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特開2024-17017物品固定具、物品の取り外し方法、及び粘着シートユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017017
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】物品固定具、物品の取り外し方法、及び粘着シートユニット
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240201BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119372
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】木下 康宏
(72)【発明者】
【氏名】國分 玲子
(72)【発明者】
【氏名】根本 勝理
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA14
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】被着体に対するダメージを低減することができる物品固定具、物品の取り外し方法、及び粘着シートユニットを提供する。
【解決手段】物品固定具は、物品を被着体上に固定する、物品固定具であって、被着体上に形成可能であり、被着体と対向する第1の主面、及び被着体の反対側の第2の主面を有する保護層と、保護層の第2の主面に接着するための粘着シートユニットと、を備え、粘着シートユニットは、第2の主面に接着するための第1の粘着層を有し、粘着シートユニットは、物品が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を被着体上に固定する、物品固定具であって、
前記被着体上に形成可能であり、前記被着体と対向する第1の主面、及び前記被着体の反対側の第2の主面を有する保護層と、
前記保護層の第2の主面に接着するための粘着シートユニットと、を備え、
前記粘着シートユニットは、前記第2の主面に接着するための第1の粘着層を有し、
前記粘着シートユニットは、前記物品が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている、物品固定具。
【請求項2】
前記粘着シートユニットは、前記物品が取り付けられた時に、少なくとも前記保護層及び前記物品の一方に接着していない複数のタブ部を有する、請求項1記載の物品固定具。
【請求項3】
前記複数のタブ部のうち少なくとも2つは、前記粘着シートユニットのうち、前記物品の取り付け位置を介して互いに対向する位置に形成されている、請求項2に記載の物品固定具。
【請求項4】
前記保護層は、
前記第2の主面を有する保護基材と、
前記第1の主面に形成された第2の粘着層と、を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の物品固定具。
【請求項5】
前記保護層の前記第2の粘着層は、プロテインレザーに対する30℃75%RH、300gの負荷条件において50分以上の保持力を有する、請求項4に記載の物品固定具。
【請求項6】
前記粘着シートユニット、及び前記保護層には孔が形成され、
前記保護層の前記孔のサイズは、前記粘着シートユニットの前記孔のサイズよりも小さい、請求項1~3の何れか一項に記載の物品固定具。
【請求項7】
前記保護層の保護基材の引張強度が100N/25mm未満である、請求項1~3の何れか一項に記載の物品固定具。
【請求項8】
前記保護層は、前記被着体に保護液を塗布することで層として形成される、請求項1~3の何れか一項に記載の物品固定具。
【請求項9】
請求項1~3の何れか一項に記載の物品固定具で固定された前記物品を取り外す物品の取り外し方法であって、
前記被着体上に前記保護層を残した状態で、前記粘着シートユニットを少なくとも二つの方向に延伸することで前記保護層から脱離させる、物品の取り外し方法。
【請求項10】
物品を被着体上に固定するときに、前記被着体上に形成された保護層と、前記物品との間に配置される粘着シートユニットであって、
前記保護層に接着される第1の粘着層を有し、
前記物品が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている、粘着シートユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、物品固定具、物品の取り外し方法、及び粘着シートユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブルデバイス技術の進歩と普及に伴い、医療現場においても様々な医療用機器やヘルスモニタリング機器を皮膚に直接固定する機会が増えている。持続的で信頼できるモニタリングやセンシングのため、当該機器は確実に皮膚上に固定する必要がある。当該機器の固定には医療用テープを使用されるのが一般的である。固定力とともに課題となるのは、除去時に肌に負担をかけないことである。特に機器が医療用テープ上に一体化されている場合、機器の除去はテープを皮膚上から角度をつけずに引きはがすことになる。従って、皮膚が大きく持ち上げられて、皮膚剥離や皮膚裂傷などのトラブルが発生することがある。
【0003】
下記特許文献1は、接着力のコントロールされたアクリル粘着医療用テープを開示している。下記特許文献2は、シリコーン粘着医療用テープを開示している。これらのテープでは、前述したトラブルの発生リスクを低減することができる一方、固定力が不足することで、本来のモニタリング、センシングの目的を提供することができないことがあった。近年、1週間、2週間、またはそれ以上の長期間にわたり連続してモニタリング、センシングするケースも増えており、強い固定力と除去時の肌への負担の軽減の両立が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4799778号公報
【特許文献2】特許5956524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、被着体から物品を取り外すときには、被着体から物品固定具を剥離させる必要がある。物品が取り付けられた状態で物品固定具を剥離させると、被着体から角度をつけずに引きはがすことになるため、被着体にダメージを与えてしまうという問題がある。
【0006】
本発明の一側面は、被着体に対するダメージを低減することができる物品固定具、物品の取り外し方法、及び粘着シートユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る物品固定具は、物品を被着体上に固定する、物品固定具であって、被着体上に形成可能であり、被着体と対向する第1の主面、及び被着体の反対側の第2の主面を有する保護層と、保護層の第2の主面に接着するための粘着シートユニットと、を備え、粘着シートユニットは、第2の主面に接着するための第1の粘着層を有し、粘着シートユニットは、物品が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている。
【0008】
本発明の一形態に係る物品の取り外し方法は、上述の物品固定具で固定された物品を取り外す物品の取り外し方法であって、被着体上に保護層を残した状態で、粘着シートユニットを少なくとも二つの方向に延伸することで保護層から脱離させる。
【0009】
本発明の一形態に係る粘着シートユニットは、物品を被着体上に固定するときに、被着体上に形成された保護層と、物品との間に配置される粘着シートユニットであって、保護層に接着される第1の粘着層を有し、物品が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態によれば、被着体に対するダメージを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る物品固定具の斜視図である。
図2】物品固定具の断面図である。
図3】物品固定具の断面図である。
図4】物品固定具の断面図である。
図5】粘着シートユニットを示す平面図である。
図6】物品固定具による物品の固定、及び取り外しの手順を示す図である。
図7】粘着シートユニットを示す平面図である。
図8】粘着シートユニットを示す平面図である。
図9】粘着シートユニットを示す平面図である。
図10】粘着シートユニットを示す平面図である。
図11】粘着シートユニットを示す平面図である。
図12】粘着シートユニットを示す平面図である。
図13】試験のために選択できる部材を示す表である。
図14】試験のために選択できる部材を示す表である。
図15】剥離と引張の接着力の試験結果を示す図である。
図16】剥離と引張の接着力の試験結果を示す図である。
図17】実施例と比較例の試験条件及び試験結果を示す表である。
図18】静的せん断試験の結果を示す表である。
図19】引張強度試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
本実施形態に係る物品固定具1は、物品2を被着体3上に固定するための部材である。被着体3は、例えば、人間の皮膚である。その他、被着体3は、動物の皮膚などであってもよいが限定されない。物品2は、人間の皮膚に取り付ける各種機器である。物品2として、持続血糖測定センサー、インスリンポンプ、心拍数センサー、体温計、各種ウェアラブルデバイス、ICチップ、NFCタグなど、さまざまな機器が採用される。
【0014】
図1に示すように、物品固定具1は、保護層4と、粘着シートユニット5と、を備える。保護層4は、被着体3上に形成される部材である。保護層4は、被着体3上に形成可能であり、被着体3と対向する第1の主面4a、及び被着体3の反対側の第2の主面4bを有する。図2(a)に示すように、保護層4Aは、第2の主面4bを有する保護基材11と、第1の主面4aに形成された第2の粘着層12と、を有する。保護基材11は、第1の主面4a側に形成された第2の粘着層12を支持するためのシート状の部材である。第2の粘着層12は、被着体3に対して接着するための部材である。
【0015】
また、図2(b)に示すように、保護層4Bは、被着体3に保護液を塗布することで保護被膜層として形成されてよい。
【0016】
保護層4A,4Bの第2の粘着層12は、プロテインレザーTM(イデアテックスジャパン株式会社)に対する30℃75%RH、300gの負荷条件において50分以上、200分以上、または500分以上の保持力を有してよい。
【0017】
図2(a)に示す保護層4Aにおける第2の粘着層12の成分として、例えば次のようなものを採用してよい。第2の粘着層12は、典型的には、医療用途に用いるのに好適な接着剤類が採用されてよい。一般に、医療用途に好ましい接着剤類としては、PCT国際公開特許WO03057741、PCT国際公開特許WO9918166及びPCT国際公開特許WO0032142に記載されるもののような、アクリル系感圧接着剤類、ゴム系感圧接着剤類及びシリコーン系感圧接着剤類が挙げられる。例えば、ゴム系感圧接着剤類は、スチレンイソプレンスチレン(SIS)ゴムなどの合成ゴムとロジン系粘着付与剤などの粘着付与剤などとの混合物であってもよい。その他の合成ゴム類としては更にスチレンブタジエンスチレン(SBS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブチルゴム(NBR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、及びフッ素ゴムがある。
【0018】
第2の粘着層12に採用できる別の感圧接着剤は、例えば(i)少なくとも平均4個の炭素原子を持つアルキル基を有するモノエチレン不飽和(メタ)クリレート(以下、これを「第1モノマー」と呼ぶ)の少なくとも1つと(ii)モノエチレン不飽和強化モノマー(以下、これを「第2モノマー」と呼ぶ)の少なくとも1つとのコポリマーであってよい。その他、第2の粘着層12として、特表2009-530058号公報の段落0013~0038に記載されているものを採用してよい。
【0019】
図2(a)に示す保護基材11は、医療用途での感圧接着テープ類として使用可能な任意の基材であってよい。例えば、保護基材11は、有機ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマーなどのポリオレフィン類、もしくはポリウレタン類、ポリエステル類、ポリアミド類またはその他のプラスチック類の有孔フィルム、オープンセル状フォーム・シート、フォームまたはそれらのラミネート加工した組み合わせであってよい。保護基材11はまた、それ自体が空気透過性かつ湿気透過性であってもよい。例えば、保護基材11は、布地類、不織布類、メルトブローンウェブ類、フォーム類、スパンボンデッドウェブ類、熱接着ウェブ類、スパンレースウェブ類、紙、及び熱エンボス不織布類、並びに米国特許第5,496,603号に記載されているものでできていてもよい。より正確には、保護基材11の例は、織物類、綿、ポリビニルアルコールまたはセルロースなどの有機ポリマーのニット織物類または不織布類、紙、及びポリビニルアルコールの有孔フィルム類であってよい。所望であれば、保護基材11は、公知の撥水剤によって撥水処理してよい。保護基材11は、弾性または非弾性でよい。好ましくは、保護基材11は、良好な透気性及び透湿性を有し、かつ良好な弾性を持つ。特に好ましいのは、弾性のある綿布地(織物類)または不織布類である。更に、防水基材類(例えば、ウレタンフィルム類)を使用してもよい。保護基材11は、15~2,000マイクロメートルの厚みを有してよい。
【0020】
図2(b)に示す保護層4Bを採用する場合、保護層4Bは次のように形成されてよい。保護層4Bは、シリコーンアクリル樹脂及びアルカン溶媒を含有する下地剤を皮膚に塗布して、該皮膚上に固体皮膜を形成する皮膜形成工程によって形成されてよい。なお、保護層4Bとして、特開2020-103427号公報の段落0013~0025に記載されたものが採用されてよい。
【0021】
皮膜形成工程は、シリコーンアクリル樹脂及びアルカン溶媒を含有する下地剤を皮膚に塗布することによって、皮膚上に固体皮膜を形成する工程である。シリコーンアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシロキシシランの単独重合体であってもよく、当該シロキシシランと他の重合性モノマーとの共重合体であってもよい。
【0022】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシロキシシランとしては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0023】
シロキシシランとの共重合体を形成することのできる重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジメチルイタコネート、ジ-n-ブチルイタコネート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、αメチルスチレン、スチレン、p-t-ブチルスチレン、4-メトキシスチレン、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、ビニルベンゾエート、ビニルナフタレン、フッ素化シロキサン、フッ素化イタコネート、フッ素化(メタ)アクリレート(例えば、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等)、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデセニル(メタ)アクリレート、オクタデセニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
図1に示すように、粘着シートユニット5は、保護層4の第2の主面4bに接着する。粘着シートユニット5は、物品2が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている。粘着シートユニット5は、物品2を被着体3上に固定するときに、被着体3上に形成された保護層4と、物品2との間に配置される。粘着シートユニット5は、一枚の粘着シートで構成されてもよく、複数枚の粘着シートを組み合わせることによって構成されてもよい(例えば、図9、10、12参照)。図2(a)に示すように、粘着シートユニット5は、延伸可能な基材13と、第2の主面4bに接着するための第1の粘着層14と、物品2に接着するための第3の粘着層16と、を備える。第1の粘着層14は、基材13の保護層4側に形成される。第3の粘着層16は、基材13の物品2側に形成される。
【0025】
図2(a)に示すような粘着シートユニット5として、延伸性両面テープが採用されてよい。基材13は、例えば、発泡体によって構成されており、ポリマー発泡によって構成されてもよい。ポリマー発泡としては、ポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム(例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム)、又はアクリルフォーム等が挙げられる。粘着層14,16は、例えば、感圧接着剤(PSA)によって構成されている。
【0026】
粘着シートユニット5として、弾性基材として使用可能な多層フィルムを基材13として採用してもよい。基材13は、伸張及び引張に必要な力を最小にするために、低い弾性率を有してよい。基材13は、伸長及び引張りに必要な距離を最小にするために、低い伸長性を有してよい。基材13の変形の大部分は塑性変形であり、その弾性変形は最小であることが好ましい。塑性変形を可能とするために、基材13は、コアと、コアの一方側に少なくとも第1の表皮とを有してよい。コアの一方の側面に第1の表皮があり、他方の側面に第2の表皮があってよい。最大強度のために設計された多層フィルムは、表皮を形成する二つの塑性変形層の間に挟まれたコアを形成する弾性層を含む。
【0027】
また、図2(b)に示すように、粘着シートユニット5は、基材13を有さない、第1の粘着層14だけで構成される延伸剥離転写テープが採用されてもよい。この場合の第1の粘着層14は、基材13がなくとも粘着層自身が適度な延伸性と凝集力を有しているため、粘着層単独での延伸剥離が可能である。
【0028】
図5を参照して、粘着シートユニット5の一例について説明する。図5(a)の粘着シートユニット5は、一枚の粘着シート20によって構成される。なお、図5(a)に示す寸法は一例であり、適宜変更可能である。粘着シートユニット5は、長手方向を有する長方形の形状を有する。粘着シートユニット5は、物品2が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている。ここでは、粘着シートユニット5は、長手方向の一方側の方向D1及び他方側の方向D2の二つの方向に延伸可能に形成されている(図5(b)参照)。
【0029】
粘着シートユニット5は、物品2が取り付けられた時に、少なくとも保護層4及び物品2の一方に接着していない複数のタブ部21を有する。複数のタブ部21のうち少なくとも2つは、粘着シートユニット5のうち、物品2の取り付け位置を介して互いに対向する位置に形成されている。ここでは、長手方向の両端に物品2の取り付け位置を介して互いに対向するように、二つのタブ部21が形成される。粘着シートユニット5のうち、タブ部21以外の箇所は、粘着力を有する粘着部22として構成される。タブ部21は、粘着力を有さない。具体的には、図2(a)の形態では、基材13のうち、粘着層14,16が形成されない箇所をタブ部21としてよい。これにより、タブ部21は、保護層4及び物品2に接着しないため、容易に指で掴むことができる。なお、図3(a)の様にタブ部21の片面が粘着力を有することで、保護層4Aまたは物品2の一方に仮止めが可能な構成であってもよい。図3(a)の例では、図3(b)の様に粘着シートユニット5のタブ部21を物品2に仮止めできる構成(図中の「A」の部分を参照)となっている。係る構成により、貼付している間にタブ部21が邪魔に感じることを軽減することが可能となる。剥離の際には、タブ部21と物品2との間の仮止め部分(破線部分)をまず剥離し、その後は、他の形態と同様の方法で取り外しを行う。図2(b)の例の場合、タブ部21を構成するために、第1の粘着層14の一部の接着力が発揮されない様にコーティング層17を形成する。コーティング層17は、フィルム等どのような構成であっても良い。
【0030】
物品2が被着体3(例えば人間の皮膚)に直接接触または近接することが好ましい形態の場合、粘着シートユニット5には孔23が形成されてもよい。なお、保護層4Aにも孔24が形成されてよい(図2(a)参照)。例えば、保護層4Aの孔24のサイズは、粘着シートユニット5の孔23のサイズよりも小さく形成することで、被着体3に第1の粘着層14が直接接着することを防ぐことができる。かかる構成により、粘着シートユニット5の剥離の際に被着体3にダメージを与えることを防ぐことができる。
【0031】
なお、図4は、図2(a)の物品固定具1の貼付を行う前の構成の一例を示す。物品固定具1は、さらに剥離層41,42,43を有する。剥離層41,42,43は、粘着層12,14,16と対向する面に剥離処理剤が塗布されている。剥離層41は第2の粘着層12の第1の主面4a側に設けられる。剥離層42は第1の粘着層14に、剥離層43は第3の粘着層16を覆うように設けられる。取り付けの際には、ユーザーは剥離層41を剥離し、被着体3に保護層4を貼付する。次に、剥離層42を剥離し第2の主面4b上に第1の粘着層14を貼付する。その際に孔23と孔24の位置がずれないように位置合わせを行って貼付することが好ましい。位置合わせがずれて皮膚に直接第1の粘着層14が貼付されないよう、孔23の径は孔24よりも大きいことが好ましい。粘着部22を貼付したのちに、剥離層43を剥離し、第3の粘着層16に機器を張り合わせる。なお、第3の粘着層16は粘着部22側に設けられてもよいし、機器側に設け、基材13上に貼付する形態であってもよい。
【0032】
次に、図6を参照して、物品固定具1による物品2の固定方法、及び物品固定具1で固定された物品2を取り外す物品2の取り外し方法について説明する。図6(a)に示すように、まず、被着体3に保護層4Aを形成する。次に、図6(b)に示すように、保護層4Bの上に粘着シートユニット5を貼り付け、さらにその上に物品2を貼り付ける。これにより、物品2の固定が完了する。
【0033】
物品2を取り外す場合、図6(c)に示すように、被着体3上に保護層4を残した状態で、粘着シートユニット5を二つの方向D1,D2に延伸する。これにより、図6(d)に示すように、保護層4から物品2と共に粘着シートユニット5を脱離させる。次に、図6(e)に示すように、被着体3から保護層4を剥離する。なお、保護層4を剥離せずに、新たな物品2を固定してもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る物品固定具1、物品2の取り外し方法、及び粘着シートユニット5の作用・効果について説明する。
【0035】
医療分野などにおけるウェアラブルデバイスとして、持続血糖測定センサー、インスリンポンプ、心拍数センサー、体温計など、さまざまな機器が健康管理や体調管理に用いられている。このとき、安定した皮膚接触、安定した位置で装置を取り付けることは、信頼できるデータを得るための重要な要素である。従来、このような固定には、医療用テープが一般に使用される。ウェアラブルデバイスを医療用テープで固定する場合、除去時に皮膚にダメージが与えられるという問題が発生する。一般的に、医療用テープは、除去時の皮膚への損傷を最小にするために、ゆっくりとした剥離で除去されるべきである。しかし、硬質のデバイスと共に皮膚から医療用テープを剥離する際に、皮膚へのダメージが大きくなるという問題がある。さらに、ウェアラブルデバイスは同じような場所に繰り返し装着されるため、皮膚に損傷が蓄積されるという問題がある。
【0036】
これに対し、本実施形態に係る物品固定具1は、物品2を被着体3上に固定する、物品固定具1であって、被着体3上に形成可能であり、被着体3と対向する第1の主面4a、及び被着体3の反対側の第2の主面4bを有する保護層4と、保護層4の第2の主面4bに接着するための粘着シートユニット5と、を備え、粘着シートユニット5は、第2の主面4bに接着するための第1の粘着層14を有し、粘着シートユニット5は、物品2が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている。
【0037】
この場合、物品2は、粘着シートユニット5、及び保護層4を介して被着体3に固定される。物品2を被着体3から取り外すときには、被着体3上に保護層4を残した状態で、粘着シートユニット5を少なくとも二つの方向に延伸することで保護層4から脱離させることができる。粘着シートユニット5が脱離することで、物品2も保護層4から取り外される。このとき、被着体3が保護層4で覆われた状態にて、粘着シートユニット5の除去が行われるため、被着体3に対するダメージが低減される。また、粘着シートユニット5は、被着体3の表面に対して平行な方向へ延伸されながら剥がされるため、被着体3に対するダメージを低減でき、保護層4が引き剥がされることも抑制できる。物品2を取り外した後は、保護層4だけを被着体3から剥離させればよいので、物品2と保護層4を同時に剥離させる場合よりも、被着体3に対するダメージを低減できる。あるいは、物品2を取り外した後も保護層4を残しておき、新たな物品2を固定する際に用いてもよい。この場合、保護層4を交換する頻度を低減できるため、保護層4の繰り返しの剥離による被着体3へのダメージを低減できる。また、被着体3が皮膚等の柔らかいものである場合、粘着シートユニット5が一つの方向に延伸する構成だと、延伸に伴って被着体3も一方向に伸び、ダメージが生じたり、上手く剥離ができなかったりすることがあった。
【0038】
粘着シートユニット5は、物品2が取り付けられた時に、少なくとも保護層4及び物品2の一方に接着していない複数のタブ部21を有してよい。この場合、作業者が、容易にタブ部21を指で掴んで、粘着シートユニット5を延伸させることができる。
【0039】
複数のタブ部21のうち少なくとも2つは、粘着シートユニット5のうち、物品2の取り付け位置を介して互いに対向する位置に形成されていてよい。この場合、物品2を挟んで両側から粘着シートユニット5を引っ張ることができるため、除去作業を行い易く、粘着シートユニット5に対する力の掛かり方を安定させることができる。
【0040】
保護層4は、第2の主面4bを有する保護基材11と、第1の主面4aに形成された第2の粘着層12と、を有してよい。この場合、作業者は、保護基材11を保持して容易に被着体3に保護層4を貼り付けることができる。
【0041】
保護層4の第2の粘着層12は、プロテインレザーTMに対する30℃75%RH、300gの負荷条件において50分以上の保持力を有してよい。この場合、被着体3に対する負担が少ない状態にて、保護層4を長期間にわたって被着体3に貼り付けておくことができる。
【0042】
粘着シートユニット5、及び保護層4には孔23,24がそれぞれ形成され、保護層4の孔24のサイズは、粘着シートユニット5の孔23のサイズよりも小さくてよい。この場合、薬剤投入用の針などが孔24,23を通過することができる。また、保護層4の孔24から、粘着シートユニット5の第1の粘着層14がはみ出ることで、被着体3に貼り付いてしまうことを抑制できる。
【0043】
保護層4の保護基材11の引張強度が100N/25mm未満であってよい。この場合、被着体3に対する負担が少ない状態にて、保護層4を長期間にわたって被着体3に貼り付けておくことができる。
【0044】
保護層4は、被着体3に保護液を塗布することで層として形成されてよい。この場合、所望の形状の保護層4を形成することができる。
【0045】
本実施形態に係る物品の取り外し方法は、上述の物品固定具1で固定された物品2を取り外す物品2の取り外し方法であって、被着体3上に保護層4を残した状態で、粘着シートユニット5を少なくとも二つの方向に延伸することで保護層4から脱離させる。
【0046】
この物品の取り外し方法によれば、上述の物品固定具1と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0047】
本発明の一形態に係る粘着シートユニット5は、物品2を被着体3上に固定するときに、被着体3上に形成された保護層4と、物品2との間に配置される粘着シートユニット5であって、保護層4に接着される第1の粘着層14を有し、物品2が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている。
【0048】
この粘着シートユニット5によれば、上述の物品固定具1と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0049】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0050】
粘着シートユニット5の構成は特に限定されない。例えば、図7に示す粘着シートユニット5を採用してよい。図7(a)に示す粘着シートユニット5は、十字状の形状を有する。物品2が取り付けられる位置を二方向で挟むように、合計四つのタブ部21が四方の端部に形成される。粘着シートユニット5は、四つの方向(方向D1~D4)に延伸可能である。粘着シートユニット5を除去するときは、図7(b)に示すように、互いに対向する方向D1及び方向D2へ粘着シートユニット5を延伸する。次に、図7(c)に示すように、方向D1,D2に直交して互いに対向する方向D3及び方向D4へ粘着シートユニット5を延伸する。
【0051】
図8に示す粘着シートユニット5を採用してよい。図8(a)に示す粘着シートユニット5は、長円状の大きな孔23を有する点で図5(a)に示す粘着シートユニット5と相違している。孔23は、粘着シートユニット5の長手方向に延びる長円であり、両側のタブ部21まで差し掛かっている。図8の粘着シートユニット5の他の構成については図5と同様である。
【0052】
図9に示す粘着シートユニット5を採用してよい。図9(a)に示す粘着シートユニット5は、二つの粘着シート20A,20Bの組み合わせによって構成されている。各粘着シート20A,20Bの粘着部22は、直角三角形の形状を有する。粘着シート20A,20Bは、互いの斜辺22aが離間した状態で対向するように配置される。これにより、粘着シート20A,20Bの組み合わせにより、粘着シートユニット5が長方形状に構成される。粘着シートユニット5は、長手方向の一方側の方向D1及び他方側の方向D2の二つの方向に延伸可能に形成されている。粘着シートユニット5を除去するときは、図9(b)に示すように、粘着シート20Aを方向D1へ延伸させて除去する。次に、図9(c)に示すように、粘着シート20Bを方向D2へ延伸させて除去する。
【0053】
図10に示す粘着シートユニット5を採用してよい。図10(a)に示す粘着シートユニット5は、二つの粘着シート20A,20Bの組み合わせによって構成されている。各粘着シート20A,20Bの粘着部22は、L字状の形状を有する。粘着シート20A,20Bは、中心点CPを基準として互いに点対称となるように配置される。粘着シートユニット5は、一方側の方向D1及び他方側の方向D2の二つの方向に延伸可能に形成されている。粘着シートユニット5を除去するときは、図10(b)に示すように、粘着シート20Aを方向D1へ延伸させる。次に、図10(c)に示すように、粘着シート20Bを方向D2へ延伸させる。図10(d)に示すように、各粘着シート20A,20Bは、大半の領域が延伸されて剥がれやすい状態となっているため、物品2を容易に取り外すことができる。
【0054】
図11に示す粘着シートユニット5を採用してよい。図11(a)に示す粘着シートユニット5は、一つの粘着シート20によって構成されている。粘着シートユニット5は、長尺な粘着シート20を円形に巻いた形状を有する。粘着シートユニット5は、一の方向D1へ延伸可能であり、且つ、全周にわたる方向DRへ延伸可能である。方向DRへ延伸可能な状態であれば、中心点CPに対して全方向へ延伸可能であることであるため、複数方向へ延伸可能な構成である。粘着シートユニット5を除去するときは、図11(b)に示すように、まず粘着シートユニット5を方向D1へ延伸させる。次に、タブ部21を引っ張りながら全周にわたる方向DRへタブ部21を回転させる。これにより、粘着シートユニット5は、徐々に剥離される。
【0055】
図12に示す粘着シートユニット5を採用してよい。図12(a)に示す粘着シートユニット5は、四つの粘着シート20A,20B,20C,20Dを組み合わせることで、十字状の形状を有する。物品2が取り付けられる位置を二方向で挟むように、合計四つのタブ部21が十字の四方の端部に形成されるように、粘着シート20A,20B,20C,20Dが配置される。粘着シートユニット5は、四つの方向(方向D1~D4)に延伸可能である。粘着シートユニット5を除去するときは、図12(b)に示すように、粘着シート20Aを方向D1へ延伸させて除去する。次に、図12(c)に示すように、粘着シート20Bを方向D2へ延伸させて除去する。次に、図12(d)に示すように、粘着シート20Cを方向D3へ延伸させて除去する。次に、図12(e)に示すように、粘着シート20Dを方向D4へ延伸させて除去する。
【0056】
[評価試験]
物品固定具の評価を行うための各種試験を行った。試験のために選択できる部材を図13及び図14に示す。また、試験に用いるストレッチリリース接合テープを「SRT-1」「SRT-2」「SRT-3」の三種類準備した。なお、ストレッチリリース接合テープは、実施形態において粘着シートユニットとして用いられるテープである。
【0057】
(SRT-1:ポリオレフィンフィルムの両面テープ)
まず、AFFINITY 1850とAFFINITY 8852の共押出により延伸性ポリオレフィンフィルムを調製した。当該フィルムの層状構造は、「8852/1850/8852=0.8ミル/0.4ミル/0.8ミル」である。次に、アクリル酸イソオクチルとアクリル酸を溶液中で共重合した粘着溶液を調製し、ナイフコーターを用いてフイルムバイナ(登録商標)TSB/TSC上に塗布し、乾燥(60℃2分+120℃2分)を行った。これによって得られたPSAシートの厚さは約20μmであった。得られた接着剤転写テープをコロナ処理後の延伸性ポリオレフィンフィルムの両面に積層し、ポリオレフィンフィルムDCテープとして「SRT-1」を得た。
【0058】
(SRT-2:厚手アクリル系粘着転写テープ)
「アクリル酸オクチル/Omnirad 1173=100/0.02(質量部)」の混合物を調製し、ガラス容器に充填した。混合物中の溶存酸素を窒素ガスで置換した。 その後、低圧水銀ランプを用いて数分間紫外線照射して部分重合を行い、粘度約5000 MPa・sの粘性液体を得た。該粘性液体にアクリル酸2部とOmnirad 1173 0.15部を加え、ThinkyミキサーARM-310で混合した。 得られた混合物をフイルムバイナ(登録商標)TSB/TSC上に500μmの厚さで被覆した。 続いて、重合を阻害する酸素を遮断するために、コーティング表面にセラピール(登録商標)BKEを配置し、低圧水銀ランプ(1mW/cm2で3分間および5mW/cm2で3分間)を用いて照射した。これにより、厚手アクリル系粘着転写テープとして「SRT-2」を得た。
【0059】
(SRT-3:発泡ポリエチレンダブルコートテープ)
「アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸イソボルニル/ 1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート/Runtecure1065=56.2/18 7/3 1/0.03/0.03(質量部)」の混合物を調製し、ガラス容器に充填した。混合物中の溶存酸素を窒素ガスで置換した。その後、低圧水銀ランプを用いて数分間紫外線照射して部分重合を行い、粘度3000 MPa・s程度の粘性液体を得た。該粘性液体にIBOA 15部、AA 1.8部、DMAA 3部、Runtecure 1065 0.48部、アルコンP-115 2部、Superchlon(登録商標)930S 0.4部を加え、ThinkyミキサーARM-310で混合した。得られた混合物をフイルムバイナ(登録商標)TSB/TSC上に100μmの厚さで被覆した。 その後、重合を阻害する酸素を遮断するために、コーティング表面にセラピール(登録商標)BKEを配置し、低圧水銀ランプ(0.5mW/cm2で3分間、70mW/cm2で3分間)を用いて照射し、粘着転写テープを得た。次に、発泡ポリエチレンシートVolara(登録商標)XL-H1501の両面にNipolon(登録商標)TZ420を10~20μmの厚みで押し出し積層し、再表面にコロナ処理を施した後、上記で得られた粘着転写テープをラミネートし、SRT-3を得た。
【0060】
[剥離と引張の接着力]
保護層テープ除去時の皮膚へのストレス差を評価するために、保護層テープの接着力を、剥離モードと引張モードとでと比較した。剥離モードの試験は、本特許手法で物品を除去した後の保護層テープ除去を想定している。幅25 mmの試料を準備し、2kgのローラ(往復50mm/sec)を用いてPP板に積層した。試験速度300mm/minのテンシロンを用いて、テープを180°方向に剥離した(図15(a)参照)。一方、引張モードの試験は、従来手法で保護層テープが物品とともに除去されることを想定している。幅25 mmの試料を準備し、2 kgのローラ(往復50mm/sec)を用いてPP板に積層した。積層試料の裏面にPMMAプレートを#9889(皮膚貼付用両面テープ、3M社製)で積層した。積層試料はテンシロン(株式会社エー・アンド・デイ)を用いて300mm/minの試験速度で90°方向に引張った(図15(b)参照)。
【0061】
上述の試験の結果を図15(c)(d)に示す。引張モードでの接着力は剥離モードでの接着力の約10倍であった。このように、従来手法では皮膚に大きなストレスがかかる一方で、本特許手法ではストレスを大幅に軽減できることが分かる。ストレス軽減は剥離時の痛みの軽減や、皮膚裂傷等のリスク低減を示唆している。
【0062】
次に、保護層テープ除去時の皮膚剥離リスクを比較するために、厚紙を用いた剥離試験を行った。まず、厚紙試験基材の調製を行った。C170を50 mm×100 mmのサイズに切断し、3 mm×3 mmのサイズの半切断グリッドをピナクルダイによって提供した。切削深さは全厚の60%であった。切削C170をST-416(薄手両面テープ、3M社製)を用いて厚さ2 mmのPP板に積層し、厚紙試験基材を得た。
【0063】
次に、剥離モード試験として、25 mm幅の保護層テープ試料を2 kgのローラーを用いて厚紙試験基材に積層し、次いで300 mm/分の速度で180度の方向に剥離した。このときの25 mm×25 mm面積の損傷グリッドの数を数えた。引張モード試験として、25 mm幅のテープ試料を2 kgのローラーを用いて厚紙試験基材に積層し、次いでPMMAプレートを#9889で積層した試料の裏面に積層した。積層テープ試料を300 mm/分の試験速度で90度の方向に引っ張った。このときの25 mm×25 mm面積の損傷グリッドの数を数えた。
【0064】
上述の試験の結果を図16(a)(c)に示す。剥離層テープの剥離モードと引張モードとでは、ダメージに差があることを確認し、引張モードにて多くのグリッドが除去された。これは、皮膚の細胞の除去、皮膚の裂け、皮膚の剥離などのリスクが高いことが理解される。
【0065】
[比較試験]
次に、図17に示すように、実施例と比較例を準備し、実施例の物品固定具によって、どの程度の皮膚の損傷を抑制できるかを評価した。まず、上述の厚紙を用いたグリッド試験で述べた厚紙試験基材上に、40 mm巾のメディポアTM(接着面積40 mm×40 mm、長さ25 mmのタブ付き)を保護層に係る保護層テープとして積層し、指でよく押さえた。次に、各接着テープをPMMAプレートの裏面に積層した。その後、メディポアTMにのせて指でよく圧迫した。数分後、PMMAプレート、接着テープおよびメディポアTMを各手順に従って除去した。最後に、破損したグリッドの数を数えた。以下、各実施例及び比較例の試験方法について説明する。
【0066】
(実施例)
実施例1~実施例9では、粘着シートユニットに対応するストレッチリリース接着テープとして、前述の「SRT-1」「SRT-2」「SRT-3」及びコマンドタブ(3M社製、登録商標)の何れかを採用した。また、粘着シートユニットの構造として、図5に示す「SR-1」、図7に示す「SR-2」、図8に示す「SR-3」、図9に示す「SR-4」、図10に示す「SR-5」、図11に示す「SR-6」、及び図12に示す「SR-7」の何れかを採用した。実施例1~実施例9において、どの接着テープ及び構造を用いたかについては、図17に示される。実施例1~実施例9では、各接着テープを定められた方向(図5図7図12を参照)に延伸させて、PMMAプレートと共にメディポアTMから除去した。その後、メディポアTMを180°方向に折り返しながら、厚紙試験基材からゆっくりと剥離した。なお、実施例10は、厚紙試験基材にNSBFを塗布し乾燥後、「SR-1」の「SRT-1」を貼り付け、さらにPMMAプレートを貼り付け、圧着を行った。その後、ストレッチリリースにより「SRT-1」を除去し、厚紙試験基材のダメージを確認した。
【0067】
(比較例)
比較例1,2では、保護テープ上に♯9889の接着テープを貼り付け、当該接着テープ上にPMMAプレートを貼り付けた。比較例1では、保護層テープをPMMAプレート、接着テープごと厚紙試験基材から引き剥がした。比較例2では、PMMAプレートをメディポアTMから接着テープごと引き剥がし、その後、メディポアTMを厚紙試験基材から180°方向に折り返しながらゆっくりと剥離した。比較例3は、接着テープとして「SRT-1」を貼り付け、当該接着テープ上にPMMAプレートを貼り付けた。比較例3では、SRT-1のストレッチリリースを行わずPMMAプレートごとメディポアTMから引き剥がし、その後、メディポアTMを厚紙試験基材から180°方向に折り返しながらゆっくりと剥離した。
【0068】
試験結果を図17のダメージグリッドの項目に示す。比較例1は、従来の除去方法を想定しており、物品と一体となったテープの除去では、皮膚へのダメージが大きくなることが推定される。比較例2、3では、本特許手法の一部を採用し、物品を除去した後に保護層テープを剥離している。しかしながら、物品除去がストレッチリリースではなく強引に引きはがされることで、保護層テープを介して皮膚にダメージが発生するリスクが確認された。これに対し、実施例1~10は、いずれも比較例に比してダメージが低減できることが確認された。
【0069】
[静的せん断試験]
図18を参照して、プロテインレザーTM PBZ13001 KAKI(イデアテックスジャパン株式会社)を用いた保持力試験について説明する。試料テープを25 mm×75 mmの大きさで調製し、先端に25mm×25mmの粘着領域を残し、25mm×50 mm領域に25μmの厚さのポリエステル(PET)フィルムをラミネートして、テープ試料の伸張剥離を防止した。テスト基板として、30 mm×125 mmサイズのプロテインレザーTMを準備した。プロテインレザーTMの端にPETフィルム積層テープ試料を積層し、2 kgのローラーで加圧することで積層試料を準備した。
【0070】
プロテインレザーTMは、プロテインパウダーと特殊樹脂で作られている。プロテインレザーTMは、肌触りのよさを好む人の肌を持ち、多くの化粧品メーカーが化粧品試験用途に使用している。表面層はウレタン材料とタンパク質粉末からなり、天然材料と同様の吸放湿性能を有する。
【0071】
次に、積層試料を145-DP保持力試験機(安田精機株式会社)を使用して保持力試験を行った。30 degC 75%RHの試験環境に積層試料を重量負荷なしに1時間保持後、各サンプルについて300gの重量を負荷し、テープ資料が落下するまでの保持時間を測定した。測定結果を図18に示す。
【0072】
[引張強度試験]
図19を参照して、引張強度試験について説明する。ここでのサンプルサイズは25mm幅×100mm以上とした。チャック間距離を50mmとし、50mm/minの速度で引張試験を実施し、5%引張点(2.5mm)における引張強度を測定した。引張強度が高いと皮膚に与えるストレスが大きくなるため、皮膚トラブルの要因となりうる。試験結果を図19に示す。ここでは、100N/25mm未満であることを良好な条件とする。
【0073】
[形態1]
物品を被着体上に固定する、物品固定具であって、
前記被着体上に形成可能であり、前記被着体と対向する第1の主面、及び前記被着体の反対側の第2の主面を有する保護層と、
前記保護層の第2の主面に接着するための粘着シートユニットと、を備え、
前記粘着シートユニットは、前記第2の主面に接着するための第1の粘着層を有し、
前記粘着シートユニットは、前記物品が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている、物品固定具。
[形態2]
前記粘着シートユニットは、前記物品が取り付けられた時に、少なくとも前記保護層及び前記物品の一方に接着していない複数のタブ部を有する、形態1記載の物品固定具。
[形態3]
前記複数のタブ部のうち少なくとも2つは、前記粘着シートユニットのうち、前記物品の取り付け位置を介して互いに対向する位置に形成されている、形態2に記載の物品固定具。
[形態4]
前記保護層は、
前記第2の主面を有する保護基材と、
前記第1の主面に形成された第2の粘着層と、を有する、形態1~3の何れか一項に記載の物品固定具。
[形態5]
前記保護層の前記第2の粘着層は、プロテインレザーに対する30℃75%RH、300gの負荷条件において50分以上の保持力を有する、形態4に記載の物品固定具。
[形態6]
前記粘着シートユニット、及び前記保護層には孔が形成され、
前記保護層の前記孔のサイズは、前記粘着シートユニットの前記孔のサイズよりも小さい、形態1~5の何れか一項に記載の物品固定具。
[形態7]
前記保護層の保護基材の引張強度が100N/25mm未満である、形態1~6の何れか一項に記載の物品固定具。
[形態8]
前記保護層は、前記被着体に保護液を塗布することで層として形成される、形態1~7の何れか一項に記載の物品固定具。
[形態9]
形態1~8の何れか一項に記載の物品固定具で固定された前記物品を取り外す物品の取り外し方法であって、
前記被着体上に前記保護層を残した状態で、前記粘着シートユニットを少なくとも二つの方向に延伸することで前記保護層から脱離させる、物品の取り外し方法。
[形態10]
物品を被着体上に固定するときに、前記被着体上に形成された保護層と、前記物品との間に配置される粘着シートユニットであって、
前記保護層に接着される第1の粘着層を有し、
前記物品が取り付けられた時に、少なくとも二つの方向に延伸可能に形成されている、粘着シートユニット。
【符号の説明】
【0074】
1…物品固定具、2…物品、4…保護層、5…粘着シートユニット、11…保護基材、12…第2の粘着層、14…第1の粘着層、21…タブ部、23,24…孔。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
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図15
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図19