(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170181
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】転写用基板および電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241129BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241129BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20241129BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241129BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241129BHJP
H01L 21/50 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
G09F9/00 342
H01L33/48
H01L25/08 B
H01L23/12 Z
H01L21/50 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087200
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
【テーマコード(参考)】
5F044
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5F044RR01
5F142AA52
5F142BA32
5F142CA13
5F142CD02
5F142CD17
5F142CD18
5F142CD25
5F142DB24
5F142FA32
5F142GA02
5G435AA16
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】複数の素子を備える電子装置の性能を向上させる。
【解決手段】転写用基板70は、支持基板71と、支持基板71の一方の表面に連続的に設けられ、素子20を粘着保持する複数の保持領域を有する粘着樹脂層72と、粘着樹脂層72の支持基板71とは反対側の表面に、粘着樹脂層72の保持領域の外側の領域を覆って設けられ、表面の粘着力が粘着樹脂層72よりも低い被覆膜73と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板の一方の表面に連続的に設けられ、素子を粘着保持する複数の保持領域を有する粘着樹脂層と、
前記粘着樹脂層の前記支持基板とは反対側の表面に、前記粘着樹脂層の前記保持領域の外側の領域を覆って設けられ、表面の粘着力が前記粘着樹脂層の粘着力よりも弱い被覆膜と、を備える、
転写用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の転写用基板において、
前記被覆膜は、前記保持領域の周縁を囲って設けられ、前記保持領域のそれぞれに対向する位置に開口部を有する、
転写用基板。
【請求項3】
請求項2に記載の転写用基板において、
前記開口部は、前記保持領域に保持される前記素子の平面形状に沿った開口形状を有する、
転写用基板。
【請求項4】
請求項1に記載の転写用基板において、
前記被覆膜の厚さは、前記素子の高さよりも薄い、
転写用基板。
【請求項5】
(a)請求項1から5の何れか一項に記載の転写用基板を準備する工程、
(b)前記転写用基板を構成する前記粘着樹脂層の前記複数の保持領域に前記素子を粘着保持する工程、
(c)複数のバンプ電極が配列された回路基板を準備し、前記複数の保持領域に前記素子を粘着保持した前記転写用基板を前記回路基板に対して押し付け、前記複数のバンプ電極と、前記複数の保持領域に粘着保持された前記素子の電極と、をそれぞれ接触させる工程、
(d)前記複数のバンプ電極と前記複数の保持領域に粘着保持された前記素子の電極とがそれぞれ接触した状態で、加熱により前記バンプ電極と前記素子の電極とを接合する工程、
を有する、
電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写用基板および電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板上に配列された複数の電極に電子部品(素子)を実装する電子装置の製造方法がある。例えば、特開2022-158612号公報(特許文献1)には、サファイア基板に設けられる発光素子を、回路基板が備える端子部に実装する電子部品の実装方法が記載されている。また、例えば、特開2021-5632号公報(特許文献2)には、回路基板上にマイクロLED素子を転写するための転写用基板として、弾性体の第1面から突出した複数の突起部を備えた転写用基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-158612号公報
【特許文献2】特開2021-5632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように転写用基板の粘着樹脂層によって素子を粘着保持し、複数の素子を回路基板上に一度に実装して電子装置を製造することがある。このように複数の素子を回路基板に実装する際、例えば、回路基板または転写用基板に反りが生じていると、転写用基板を回路基板に対して強く押し付ける必要がある。それに伴い、粘着樹脂層が回路基板側に固着されてしまうことがある。
【0005】
本開示の目的は、複数の素子を備える電子装置の性能を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である転写用基板は、支持基板と、前記支持基板の一方の表面に連続的に設けられ、複数の保持領域のそれぞれに素子を粘着保持する粘着樹脂層と、前記粘着樹脂層の前記支持基板とは反対側の表面に、前記粘着樹脂層の前記保持領域の外側の領域を覆って設けられ、表面の粘着力が前記粘着樹脂層の粘着力よりも弱い被覆膜と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】電子装置の一実施形態であるマイクロLED表示装置の構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】
図1に示す表示装置の複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。
【
図5】
図3に示すLED素子を取り除いた状態の基板構造体を示す拡大平面図である。
【
図6】電子装置の一実施態様である表示装置の製造方法の工程フローの一例を示す説明図である。
【
図8】
図6に示す転写用基板準備工程で準備する転写用基板の斜視図である。
【
図9】
図8の転写用基板の一部を示す拡大平面図である。
【
図10】
図9のC-C線に沿った拡大断面図である。
【
図11】
図6に示す素子保持工程を説明する図である。
【
図12】
図6に示す素子押付工程を説明する図である。
【
図14】
図6に示す素子押付工程を説明する図である。
【
図15】
図6に示すレーザ照射工程を説明する図である。
【
図16】
図6に示す素子剥離工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎない。当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
以下の実施の形態では、複数の電子部品が搭載された電子装置の例として、複数のマイクロLED素子が搭載されたマイクロLED表示装置を取り上げて説明する。なお、以下では、マイクロLED表示装置を、単に、表示装置と称する場合がある。
【0010】
<電子装置>
まず、本実施の形態の電子装置であるマイクロLED表示装置の構成例について説明する。
図1は、電子装置の一実施形態であるマイクロLED表示装置の構成例を示す平面図である。
図1では、表示領域DAと周辺領域PFAとの境界、制御回路5、駆動回路6、および複数の画素PIXのそれぞれを二点鎖線で示している。
図2は、
図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態の表示装置DSP1は、表示領域DAと、表示領域DAの周囲を枠状に囲む周辺領域PFAと、表示領域DA内に行列状に配列された複数の画素PIXと、を有している。また、表示装置DSP1は、平面形状が矩形である回路基板10と、回路基板10上に形成された制御回路5と、回路基板10上に形成された駆動回路6と、を有している。回路基板10はガラスまたは樹脂からなる。
【0012】
制御回路5は、表示装置DSP1の表示機能の駆動を制御する制御回路である。例えば、制御回路5は、回路基板10上に実装されたドライバIC(Integrated Circuit)である。
図1に示す例では、制御回路5は、回路基板10が備える4辺のうち、一つの短辺に沿って、すなわち図中に示すX方向に沿って配置されている。なお、以下の説明では、回路基板10の短辺方向をX方向、回路基板10の長辺方向をY方向、回路基板10の厚さ方向をZ方向と称する場合がある。
【0013】
また、本実施の形態では、制御回路5は、複数の画素PIXに接続される配線(映像信号配線)VL(
図2参照)を駆動する信号線駆動回路を含んでいる。ただし、制御回路5の位置および構成は、
図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、
図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの配線基板が接続され、上記のドライバICが、この配線基板上に搭載されている場合がある。また例えば、配線VLを駆動する信号線駆動回路は、制御回路5とは別に形成されている場合がある。
【0014】
駆動回路6は、複数の画素PIXが備える走査信号線GL(
図2参照)を駆動する回路を含む。また、駆動回路6は、複数の画素PIXのそれぞれに搭載されたLED素子に基準電位を供給する回路を含む。駆動回路6は、制御回路5からの制御信号に基づいて、複数の走査信号線GLを駆動する。
図1に示す例では、駆動回路6は、回路基板10が備える4辺のうち、二つの長辺のそれぞれに沿って配置されている。ただし、駆動回路6の位置および構成例は、
図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、
図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの配線基板が接続され、駆動回路6が配線基板上に搭載されている場合がある。
【0015】
次に、
図2を用いて画素PIXの回路構成例について説明する。なお、
図2では、4個の画素PIXを図示しているが、
図1に示す複数の画素PIXのそれぞれが、
図2に示す画素PIXと同様の回路を備えている。以下では、画素PIXが備えるスイッチング素子SW、およびLED素子20を含む回路について、画素回路と呼称する場合がある。画素回路は、制御回路5(
図1参照)から供給される映像信号Vsgに応じてLED素子20の発光状態を制御する電圧信号方式の回路である。
【0016】
図2に示すように、画素PIXのそれぞれは、LED素子20を備えている。LED素子20は、上記のマイクロ発光ダイオードである。LED素子20はアノード電極21EAおよびカソード電極21EKを有している。LED素子20のカソード電極21EKは、基準電位(固定電位)PVSが供給される配線VSLに接続されている。LED素子20のアノード電極21EAは、配線31を介してスイッチング素子SWのドレイン電極EDと電気的に接続されている。
【0017】
画素PIXのそれぞれは、スイッチング素子SWを備えている。スイッチング素子SWは、制御信号Gsに応答して画素回路と配線VLとの接続状態(オンまたはオフの状態)を制御するトランジスタである。スイッチング素子SWは、例えば、薄膜トランジスタである。スイッチング素子SWがオン状態の時、画素回路には、配線VLから映像信号Vsgが入力される。
【0018】
駆動回路6は、図示しないシフトレジスタ回路、出力バッファ回路等を含んでいる。駆動回路6は、制御回路5(
図1参照)から伝送される水平走査スタートパルスに基づいてパルスを出力し、制御信号Gsを出力する。
【0019】
複数の走査信号線GLのそれぞれは、X方向に延びている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極EGに接続されている。走査信号線GLに制御信号Gsが供給されると、スイッチング素子SWがオン状態となり、LED素子20に映像信号Vsgが供給される。
【0020】
<LED素子の周辺構造>
次に、
図1に示す複数の画素PIXのそれぞれに配置されるLED素子20の周辺構造について説明する。
図3は、
図1に示す表示装置の複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。
図3では、
図4に示す無機絶縁層14を省略している。
図3では、半導体層、電極、および走査信号線の輪郭を点線で示している。
図4は、
図3のA-A線に沿った拡大断面図である。
図5は、
図3に示すLED素子を取り除いた状態の基板構造体を示す拡大平面図である。
【0021】
図3に示すように、表示装置DSP1は、複数の画素PIX(
図3に示す例では画素PIX1,PIX2,PIX3)を有している。複数の画素PIXのそれぞれは、スイッチング素子SWと、LED素子(発光素子)20と、配線31と、配線32と、を有している。なお、画素PIX1,PIX2,PIX3のそれぞれには、例えば、赤、緑、および青のうち、いずれか一色の可視光を出射するLED素子20が搭載され、LED素子20を駆動するスイッチング素子SWが形成されている。
【0022】
画素PIX1,PIX2,PIX3のLED素子20から上記各色の可視光が出射される場合、画素PIX1,PIX2,PIX3のLED素子20から出射される可視光の出力およびタイミングを制御することにより、表示装置DSP1においてカラー表示が可能となる。このように互いに異なる色の可視光を出射する複数の画素PIXを組み合わせる場合、各色用の画素PIXを副画素と呼び、複数の画素PIXのセットを画素と呼ぶ場合がある。
【0023】
配線31は、スイッチング素子SWのドレイン電極EDおよびLED素子20のアノード電極21EAのそれぞれに電気的に接続されている。配線32は、スイッチング素子SWのソース電極ESに接続されている。
図3に示す例では、配線32は屈曲した構造を備え、一方の端部がスイッチング素子SWのソース電極ESに接続され、他方の端部は、配線VLに接続されている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極EGとして利用される。
【0024】
表示装置DSP1は、配線VLと、配線VSLと、をさらに有している。配線VLは、Y方向に沿って複数の画素PIX(
図2参照)に亘って延び、かつ、配線32と電気的に接続される。配線VSLは、Y方向に交差(
図3では直交)するX方向に沿って複数の画素PIXに亘って延び、かつ、LED素子20のカソード電極21EKに電気的に接続される。配線VLと配線VSLとは、
図3に示す配線交差部LXPにおいて、絶縁層41を介して交差している。配線VLと配線VSLとの間に絶縁層41が介在しているので、配線VLと配線VSLとは電気的に離間されている。
【0025】
図4に示すように、表示装置DSP1は、LED素子20と、基板構造体SUB1と、を有する電子装置である。基板構造体SUB1は、ガラスまたは樹脂からなる回路基板10と、回路基板10上に積層された複数の絶縁層と、を含んで構成される。基板構造体SUB1が有する複数の絶縁層は、回路基板10上に積層される無機絶縁層11、無機絶縁層12、無機絶縁層13、および無機絶縁層14を含む。回路基板10は、面10fおよび面10fの反対側の面10bを有している。無機絶縁層11,12,13,14のそれぞれは、回路基板10の面10f上に積層されている。
【0026】
スイッチング素子SWは、回路基板10上に形成された無機絶縁層12と、無機絶縁層12上に形成された半導体層50と、半導体層50のドレイン領域に接続されたドレイン電極EDと、半導体層50のソース領域に接続されたソース電極ESと、半導体層50を覆う無機絶縁層13と、を含んでいる。配線31および配線32のそれぞれは、例えば、チタンまたはチタン合金からなる導体層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導体層と、の積層膜である。チタン層の間にアルミニウム層が挟まれた積層膜は、TAT積層膜と呼ばれる。
【0027】
図4に示す例は、ゲート電極EGが半導体層50と回路基板10との間にある、ボトムゲート方式の例である。ボトムゲート方式の場合、無機絶縁層12のうち、ゲート電極EGと半導体層50との間にある部分がゲート絶縁層として機能する。また、無機絶縁層12は、半導体層50を形成するための下地層としても機能する。なお、ゲート電極EGの位置は、
図4に示す例には限定されず、例えば、トップゲート方式であってもよい。
【0028】
無機絶縁層11,12,13,14のそれぞれを構成する材料は、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素(SiO2)や窒化ケイ素(SiN)などが挙げられる。また、半導体層50は、例えば、ケイ素からなるシリコン膜にP型またはN型の導電型の不純物がドープされた半導体膜である。
【0029】
ソース電極ESおよびドレイン電極EDのそれぞれは、半導体層50のソース領域およびドレイン領域のいずれか一方との電気的なコンタクトをとるためのコンタクトプラグである。コンタクトプラグの材料としては、例えば、タングステンなどが挙げられる。なお、
図4に対する変形例として、無機絶縁層13に半導体層50のソース領域およびドレイン領域を露出させるコンタクトホールが形成され、コンタクトホール内に配線31の一部分および配線32の一部分がそれぞれ埋め込まれている場合がある。この場合、配線31および配線32のうち、コンタクトホール内に埋め込まれた部分が半導体層50に接触し、配線31および配線32と半導体層50との接触界面を、ドレイン電極EDおよびソース電極ESと、みなすことができる。
【0030】
また、
図5に示すように、基板構造体SUB1は、平面視において規則的に配列された複数のバンプ電極33を備えている。バンプ電極33は、回路基板10(
図4参照)上に電子部品を実装するための端子である。本実施の形態の場合、バンプ電極33は、
図4に示すLED素子20を搭載するための端子である。このため、複数のバンプ電極33は、LED素子20(
図3参照)の実装予定領域に2個隣り合って配列されている。2個のバンプ電極33の一方は、LED素子20のアノード電極21EAに接続され、他方はLED素子20のカソード電極21EKに接続される。
【0031】
図4に示すように、バンプ電極33は、無機絶縁層14に形成された開口14Hと重なる位置で配線31に接続され、かつ、無機絶縁層14から突出している。また、バンプ電極33は、例えば、錫を含む半田からなる。あるいは、バンプ電極33は、銅など、半田よりも電気伝導度が高い金属材料からなる金属層と、半田層との積層体である場合がある。
【0032】
<電子装置の製造方法>
次に、
図3に示す表示装置DSP1の製造方法を代表例として、本実施の形態の電子装置の製造方法について説明する。
図6は、電子装置の一実施態様である表示装置の製造方法の工程フローの一例を示す説明図である。
【0033】
図6に示すように、本実施の形態の電子装置の製造方法は、基板構造体準備工程S1と、転写用基板準備工程S2と、素子保持工程S3と、素子押付工程S4と、レーザ照射工程S5と、素子剥離工程S6と、を有している。
【0034】
<基板構造体準備工程>
図6に示す基板構造体準備工程S1では、
図7に示す基板構造体SUB1を準備する。
図7は、基板構造体準備工程を説明する図であり、
図5のB-B線に沿った基板構造体の拡大断面図である。基板構造体準備工程S1では、
図7に示すように、ガラスまたは樹脂からなる回路基板10と、回路基板10上に形成された配線31と、配線31を覆う無機絶縁層14と、を備えた基板構造体SUB1を準備する。回路基板10上には、無機絶縁層11、無機絶縁層12、無機絶縁層13、および無機絶縁層14が積層され、配線31は、無機絶縁層13と無機絶縁層14との間に配置されている。基板構造体SUB1の大部分は無機絶縁層14によって覆われている。無機絶縁層14には、配線31と重なる位置および配線VSLと重なる位置に開口14Hが形成されている。開口14Hの底部において、配線31および配線VSLのそれぞれは、無機絶縁層14から露出している。
【0035】
複数のバンプ電極33のそれぞれは、開口14H内に埋め込まれ、開口14Hの底部において、配線31または配線VSLに接続されている。
図5に示すように、基板構造体SUB1の平面視において、複数のバンプ電極33のそれぞれは、電子部品(
図3に示すLED素子20)を搭載する予定領域に、規則的に配置されている。
【0036】
バンプ電極33は、
図7に示すように、無機絶縁層14の上方に突出するように形成されている。上記のように、配線31の一部分および配線VSLの一部分が開口14Hにおいて無機絶縁層14から部分的に露出しているので、バンプ電極33は、例えば、電気メッキ法により選択的に形成することができる。なお、バンプ電極33の突出高さを高くするために、レジスト膜を用いてバンプ電極33を形成する場合もある。
【0037】
<転写用基板準備工程>
図6に示す転写用基板準備工程S2では、
図8から
図10に示す転写用基板を準備する。
図8は、転写用基板準備工程で準備する転写用基板の斜視図である。
図9は、転写用基板の一部を示す拡大平面図であり、
図10は、
図9のC-C線に沿った拡大断面図である。
【0038】
図8から
図10に示す転写用基板70は、支持基板71と、この支持基板71の一方の表面に設けられる粘着樹脂層72と、粘着樹脂層72の支持基板71とは反対側の表面に設けられる被覆膜73と、を有する。支持基板71は、転写用基板70の剛性を確保するための平面形状が略矩形の基板である。支持基板71は、例えば、石英、ガラスなど、酸化ケイ素を主成分とする合成基板である。なお、転写用基板70として、平面形状が矩形であるものを例示しているが、あくまで一例であり、転写用基板70の形状は、特に限定されるものではない。
【0039】
粘着樹脂層72は、後述する素子保持工程S3において、複数のLED素子20を粘着保持するための層であり、支持基板71の表面に連続的に設けられる。より詳しくは、樹脂粘着層72(転写用基板70)は、LED素子20がそれぞれ粘着保持される複数の保持領域74を行列状に有している。粘着樹脂層72は、支持基板71上に、これら複数の保持領域74を含む範囲に亘って設けられている。
【0040】
なお、粘着樹脂層72(転写用基板70)が有する保持領域74の数は、特に限定されるものではない。保持領域74の数は、例えば、表示装置DSP1が備えるLED素子20の数などに応じて適宜決定されればよい。
【0041】
粘着樹脂層72は、LED素子20を粘着保持可能な粘着性を有する樹脂材料で形成され、支持基板71とは反対側の面72f(
図10参照)に、LED素子20を粘着保持可能な粘着力を有している。ただし、粘着樹脂層72によって粘着保持したLED素子20は、基板構造体SUB1に実装された後、粘着樹脂層72から剥離させる。このため、粘着樹脂層72の粘着力は、この点を考慮して適宜調整する必要がある。粘着樹脂層72の厚さは、特に限定されないが、数十μm程度であることが好ましく、本実施の形態では、20μm程度としている。
【0042】
粘着樹脂層72に用いる樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはウレタン系樹脂などが挙げられる。勿論、粘着樹脂層72として用いる樹脂材料は、これらに限定されるものではない。
【0043】
被覆膜73は、後述する素子押付工程S4において、粘着樹脂層72が回路基板10を含む基板構造体SUB1に付着することを抑制するための膜であり、被覆膜73の表面の粘着力は、粘着樹脂層72の表面の粘着力よりも低い。言い換えれば、被覆膜73は、粘着樹脂層72を形成する樹脂材料よりも粘着性が低い材料で形成されている。上述のように、粘着樹脂層72はLED素子20を粘着可能な粘着力を面72fに有している。結果的に、粘着樹脂層72は、基板構造体SUB1に付着する粘着力を面72fに有している。被覆膜73の表面の粘着力は、このような粘着樹脂層72の表面72fの粘着力よりも低い。
【0044】
また、被覆膜73は、表面の粘着力が極力低いことが好ましく、特に、表面に粘着力を有していないことが好ましい。つまり、表面の粘着力が粘着樹脂層72よりも低い被覆膜73には、表面に粘着樹脂層72よりも低い粘着力を有するものだけでなく、表面に粘着力を有していないものも含まれる。
【0045】
被覆膜73は、粘着樹脂層72に一方側の面、この例では、粘着樹脂層72の支持基板71とは反対側の面72fに設けられる。また、被覆膜73は、粘着樹脂層72の面72fのうち、保持領域74の外側の領域を覆って設けられる。一例として、被覆膜74は、各保持領域74の周縁を囲って設けられている。言い換えれば、被覆膜73は、各保持領域74に対応する部分を除いて、粘着樹脂層72の面72fの略全面に亘って設けられている。さらに別の言い方をすれば、被覆膜73は、粘着樹脂層72の面72fの略全面に亘って設けられ、各保持領域74に対応する位置に開口部73aを備えている。
【0046】
開口部73aの開口形状(平面形状)は、特に限定されないが、保持領域74の平面形状に沿った開口形状であることが好ましい。各保持領域74は、LED素子20を粘着保持する領域である。一例として、保持領域74の形状は、LED素子20の平面形状と一致する。このため、開口部73aは、LED素子20の平面形状に沿った形状であることが好ましいとも言える。本実施の形態では、LED素子20の平面形状は矩形であるため、各保持領域74の形状も矩形となっている。このため、開口部73aの開口形状も、保持領域74の形状に沿って矩形となっていることが好ましい。
【0047】
被覆膜73の開口部73aは、LED素子20を粘着樹脂層72で粘着保持する際の位置決め精度を考慮して、各保持領域74よりも若干大きく形成されていることが好ましい。例えば、LED素子20の平面形状(保持領域74の形状)が20~30μm角程度の矩形である場合、開口部73aの一辺の長さは、保持領域74の一辺の長さよりも、2~5μm程度長くなっていることが好ましい。言い換えれば、例えば、
図9に示すように、保持領域74の周囲には、粘着樹脂層72との間に1~2.5μm程度の所定幅W1を有する隙間80が存在していることが好ましい。
【0048】
また、被覆膜73は、例えば、銅、アルミニウム等の金属薄膜からなる。ただし、被覆膜73の材料は、金属材料に限定されるものではない。被覆膜73の材料としては、無機材料が好適に用いられるが、基板構造体SUB1への粘着樹脂層72の付着を抑制でき、後述するレーザ照射工程で受ける熱に耐え得る材料であればよい。また、被覆膜73の材料は、基板構造体SUB1に付着しない材料、特に、粘着性を有していない材料であることが好ましい。
【0049】
金属薄膜からなる被覆膜73の形成方法は、特に限定されないが、例えば、蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。さらに、例えば、転写用基板70とは別の基板に金属薄膜を形成後、この金属薄膜を粘着樹脂層72上に転写することによって、被覆膜73を形成してもよい。
【0050】
<素子保持工程>
次に、
図6に示す素子保持工程S3では、
図11に示すように、転写用基板70の複数の保持領域74のそれぞれに、粘着樹脂層72によってLED素子20を粘着保持する。
図11は、素子保持工程を説明する図である。より詳しくは、
図11は、
図10に示す転写用基板の各保持領域に、粘着樹脂層によってLED素子を保持した状態を示す拡大断面図である。
【0051】
本工程では、転写用基板70の粘着樹脂層72に、複数のLED素子20を接触させることで、転写用基板70によって複数のLED素子20を粘着保持する。詳しくは、LED素子20のうち、電極21(アノード電極21EAおよびカソード電極21EK)が形成された面とは反対側の面が、粘着樹脂層72の一方の面72fに粘着保持される。言い換えれば、LED素子20は、アノード電極21EAおよび複数のカソード電極21EKが形成された面が基板構造体SUB1と対向するように、転写用基板70に粘着保持される。なお、LED素子20のアノード電極21EAおよびカソード電極21EKを総称して電極21と呼ぶ場合がある。
【0052】
このように転写用基板70に粘着保持されるLED素子20のそれぞれは、まずは、例えば、サファイア基板上に形成される。サファイア基板上で完成した複数のLED素子20のそれぞれは、一旦、第1転写基板に転写された後、第1転写基板から転写用基板70に転写される。
図11は、複数のLED素子20が、第1転写基板から転写用基板70に転写された後の状態を示している。サファイア基板上に形成された複数のLED素子20のそれぞれを、第1転写基板を介して転写用基板70に転写することで、LED素子20は、電極21側が基板構造体SUB1と対向する向きで転写用基板70に保持される。
【0053】
<素子押付工程>
次に、
図6に示す素子押付工程S4では、
図12に示すように、複数のLED素子20を粘着保持した転写用基板70を、基板構造体準備工程S1で準備した基板構造体SUB1に対して押し付ける。
図12、および
図13Aから
図13Cは、素子押付工程を説明する図である。より詳しくは、
図12は、素子押付工程において、転写用基板を基板構造体に押し付けた状態を示す拡大断面図である。また、
図13Aから
図13Cは、基板構造体SUB1に反りが生じている場合の素子押付工程を説明する模式図である。また、
図14は、転写用基板の変形例を説明する断面図である。
【0054】
本工程では、転写用基板70が備える粘着樹脂層72の複数の保持領域74に粘着保持されたLED素子20の電極21を、基板構造体SUB1に形成された複数のバンプ電極33にそれぞれ対向させ、この状態で、転写用基板70を基板構造体SUB1に向かって押し付ける。これにより、転写用基板70に保持された複数のLED素子20の電極21と複数のバンプ電極33とがそれぞれ接触する。
【0055】
ここで、例えば、基板構造体SUB1を構成する回路基板10に反りが生じているとする。この場合、複数のLED素子20の電極21を対応する各バンプ電極33に接触させるためには、回路基板10に反りが生じていない場合よりも、転写用基板70を基板構造体SUB1側に強く押し付ける必要がある。それに伴い、粘着樹脂層72が、回路基板10を含む基板構造体SUB1側に付着してしまう虞がある。しかしながら、転写用基板70を構成する粘着樹脂層72の表面に被覆膜73が設けられていることで、粘着樹脂層72の基板構造体SUB1への付着を抑制することができる。
【0056】
具体的には、例えば、
図13Aに示すように、基板構造体SUB1に転写用基板70側を凸とする反りが生じ、基板構造体SUB1のX方向の中央部において反りが最も大きいとする。この場合、転写用基板70を基板構造体SUB1に向かって押し付けると、
図13Bに示すように、まずは、反りが最も大きい基板構造体SUB1のX方向中央部で、LED素子20の電極21がバンプ電極33に接触する。これに対し、基板構造体SUB1のX方向両端部では、LED素子20の電極21はバンプ電極33に接触しない。
【0057】
全てのLED素子20の電極21をバンプ電極33に接触させるためには、転写用基板70を基板構造体SUB1側に、より強く押し付ける必要がある。これにより、
図13Cに示すように、全てのLED素子20の電極21を基板構造体SUB1のバンプ電極33に接触させることができる。ただし、例えば、基板構造体SUB1のX方向の中央部において、粘着樹脂層72がLED素子20によって押しつぶされた状態となる。言い換えれば、LED素子20が粘着樹脂層72内に押し込まれた状態となってしまう。
【0058】
基板構造体SUB1の面積が比較的小さい場合、反り量は比較的小さく抑えられるため、LED素子20は粘着樹脂層72に押し込まれ難い。一方、基板構造体SUB1の面積が比較的大きい場合、反り量も大きくなり易く、それに伴い、LED素子20が粘着樹脂層72に押し込まれた状態になり易い。そして、このようにLED素子20が粘着樹脂層72内に押し込まれることで、粘着樹脂層72が基板構造体SUB1の表面に付着し易くなる。
【0059】
しかしながら、粘着樹脂層72の表面に被覆膜73が設けられていることで、粘着樹脂層72の基板構造体SUB1への付着を抑制することができる。より詳しくは、LED素子20が粘着樹脂層72内に押し込まれた場合でも、粘着樹脂層72と基板構造体SUB1との間には被覆膜73が存在する。このため、粘着樹脂層72が基板構造体SUB1の表面に直接的に接触することはない。したがって、粘着樹脂層72の基板構造体SUB1への付着を抑制することができる。
【0060】
特に、粘着樹脂層72の厚さが、LED素子20の高さよりも厚い場合、LED素子20が粘着樹脂層72内に押し込まれることで、粘着樹脂層72が基板構造体SUB1に付着し易い。このような場合でも、粘着樹脂層72の表面に被覆膜73が設けられていることで、粘着樹脂層72の基板構造体SUB1への付着を効果的に抑制することができる。
【0061】
なお、LED素子20により粘着樹脂層72が押しつぶされると、基板構造体SUB1の表面が被覆膜73に当接する場合がある。この場合、粘着樹脂層72は被覆膜73からも圧力を受けることになる。しかしながら、被覆膜73は、転写用基板70の保持領域74の外側領域に連続的に形成されており、その面積は比較的広い。より具体的には、被覆膜73の粘着樹脂層72との接触面積は、各LED素子20の粘着樹脂層72との接触面積に比べて広い。このため、被覆膜73は、LED素子20に比べて、粘着樹脂層72内には押し込まれ難い。
【0062】
また、この被覆膜73の厚さは、特に限定されないが、LED素子20の高さよりも薄いことが好ましい。言い換えれば、LED素子20が粘着樹脂層72により粘着保持された際、LED素子20の先端部は、Z方向において被覆膜73の表面よりも外側に位置していることが好ましい。これにより、上述した素子保持工程S3において、LED素子20を、転写用基板70の粘着樹脂層72に粘着保持させ易くなる。
【0063】
一方で、基板構造体SUB1への粘着樹脂層72の付着をより抑制するという観点では、例えば、
図14に示すように、被覆膜73の厚さは、LED素子20の高さよりも厚いことが好ましい。さらに言えば、被覆膜73の厚さは、LED素子20の高さと基板構造体SUB1のバンプ電極33の高さとの合計と同一あるいはそれよりも若干厚いことが好ましい。
【0064】
これにより、LED素子20が粘着樹脂層72内に押し込まれた場合でも、粘着樹脂層72と基板構造体SUB1との間には十分な隙間が確保される。これにより、粘着樹脂層72の基板構造体SUB1への付着がより確実に抑制される。粘着樹脂層72と基板構造体SUB1との間には十分な隙間が確保されていることで、例えば、LED素子20が粘着樹脂層72内に押し込まれた際に、LED素子20と被覆膜73との隙間を介して粘着樹脂層72が基板構造体SUB1に付着することも抑制される。
【0065】
なお、被覆膜73の厚さをLED素子20の高さよりも厚くする場合、素子保持工程S3において、LED素子20を、転写用基板70の粘着樹脂層72に粘着保持させ難くはなる。しかしながら、例えば、上述した第1転写基板の形状を工夫することで、第1転写基板に保持されたLED素子20を、転写用基板70の粘着樹脂層72に粘着保持させ易くできる。一例としては、第1転写基板の保持領域74に対向する部分に、保持領域74よりも小さい面積の突出部を設け、この突出部上にLED素子20を保持することが挙げられる。
【0066】
また、本実施の形態では、基板構造体SUB1に、転写用基板70とは反対側を中心とする曲面となる反りが生じ、基板構造体SUB1のX方向の中央部において反りが最も大きい場合について説明しているが、反りの状態はこれに限定されない。例えば、基板構造体SUB1に、転写用基板70側を中心とする曲面となる反りが生じている場合にも、同様の効果が得られる。さらには、転写用基板70に上記のような反りが生じている場合にも同様の効果が得られる。
【0067】
<レーザ照射工程>
次に、
図6に示すレーザ照射工程S5では、
図15に示すように、複数のバンプ電極33と、複数のLED素子20の電極21とバンプ電極33とがそれぞれ接触した複数の接触部分に、レーザ光源LZSからレーザLZを照射する。これにより、各LED素子20の電極21とバンプ電極33とが接合される。
図15は、レーザ照射工程を説明する図である。より詳しくは、
図15は、LED素子20の電極21とバンプ電極33との接触部分にレーザを照射した状態を模式的に示す拡大断面図である。
【0068】
本工程では、各LED素子20の電極21とバンプ電極33との接触部分にレーザLZを照射することで、上記接触部分を加熱する。より具体的には、バンプ電極33に熱を印加し、バンプ電極33に含まれる半田を溶融させ、半田によりバンプ電極33と各LED素子20の電極21とを接合する。
【0069】
なお、本工程の前に、LED素子20のアノード電極21EAおよびカソード電極21EKのそれぞれに、予め半田膜を形成する工程を有する場合もある。半田を含むバンプ電極33と、アノード電極21EAおよびカソード電極21EKに形成された半田膜とは容易に一体化させることができる。このため、アノード電極21EAおよびカソード電極21EKのそれぞれに半田膜を形成することで、本工程において、バンプ電極33とLED素子20の各電極21とをより接合し易くなる。
【0070】
<素子剥離工程>
次に、
図6に示す素子剥離工程S6では、
図16に示すように、複数のLED素子20と、転写用基板70の粘着樹脂層72とを剥離させる。
図16は、素子剥離工程を説明する図である。より詳しくは、
図16は、転写用基板70の粘着樹脂層72と複数のLED素子20とを剥離させた状態を示す拡大断面図である。
【0071】
本工程では、Z方向において転写用基板70を移動させて、転写用基板70と基板構造体SUB1との距離を遠ざける。この時、複数のLED素子20の電極21は、基板構造体SUB1のバンプ電極33に接合されている。言い換えれば、複数のLED素子20は、基板構造体SUB1に実装されており、LED素子20の電極21とバンプ電極33の固定強度は、各LED素子20と粘着樹脂層72との接着強度よりも高くなっている。このため、転写用基板70を、基板構造体SUBから離れる方向に移動させることで、粘着樹脂層72とLED素子20との界面が剥離する。本工程により、基板構造体SUB1上に複数のLED20が実装された表示装置DPS1が得られる。
【0072】
以上説明したように、本開示の転写用基板70は、粘着樹脂層72の支持基板71とは反対側に、表面の粘着力が粘着性樹脂層72の粘着力よりも弱い被覆膜73が、粘着樹脂層72の保持領域74の外側の領域を覆って設けられている。これにより、基板構造体SUB1への粘着樹脂層72の固着が抑えられる。
【0073】
上述のように素子押付工程S4では、粘着樹脂層72の一部が基板構造体SUB1の表面に付着してしまう虞がある。また、この状態で、レーザ照射工程S5においてレーザLZの照射を行うと、基板構造体SUB1に付着した粘着樹脂層72の一部(粘着性の樹脂)が、基板構造体SUB1に固着されてしまう虞がある。
【0074】
より詳しくは、レーザ照射工程S5においてバンプ電極33に熱が印加されると、基板構造体SUB1の温度も上昇する。このため、基板構造体SUB1の表面に粘着樹脂層72が付着していると、付着している粘着樹脂層72が熱により固まってしまうことがある。この状態で、素子剥離工程S6において、転写用基板70を基板構造体SUB1から引き離すと、固まった粘着樹脂層72が基板構造体SUB1の表面に残ってしまう虞がある。
【0075】
しかしながら、本開示の転写用基板70は、粘着樹脂層72の表面に設けられ、表面の粘着力が粘着樹脂層72の粘着力よりも弱い被覆膜73を有し、素子押付工程S4における粘着樹脂層72の基板構造体SUB1への付着が抑制されている。このため、レーザ照射工程S5においてレーザLZの照射を行っても、基板構造体SUB1への粘着樹脂層72の固着が抑えられる。これにより、表示装置DPS1における光の乱反射等が抑制され、表示装置DPS1の性能を向上させることができる。
【0076】
以上、実施の形態および代表的な変形例について説明したが、上記した技術は、例示した変形例以外の種々の変形例に適用可能である。例えば、上記した変形例同士を組み合わせてもよい。
【0077】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0078】
例えば、上述の実施の形態では、転写用基板準備工程S2において、粘着樹脂層72の表面に設けられる被覆膜73を有する転写用基板70を準備するようにしたが、被覆膜73は、必ずしも転写用基板準備工程S2において準備されていなくてもよい。すなわち、被覆膜73は、素子押付工程S4の前に、粘着樹脂層72の表面に設けられていればよい。言い換えれば、素子押付工程S4において、転写用基板70が上述のような被覆膜73を備えていればよい。
【0079】
<付記>
なお、本技術は、以下のような構成をとることが可能である。
【0080】
(付記1)
支持基板と、
前記支持基板の一方の表面に連続的に設けられ、素子を粘着保持する複数の保持領域を有する粘着樹脂層と、
前記粘着樹脂層の前記支持基板とは反対側の表面に、前記粘着樹脂層の前記保持領域の外側の領域を覆って設けられ、表面の粘着力が前記粘着樹脂層の粘着力よりも弱い被覆膜と、を備える、
転写用基板。
【0081】
(付記2)
付記1に記載の転写用基板において、
前記被覆膜は、前記保持領域の周縁を囲って設けられ、前記保持領域のそれぞれに対向する位置に開口部を有する、
転写用基板。
【0082】
(付記3)
付記2に記載の転写用基板において、
前記開口部は、前記保持領域に保持される前記素子の平面形状に沿った開口形状を有する、
転写用基板。
【0083】
(付記4)
付記2または3に記載の転写用基板において、
平面視での前記開口部と前記保持領域との隙間が1~2.5μmである、
転写用基板。
【0084】
(付記5)
付記1から4の何れか一つに記載の転写用基板において、
前記被覆膜の厚さは、前記素子の高さよりも薄い、
転写用基板。
【0085】
(付記6)
付記1から4の何れか一つに記載の転写用基板において、
前記被覆膜の厚さは、前記素子の高さよりも厚い、
転写用基板。
【0086】
(付記7)
付記1から6の何れか一つに記載の転写用基板において、
前記粘着樹脂層の厚さが、前記素子の高さよりも厚い、
転写用基板。
【0087】
(付記8)
付記1から7の何れか一つに記載の転写用基板において、
前記被覆膜が、金属材料からなる金属薄膜である、
転写用基板。
【0088】
(付記9)
(a)付記1から8の何れか一つに記載の転写用基板を準備する工程、
(b)前記転写用基板を構成する前記粘着樹脂層の前記複数の保持領域に前記素子を粘着保持する工程、
(c)複数のバンプ電極が配列された回路基板を準備し、前記複数の保持領域に前記素子を粘着保持した前記転写用基板を前記回路基板に対して押し付け、前記複数のバンプ電極と、前記複数の保持領域に粘着保持された前記素子の電極と、をそれぞれ接触させる工程、
(d)前記複数のバンプ電極と前記複数の保持領域に粘着保持された前記素子の電極とがそれぞれ接触した状態で、加熱により前記バンプ電極と前記素子の電極とを接合する工程、
を有する、
電子装置の製造方法。
【0089】
(付記10)
(a)支持基板と、前記支持基板の一方の表面に連続的に設けられ、素子を粘着保持する複数の保持領域を有する粘着樹脂層と、を備える、転写用基板を準備する工程、
(b)前記転写用基板を構成する前記粘着樹脂層の前記保持領域に前記素子を粘着保持する工程、
(c)複数のバンプ電極が配列された回路基板を準備し、前記素子を粘着保持した前記転写用基板を前記回路基板に対して押し付け、前記複数のバンプ電極と、前記複数の保持領域に保持された前記素子の電極と、をそれぞれ接触させる工程、
(d)前記複数のバンプ電極と、前記複数の保持領域に粘着保持された前記素子の電極と、がそれぞれ接触した状態で、加熱により前記バンプ電極と前記素子の電極とを接合する工程、
を有し、
前記(c)の工程では、前記粘着樹脂層の前記保持領域の外側の領域を、表面の粘着力が前記粘着樹脂層の粘着力よりも弱い被覆膜によって覆った状態で、前記転写用基板を前記回路基板に対して押し付ける、
電子装置の製造方法。
【0090】
(付記11)
付記10に記載の電子装置の製造方法において、
前記被覆膜は、前記保持領域の周縁を囲って設けられ、前記保持領域のそれぞれに対向する位置に開口部を有する、
電子装置の製造方法。
【0091】
(付記12)
付記11に記載の電子装置の製造方法において、
前記開口部は、前記保持領域に保持される前記素子の平面形状に沿った開口形状を有する、
電子装置の製造方法。
【0092】
(付記13)
付記11または12に記載の電子装置の製造方法において、
平面視での前記開口部と前記保持領域との隙間が、1~2.5μmである、
電子装置の製造方法。
【0093】
(付記14)
付記10から13の何れか一つに記載の電子装置の製造方法において、
前記被覆膜の厚さは、前記素子の高さよりも薄い、
電子装置の製造方法。
【0094】
(付記15)
付記10から13の何れか一つに記載の電子装置の製造方法において、
前記被覆膜の厚さは、前記素子の高さよりも厚い、
電子装置の製造方法。
【0095】
(付記16)
付記15に記載の電子装置の製造方法において、
前記被覆膜の厚さは、前記素子の高さと前記バンプ電極の高さとの合計よりも厚い、
電子装置の製造方法。
【0096】
(付記17)
付記10から16の何れか一つに記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着樹脂層の厚さは、前記素子の高さよりも厚い、
電子装置の製造方法。
【0097】
(付記18)
付記10から17の何れか一つに記載の電子装置の製造方法において、
前記被覆膜が、金属材料からなる金属薄膜である、
電子装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、電子部品(素子)を転写する際に用いられる転写用基板、および転写用基板を用いて電子部品を実装する電子装置の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0099】
5 制御回路
6 駆動回路
10 回路基板
10f,10b 面
11,12,13,14 無機絶縁層
14H 開口
20 LED素子(発光素子,素子)
21 電極
21EA アノード電極
21EK カソード電極
31,32,VL,VSL 配線
33 バンプ電極
41 絶縁層
50 半導体層
70 転写用基板
71 支持基板
72 粘着樹脂層
72f 面
73 被覆膜
73a 開口部
74 保持領域
80 隙間
DSP1 表示装置(電子装置)
ED ドレイン電極
EG ゲート電極
ES ソース電極
GL 走査信号線
Gs 制御信号
LXP 配線交差部
LZ レーザ(レーザ光)
LZS レーザ光源
PFA 周辺領域
PIX 画素
PVS 基準電位(固定電位)
SUB1 基板構造体
SW スイッチング素子
Vsg 映像信号