(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170152
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】地下構造物予測システム、地下構造物予測方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20241129BHJP
E21D 9/14 20060101ALI20241129BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
E21D11/40
E21D9/14
E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087156
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】青野 泰久
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BA06
2D155LA13
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】解析技術者が不在であっても、解析条件を推定することができ、工程の遅延を低減することができる。
【解決手段】トンネルが施工される地山の変位が計測された結果である地山変位データを取得する地山変位データ取得部と、前記トンネルの内周面に沿って設けられた施工物に作用する応力が計測された結果である応力計測データを取得する応力計測データ取得部と、前記地山の物性を表す物性値を記憶する記憶部と、前記物性値と前記地山の地質を表す地質モデルとを用い、前記地山に生じる変位と支保工に作用する応力を解析する解析モデルによって解析を行う解析部と、前記解析対象の区間について前記解析部によって解析することで得られる前記変位及び前記応力と、前記解析対象の区間について測定されることで得られる前記地山変位データ及び前記応力計測データとに基づいて、前記地山の物性値を更新するデータ同化処理部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルに吹き付けられたコンクリートの内周面を測定することで前記トンネルが施工される地山の変位が計測された結果である地山変位データを取得する地山変位データ取得部と、
前記トンネルの内周面に沿って設けられた施工物に作用する応力が計測された結果である応力計測データを取得する応力計測データ取得部と、
前記地山の物性を表す物性値を記憶する記憶部と、
前記物性値と前記地山の地質を表す地質モデルとを用い、前記地山に生じる変位と支保工に作用する応力を解析する解析モデルによって解析を行う解析部と、
前記解析対象の区間について前記解析部によって解析することで得られる前記変位及び前記応力と、前記解析対象の区間について測定されることで得られる前記地山変位データ及び前記応力計測データとに基づいて、前記地山の物性値を更新するデータ同化処理部
を有する地下構造物予測システム。
【請求項2】
前記地山に対する第1の掘削を行うことで施工された第1区間と、前記第1区間から第2の掘削を行うことで施工された第2区間とがあり、
前記データ同化処理部は、
前記第1区間について解析された解析結果と、前記第2区間について解析された解析結果とに基づいて生成される状態ベクトルと、
前記第1区間について測定されることで得られる前記地山変位データ及び前記応力計測データと、前記第2区間について測定されることで得られる前記地山変位データ及び前記応力計測データとに基づいて生成される観測ベクトルと、
を用いてデータ同化処理をすることで、前記地山の物性値を更新する
請求項1に記載の地下構造物予測システム。
【請求項3】
前記解析部は、
前記更新された後の物性値を用いて、第2区間を起点としてこれから掘削する対象区間について解析を行うことで、前記対象区間における変位及び応力を予測し、
前記地下構造物予測システムは、
前記対象区間について予測された変位及び応力と、変位基準値及び応力基準値との大小関係を把握可能な情報を出力する出力部
を有する請求項1または請求項2に記載の地下構造物予測システム。
【請求項4】
前記解析部は、
解析結果として、前記変位を予測した変位予測値の確率分布と、前記応力を予測した応力予測値の確率分布を得る
請求項3に記載の地下構造物予測システム。
【請求項5】
前記出力部は、
前記変位予測値の確率分布を表すグラフに対して前記変位基準値を表す図形を加えた画像または、前記応力予測値の確率分布を表すグラフに対して前記応力基準値を表す図形を加えた画像を表示画面に表示させる
請求項4に記載の地下構造物予測システム。
【請求項6】
コンピュータに、
トンネルに吹き付けられたコンクリートの内周面を測定することで前記トンネルが施工される地山の変位が計測された結果である地山変位データを取得する地山変位計測データ取得ステップ、
前記トンネルの内周面に沿って設けられた施工物に作用する応力が計測された結果である応力計測データを取得する応力計測データ取得ステップ、
前記地山の物性を表す物性値を記憶する記憶部に記憶された前記物性値と前記地山の地質を表す地質モデルとを用い、前記地山に生じる変位と支保工に作用する応力を解析する解析モデルによって解析を行う解析ステップ、
前記解析対象の区間について前記解析ステップによって解析することで得られる前記変位及び前記応力と、前記解析対象の区間について測定されることで得られる前記地山変位データ及び前記応力計測データとに基づいて、前記地山の物性値を更新するデータ同化処理ステップ
を実行させる地下構造物予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物予測システム、地下構造物予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル、地下発電所などの地下構造物の施工では、施工中の切羽観察や計測工のデータに基づいて、設計の修正を行う情報化施工が採用されている。
特に、山岳トンネルの設計の修正の際には、例えば(1)標準設計、(2)類次条件の設計、(3)解析手法のいずれかが適用される。
(1)の標準設計による手法は、予め地山条件ごとに作成した支保パターンを地山等級に応じて適用するものである。
(2)の類次条件の設計は、過去に行ったトンネルの設計実積を参考に設計するものである。
(3)の解析手法は、標準設計や類次設計が適用できない場合に、解析を用いた手法により地山に生じる変位や支保工に作用する応力に基づいて設計を行うものである。
また、支保工の安定性と妥当性の確認をするために支保工に変位センサを設け、支保工のひずみ計測を行い、リアルタイムに地山挙動予測をする歪み計測システムがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の(3)の解析を適用しようとする場合、次のような問題点がある。
例えば、初期応力の状態や境界条件、岩盤物性など解析条件の設定方法に確立された手法はなく、解析技術者の経験や知識に基づき合理的に設定されているのが現状である。
また、実際の複雑な地山条件と支保工や覆工、さらにはその相互作用をモデル化したうえでの解析をすることから、現実の挙動を十分に再現できない場合もあり、さらに、結果の評価には経験による知見も必要とするなど、高度な技術的解釈が求められる。
以上のように、解析手法を用いて山岳トンネルの設計の修正を行う場合には、解析技術者が、上記の解析条件の設定と、解析結果の評価に手間と時間を要するという問題がある。
また、解析条件の設定と、解析結果の評価に時間を要することから、設計の修正のために施工を中断し、設計の修正結果が得られてから設計の修正内容も考慮しつつ施工を再開する場合は、施工を中断する期間が生じるため、工程の遅延につながる場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、解析技術者が不在であっても、解析条件を推定することができ、工程の遅延を低減することができる地下構造物予測システム、地下構造物予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、トンネルに吹き付けられたコンクリートの内周面を測定することで前記トンネルが施工される地山の変位が計測された結果である地山変位データを取得する地山変位データ取得部と、前記トンネルの内周面に沿って設けられた施工物に作用する応力が計測された結果である応力計測データを取得する応力計測データ取得部と、前記地山の物性を表す物性値を記憶する記憶部と、前記物性値と前記地山の地質を表す地質モデルとを用い、前記地山に生じる変位と支保工に作用する応力を解析する解析モデルによって解析を行う解析部と、前記解析対象の区間について前記解析部によって解析することで得られる前記変位及び前記応力と、前記解析対象の区間について測定されることで得られる前記地山変位データ及び前記応力計測データとに基づいて、前記地山の物性値を更新するデータ同化処理部を有する地下構造物予測システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、コンピュータに、トンネルに吹き付けられたコンクリートの内周面を測定することで前記トンネルが施工される地山の変位が計測された結果である地山変位データを取得する地山変位計測データ取得ステップ、前記トンネルの内周面に沿って設けられた施工物に作用する応力が計測された結果である応力計測データを取得する応力計測データ取得ステップ、前記地山の物性を表す物性値を記憶する記憶部に記憶された前記物性値と前記地山の地質を表す地質モデルとを用い、前記地山に生じる変位と支保工に作用する応力を解析する解析モデルによって解析を行う解析ステップ、前記解析対象の区間について前記解析ステップによって解析することで得られる前記変位及び前記応力と、前記解析対象の区間について測定されることで得られる前記地山変位データ及び前記応力計測データとに基づいて、前記地山の物性値を更新するデータ同化処理ステップを実行させる地下構造物予測方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、解析技術者が不在であっても、解析条件を推定することができ、工程の遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の一実施形態による地下構造物予測システムSの構成を示す概略構成図である。
【
図2】地下構造物予測システムSのデータフローを示す図である。
【
図3】解析用コンピュータ20の機能について説明する概略ブロック図である。
【
図4】地下構造物予測システムSの動作を説明するフローチャートである。
【
図6】双子実験を行う実施手順を示すフローチャートである。
【
図7】円形断面の素堀のトンネルの掘削を模擬した解析モデルの一例を示す図である。
【
図8】データ同化で更新前と更新後の地山のヤング率を示すグラフである。
【
図9】天端の観測点のz軸方向の変位の正解値、アンサンブルの予測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による地下構造物予測システムSについて図面を参照して説明する。
本実施形態における地下構造物予測システムSは、前述した課題に対し、データ同化を組み込んだ掘削解析により、地山の物性の同定、地山に生じる変位と支保工に作用する応力の予測を行うシステムである。一般的に、計算モデルは実現象に対して理想化・簡略化された偏微分方程式、初期・境界条件、構成式などの数学モデルに基づき構築されているだけでなく、離散化誤差や丸め誤差等も含んでいるため、実現象を完璧に再現することは困難である。これに対し、地下構造物予測システムSは、データ同化を行うことで、計算モデルのもつ誤差を考慮し、シミュレーションの実行中に観測データを活用して、計算モデルを修正し、解析・予測の性能を向上させることが可能である。
この実施形態では、山岳トンネルの施工を対象として、施工を進めた時に地山に生じる変位、支保工に作用する応力の予測を行う場合について説明する。ここでデータ同化手法には、逐次型データ同化手法の、アンサンブルベースのデータ同化手法であるアンサンブルカルマンフィルターを用いる場合を例に説明する。
【0011】
図1は、この発明の一実施形態による地下構造物予測システムSの構成を示す概略構成図である。
地下構造物予測システムSは、例えば、山岳トンネルを施工する施工現場において用いられる。
図1では、山岳トンネルにおける切羽Kの近傍について図示されている。
山岳が掘削されたトンネルにおいて、路盤RB以外の内周面には、吹き付けコンクリートSCと鋼製支保工SRとが施工される。鋼製支保工SRは、トンネルの掘削方向に対して所定の間隔を開けて複数施工される。
【0012】
《構成機器と役割》
地下構造物予測システムSは、プリズムP、トータルステーションTS、ひずみゲージSG、コンクリート応力計SM、計測用コンピュータ10、データロガーDL、ルータRT、解析用コンピュータ20を含む。
【0013】
〈地山の変位計測〉
プリズムPは、吹付けコンクリートSCに対して複数取り付けられる。例えば、プリズムPは、トンネル内周の周方向に沿って設けられてもよい。
トータルステーションTSは、計測時において路盤RB上に設置され、プリズムPに対して光を反射し、当該プリズムPから反射した光を受光することで距離を測定する。この距離の測定は、各プリズムPを対象として行われる。トータルステーションTSは、測定結果を計測用コンピュータ10に出力する。計測用コンピュータ10は、トータルステーションTSから得られる計測に基づいて、地山の変位を計測する。
【0014】
〈応力の計測〉
ひずみゲージSGは、鋼製支保工SRの長手方向に沿って貼り付けられる。ひずみゲージSGは、鋼製支保工SRのひずみを計測する。
コンクリート応力計SMは、地山と吹付けコンクリートSCとの間に設置されるか、吹付コンクリートSCの中に埋め込まれる。例えば、コンクリート応力計SMは、地山に取り付けられた後、吹付けコンクリートで覆われる。コンクリート応力計SMは、コンクリートの応力を計測する。
データロガーDLは、ひずみゲージSGによって計測された結果をひずみゲージSGから取得して蓄積し、コンクリート応力計SMによって計測された結果をコンクリート応力計SMから取得し蓄積し、蓄積されたこれらの測定結果を計測用コンピュータ10に出力する。これにより、計測用コンピュータ10は、ひずみゲージSGによって計測された測定結果と、コンクリート応力計SMによって計測された測定結果とを収集し、記憶することができる。また、計測用コンピュータ10は、ひずみゲージSGによって計測された測定結果と、コンクリート応力計SMによって計測された測定結果とに基づいて、山岳トンネルの施工により生じる鋼製支保工SRに作用する応力を計測する。
【0015】
〈データの通信〉
ルータRTは、計測用コンピュータ10によって計測された地山の変位を表すデータと、鋼製支保工SRに作用している応力を表すデータと、計測用コンピュータ10から受信し、解析用コンピュータ20に対して無線によって送信する。
【0016】
〈データの解析〉
解析用コンピュータ20は、山岳トンネルを施工する施工現場の近傍に設置された事務所に設けられる。解析用コンピュータ20は、掘削解析プログラムとデータ同化プログラムとがインストールされており、掘削解析処理と,掘削解析によって得られた予測結果と計測データとを用いたデータ同化処理、予測解析を行う予測解析処理とを行う。解析用コンピュータ20は、表示装置が接続されており、各種処理の結果を表示する。
【0017】
〈本システムのデータフロー〉
図2は、地下構造物予測システムSのデータフローを示す図である。
地下構造物予測システムSは、大きく分けて計測データ収集部1、解析部2、予測結果表示部3によって構成される。計測データ収集部1は、山岳トンネルの施工現場に設置された各計測機器(プリズムP、トータルステーションTS、ひずみゲージSG、コンクリート応力計SM等)、計測データを事務所のPCに転送するために用いられる装置(データロガーDL、ルータRT)などを含む。
解析部2は、計測データ収集部1から計測データを取得して解析処理、予測処理等を行い、解析結果や予測結果を予測結果表示部3に出力する。予測結果表示部3は、例えば表示装置であり、各種データを表示する。解析部2と予測結果表示部3は、解析用コンピュータ20によって実現される。
【0018】
《解析用コンピュータ》
図3は、解析用コンピュータ20の機能について説明する概略ブロック図である。
解析用コンピュータ20は、通信部201、記憶部202、地山変位データ取得部203、応力計測データ取得部204、解析部205、データ同化処理部206、制御部207、出力部208を有する。
通信部201は、ルータRTに無線によって接続され、ルータRTと通信を行う。
記憶部202は、各種データを記憶する。例えば、記憶部202は、計測用コンピュータ10から取得した各種計測データを記憶する。
また、記憶部202は、トンネルが施工される対象の地山の物性を表す地質モデルの物性値を記憶する。
記憶部202は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部202は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0019】
地山変位データ取得部203は、トンネルに吹き付けられたコンクリートの内周面を測定することでトンネルが施工される地山の変位が計測された結果である地山変位データを、計測用コンピュータ10から、ルータRTと通信部201を介して取得する。
応力計測データ取得部204は、トンネルの内周面に沿って設けられた施工物(例えば、吹付コンクリートSC、鋼製支保工SR)に作用する応力が計測された結果である応力計測データを、計測用コンピュータ10から、ルータRTと通信部201を介して取得する。
【0020】
解析部205は、物性値と地山の地質を表す地質モデルとを用い、地山に生じる変位と支保工に作用する応力を解析する解析モデルによって解析を行う。
解析モデルは、山岳トンネルの掘削を模擬したモデルであって、観測データが得られる観測点の位置に対応する解析モデルの節点の変位や、要素に作用している応力などを計算するためのモデルである。例えば、解析モデルは、地質モデルに対する解析メッシュを付与し、地質モデルにおける各岩盤に対して各種パラメータが割り当てられたモデルである。
地質モデルは、例えば、施工対象の山岳のトンネルを掘削する際の地山の地質構造を表す3次元地質モデルである。地質モデルは、施工対象のトンネルを掘削する地山について地質調査を行った結果等を利用して作成されてもよい。3次元地質モデルには例えば複数の地層を表すモデルが含まれており、各地層に相当する要素には、物性値(各種パラメータ)が割り当てられる。各種パラメータには、地山のヤング率、ポアソン比、密度、粘着力、内部摩擦角などの物性値がある。このような物性値は、記憶部202に記憶される。
【0021】
解析部205は、既に施工された区間を対象として解析を行うことができるが、これから掘削する対象区間について解析を行うことで、予測する対象の区間である対象区間における変位及び応力を予測する。解析部205は、予測する場合、後述するデータ同化処理部206によって更新された後の物性値を用いて、直近の施工区間(例えば後述する第2区間)を起点として予測を行う。
解析部205は、解析結果として、前記変位を予測した変位予測値の確率分布と、前記応力を予測した応力予測値の確率分布を得る。
【0022】
データ同化処理部206は、解析対象の区間について解析部205によって解析することで得られる変位及び応力と、解析対象の区間について測定されることで得られる地山変位データ及び応力計測データとに基づいて、地山の物性値を更新する。
また、データ同化処理部206は、第1区間について解析された解析結果と、第2区間について解析された解析結果とに基づいて生成される状態ベクトルと、第1区間について測定されることで得られる地山変位データ及び応力計測データと、第2区間について測定されることで得られる地山変位データ及び応力計測データとに基づいて生成される観測ベクトルと、を用いてデータ同化処理をすることで、記憶部202に記憶された地山の物性値を更新する。
第1区間は、地山に対する第1の掘削を行うことで施工された区間である。第2区間は、第1区間から第2の掘削を行うことで施工された区間である。第1区間と第2区間は連続した区間である場合について説明するが、後述する予測結果の確率分布を求めることが可能であれば、必ずしも連続した区間でなくてもよい。
【0023】
制御部207は、解析用コンピュータ20の各部を制御する。
【0024】
出力部208は、対象区間について予測された変位及び応力と、変位基準値及び応力基準値との大小関係を把握可能な情報を出力する。
出力部208は、変位予測値の確率分布を表すグラフに対して変位基準値を表す図形を加えた画像または、応力予測値の確率分布を表すグラフに対して応力基準値を表す図形を加えた画像を表示画面に表示させる。
【0025】
解析用コンピュータ20の通信部201、地山変位データ取得部203、応力計測データ取得部204、解析部205、データ同化処理部206、制御部207、出力部208は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0026】
《実施手順》
図4は、地下構造物予測システムSの動作を説明するフローチャートである。
(処理ステップS1)
解析用コンピュータ20の解析部205が、施工ステップ0からnの掘削を想定した掘削解析を行う。1つの施工ステップは、トンネルの坑口から延伸方向に向かう1つの区間について掘削をして吹付コンクリートSCと鋼製支保工SRを施工する1つの工程である。
解析部205は、データ同化手法としてアンサンブルカルマンフィルターを用いる場合、掘削解析で扱うパラメータの不確かさを考慮し、パラメータを変化させた複数の予測モデル(アンサンブル)を用いて掘削解析を行う。なお、ここで言及しているパラメータとは、地山のヤング率、ポアソン比、密度、粘着力、内部摩擦角などの物性値が該当する。
【0027】
(処理ステップS2)
1つの区画について、山岳トンネルの地山の掘削、鋼製支保工や吹付けコンクリートなどの支保工の施工を行う。
【0028】
(処理ステップS3)
施工ステップn-1、nにおける地山の変位と支保工に作用している応力とを計測する。地山の変位の計測には、計測用コンピュータ10、トータルステーションTS、プリズムPを用いる。支保工に作用する応力の計測には、計測用コンピュータ10、ひずみゲージSG、コンクリート応力計SM、データロガーDLを用いる。ひずみゲージSGは、鋼製支保工SRのひずみを計測し、計測結果をデータロガーDLに出力する。コンクリート応力計SMは、吹付けコンクリートの応力を計測する。
変位と応力のそれぞれの計測データは、計測用コンピュータ10に保存された後、ルータRTを介して、解析用コンピュータ20に転送される。
【0029】
(処理ステップS4)
解析用コンピュータ20は、計測用コンピュータ10から測定データを受信すると、データ同化処理部206は、施工ステップn-1,nの掘削解析の結果から状態ベクトルの生成をし、施工ステップn-1、nの計測データから観測ベクトルの生成を行う。
状態ベクトルは、地山の物性値、施工ステップn-1からnに生じた観測点の位置に対応する解析モデルの節点の変位の増分,要素の応力の増分で構成される。状態ベクトルはアンサンブルの数だけ存在する。
観測ベクトルは、施工ステップn-1からnに生じた観測点の地山の変位の増分、支保工の応力の増分で構成される。
そして、データ同化処理部206は、状態ベクトルと観測ベクトルのデータ同化を実施し、各状態ベクトルの地山の物性値を更新する。例えば、観測データのもつ分散共分散と,アンサンブルの状態ベクトルから計算した分散共分散からカルマンゲインを計算し,アンサンブルの状態ベクトルを構成する地質モデルの物性値を更新する。
【0030】
(処理ステップQ1)
解析用コンピュータ20の制御部207は、山岳トンネルの施工が完了したか否かを判定し、施工が完了した場合(処理ステップQ1-YES)には処理を終了し、施工が完了していない場合(処理ステップQ1-NO)には、処理を処理ステップS5に移行する。
【0031】
(処理ステップS5)
解析用コンピュータ20の解析部205は、更新した地山の物性値を掘削前の解析モデルに付与し、施工ステップ0からn+1までの掘削解析を行い、施工ステップn+1における区間について施工を進めた際に生じる地山の変位、支保工に作用する応力を予測する。
ここでは、例えば、施工ステップnに対応する区間(例えば第2区間)まで施工がなされており、この区間を起点として、これから山岳を掘削し吹付コンクリートSCと鋼製支保工SRの施工を行う施工ステップが施工ステップn+1である。解析部205は、これから掘削をする区間を対象として施工を進めた際に生じる地山の変位、鋼製支保工SRに作用する応力を予測する。
【0032】
ここでは、パラメータの不確かさを考慮して数値解析を行うため,予測結果として確率分布が得られる。
図5は、予測結果の確率分布の一例を示す図である。出力部208は、解析部205によって予測結果が求められると、予測結果を解析用コンピュータ20の表示画面に表示させることで出力をする。出力部208は、例えば、
図5に示すような、予測結果としての確率分布を表示画面に表示させる。出力部208は、地山の変位の予測値、鋼製支保工に作用する応力の予測値、吹付コンクリートに作用する応力の予測値、のそれぞれについて、確率分布をグラフ上に表示させる。より具体的に、地山の変位の予測値については、グラフの横軸が坑口を起点として掘削される距離を表し、縦軸は変位の予測値を表している。また、縦軸には、変位基準値(管理基準値)が表示される。変位基準値は、山岳トンネルの施工における解析技術者によって予め入力される値である。そして横軸には、現在の切羽の位置に応じた坑口からの距離を示すグラフ上の位置に確率分布をグラフによって表示する。この図では、確率分布によって示される各値は、変位基準値を越えない範囲において分布していることが示されている。また、坑口から切羽の位置まで区間における地山の変位の予測値の最小値と最大値が出力される。ここでは、切羽の位置において、確率分布が、地山の変位の予測値の最小値と最大値の間に収まっている。
このように、予測結果が画面上に表示されるため、予測結果の解釈がしやすく、解析技術者が不在であったとしても、変位基準値、確率分布、予測値の最小値及び最大値等を手がかりに、予測結果の解釈をすることができる。
【0033】
鋼製支保工に作用する応力の予測値についても、地山の変位の予測値と概ね同様であるが、縦軸が応力の予測値を表している点が異なる。この図において、鋼製支保工に作用する応力の予測値である確率分布は、解析技術者によって予め設定された応力基準値(管理基準値)を越えている。この場合、この表示内容を確認した担当者(解析技術者、設計担当者等)は、トンネルの設計の修正の必要性の検討をすることができる。
【0034】
吹付コンクリートに作用する応力の予測値についても、地山の変位の予測値と概ね同様であるが、縦軸が吹付コンクリートに作用する応力の予測値を表している点が異なる。この図において、吹付コンクリートに作用する応力の予測値である確率分布の一部について、解析技術者によって予め設定された応力基準値(管理基準値)を越えている。この場合、この表示内容を確認した担当者(解析技術者、設計担当者等)は、トンネルの設計の修正の必要性の検討をすることができる。
【0035】
また、ここでは、地山御変位の予測値と、鋼製支保工に作用する応力の予測値と、吹付コンクリートに作用する応力の予測値とが並べて画面上に表示されるため、これら3つの予測結果の関係性も考慮して、トンネルの設計の修正の必要性の検討をすることもできる。
【0036】
(処理ステップQ2)
処理ステップS5の後、解析用コンピュータ20の制御部207は、予測解析の結果から設計,施工方法の見直しが必要かの判定を行う。
例えば、制御部207は、任意の数のアンサンブルの予測結果が示す地山の変位、支保工の応力が管理基準値を超えているか否か、アンサンブルの予測結果の平均値が管理基準値を超えているか否かなどを基準に判定を行う。制御部207は、アンサンブルの予測結果が示す地山の変位または支保工の応力が管理基準値を超えている場合、あるいは、アンサンブルの予測結果の平均値が管理基準値を超えている場合には、設計、施工方法の見直しが必要であると判定し(処理ステップQ2-YES)、処理を処理ステップS6に移行する。一方、制御部207は、アンサンブルの予測結果が示す地山の変位または支保工の応力が管理基準値を超えていない場合、アンサンブルの予測結果の平均値が管理基準値を超えていない場合には、設計、施工方法の見直しが不要であると判定し(処理ステップQ2-NO)、処理を処理ステップS2に移行する。
【0037】
(処理ステップS6)
解析用コンピュータ20の解析部205は、データ同化により更新された地山の物性値を用いて、支保パターン、施工方法を変えた場合の予測解析を行う。
【0038】
(処理ステップS7)
解析技術者は、処理ステップS6にて実行した予測解析をした予測結果に基づき、設計、施工方法の変更を行う。例えば、任意の数のアンサンブルの予測結果が示す地山の変位が管理基準値を越えているか否か、任意の数のアンサンブルの予測結果が示す支保の応力が管理基準値を超えているか否か、アンサンブルの予測結果の平均値が管理基準値を超えているか否か、経済的な設計であるか、経済的な施工方法であるかなどを基準に変更内容を検討・判断を行う。
解析技術者によって設計、施工方法の見直しが行われた後、制御部207は、処理を処理ステップS2に移行させる。そして、設計、施工方法の変更がされた後の設計、施工方法にて施工が行われる。
【0039】
この後、データ同化処理部206は、処理ステップQ2において設計,施工方法の見直しが不要であると判定された場合(見直しがなかった場合)には、その後のデータ同化には、処理ステップS3で得られた計測データから作成した観測ベクトルと、処理ステップS5で得られた解析結果から作成した状態ベクトルを使用する。
また、データ同化処理部206は、処理ステップQ2において設計、施工方法の見直しが必要であると判定された場合(見直しがあった場合)には、その後のデータ同化には、処理ステップS3で得られた計測データから作成した観測ベクトルと、処理ステップS6で得られた解析結果から作成した状態ベクトルを使用する。
【0040】
〈効果〉
上述した実施形態によれば、現場で観測された地山の変位、支保工の応力などのデータと、複数の異なる条件で順解析して予測した地山の変位、支保工の応力のデータを同化して、順解析で使用した解析モデルの地山の物性などを更新、推定することができる。これにより、パラメータの不確かさを考慮して数値解析を行うことで、予測結果の確率分布が得られるため、予測結果の解釈がしやすく、解析担当技術者が不在でも予測結果を判断することができる。
【0041】
また、山岳トンネルの施工において数値解析を行い設計、施工方法の変更を行う際に、(a)解析技術者が解析条件の設定,解析結果の評価に手間と時間を要しているという問題、(b)設計、施工方法の修正のために施工を中断している場合は、工程の遅延につながるという問題に対し、上述した地下構造物予測システムSによれば、以下の効果が得られる。
解析技術者が不在であったとしても、データ同化により解析条件(地山の物性,初期応力など)の推定が可能である。
また、解析結果として確率分布が得られるため、解析技術者が不在であったとしても、解析結果の評価がしやすい。
また、統計数理的手法により解析モデルを更新し、地山の挙動の予測性能を向上させることができ、解析条件の設定にかかる時間と手間を削減することができ、解析結果の評価を行うことができるため、施工を中断する期間を短縮することができる。
【0042】
なお、上述した実施形態では、計測データとして地山の変位、支保工に作用する応力の両方を用いてデータ同化をする場合を例に説明したが、どちらか一方の計測データをデータ同化に使用してもよい。
また、上述した実施形態では、地下構造物予測システムSが、山岳トンネルの施工を対象とする場合について説明したが,地下構造物であれば、山岳トンネルに限定されるものではなく、例えば、地下発電所などの大規模地下空洞の施工にも適用可能である。
【0043】
また、上述した実施形態によれば、施工ステップn-1からnにおける地山の変位、支保工に作用している応力の増分をデータ同化に使用する例を説明したが、これに限定されるものではなく、任意の施工ステップからの増分をデータ同化に使用してもよく、また、計測を開始してからの累積の変位、応力をデータ同化に使用してもよい。
【0044】
〈発明考案の根拠〉
素堀のトンネルの施工を模擬した双子実験を行った。この双子実験では、データ同化を組み合わせた掘削解析により、地山のヤング率を同定し、施工を進めた時に生じる地山の変位の予測性能が向上することを確認することができた。
ここでいう双子実験とは、正解の条件を設定した解析モデルにより計算した結果を計測データと考え、正解と異なる条件の解析モデルに計測データを逐次データ同化させる実験方法である。双子実験を行うことにより、通常では知りえない真の値がわかるため、取得する情報に応じてデータ同化により正解の条件の同定が可能か否かの検証に用いることができる。
【0045】
〈双子実験の実施手順〉
図6は、双子実験を行う実施手順を示すフローチャートである。
(処理ステップS11)
解析部205が、正解とは異なる地山のヤング率の解析モデルであるアンサンブルを用いて、施工ステップ0からnの掘削を想定した掘削解析を行った。
(処理ステップS12)
解析部205が、正解の地山のヤング率の解析モデルを用いて、施工ステップ0からnの掘削を想定した掘削解析を行った。
【0046】
(処理ステップS13)
処理ステップS13では、データ同化処理部206は、施工ステップn-1、nの掘削解析の結果から状態ベクトルを生成し、施工ステップn-1、nの計測データから観測ベクトルの生成をした。
状態ベクトルは、地山の物性値と、施工ステップn-1からnに生じた観測点の位置に対応する解析モデルの節点の変位の増分とで構成される。状態ベクトルは、アンサンブルの数だけ存在する。観測ベクトルは、施工ステップn-1からnに生じた観測点の地山の変位の増分で構成される。
次に、データ同化処理部206が、状態ベクトルと観測ベクトルのデータ同化により、状態ベクトルの地山のヤング率を更新した。
【0047】
(処理ステップQ11)
処理ステップS13の後、双子実験の対象の区間のトンネルの施工が完了しているか否かの判定を行い、施工が完了している場合(処理ステップQ11-YES)は、処理を終了し、施工が完了していない場合(処理ステップQ11-NO)は、処理を処理ステップS14に移行する。
【0048】
(処理ステップS14)
処理ステップS13におけるデータ同化の処理によって更新された地山のヤング率を掘削前の解析モデルに付与し、施工ステップ0からn+1の掘削解析を行い、掘削により生じる地山の変位を予測した。
処理ステップS14の実施後は、処理ステップS12に処理を移行し、正解の地山のヤング率の解析モデルを用いて、施工ステップn+1に対応する区間についての掘削を行い、処理ステップS13に処理を移行する。この処理ステップS13のデータ同化では、処理ステップS12において得られた解析結果から作成した観測ベクトルと、処理ステップS14で得られた解析結果から作成した状態ベクトルを使用した。
【0049】
〈解析モデル〉
図7に示す円形断面の素堀のトンネルの掘削を模擬した解析モデルを使用し、双子実験を行った。
数値解析には、商用ソフトウェアであるFLAC3Dを使用した。均質な地山を仮定し、構成則は線形弾性とした。トンネルの直径Dは10mであり、解析領域は、対称性を考慮して1/4の領域とした。解析領域は、トンネル横断方向(x)に25m、トンネル縦断方向(y)に30m、鉛直方向(z)に25mであり、解析モデルの節点数は約800、要素数は約700である。
【0050】
正解の地山のヤング率Eは50MPaとした。予測モデル(アンサンブル)のEの取りうる範囲は、下記の参考文献1の統計量に基づき、47.25≦E≦57.75とし、一様乱数を発生させて解析モデルに付与した。
〈参考文献1〉山口梅太郎、岩石の一軸圧縮強度とヤング率の関係について、材料、17巻、181号、pp.902-907,1968
【0051】
正解モデル、予測モデルともに変位の観測点は、TD(Tunnel Distance)0mから6mごとのトンネルの断面の天端と側壁に設け、2m掘削する前と後の各観測点のx,y,z軸方向の3成分の絶対変位から相対変位を計算し、データ同化に使用した。
本双子実験では、切羽を2m掘削するたびにデータ同化を行い、地山のヤング率を更新し、未掘削箇所を掘削した場合に生じる地山の変位を予測した。
【0052】
〈双子実験の結果〉
図8は、データ同化で更新前(事前分布)と更新後(事後分布)の地山のヤング率を示すグラフであり、
図9は、TD(Tunnel Distance)0mの天端の観測点のz軸方向の変位の正解値、アンサンブルの予測結果を示す。
【0053】
図8の縦軸は地山のヤング率,横軸は切羽のTDである.シンボルの視認性を向上させるために,事前分布と事後分布が重ならないようにシンボルを配置している.
図9の縦軸はTD0mの天端の観測点のz軸方向変位,横軸は切羽のTDである.
図9の右側のグラフは左のグラフのスケールを変えたものであり,切羽の位置がTD14mのときのz軸方向変位の度数分布を示している。
【0054】
図8に示すように、データ同化によりEの事後分布は、切羽の位置が進むにつれて、事前分布に対するばらつきが小さくなり,また,
図9においてデータ同化を行う前の変位の予測結果に対し、データ同化を行った後の変位の予測結果のばらつきは小さくなった。
この結果から、模擬観測値を扱う双子実験において、データ同化により未掘削箇所を掘削した場合に生じる地山の変位の予測性能が向上することを確認できた。
【0055】
《他の技術との比較1》
トンネル施工時の逆解析手法としては、下記の参考文献2による報告が挙げられるが、トンネル施工時の地山の変位から、地山の変形係数と応力の比を推定する手法であり、それぞれの情報を独立に求めることはできない。
〈参考文献2〉櫻井春輔、武内邦文、「トンネル掘削時における変位計測結果の逆解析法」、土木学会論文報告集、1983
一方、本実施形態によれば、トンネル施工時の地山の変位から、地山の物性を推定することができる。
【0056】
《他の技術との比較2》
計測工における地山の変位計測を活用した先行技術の例として、山岳トンネルの施工において、変位計測から求めた変位速度に基づいて最終変位量を予測する方法(特開2021-188994)、対策工の変状抑制効果を予測する方法と装置(特開2020-200648)、ボーリング孔の孔径変位の時系列変化からクリープ解析に用いるパラメータを設定し、クリープ解析を行う方法、システム(特開2020-66843)などが挙げられる。これらの技術は、得られた計測値から将来を予測する決定論的手法であり、予測結果の信頼性は提示することができない。
一方、本実施形態によれば、確率論的手法であるデータ同化を活用するシステムであり、地山の物性や地質構造、解析モデルなどの不確かさを扱うため、信頼性付きの予測結果が出力され、予測結果の評価がしやすいという利点がある。
【0057】
上述した実施形態における解析用コンピュータ20の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0058】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…計測データ収集部、2…解析部、3…予測結果表示部、10…計測用コンピュータ、20…解析用コンピュータ、201…通信部、202…記憶部、203…地山変位データ取得部、204…応力計測データ取得部、205…解析部、206…データ同化処理部、207…制御部、208…出力部、S…地下構造物予測システム