(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170184
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】スティックデバイス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0338 20130101AFI20241129BHJP
【FI】
G06F3/0338 411
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087206
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 伸也
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AA04
(57)【要約】
【課題】スティックデバイスに関して、耐久性の向上などを実現できる技術を提供する。
【解決手段】スティックデバイス1は、ユーザの操作に応じて、第1軸(X軸)の周りに回転動作可能、かつ、第2軸(Y軸)の周りに回転動作可能、かつ、第3軸(Z軸)の方向に押し込みが可能であるスティック2と、スティック2の第3軸(Z軸)の方向での押し込みの距離または位置を、非接触方式で検出するセンサ(光学センサ7)とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スティックデバイスであって、
ユーザの操作に応じて、第1軸の周りに回転動作可能、かつ、第2軸の周りに回転動作可能、かつ、第3軸の方向に押し込みが可能であるスティックと、
前記スティックの前記第3軸の方向での押し込みの距離または位置を、非接触方式で検出するセンサと、
を備える、スティックデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のスティックデバイスにおいて、
前記スティックの押し込みと同時に、前記第1軸の周りの回転動作、および前記第2軸の周りの回転動作が可能な構造であり、
前記スティックの前記第1軸の周りの回転角度または位置と、前記第2軸の周りの回転角度または位置とを、前記センサによって検出する、
スティックデバイス。
【請求項3】
請求項1記載のスティックデバイスにおいて、
前記スティックが挿入され、前記第1軸の周りに回転動作可能な第1連動部と、
前記スティックが挿入され、前記スティックと接続され、前記第2軸の周りに回転動作可能な第2連動部と、
前記第2連動部が支持されたスティック受け台と、
前記スティック受け台が支持されたスプリングと、
前記第1連動部、前記第2連動部、前記スティック受け台、および前記スプリングが支持されたベース筐体と、
を備え、
前記スティックの押し込み時には、前記スティックとともに、前記第2連動部および前記スティック受け台が、前記第1軸および前記第2軸を含む平面に対する姿勢を維持したまま、前記第3軸の下方向に移動する、
スティックデバイス。
【請求項4】
請求項1記載のスティックデバイスにおいて、
前記センサは、前記スティックの前記第3軸での下方に設置されている光学センサまたは磁気センサである、
スティックデバイス。
【請求項5】
請求項3記載のスティックデバイスにおいて、
前記センサは、前記スティック受け台よりも前記第3軸での下側に設置されている光学センサであり、
前記スティック受け台は、前記第3軸が通る開口を有し、
前記光学センサからの光を、前記開口を通じて、前記スティックの底部に照射し、反射光を前記光学センサで検出する、
スティックデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スティックデバイスの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばゲーム機のコントローラ(操作デバイス)などにスティックデバイスが使用されている。従来技術例のスティックデバイスまたはそれを含んで構成されるコントローラなどのデバイスは、スティック(言い換えるとレバー)の回転角度(または位置)を検出する機構、およびスティックの押し込みの有無または距離(または位置)を検出する機構を備えている。
【0003】
従来技術例のスティックデバイスとして一般的な構造は、スティックの直交する2軸である第1軸(X軸とする)および第2軸(Y軸とする)の回転角度などを検出するための2つのポテンショメーター(可変抵抗器)と、スティックの2軸に直交する第3軸(Z軸とする)での下方向への押し込みによる接触を検出するためのタクトスイッチ(登録商標)とを備える構造である。タクトスイッチは、接触式のスイッチ、押しボタンスイッチである。
【0004】
スティックデバイスに関する先行技術例として、特開2023-39410号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、「効率及び精度に優れ、かつコストの低い多方向入力装置」を提供する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術例のスティックデバイスまたはそれを含んで構成されるコントローラなどのデバイスは、スティックの回転角度などを検出する機構、およびスティックの押し込みの距離などを検出する機構を備えているが、それらの機構は、いずれも物理的な接触方式の機構である。すなわち、ユーザによる操作に応じてスティックなどの部品と検出のための部品とが接触する。そのため、接触による部品の摩耗や劣化など、耐久性などの観点で課題がある。
【0007】
なお、従来技術例のスティックデバイスの構造では、ポテンショメーターは固定されており、スティックが下方(Z軸)に押し込まれた場合に、スティックとともに一方の連動部における片側の部分が斜めに傾くように下方に動いて、タクトスイッチに接触して押す構造である。そのため、このような構造では、一方の連動部における片側の部分に押圧力の負荷が集中し、接触の負荷が大きいため、接触による部品の摩耗や劣化などの可能性がある。
【0008】
また、接触方式のポテンショメーターを有するスティックデバイス構造の場合、長時間使用に伴い、可変抵抗値が変化してしまう場合があり、スティックの回転角度/位置の正確な検出ができなくなる。すなわち、検出精度の観点でも課題がある。
【0009】
本開示の目的は、上記スティックデバイスの技術に関して、耐久性の向上などを実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。一実施の形態は、スティックデバイスであって、ユーザの操作に応じて、第1軸の周りに回転動作可能、かつ、第2軸の周りに回転動作可能、かつ、第3軸の方向に押し込みが可能であるスティックと、前記スティックの前記第3軸の方向での押し込みの距離または位置を、非接触方式で検出するセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示のうち代表的な実施の形態によれば、上記スティックデバイスの技術に関して、耐久性の向上などを実現できる。上記した以外の課題、構成および効果等については、発明を実施するための形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は実施の形態1のスティックデバイスの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は実施の形態1のスティックデバイスのカバーを除いた構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は実施の形態1のスティックデバイスのA-A線のYZ断面図である。
【
図4】
図4は実施の形態1のスティックデバイスのB-B線のXZ断面図である。
【
図5】
図5は実施の形態1のスティックデバイスの上面のXY平面図である。
【
図6】
図6は実施の形態1のスティックデバイスの、スティックの斜視図である。
【
図7】
図7は実施の形態1のスティックデバイスの、スティックのYZ平面図である。
【
図8】
図8は実施の形態1のスティックデバイスの、センサ基板およびベース筐体の斜視図である。
【
図9】
図9は実施の形態1のスティックデバイスの、X軸ホルダーの斜視図である。
【
図10】
図10は実施の形態1のスティックデバイスの、Y軸ホルダーの斜視図である。
【
図11】
図11は実施の形態1のスティックデバイスの、スティック受け台の斜視図である。
【
図12】
図12は実施の形態1のスティックデバイスの、スティック押し込み操作時のYZ断面図である。
【
図13】
図13は実施の形態1のスティックデバイスの、スティック押し込み前のXZ平面図である。
【
図14】
図14は実施の形態1のスティックデバイスの、スティック押し込み後のXZ平面図である。
【
図15】
図15は実施の形態1のスティックデバイスの、スティック回転操作時のXZ平面図である。
【
図16】
図16は実施の形態1のスティックデバイスの、スティック押し込み操作かつスティック回転操作時のXZ平面図である。
【
図17A】
図17Aは実施の形態1のスティックデバイスの、スティック押し込みかつ回転時の光学検出についての操作前の状態のYZ断面図である。
【
図17B】
図17Bは実施の形態1のスティックデバイスの、スティック押し込みかつ回転時の光学検出についての操作後の状態のYZ断面図である。
【
図18A】
図18Aは実施の形態1のスティックデバイスの、スティック回転操作時の光学検出についての操作前の状態のXY平面図である。
【
図18B】
図18Bは実施の形態1のスティックデバイスの、スティック回転操作時の光学検出についての操作後の状態のXY平面図である。
【
図19】
図19は実施の形態1のスティックデバイスにスティックカバーを取り付けた構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、範囲等を表していない場合があるが、限定する意図は無い。
【0014】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ(制御装置)、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPU/MPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0015】
プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばメモリカードやディスクでもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クライアント・サーバシステム、クラウドコンピューティングシステム、IoTシステム等で構成されてもよい。各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で構成されるが、これに限定されない。識別情報、識別子、ID、名前、番号等の表現は互いに置換可能である。
【0016】
[実施の形態の概要]
本実施の形態のスティックデバイスの構造は、非接触方式でのセンサを用いて、スティックの回転角度等および押し込み距離等を検出する構造であり、従来のポテンショメーターやタクトスイッチを不要とする構造であり、スティックまたは連動部等の部品がタクトスイッチ等の検出用部品に接触しない構造である。
【0017】
本実施の形態のスティックデバイスは、ユーザの操作に応じてスティックがZ軸下方向に押し込まれた場合に、一方の連動部が、片側のみが傾いて下方に動くのではなく、両側を含め全体が殆ど同じ高さ位置を保ちながら(言い換えるとXY平面でほぼ平行な姿勢を維持しながら)、下方に動く構造である。そして、その際に、本実施の形態のスティックデバイスまたはそれを含むコントローラデバイスは、非接触方式のセンサ、例えば光学センサによって、スティックの押し込みの距離または位置を検出する。
【0018】
本実施の形態のスティックデバイスは、スティックまたは連動部等の部品が検出用部品に接触しない構造であるため、接触による部品の摩耗や劣化などを防止または低減でき、耐久性を高めることができる。
【0019】
実施の形態は、解決手段として以下を有する。本解決手段は、スティックの押し込みと回転が非接触方式で検出可能な構造である。
【0020】
実施の形態のスティックデバイスは、ユーザによるスティックの操作に応じて、X軸およびY軸における回転機構(言い換えると第1連動部、第2連動部)が回転することで、スティックを傾けることができ、そのスティックが傾けられた状態(回転角度/回転位置)を、非接触方式でのセンサ(例えば光学センサ)によって検出する機構を有する。非接触方式のセンサは、磁気センサなどを用いてもよい。
【0021】
実施の形態のスティックデバイスは、ユーザがスティックをZ軸方向で上から下へ押し込むことができる。スティックは押し込みと共に2軸(X軸、Y軸)の各軸の方向(すなわちXY平面内)での回転移動も可能である。
【0022】
非接触方式のセンサ、例えば光学センサは、スティックとの距離、またはスティックの位置を検出・計測する。スティックが上方の基準位置にある状態から下方に押し込まれた際には、例えば光学センサから発光・出射した光がスティック底部に当たって反射する。光学センサは、その反射光を検出する。光学センサまたはそれを搭載するセンサ基板は、その発光・受光の信号に基づいて、スティックとの距離またはスティックの位置を検出・計算し、出力することができる。上記センサ基板、またはスティックデバイスを搭載する機器は、上記スティックとの距離/スティックの位置に基づいて、スティックの押し込みの量を検出・計算できる。
【0023】
また、上記非接触方式のセンサを用いて、スティックの2軸(X軸、Y軸)での回転角度/位置の状態も検出・計算できる。例えば、スティックの回転角度/位置の状態に応じて、光学センサの光が、スティック底部に当たって反射光として戻ってくる際の距離や方向などが変化する。そのため、その際の受光の状態に基づいて、光学センサ/センサ基板は、スティックの2軸の回転角度/位置の状態も検出・計算可能である。
【0024】
実施の形態のスティックデバイスによれば、非接触方式でスティックの押し込み量および回転角度/位置の状態を検出可能になる。非接触方式であるため、部品の摩耗や劣化などを防止または低減でき、耐久性を高めることができる。
【0025】
また、実施の形態のスティックデバイスによれば、ユーザの操作として、スティックをZ軸下方に押し込みながら2軸(X軸、Y軸)の方向で自由に回転する操作も可能になる。すなわち、スティックを押し込みながら2軸の方向で回転する操作も可能なスティックデバイス、およびそれを搭載したコント―ラデバイスなどが実現できる。
【0026】
<実施の形態1>
図1~
図19を用いて、本開示の実施の形態1のスティックデバイスについて説明する。
【0027】
[スティックデバイス]
図1は、実施の形態1のスティックデバイス1の構成例を示す斜視図である。A-A線は、スティック操作に関する第2軸、例えばY軸(ユーザから見て縦方向の操作の軸)に対応し、B-B線は、スティック操作に関する第1軸、例えばX軸(ユーザから見て横方向の操作の軸)に対応する。また、
図2は、
図1のスティックデバイス1からカバー6を取り外した状態の斜視図である。
【0028】
図1や
図2に示すように、スティックデバイス1は、概略的にZ軸方向で下から順に、センサ基板4、ベース筐体5、スプリング8、スティック受け台9、Y軸ホルダー12、X軸ホルダー11、カバー6、およびスティック2を有する。
【0029】
図1では、主に、スティック2の上部、カバー6、X軸ホルダー11の一方の軸部11b、Y軸ホルダー12の一方の軸部12b、ベース筐体5の支持部5bや支持部5d、およびセンサ基板4が見えている。カバー6は、X軸ホルダー11等の機構を覆っている。カバー6の上面には円形の開口6a(後述の
図5)を有し、Z軸方向にスティック2が挿入されており、X軸ホルダー11やY軸ホルダー12の一部が見えている。
【0030】
本実施の形態でのX軸ホルダー11、Y軸ホルダー12、スティック受け台9および光学センサ7等を含む機構は、従来技術例の接触方式のスティックデバイスにおける2つのポテンショメーター、ホルダー(連動部)およびタクトスイッチ等を含む機構とは異なる機構である。
【0031】
図2では、X軸ホルダー11およびY軸ホルダー12が挿入されているスティック2の下部(スティック底部2bを含む)と、Y軸ホルダー12を受け止めてスティック底部2bを収容しているスティック受け台9とが見えている。また、
図2では、ベース筐体5による空間内に、スプリング8、スティック受け台9、Y軸ホルダー12、およびX軸ホルダー11が収容されている。ベース筐体5のX軸方向の支持部5aおよび支持部5bには、X軸ホルダー11の軸部11aおよび軸部11bが支持されている。ベース筐体5のY軸方向の支持部5cおよび支持部5dには、スティック受け台9の支持部9aおよび支持部9b(後述の
図11)、Y軸ホルダー12の軸部12aおよび軸部12bが支持されている。
【0032】
図1および
図2では、スティック2が操作されていない状態(ニュートラル状態あるいはノーマル状態と記載する場合がある)を示している。ニュートラル状態では、スティック2は、基準位置として、Z軸方向で所定の最大位置(言い換えると最高位置)にあり、X軸方向およびY軸方向で所定の中央位置にある。
【0033】
なお、実施の形態1の
図1の構成例では、スティックデバイス1は、光学検出のための光学センサ7(後述の
図3など)を含む基板であるセンサ基板4を有している。実施の形態1では、この光学センサ7を含むセンサ基板4も、スティックデバイス1の構成要素である。他の実施の形態では、この光学センサ7を含むセンサ基板4を、スティックデバイス1に対する外付けの構成要素としてもよい。このセンサ基板4は、スティックデバイス1を搭載するコントローラデバイスなどに具備される構成要素としてもよい。
【0034】
[スティックカバー]
図1では、
図19のようなスティックカバー3(言い換えるとスティックヘッド)を除いた構成を示している。
図19は、
図1のスティックデバイス1のスティック2にスティックカバー3が取り付けられた状態を示す斜視図である。スティック3の上部にスティックカバー3が固定されている。スティックカバー3は、指による3軸方向のスティック操作がしやすいように設けられている。
【0035】
[YZ断面図]
図3は、
図1のスティックデバイス1における、Y軸に対応するA-A線の断面図(YZ断面図)である。Z軸方向に延在する一点鎖線は、中心軸を示す。
図3では、スティックデバイス1は、センサ基板4上に搭載されている光学センサ7(発光素子7Aおよび受光素子7B)と、ベース筐体5上に配置されているスプリング(ばね)8とが見えている。また、スプリング8およびベース筐体5上に支持されているスティック受け台9と、スティック受け台9上に支持されているY軸ホルダー12と、Y軸ホルダー12がY軸方向に挿入されているX軸ホルダー11とが見えている。また、Y軸ホルダー12とスティック2とを接続するシャフト13が見えている。スティック2は、図示のように、Z軸方向で上から順に、X軸ホルダー11およびY軸ホルダー12を貫通し、スティック底部2b(後述の
図6)がスティック受け台9の凹部9d(後述の
図11)に収容されている。
【0036】
図3や
図4に示されるように、本実施の形態では、非接触方式のセンサである光学センサ7は、スティック2のスティック底部2bに対しZ軸方向で下方の位置である中心軸付近位置(
図8での開口5e内の所定の位置)に設置されており、スティック受け台9よりもZ軸方向での下側に設置されている。これに限らず、光学センサ7は、スティック底部2bに対し光を照射して反射光を受光できる位置に配置されていればよい。また、シャフト13の高さ位置と、Y軸ホルダー12の軸部12a,12bにおけるY軸方向に延在する回転中心軸301の高さ位置とは、同じである。
【0037】
本実施の形態では、光学センサ7は、発光素子7Aと受光素子7Bとの対で構成されている。発光素子7Aは例えばレーザー素子である。センサ基板4は、光学センサ7の発光素子7Aを制御して発光させる。発光素子7Aからの発光(例えばレーザー光)は、矢印で示すように、スティック受け台9の開口9e(後述の
図11)を経由して、スティック底部2bの底面に照射される。その照射光は、スティック底部2bの底面で反射されて、反射光が、受光素子7Bで受光される。センサ基板4は、光学センサ7の受光素子7Bを制御して、受光素子7Bの検出信号を取得する。
【0038】
センサ基板4は、光学センサ7の検出信号、または、その検出信号に所定の処理を施した結果の信号を、端子から外部(例えばコントローラデバイス)へ出力してもよい。あるいは、センサ基板4は、その検出信号などを、無線または有線の通信によって外部へ出力してもよい。所定の処理の例としては、押し込み距離や回転角度の計算でもよい。
【0039】
[XZ断面図]
図4は、
図1のスティックデバイス1に関して、X軸に対応するB-B線の断面図(XZ断面図)である。
図4では、スティックデバイス1は、センサ基板4上に搭載されている光学センサ7のうちの発光素子7Aと、ベース筐体5上に配置されているスプリング8とが見えている。また、スプリング8上に支持されているスティック受け台9と、ベース筐体5上に支持されているX軸ホルダー11と、X軸ホルダー11に対しY軸方向に挿入されているY軸ホルダー12とが見えている。また、Y軸ホルダー12とスティック2とを接続するシャフト13が見えている。シャフト13はX軸方向に延在している。スティック2は、図示のように、Z軸方向で上から順に、X軸ホルダー11およびY軸ホルダー12を貫通し、スティック底部2b(後述の
図6)がスティック受け台9の凹部9d(後述の
図11)に収容されている。
【0040】
X軸ホルダー11の軸部11a,11bのX軸方向に延在する回転中心軸302の高さ位置は、シャフト13および
図3のY軸ホルダー12の回転中心軸301に対し、やや下の位置にある。
【0041】
[XY平面図]
図5は、
図1のスティックデバイス1を上から見たXY平面図である。カバー6の上面には例えば円形の開口6aがあり、その開口6aからZ軸上側にスティック2の上部が出ている。その開口6aからX軸ホルダー11、Y軸ホルダー12、およびスティック受け台9の一部が見えている。一点鎖線の交点である黒丸の点は、スティック2の中心軸(Z軸)を示す。円形の開口6aの範囲内でスティック2がXY方向に回転動作可能である。カバー6の外側には、ベース筐体5の支持部5a,5b,5c,5dが出ている。ベース筐体5の支持部5a,5bは、X軸ホルダー11を回転動作可能に支持しており、ベース筐体5の支持部5c,5dは、Y軸ホルダー12を回転動作可能に支持している。
【0042】
[スティック]
図6は、スティック2の斜視図を示す。スティック2は、Z軸に延在するスティック本体2aと、下部に設けられたスティック底部2bとを有する。スティック本体2aは、本例では、XY断面をバレル形状、X軸方向の両側面が平面で、Y軸方向の両側面が外側に膨らんだ形状、としているが、これに限定されない。スティック本体2aの下部には、X軸方向にシャフト13を貫通して固定するためのシャフト穴2cを有する。スティック底部2bは、概略的に円板形状を有し、上面側がXY平面となっており、円板の径はスティック本体2aの径よりも大きい。
【0043】
図7は、スティック2のYZ平面図である。本実施の形態では、スティック底部2bは、底面2d側がZ軸下側に出る円錐形状となっている。円錐の頂点である点P1はスティック2の中心軸(一点鎖線)と一致している。円錐は傾きとして所定の角度α1を有する。傾きの角度α1は、光学センサ7による好適な検出を考慮して設定されている。
【0044】
本実施の形態では、スティック底部2bの底面2dにおける所定の形状としてこのような円錐面形状を有する。この円錐面形状は一例であり、これに限定されない。例えば、円錐の頂点の付近をXY平面にしたり、曲面にしたりしてもよい。また、円錐面ではなく、球面、楕円曲面などの曲面形状にしてもよい。
【0045】
[センサ基板とベース筐体]
図8は、センサ基板4とベース筐体5とを示す斜視図である。センサ基板4は、例えば矩形の平板の上面における中央付近の所定の位置に、光学センサ7(発光素子7Aおよび受光素子7B)が搭載されている。本例では、光学センサ7は発光素子7Aと受光素子7Bとの対で構成されているが、これに限らず一体のセンサ素子でもよい。センサ基板4には、その他、電子回路などが実装されていてもよい。
【0046】
センサ基板4の上にベース筐体5が固定されている。ベース筐体5は、スプリング8、スティック受け台9、X軸ホルダー11、Y軸ホルダー12、およびケース6などを保持する部品である。ベース筐体5は、中央部に開口5eを有するXY平面の平板と、その平板からX軸およびY軸の両端でZ軸方向に出る支持部(支持部5a,5b,5c,5d)とを有する。平板の開口5eには、光学センサ7(発光素子7Aおよび受光素子7B)が配置されている。開口5eの外周にはリング状の溝があり、その溝の上にスプリング8(
図2~
図4)が設置されている。
【0047】
ベース筐体5は、X軸方向の支持部5a,5bと、Y軸方向の支持部5c,5dとを有する。各支持部5a,5b,5c,5dは、Z軸上側に立つ平板状の部分を有する。
【0048】
図1~
図5、
図8に示されるように、X軸方向で、カバー6の外側には、ベース筐体5の支持部5a,5bが出ている。支持部5a,5bは、言い換えると、X軸ホルダー支持部である。
図1等に示されるように、支持部5a,5bには、半円状の凹部5a1,5b1を有している。その凹部5a1,5b1には、Z軸方向上側に、X軸ホルダー11の軸部11a,11bが支持されている。
【0049】
また、Y軸方向で、カバー6の外側には、ベース筐体5の支持部5c,5dが出ている。これらの支持部5c,5dは、言い換えると、Y軸ホルダー支持部である。支持部5c,5dには、外側に半円状の凹部5h,5iと、内側に矩形状の凹部5f,5gとを有している。内側の矩形状の凹部5f,5gには、スティック受け台9(
図11)の支持部9a,9bが支持されている。外側の半円状の凹部5h,5iには、Y軸ホルダー12の軸部12a,12bが支持されている。
【0050】
図8や
図3に示されるように、Y軸方向での内側の凹部5f,5gは、外側の凹部5h,5iよりも、Z軸方向に深い。これにより、
図2等に示されるように、内側の凹部5f,5gにスティック受け台9の支持部9a,9bが支持された状態で、その支持部9a,9bに形成されている半円状の凹部(
図11の凹部9a1,9b1)と、外側の半円状の凹部5h,5iとが、連続的な凹部を形成する。そして、その連続的な凹部の上側に、Y軸ホルダー12の軸部12a,12bが支持されている。
【0051】
[X軸ホルダー]
図9は、X軸ホルダー11(言い換えると第1連動部)を示す斜視図である。X軸ホルダー11は、X軸方向の軸部11a,11bと、軸部11a,11bの間においてX軸方向に延在するスティック挿入部11cとを有する。軸部11a,11bは、X軸(回転中心軸302)の周りの回転動作が可能なように円柱形状を有しており、ベース筐体5(
図5や
図8)の支持部5a,5bに対し回転動作可能に支持される。
【0052】
スティック挿入部11cは、スティック本体2a(
図6)がZ方向に挿入される部分である。スティック挿入部11cは、概略的にボックス形状のうち、軸部11a,11bが固定されているX軸方向の側面部と、Z軸方向の上面のうちの四辺とを有する部分であり、四辺の内部は概略的に矩形の開口11dとなっている。スティック本体2aは、X軸方向に操作された場合、スティック挿入部11cの開口11dにおいて、X軸方向の左右辺に当たるまでの範囲内でX軸方向に回転移動可能である。スティック本体2aは、Y軸方向に操作された場合、スティック挿入部11cの開口11dにおいて、Y軸方向の上下辺に当たり、X軸ホルダー11とともに、Y軸ホルダー12のY軸方向の上下辺に当たるまでの範囲内でY軸方向に回転移動可能である(
図2、
図5等)。
【0053】
[Y軸ホルダー]
図10は、Y軸ホルダー12(言い換えると第2連動部)を示す斜視図である。Y軸ホルダー12は、Y軸方向の軸部12a,12bと、軸部12a,12bの間においてY軸方向に延在するスティック挿入部12cとを有する。軸部12a,12bは、Y軸(回転中心軸301)の周りの回転動作が可能なように円柱形状を有しており、ベース筐体5(
図5や
図8)の支持部5a,5bに対し回転動作可能に支持される。
【0054】
スティック挿入部12cは、スティック本体2aがZ軸方向に挿入される部分であり、概略的にボックス形状のうち、軸部12a,12bが固定されているY軸方向の側面部と、Z軸方向の上面のうちの四辺とを有する部分であり、四辺の内部は概略的に矩形の開口12dとなっている。また、スティック挿入部12cは、X軸方向の左右辺に対応して側面部12eを有し、その側面部12eには、シャフト13(
図3、
図4)が挿入されて固定されるシャフト穴12fを有する。
【0055】
スティック本体2aは、Y軸方向に操作された場合、スティック挿入部12cの上面の開口12dにおいて、シャフト13を通じて、Y軸方向の上下辺に当たるまでの範囲内でY軸方向に回転移動可能である。スティック本体2aは、X軸方向に操作された場合、シャフト13を通じて、Y軸ホルダー12とともに、X軸ホルダー11のX軸方向の左右辺に当たるまでの範囲内でX軸方向に回転移動可能である(
図2、
図5等)。
【0056】
[スティック受け台]
図11は、スティック受け台9を示す斜視図である。スティック受け台9は、円板形状の受け台9cを基本として、Y軸方向には外側に出る支持部9a,9bを有する。受け台9cは、Z軸を中心として、上面から第1の深さで第1の径を有する円形状の凹部9dを有し、さらに、凹部9dに対し、上面から第2の深さで第2の径を有する円形状の開口9eを有する。
【0057】
Y軸方向の支持部9a,9bは、前述のように、ベース筐体5(
図8等)のY軸方向の支持部5c,5dに設けられている内側の凹部5f,5gに支持される。支持部9a,9bの上面には、半円状の凹部9a1,9b1が形成されており、その凹部9a1,9b1の上側に、
図1、
図2、
図3等のように、Y軸ホルダー12(
図10)の軸部12a,12bが支持されている。
【0058】
受け台9cの外周付近においてX軸方向の両端には切り欠き9f,9gを有する。切り欠き9f,9gには、
図4のように、X軸ホルダー11の軸部11a,11bが配置される。
【0059】
受け台9cの凹部9dには、
図2~
図4等に示すように、スティック底部2b(
図6等)、特にスティック底部2bの外周部が支持される。スティック底部2bのうちの特に円錐の頂点を含む中央部は、凹部9dの開口9eからZ軸下側に見えている。すなわち、光学センサ7からの光は、Z軸(中心軸)が通る開口9eを通じてスティック底部2bの中央部の底面2dに照射される。
【0060】
上記ベース筐体5の支持部に、X軸ホルダー11の軸部、Y軸ホルダー12の軸部、およびスティック受け台9の支持部が支持された状態で、それらの上側に
図1のようにカバー6が取り付けられる。カバー6側に設けられている半円状の凹部に、X軸ホルダー11の軸部およびY軸ホルダー12の軸部が配置されている。このように、ベース筐体5およびカバー6によって、X軸ホルダー11、Y軸ホルダー12、およびスティック受け台9の移動可能範囲が制限される。
【0061】
[スティック押し込み時の動作]
つぎに、スティック2がZ軸下方に押し込まれた時の動作について説明する。スティックデバイス1のニュートラル状態では、前述の
図1~
図5等のように、スティック2がZ軸方向に沿って基準位置に配置されており、X軸ホルダー11およびY軸ホルダー12は、ベース筐体5上で所定の基準状態となっている。ニュートラル状態では、Y軸ホルダー12の軸部12a,12bについては、ベース筐体5の支持部5c,5dの凹部5h,5iの上に、隙間を空けて配置されている。Y軸ホルダー12の軸部12a,12bは、スティック受け台9の支持部9a,9bと接触しているが、ベース筐体5の支持部5c,5dの凹部5h,5iとは接触していない。
【0062】
ユーザがスティックデバイス1を何も操作していない状態、言い換えると指がスティック2に触れていない状態やスティック2に力を入れていない状態では、スティック2は、スプリング8などによる作用によって、ニュートラル状態の位置(言い換えると基準位置、ノーマル位置)に戻る。ニュートラル状態では、スティック2がX軸およびY軸のいずれも中心位置にあり、回転角度が0度であり、Z軸方向の押し込みの距離が0であり最高位置にある。
【0063】
図3や
図4のように、スプリング8の上側に、スティック受け台9の一部(
図11での受け台9cの外周部)が支持されている。スティック2がZ軸下方に押し込まれた場合、スティック受け台9の一部がスプリング8に当たってスプリング8からZ軸上方向への弾性力を受ける。これにより、ユーザがスティック2に力を入れない場合、スティック2、Y軸ホルダー12、およびスティック受け台9は、Z軸上方の所定の位置まで戻る。
【0064】
スティック2がZ軸下方に押し込まれた場合の作用を説明する。ここでは、押し込み時のスティック2のXY方向の回転移動は0であるとする。スティック2がZ軸下方に押し込まれた場合に、まずX軸ホルダー11はZ軸方向には移動しない。他方、Y軸ホルダー12は、シャフト13を通じてスティック2と接続されているので、スティック2とともに、Y軸ホルダー12全体をXY平面に概略的に平行な姿勢を維持したまま、Z軸下方に移動する。
【0065】
スティック受け台9の支持部9a,9bにY軸ホルダー12の軸部12a,12bが支持されているので(
図3)、上記スティック2およびY軸ホルダー12のZ軸下方向移動に伴い、スティック受け台9もZ軸下方に押し込まれる。この際、スティック受け台9も、全体をXY平面に概略的に平行な姿勢を維持したまま、Z軸下方に移動する。
【0066】
よって、スティック2、Y軸ホルダー12、およびスティック受け台9は、ベース筐体5の支持部5c,5dの凹部5f,5gおよび凹部5h,5iによって止められる位置までの範囲内で、一体的にZ軸下方向に移動する。その止められる位置は、Z軸方向での最小位置(最低位置)と対応付けられる。
【0067】
図12は、スティック2がZ軸下方に所定の最小位置(最低位置)まで押し込まれた場合の状態を示すYZ断面図である。
図12では、ユーザがスティック2をZ軸下方に距離DZ分押し込んだ場合を示している。この際のXY方向への回転移動は0である。この押し込みに伴い、スティック底部2bの底面2dの中心軸の頂点の位置は、Z軸方向での高さ位置として位置Z1から位置Z2へ変化する。
【0068】
なお、この
図12の状態で、スティック底部2bの底面2dは、スティック受け台9の開口9eの周りの凹部9d(
図11)に対し接触しておらず、後述のようなXY方向の回転移動も可能となっている。言い換えると、押し込み状態でのXY方向の回転移動も可能となるように、スティック2の底面2dとスティック受け台9の開口9eとの間には所定の距離や形状が設けられている。
【0069】
図13は、
図4に関連して、ニュートラル状態、すなわちスティック2の押し込み前のZ軸方向での最大位置(最高位置)の状態でのXZ側面図を示す。
図13ではカバー6を透過するよう二点鎖線で図示している。
図13では、ベース筐体5のY軸方向の一方の軸部5cおよび半円状の凹部5hが見えている。Y軸ホルダー12の軸部12aは、凹部5hの上側に距離(距離DZと対応する)を置いて配置されている。軸部12aの下端位置をz1、凹部5hの下端位置をz2で示している。
【0070】
図13の状態では、スプリング8によってスティック受け台9とY軸ホルダー12は持ち上がっている。X軸ホルダー11の回転中心軸302(それに対応する軸部11a,11b)は、ベース筐体5の支持部5a,5bに支持されているため、回転位置は変わらない。Y軸ホルダー12の回転中心軸301(それに対応する軸部12a,12b)は、ベース筐体5の支持部5c,5dには接触していないが、スティック受け台9の支持部9a,9bには接触して支持されている。スプリング8のばね力が十分に高い場合、
図13の状態でも、スティック2は、スティック受け台9の中心に回転可能である。
【0071】
図14は、
図4、
図12に関連して、
図13の状態からスティック2の押し込み後のZ軸方向での最小位置(最低位置)の状態でのXZ側面図を示す。Y軸ホルダー12の軸部12aは、Z軸下方向移動が凹部5hによって止められて、軸部12aの下端位置z1が、凹部5hの下端位置z2に略一致する状態で隙間を置かずに配置されている。
【0072】
図14の状態では、スプリング8のばね力よりも強い力でスティック2が押されることで、スティック2とともにスティック受け台9とY軸ホルダー12がZ軸下方向に下がる。この際、スティック2が所定の最小位置(最低位置)まで押し込まれた場合、スティック受け台9は、ベース筐体5の支持部5c,5d(凹部5f,5g)に接触し、また、Y軸ホルダー12の回転中心軸301(軸部12a,12b)も、ベース筐体5の支持部5c,5d(凹部5h,5i)に接触する(
図3、
図12等)。
【0073】
図13および
図14ではY軸の一方の端部のみを図示して説明したが、他方側の端部でも同様である。
図14の状態から、ユーザが指をスティック2から離すと、スプリング8のばね力によって、スティック2、Y軸ホルダー12、およびスティック受け台2は所定の基準位置へ戻る。
【0074】
上記スティック2、Y軸ホルダー12およびスティック受け台9のZ軸下方向移動の際に、Y軸ホルダー12およびスティック受け台9は概略的に水平を保ったまま移動し、接触箇所として、押し込みの負荷がかかる箇所は、複数の箇所に分散されている。すなわち、接触箇所として主に負荷がかかる箇所は、Y軸ホルダー12の軸部12a,12b、スティック受け台9の支持部9a,9b、ベース筐体5の支持部5c,5dである。このように力が分散されるので、従来の機構よりも、押し込み時の負荷による部品の摩耗などを防止/低減できる。
【0075】
[スティック押し込み時の光学検出]
つぎに、上記のようにスティック2がZ軸下方へ押し込まれた時の、光学センサ7によるZ軸方向の押し込み距離/位置の検出について説明する。
【0076】
光学センサ7は、
図3や
図12のように、発光素子7Aから発光する光をスティック底部2bの底面2dに向けて照射する。底面2dでの反射光が受光素子7Bで受光される。スティック2の押し込み前後で、光学センサ7とスティック2の底面2dとの距離などの状態が異なるので、押し込み前後で、光学センサ7による受光の状態(言い換えると検出信号)が異なる。例えば発光から受光までの時間や距離、受光量、受光の方向や分布などが異なる。よって、光学センサ7を含むセンサ基板4は、その発光・受光の信号に基づいて、
図12のような押し込み前の位置Z1、押し込み後の位置Z2、距離DZに対応する押し込み量などを、検出・計算できる。
図12のような最大の押し込みの距離DZのみならず、押し込みの状態が距離0から距離DZの範囲内にある場合に、同様に、その状態での押し込み量などを検出・計算できる。
【0077】
光学センサ7は、例えば、機能のオン状態では、常時に発光・検出を続ける。これにより、時系列での検出信号が得られ、上記のように各時点の状態での押し込み量などを検出できる。
【0078】
[スティック回転時の光学検出]
つぎに、スティック2のXY方向への回転移動操作時の、光学センサ7による回転角度/位置の検出について説明する。
【0079】
図15は、スティックデバイス1のニュートラル状態から、スティック2のX軸方向での回転移動操作がされた場合の状態の例を示すXZ平面図である。ここでは、Z軸の押し込み量は0であるとする。
図15では、カバー6を省略し、
図13と同様に、ベース筐体5のY軸方向の軸部5cおよび半円状の凹部5hが見えている。Y軸ホルダー12の軸部12aは、凹部5hの上側に隙間の距離を置いて配置されている。さらに、
図15では、スティック2が、軸部12aにあるY軸を回転中心軸301として、X軸方向に例えば角度θ1で回転した状態を示している。
【0080】
このスティック2の回転移動に伴い、スティック2とシャフト13を通じて接続されているY軸ホルダー12(
図3、
図4等)も、Y軸の周りにX軸方向に同様に回転する。このとき、Y軸ホルダー12の軸部12a,12bは、ベース筐体5の支持部5c,5dの半円状の凹部5h,5iの空間内に配置されている。また、Y軸ホルダー12の円柱状の軸部12a,12bは、スティック受け台9の支持部9a,9bの同様の形状の凹部9a1,9b1(
図11)に支持されている。また、スティック受け台9の支持部9a,9bは、下側が
図11のように直方体形状であり、
図8のベース筐体5の支持部5c,5dの直方体形状の凹部5f,5g内に収容されている。そのため、Y軸ホルダー12のY軸の周りの回転に対し、スティック受け台9は、殆ど回転しない。
【0081】
図16は、
図15の回転移動に加え、さらに、Z軸下方への押し込みが同時に為された場合の状態の例を示すXZ平面図である。言い換えると、ユーザがスティック2をZ軸下方に押し込みながらX軸方向の回転操作も行われた場合の状態の例を示している。
図16では、
図15の回転角度θ1よりもさらに大きい回転角度θ2となった状態を示している。スティック2がZ軸下方に移動することで、Y軸ホルダー12の軸部12aは、ベース筐体5の支持部5cの半円状の凹部5hの空間内に収まって止まっている。
【0082】
図16のように、本実施の形態のスティックデバイス1は、スティック2のZ軸の押し込み動作と同時に、Y軸の周りの回転動作が可能である。そして、
図16のようなスティック2の状態を、光学センサ7を用いて検出可能である。
【0083】
図17Aおよび
図17Bは、スティック2のXY方向の回転角度/位置に関する光学検出の説明図として、一部構成要素のYZ断面の模式図である。
図17Aおよび
図17Bの例では、スティック2がX軸(
図3の回転中心軸302)の周りにY軸方向に回転移動した場合を示している。
図17Aは、スティック2のZ軸下方への押し込みが無く、スティック2のXY方向の回転が0の状態であり、スティック底部2bの頂点である点P1は、高さ位置Z1にある。
【0084】
図17Bは、スティック2のZ軸下方への押し込み、かつXY方向の回転がある状態であり、例えばY軸方向の回転角度θ3の状態であり、スティック底部2bの頂点である点P1は、高さ位置Z3にある。高さ位置Z3は、高さ位置Z1よりも低い位置である。また、点P1は、Y軸方向では位置Y3にあり、位置Y3は中心軸からずれている。
【0085】
図17Aおよび
図17Bに示すように、所定の位置にある光学センサ7は、発光素子7Aからの光を、開口9eを通じて、スティック底部2bの底面2dに照射し、反射光が受光素子7Bで受光される。
図17Bの状態では、スティック底部2の底面2dである円錐面の斜面が、
図17Aに比べて傾いている。スティック底部2は、凹部9dおよび開口9eによる空間の範囲内で移動可能である。凹部9dは、上面が所定の形状、例えば径方向で中心軸から外周になるにつれて高さが低下する形状、となっている。回転によって傾いたスティック底部2bの底面2dの外周部は、凹部9dの上面の形状によって止められる。
【0086】
本例でも、
図17Aから
図17Bへの状態変化に関して、図示のように、光学センサ7からスティック底部2bに対する発光・受光の状態が異なるので、光学センサ7によってスティック底部2bのZ軸方向の位置、およびXY方向の回転の角度/位置などを検出できる。
【0087】
[光学検出方式]
本実施の形態のスティックデバイス1における光学センサ7を用いた光学検出方式の具体例を説明する。本実施の形態における光学検出方式は、スティック2のZ軸の押し込みの距離/位置、ならびにX軸およびY軸での回転の状態を、光学センサ7(発光素子7Aおよび受光素子7B)によって、直接的に、言い換えると非接触で、検出するものである。
【0088】
光学検出方式の第1例は以下である。
図3や
図12や
図17のように、光学センサ7は、発光素子7Aから、スティック底部2bの底面2dに対し、所定の短い周期で、光、例えばレーザー光を発光・照射して、反射光を受光素子7Bで受光・検出する。光学センサ7を含むセンサ基板4は、発光信号と受光信号に基づいて、スティック2の移動の方向および量を計算できる。すなわち、
図17等で示したように、センサ基板4は、Z軸方向におけるスティック2の底面2dとの距離および底面2dの頂点の位置、スティック2の底面2dの傾きの状態に対応したXY平面でのスティック2の回転角度および位置などを計算できる。
【0089】
光学センサ7を用いた光学検出方式について、1つの方式には限定されない。1つの方式は、TOF(Time of Flight)方式の測距が挙げられるが、他にも、後述する撮像方式などでもよい。TOF方式を用いる場合、発光素子7Aからの発光が、スティック2の底面2dに当たって受光素子7Bまで戻ってくるまでの時間から、スティック2の底面2dまでの距離を計算可能である。底面2dまでの距離から、スティック2のZ軸方向の位置や押し込み量を計算可能である。光学センサ7は、レーザーセンサに限らずに、赤外線やLED等の光を用いるセンサでもよい。
【0090】
[撮像方式]
図18Aおよび
図18Bは、光学検出方式の他の例として、撮像方式を用いる場合の説明図である。
図18Aおよび
図18Bは、スティック底部2bの底面2dをZ軸方向で下から上へ見たXY平面図を示す。すなわち、
図18Aおよび
図18Bは、光学センサ7からスティック受け台9の開口9eを通じて底面2dを見た図である。撮像方式では、光学センサ7は、撮像素子、言い換えるとカメラである。
【0091】
図18Aは、スティック2のニュートラル状態で底面2dを見た図である。径が大きい方の破線の円形はスティック底部2bの外形であり、スティック受け台9があるので、光学センサ7からは見えない。径が小さい方の実線の円形は、光学センサ7から開口9eを通じて見えるスティック底部2bの底面2dの一部を示す。黒丸で示す点P1は、スティック底部2bの円錐の頂点であり、スティック2の中心軸の位置である。
【0092】
図18Bは、スティック2がX軸方向およびY軸方向に回転移動操作がされた場合の状態の例を示す。スティック底部2bの点P1は、例えばX軸方向で+dx1の距離で移動しており、Y軸方向で+dy1の距離で移動している。点P0は、光学センサ7から見た固定的な基準位置の例として開口9eの中心点であり、言い換えると撮像範囲の中心点である。
【0093】
光学センサ7(カメラ)は、
図18Aおよび
図18Bのような点P0を中心とする開口9eを含む領域を撮像する。光学センサ7を含むセンサ基板4は、撮像画像内における、点P0に対するスティック底部2bの点P1を検出し、点P0から点P1への変位の方向や量(例えば+dx1,+dy1)を計算する。
【0094】
なお、スティック2の底面2dにおいて点P1に検出用のマークが形成されていてもよい。点P1だけでなく、スティック2の底面2dにおいて検出用の所定の模様が形成されていてもよい。
【0095】
上記点P1の変位の状態とスティック2のXY方向の回転の状態とが対応関係を有しているので、センサ基板4は、上記光学センサ7による撮像・検出で得た変位量に基づいて、スティック2のX軸およびY軸の回転角度/位置を計算できる。
【0096】
本実施の形態では、スティック2の底面2dの状態を検出する光学センサ7(発光素子7Aと受光素子7Bとの対)を1つ具備する構成としたが、これに限定されず、複数の光学センサを具備する構成としてもよい。例えば、X軸およびY軸に対応させて、2つの光学センサ(例えばX軸用の光学センサとY軸用の光学センサ)を設け、各光学センサによってスティック底面のそれぞれ異なる箇所を対象に検出するようにしてもよい。複数の光学センサの検出結果を総合することで、スティック2の回転角度などの状態を計算してもよい。
【0097】
実施の形態では、非接触方式のセンサとして光学センサ7を用いたが、これに限らずに、磁気センサなどを用いてもよい。
【0098】
[効果等]
以上説明したように、実施の形態のスティックデバイス1によれば、耐久性の向上などを実現できる。前述のように、スティック2の3軸方向の操作時に、接触箇所は複数の箇所に分散され、一箇所には集中しないので、部品の摩耗や劣化などが防止/低減可能である。
【0099】
また、従来技術例では、スティックデバイスの外周部に2つのポテンショメーターと1つのタクトスイッチとを備える必要があるが、それに対し、実施の形態では、光学センサ7を用いた非接触方式の構造としたので、従来の2つのポテンショメーターおよび1つのタクトスイッチの具備は不要となる。よって、実施の形態によれば、デバイスの小型化に寄与できる。
【0100】
また、従来技術例は、接触方式で押し込みのオン(有り)/オフ(無し)を検出する構造であるが、それに対し、実施の形態では、非接触方式で押し込み距離/位置を検出する構造である。そのため、Z軸方向の押し込みの検出精度を高めることができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、非接触方式の新規の構造であるため、Z軸方向の押し込み操作時に、同時にXY方向の回転操作を行うことが可能となる。これにより、ゲームコントローラデバイスに限らず、そのような3軸方向の操作を利用した様々な応用も可能となる。従来では、接触方式であるため、スティックの押し込みと回転とを同時に行う操作はしにくかったが、本実施の形態によれば、スティックの押し込みと回転とを同時に行う操作も容易になる。
【0102】
本実施の形態のスティックデバイス1は、ゲームコントローラデバイス以外にも、医療機器、車載機器、産業機械などの各種の機器のスティックデバイスとして適用可能である。
【0103】
以上、本開示の実施の形態について具体的に説明したが、前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。各実施の形態は、必須構成要素を除き、構成要素の追加・削除・置換などが可能である。特に限定しない場合、各構成要素は、単数でも複数でもよい。各実施の形態や変形例を組み合わせた形態も可能である。
【0104】
なお、本技術は、以下のような構成をとることが可能である。
(1) スティックデバイスであって、
ユーザの操作に応じて、第1軸の周りに回転動作可能、かつ、第2軸の周りに回転動作可能、かつ、第3軸の方向に押し込みが可能であるスティックと、
前記スティックの前記第3軸の方向での押し込みの距離または位置を、非接触方式で検出するセンサと、
を備える、スティックデバイス。
【0105】
(2) 上記(1)に記載のスティックデバイスにおいて、
前記スティックの押し込みと同時に、前記第1軸の周りの回転動作、および前記第2軸の周りの回転動作が可能な構造であり、
前記スティックの前記第1軸の周りの回転角度または位置と、前記第2軸の周りの回転角度または位置とを、前記センサによって検出する、
スティックデバイス。
【0106】
(3) 上記(1)または(2)に記載のスティックデバイスにおいて、
前記スティックが挿入され、前記第1軸の周りに回転動作可能な第1連動部と、
前記スティックが挿入され、前記スティックと接続され、前記第2軸の周りに回転動作可能な第2連動部と、
前記第2連動部が支持されたスティック受け台と、
前記スティック受け台が支持されたスプリングと、
前記第1連動部、前記第2連動部、前記スティック受け台、および前記スプリングが支持されたベース筐体と、
を備え、
前記スティックの押し込み時には、前記スティックとともに、前記第2連動部および前記スティック受け台が、前記第1軸および前記第2軸を含む平面に対する姿勢を維持したまま、前記第3軸の下方向に移動する、
スティックデバイス。
【0107】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載のスティックデバイスにおいて、
前記センサは、前記スティックの前記第3軸での下方に設置されている光学センサまたは磁気センサである、
スティックデバイス。
【0108】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかに記載のスティックデバイスにおいて、
前記センサは、前記スティック受け台よりも前記第3軸での下側に設置されている光学センサであり、
前記スティック受け台は、前記第3軸が通る開口を有し、
前記光学センサからの光を、前記開口を通じて、前記スティックの底部に照射し、反射光を前記光学センサで検出する、
スティックデバイス。
【符号の説明】
【0109】
1…スティックデバイス、2…スティック、2b…スティック底部、3…スティックカバー、4…センサ基板、5…ベース筐体、6…カバー、7…光学センサ、7A…発光素子、7B…受光素子、8…スプリング、9…スティック受け台、11…X軸ホルダー(第1連動部)、12…Y軸ホルダー(第2連動部)、13…シャフト。