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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170147
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】撮像装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03B 7/091 20210101AFI20241129BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20241129BHJP
   G03B 5/08 20210101ALI20241129BHJP
   H04N 23/70 20230101ALI20241129BHJP
   H04N 23/73 20230101ALI20241129BHJP
   H04N 23/75 20230101ALI20241129BHJP
   H04N 23/76 20230101ALI20241129BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
G03B7/091
G02B7/28 N
G03B5/08
H04N23/70
H04N23/73
H04N23/75
H04N23/76
H04N23/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087151
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 孝男
【テーマコード(参考)】
2H002
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H002FB23
2H002FB24
2H002FB25
2H002GA19
2H002HA11
2H151DD05
5C122DA04
5C122DA30
5C122EA37
5C122EA68
5C122FA12
5C122FB03
5C122FB23
5C122FC01
5C122FC02
5C122FF01
5C122FF05
5C122FF09
5C122FF15
5C122FL00
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA86
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】本発明は、あおり撮影を行う際に、あおり角度の調整を簡易に行いつつ、被写体の焦点が合った撮影を行う技術を提供することを目的とする。
【解決手段】
撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された所定の露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定手段と、を備える、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、
前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された所定の露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定手段と、を備える、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1露出設定は、少なくとも前記撮像光学系の絞りの絞り値、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2露出設定は、少なくとも前記撮像光学系の絞りの絞り値、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1あおり角度に対応する第1露出設定を取得する取得手段をさらに備え、
前記取得手段は、前記第2あおり角度が閾値以上である場合、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1露出設定は、前記撮像光学系の絞り値を含み、
前記決定手段は、前記撮像光学系の絞り値を変更せず、かつ前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインを変更した前記第2露出設定を決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記撮像光学系の絞り値が所定の絞り値を下回らないように、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインを変更した前記第2露出設定を決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記撮像光学系の絞り値、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインを変更しない前記第2露出設定を決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記予め設定された所定の露出設定を取得する取得手段をさらに備え、
前記取得手段は、前記第2あおり角度が閾値以上ではない場合、前記予め設定された所定の露出設定を取得し、
前記決定手段は、前記第2露出設定として、前記予め設定された所定の露出設定を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1露出設定と前記第2露出設定は、被写界深度範囲内に被写体が存在する設定である、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記決定手段は、前記第2露出設定を決定した後、前記第2露出設定の変更を禁止する設定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1あおり角度から前記第2あおり角度への変更を受け付ける受付手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記受付手段が受け付けた前記第2あおり角度が所定の角度の範囲に存在するか否か、及び、前記第1あおり角度と同一であるか否かを判定する判定手段とをさらに備える、
ことを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記撮像光学系の絞りを制御する絞り制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記角度制御手段は、前記決定手段が前記第2露出設定を決定した後、前記第1あおり角度から前記第2あおり角度へ変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項15】
撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定工程を備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定工程を備える方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等を用いて画角内における距離の異なる広い範囲の被写体のそれぞれに対して焦点の合った被写体画像を得るために、カメラ光学系の光軸と、光学系の焦点面に置かれた撮像素子の撮像面の法線方向を傾けて撮影する、いわゆるあおり撮影の手法が知られている。特許文献1では、光軸を方向線方向に対して傾ける角度、いわゆるあおり角度を最適な値に調整可能な撮像装置が開示されている。また、あおり角度を調整する際に、光学系の絞りを絞った状態(F値が暗い状態)で調整を実施すると、被写界深度が深い状態であおり角度調整が行われる。そのため、被写体を適切に撮影できるものの最適なあおり角度からややずれた値に設定される可能性がある。この状態から絞りを開いた状態(F値が明るい状態)にすると、被写界深度が浅くなりあおり角度の調整時よりも合焦する範囲が狭くなるため、被写体がボケる場所が出来てしまい広い範囲を撮影出来るメリットが小さくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-126184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、あおり角度の調整時に絞り量を変化させてあおり角度の調整動作を行うことで、あおり角度を最適な値に設定しているが、複数の絞り量での調整が必要であり、あおり撮影が可能になるまでに時間が掛かってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、あおり撮影を行う際に、あおり角度の調整を簡易に行いつつ、被写体の焦点が合った撮影を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る撮像装置は、撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された所定の露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定手段と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、あおり撮影を行う際に、あおり角度の調整を簡易に行いつつ、被写体の焦点が合った撮影を行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る撮像装置10のハードウェア構成について説明する図。
図2】第1実施形態に係る信号処理部300の機能を説明するブロック図。
図3】第1実施形態に係る撮像装置10を用いて被写体を撮影する様子を説明する図。
図4】第1実施形態に係る撮像装置10の被写界深度範囲を説明する図。
図5】第1実施形態に係る撮像装置10のあおり角度θの設定処理を示すフローチャート。
図6】第1実施形態に係る撮像装置10の露出モードの設定処理を説明するフローチャート。
図7】第1実施形態に係る撮像装置10のハードウェア構成の詳細を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る開示を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが開示に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る撮像装置10のハードウェア構成について説明する図である。
【0011】
レンズユニット100(撮像光学系)は、絞りユニット102を有する。また、レンズユニット100は、フォーカスレンズを備え、被写体からの光を最適な形で得ることができる。さらに、レンズユニット100は、ズームレンズを備え、被写体の撮影倍率を変更できる。レンズユニット100は、図1に示される構造に限定されるものではなく、絞りユニット102を少なくとも有していれば良い。
【0012】
絞りユニット102は、撮像素子200に入射する光量を制御できる。
【0013】
撮像素子200は、CMOSセンサ及びCCDセンサ等の半導体素子及びその周辺回路を有する。撮像素子200は、レンズユニット100を介して形成された被写体像(光学像)を光電変換して、電気信号(画素信号)を出力する。
【0014】
信号処理部300は、カメラCPU等のシステムコントローラ(不図示)からの制御信号に基づいて、撮像素子200から出力された電気信号に対して所定の信号処理を行い、画像信号を出力する。また、電源部(不図示)から電力が信号処理部300に供給される。なお本実施形態において、画素信号は、撮像素子200からそのまま信号処理部300へ転送されるが、これに限定されるものではない。撮像素子200は、画素信号を信号処理部300へ転送する前に撮像素子200の内部で信号処理を行ってもよい。
【0015】
モータ201は、例えば、センサチルトモータであり、信号処理部300からの駆動信号に基づいて、撮像素子200の受光面(撮像面)と、レンズユニット100の光軸(「OA」で図示)に直交する面とのなす角度を変更することが可能である。なお、図1ではモータ201として1つのモータのみ示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のモータを用いてあおり角度を2次元的に変更するように構成してもよい。
【0016】
図7は、第1実施形態に係る撮像装置10のハードウェア構成の詳細を説明する図である。
【0017】
レンズドライバ701は、図1のレンズユニット100を駆動するレンズドライバである。レンズドライバ701は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを駆動するために、レンズに接続されたモータに駆動信号を送る。
【0018】
撮像素子200は、図1の撮像素子200と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0019】
I/Fドライバ703は、撮像装置10が外部機器と通信する際に、外部機器の通信規格に対応するフォーマット変換を行う。
【0020】
CPU704は、図2の制御部310の役割だけではなく、各機能の制御も行う。
【0021】
RAM705は、揮発性メモリであり、図2の記憶部305の機能を実現する。
【0022】
ROM706は、不揮発性メモリであり、図2の記憶部305の機能を実現する。
【0023】
アオリドライバ707は、図1のモータ201を駆動するドライバである。
【0024】
赤外光カットフィルタドライバ708は、図1のレンズユニット100が備える赤外光カットフィルタ機構部(不図示)のモータを駆動するドライバである。
【0025】
図2は、第1実施形態に係る信号処理部300の機能を説明するブロック図である。
【0026】
信号処理部300は、データ変換部301、画像処理部302、通信制御部303、記憶部305、及び制御部310を有する。
【0027】
データ変換部301は、撮像素子200からの画素信号を、画像処理に適した信号に変換する。
【0028】
画像処理部302は、データ変換部301の出力信号に対して補正処理や現像処理を行い、画像信号を出力する。
【0029】
通信制御部303は、画像処理部302からの画像信号を外部へ映像信号として出力する。また、通信制御部303は、外部装置など(不図示)から制御信号を受け取る。
【0030】
制御部310は、レンズユニット制御部311、撮像素子制御部312、及びモータ制御部313を有する。制御部310は、データ変換部301及び画像処理部302等の信号処理部300の各部を制御する。また、制御部310は、画素信号または画像信号を用いて被写体を様々な設定で撮影することができるように、レンズユニット100、撮像素子200、及びモータ201を制御する。制御部310は、被写体像の輝度を変更する場合、画像の輝度信号と、撮像素子200及びレンズユニット100の現在の設定とに基づいて、撮像素子200のシャッタ時間、ゲインの設定、及び絞りユニット102の設定を変更する。これにより、制御部310は、画像信号の輝度を調節することができる。
【0031】
また、制御部310は、撮像装置10の露出モードを切り替えることが可能である。露出モードは、少なくとも絞り優先モードを有する。絞り優先モードにおいては、画像信号の輝度を調節する際に、絞りユニット102の設定を優先して撮像素子200の設定を変更する。
【0032】
また、その他の露出モードは、撮像素子200のシャッタ時間設定を優先して、絞りユニット102の設定、及び、撮像素子200のゲイン設定を変更するシャッタ時間優先モードを有しても良い。加えて、その他の露出モードは、撮像素子200のゲイン設定を優先して、絞りユニット102の設定、及び、撮像素子200のシャッタ時間設定を変更するゲイン優先モードを有しても良い。また、その他の露出モードは、全てを最適に制御する通常モードを有しても良く、全てを個別に設定した値にする固定モードを有しても良い。制御部310は通信制御部303を通して外部装置などからの制御信号に基づいて、撮像装置10の動作を変更することが可能である。
【0033】
記憶部305は、所定の設定や動作プログラム等のデータを記憶している。制御部310は、必要に応じて、記憶部305に記憶されたデータを読み出すことができる。なお画像処理部302は、得られた画像信号から被写体が存在する範囲を検出する被写体検出部を備えていてもよい。
【0034】
図3は、第1実施形態に係る撮像装置10を用いて被写体を撮影する様子を説明する図である。図3を参照して、モータ201を駆動して撮像素子200の受光面(撮像面)とレンズユニット100の光軸OAに直交する面とが平行な状態から撮像素子200を角度θ傾けて、あおり撮影を行う場合について説明する。
【0035】
図3(a)は、撮像装置10の光軸OAに対して直交ではない平面の被写体(被写体面)を撮像している様子を示している。図3(a)において、被写体面上の点A1-A2間が撮影範囲である。
【0036】
図3(b)は、図3(a)の撮影時におけるレンズユニット100と撮像素子200との位置関係を示す模式図である。図3(b)に示されるように、レンズユニット100及び撮像素子200は、被写体面、レンズユニット100の主面、撮像素子200の撮像面が1点で交わるように配置される。このような配置により、シャインプルーフの原理から、被写体面上の点A1-A2間の全ての撮影範囲において、撮像面上の対応する点B1-B2間に焦点の合った像を撮影することができる。被写体面上の点A1-A2上のそれぞれからレンズユニット100の主面の中心Oまでの距離をaとする。被写体像が結像する撮像素子200の撮像面上の点B1-B2のそれぞれからレンズユニット100までの距離をbとする。レンズユニット100の焦点距離をfとする。このとき、距離a、距離b、及び焦点距離fは、レンズの公式である以下の式(1)を満たす。
【0037】
ここで、距離bに関して、撮像素子200をレンズユニット100の主面に対して傾ける角度をあおり角度θとする。このとき、撮像面上の点B1-B2の範囲内の全ての点において、距離bをあおり角度θの関数で表すことができる。このため、あおり角度θを決定することにより、焦点距離fで撮像面の各位置に合焦する被写体までの距離aが一意に決定される。
【0038】
図4は、第1実施形態に係る撮像装置10の被写界深度範囲を説明する図である。
【0039】
撮像素子200は、受光素子が周期的に配置された構造を有する。このため、撮像素子200には、受光素子の配置間隔により決定される分解能の上限が存在する。これを許容錯乱円δという。被写体像が1点ではなく許容錯乱円δだけ広がって結像されていても、焦点が合った状態とみなすことができる。すなわち、レンズユニット100から被写体までの距離が距離aからずれていても、焦点が合うように見える。この許容ずれ量を被写界深度dといい、合焦位置から被写界深度d又は被写界深度d以内にある領域を被写界深度範囲とする。図4の斜線ハッチ部分が被写界深度範囲である。撮像装置10は、被写界深度範囲内に被写体が含まれる場合、被写体を適切に撮影できる。被写界深度dは、被写界深度方向に奥側の被写界深度d、被写界深度方向の手前側の被写界深度dとして、それぞれ以下の式(2)、(3)のように表される。
【0040】
式(2)、(3)において、Fnoはレンズユニット100のF値(絞り値)である。aはレンズユニット100と被写体との間の距離である。fはレンズユニット100の焦点距離である。式(2)、(3)によれば、被写界深度dと被写界深度dは、レンズユニット100のF値によって変化することが分かる。ここで、f=100ミリメートル、δ=10マイクロメートル、a=20メートル、及びF値=4のとき、d=約1.74メートルであり、d=約1.48メートルである。これに対して、f=100ミリメートル、δ=10マイクロメートル、a=20メートル、及びF値=2.8のとき、d=約1.19メートルであり、d=約1.06メートルである。このように、焦点距離fと被写体距離aによっても異なるが、およそ実用的な範囲ではF値が小さいほど被写界深度範囲が狭くなることが分かる。
【0041】
ここで、図4の格子ハッチ部分は、撮影途中でF値が小さくなった時の被写界深度範囲を表している。被写体面に位置する被写体(図中の上矢印)は、F値が大きい場合には被写体全体が被写界深度範囲に含まれている。しかし、F値が小さくなることで被写体の一部(図4の上矢印の先端部分)だけが被写界深度範囲から外れてボケてしまい、適切に撮影できなくなってしまう。この事象は、従来のあおり撮影ではない手法での撮影に慣れたユーザーにとって、戸惑いを与えてしまう。しかも、式(2)および(3)で求められる被写界深度dは、あおり角度θによってaが変化するため、適切に設定するためにはまずあおり角度θから再設定を行う必要がある。この再設定はユーザーにとって煩雑な作業となってしまう。
【0042】
ここで、F値を変化させなければ被写界深度範囲は変化しない。逆にF値を大きくすることについては、被写界深度範囲が拡大する方向に変化するため、被写体の一部が見えづらくなるなどの現象は発生しない。そこで、撮影開始時点でのF値を記憶し、記憶したF値を下回ることが無いように制御することで、途中であおり角度θを再設定することなく、撮影開始から被写体を適切に撮影し続けることが可能となる。ここで、ユーザーによって露出モードを変更されると、絞りの値(F値)が変更してしまう可能性がある。そこで、あおり撮影時には、記憶部305に露出モード変更禁止フラグを記憶する。そして、禁止フラグが書き込んである場合には露出モードを変更しないといった制御をすることで、意図しないF値の変更を防ぐことが可能である。
【0043】
図5は、第1実施形態に係る撮像装置10のあおり角度θの設定処理を示すフローチャートである。図5の各処理は、主に信号処理部300の制御部310により実行される。
【0044】
S501で制御部310は、通信制御部303を通して外部装置などからあおり角度情報を受け取り、指示されたあおり角度(ここではθとする)を抽出する。制御部310は、あおり角度θが有効なあおり角度の範囲内にある場合(S501でYes)、処理をS502へ進める。制御部310は、あおり角度θが有効なあおり角度の範囲内にない場合(S501でNo)、処理を終了する。
【0045】
S502で制御部310は、受け取ったあおり角度θと記憶部305に記憶された所定のあおり角度とを比較する。制御部310は、あおり角度θが所定のあおり角度とは異なる場合(S502でYes)、処理をS503へ進める。制御部310は、あおり角度θが所定のあおり角度と一致する場合(S502でNo)、処理を終了する。
【0046】
S503で制御部310は、あおり角度θが予め決められた閾値(例えば0.5度)以上である場合(S503でYes)、処理をS504へ進める。制御部310は、あおり角度θが予め決められた閾値(例えば0.5度)以上ではない場合(S503でNo)、あおり撮影を終了すると判定し、処理をS507に進める。
【0047】
S504で制御部310は、あおり角度θ及びレンズユニット100の現在のF値を、新たなあおり角度及びF値として記憶部305に記憶させる。加えて、制御部310は、現在の露出モードを記憶部305に記憶させる。
【0048】
S505で制御部310は、露出モードを絞り優先モードに変更する。これにより、撮像装置10は、まずF値を優先的に設定し、設定したF値に合わせた露出制御を行う。ここで、絞り優先モードの設定では、あおり角度θを設定する直前のF値を保持するように設定しても良いし、特定のF値を指定しても良い。さらに、F値が、あおり角度θを設定する直前のF値、あるいは特定のF値を下回らない範囲のみに設定されても良い。
【0049】
S506で制御部310は、記憶部305に露出モード禁止フラグを書き込む。これにより、ユーザーによる露出モードの変更を防ぐ。
【0050】
S507で制御部310は、記憶部305の露出モード禁止フラグを消去する。これにより、ユーザーによる露出モードの変更が可能になる。
【0051】
S508で制御部310は、撮像装置10の露出モードを記憶部305に保存された露出モードに設定する。例えば、記憶部305が露出モードを記憶していない場合には、制御部310は、露出モードとして通常モードに設定する。
【0052】
S509で制御部310は、モータ制御部313によりモータ201を駆動し、あおり角度θを設定されたあおり角度θに設定し、処理を終了する。
【0053】
図6は、第1実施形態に係る撮像装置10の露出モードの設定処理を説明するフローチャートである。図6の各処理は、主に信号処理部300の制御部310により実行される。
【0054】
S601で制御部310は、露出モードの設定を、通信制御部303を通して外部から受け取る。あるいは、制御部310は、外部装置などから露出モードの設定を受け取らずに予め記憶部305に保存された露出モード設定を読み出しても良い。
【0055】
S602で制御部310は、記憶部305から露出モード禁止フラグを読み出す。制御部310は、記憶部305に露出モード禁止フラグが存在する場合(S602でYes)、処理をS603へ進める。制御部310は、記憶部305に露出モード禁止フラグが存在しない場合(S602でNo)、処理をS604へ進める。
【0056】
S603で制御部310は、記憶部305から現在のあおり角度θに対応するレンズユニット100のF値を読み出す。制御部310は、撮像装置10の露出モードを、読み出したF値に基づく絞り優先モードに設定する。ここで、制御部310は、絞り優先モードの設定において、あおり角度θを設定する直前のF値を保持するように設定しても良いし、特定のF値を設定しても良い。さらに、制御部310は、あおり角度θを設定する直前のF値、あるいは特定のF値を下回らない範囲のF値のみを設定しても良い。S603の処理が完了した後、露出モードの設定処理を終了する。
【0057】
S604で制御部310は、外部装置などから受信した、あるいは記憶部305から読み出された露出モードを、撮像装置10の露出モードに反映し、処理を終了する。
【0058】
本実施形態によれば、あおり撮影を行う際に、あおり角度の調整を簡易に行いつつ、被写体の焦点が合った撮影を行うことが可能である。
【0059】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0060】
本明細書の開示は、以下の撮像装置、方法、及びプログラムを含む。
(項目1)
撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、
前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された所定の露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定手段と、を備える、
ことを特徴とする撮像装置。
(項目2)
前記第1露出設定は、少なくとも前記撮像光学系の絞りの絞り値、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする項目1に記載の撮像装置。
(項目3)
前記第2露出設定は、少なくとも前記撮像光学系の絞りの絞り値、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする項目1又は2に記載の撮像装置。
(項目4)
前記第1あおり角度に対応する第1露出設定を取得する取得手段をさらに備え、
前記取得手段は、前記第2あおり角度が閾値以上である場合、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定を取得する、
ことを特徴とする項目1から3のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目5)
前記第1露出設定は、前記撮像光学系の絞り値を含み、
前記決定手段は、前記撮像光学系の絞り値を変更せず、かつ前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインを変更した前記第2露出設定を決定する、
ことを特徴とする項目1から4のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目6)
前記決定手段は、前記撮像光学系の絞り値が所定の絞り値を下回らないように、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインを変更した前記第2露出設定を決定する、
ことを特徴とする項目1から5のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目7)
前記決定手段は、前記撮像光学系の絞り値、前記撮像素子のシャッタ時間及びゲインを変更しない前記第2露出設定を決定する、
ことを特徴とする項目1から6のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目8)
前記予め設定された所定の露出設定を取得する取得手段をさらに備え、
前記取得手段は、前記第2あおり角度が閾値以上ではない場合、前記予め設定された所定の露出設定を取得し、
前記決定手段は、前記第2露出設定として、前記予め設定された所定の露出設定を決定する、
ことを特徴とする項目1から7のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目9)
前記第1露出設定と前記第2露出設定は、被写界深度範囲内に被写体が存在する設定である、
ことを特徴とする項目1から8のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目10)
前記決定手段は、前記第2露出設定を決定した後、前記第2露出設定の変更を禁止する設定を行う、
ことを特徴とする項目1から9のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目11)
前記第1あおり角度から前記第2あおり角度への変更を受け付ける受付手段をさらに備える、
ことを特徴とする項目1から10のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目12)
前記受付手段が受け付けた前記第2あおり角度が所定の角度の範囲に存在するか否か、及び、前記第1あおり角度と同一であるか否かを判定する判定手段とをさらに備える、
ことを特徴とする項目11に記載の撮像装置。
(項目13)
前記撮像光学系の絞りを制御する絞り制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする項目1から12のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目14)
前記角度制御手段は、前記決定手段が前記第2露出設定を決定した後、前記第1あおり角度から前記第2あおり角度へ変更する、
ことを特徴とする項目1から13のいずれか一項目に記載の撮像装置。
(項目15)
撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定工程を備える、
ことを特徴とする方法。
(項目16)
前記撮像光学系を介して光を受光する撮像面を有し、撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像面と前記撮像光学系の光軸に直交する平面とのなす角である、あおり角度を制御する角度制御手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記あおり角度として前記角度制御手段によって制御された第1あおり角度から前記第1あおり角度とは異なる第2あおり角度へ変更する場合、前記第2あおり角度に基づいて、前記第1あおり角度に対応する第1露出設定、または、前記第1露出設定以外の予め設定された露出設定を、前記第2あおり角度に対応する第2露出設定として決定する決定工程を備える方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【0061】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0062】
10 撮像装置
100 レンズユニット
102 絞りユニット
200 撮像素子
201 モータ
300 信号処理部
310 制御部
311 レンズユニット制御部
312 撮像素子制御部
313 モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7