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  • 特開-芝生マット 図1
  • 特開-芝生マット 図2
  • 特開-芝生マット 図3
  • 特開-芝生マット 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170167
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】芝生マット
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/20 20180101AFI20241129BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A01G20/20
A01G7/00 602C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087184
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】522439504
【氏名又は名称】株式会社土と野菜
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】大城 奈津美
(72)【発明者】
【氏名】中川 典也
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB05
2B022BA02
2B022BB02
(57)【要約】
【課題】マット材を用いて芝生を発芽・育成させる際に、種がマット材からこぼれないようにするとともに、また、種の乾燥を防止し、葉の育成の邪魔にならないような芝生マットを提供する。
【解決手段】コーヒーの麻袋などで構成され、基台5によって波状に構成されたたマット材2と、液体を吸収することで膨張および増粘するベントナイトなどの保水材3と、乾燥した保水材3とともに混合される芝生の種4とを設ける。そして、乾燥させた保水材3と種4とを均一に混合させた後、液体を加えて膨張・増粘させて、麻袋の目から種4がこぼれないようにするとともに、増粘によって種4の流動を防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維で構成されたマット材と、
当該マット材の表面に塗布され、液体を吸収することで膨張および増粘した保水材によって芝生の種を包み込ませた混合体と、
を備えたことを特徴とする芝生マット。
【請求項2】
前記マット材が、波状部を有するものであり、
前記混合体が、前記波状部の凹部に塗布されたものである請求項1に記載の芝生マット。
【請求項3】
前記マット材が、麻袋で構成されるものである請求項1に記載の芝生マット。
【請求項4】
前記保水材が、ベントナイトもしくはモンモリナイトで構成された請求項1に記載の芝生マット。
【請求項5】
液体を吸収させることで膨張および増粘する保水材を乾燥させた状態で芝生の種を混合させる工程と、
前記芝生の種と保水材に水を加えてゲル状の混合体を形成し、当該混合体の内部に、芝生の種を包み込ませる工程と、
当該ゲル状の混合体をマット材の上に塗布させるようにしたことを特徴とする芝生マットの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生を種から育成するとともに、芝生を育成させた後に出荷しやすくした芝生マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、芝生を種から育成する場合、整地された土壌に種を撒き、その上から目土を行って発芽させるようにしている。そして、発芽させて、一定期間育成させた後に、その芝生を矩形状に切断して掘り起こし、出荷作業を行うようにしている。
【0003】
しかしながら、このように土壌に種を撒く方法では、発芽条件に適した環境下として、例えば、暖地型芝では20℃から30℃の気温の環境下、あるいは、寒地型芝生では15℃から25℃の環境下でしか種を撒くことができない。また、発芽した芝を出荷する場合、矩形状に芝生を切り取るとともに、一定の厚みで地面から掘り起こす必要があるため、コストや手間が掛かってしまうといった問題がある。
【0004】
これに対して、繊維で構成されたマット材の上に保水材を設け、その保水材に芝生の種を撒いて発芽・育成させる方法も提案されている(特許文献1、2など参照)。
【0005】
このような方法によれば、マット材を発芽しやすい温度下に置いて発芽させることができるとともに、一定の大きさに育った芝生を、マット材のまま出荷させることができるため、芝生の発芽や育成、出荷作業などを大幅に簡素化させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-14284号公報
【特許文献2】国際公開96/24238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような方法で芝生を育成させる場合、次のような問題がある。
【0008】
すなわち、このようにマット材の上に種を撒く際、マット材の目が粗いと、種がマット材から落ちてしまう。このため、種撒きに適した目の細かいマット材を使用する必要がある。しかるに、このように目の細かいマット材を使用すると、根の育成に悪影響が出てしまう。また、このようなマット材に種を撒く場合、土壌に種を撒く場合と比べて、土壌のような保水性がないため、マット材の上に、乾燥を防ぐため表面材などを被せる必要がある(特許文献2参照)。しかしながら、このような表面材を被せると、発芽した葉の育成の邪魔になるといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、マット材を用いて芝生を発芽・育成させる際に、種がマット材からこぼれないようにするとともに、また、種の乾燥を防止し、葉の育成の邪魔にならないような芝生マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、繊維で構成されたマット材と、当該マット材の表面に塗布され、液体を吸収することで膨張および増粘した保水材によって芝生の種を包み込ませた混合体と、を備えるようにしたものである。
【0011】
このように構成すれば、芝生の種を保水材で包み込ませた状態で塗布させるため、マット材の目が粗くても、芝生の種が繊維の間から落ちてしまうようなことがなくなる。また、種を保水材で包み込ませているため、表面材などを被せる必要がなくなり、葉の育成に邪魔になることがなくなる。さらには、保水材による増粘性によって種の流動を防止することができ、種の浮き上がりなどを防止することができるようになる。
【0012】
また、このような発明において、前記マット材を設ける場合、波状部を備えるように構成し、この波状の凹部に前記混合体を塗布させるようにする。
【0013】
このように構成すれば、マット材の凹部に、種や保水材の混合体を直線状に塗布させた場合、混合体の空気に対する接触面積を減らすことができ、水分の蒸発を抑えることができるようになる。
【0014】
さらに、このようなマット材として、麻袋を用いるようにする。
【0015】
このように構成すれば、コーヒー豆の袋などの麻袋を活用することができ、ゴミの排出量を低減させることができるとともに、出荷の際に、芝生マットの重量を麻袋の強度で支えることができるようになる。
【0016】
また、前記保水材として、ベントナイトもしくはモンモリナイトを用いるようにする。
【0017】
このように構成すれば、水分の吸収によって増粘させることができ、マット材の隙間から芝生の種が溢れるようなことがなくなるとともに、混合体の中における種の流動を防ぐことができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、芝生の種を保水材で包み込ませた状態で塗布させるため、マット材の目が粗くても、芝生の種が繊維の間から落ちてしまうようなことがなくなる。また、種を保水材で包み込ませているため、表面材などを被せる必要がなくなり、葉の育成に邪魔になることがなくなる。さらには、保水材による増粘性によって種の流動を防止することができ、種の浮き上がりなどを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態における芝生マットと基台を示す図
図2】同形態の射出装置によって混合体を塗布する状態を示す側面概略図
図3】他の実施の形態におけるマット材を部分的に引っ張ることによって凹部を形成する状態を示す図
図4】同形態における育成した芝生と平面状にした芝生マットを示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
この実施の形態における芝生マット1は、図1図2に示すように、繊維で構成されたマット材2と、種4と保水材3に液体を加えて膨張・増粘させた混合体30とを設け、この混合体30をマット材2の上に塗布させるようにしたものである。そして、このように構成することによって、目の粗いマット材を使用した場合であっても、繊維の隙間から芝生の種4がこぼれないようにするとともに、種4の乾燥を防止し、また、増粘によって種4の流動を防止できるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態で説明される芝生としては、種から育成されるものであって、例えば、バミューダグラス、ノシバ、センチピードグラス、ベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、ペレニアルライグラスなどが挙げられる。
【0022】
まず、マット材2は、繊維で構成されるものであって、麻や綿などのような天然繊維で構成されたものや、ポリエステルやレーヨンなどの化学繊維で構成されたもの、あるいは、これらを混合させた繊維などで構成される。このとき、運搬時における強度を確保するとともに、マット材2自体に吸水性を持たせたものや、土壌に敷設させた際に微生物の作用によって分解されるような材料を用いるとよい。このようなマット材2としては、例えば、コーヒー豆を入れた麻袋を使用することができる。このような麻袋を用いれば、コーヒー豆の運搬用の麻袋の再利用を図ることができるとともに、ごみの排出量の削減を図ることができるようになる。なお、このような麻袋を用いる場合は、袋状になった麻袋の縁部を切断して平面状にしておく。
【0023】
このマット材2の上に種4とともに塗布される保水材3は、液体を吸収することによって膨張するとともに増粘し、これによって、内部に芝生の種4を包み込ませることができる材料が用いられる。このような材料としては、高分子吸水ポリマーや、ベントナイト、モンモリナイトの破砕粉などのように、水を吸収して数倍から数百倍に膨張するような素材が用いられる。なお、このような材料を用いる場合、乾燥時における粒子の大きさが、マット材2の目の隙間よりも大きいものを用いる。これにより、乾燥によって収縮した場合であっても、マット材2から保水材3が溢れるようなことがない。そして、このように乾燥させた保水材3を、芝生の種4とともに均一に混合させ、これに液体を加えて、種4を分散させた混合体30を形成する。このとき、乾燥させた保水材3の上から液体を加えるのではなく、逆に、あらかじめ容器に入れられた液体の上から粒状の保水材3と種4を少量ずつ加えて、粘性を有する混合体30を形成するようにしてもよい。このときの保水材3の配合量としては、例えば、液体に対してベントナイトを5重量パーセントから40重量パーセント、好ましくは、10重量パーセントから30重量パーセントとし、ゲル状もしくは粘土状となるようにしておく。
【0024】
このような混合体30をマット材2上に塗布する場合、図2に示すような射出装置6を用いてマット材2の上に塗布する。
【0025】
なお、混合体30をマット材2の上に塗布する場合、平面状のマット材2の上に直線状に混合体30を塗布させると、その混合体30が盛り上がり、空気に接触する面積が大きくなってしまう。そこで、可能な限り空気に対する接触面積が小さくなるように、マット材2に凹部21を設け、その凹部21に混合体30を塗布するようにしておく。
【0026】
マット材2に凹部21を形成する方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、間欠的にマット材2を円形に押圧して円形の凹部21を形成する方法や、図1図2に示すように、マット材2を交互に屈曲させて波状の凹部21を形成する方法などを用いることができる。
【0027】
そして、このように形成された凹部21に混合体30を塗布する場合、図1に示すように、表面に波状部51を有する基台5を設けておき、この上にマット材2を載せて波状の凹部21を形成する。
【0028】
あるいは、図3に示すように、マット材2の左右端部を部分的に左右方向に引っ張り、これによって、引っ張られていない部分を下方に垂らしてマット材2を波状にして、凹部21を形成する。
【0029】
次に、このように構成されたマット材2を用いた芝生マット1を生成する方法について説明する。
【0030】
まず、マット材2を設ける場合、コーヒー豆の麻袋の縁部を切断し、平面状にした後、コーヒー豆の粕などを落とすなどの下処理をしておく。
【0031】
そして、このように下処理されたマット材2を、図1図2に示すように、基台5の上に載せ、その表面に形成された波状部51に沿うように、マット材2を上から押圧して凹部21を形成する。
【0032】
あるいは、図3に示すように、マット材2の左右端部を部分的に左右方向に引っ張り、マット材2を波状にして、凹部21を形成する。
【0033】
一方、このマット材2とは別に、乾燥したベントナイトなどの保水材3と芝生の種4を混合させ、これらを均一に撹拌させる。
【0034】
そして、これに液体を入れてゲル状の混合体30を生成し、種4が混合体30内で流動しないようにしておく。なお、このとき、上述の順序とは逆に、保水材3に液体を入れてゲル状にした後に種4を入れるような方法を採用すると、種がゲル状の保水材3の中に浸透せず、また、その種を分散させることが困難になる。このため、先に乾燥した保水材3と種4を混合させておき、その後、液体を加えて種4を包み込ませるようにする。
【0035】
次に、図2に示すように、この混合体30を射出装置6の中に入れ、マット材2の表面の凹部21に塗布し、混合体30を線状に塗布した場合における空気への接触面積を小さくしておく。
【0036】
そして、この混合体30を塗布した芝生マット1を発芽しやすい環境下に置き、種4を発芽させる。その後、図4に示すように、マット材2を平面状に引っ張り、その状態で、肥料を与えて葉や匍匐茎を成長させる。このとき使用される肥料としては、バイオガスプラントなどから排出された消化液を希釈化した液肥などを用い、その消化液に含まれる成分を吸収させるようにするとよい。また、保水材3としてベントナイトを使用していると、そのベントナイトのイオン交換性によって、消化液に含まれるアンモニウムイオンとベントナイトに含まれるカリウムイオンとがイオン交換され、芝生の育成に必要なカリウムを供給できるようになる。
【0037】
そして、このように芝生を成長させて、匍匐茎や葉がマット材2の全体まで広がった状態で、そのマット材2を基台5から取り外し、出荷する。
【0038】
このように上記実施の形態によれば、繊維で構成されたマット材2と、当該マット材2の表面に塗布され、液体を吸収することで膨張および増粘した保水材3によって芝生の種4を包み込ませた混合体305と、を備えるようにしたので、マット材2の目が粗くても、芝生の種4が繊維の間から落ちてしまうようなことがなくなる。また、種4を保水材3で包み込ませているため、表面材などを被せる必要がなくなり、葉の育成に邪魔になることがなくなる。さらには、保水材3による増粘性によって種4の流動を防止することができ、種4の浮き上がりなどを防止することができるようになる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0040】
例えば、上記実施の形態では、ベントナイトに水を吸収させて増粘および膨張させるようにしたが、増粘性を高めるために、他の増粘剤を入れるようにしてもよい。このとき、芝生の育成に最適なpHとなるように、液体に対して1重量パーセントから3重量パーセントの石灰を入れて増粘させるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、混合体30をマット材2の上に塗布して種4を発芽・育成させ、出荷させるようにしたが、家庭で種4から芝生を育成できるように、マット材2と、乾燥させた状態の保水材3および種4を分離して販売できるようにしてもよい。このように構成すれば、梱包を小さくすることができるため、出荷時における重量や大きさによる運賃を低減させることができるようになる。
【0042】
さらに、上記実施の形態では、ベントナイトなどの保水材3と種4とを混合させるようにしたが、これ以外に土壌などを設けて発芽・育成させるようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、バイオガスプラントの消化液を希釈化させたものを液肥として用いるようにしたが、水や、その水に市販の液体肥料を混合させたものを用いて育成させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1・・・芝生マット
2・・・マット材
21・・・凹部
3・・・保水材
4・・・芝生の種
5・・・基台
51・・・波状部
図1
図2
図3
図4