(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170156
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 43/02 20060101AFI20241129BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F16D43/02
F16D41/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087160
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】畑中 和幸
【テーマコード(参考)】
3J068
【Fターム(参考)】
3J068BA01
3J068BB10
3J068CB03
(57)【要約】
【課題】大型化及び部品の形状の複雑化を抑制しつつ、効果的に逆入力を遮断できる逆入力遮断クラッチを提供する。
【解決手段】逆入力遮断クラッチは、ハウジングと、入力部材と、出力部材と、一対の係合子と、弾性部材と、を備える。弾性部材は、一対の係合子間に設けられる。弾性部材は、一対の係合子がハウジングの被押圧面にそれぞれ近づくように一対の係合子を第一方向の外側に向かって付勢する。弾性部材は、入力部材の軸方向と平行な中心軸を有し、先端部が一対の係合子にそれぞれ接続される捩りコイルバネである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に被押圧面を有するハウジングと、
前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される入力部材と、
前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、
前記一対の係合子間に設けられ、前記一対の係合子が前記被押圧面にそれぞれ近づくように前記一対の係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材と、
を備え、
前記第一方向は前記一対の係合子の近接離間方向と一致する方向であり、
前記入力部材に回転力が入力されると、前記一対の係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転力が逆入力されると、前記一対の係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、
前記弾性部材は、前記入力部材の軸方向と平行な中心軸を有するコイルバネである、
逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記弾性部材は、先端部が前記一対の係合子にそれぞれ接続される捩りコイルバネである、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記係合子は、前記弾性部材の先端部を係止する係止部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記係止部は、前記係合子を厚み方向に貫通する孔である、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記係止部は、前記係合子の端部に形成された切欠きである、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
前記係止部は、前記係合子の前記入力側被係合部と一体的に形成されている、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項7】
前記入力部材及び前記出力部材の一方は、前記軸方向に突出し、前記弾性部材のコイル部に挿入される支柱部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項8】
前記軸方向及び前記第一方向に直交する方向を第二方向とすると、
前記弾性部材は、前記一対の係合子の前記第二方向の両側に一対設けられており、
前記一対の弾性部材は、前記入力部材の中心軸方向から見て、前記入力部材の中心軸に関して互いに点対称に設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源などの入力機構に接続される入力部材と、減速機などの出力機構に接続される出力部材と、を備え、入力部材から出力部材への回転力の伝達を許可するとともに出力部材から入力部材への回転力の逆入力を遮断する逆入力遮断クラッチの構成が知られている。これらの逆入力遮断クラッチでは、逆入力遮断クラッチの性能を向上するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、被押圧面を有する被押圧部材と、被押圧面の径方向内側において互いに同軸に設けられた入力部材及び出力部材と、正面視で入力部材及び出力部材の間に介在し、径方向に移動可能な一対の係合子と、を有する逆入力遮断クラッチの構成が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、出力部材に回転力が逆入力されると、係合子と出力部材との係合に基づき係合子が被押圧面に近づく方向に移動して被押圧面と摩擦係合することにより、出力部材に逆入力された回転力を遮断できるとされている。また、係合子及び出力部材間に弾性部材として板バネを設けることにより、係合子を常に被押圧面側に付勢している。これにより、出力部材に回転力が逆入力された場合に、係合子を確実に被押圧面に押圧させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、比較的バネ定数の大きい板バネを弾性部材として用いている。このため、弾性部材の荷重調整が難しくなるおそれがあった。
【0006】
一方、板バネの代わりに、板バネよりもバネ定数の小さいコイルバネを用いる場合がある。
図10は、従来技術に係る逆入力遮断クラッチ901を正面から見た断面図である。
図10に示すように、一対の係合子905,905の間に弾性部材としてコイルバネ906を設けることにより、板バネを用いる場合と比較して荷重調整を容易に行うことができる。しかしながら、この従来技術にあっては、一対の係合子905,905間にコイルバネ906を設置するために比較的大きなスペースが必要となる。特に、コイルバネ906の線径やコイル径、コイル長等を大きくした場合には、コイルバネ906のサイズが大きくなることに伴って、逆入力遮断クラッチ901全体の径方向寸法が大型化するおそれがあった。さらに、コイルバネ906を位置決めするための突起908等を係合子905に形成する必要があるので、係合子905の形状が複雑になり易い。これにより係合子の製造に係るコストが増加するおそれがあった。
【0007】
したがって、従来技術においては、逆入力遮断クラッチ全体の大型化及び部品の形状の複雑化を抑制しつつ、効果的に逆入力を遮断する点において改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、大型化及び部品の形状の複雑化を抑制しつつ、効果的に逆入力を遮断できる逆入力遮断クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る逆入力遮断クラッチは、内周面に被押圧面を有するハウジングと、前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される入力部材と、前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、前記一対の係合子間に設けられ、前記一対の係合子が前記被押圧面にそれぞれ近づくように前記一対の係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材と、を備え、前記第一方向は前記一対の係合子の近接離間方向と一致する方向であり、前記入力部材に回転力が入力されると、前記一対の係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、前記出力部材に回転力が逆入力されると、前記一対の係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、前記弾性部材は、前記入力部材の軸方向と平行な中心軸を有するコイルバネである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の逆入力遮断クラッチによれば、大型化及び部品の形状の複雑化を抑制しつつ、効果的に逆入力を遮断できる逆入力遮断クラッチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る逆入力遮断クラッチの断面図。
【
図3】第1実施形態に係る一対の係合子及び弾性部材を組み合わせた状態の斜視図。
【
図4】第2実施形態に係る逆入力遮断クラッチの断面図。
【
図5】第2実施形態に係る一対の係合子及び弾性部材を組み合わせた状態の斜視図。
【
図6】第3実施形態に係る逆入力遮断クラッチの断面図。
【
図7】第3実施形態に係る一対の係合子及び弾性部材を組み合わせた状態の斜視図。
【
図8】第4実施形態に係る逆入力遮断クラッチの側面図。
【
図9】第4実施形態の変形例に係る逆入力遮断クラッチの斜視図。
【
図10】従来技術に係る逆入力遮断クラッチの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、軸方向、径方向、および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の中心軸線Cの軸方向、径方向、および周方向をいう。
【0013】
(第1実施形態)
(逆入力遮断クラッチ)
図1は、第1実施形態に係る逆入力遮断クラッチ1の断面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、第1実施形態に係る一対の係合子5及び弾性部材6を組み合わせた状態の斜視図である。
図1及び
図2に示すように、逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2と、出力部材3と、ハウジング4と、1対の係合子5と、弾性部材6と、を備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に入力される回転力を出力部材3に伝達する。一方、逆入力遮断クラッチ1は、出力部材3に逆入力される回転力を遮断して入力部材2に伝達しない、またはその一部のみを入力部材2に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。
【0014】
(入力部材)
図1及び
図2に示すように、入力部材2は、不図示の電動モータなどの入力機構に接続される。入力部材2には、入力機構からの回転力が入力される。本実施形態において、入力部材2は、入力軸本体21と、一対の腕部23と、を有する。入力軸本体21は、軸方向の入力機構側に設けられている。入力軸本体21は、中心軸線Cを中心とする円柱状(又は円筒状)に形成されている。以下の説明において、入力部材2のうち入力機構と接続される側を軸方向の第一側といい、その反対を軸方向の第二側という場合がある。
【0015】
一対の腕部23は、入力軸本体21から軸方向の第二側に向かって延びている。腕部23は、入力軸本体21と一体形成されている。腕部23は、入力軸本体21の径方向の両端に一対設けられている。よって腕部23は、入力軸本体21よりもやや径方向の外側にオフセットした位置に設けられている。
図2に示すように、腕部23は、軸方向から見て、一辺が湾曲した台形状に形成されている。腕部23は、径方向の内側に面する入力側係合部25と、径方向の外側に面する曲面部26と、入力側係合部25及び曲面部26の端部同士を接続する2つの側面部27と、を有する。曲面部26は、中心軸線Cを中心とする円弧状に形成されている。
【0016】
腕部23は、後述する係合子5の数に応じて複数設けられる。本実施形態では、一対の係合子5が設けられることに応じて、一対の腕部23が設けられている。なお、腕部23の数は2個に限られず、係合子5の数に応じて、腕部23の数を1個、あるいは3個以上としてもよい。
【0017】
(出力部材)
図1に示すように、出力部材3は、不図示の減速機などの出力機構に接続され、回転力(回転トルク)を出力する。出力部材3は、入力部材2と同軸上に配置されている。
図1及び
図2に示すように、出力部材3は、出力軸本体31と、挿入部32と、を有する。出力軸本体31は、軸方向の第二側に設けられている。出力軸本体31は、中心軸線Cを中心とする円柱状(又は円筒状)に形成されている。
【0018】
挿入部32は、出力軸本体31の軸方向の第一側の端部から軸方向の第一側に向かって延びている。挿入部32は、出力軸本体31と一体形成されている。挿入部32は、後述する一対の係合子5間に挿入される部分であり、入力部材2の一対の腕部23よりも径方向内側に配置されている。挿入部32のうち一対の係合子5間に挿入される基端部(例えば止め輪39よりも軸方向の第二側に位置する部分)は、出力軸本体31よりも外形が小さい板状に形成されている。挿入部32の先端部(例えば止め輪39よりも軸方向の第一側に位置する部分)は、円柱状に形成されている。挿入部32の先端部は、ベアリング46を介して入力部材2に相対回転可能に嵌合している。ベアリング46は、例えば転がり軸受や滑り軸受等である。挿入部32の基端部における外周面は、挿入部32の厚み方向(
図2の上下方向)の両側にそれぞれ面する一対の出力側係合部35と、一対の出力側係合部35の端部同士を接続する一対の側面部36と、を有する。
【0019】
各出力側係合部35は、挿入部32の短軸方向に対して直交する平坦面により構成されている。各出力側係合部35は、一対の係合子5にそれぞれ面している。出力側係合部35は、入力部材2の入力側係合部25よりも径方向の内側に設けられている。一対の側面部36は、出力側係合部35の両端部同士をそれぞれ接続している。
【0020】
挿入部32の出力側係合部35及び側面部36は、後述する係合子5の数に応じて複数設けられる。本実施形態では、一対の係合子5が設けられることに応じて、一対の出力側係合部35及び側面部36が設けられている。なお、出力側係合部35の数は2個に限られず、係合子5の数に応じて、出力側係合部35の数を1個、あるいは3個以上としてもよい。
【0021】
(ハウジング)
ハウジング4は、円筒状に形成されている。ハウジング4は、図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。ハウジング4は、入力部材2及び出力部材3と同軸上に配置されている。ハウジング4は、入力部材2、出力部材3、及び一対の係合子5を収容している。ハウジング4は、第一収容孔41と、第二収容孔42と、被押圧面40と、を有する。
【0022】
図1に示すように、第一収容孔41は、ハウジング4を軸方向に貫通している。第一収容孔41は、中心軸線Cと同軸に形成されている。第一収容孔41は、ハウジング4のうち軸方向の第二側に設けられている。第一収容孔41の内側には、出力部材3の出力軸本体31が収容されている。第一収容孔41の内径は、出力部材3における出力軸本体31の外形よりも大きい。第一収容孔41は、ベアリング45を介して出力部材3を回転可能に保持している。
【0023】
第二収容孔42は、ハウジング4を軸方向に貫通している。第二収容孔42は、中心軸線Cと同軸に形成されている。第二収容孔42は、第一収容孔41よりも軸方向の第一側に設けられている。第二収容孔42の内径は、第一収容孔41の内径よりも大きい。第二収容孔42の内側には、入力部材2の腕部23が収容されている。第二収容孔42の内側であって腕部23のさらに内側には、出力部材3の挿入部32が収容されている。第二収容孔42の内径は、入力部材2における一対の腕部23の外形よりも大きい。また、第二収容孔42の内径は、一対の係合子5の外形より大きい。第二収容孔42の内側では、ハウジング4に対して入力部材2が相対回転可能に収容されている。
【0024】
第二収容孔42の内周面は、被押圧面40とされている。よって、被押圧面40は、中心軸線Cと同軸となるように形成されている。被押圧面40は、入力部材2及び出力部材3と同軸に設けられている。被押圧面40の径方向内側には、入力部材2の入力側係合部25及び出力部材3の出力側係合部35が設けられている。
【0025】
(係合子)
図2及び
図3に示すように、一対の係合子5は、半円形状に構成されており、ハウジング4の径方向内側に配置されている。一対の係合子5は、径方向に沿う第一方向D1において互いに近接離間するように移動可能に構成されている。第一方向D1は、ハウジング4の径方向に沿う方向であって、かつ一対の係合子5の対向方向である。また、軸方向及び第一方向D1のそれぞれと直交する方向を第二方向D2という場合がある。第一方向D1及び第二方向D2のうち径方向の外側を向く方向を第一方向D1の外側や第二方向D2の外側と言う場合がある。
一対の係合子5はそれぞれ、押圧面51と、底面52と、入力側被係合部55と、出力側被係合部56と、係止部58と、を有する。
【0026】
押圧面51は、ハウジング4の被押圧面40を押し付ける径方向外側の面であり、円弧状の凸面となっている。なお、被押圧面40と面する係合子5の外周面の一部が押圧面51とされていてもよい。押圧面51は、逆入力遮断クラッチ1のロック状態(出力部材3からの逆入力が遮断された状態)において、被押圧面40を押圧する。押圧面51の曲率半径は、被押圧面40の曲率半径以下となっている。押圧面51は、1個の係合子5について2箇所設けられ、楔効果により係合子5と被押圧面40間の摩擦係合力が大きくなるように形成されている。2個の押圧面51は、互いに係合子5の周方向に離間した位置に設けられている。なお、押圧面51は、係合子5の外周面全体又は一部によって直接構成してもよいし、係合子5のその他の部分に比べて摩擦係数の大きい表面性状を有するように形成してもよい。例えば押圧面51は、係合子5に貼着や接着などにより固定した摩擦材によって構成してもよい。係合子5の各押圧面51は、ハウジング4の被押圧面40に面している。
【0027】
係合子5の底面52は、押圧面51より径方向の内側に設けられている。底面52は、詳しくは後述する係合子5の出力側被係合部56とともに、半円形状の係合子5の直線部分を形成している。本実施形態において、底面52は、ほぼ平坦面状に形成されている。一対の係合子5の底面52は、径方向(第一方向D1)において互いに対向している。
一対の係合子5をハウジング4の径方向内側に配置した状態で、被押圧面40と押圧面51との間、および、一対の底面52と出力部材3の間の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧面40の内径寸法と係合子5の外形寸法が設定されている。
【0028】
入力側被係合部55は、正面視における係合子5の中央部を軸方向に貫通する孔である。入力側被係合部55は、第二方向D2に長い長孔状に形成されている。入力側被係合部55には、入力部材2の腕部23が挿入される。入力側被係合部55は、腕部23と係合する。入力側被係合部55は、入力部材2の腕部23を緩く挿入できる大きさを有している。具体的に、入力側被係合部55の内側に入力部材2の腕部23を挿入した状態で、腕部23と入力側被係合部55の内周面との間に隙間が存在するように形成されている。よって、腕部23は、入力側被係合部55(つまり係合子5)に対して入力部材2の回転方向への微小な変位が可能であり、係合子5は、腕部23に対して第一方向D1への微小な変位が可能である。
【0029】
特に
図2に示すように、出力側被係合部56は、半円形状に形成された係合子5の直線部分(底面52)のうち、第二方向D2の中央部近傍に位置する部分である。出力側被係合部56は、入力側被係合部55よりも径方向(第一方向D1)の内側に設けられている。出力側被係合部56には、出力部材3の挿入部32が係合する。出力側被係合部56は、底面52と連続する平坦面状に形成されている。
【0030】
係止部58は、詳しくは後述する弾性部材6の先端部62を係止可能に形成されている。係止部58は、係合子5の第二方向D2の両端部にそれぞれ設けられている。本実施形態において、係止部58は、係合子5を軸方向に貫通する円形状の孔である。また、係合子5の底面52のうち、係止部58と対応する第二方向D2の両端部は、第二方向D2の外側へ向かうにつれて他方の係合子5から離間するように傾斜する傾斜部53が設けられている。傾斜部53が形成されることにより一対の係合子5間の隙間が広がった空間に、弾性部材6が配置される。
【0031】
図1及び
図2に示すように、逆入力遮断クラッチ1が組み立てられた状態において、入力部材2の腕部23は、一対の係合子5のそれぞれの入力側被係合部55に軸方向から挿入され、かつ、出力部材3の挿入部32は、一対の係合子5の出力側被係合部56同士の間に軸方向から挿入される。すなわち、一対の係合子5は、それぞれの出力側被係合部56により、出力部材3の挿入部32を径方向外側から挟んでいる。
【0032】
図1に示すように、係合子5の軸方向の両側には、軸方向における各部材の位置決めを行うための端板38が設けられる。また、係合子5よりも軸方向の第一側には、各部材の位置決めを行うための止め輪39が設けられている。位置決め機能の他に、例えば係合子5と出力部材3及び入力部材2との接触を防止して摩耗を抑制する機能を有するように、端板38等の部品を設けてもよい。
【0033】
(弾性部材)
図2及び
図3に示すように、弾性部材6は、一対の係合子5の間(傾斜部53の間)に設けられている。弾性部材6は、中心軸線Cと平行な中心軸Oを有する捩りコイルバネである。弾性部材6は、中心軸Oと同軸なコイル部61と、コイル部61と接続される先端部62と、を有する。弾性部材6の先端部62は、一対の係合子5にそれぞれ接続される。先端部62と係合子5とを接続する方法については、詳しくは後述する。弾性部材6は、一対の係合子5同士の隙間において、第二方向D2の両側に一対設けられている。弾性部材6は、一対の係合子5間に挟持されて荷重を受けることにより、コイル部61が捩り変形するように形成されている。よって弾性部材6は、コイル部61の変形時に生じる復元力により、一対の係合子5が被押圧面40にそれぞれ近づくように、一対の係合子5を第一方向D1の外側に向かって付勢する。
【0034】
弾性部材6の先端部62は、コイル部61の両端部に対応して2個設けられている。弾性部材6の各先端部62は、係合子5に形成された係止部58に挿通されて係止されている。具体的に、係合子5の軸方向を向く2個の面をそれぞれ表面及び裏面とした場合、2個の先端部のうち一方の先端部62は、コイル部61から一方の係合子5の表面に沿って径方向の外側に向かって延びた後、さらに軸方向の裏面側へ向かって延びた部分が一方の係合子5の係止部58に挿通される。係止部58に挿通された部分のうちコイル部61との接続部とは反対側の端部は、係合子5の裏面に沿って再び径方向に沿って延びている。先端部62のうち係合子5の裏面を径方向に沿って延びる部分(先端部62の先端部)の長さ寸法は、係止部58の孔径よりも小さい。これにより、係止部58に先端部62を挿入し易くしている。また、2個の先端部のうち他方の先端部62は、コイル部61から他方の係合子5の裏面に沿って径方向の外側に向かって延びた後、さらに軸方向の表面側へ向かって延びた部分が他方の係合子5の係止部58に挿通される。係止部58に挿通された部分のうちコイル部61との接続部とは反対側の端部は、係合子5の表面に沿って再び径方向に沿って延びている。上述した一方の先端部62と同様、他方の先端部62の先端部の長さ寸法は、係止部58の孔径よりも小さい。以上のようにして、弾性部材6が一対の係合子5に対して係止される。
【0035】
図3に示すように、一対の弾性部材6は、軸方向から見て、中心軸線Cに関して互いに点対称に設けられている。すなわち、一個の係合子5において第二方向D2の両側に設けられた一対の弾性部材6は、それぞれ係止部58に対する先端部62の挿通方向が逆となっている。一対の弾性部材6は、同等の形状となっている。
【0036】
図2に示すように、係合子5に弾性部材6が取り付けられた状態で、1個の弾性部材6における2個の先端部62は、軸方向から見て互いに所定の角度を有して形成されている。本実施形態において、弾性部材6は、軸方向から見て径方向の内側に向かって開口するV字状に形成されている。この場合、弾性部材6が捩れ変形すると、V字のなす角度が広がるように弾性部材6が変形する。よって係合子5には、第一方向D1の外側及び第二方向D2の外側に向かう力が作用する。さらに第二方向D2に関して一対の弾性部材6のV字の開口方向が対向するように設けられることにより、係合子5に作用する力のうち第二方向D2に沿う力が相殺されるので、係合子5には第一方向D1の外側を向く力が作用する。これにより、一対の係合子5が互いに離間する方向、すなわち被押圧面40に押し付けられる方向に係合子5が押圧される。
【0037】
(作用、効果)
本実施形態の逆入力遮断クラッチ1によれば、一対の係合子5を第一方向D1の外側に向かって付勢する弾性部材6を備えるので、出力部材3から回転力が逆入力された場合に、係合子5が径方向の外側に移動し易くなる。これにより、回転力が逆入力された場合に、効果的に係合子5の回転をロックすることができる。また、弾性部材6により係合子5が径方向外側に付勢されているので、係合子5のがたつきを抑制できる。
弾性部材6は、入力部材2の軸方向と平行な中心軸Oを有するコイルバネとされている。弾性部材6としてコイルバネを用いることにより、バネ定数の大きい板バネを用いる場合と比較して弾性部材6の荷重調整を容易に行うことができる。よって製造性を向上できる。また、コイルバネの中心軸Oは、入力部材2の軸方向と平行となるように配置されている。このため、コイルバネの軸方向が入力部材2の軸方向と直交する方向(例えば第一方向D1)に沿うように配置される従来技術と比較して、一対の係合子5間における弾性部材6を配置するためのスペースを小さくできる。また、例えばコイルバネの線径やコイル径、コイル長等を大きくした場合であっても、配置スペースへの影響を小さくできる。すなわち一対の係合子5間の離間距離の増加を抑制できる。よって逆入力遮断クラッチ1全体が大型化することを抑制できる。さらに、従来技術のようにコイルバネを位置決めするための突起等を設ける必要がないので、係合子5の形状を簡素化できる。
したがって、大型化及び部品の形状の複雑化を抑制しつつ、効果的に逆入力を遮断できる逆入力遮断クラッチ1を提供できる。
【0038】
弾性部材6は捩りコイルバネであり、捩りコイルバネの先端部62が一対の係合子5にそれぞれ接続される。弾性部材6として捩りコイルバネを用いることにより、一対の係合子5間の空きスペースを活用して弾性部材6を配置できる。よって、逆入力遮断クラッチ1の径方向への大型化を抑制できる。捩りコイルバネの先端部62が係合子5に接続されるので、コイルバネの本体部を係合子5に取り付ける従来技術と比較して、例えば凸部等を設ける必要が無い。これにより、係合子5における弾性部材6の取り付け部分の形状を簡素化できる。よって、従来よりも部品の複雑化を抑制した逆入力遮断クラッチ1とすることができる。
【0039】
係合子5は、弾性部材6の先端部62を係止する係止部58を有する。これにより、安定的に係合子5に弾性部材6を取り付けることができる。よって、一対の係合子5同士を第一方向D1の外側に向けて付勢し、逆入力に対するロック性を高めることができる。
【0040】
係止部58は、係合子5を軸方向に貫通する孔である。これにより、係止部58を容易に形成できる。よって、従来技術と比較して係合子5の製造性を向上できる。
【0041】
弾性部材6は第二方向D2に一対設けられており、一対の弾性部材6は点対称となるように設けられている。これにより、一対の弾性部材6を共通化することができる。よって、部品点数を減らして製造コストを削減できるとともに、例えば左右で異なる弾性部材6を形成してそれぞれ管理する場合と比較して、部品管理等の製造に係る手間を低減できる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図4は、第2実施形態に係る逆入力遮断クラッチ201の断面図である。
図5は、第2実施形態に係る一対の係合子5及び弾性部材6を組み合わせた状態の斜視図である。本実施形態では、弾性部材6の先端部62と係合子5とを接続する方法が上述した第1実施形態と相違している。
【0043】
第2実施形態において、係止部258は、係合子5の端部に形成された切欠きである。係止部258(切欠き)は、軸方向から見て、係合子5の傾斜部53から係合子5側へ半円形状に凹むように形成されている。
弾性部材6の先端部62の一部は、この切欠き258に沿って軸方向に延びるように配置されている。具体的に、弾性部材6の先端部62のうち第1実施形態において係合子5の孔(係止部58)に挿通されていた部分が、切欠き258に沿うように配置されている。弾性部材6の形状は、第1実施形態における弾性部材6の形状と同等である。
【0044】
第2実施形態の逆入力遮断クラッチ201によれば、係止部258は、係合子5の端部に形成された切欠きとされている。これにより、例えば係止部258を貫通孔とする場合と比較して係止部258をより一層容易に形成できる。よって、従来技術と比較して係合子5の製造性を向上できる。
なお、第2実施形態における切欠きの形状は、上述した半円形状に限定されない。切欠きの形状は、例えば矩形状や三角形状等であってもよい。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態に係る逆入力遮断クラッチ301の断面図である。
図7は、第3実施形態に係る一対の係合子5及び弾性部材6を組み合わせた状態の斜視図である。本実施形態では、弾性部材6の先端部62と係合子5とを接続する方法が上述した第1実施形態及び第2実施形態と相違している。
【0046】
第3実施形態において、係止部358は、係合子5の入力側被係合部55と一体的に形成されている。換言すれば、係合子5は、入力側被係合部55の他に係止部として別途孔や切欠き等が設けられることなく形成されている。
弾性部材6の先端部62の一部は、入力側被係合部55に挿通されて軸方向に延びている。具体的に、弾性部材6の先端部62のうち第1実施形態において係合子5の孔(係止部58)に挿通されていた部分が、入力側被係合部55に挿通されている。弾性部材6の先端部62が入力側被係合部55の端部に係止されることにより、係合子5に対して弾性部材6が係止される。なお、第3実施形態における弾性部材6の形状は、第1実施形態における弾性部材6の形状と実質同等である。但し、係止部58として孔や切欠きを設ける場合と比較して係止部358とコイル部61との距離が離間することに応じて、先端部62のうち係止部358に挿通される部分とコイル部61との接続部分を長く形成してもよい。
【0047】
第3実施形態の逆入力遮断クラッチ301によれば、係止部358は、係合子5の入力側被係合部55と一体的に形成されている。これにより、係止部358と入力側被係合部55とを共通化できるので、入力側被係合部55とは別に係止部を設ける場合と比較して、より容易に係止部358を形成できる。よって、従来技術と比較して係合子5の製造性を向上できる。
【0048】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図8は、第4実施形態に係る逆入力遮断クラッチ401の側面図である。本実施形態では、コイル部61に挿入される支柱部429が設けられる点で上述した各実施形態と相違している。
【0049】
第4実施形態において、入力部材2は、一対の支柱部429を有する。支柱部429は、入力部材2と一体形成されている。支柱部429は、入力部材2の入力軸本体21から腕部23と同じ方向に突出するように延びている。支柱部429は、軸方向に沿って延びている。支柱部429は、弾性部材6のコイル部61の中心軸Oと同軸上に設けられている。支柱部429は、コイル部61に挿入されている。
【0050】
第4実施形態の逆入力遮断クラッチ401によれば、入力部材2は支柱部429を有し、支柱部429が弾性部材6のコイル部61に挿入される。これにより、入力部材2に対してコイル部61を位置決めできるので、コイルバネが捩れる際に、軸方向から見てコイル部61が径方向に移動することを抑制できる。よって、弾性部材6による係合子5への付勢力を安定的に付与できる。よって、効果的に逆入力を遮断できる。
【0051】
なお、支柱部429は入力部材2とは別体で設けられて入力部材2に固定されてもよい。また、入力部材2ではなく出力部材3が支柱部429を有してもよい。この場合、出力部材3から延びる支柱部429が弾性部材6のコイル部61に挿入される。これにより、出力部材3に対してコイル部61を位置決めできる。よって、入力部材2に支柱部429を設ける場合と同等の効果を得ることができる。
【0052】
(第4実施形態の変形例)
次に、本発明の第4実施形態の変形例について説明する。
図9は、第4実施形態の変形例に係る逆入力遮断クラッチ501の斜視図である。本変形例では、上述の第4実施形態の構成に加え、さらに接続部529を有する点で上述した第4実施形態と相違している。
【0053】
第4実施形態の変形例において、入力部材2は、上述した一対の支柱部429に加え、さらに接続部529を有する。支柱部429の構成は上述の支柱部429の構成と同等であるため説明を省略する。接続部529は、一対の支柱部429における自由端側(入力軸本体21とは反対側)の端部同士を接続している。支柱部429と接続部529とは、圧入や、ねじを用いた締結等により互いに結合されている。接続部529は、軸方向から見て、一対の支柱部429間の距離を略直径とする円環状に形成されている。軸方向において接続部529と入力軸本体21との間に弾性部材6のコイル部61が配置されている。さらに接続部529は、入力部材2の腕部23の先端部と接続されている。
【0054】
第4実施形態の変形例の逆入力遮断クラッチ501によれば、支柱部429における自由端側の端部が接続部529により互いに接続されるので、支柱部429の強度を高めることができる。これにより、例えば弾性部材6に荷重が作用してコイルバネが捩れる際に、コイル部61が径方向に移動することをより一層効果的に抑制できる。よって、弾性部材6による係合子5への付勢力を安定的に付与できる。また、接続部529は入力部材2の腕部23の先端部と接続されるので、腕部23の剛性を高めることができる。
なお、接続部529の形状は円環状に限定されない。また、第4実施形態と同様、出力部材3に支柱部429を設けてもよい。この場合、支柱部429のうち入力部材2側の端部に接続部529を設けてもよい。
【0055】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、係合子5の第二方向D2の両端部に形成された傾斜部53により拡大された空間に弾性部材6が配置されたが、これに限られない。傾斜部53が形成されることなく一対の係合子5間に弾性部材6が設けられてもよい。この場合、係合子5の底面52が完全にフラットに形成されてもよい。
【0056】
弾性部材6は、一対の係合子5が第一方向D1に互いに最も離れた状態(すなわち、弾性部材6に作用する荷重が最も小さい状態)において係合子5を付勢するように形成されてもよい。つまり、弾性部材6は常に係合子5を付勢するように形成されてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、弾性部材6は、軸方向から見て径方向の内側に向かって開口するV字状に形成されたが、これに限られない。弾性部材6は、軸方向から見て径方向の外側に向かって開口するV字状に形成されてもよい。また、軸方向から見た2個の先端部62同士のなす角度(V字の角度)が小さいほど、第一方向D1に作用する荷重が大きくなり係合子5を被押圧面40側へ押圧し易い。よって、弾性部材6により係合子5をより効果的に被押圧面40に押圧できる点で、軸方向から見た2個の先端部62同士のなす角度(V字の角度)が小さいほど好ましい。
【0058】
上述の各実施形態では、逆入力遮断機構としてリンク構造を用いないリンクレス方式の逆入力遮断クラッチ1を例に説明したが、これに限られない。逆入力遮断機構として公知技術であるリンク機構を用いたリンク方式の逆入力遮断クラッチにおいて、上述した弾性部材6を有する構成を採用してもよい。
【0059】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)内周面に被押圧面を有するハウジングと、
前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される入力部材と、
前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、
前記一対の係合子間に設けられ、前記一対の係合子が前記被押圧面にそれぞれ近づくように前記一対の係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材と、
を備え、
前記第一方向は前記一対の係合子の近接離間方向と一致する方向であり、
前記入力部材に回転力が入力されると、前記一対の係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転力が逆入力されると、前記一対の係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、
前記弾性部材は、前記入力部材の軸方向と平行な中心軸を有するコイルバネである、
逆入力遮断クラッチ。
(2)
前記弾性部材は、先端部が前記一対の係合子にそれぞれ接続される捩りコイルバネである、
(1)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(3)
前記係合子は、前記弾性部材の先端部を係止する係止部を有する、
(1)又は(2)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(4)
前記係止部は、前記係合子を厚み方向に貫通する孔である、
(3)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(5)
前記係止部は、前記係合子の端部に形成された切欠きである、
(3)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(6)
前記係止部は、前記係合子の前記入力側被係合部と一体的に形成されている、
(3)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(7)
前記入力部材及び前記出力部材の一方は、前記軸方向に突出し、前記弾性部材のコイル部に挿入される支柱部を有する、
(1)から(6)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
(8)
前記軸方向及び前記第一方向に直交する方向を第二方向とすると、
前記弾性部材は、前記一対の係合子の前記第二方向の両側に一対設けられており、
前記一対の弾性部材は、前記入力部材の中心軸方向から見て、前記入力部材の中心軸に関して互いに点対称に設けられている、
(1)から(7)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
【符号の説明】
【0060】
1,201,301,401,501 逆入力遮断クラッチ
2 入力部材
3 出力部材
4 ハウジング
5 係合子
6 弾性部材
25 入力側係合部
35 出力側係合部
40 被押圧面
51 押圧面
55 入力側被係合部
56 出力側被係合部
58,258,358 係止部
62 先端部
429 支柱部
D1 第一方向
D2 第二方向
O (弾性部材の)中心軸