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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170180
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電源用コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/06 20060101AFI20241129BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20241129BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01F27/06
H01F37/00 A
H01F37/00 F
H01F37/00 T
H01F37/00 L
H01F27/26 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087199
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】許 展人
【テーマコード(参考)】
5E059
【Fターム(参考)】
5E059LL16
5E059LL17
(57)【要約】
【課題】装置を小型化しながら支持構造を強化して耐振動性の向上を実現できる、電源用コイル装置を提供する。
【解決手段】電源用コイル装置1は、基台2と、この基台2に支持された側面視で日の字形状のコア3および日の字形状のコア3の中脚部3aに順次縦巻きに巻回されたコイル4とを備える。コア3は、縦方向の寸法bと横方向の寸法aの比b/aが1より大きい縦長のコア形状を有し、前記縦巻きに巻回されたコイル4の両端引出端子5、5が基台2を縦方向に貫通して端子部7が形成されて、この端子部7により基台2上のコイル装置1が保持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、この基台に支持された側面視で日の字形状のコアおよび前記日の字形状のコアの中脚部に順次縦巻きに巻回されたコイルとを備えた電源用コイル装置であって、
前記コアは、縦方向の寸法bと横方向の寸法aの比b/aが1より大きい縦長のコア形状を有し、
前記縦巻きに巻回されたコイルの両端引出端子が前記基台を縦方向に貫通して端子部が形成されて、
前記端子部により前記基台上のコイル装置が保持される、電源用コイル装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記コアは、横方向の寸法aと奥行方向の寸法cの比a/cが1より大きいコア厚みの薄い形状を有する、電源用コイル装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記端子部は、前記巻回されたコイルの外周面より奥行方向外側に配置されている、電源用コイル装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記基台には、その底面側に前記コイルの外周面より奥行方向外側に補助ピンが複数配置されている、電源用コイル装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記電源用コイル装置は、ボビンレスの構造を有している、電源用コイル装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記コイルの複数個所が粘着テープで束ねられて、前記コアと前記基台の当接面が接着剤で固定されている、電源用コイル装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記端子部は回路基板にはんだ付けされて実装されている、電源用コイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄心(コア)にコイルを巻回したコイル装置に関し、特に電源回路に使用される電源用コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアコンディショナでは、室外機の電源回路にコイル装置(リアクタ)を組み込むことが知られている。このコイル装置は、鉄心(コア)に銅コイルを巻回されたものが一般的で、要求スペックによっては回路基板に対する重量が大きく、大型化する。このコイル装置は、インバータを伴った電源回路においてスイッチングノイズが発生すると、このノイズを低減させるように機能する。
【0003】
一例として、特許文献1のような、カレントトランスに係るインダクタンス素子の構造が挙げられる。この文献記載のコイル装置にあっても、上述の通り、鉄心(コア)にコイルを巻回した構造であって、回路基板に対して大型かつ大重量のものとなっている。
【0004】
この大型で大重量のコイル装置を基板実装する場合、回路基板との接続部に負荷が集中するので、コンプレッサやファンなどで回路基板が振動したとき、コイル装置も不安定に振動する場合があり、例えばコイル装置を安定保持し得る平板状の底板にコイル装置をビス止めして固定したうえで基板に接続して、耐振動性を確保するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-136456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来装置では、底板によりコイル装置の耐振動性を確保できるものの、装置全体が大型化してしまい、コイル装置の基板実装密度の向上を図ることが困難となっていた。
【0007】
すなわち、近年、コイル装置の基板実装密度を向上させるとともに耐振動性を確保することが要請されており、そのため、装置の小型化、及び、支持構造の強化が耐振性向上の課題となる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決して、容易に装置を小型化しながら支持構造を強化して耐振動性の向上を実現することができる、電源用コイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一構成に係る電源用コイル装置は、基台と、この基台に支持された側面視で日の字形状のコアおよび前記日の字形状のコアの中脚部に順次縦巻きに巻回されたコイルとを備えたボビンレスのコイル装置であって、前記コアは、縦方向の寸法bと横方向の寸法aの比b/aが1より大きい縦長の形状を有し、前記縦巻きに巻回されたコイルの両端出力端子が前記基台を縦方向に貫通して端子部が形成されて、前記端子部により前記基台上のコイル装置が保持される。
【0010】
この構成によれば、コアが縦長形状であるので基台を小さくできるととともに、日の字形状のコアにコイルが縦巻きに巻回されて両端出力端子がそのまま縦方向に貫通して端子部を形成してコイル装置を保持しているので、容易かつ単純な構造で装置を小型化しながら、コイルの両端出力端子によるコイル装置の保持によって支持構造を強化して耐振動性の向上を実現している。また、コイルの両端出力端子が端子部を形成しており、別のピン端子を接続する必要がないので、端子材料を削減できる。
【0011】
本発明では、前記コアは、横方向の寸法aと奥行方向の寸法cの比a/cが1より大きいコア厚みの薄い形状を有することが好ましい。この場合、コア厚みを薄くしているので、基台をより小さくして装置をより小型化できるととともに、軽量化も図ることができ、振動による影響を小さくできる。
【0012】
また、端子部は、巻回されたコイルの外周面より奥行方向(径方向)外側に配置されていることも好ましい。この場合、端子部をコイル装置の本体部分から奥行方向にずらして配置しているので、直下に配置するのに比べて奥行方向および横方向の耐振動性を向上することができる。
【0013】
好ましくは、基台には、その底面側に前記コイルの外周面より奥行方向(径方向)外側に補助ピンが複数配置されている。この補助ピンはコイル装置との電気的接続はなく、基台に対して荷重分散して機械的強度を高めるものである。したがって、コアが縦長形状で小さくできるから基台に補助ピンを配置することが可能となって、この補助ピンによって耐振動性をより向上することができる。
【0014】
好ましくは、前記電源用コイル装置は、ボビンレスの構造を有している。したがって、装置はより単純な構造となり、材料費の削減および軽量化も図ることができる。
【0015】
また、好ましくは、前記コイルの複数個所が粘着テープで束ねられて、前記コアと前記基台の当接面が接着剤で固定されている。したがって、コイルがばらついて振動が不安定に大きくなるのを粘着テープでコンパクト化して防止し、より耐振動性を高くでき、コアと基台の当接面の接着剤による固定によって、より耐振動性を高くできる。
【0016】
好ましくは、前記端子部は回路基板にはんだ付けされて実装されている。したがって、端子部によって、基台、コイル装置および回路基板を一体的に強固に固定できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、コアが縦長形状であるので基台を小さくできるととともに、日の字形状のコアにコイルが縦巻きに巻回されて両端出力端子がそのまま縦方向に貫通して端子部を形成してコイル装置を保持しているので、容易かつ単純な構造で装置を小型化しながら支持構造を強化して耐振動性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかる電源用コイル装置を示す斜視図である。
図2図1のコイル装置を示す側面図である。
図3図1のコイル装置を示す正面図である。
図4図1のコイル装置を示す平面図である。
図5】コイル装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる電源用コイル装置を示す斜視図である。例えば、このコイル装置1はエアコンディショナの室外機における入力電源回路に使用される。図2図1の側面図、図3図1の正面図、図4図1の平面図である。
【0020】
図1のように、この電源用コイル装置1は、基台2と、この基台2に支持された側面視で日の字形状のコア3、およびこの日の字形状のコア3の中脚部3aに順次縦巻きに巻回されたコイル(巻線)4とを有し、ボビンを持たないボビンレスの構造となっている。ボビンを持たないので、コイル装置1はより単純な構造となり、材料費の削減および軽量化も図ることができる。
【0021】
コア3は、例えばケイ素鋼またはフェライト等の機能性材料が用いられる。コイル4は、例えば銅線が適宜に巻回されて使用される。基台2には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やフェノール(PF)などの絶縁性樹脂が使用される。
【0022】
図2のように、コア3は、縦方向(Y方向)の寸法bと横方向(X方向)の寸法aの比b/aが1より大きく、つまり縦寸法bが横寸法aより大きい、縦長の形状をしている。これにより、コイル装置1は、コア3が縦長形状であるので横長形状と比べて基台2を小さくできるから、装置の小型化が可能となる。
【0023】
また、コイル4の両端出力端子5、5が縦方向(Y方向)に基台2を貫通して端子部7を形成して、この端子部7が基台2上のコイル装置1の支持構造を構成している。
【0024】
こうして、日の字形状のコア3にコイル4が縦巻きに巻回されて両端出力端子5がそのまま縦方向(Y方向)に貫通して端子部7を形成しているので、容易かつ単純な構造で装置を小型化しながら、コイル3の両端出力端子6によるコイル装置1の保持によって支持構造を強化して耐振動性の向上を実現している。また、コイル3の両端出力端子5が端子部7を形成しており、別のピン端子を接続する必要がないので、端子材料を削減できる。
【0025】
図3のように、コア3の横方向(X方向)の寸法aと奥行方向(Z方向)の寸法cの比a/cが1より大きく、つまりコア厚みを薄くしている。これにより、基台2をより小さくして装置をより小型化できるとともに、軽量化も図ることができ、振動による影響をより小さくできる。
【0026】
図1および図4のように、端子部7は、巻回されたコイル3の外周面より奥行方向(径方向)のZ方向外側に配置されている。端子部7をコイル装置1の本体から奥行方向(Z方向)にずらして配置しているので、直下に配置するのに比べて奥行方向(Z方向)および横方向(X方向)の耐振動性を向上することができる。
【0027】
図1および図4のように、基台2は、コイル3の外周面より奥行方向(径方向)のZ方向外側に補助ピン6が複数配置されている。この補助ピン6はコイル装置1との電気的接続はなく、基台2に対して荷重分散して機械的強度を高めるものである。したがって、コア3が縦長形状で小さくできるから基台2に補助ピン6を配置することが可能となって、この補助ピン6によって基台2に対してコイル装置1の重量が荷重分散して耐振動性をより向上することができる。
【0028】
コイル3の複数個所が絶縁紙9aを介してまたは直接的に粘着テープ9で束ねられており、粘着テープ9によってコイル3がばらついて振動が不安定に大きくなることを防止して耐振動性をより高くできる。
【0029】
また、コア3と基台2の当接面が接着剤9によって固定されており、基台2からコイル装置1の脱離を防止するとともに、両端出力端子5、5の端子部7によるコイル装置1の保持と相俟って、耐振動性をより高くすることができる。
【0030】
端子部7は回路基板10にはんだ付けされて実装されている。したがって、端子部7によって、基台2、コイル装置1および回路基板10を一体に強固に固定できる。
【0031】
図5のように、コア3は例えばE型コア3AとI型コア3Bとを組み合わせたEI型コアである。E型コア3Aは、中脚部3aとその左右両側の外脚部3bとをアーム部3cで連結したもので、アーム部3cの両端部に外脚部3bが、アーム部3cの中央部に中脚部3aがそれぞれ、アーム部3cから同一方向に平行に延びるように突出している。I型コア3BはE型コア3Aのアーム部3cと平行で、中脚部3aおよび外脚部3bと接する。
【0032】
つまり、E型コア3Aにおける基板2と平行な中脚部3aと、これを取り囲む基板2と平行な外脚部3bおよび基板2と垂直なE型コア3Aのアーム部3cとI型コア3Bからなるロの字形状とにより、側面視で日の字形状のコア3が形成される。
【0033】
なお、コア3はEI型コアに代えて、E型コアとE型コアとからなるEE型コアでもよい。この場合、両E型コアの中脚部と、これを取り囲む両E型コアの外脚部およびアーム部のロの字形状とにより日の字形状を形成する。
【0034】
このように、本発明は、コア3が縦長形状であるので基台2を小さくできるととともに、日の字形状のコア3にコイル4が縦巻きに巻回されて両端出力端子5、5がそのまま縦方向(Y方向)に貫通して端子部7を形成してコイル装置1を保持しているので、単純な構造でコイル装置1を小型化しながら、コイル3の両端出力端子6によるコイル装置1の保持によって支持構造を強化して耐振動性の向上を実現している。また、コイル3の両端出力端子5、5が端子部7を形成しており、別のピン端子を接続する必要がないので、端子材料を削減できる。
【0035】
なお、この実施形態では、コイル装置をエアコンディショナの室外機における電源回路に使用しているが、これに何ら限定するものではなく、他の電源回路に使用してもよい。
【0036】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1:電源用コイル装置
2:基台
3:コア(EI形コア)
4:コイル
5:出力端子
6:補助ピン
7:端子部
8:接着剤
9:粘着テープ
10:回路基板
X方向:横方向
Y方向:縦方向
Z方向:奥行方向
図1
図2
図3
図4
図5