、そのボイラ1に対応したサブ供給ライン31における気体の流通量を制御しつつも、そのボイラ1において生じる排ガスについての温度、CO2濃度、またはO2濃度に応じて、当該流通量を補正するようにしても良い。
【0052】
以上に説明したとおり、本実施形態に係る流通量制御装置5は、ボイラ1での燃焼動作により生じる排ガスを排ガス供給ライン3を介してCO2回収装置2へ供給して、当該排ガスからCO2を回収するCO2回収システム100に設けられる装置である。更に流通量制御装置5は、燃焼量情報X(ボイラ1の燃焼量に応じた値を示す情報)を取得する機能部(情報取得部)と、燃焼量情報Xに基づいて排ガス供給ライン3における気体の流通量を制御する機能部(制御部)と、を備えている。そのため流通量制御装置5によれば、排ガスからCO2の回収をより適切に行うことが可能となっている。
【0053】
より具体的には、CO2回収システム100は、複数のボイラ1を有するとともに、CO2回収装置2に繋がるメイン供給ライン32と、複数のボイラ1それぞれをメイン供給ライン32に接続する各サブ供給ライン31と、を含む排ガス供給ライン3を有する。そして流通量制御装置5において、上記の情報取得部は、複数のボイラ1それぞれの燃焼量情報Xを取得し、上記の制御部は、それぞれのボイラ1の燃焼量情報Xに基づいて、そのボイラに対応したサブ供給ライン31における気体の流通量を制御する。
【0054】
なお本実施形態のCO2回収システム100では、複数のボイラ1を用いたMI(Multiple Installation:多缶設置)システムが採用されているが、本発明に係る流通量制御装置は、1台のみのボイラを用いたCO2回収システムにも適用され得る。
【0055】
また、CO2回収システム100の各ボイラ1においては、先述した空気供給管15cの所定位置(バーナ17へ空気を送る送風機よりも後段側の位置)に、空気を流通させる流通状態と流通させない遮断状態とを切替可能に設定できるダンパーを設けるようにしても良い。このようにすれば、ボイラ1が燃焼動作を行っていないとき(燃焼量がゼロのとき)に、そのボイラ1のダンパーを遮断状態に設定することで、送風機への空気の逆流やバーナ17への空気流入をより確実に防ぐことが可能となる。また、各ボイラ1にこのようなダンパーを設ける場合は、各サブ供給ライン31における流通量調節部52の設置を省略し、メイン供給ライン32の所定位置(各サブ供給ライン31よりも後段側の位置)のみにブロワを設けてCO2回収装置2へ排ガスが供給されるようにしても、各ボイラ1における送風機への空気の逆流やバーナ17への空気流入を防ぐことができる。また、上述したダンパーと同様の機能を有するダンパーを各ボイラ1の煙道14にも設けることにより、各ボイラ1において煙道14からの空気の逆流を防ぐことも可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ボイラの排ガスからCO2を回収するCO2回収システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 ボイラ
10 制御部
11 ボイラ缶体
11a 上部管寄せ
11b 下部管寄せ
11c 水管
12 セパレータ
13 エコノマイザ
14 煙道
15a 給水管
15b 燃料供給管
15c 空気供給管
15d 降水管
15e ブロー配管
16 ブロー弁
17 バーナ
2 CO2回収装置
20 制御部
3 排ガス供給ライン
31 サブ供給ライン
32 メイン供給ライン
5 流通量制御装置
51 システムコントローラ
52 流通量調節部
52a 排ガスブロワ
52b 流量計
52c 調節弁
52d 戻りライン
100 CO2回収システム