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特開2024-170155自転車前カゴ用取付具及びこれを用いた取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170155
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】自転車前カゴ用取付具及びこれを用いた取付方法
(51)【国際特許分類】
   B62J 9/27 20200101AFI20241129BHJP
   B62J 9/21 20200101ALI20241129BHJP
【FI】
B62J9/27
B62J9/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087159
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】502109371
【氏名又は名称】株式会社あさひ
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】梁 眞榮
(57)【要約】
【課題】 前カゴを簡易かつ迅速にカゴブラケットに取り付けることができ、大きな力を必要とせず作業効率を大幅に向上することができるカゴブラケットへの取付具及び取付方法を提供する。
【解決手段】 自転車1の前カゴ2の背面部に取り付けられた受材20と、前記受材20に挿入する差込スロット30と、を有し、立ち上がる壁部12を有するカゴブラケット10に取付可能にする自転車前カゴ用取付具及び取付方法であって、前記受材20は、一方に配されるスロット挿入口26aから前記差込スロット30を内部に挿入可能とするスロット挿入空間26bと、他方に配される壁部挿入口27aから挿入済みの前記差込スロット30との間に前記壁部12を挿入可能とする壁部挿入空間27bと、を有し、前記差込スロット30は肉厚部37と、垂下して前記壁部12を支持する爪片35を有することを特徴とする自転車前カゴ用取付具及び取付方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の前カゴの背面部に取り付けられた受材と、前記受材に挿入する差込スロットと、を有し、立ち上がる壁部を有するカゴブラケットに取付可能にする自転車前カゴ用取付具であって、
前記受材は、一方に配されるスロット挿入口から前記差込スロットを内部に挿入可能とするスロット挿入空間と、他方に配される壁部挿入口から挿入済みの前記差込スロットとの間に前記壁部を挿入可能とする壁部挿入空間と、を有し、
前記差込スロットは肉厚部と、垂下して前記壁部を支持する爪片を有することを特徴とする自転車前カゴ用取付具。
【請求項2】
差込スロットは受材の挿入状態を固定するための凸状の係合部を有し、前記受材は前記係合部と係合する凹状の被係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の自転車前カゴ用取付具。
【請求項3】
受材は、差込スロットの凸状の係合部を挿入するための傾斜部と、前記差込スロットの天板を支持するための天板支持部を有することを特徴とする請求項2に記載の自転車前カゴ用取付具。
【請求項4】
差込スロットは、垂下する爪片が肉厚部の上下方向に比して下方に向かって後方に傾斜することを特徴とする請求項1、2または3のいずれか一項に記載の自転車前カゴ用取付具。
【請求項5】
自転車の前カゴの背面部に取り付けられた受材を、立ち上がる壁部を有するカゴブラケットに取り付ける前カゴの取付方法であって、
前記受材に上方に形成されたスロット挿入口から前記受材内部のスロット挿入空間に肉厚部と垂下する爪片を有する差込スロットを挿入し、
前記受材の下方に形成された壁部挿入口から前記受材内部であって挿入済みの前記差込スロットとの間の壁部挿入空間に前記壁部を挿入することで前記カゴブラケットと前記受材とを固定することを特徴とする自転車前カゴ用取付具を用いた取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用の前カゴを自転車のカゴブラケットに装着するための取付具であって、前カゴの背面側を取り付けるものに関する。また、本発明は自転車前カゴ用の取付具を用いた前カゴの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自転車製造は主に海外でなされており、コンテナで大量に輸入されるところ、自転車を一定スペースに可能な限り挿入するため、自転車と前カゴとを外した状態で輸入される。そのため、輸入後に大量の自転車に一つ一つ前カゴの底部材にボルト止めを行って、装着しており、極めて作業効率が悪かった。この場合に大量の自転車に対して容易かつ迅速に取り付けることができる取付具及び取付方法が求められていた。
【0003】
従来の自転車用前カゴの取付具は、前カゴ取付用のT字状のカゴブラケットにネジ止めすることで取り付けるものが多かった。他にも特許文献1に示すように、カゴブラケットへ着脱可能にするステーに前カゴ支持プレートを配して前カゴを下方から支持するものが多かった。これらの自転車用前カゴの装着は、着脱を容易にしたり、別用途のバスケットやケースに転用できるものが多く、装着の容易・迅速性を追求したものは乏しかった。そこで、カゴブラケットとの取付を容易・迅速に行うことができる取付具が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3043158号公報
【0005】
本願出願人は、未公開先行出願として特願2021-194445号を出願している。当該内容において受材にカゴブラケットを挿入した状態で差込スロットを差し込んで楔のように固定する取付具及び取付方法についても研究を重ねていたが、かかる手法では壁部が既に挿入された状態で差込スロットを楔のように挿入するため大きな力が必要となることがあった。出願人は大量の自転車の前カゴを容易かつ迅速に取り付けることができる取付具及び取付方法について研究開発を重ね、取付時により大きな力を必要とせず、より簡易及び迅速に取付けが可能となるものが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、前カゴを簡易及び迅速に取付けが可能となる作業効率を大幅に向上することができるカゴブラケットへの取付具及び取付方法を提供することを目的とする。さらに、作業効率を大幅に向上するために、大きな力を必要とせずにスムーズに取付けが可能となる取付具及び取付方法を提供することも目的としている。また、併せて位置ずれが起こり難い取付具及び取付方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前カゴ用取付具は、自転車の前カゴの背面部に取り付けられた受材と、前記受材に挿入する差込スロットと、を有し、立ち上がる壁部を有するカゴブラケットに取付可能にする自転車前カゴ用取付具であって、前記受材は、一方に配されるスロット挿入口から前記差込スロットを内部に挿入可能とするスロット挿入空間と、他方に配される壁部挿入口から挿入済みの前記差込スロットとの間に前記壁部を挿入可能とする壁部挿入空間と、を有し、前記差込スロットは肉厚部と、垂下して前記壁部を支持する爪片を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、差込スロットは受材の挿入状態を固定するための凸状の係合部を有し、前記受材は前記係合部と係合する凹状の被係合部を有することが好ましい。
【0009】
また、受材は、差込スロットの凸状の係合部を挿入するための傾斜部と、前記差込スロットの天板を支持するための天板支持部を有することが好ましい。
【0010】
また、差込スロットは、垂下する爪片が肉厚部の上下方向に比して下方に向かって後方に傾斜することが好ましい。
【0011】
また、本発明の取付具を用いた自転車用前カゴ取付方法は、自転車の前カゴの背面部に取り付けられた受材を、立ち上がる壁部を有するカゴブラケットに取り付ける前カゴの取付方法であって、前記受材に上方に形成されたスロット挿入口から前記受材内部のスロット挿入空間に肉厚部と垂下する爪片を有する差込スロットを挿入し、前記受材の下方に形成された壁部挿入口から前記受材内部であって挿入済みの前記差込スロットとの間の壁部挿入空間に前記壁部を挿入することで前記カゴブラケットと前記受材とを固定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明により、受材に差込スロットを挿入したうえでカゴブラケットを挿入することで固定することができ、肉厚部と爪片により上下及び前後方向に位置ずれしないように固定することが可能となる。前カゴへの受材の取付は製造工場で行うことが可能であり、輸送・輸入・搬送時に前カゴを外していた場合でもビスを使わずに容易かつ迅速に前カゴを取り付けることが可能になり、特に大量の自転車の搬送を受けて前カゴを取り付ける場合に工程時間を大幅に短縮することが可能になる。
【0013】
さらに言うと、受材に差込スロットを挿入した状態でカゴブラケットを挿入することで固定できるところ、取付作業者がカゴを手に持ち、一方からカゴを押し付けることで壁部挿入空間にカゴブラケットの壁部を挿入することができ、省力で取付作業を行うことが可能となった。
【0014】
請求項2に記載の発明により、差込スロットの凸状の係合部と受材の凹状の被係合部とを係合させ、差込スロットの挿入状態を支持し、左右の幅方向や上下にがたつきがなく、固定することが可能となる。これにより前カゴの位置ずれを防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明により、傾斜部により差込スロットの係合部を受材に挿入しやすくすることで作業効率を上げるだけでなく、差込スロットの差込状態で天板の周囲を囲む天板支持部を有することで差込スロットが前後、左右に位置ずれしないようにすることができ、安定的な固定を可能としている。
【0016】
請求項4に記載の発明により、差込スロットに壁部を下方から支持する爪片を有することでカゴブラケットを下方から安定的に支持するとともに、壁部の支持状態では弾性変形の復元力により壁部を後方に押し付けるように作用し、前後にも位置ずれせずに安定して支持することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明により、従来ネジ止め等を現場で行っていた工程をなくすことができ、作業効率を大幅に向上することができる。受材に差込スロットを挿入した状態で、取付作業者がカゴを手にもって一方からカゴブラケットの壁部を挿入させると固定することができる。差込スロットを楔のように挿入して固定する方法よりも、比較的重量のあるカゴを手にもって押し付けることでワンタッチで取り付けることが可能になるだけでなく、比較的に大きな力を必要とせずに取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のカゴブラケットへの取付具を示す分解斜視図である。
図2】本実施形態のカゴブラケットへの取付具の全体斜視図である。
図3】本実施形態の取付具を備えた自転車の一部右側面図である。
図4】本実施形態の取付具に係る受材であり、(a)は正面図、(b)は第2側部の一部を切り欠いた一部断面斜視図である。
図5】本実施形態の取付具に係る受材を示すものであって、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)はスロット挿入空間と壁部挿入空間をハッチングで明示した底面図である。
図6】本実施形態の取付具に係る差込スロットを示すものであって、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図7】本実施形態の取付具に係る差込スロットを示すものであって、(a)は左側面図、(b)は平面図である。
図8図4に示す受材のZ-Z線の位置であって、前カゴに取付け、差込スロットとカゴブラケットを挿入した状態の断面図である。
図9図4に示す受材のY-Y線の位置であって、前カゴに取付け、差込スロットとカゴブラケットを挿入した状態の断面図である。
図10図1の状態から受材を前かごに取り付けた状態を示す分解斜視図である。
図11図10の状態から受材に差込スロットを挿入した状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面に沿って説明する。本説明において、前後は自転車の前後方向をもって示すものであって図1図2図3における矢印線A方向を前方向、矢印線B方向を後方向として説明する。また、幅方向とは左右方向であって自転車の左右をもって示すものであって、図1図2における矢印線C方向として説明する。また、上下方向とは自転車の上下をもって示すものであって、図1図2図3における矢印線D方向として説明する。
【0020】
自転車全体として説明すると、図3に示すように、本発明の取付具は、自転車1の前カゴ2の背面部分を取り付けるためのブラケットであるカゴブラケット10と前カゴ2とを取り付けるものであり、自転車1の前カゴ2の背面部に予め取り付けられた受材20に差込スロット30を差し込んだ状態から、カゴブラケット10を挿入して固定するものである。なお、前カゴ2の底部分は予め自転車1の前輪4の車軸に取り付けられたステー5に、底具6により取り付けられており、本取付具はその後に前カゴ2のカゴブラケット10に取り付けて前カゴ2の取付完了とするものである。
【0021】
図1図2に示すようにカゴブラケット10は、前後方向に伸びるアーム11と、アーム11の先端から連続して上方向に立ち上がり、幅方向に延長する壁部12とからなるT字型形状を有する一般的な形態である。壁部12は、アーム11に対して立ち上がって幅方向を長手方向とする長方形状の面を有する壁状部材であり、前カゴ2の取り付け用プレートにネジ止めする場合に用いられる開口部13、13が開口されている。アーム11の基端は自転車のフロントフォーク3の突出した上端部分に通して固定するための固定孔14が開口されている(図3参照)。
【0022】
まず受材20の基本的な形態を説明する。図1に示すように、受材は、受材基部21の両側となる第1側部22、22が後方(矢印線Bの方向)に向けて延出され、第1側部22、22の後方には両側(矢印線Cの方向)にさらに張り出した第2側部23、23とを有するもので、平面視での全体形状が凸状となるものである。2つの第2側部23、23の間は開放されており、上方に突出して第2側部23、23から延長部25、25を介して掛け渡し部24が配置される。本実施形態の受材20は、硬質の樹脂素材により一体的に成形されたものを使用している。受材20は、受材基部21と第1側部22、22と第2側部23、23の内部に空間を有し、後述する差込スロット30とカゴブラケット10の壁部12を挿入することができる。
【0023】
受材20の形態を、図1及び図2に加えて、図4図5を示して詳細に説明する。受材基部21は、左右両側の第1側部22、22が後方に向けて張り出しており、第1側部22、22より更に側方に張り出した第2側部23、23を有する。両側の第2側部23、23の間は開放され、正面視では受材基部21の後側の面であり後述する差込スロット30の肉厚部37と対面して接触する基部後面21aと被係合部21cに加え、カゴ取付用のビス孔が正面視で露出する。両側の第2側部23、23の間を上方に立ち上がって折曲して掛け渡す掛け渡し部24が形成され、第2側部23、23から延長して立ち上がる延長部25、25が形成されている。
【0024】
受材20は、後述する差込スロット30を挿入するために上方に開口されたスロット挿入口26aと、内部に挿入するスロット挿入空間26bを有する。スロット挿入口26aは、平面視において受材基部21、両側の第1側部22、22、両側の第2側部23、23、延長部25、25が周囲となるように開口したものである。スロット挿入空間26bはスロット挿入口26aの下方に位置するもので、同じく受材基部21と両側の第1側部22、22、両側の第2側部23、23、延長部25、25に囲まれた部分である。
【0025】
スロット挿入口26aからスロット挿入空間26bに差込スロット30を挿入するために、受材基部21の基部後面21aの上方中央には傾斜した傾斜部21bが形成されている。傾斜部21bの左右長さは差込スロット30の肉厚部37と同じ左右長さを有し、上下長さは受材基部21の上下長さの3分の1程度の長さである。傾斜部21bの下方は差込スロット30の肉厚部37をうける基部後面21aとなり、この基部後面21aの中央下方には凹状の被係合部21cが形成され、差込スロット30の凸状の係合部37aと係合可能としている。
【0026】
受材20の被係合部21cは、受材基部21の基部後面21aの左右方向中央位置で、上下方向中央位置を上縁として凹んで形成されている。被係合部21cの左右幅は、差込スロットの凸状の係合部37aの左右幅と略同一であり、差込スロット30をスロット挿入空間26bに挿入した状態で、係合部37aが被係合部21cに入り込んで係合し、上方に抜けず、左右方向に位置ずれしないようにしている。また、基部後面21aの上側で上端に向けて開口面積を広げるように傾斜する傾斜部21bが形成されていることから、差込スロット30をスロット挿入空間26bに挿入するにあたり、差込スロット30から突出した係合部37aが引っ掛かって挿入しずらくなることを防止している。
【0027】
また、差込スロット30の天板31を支持するための天板支持部について説明する。スロット挿入口26aの周囲は差込スロット30の天板31の周囲と略同一形状を有し、受材基部21、両側の第1側部22、22、第2側部23、23、延長部25、25を周囲とするところ、これらの上方端付近で天板31が左右、前後に位置ずれしないようにしている。さらに、受材基部21の傾斜面21bの両側には、受材基部21の上面から一段下方に下がる段部21d、21dが形成される。この形態により、差込スロット30を挿入すると天板31がスロット挿入口26aを塞ぐように段部21d、21dで下方から支持され、その周囲をスロット挿入口26aの周囲壁が支持している。これにより、差込スロット30の挿入状態で、前後左右への位置ずれを防止して下方にも想定以上に落ち込まないようにしている。
【0028】
受材20は、カゴブラケット10の壁部12を挿入するために下方に開口された壁部挿入口27aと、壁部12を挿入する壁部挿入空間27bとを有する。受材20の第2側部23、23は、下方を開放して内部が空洞となるもので、その内部に壁部挿入空間27bが形成され、下方端縁が壁部挿入口27aとなる。
【0029】
底面視において、前方にスロット挿入空間26bがあり、後方に壁部挿入空間27bが前後に並列するように位置するようになる(図5(c)参照)。スロット挿入空間26bに差込スロット30を挿入すると、壁部挿入空間27bの後側に差込スロット30が位置して、差込スロット30と第2側部23、23の内部前側壁23a、23aが壁部挿入空間27bの前側の壁となる。第2側部23、23の後面側の下方裏面側には下方に向けて広がる傾斜面23b、23bが形成され、垂直方向より若干挿入角度がずれていても壁部12を挿入しやすくしている。
【0030】
次に差込スロット30について形態を詳細に説明する。図6図7に加え、差込完了後の断面図となる図8図9に示すように、差込スロット30は、天板31、爪片35,35,肉厚部37とを基本的な形態としている。差込スロット30は、硬質の樹脂材からなるもので、弾性変形をしつつスロット挿入空間26bに挿入可能とするものである。
【0031】
天板31は、差込スロット30の全体形状に比して、前方に突出しており、基端部32や肉厚部37の前後幅よりも長い前後幅を有する。差込スロット30をスロット挿入空間26bに挿入時に上述した天板支持部に支持され、左右及び前後にずれないように支持される。
【0032】
鍔形状部材の天板31から下方に向けて延長される基端部32を有し、基端部32の左右両側から倒コの字状に形成される爪片35が形成される。基端部32は、所定の厚みを有し、上述の受材20のスロット挿入空間26bの前後幅と略同一の前後幅を有する。この基端部32から爪片35に囲まれる空間に下方に延長するように肉厚部37が形成される。基端部32と肉厚部37とは同じ前後幅を有するものであり、後面は天板31の後側縁と面一になるように垂下しており、前面は天板31の前側縁より一段下がって位置している。
【0033】
爪片35は、天板31の基端部32の左右両側から垂下するように延長して形成された垂下爪35a、35aとこれらを下端でつなぎ合わせる爪片先端部35bとからなる。爪片35は、基端部32や肉厚部37よりも肉薄で形成され、側面視において垂下爪35a、35aは、下方に行くに従って徐々に後方に向かうように傾斜している。垂下爪35a、35aは肉厚部37の下方縁と上下位置を同じくするように、後方に向けて突出した爪が形成され、先端に行くに従って暫時的に厚みを薄くするようにしている。また、爪片先端部35bも先端(下方端)に行くに従って暫時的に厚みを薄くするように垂下爪35a、35aと同じ傾斜を有している。
【0034】
肉厚部37は、基端部32より垂下する厚手の方形状部材であり、下縁付近では下端にかけて徐々に厚みを薄くした形状を有する。肉厚部37の肉厚部分の厚み(前後幅)は、上記のとおり受材20のスロット挿入空間26bの前後幅と略同一となるように成形されており、受材20に挿入された状態でスロット挿入空間26bに挿入される。
【0035】
肉厚部37の前側面から更に前方に向けて方形状に突出する凸状の係合部37aが形成される。上述のように、受材20の受材基部21に形成された凹状の被係合部21cに嵌まって係合する。なお、係合部と被係合部とは凸状と凹状のものを本実施形態で用いているが、係合部と被係合部の凹凸が入れ替わるものや、係合部と被係合部の位置が肉厚部以外の部位に形成されていてもよく、本実施形態に限定するものではない。
【0036】
受材20を前カゴ2の背面部に取り付けるカゴ接続具40について説明する。図1に示すように、カゴ接続具40は、厚みのある正面視で楕円形の樹脂製部材であり、前後に挿通可能なネジ穴41、41を有し、ネジ穴41、41の周囲を突出させた突出部42、42を有する。図示しないが裏面側には挿通したネジを固定した状態で遮蔽する蓋が配されている。
【0037】
カゴ接続具40を用いた受材20の前カゴ2への取付方法について説明する。図1図2に加え、図10図11に示すように、前カゴ2の背面部において、カゴ内側にカゴ接続具40を、カゴ外側に受材20を位置させる。カゴを形成する鋼線や取付板を挟み込むようにカゴ接続具40と受材20とを重ね合わせ、受材20の受材基部21に開口されたネジ穴を通して、カゴ接続具40のネジ穴41,41にネジを挿入して締め付けて固定する。この他にも、独自のプレート等をカゴに配してネジを通して受材20を固定するものであってもよい。なお、実際にはカゴ製造時にカゴ接続具40と受材20とを固定して搬送される。
【0038】
取付具による自転車用前カゴの取付方法について説明する。本取付方法を用いる段階において、あらかじめフロントフォーク3にカゴブラケット10が取り付けられ、前カゴ2に受材20がカゴ接続具40を用いて取り付けられており(図10参照)、前カゴ2の底部が別の底具6で自転車のカゴ用ステー5に固定された状態にある(図3参照)。
【0039】
次に、受材20のスロット挿入口26aから差込スロット30を挿入する。差込スロット30をスロット挿入空間26bに挿入完了すると、天板31がスロット挿入口26aを遮蔽するようになり、差込スロット30の凸状の係合部37aが受材20の凹状の被係合部21cに嵌まり込んで係合する(図11参照)。
【0040】
次に、底具6で固定された前カゴ2を手で引き上げ、カゴブラケット10の壁部12が受材20の下方にある壁部挿入口27aから壁部挿入空間27bに挿入する。このとき、壁部挿入口27aが受材20の下方に位置しているため、前カゴ2を引き上げて、壁部12の上方から押し下げるようにすると、前カゴ2を使用者が手にもって押し下げることで、比較的小さな差込スロット30を後から挿入する場合と比べて大きな力を使わずに壁部挿入空間27bに挿入することができる(図2参照)。
【0041】
壁部12が壁部挿入空間27bに挿入されると、挿入前では後側に傾斜していた差込スロット30の爪片35が前側に弾性変形し、肉厚部37に沿うように垂直方向に近い状態まで変形する。この状態で、爪片35が壁部12の下方を支持することでカゴブラケット10を下方から支持する。爪片35は、前方に弾性変形して壁部12が挿入されているため、後方に向けて戻ろうとする力が作用し、継続的に壁部12を後方に押し付ける状態となる。これによりカゴブラケット10が前後に位置ずれすることも防止している。
【0042】
差込スロット30の爪片35、35は、差込完了状態のロック機能だけでなく、不意にロックが外れたときの抜け防止機能も有する。爪片35、35の位置は、カゴブラケット10の壁部12に開口された開口部13,13の位置に相当する位置としている。そのため、不意に挿入完了状態の爪片35、35のロック状態が外れた場合に、カゴブラケット10の開口部13,13でいったん係合することで、完全な抜け防止機能を有する。
【0043】
すなわち、差込スロット30はPA素材を用いた弾性を有する樹脂材で成形し、差込時は弾性変形により爪片35、35が押し付けられているが、係合が不意に外れた場合でも弾性変形が復帰する力が作用し、開口部13,13の上縁と係合する。このため、不意に外れてしまっても、前カゴ2自体を外れ難くしている。
【符号の説明】
【0044】
1…自転車、2…前カゴ、10…カゴブラケット、12…壁部、13…開口部、20…受材、21…受材基部、21a…基部後面、21b…傾斜部、21c…被係合部、21d…段部(天板支持部)、22…第1側部、23…第2側部、24…掛け渡し部、25…延長部、26a…スロット挿入口(天板支持部)、26b…スロット挿入空間、30…差込スロット、31…天板、35…爪片、37…肉厚部、37a…係合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11