(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170182
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20241129BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241129BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241129BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241129BHJP
G09F 9/35 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G02F1/1333
B60R11/02 C
G09F9/00 302
G09F9/30 308A
G09F9/35
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087204
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 洋平
【テーマコード(参考)】
2H189
3D020
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H189AA53
2H189AA64
2H189AA70
2H189AA71
2H189CA13
2H189CA31
2H189HA12
2H189HA14
2H189LA02
2H189LA07
2H189MA08
3D020BA04
3D020BC02
3D020BC03
3D020BC10
5C094AA03
5C094AA08
5C094BA43
5C094DA05
5C094FB06
5C094GB10
5C094HA05
5G435AA04
5G435BB12
5G435HH05
5G435KK05
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】端部側で曲率が大きくなるように湾曲した保護板に液晶パネルを配置した表示装置において、表示される像の色の濃淡むらを抑える。
【解決手段】表示装置は、透光性を有する保護板と、保護板の裏面に配される透光性接着剤層と、保護板に透光性接着剤層を介して接着される液晶パネルとを備える。保護板は、中央部よりも端部で曲率が大きくなるように湾曲し、端部において、裏面の曲率が前面の曲率よりも小さくなる領域を含むように形成される。液晶パネルは、保護板の中央部と端部における領域の少なくとも一部とを連続して覆うように配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する保護板と、前記保護板の裏面に配置される透光性接着剤層と、前記透光性接着剤層の裏面に配置される液晶パネルとを備える表示装置であって、
前記保護板は、中央部と端部とを有し、前記端部が前記中央部より大きい曲率にて湾曲し、前記端部の裏面が、前記端部の前面の曲率よりも小さい曲率を有する曲面を含むように形成され、
前記液晶パネルは、前記保護板の前記中央部の裏面と前記端部の裏面における前記曲面とを連続して覆うように配置される、
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記端部の裏面は、前記中央部の裏面から凹みがない状態で延長された面であり、該面は、前記曲面を含む、
表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置において、
前記端部は、裏面に凹部を有し、前記凹部の底面は、前記曲面を含む、
表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置において、
前記保護板の面形状は、矩形状とは異なる形状であり、
前記液晶パネルの面形状は、矩形状とは異なる形状である、
表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表示装置において、
前記保護板の面形状は、矩形状とは異なる形状であり、
前記液晶パネルの面形状は、矩形状である、
表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の表示装置において、
前記保護板の面形状は、矩形状であり、
前記液晶パネルの面形状は、矩形状である、
表示装置。
【請求項7】
請求項4に記載の表示装置において、
前記保護板の面形状は、乗り物のフロントガラス、リアビューミラー、インストルメントパネル、コンソール、およびウィンドウのうち何れかの少なくとも一部に対応する形状である、
表示装置。
【請求項8】
透光性を有する保護板と、前記保護板の裏面に配置される透光性接着剤層と、前記透光性接着剤層の裏面に配置される液晶パネルとを備える表示装置の製造方法であって、
溶融したガラス材または樹脂材を金型にてプレスすることにより、前記保護板を成形する工程であり、前記保護板が、端部が中央部より大きい曲率にて湾曲し、前記端部の裏面が、前記端部の前面の曲率よりも小さい曲率を有する曲面を含むように成形される工程と、
前記保護板の裏面および前記液晶パネルの前面の少なくとも一方に透光性接着剤を塗布する工程と、
前記保護板および前記液晶パネルを、前記液晶パネルが前記保護板の前記中央部の裏面と前記端部の裏面における前記曲面とを連続して覆うように配置して圧着する工程と、
を備える、
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透光性の保護板に液晶パネルが配置された表示装置が知られている。特許文献1には、複数の屈曲部を有して屈曲することで、面する方向が異なる複数の部分を有する保護板を備え、保護板の複数の部分のそれぞれの裏面に、透光性接着剤層により複数の表示ユニットが接着された表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、中央部よりも端部側で曲率が大きくなるように湾曲した保護板の裏面に、液晶パネルを配置して構成される表示装置の需要が高まっている。なお、本願において、「曲率が大きい」とは、「曲率半径が小さい」と同義であり、相対的に急峻に曲がることを意味する。また、「曲率が小さい」とは、「曲率半径が大きい」と同義であり、相対的に緩やかに曲がることを意味する。
【0005】
しかしながら、液晶パネルは、一般的にガラス基板を有しており、硬度が比較的高い。そのため、液晶パネルと湾曲した保護板に沿って配置させると、液晶パネルにおいて歪が生じ、パネル面すなわち表示装置の表示面にて表示される像の色の濃淡むらが生じ易い。
【0006】
このような事情により、端部側で曲率が大きくなるように湾曲した保護板に液晶パネルを配置した表示装置において、表示される像の色の濃淡むらを抑えることができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態は、透光性を有する保護板と、前記保護板の裏面に配置される透光性接着剤層と、前記透光性接着剤層の裏面に配置される液晶パネルとを備える表示装置であって、前記保護板は、中央部と端部とを有し、前記端部が前記中央部より大きい曲率にて湾曲し、前記端部の裏面が、前記端部の前面の曲率よりも小さい曲率を有する曲面を含むように形成され、前記液晶パネルは、前記保護板の前記中央部の裏面と前記端部の裏面における前記曲面とを連続して覆うように配置される、表示装置である。
【0008】
一実施の形態は、透光性を有する保護板と、前記保護板の裏面に配置される透光性接着剤層と、前記透光性接着剤層の裏面に配置される液晶パネルとを備える表示装置の製造方法であって、溶融したガラス材または樹脂材を金型にてプレスすることにより、前記保護板を成形する工程であり、前記保護板が、端部が中央部より大きい曲率にて湾曲し、前記端部の裏面が、前記端部の前面の曲率よりも小さい曲率を有する曲面を含むように成形される工程と、前記保護板の裏面および前記液晶パネルの前面の少なくとも一方に透光性接着材を塗布する工程と、前記保護板および前記液晶パネルを、前記液晶パネルが前記保護板の前記中央部の裏面と前記端部の裏面における前記曲面とを連続して覆うように配置して圧着する工程と、を備える、表示装置の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1による表示装置の裏面図である。
【
図2】実施の形態1による表示装置の断面図である。
【
図3】実施の形態1による表示装置の要部の拡大断面図である。
【
図4】実施の形態1による表示装置の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図5】実施の形態1による保護板のプレス加工による成形方法を示す図である。
【
図6】実施の形態2による表示装置の要部の拡大断面図である。
【
図7】実施の形態1および2の変形例1による表示装置の構成例を示す図である。
【
図8】実施の形態1および2の変形例2による表示装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈本発明者による検討の経緯〉
実施の形態を説明する前に、本発明者による検討の経緯について説明する。
【0011】
本発明者は、透光性を有し、湾曲している保護板の裏面に、透光性接着剤を介して、液晶パネルを接着した、表示装置に着目している。
【0012】
このような表示装置は、例えば、デザイン性あるいは機能性の観点から湾曲した面を有する造形物の曲面部分に、情報表示機能を持たせる場合に用いられる。そして、近年、このような湾曲した保護板に液晶パネルを接着させた表示装置の需要は、高まっている。
【0013】
一方、液晶パネルは、一般的にガラス基板が用いられるため、硬度が比較的高い。そのため、湾曲した保護板の裏面に液晶パネルを密着して接着すると、保護板の曲率が大きい部分において、液晶パネルに比較的大きなせん断応力が生じる。液晶パネルにせん断応力が生じると、液晶パネルにおいて対向して配置される一対のガラス基板の間隔が不均一となり、液晶パネルの前面である光射出面における各画素の光透過度も不均一となる。すなわち、液晶パネルにより表示される像の色の濃淡むらが生じ易くなる。
【0014】
保護板の態様は様々であるが、デザイン性および機能性の両立を図ると、特に、中央部が平面か小さい曲率にて湾曲する面で形成され、端部がより大きな曲率にて湾曲する面で形成されることが多い。このような場合、保護板の裏面に接着される液晶パネルでは、特に端部において、大きなせん断応力が生じ、表示される像の色の濃淡むらが生じ易くなる。
【0015】
本発明者は、上記事情に鑑みて検討を行い、端部側で曲率が大きくなるように湾曲した保護板に液晶パネルを配置した表示装置において、表示面での色の濃淡むらを抑えることができる技術を見い出した。これより、当該技術の実施の形態について説明する。
【0016】
なお、液晶パネルに大きなせん断応力が生じないようにするために、保護板の湾曲した裏面に対し、複数の液晶パネルを並べて配置する手法が考えられる。しかしながら、当該手法では、表示装置における表示面が、隣接する液晶パネルの間で分断される。また、当該手法では、複数の液晶パネルを保護板に対して精度よく接着する必要があるため、製造に掛かる時間あるいは工数が増加し、製造コストも高くなる。本願で開示する技術の一実施の形態は、このような問題点をも解決することができる。
【0017】
以下、実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、透光性を有する保護板と、保護板の裏面に配置される透光性接着剤層と、透光性接着剤層の裏面に配置される液晶パネルとを備える表示装置である。また、保護板は、中央部と端部とを有し、端部が中央部より大きい曲率、すなわち小さい曲率半径にて湾曲し、端部の裏面が、端部の前面の曲率よりも小さい曲率、すなわち大きい曲率半径を有する曲面を含むように形成される。液晶パネルは、保護板の中央部の裏面と端部の裏面における曲面とを連続して覆うように配置される。
【0018】
(実施の形態1)
実施の形態1は、保護板の端部の裏面が、保護板の中央部の裏面から凹みがない状態で延長された面であり、保護板の端部における前面の曲率よりも小さい曲率を有する曲面を含むように構成された、表示装置の例である。
【0019】
図1は、実施の形態1による表示装置の裏面図である。また、
図2は、実施の形態1による表示装置の断面図である。
図2は、
図1のF-F´断面に対応している。なお、ここで、前面とは、視認者が表示装置の表示面を視認する際に、視認者に近い側の面であり、裏面とは、前面の反対側の面である。すなわち、視認者の視線の向きを向きR1とした場合に、向きR1とは逆向きの先にある側を前面という。また、実施の形態1による表示装置5の裏面から前面に向かう方向をy方向、表示装置5の裏面の左から右に向かう方向をx方向、表示装置5の裏面の下から上に向かう方向をz方向とする。
【0020】
図1に示すように、実施の形態1による表示装置5は、透光性を有する保護板1と、保護板1の裏面に配置される透光性接着剤層2と、透光性接着剤層2の裏面に配置される液晶パネル3とを有している。保護板1は、例えば、透光性を有するカバーガラスである。液晶パネル3は、透光性を有する2枚のガラス基板と、それらガラス基板間に挟持される液晶とを含む、公知の構造を有している。液晶パネル3には、一般的に、透光性電極、偏光板なども含まれ、フレキシブル基板が接続されるが、これらは本願にて開示する技術との関連性が低いため、ここでは図示や説明を省略する。
【0021】
保護板1は、中央部11と端部12とを有している。端部12は、中央部11より大きい曲率にて湾曲している。中央部11と端部12とは、一体的に成形されている。
【0022】
保護板1の面形状、すなわち裏面側から見た場合の形状は、矩形状とは異なる形状を有している。
図1に示す例において、保護板1の面形状は、長方形の角を滑らかな曲線に変えて得られる形状である。保護板1におけるy方向の正側寄りの2つの曲線形状は、曲率が比較的小さい曲線の形状である。保護板1におけるy方向の負側寄りの2つの曲線形状は、曲率が比較的大きい曲線の形状である。
【0023】
保護板1は、
図2に示すように、中央部11と、中央部11のx方向における両側に位置する2つの端部12と、を有している。ここでは、中央部11は、平板形状を有しており、中央部11の板厚は一定である。すなわち、中央部11の前面1aおよび裏面1dは、z方向に垂直な平面であるものとする。なお、中央部11は、z方向の正側に緩やかに湾曲した曲板形状を有していてもよい。
【0024】
保護板1の両側の2つの端部12は、それぞれ、前面1bがz方向の正側に湾曲した曲板形状を有している。この端部12の形状の詳細については後述する。
【0025】
液晶パネル3は、
図1に示すように、保護板1より小さく、保護板1の裏面領域の内側に収まる大きさを有している。また、液晶パネル3の面形状、すなわち、裏面側から見た場合の液晶パネル3の形状は、矩形状とは異なる形状を有している。液晶パネル3は、保護板1の裏面の輪郭を縮小した形状に近い形状を有している。すなわち、液晶パネル3の面形状は、保護板1の面形状を全体的に小さくした形状に近い形状を有している。
【0026】
液晶パネル3は、要部として、互いに対向するように配置された一対のガラス基板と、ガラス基板間に挟持される液晶とを有している。ガラス基板は、一般的に平板形状を有しており、素材の特性として比較的高い硬度を有している。そのため、液晶パネル3は、通常は、全体として平板形状を有している。しかしながら、保護板1の端部12の裏面1eは湾曲している。そのため、液晶パネル3のうち保護板1の端部12の裏面1eに接着される部分は、その端部12の湾曲した裏面1eに沿うように湾曲して接着される。液晶パネル3の湾曲した部分には、その湾曲した形状により、せん断応力が生じる。
【0027】
図3は、実施の形態1による表示装置の要部の拡大断面図である。
図3では、表示装置5のx方向における一端側の端部とその周辺部分を表している。
【0028】
図3に示すように、保護板1は、その端部12が中央部11より大きい曲率にて湾曲し、端部12の裏面1eが、端部12の前面1bの曲率よりも小さい曲率を有する曲面1zを含むように形成されている。また、保護板1は、中央部11の裏面1dから延長された凹みがない面が曲面1zを含むように形成される。液晶パネル3は、保護板1の中央部11の裏面1dと端部12の裏面1eにおける曲面1zとを連続して覆うように配置される。
【0029】
保護板1の端部12は、y方向の正側に向かって反るように湾曲している。しかしながら、端部12の前面1bと端部12の裏面1eに含まれる曲面1zとでは、曲率が互いに異なっている。前面1bの曲率中心C1は、保護板1の前面1b側にあり、前面1bの曲率半径はr1である。一方、裏面1eにおける曲面1zの曲率中心C2は、保護板1の前面1b側にあるが、裏面1eの曲率半径はr1よりも大きいr2である。すなわち、保護板1の端部12の裏面1eに含まれる曲面1zに接着される、液晶パネル3の前面3aの曲率は、端部12の前面1bの曲率よりも小さく、曲面1zは前面1bよりもより緩やかに湾曲している。
【0030】
保護板1が上記した形状を有するように形成されることで、液晶パネル3は、端部12においても比較的緩やかに湾曲した曲面1zに沿って接着される。透光性接着剤層2は、その厚みが実質的に均一となるように形成される。この場合、液晶パネル3の端部12における前面3aは、曲面1zと同様に曲率中心C2に近い曲率中心C3を有し、曲率半径はr1より大きいr2となる曲率にて湾曲する。
【0031】
したがって、液晶パネル3の端部12に接着される部分に生じるせん断応力は、前面1bと同じ曲率を有する曲面に接着される場合と比較して、小さくなる。液晶パネル3のせん断応力が小さくなると、液晶パネル3のガラス基板どうしの間隔の不均一性が低減され、液晶パネル3で表示される像の色の濃淡むらが抑制される。
【0032】
なお、実施の形態1では、液晶パネル3のうち保護板1の端部12の曲面1zに接着される面の曲率を、端部12の前面1bの曲率よりも小さくするために、端部12における前面1bと裏面1eに含まれる曲面1zとで曲率が異なるようにしている。この場合、透光性接着剤層2の厚みをx方向において計画的に変化させる場合と異なり、接着工程の作業性がよく、液晶パネル3の曲率も安定的に調整することができる。
【0033】
ここで、表示装置5の製造方法について説明する。
図4は、実施の形態1による表示装置の製造方法の一例を示すフロー図である。
【0034】
図4に示すように、ステップS1では、保護板のプレス加工による成形が行われる。実施の形態1による保護板1は、厚みが一定である一般的な保護板と違い、端部12における前面1bの曲率と裏面1eに含まれる曲面1zの曲率とが異なっており、端部12における厚みがx方向において滑らかに変化する形状を有する。そのため、保護板1は、一般的な曲げ加工による成形が容易でない。そこで、保護板1は、プレス加工により成形することが好ましい。以下に、保護板1のプレス加工による成形方法について説明する。
【0035】
図5は、実施の形態1による保護板のプレス加工による成形方法を示す図である。
図5に示すように、まず、保護板1の形状に合わせて、下側金型101と、上側金型102とが用意される。次に、下側金型101と上側金型102との間に、加熱によって溶融したガラス材100が投入される。あるいは、下側金型101と上側金型102との間にガラス材100が投入され、ガラス材100は金型からの熱伝導によって加熱され溶融される。
【0036】
次いで、上側金型102を下側金型101に対して相対的に押し下げることにより、ガラス材100が加圧される。ガラス材100は、この金型による加圧により、金型の形状に合わせて成形され、成形済ガラス材100aが得られる。
【0037】
その後、成形済ガラス材100aは、金型と熱交換が行われ、冷却される。成形済ガラス材100aは、この冷却により固形化し、成形された保護板1となる。
【0038】
なお、保護板1を樹脂で成形する場合には、ガラス材100の代わりに樹脂材を用いる。
【0039】
図4に戻り、説明を続ける。ステップS2では、透光性接着剤の塗布が行われる。具体的には、保護板1の裏面または液晶パネル3の前面に、透光性接着剤が適当な厚みで塗布される。
【0040】
ステップS3では、液晶パネルの保護板への接着が行われる。具体的には、液晶パネル3が透光性接着剤層2を挟んで保護板1に接着される。透光性接着剤は、例えば、可視光または紫外線の照射、加熱、乾燥などにより硬化される。
【0041】
このような実施の形態1によれば、保護板1の端部12における裏面1eに含まれる曲面1zの曲率が、当該端部12における前面1bの曲率より小さくなるように、保護板1が形成される。そのため、保護板1の端部12の曲率が中央部11の曲率より大きくなる保護板1の裏面に、液晶パネル3を接着させる場合において、端部12の裏面1eに接着される液晶パネル部分の前面3aの曲率を小さくすることができる。その結果、液晶パネル3の端部が湾曲して接着されることにより当該端部に生じるせん断応力を小さくすることができ、液晶パネル3に表示される像の色の濃淡むらを抑えることができる。
【0042】
すなわち、実施の形態1によれば、端部側で曲率が大きくなるように湾曲した保護板に液晶パネルを配置した表示装置において、表示される像の色の濃淡むらを抑えることができる。
【0043】
なお、液晶パネル3に表示される像の色の濃淡むらは、液晶パネル3の面形状が矩形状である場合と比較して、液晶パネル3の面形状が矩形状とは異なる形状である場合の方が、顕著になる傾向が強いことが分かっている。液晶パネル3の面形状が矩形状と異なる形状である場合とは、例えば、液晶パネル3の面形状が、矩形の角を曲線または複数角に成形して得られる形状である場合である。したがって、液晶パネル3に表示される像の色の濃淡むらを抑える効果は、液晶パネル3の面形状が矩形状とは異なる形状である場合に、特に大きい。
【0044】
(実施の形態2)
実施の形態2は、保護板が、湾曲した端部の裏面に凹部を有し、凹部の底面が端部の前面の曲率より小さい曲率を有する曲面を含むように形成された表示装置の例である。
【0045】
図6は、実施の形態2による表示装置の要部の拡大断面図である。
図6では、表示装置5Aのx方向における一端側の端部とその周辺部分を表している。
【0046】
実施の形態2による表示装置5Aは、実施の形態1と同様に、保護板1A、透光性接着剤層2A、および液晶パネル3Aを有している。保護板1Aの裏面、すなわちz方向の負側の面に、透光性接着剤層2Aが配置されている。透光性接着剤層2Aの裏面、すなわちz方向の負側の面に、液晶パネル3Aが配置され、透光性接着剤層2Aにより、保護板1Aの裏面に接着されている。
【0047】
保護板1Aは、
図6に示すように、中央部11Aと、端部12Aとにより構成されている。ここでは、中央部11Aは、平板形状を有しており、中央部11Aの板厚は一定である。
【0048】
図6に示すように、保護板1Aは、その端部12Aが、その裏面1fに凹部13Aを有し、凹部13Aの底面1gが、端部12Aの前面1bの曲率より小さい曲率を有する曲面1zを含むように形成される。
【0049】
より詳しく説明すると、保護板1Aの端部12Aは、z方向の正側に向かって反るように湾曲している。端部12Aの前面1bは、曲率中心C4が保護板1A側にあり、曲率半径r4にて湾曲している。一方、端部12Aの裏面1fには、前面1bの側に向かって、すなわちz方向の正側に向かって凹む凹部13Aを有している。端部12Aの凹部13Aにおける底面1gは、曲率中心C5がy方向の正側にあり、曲率半径r4よりも大きい曲率半径r5にて湾曲している。すなわち、保護板1Aの端部12Aの裏面1fに形成された凹部13Aの底面1gの曲率は、保護板1Aの端部12Aにおける前面1bの曲率よりも小さく、前面1bより緩やかに湾曲している。
【0050】
透光性接着剤層2Aは、保護板1Aと液晶パネル3Aとの間に配置される。透光性接着剤層2Aは、保護板1Aの裏面または液晶パネル3Aの前面に透光性接着剤が塗布され、保護板1Aと液晶パネル3Aとが圧着されることにより形成される。保護板1Aの裏面または液晶パネル3Aの前面に塗布された透光性接着剤の一部は、保護板1Aと液晶パネル3Aとが圧着される際に、凹部13Aに入り込む。そして、液晶パネル3Aにおける裏面3cから相対的に受ける圧力と、凹部13Aに入り込んだ透光性接着剤からの反力とにより、液晶パネル3Aの前面3bは、凹部13Aの底面1gと実質的に同一である、または近似する曲率にて湾曲される。
【0051】
保護板1Aが、端部12Aの裏面1fに上記の凹部13Aを有するように形成されることで、液晶パネル3Aは、端部12Aにおいても比較的緩やかに湾曲した底面1gの曲面と実質的に同じ曲率の曲面に沿って接着される。透光性接着剤層2Aの厚みは、実質的に凹部13Aの凹みを吸収するように変化する。この場合、液晶パネル3Aの端部12Aにおける前面3bは、底面1gと同様に曲率中心C5に近い曲率中心C6を有し、曲率半径はr4より大きいr5となる曲率にて湾曲する。
【0052】
したがって、液晶パネル3Aの端部12Aに接着される部分に生じるせん断応力は、前面1bと同じ曲率を有する曲面に接着される場合と比較して、小さくなる。液晶パネル3Aのせん断応力が小さくなると、液晶パネル3Aにおけるガラス基板どうしの間隔の不均一性が低減され、液晶パネル3Aで表示される像の色の濃淡むらが抑制される。
【0053】
すなわち、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、端部側で曲率が大きくなるように湾曲した保護板に液晶パネルを配置した表示装置において、表示される像の色の濃淡むらを抑えることができる。
【0054】
(実施の形態1および2の変形例)
〈変形例1〉
図7は、実施の形態1および2の変形例1による表示装置の構成例を示す図である。
図7に示すように、実施の形態1および2の変形例1による表示装置5Bは、保護板1B、透光性接着剤層2B、および液晶パネル3Bを有する。透光性接着剤層2Bは、保護板1Bと液晶パネル3Bとの間に配置される。
【0055】
変形例1による表示装置5Bにおいて、保護板1Bの面形状は、矩形状とは異なる形状であり、液晶パネル3Bの面形状は、矩形状である。実施の形態1および2は、このような形状を有する保護板1Bと液晶パネル3Bとの組合せにも適用することができる。
【0056】
図7に示す例において、保護板1Bの面形状は、長方形の角を曲線に変えて得られる形状である。一方、液晶パネル3Bの面形状は、長方形状である。透光性接着剤層2Bは、液晶パネル3Bとほぼ同様の面形状を有している。なお、保護板1Bの面形状は、矩形の角を複数角に変えて得られる多角形状であってもよい。保護板1Bおよび液晶パネル3Bのその他の構成および構造は、実施の形態1あるいは実施の形態2の場合と同様である。
【0057】
このような変形例1による表示装置5Bによれば、実施の形態1および2と同様に、保護板1Bにおける湾曲した端部の曲率よりも、液晶パネル3Bにおける当該端部に接着される部分の曲率を小さくすることができる。その結果、液晶パネル3Bの端部に生じるせん断応力を小さくすることができ、液晶パネル3で表示される像の色の濃淡むらを抑制することができる。
【0058】
〈変形例2〉
図8は、実施の形態1および2の変形例2による表示装置の構成例を示す図である。
図8に示すように、実施の形態1および2の変形例2による表示装置5Cは、保護板1C、透光性接着剤層2C、および液晶パネル3Cを有する。透光性接着剤層2Cは、保護板1Cと液晶パネル3Cとの間に配置される。
【0059】
変形例2による表示装置5Cにおいて、保護板1Cの面形状は、矩形状であり、液晶パネル3Cの面形状は、矩形状である。実施の形態1および2は、このような形状を有する保護板1Cと液晶パネル3Cとの組合せにも適用することができる。
【0060】
図8に示す例において、保護板1Cの面形状は、長方形状である。一方、液晶パネル3Cの面形状も、長方形状である。透光性接着剤層2Cは、液晶パネル3Cとほぼ同様の面形状を有している。なお、液晶パネル3Cの面形状は、矩形の角を複数角に変えて得られる多角形状であってもよい。保護板1Cおよび液晶パネル3Cのその他の構成および構造は、実施の形態1あるいは実施の形態2の場合と同様である。
【0061】
このような変形例2による表示装置5Cによれば、実施の形態1および2と同様に、保護板1Bにおける湾曲した端部の曲率よりも、液晶パネル3Bにおける当該端部に接着される部分の曲率を小さくすることができる。その結果、液晶パネル3Bの端部に生じるせん断応力を小さくすることができ、液晶パネル3で表示される像の色の濃淡むらを抑制することができる。
【0062】
〈変形例3〉
変形例3による表示装置は、保護板の面形状が、乗り物のフロントガラス、リアビューミラー、インストルメントパネル、コンソール、およびウィンドウのうち何れかの少なくとも一部に対応する形状を有する例である。乗り物は、例えば、自動車、自動二輪車、電車、モノレール、飛行機、気球、船、潜水艦などである。また、変形例3による表示装置は、保護板の面形状が、エレベータ、エスカレータなどの移動手段の表示部、電化製品の表示部の少なくとも一部に対応する形状を有する例である。
【0063】
特に、乗り物のフロントガラス、リアビューミラー、インストルメントパネル、コンソール、およびウィンドウにおいて、デザイン性と機能性とを両立させるために、端部が湾曲した透光性の保護板と、その裏面に接着される液晶パネルとを含む表示装置が利用されることが多い。したがって、変形例3による表示装置の実現は、強く望まれており、変形例3による実施の形態1および2の効果の価値は高い。
【0064】
以上、本発明の各種実施の形態および各種変形例について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。これらは全て本発明の範疇に属するものである。さらに文中や図中に含まれる数値等もあくまで一例であり、異なるものを用いても本発明の効果を損なうものではない。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B,1C…保護板
1a…保護板の中央部の前面
1b…保護板の端部の前面
1d…保護板の中央部の裏面
1e…保護板の端部の裏面
1f…保護板の端部の裏面
1g…凹部の底面
1z…曲面
2,2A,2B,2C…透光性接着剤層
3,3A,3B,3C…液晶パネル
3a,3b…液晶パネルの端部の前面
3c…液晶パネルの裏面
5,5A,5B,5C…表示装置
11,11A…保護板の中央部
12,12A…保護板の端部
13A…保護板の裏面の凹部
100…ガラス材
100a…成形済ガラス材
101…下側金型
102…上側金型
C1,C2,C3,C4,C5,C6…曲率中心
r1,r2,r4,r5…曲率半径