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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170193
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】保管設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20241129BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B65G1/00 521D
F24F7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087219
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大森 和哉
【テーマコード(参考)】
3F022
3L058
【Fターム(参考)】
3F022AA08
3F022BB09
3F022CC02
3F022EE05
3F022FF01
3F022HH13
3F022JJ09
3F022MM57
3L058BE02
3L058BF08
3L058BG01
(57)【要約】
【課題】保管設備に対して保管設備の上方からの清浄空気の供給が均一でない場合であっても、保管設備内の清浄度を維持することを目的とする。
【解決手段】天井(100)に設置されたファンフィルターユニット(FFU)から清浄空気が供給されることで室内の清浄度を保つクリーンルーム(CR)に設置される保管設備(1)であって、容器(50)を載置する保管棚(2)を備え、少なくとも、保管棚(2)の天井となる位置(P)において、ファンフィルターユニット(FFU)からクリーンルーム(CR)内に供給される清浄空気を保管設備(1)の内部に通過させる複数の孔(4)が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に設置されたファンフィルターユニットから清浄空気が供給されることで室内の清浄度を保つクリーンルームに設置される保管設備であって、
物品を載置する保管棚を備え、
少なくとも、前記保管棚の天井となる位置において、前記ファンフィルターユニットから前記クリーンルーム内に供給される前記清浄空気を前記保管設備の内部に通過させる複数の孔が設けられている、保管設備。
【請求項2】
前記保管設備の天井となる位置において複数の孔が設けられている領域が、前記複数の孔の開口率が第1開口率に設定されている第1領域と、前記複数の孔の開口率が前記第1開口率よりも高い第2開口率に設定されている第2領域とを少なくとも含み、
前記第2領域は前記第1領域よりも前記ファンフィルターユニットから遠い、
請求項1に記載の保管設備。
【請求項3】
前記保管設備の周囲を囲う側部と、
前記側部の下部に設けられ、前記保管設備内の空気を外部に排出する排気部と、を備えている、請求項1に記載の保管設備。
【請求項4】
前記ファンフィルターユニットから前記クリーンルームに供給される清浄空気を前記保管設備の天井となる位置まで導くカバーをさらに備え、
前記カバーは、前記保管設備の上端部の周辺において、前記保管設備から前記クリーンルームの天井まで少なくとも延伸し、前記ファンフィルターユニットを囲うものである、請求項1に記載の保管設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶板等の高い清浄度の保持が求められる製品を保管するために、製品を保管する保管棚がクリーンルームに設置されることが知られている。例えば、特許文献1には、クリーンルームの天井から吹き出た風(クリーンエア)が、天井が設けられた保管棚の前後に分かれ、下方に流れた風を保管棚側に導く整流手段が設けられた保管棚が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-338007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、クリーンルームでは、天井に設置されたファンフィルターユニットから清浄空気をクリーンルームに供給することで、室内の空気の清浄度を保つ方法がある。このようなクリーンルームでは求められる空気清浄度により、クリーンルームの天井の面積に対してファンフィルターユニットが設置される面積が小さくなる場合がある。その場合、保管棚の上方において、ファンフィルターユニットが配置されている箇所とファンフィルターユニットが配置されていない箇所ができることで、保管棚に対して天井からの清浄空気の流れが均一ではなくなり、保管棚内において空気の淀みが発生しやすくなるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、保管設備に対して保管設備の上方からの清浄空気の供給が均一でない場合であっても、保管設備内の清浄度を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る保管設備は、天井に設置されたファンフィルターユニットから清浄空気が供給されることで室内の清浄度を保つクリーンルームに設置される保管設備であって、物品を載置する保管棚を備え、少なくとも、前記保管棚の天井となる位置において、前記ファンフィルターユニットから前記クリーンルーム内に供給される前記清浄空気を前記保管設備の内部に通過させる複数の孔が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、保管設備に対して保管設備の上方からの清浄空気の供給が均一でない場合であっても、保管設備内の清浄度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る保管設備の縦断面図である。
図2】上記保管設備の横断面図である。
図3】上記保管設備の正面図である。
図4】上記保管設備の背面図である。
図5】上記保管設備が設置されるクリーンルームの天井においてファンフィルターユニットが設置されている位置を示す図である。
図6】上記保管設備内の空気の流れを示した図である。
図7】上記保管設備のパンチングプレートの配置の一例を示す上面図である。
図8】上記保管設備内及び従来の保管設備内の気流解析結果を示す図である。
図9】パンチングプレートの開口率を異ならせた場合における上記保管設備内の酸素濃度を測定した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係る保管設備1の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。なお、説明を簡単にするために、以下において、図1の保管設備1に対して、鉛直方向をY軸方向、保管設備1の後面52から前面51に向かう方向をZ軸方向、Y軸及びZ軸に垂直な方向をX軸方向として説明する。
【0010】
〔保管設備の概略〕
半導体や液晶板等の高い清浄度の保持が求められる製品は、天井100に設置されたファンフィルターユニット(以降FFUと記載する)から清浄空気を室内に供給することで室内の空気の清浄度を保つクリーンルームCRに設置される保管設備に保管される場合がある。
【0011】
その場合、保管設備の上方において、FFUが配置されている箇所とFFUが配置されていない箇所ができると、保管設備の上方からの保管設備に対する清浄空気の流れが均一ではなくなる。そのため、保管設備内に清浄空気が均一な流れで導入されず、保管設備内においても清浄空気が均一に流れないため、保管設備内において空気の淀みが発生しやすくなり、保管設備内の清浄度を維持することが困難となる。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る保管設備1をY軸及びZ軸に平行な平面で切断した際の縦断面図である。図1に示すように、保管設備1は、天井100に設置されたFFUから清浄空気が供給されることで室内の清浄度を保つクリーンルームCRに設置され、容器50を載置する保管棚2を備えている。また、少なくとも、保管棚2の天井となる位置Pにおいて、FFUからクリーンルームCR内に供給される清浄空気を保管設備1の内部に通過させる複数の孔4が設けられている。
【0013】
これにより、保管設備1の上方からの保管設備1に対する清浄空気の流れが均一でない場合であっても、保管設備1は保管設備1内に清浄空気を均一な流れで導入することができるため、保管設備1内において均一に清浄空気を流すことができる。その結果、保管設備1内の空気の淀みの発生を抑制し、保管設備1内の清浄度を維持することができる保管設備1を実現することができる。
【0014】
〔保管設備〕
図2は、保管設備1をX軸及びZ軸に平行な平面で切断した際の横断面図である。図3は、保管設備1の正面図である。図4は、保管設備1の背面図である。図4では理解を容易にするため、保管設備1の収納部10Sも破線で表示している。
【0015】
図1から図4に示すように、保管設備1は、クリーンルームCRに配置されている。クリーンルームCRは、天井100に設置されたFFUから清浄空気を室内に供給することで室内の空気の清浄度を保つ。FFUはクリーンルームCRの天井100から、クリーンルームCRの床面に向けて清浄空気をクリーンルームCR内に供給する。
【0016】
保管設備1は、保管棚2と、パンチングプレート3と、側部5と、スタッカークレーン20と、排気部30と、カバー40と、を備えている。
【0017】
(保管棚)
保管棚2は、容器50(物品)を載置する。保管棚2には、容器50を収納する収納部10Sが、Y軸方向及びX軸方向のそれぞれに並ぶ状態で配置されている。
【0018】
容器50は、半導体や液晶板等を収納するために用いられるものであり、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)である。容器50の上面には、ホイスト式の搬送車Dにより把持されるフランジが形成されている。また、容器50の底面には、位置決めピンが係合する係合溝が形成され、容器50が収納部10Sに収納された状態においては、収納部10Sの載置台10の上面に配置されている位置決めピンによって載置位置が決定されるように構成されている。
【0019】
また、容器50には不活性気体としての窒素ガスを注入するための構成が設けられている。図示にはないが、例えば、容器50には給気口及び排気口が設けられている。給気口には、注入側開閉弁が設けられ、排気口には、排出側開閉弁が設けられる。注入側開閉弁及び排出側開閉弁は、スプリング等の付勢手段によって閉方向に付勢されている。注入側開閉弁は、給気口に供給される窒素ガスの吐出圧力が大気圧よりも高い第1所定圧力以上となると開くように構成され、排出側開閉弁は、容器50内部の圧力が大気圧よりも高い第2所定圧力以上となったときに開くように構成されている。容器50としては、例えば、合成樹脂製の気密容器が採用される。
【0020】
複数の収納部10Sは、容器50を収納するように構成されている。複数の収納部10Sの夫々は、容器50を載置支持する板状の載置台10を備えている。載置台10の上面には、上述の位置決めピンが設けられている。
【0021】
収納部10Sには容器50に窒素ガスを注入する構成が備えられている。図示にはないが、例えば、載置台10には、窒素ガスを容器50の内部に供給する吐出ノズルと、容器50の内部からの気体を排出する排出管が設けられている。吐出ノズルには、所定箇所から窒素ガスが供給される供給配管が接続されている。排出管の容器50とは反対側の端部は、保管設備1の内部において各収納部10S付近で開口されている。これにより、容器50からの余剰窒素ガスは保管設備1内に排出される。
【0022】
なお、保管棚2の複数ある収納部10Sのうちの一部が、窒素ガスが注入される構成を有する収納部10Sであってもよい。その場合、窒素ガスを注入するための構成が設けられている容器50は、容器50に窒素ガスを注入する構成を有する収納部10Sに載置される。
【0023】
図2に示すように、保管棚2は、互いに対向する一対の保管棚2A及び保管棚2Bを有する。保管棚2A・2Bは、スタッカークレーン20と容器50の受け渡しを行う方向を内側として、X軸方向に略平行に所定間隔を隔てて向い合せで配置されている。保管棚2Aと保管棚2Bとの間には後述するスタッカークレーン20が配置されている。
【0024】
側部5は、保管棚2A・2B及びスタッカークレーン20が設置されている領域の周囲を囲う。側部5は、前面51、前面51に対向する後面52、及び、前面51のX軸方向の両端において前面51と後面52との間をつなぐ一対の側面53を有している。図2に示されているように、後面52及び一対の側面53には開口はないが、図3に示すように、前面51には、開口511・512・513・514・515が形成されている。保管設備1は、後面52がクリーンルームCRの壁に沿うように設置されている。
【0025】
開口511・512・513はいずれも、保管設備1の外部から内部へ、または、保管設備1の内部から外部へ容器50を搬送する際に容器50が通過する開口である。開口511の保管設備1の内側には容器50の受け渡し用の荷受け台11が設置されている。例えば、スタッカークレーン20によって収納部10Sから搬送された容器50が荷受け台11に載置され、当該容器50が搬送車Dにより取り上げられて、所定の場所に搬送される。
【0026】
開口512には、開口512を貫通するようにコンベヤCVが設置されている。例えば、搬送車Dによって搬送された容器50がコンベヤCVに載置され、当該容器50がコンベヤCVにより保管設備1の外部から内部に搬送された後、スタッカークレーン20によって複数の収納部10Sのいずれかに搬送される。
【0027】
開口513の保管設備1の内側には容器50の受け渡し用の荷受け台(図示無し)が設置されている。例えば、例えば、スタッカークレーン20によって収納部10Sから搬送された容器50が荷受け台に載置され、人が当該容器50を取り上げて所定の場所に搬送する。開口513では人が作業を行うため、開口513には開口513に対して開閉可能な開閉部が設置されている。
【0028】
開口514は、保管設備1のメンテナンス時等に作業員が出入りするための開口である。開口514にも開口514に対して開閉可能な開閉部が設置されている。開口515は、前面51の下端にX軸方向に沿って形成されている。開口515は、後述する排気部30の排気口として機能する。
【0029】
(スタッカークレーン)
スタッカークレーン20(図1図2参照)は、複数の収納部10S及び開口511・512・513に対して容器50を搬送可能なように構成されている。スタッカークレーン20は、図1に示すように、保管棚2Aと保管棚2Bとの間の床部に設けられた走行レール(図示無し)に沿って走行移動自在な走行台車21と、その走行台車21に立設されたマスト22と、マスト22に沿って昇降移動する昇降台24とを備えている。
【0030】
なお、図示にはないが、昇降台24には、収納部10S等に対して容器50を移載する移載装置が装備されている。移載装置は、容器50を載置支持する板状の載置支持体を備えている。載置支持体は、収納部10Sの内部に突出する突出位置と、昇降台24側に後退した後退位置との間を移動する。載置支持体の移動及び昇降台24の昇降作動により、載置支持体に載置されている容器50は収納部10Sに収容され、収納部10Sに収容されている容器50は載置支持体に取り出される。また、載置支持体は、開口511及び開口513の荷受け台及び開口512を貫通するコンベヤCVに対しても突出可能に構成されている。
【0031】
(排気部)
図3に示すように、排気部30は、前面51の下部に設けられ、保管設備1内の空気を外部に排出する。排気部30により、孔4から導入されたFFUからの清浄空気を効率よく保管設備1の上部から下部に流すことができるので、好適に保管設備1内に均一に清浄空気を流すことができる。また、排気部30を設置することで、開口511・512・513・514より、保管設備1内部の空気が流れ出ることを抑制することができる。なお、本実施形態では、図3に示すように、17台の排気部30が設置されているが上記に限らない。排気部30の台数及び風量は、保管設備1の大きさにより適宜設定される。
【0032】
(パンチングプレート)
パンチングプレート3は、少なくとも、保管棚2の天井となる位置Pに設置される。パンチングプレート3には、FFUからクリーンルームCR内に供給される清浄空気を保管設備1の内部に通過させる複数の孔4が設けられている。
【0033】
保管棚2の天井となる位置Pは、保管設備1内における保管棚2の上部の位置を示し、保管棚2の天井となる位置Pは保管設備1の天井となる位置と一致してもよい。例えば、パンチングプレート3は、図1に示すように、前面51の上辺から後面52の上辺までを覆うように設置されてもよい。言い換えると、パンチングプレート3は、保管設備1の天井となる位置の全体に設置されていてもよい。パンチングプレート3は、上記に限らず、少なくとも、保管棚2の天井となる位置Pに設置されていればよく、その範囲は適宜設定できる。
【0034】
図5は保管設備1が設置されるクリーンルームCRの天井においてFFUが設置されている位置を示す図である。理解を容易にするために、図5にはクリーンルームCRにおける保管設備1の配置位置を破線で図示している。図5に示すように、保管設備1はクリーンルームCRの壁101に沿って配置されている。図6は、保管設備1・200内の空気の流れを示した図であり、図6の6001は、従来の天井のない保管設備200内の空気の流れを示し、図6の6002は、保管設備1内の空気の流れを示す。
【0035】
クリーンルームCRに設置されるFFUの数は求められる清浄度により決定されるため、図5に示すように、保管設備1(保管設備200)の上方の天井100において、FFUが配置されている箇所とFFUが配置されていない箇所とが生じる場合がある。その場合、保管設備200の上方から保管設備200に対する清浄空気の流れが均一ではなくなり、保管設備200では、流れが均一ではない状態で清浄空気が保管設備200内に導入される可能性がある。
【0036】
ここで、「保管設備200の上方から保管設備200に対する清浄空気の流れが均一でない」とは、保管設備200を平面視した際の保管設備200の面積に相当する領域(以降、保管設備200の設備フットプリントと称する)内において、清浄空気が保管設備200に到達した際の清浄空気の流速が均一でないことを示す。
【0037】
また、「流れが均一ではない状態で清浄空気が保管設備200内に導入される」とは、保管設備200を平面視した際の保管設備1の設備フットプリント内において、清浄空気が保管設備200の天井となる位置を通過する際の清浄空気の流速が均一でないことを示す。
【0038】
流れが均一ではない状態で清浄空気が保管設備200内に導入されると、図6の6001に示すように、保管設備200内の一部において、上に向かって空気が流れる場合がある。これにより、例えば、スタッカークレーン20から発生したパーティクルを保管設備200内の上部に巻き上げてしまい、保管設備200内の清浄度が下がってしまうおそれがある。
【0039】
それに対して、保管設備1には少なくとも保管棚2の天井となる位置Pにパンチングプレート3が設けられているため、FFUからクリーンルームCR内に供給された清浄空気が保管設備1に到達した際、清浄空気は孔4から保管設備1内に導入される。そのため、保管設備1に対して流れが均一ではない清浄空気が天井100から供給された場合であっても、パンチングプレート3が清浄空気を整流し、保管設備1内において流れが均一になるように保管設備1内に清浄空気を導入することができる。これにより、図6の6002に示すように、保管設備1内の清浄空気の流れが均一になるため、保管設備1内の空気の淀みの発生を抑えることができる。
【0040】
ここで、「保管設備1内において流れが均一になるように保管設備1内に清浄空気を導入することができる。」とは、保管設備1を平面視した際の保管設備1の設備フットプリント内において、パンチングプレート3を通過する際の清浄空気の流速がほぼ均一となるように、清浄空気が保管設備1に導入されることを示す。また、「保管設備1内の流れが均一になる」とは、保管設備1の各高さにおける保管設備1の設備フットプリント内において、清浄空気の流速がほぼ均一となることを示す。
【0041】
一方、容器50に窒素ガスの注入が行われる場合、局所的に酸素濃度が低下した空気が開口511・512・513・514より保管設備1の外部に流出すると、保管設備1の周囲に存在する作業員等が酸素濃度の低下した空気を吸う危険性があり、好ましくない。
【0042】
それに対し、保管設備1内において流れが均一になるように保管設備1内に清浄空気が導入されることで、保管設備1内において局所的に酸素濃度が大幅に低下することを抑えることができる。そのため、開口511等から大幅に酸素濃度が低下した空気が保管設備1の外部に排出されることを抑えることができる。
【0043】
パンチングプレート3の孔4の孔径、ピッチ及び開口率は特に限定されないが、孔径は3φ以上5φ以下とすることが好ましく、特に5φとすることが好ましい。孔4のピッチは、4mm以上10mm以下とすることが好ましく、特に8mm以上10mm以下とすることが好ましい。開口率は、20%以上40%以下の範囲で設定されることが好ましく、特に22%以上36%以下とすることが好ましい。
【0044】
また、図7は保管設備1のパンチングプレート3の配置の一例を示す上面図である。図7の7001は、図4において、保管設備1が設置される領域のみを切り取った図である。図7の7002は、保管設備1のパンチングプレート3の配置例を示す上面図である。図7の7002において、同じハッチングで図示される領域は、複数の孔4の開口率が同じ領域であることを示す。図7に示すように、保管設備1の天井となる位置Pにおいて複数の孔4が設けられている領域Rは、少なくとも第1領域R1と第2領域R2とを含む。第1領域R1は、複数の孔4の開口率が第1開口率に設定されている。第2領域R2は、複数の孔4の開口率が第1開口率よりも高い第2開口率に設定されている。
【0045】
図7の7001及び図7の7002に示すように、保管設備1では、保管設備1の天井となる位置全体が領域Rとなり、保管設備1の天井となる位置全体に孔4が設けられている。また、天井100にFFUが配置されている箇所に対応する領域では、開口率が第1開口率となる第1領域R1が配置され、天井100にFFUが配置されていない箇所に対応する領域では、開口率が第2開口率となる第2領域R2が配置されている。つまり、FFUからの距離が近い領域Rでは第1領域R1が配置され、FFUからの距離が第1領域より遠い領域Rでは、第2領域R2が配置されている。言い換えると、領域RにおいてFFUからの距離が第1領域R1よりも遠くなる領域では、パンチングプレート3の開口率は、第1開口率よりも高い第2開口率に設定されている。
【0046】
これにより、FFUからの距離が遠い第2領域R2では第1領域R1よりも清浄空気を保管設備1の内部に通過させやすくなるため、より好適に保管設備1内に均一に清浄空気を導入することができる。
【0047】
(カバー)
さらに、図1に示すように、保管設備1には、FFUからクリーンルームCRに供給される清浄空気を保管設備1の天井となる位置まで導くカバー40が設けられていてもよい。カバー40は、保管設備1の上端部の周辺において、保管設備1からクリーンルームCRの天井100まで少なくとも延伸し、FFUを囲う。
【0048】
カバー40がない場合、例えば、クリーンルームCR内において、FFUからの清浄空気が、パンチングプレート3が設置されていない領域に流れ、保管設備1内に導入される清浄空気の量が少なくなる可能性がある。保管設備1に流れる清浄空気の量が少なくなると保管設備1内の空気の淀みが発生しやすくなる。
【0049】
それに対して、カバー40によりFFUの清浄空気の供給口の少なくとも一部と保管設備1とをつなぐことで、カバー40に囲われたFFUからの清浄空気を確実に保管設備1内に導くことができる。なお、カバー40は上記に限らず、床面からクリーンルームCRの天井100まで延伸し、保管設備1及びFFUを囲うものであってもよい。
【0050】
〔気流解析〕
図8は保管設備1内及び従来の保管設備200内の気流解析結果を示す図である。図8の8001は、パンチングプレート3が設置されていない従来の保管設備200内の気流解析結果を示し、図8の8002はパンチングプレート3が設置されている保管設備1内の気流解析結果を示す。なお、保管設備1の大きさは、幅14835mm、高さ8370mm、奥行き1430mmとし、FFUの配置は図5の配置とする。また、保管設備1に設置されているパンチングプレート3は、保管設備1の上面全面に設置され均一の開口率を有するものとする。
【0051】
図8の8001及び図8の8002に示すように、保管設備200では、保管設備200内の空気の流速にばらつきがみられるのに対し、保管設備1では、保管設備1内の空気の流速にばらつきがみられない。このように、保管棚2の天井となる位置にパンチングプレート3を設置することで、保管設備1内において空気の流れが均一になる。これにより、保管設備1内の空気の淀みの発生を抑えることができていることが理解できる。
【0052】
〔酸素濃度〕
図9は、パンチングプレート3の開口率を異ならせた場合における保管設備1内の酸素濃度の最小値を測定した結果を示す表である。図9の測定では、保管設備1の大きさ、FFUの配置等を上述の気流解析と同じとし、排気部30の個数を13とした。また、窒素ガスの注入を行う収納部10Sを、保管棚2A・2Bのうち図4で示す範囲Tに位置する200個とし、開口513をOpenにした状態およびCloseにした状態において、異なる開口率のパンチングプレート3を設置した場合のそれぞれについて、排気部30から排出される空気の酸素濃度の最小値を測定した。濃度判定では、酸素濃度の最小値が19.5%より大きい場合をOKとし、19.5%以下である場合をNGとした。なお、図9の測定において、保管設備1は、開口511、開口512及び開口515は開口した状態であり、開口514は閉鎖した状態とした。
【0053】
Plan1からPlan4では、開口513をOpenにした状態において、開口率が20%、25%、30%のパンチングプレート3を保管設備1の上面全体に配置した場合のそれぞれと、パンチングプレート3を設置していない場合とでの酸素濃度の最小値を測定した。Plan1からPlan4の結果では、開口率が20%のパンチングプレート3を設置した場合のみが濃度判定においてOKとなった。
【0054】
Plan5からPlan8では、開口513をCloseにした状態において、開口率が20%、25%、30%のパンチングプレート3を保管設備1の上面全体に配置した場合のそれぞれと、パンチングプレート3を設置していない場合とでの酸素濃度を測定した。Plan5からPlan8の結果では、開口率が20%、25%、30%のパンチングプレート3を設置した場合が濃度判定においてOKとなった。
【0055】
図9に示す結果により、パンチングプレート3を設置することにより、開口513をCloseにした状態において、酸素濃度の低下を抑えることができることが分かった。また開口513をOpenにした状態においても、パンチングプレート3を設置し、開口率を20%とすることで、酸素濃度の低下を抑えることができることが分かった。
【0056】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る保管設備(1)は、天井(100)に設置されたファンフィルターユニット(FFU)から清浄空気が供給されることで室内の清浄度を保つクリーンルーム(CR)に設置される保管設備(1)であって、物品(容器50)を載置する保管棚(2)を備え、少なくとも、保管棚(2)の天井となる位置(P)において、ファンフィルターユニット(FFU)からクリーンルーム(CR)内に供給される清浄空気を保管設備(1)の内部に通過させる複数の孔(4)が設けられている。
【0057】
上記の構成によれば、ファンフィルターユニット(FFU)からクリーンルーム(CR)内に供給された清浄空気が保管設備(1)に到達した際、清浄空気は保管棚(2)の天井となる位置に設けられた孔(4)より保管設備(1)内に導入される。これにより、例えば、孔(4)を設ける位置を適宜設定することで、保管設備(1)内において均一な流れで清浄空気を流すことができるので、保管設備(1)内の空気の淀みの発生を抑えることができる。その結果、保管設備(1)内の清浄度を維持できる。
【0058】
本発明の態様2に係る保管設備(1)は、上記態様1において、保管設備(1)の天井となる位置(P)において複数の孔(4)が設けられている領域(R)が、複数の孔(4)の開口率が第1開口率に設定されている第1領域(R1)と、複数の孔(4)の開口率が第1開口率よりも高い第2開口率に設定されている第2領域(R2)とを少なくとも含み、第2領域(R2)は第1領域(R1)よりもファンフィルターユニット(FFU)から遠くてもよい。
【0059】
上記の構成によれば、ファンフィルターユニット(FFU)からの距離が遠い第2領域(R2)については、ファンフィルターユニット(FFU)からの距離が近い第1領域(R1)よりも、高い開口率で複数の孔(1)が設けられている。これにより、ファンフィルターユニット(FFU)からの距離が遠い第2領域(R2)では第1領域(R1)よりも清浄空気を保管設備(1)の内部に通過させやすくなるため、より好適に均一な流れで保管設備(1)内に清浄空気を導入することができる。
【0060】
本発明の態様3に係る保管設備(1)は、上記態様1または2において、保管設備(1)の周囲を囲う側部(5)と、側部(5)の下部に設けられ、保管設備(1)内の空気を外部に排出する排気部(30)と、を備えていてもよい。
【0061】
上記の構成によれば、排気部(30)により保管設備(1)内の空気を外部に排出することができる。そのため、孔(4)から導入されたファンフィルターユニット(FFU)からの清浄空気を効率よく保管設備(1)の上部から下部に流すことができるので、より好適に保管設備(1)内において均一な流れで清浄空気を流すことができる。
【0062】
本発明の態様4に係る保管設備(1)は、上記態様1から3のいずれかにおいて、ファンフィルターユニット(FFU)からクリーンルーム(CR)に供給される清浄空気を保管設備(1)の天井となる位置まで導くカバー(40)をさらに備え、カバー(40)は、保管設備(1)の上端部の周辺において、保管設備(1)からクリーンルーム(CR)の天井(100)まで少なくとも延伸し、ファンフィルターユニット(FFU)を囲うものであってもよい。
【0063】
上記の構成によれば、カバー(40)によりファンフィルターユニット(FFU)の清浄空気の供給口と保管設備(1)の天井となる位置とをつなぐことができる。そのため、カバー(40)に囲われるファンフィルターユニット(FFU)からの清浄空気を確実に保管設備(1)内に供給することができる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態に開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 保管設備
2、2A、2B 保管棚
3 パンチングプレート
4 孔
5 側部
30 排気部
40 カバー
50 容器(物品)
100 クリーンルームの天井
CR クリーンルーム
FFU ファンフィルターユニット
R 複数の孔が設けられている領域
R1 第1領域
R2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9