(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170197
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】インタフェース装置及びクライミング体験システム
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A63B69/00 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087223
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(57)【要約】
【課題】比較的小規模な構成によって、或る程度以上の距離のクライミング体験をユーザに提供可能とする。
【解決手段】インタフェース装置(1)は、仮想空間におけるクライミング体験をユーザに提供するためのインタフェース装置(1)であって、ホールド(11)が取り付けられたボード(10)と、ボード(10)におけるホールド(11)の位置を移動させるための移動機構(17)と、ホールド(11)と、ユーザからホールド(11)に作用する、又は、ホールド(11)からユーザに作用する力及びモーメントを検出する力覚センサ(12)と、力及びモーメントを表す信号を、仮想空間を生成するシミュレーション装置(2)に提供すると共に、ホールド(11)が移動するように移動機構(17)を制御するための制御信号を、シミュレーション装置(2)から取得する入出力部(14)と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間におけるクライミング体験をユーザに提供するためのインタフェース装置であって、
前記ユーザが手又は足を掛けるためのホールドが取り付けられたボードと、
前記ボードにおける前記ホールドの位置を移動させるための移動機構と、
前記ホールドと、前記ユーザが装着するグローブ及びシューズとのうち、少なくとも何れかに搭載され、前記ユーザから前記ホールドに作用する、又は、前記ホールドから前記ユーザに作用する力及びモーメントを検出する力覚センサと、
前記力及び前記モーメントを表す信号を、前記仮想空間を生成するシミュレーション装置に提供すると共に、前記ホールドが移動するように前記移動機構を制御するための制御信号を、前記シミュレーション装置から取得する入出力部と、を備えている、
ことを特徴とするインタフェース装置。
【請求項2】
前記ボードを傾動可能に支持する傾動機構を更に備えており、
前記入出力部は、前記ボードが傾動するように前記傾動機構を制御するための制御信号を、前記シミュレーション装置から取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインタフェース装置。
【請求項3】
各ホールドの少なくとも一部分は、
前記ボードの表面に垂直な方向の位置を、前記ユーザが手又は足を掛けることを可能とする第1の位置と、前記第1の位置よりも前記ボードの表面に近い第2の位置とに切り替え可能であり、
各ホールドは、
少なくとも一部分が前記第1の位置にあって、前記ユーザの手又は足が掛けられているときに、前記仮想空間内のクライミング体験における前記ユーザの進行方向とは逆の方向に移動し、
前記少なくとも一部分が前記第2の位置にあり、前記ユーザの手又は足が掛けられていないときに、前記ユーザの進行方向に移動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインタフェース装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のインタフェース装置と、
前記シミュレーション装置と、を含み、
前記シミュレーション装置は、前記仮想空間における前記ユーザの位置と、前記力及び前記モーメントから特定した前記ユーザの姿勢とに基づいて、前記ボードにおける前記ホールドの位置を決定する、
ことを特徴とするクライミング体験システム。
【請求項5】
前記シミュレーション装置から取得した、前記仮想空間を表す映像を表示するヘッドマウントディスプレイを更に含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のクライミング体験システム。
【請求項6】
前記シミュレーション装置は、
前記特定された姿勢のユーザの身体の一部又は全部を含む前記仮想空間を表す映像を生成し、前記ヘッドマウントディスプレイに提供する
ことを特徴とする請求項5に記載のクライミング体験システム。
【請求項7】
前記ヘッドマウントディスプレイは、所定の方向に光を照射し、
前記インタフェース装置は、
前記ヘッドマウントディスプレイが照射した光を検出する複数のフォトディテクタを備え、
前記光を検出したフォトディテクタを示す情報を、前記ヘッドマウントディスプレイの向きを特定するための情報として、前記入出力部を介して前記シミュレーション装置に提供する
ことを特徴とする請求項5に記載のクライミング体験システム。
【請求項8】
前記シミュレーション装置は、
前記インタフェース装置から提供された情報を参照して、所定条件が満たされたと判定した場合に、前記仮想空間におけるクライミング体験の対象となる壁面から前記ユーザが落下した映像を生成し、前記ヘッドマウントディスプレイに提供する
ことを特徴とする請求項5に記載のクライミング体験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタフェース装置及びクライミング体験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クライミングを行うための岩壁等を模擬的に再現した装置が知られている。特許文献1では、クライミング壁とスイング機構とを組み合わせるためのシステムが開示されている。特許文献2では、組立て、分解、移動及び人工壁の傾斜の変更が容易にできるクライミング用組立て据え置き式人工壁装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-534923号公報
【特許文献2】特開2003-93569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術においては、或る程度以上の距離のクライミングを可能とする場合に大掛かりな装置が必要となるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、比較的小規模な構成によって、或る程度以上の距離のクライミング体験をユーザに提供可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るインタフェース装置は、仮想空間におけるクライミング体験をユーザに提供するためのインタフェース装置であって、前記ユーザが手又は足を掛けるためのホールドが取り付けられたボードと、前記ボードにおける前記ホールドの位置を移動させるための移動機構と、前記ホールドと、前記ユーザが装着するグローブ及びシューズとのうち、少なくとも何れかに搭載され、前記ユーザから前記ホールドに作用する、又は、前記ホールドから前記ユーザに作用する力及びモーメントを検出する力覚センサと、前記力及び前記モーメントを表す信号を、前記仮想空間を生成するシミュレーション装置に提供すると共に、前記ホールドが移動するように前記移動機構を制御するための制御信号を、前記シミュレーション装置から取得する入出力部と、を備えている。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るクライミング体験システムは、前記インタフェース装置と、前記シミュレーション装置と、を含み、前記シミュレーション装置は、前記仮想空間における前記ユーザの位置と、前記力及び前記モーメントから特定した前記ユーザの姿勢とに基づいて、前記ボードにおける前記ホールドの位置を決定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、比較的小規模な構成によって、或る程度以上の距離のクライミング体験がユーザに提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】ボードをX軸負方向側から見た場合の概略図の一例である。
【
図4】ユーザの両手を表示させたVR映像の一例である。
【
図5】システムの動作を示すシーケンス図の一例である。
【
図6】移動機構の動作例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
<クライミング体験システムの構成例>
本実施形態に係るクライミング体験システム(以下、システムSとも呼称する)は、仮想空間におけるクライミング体験をユーザUに提供するシステムである。本開示における「クライミング」には、フリークライミング、リードクライミング及びボルダリング等、並びに壁面を降りる動作が含まれる。
【0012】
図1は、システムSの一例を示す斜視図である。
図2は、システムSの機能ブロック図の一例である。
図1及び
図2に示すように、システムSは、インタフェース装置1と、シミュレーション装置2と、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD3とも呼称する)とを含む。
図2に示すように、各装置1~3は、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0013】
[インタフェース装置]
インタフェース装置1は、クライミング体験において、ユーザUに対する物理的なインタフェースとなる装置である。
図1及び
図2に示すように、インタフェース装置1は、ボード10、ホールド11、移動機構17、傾動機構18、スリングベルト機構19、フォトディテクタ13及び入出力部14を備える。但し、
図1及び
図2においては、他方の図に図示された一部の部材の図示を省略している。また、後述するように、ホールド11は、力覚センサ12を備えている。
【0014】
〔ボード〕
ボード10は、クライミング体験の際にユーザUが登る対象又は降りる対象となる板である。後述のホールド11、移動機構17、傾動機構18及びフォトディテクタ13は、ボード10が備える部材と解してもよいし、ボード10に取り付けられる別の部材と解してもよい。
図1以降の図では、ボード10の各辺に沿った座標軸を図示している。但し、ボード10の形状は直方体であることに限定されない。
【0015】
(ホールド)
ホールド11は、ボード10に取り付けられた、ユーザUが手又は足を掛けるための部材である。ホールド11は、移動機構17によってY軸方向及びZ軸方向に移動する。
図1の例では、ボード10のX軸方向に4列分のホールド11が配置されている。ホールド11がボード10上に配置される列数は限定されないが、少なくとも両手足用に2列分のホールド11がボード10に配置される構成が望ましい。また、各列には、少なくとも2つのホールド11が配置される構成が望ましい。
【0016】
Z軸方向の移動として、各ホールド11の少なくとも一部分は、ボード10の表面から数mm~数cm程度浮き上がった状態と、ボード10の表面側に沈み込んだ状態とに切り替えることができる。換言すると、各ホールド11の少なくとも一部は、ボード10の表面に垂直なZ軸方向の位置を、ユーザUが手又は足を掛けることを可能とする第1の位置と、第1の位置よりもボード10の表面に近い第2の位置に切り替えることができる。
【0017】
より望ましくは、各ホールド11の少なくとも一部分が、Z軸方向の位置を多段階に切り替え可能な構成であってもよい。これにより、例えば仮想空間内の岩壁における任意の大きさの突起物をホールド11によって再現することができる。なお、ホールド11の少なくとも一部分のZ軸方向の位置が切り替え可能ではない構成についても本開示に含まれる。
【0018】
(力覚センサ)
力覚センサ12は、ホールド11に搭載され、ユーザUからホールド11に作用する力及びモーメントを検出する。これにより、力覚センサ12は、ユーザUの手足がホールド11に接触しているか否か、及びユーザUの手足によってホールド11に力が加えられている方向等を検出することができる。
【0019】
なお、別の態様として、ユーザUが装着するグローブ及びシューズ側に力覚センサ12が搭載されて、力覚センサ12がホールド11からユーザUに作用する力及びモーメントを検出する構成であってもよい。また、力覚センサ12は、ホールド11側と、ユーザUが装着するグローブ及びシューズ側との双方に搭載される構成であってもよい。
【0020】
(移動機構)
移動機構17は、シミュレーション装置2から入力された制御信号に基づいて、ボード10におけるホールド11のY軸方向及びZ軸方向の位置を移動させるための機構である。移動機構17の一部は、例えばレール又はベルトによって実現される。
図3は、ボード10をX軸負方向側から見た場合の概略図の一例である。ユーザUは、ボード10のおもて面にてクライミング体験を行う。移動機構17がベルトによって実現される場合、ベルトが、ボード10のおもて面とボード10の裏面又は内部とを循環する。なお、例えばホールド11が可撓性を有するか折り畳み可能であり、ホールド11もボード10のおもて面とボード10の裏面又は内部とを循環する構成であってもよい。移動機構17の処理の詳細については後述する。
【0021】
(傾動機構)
傾動機構18は、シミュレーション装置2から入力された制御信号に基づいて、ボード10を傾動可能に支持する機構であって、
図1に図示する、ボード10と床面との角度θを変更するための機構である。傾動機構18は、例えばサーボモータ及びギアによって実現される。より望ましくは、傾動機構18は、ユーザUがクライミング中であっても角度θを変更可能な構成が望ましい。また、角度θは90度を超えてもよい。
【0022】
〔スリングベルト機構〕
スリングベルト機構19は、天井又はその付近に設けられた本体191から、巻尺のようにベルト192が引き出し可能な機構である。ベルト192の先は、ユーザUの身体に取り付けられるように例えば輪となっている。スリングベルト機構19は、ベルト192が引き出される力が一定以上となったときにベルト192の引き出しを抑制してユーザUがボード10から落下することを防止する。また、ベルト192が巻き上げられる速度或いはベルト192が引き出される速度を示す情報が、ユーザUがクライミングを行っているときの移動速度を算出するための情報として、入出力部14を介してシミュレーション装置2に提供される構成であってもよい。
【0023】
〔フォトディテクタ〕
フォトディテクタ13は、HMD3が照射した光を検出するものである。複数のフォトディテクタ13は、
図1に例示するようにボード10を囲むように部屋の壁面に配置され得る。加えて、フォトディテクタ13は、ボード10のおもて面に配置され得る。また、本実施形態に係るフォトディテクタ13は、所定間隔をあけて行列状に配置される。なお、フォトディテクタ13の配置は、例えば斜めに並ぶような配置であってもよいし、ランダムな配置であってもよい。
【0024】
〔入出力部〕
入出力部14は、検出信号を、シミュレーション装置2に提供する。検出信号は、ユーザUからホールド11に作用する、又は、ホールド11からユーザUに作用する力及びモーメントを表す信号である。また、入出力部14は、ホールド11が移動するように移動機構17を制御するための制御信号、及びボード10が傾動するように傾動機構18を制御するための制御信号をシミュレーション装置2から取得する。入出力部14は、シミュレーション装置2と有線又は無線で通信する通信モジュール、又はシミュレーション装置2と有線接続するための端子で構成されている。
【0025】
本実施形態に係る入出力部14は、HMD3が照射した光を検出したフォトディテクタ13の識別情報(ID、取付位置等)を、シミュレーション装置2に提供する。換言すると、光を検出したフォトディテクタ13を示す情報が、HMD3の向きを特定するための情報として、入出力部14を介してシミュレーション装置2に提供される。
【0026】
[シミュレーション装置]
シミュレーション装置2は、仮想空間の生成、及び制御信号の出力を行う装置である。システムSが提供するクライミング体験がロッククライミング体験である場合、仮想空間は、岩壁を含む空間となる。クライミング体験がボルダリング体験である場合、仮想空間は、ボルダリング用の壁面を含む空間となる。また、シミュレーション装置2は、通常はクライミングが行われないビル又は塔の壁面等の場所を含む仮想空間を生成してもよい。
図2に示すように、シミュレーション装置2は、プロセッサ21と、メモリ22と、を備える。
【0027】
(メモリ)
メモリ22は、シミュレーション装置2を動作させるための制御プログラムを記憶している。本実施形態に係るメモリ22は、仮想空間を生成するための映像データも記憶している。
【0028】
(プロセッサ)
プロセッサ21は、例えば実際にクライミングを体験する場所を撮影して得られた画像データに基づいて、システムSが提供するクライミング体験に応じた仮想空間(岩壁等)の風景を再現したVR(Virtual Reality)映像を生成する。但しこの限りではなく、プロセッサ21は、現実には存在しない仮想空間の風景のVR映像を生成してもよい。
【0029】
VR映像は、クライミングにおけるユーザUの移動及びHMD3の向きに連動した映像である。また、本実施形態に係るプロセッサ21は、光を検出したフォトディテクタ13の識別情報に基づいて、ユーザUの顔の向きを特定し、仮想空間をユーザUの顔の向きに合わせて回転させる。
【0030】
別の観点から言えば、プロセッサ21は、入出力部14から提供された検出信号と、光を検出したフォトディテクタ13を示す情報とを参照して、仮想空間内のユーザUから見えるべき光景の映像を随時生成する。そして、プロセッサ21は、生成した仮想空間のデータを、図示しない通信モジュールを介してHMD3へ送信する。
【0031】
また、プロセッサ21は、仮想空間におけるユーザUの位置と、ユーザUからホールド11に作用する、又は、ホールド11からユーザUに作用する力及びモーメントから特定したユーザUの姿勢とに基づいて、傾動機構18の動作と、ボード10におけるホールド11の位置、即ち移動機構17の動作とを決定する。
【0032】
また、プロセッサ21は、特定された姿勢のユーザUの身体の一部又は全部を含む仮想空間を表すVR映像を生成し、HMD3に提供してもよい。
図4は、ユーザUの両手を表示させたVR映像の一例である。
図4において、ユーザUが手又は足を掛けることができる突起物は、前述した第1の位置にあるホールド11に対応する。
【0033】
また、プロセッサ21は、ユーザU本人とは別の人物又はキャラクタ等のアバターの身体の一部又は全部を含む仮想空間を表すVR映像を生成してもよい。これにより、例えばプロのクライマーとのクライミング体験をユーザUに提供することができる。
【0034】
また、プロセッサ21は、仮想空間における音声を生成し、それをHMD3へ送信するよう構成されていてもよい。システムSが提供するクライミング体験がロッククライミング体験である場合、音声には風の音及び鳥の鳴き声等が含まれ得る。
【0035】
[HMD(ヘッドマウントディスプレイ)]
HMD3は、シミュレーション装置2から取得した、仮想空間を表す映像を表示する。また、HMD3は、ユーザUがクライミング体験を行うときに、ユーザUの頭部に装着される。これにより、ユーザUは、自身が仮想空間内に存在しているような臨場感を得ることができる。本実施形態に係るシミュレーション装置2はVR映像を生成するため、HMD3を装着したユーザUは、よりリアリティの高い仮想空間内に存在している感覚に浸ることができる。また、本実施形態に係るシミュレーション装置2はクライミングにおけるユーザUの移動及びHMD3の向きに連動した映像を生成するため、HMD3を装着したユーザUは、自身が壁面を登っている感覚或いは降りている感覚に浸ることができる。
【0036】
本実施形態に係るHMD3は、少なくともユーザUがクライミングを体験している間、所定の方向、例えばユーザUが顔を向けている方向に光を照射する。光は、インタフェース装置1が設置される部屋の室内光と異なっていればよく、可視光であってもよいし、赤外線等であってもよい。HMD3から照射された光は、インタフェース装置1の周囲又はボード10上に配置された複数のフォトディテクタ13の何れかが検出することになる。
【0037】
また、HMD3は、スピーカが内蔵されたものであってもよい。その場合、HMD3は、シミュレーション装置2から取得した仮想空間における音声を発するよう構成されていてもよい。
【0038】
なお、HMD3の向きが、HMD3が内蔵するジャイロセンサ等によって特定される構成、及び、ユーザUがHMD3を装着せずにクライミング体験を行う構成についても本開示に含まれる。
【0039】
<クライミング体験システム(インタフェース装置)の動作例>
続いて、システムSの動作について説明する。
図5は、システムSの動作を示すシーケンス図の一例である。
【0040】
上述のように構成されたシステムSは、所定の開始条件が成立すると、
図5に示す動作を開始する。開始条件としては、システムS(インタフェース装置1)の電源がオンにされたこと、ユーザUが、ボード10上のホールド11に手及び足を掛けたことが検出されたこと、及びユーザUにより所定の開始操作がなされたこと等が挙げられる。
【0041】
システムSが動作を開始すると、
図5に示すように、まず、シミュレーション装置2が仮想空間を生成し(ステップA1)、そのデータを、ユーザUが装着しているHMD3へ提供する(ステップA2)。そして、仮想空間のデータを受信したHMD3が、仮想空間のVR映像を内蔵のディスプレイに表示する(ステップB1)。
【0042】
HMD3に仮想空間が表示されている間、インタフェース装置1において、力覚センサ12は、自身に作用する力及びモーメントを検出する処理を所定周期で繰り返し(ステップC1)、フォトディテクタ13は、HMD3が照射した光を検出する処理を所定周期で繰り返す(ステップC2)。そして、入出力部14は、力覚センサ12が力及びモーメントを検出する度に、その検出信号をシミュレーション装置2に提供し、フォトディテクタ13がHMD3の光を検出する度に、光を検出したフォトディテクタ13を示す情報をシミュレーション装置2に提供する(ステップC3)。
【0043】
そして、検出信号を取得したシミュレーション装置2が、生成した仮想空間の状態と、検出信号から特定したユーザUの姿勢とに基づいて、移動機構17及び傾動機構18の動作を決定する(ステップA3)。また、シミュレーション装置2は、移動機構17及び傾動機構18の動作を決定する際に、スリングベルト機構19から提供された情報を参照してもよい。
【0044】
そして、シミュレーション装置2が、決定した移動機構17及び傾動機構18の動作を示す制御信号をインタフェース装置1へ提供する(ステップA4)。制御信号を取得したインタフェース装置1は、提供された制御信号に従って、移動機構17及び傾動機構18を動作させる(ステップC4)。また、シミュレーション装置2は、生成した仮想空間の状態と、検出信号から特定したユーザUの姿勢とに基づいて、仮想空間のデータを更新する(ステップA5)。そして、更新された仮想空間のデータを用いて、
図5のステップA2以降の処理が繰り返される。これにより、続くステップB1においては、クライミングにおけるユーザUの移動及びHMD3の向きに連動した映像がHMD3に表示される。
【0045】
図5に示す処理は、所定の終了条件が満たされた場合に終了する。ここで終了条件とは、例えば、所定時間の経過、クライミングにおけるゴールへの到達、ユーザUによる終了操作、及び、後述するように壁面からユーザUが落下した判定がなされることによって満たされる条件である。
【0046】
<移動機構の動作例>
続いて、
図5のステップC4における移動機構17の動作について補足する。
図6は、移動機構17の動作例について説明するための図である。
図6の例において、仮想空間内のクライミング体験におけるユーザUの進行方向は、上方向、即ちY軸正方向である。
【0047】
前述したように、各ホールド11は少なくとも一部分が、ボード10の表面に垂直なZ軸方向の位置を、ユーザUが手又は足を掛けることを可能とする第1の位置と、第1の位置よりもボード10の表面に近い第2の位置に切り替えることができる。
【0048】
ボード10の大きさは限られているため、ホールド11が移動しない場合、ユーザUがクライミングを行うと、
図6の左図に示すようにボード10の上部に到達してそれ以上は登れなくなってしまう。そこで、各ホールド11は、少なくとも一部分が第1の位置にあって、ユーザUの手又は足が掛けられているときに、
図6の左図及び右図に示すように、ユーザUの進行方向とは逆の方向、即ちY軸負方向に少しずつ移動する。このときの各ホールド11の移動速度は、ユーザUが加速度を体感しない程度の速度が望ましい。
【0049】
また、各ホールド11は、少なくとも一部分が第2の位置に沈み込んで、ユーザUの手又は足が掛けられていないときに、ユーザUの進行方向に移動する。そして、移動後のホールド11は、少なくとも一部分が第1の位置に移動して浮き上がることによって、続いてユーザUが手又は足を掛けるホールド11となる。
【0050】
また、ホールド11がユーザUの進行方向に移動する処理には、例えば移動機構17がベルトによって実現される場合、ホールド11がボード10の裏面又は内部を経由してユーザUの進行方向に移動することが含まれる。また、ホールド11がボード10の裏面又は内部に移動しない構成の場合は、ユーザUが手又は足をホールド11から離すと、直ちにホールド11が第2の位置に沈み込んでユーザUの進行方向に移動し、第1の位置に浮き上がる。
【0051】
前述した処理によって、ユーザUはボード10のおもて面の範囲内において、連続して一定方向にクライミングを行っているように体感することができる。また、ユーザUがクライミング体験において壁面を降りる場合においても、上下を逆にして同様に説明される。
【0052】
以上、上述した構成によれば、比較的小規模な構成によって、或る程度以上の距離のクライミング体験がユーザUに提供可能となる。また、HMD3を用いることによって、よりリアリティのあるクライミング体験が実現できる。
【0053】
<変形例>
例えば、システムSは、インタフェース装置1の周囲を囲む緩衝材を備えていてもよい。このようにすれば、ユーザUがボード10から落下してしまった場合であっても、床面との衝突によりユーザUがけがをしてしまうことを防ぐことができる。
【0054】
また、上述したように、HMD3は、光を照射する機能の代わりに、ユーザUの頭部の動作を検出するセンサ(ジャイロセンサ等)を備えていてもよい。その場合、インタフェース装置1は、フォトディテクタ13を備えていなくてもよい。
【0055】
また、システムSは、図示しない送風機を備えていてもよい。この送風機は、ユーザUへ向けて送風するよう配置される。これにより、仮想空間におけるクライミング体験のリアリティ及び難易度をより向上させることができる。
【0056】
また、ホールド11は、移動機構17によってX軸方向にも移動可能な構成であってもよいし、システムSによって、ユーザUがボード10の横方向、即ちX軸方向に移動するようなクライミング体験が可能であってもよい。
【0057】
また、シミュレーション装置2は、インタフェース装置1から提供された情報を参照して、所定の落下条件が満たされたと判定した場合に、仮想空間におけるクライミング体験の対象となる壁面からユーザUが落下した映像を生成し、HMD3に提供する構成であってもよい。ここで、落下条件とは、例えば何れの力覚センサ12も力及びモーメントを検出しなくなった場合、ユーザUの両手の位置に対応する各力覚センサ12が共に力及びモーメントを検出しなくなった場合、及び、スリングベルト機構19が所定以上の重量を検出した場合によって満たされる条件である。
【0058】
また、クライミング体験の難易度は、例えばシミュレーション装置2に対するユーザUの入力によって任意に設定可能な構成であってもよいし、単一のクライミング体験中に、ユーザUの移動速度等によって判定される熟練度に応じて自動的に変更される構成であってもよい。例えばシミュレーション装置2が、ホールド11の一部分におけるZ軸正方向の浮き上がりを少なくするように制御すること、ボード10と床面との角度θが大きくなるように傾動機構18を制御すること、及び、前述した送風機による風の風速を上げることは、クライミング体験の難易度を上昇させるように作用する。
【0059】
〔ソフトウェアによる実現例〕
シミュレーション装置2(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特にプロセッサ21)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0060】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0061】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0062】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0063】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0064】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るインタフェース装置は、仮想空間におけるクライミング体験をユーザに提供するためのインタフェース装置であって、前記ユーザが手又は足を掛けるためのホールドが取り付けられたボードと、前記ボードにおける前記ホールドの位置を移動させるための移動機構と、前記ホールドと、前記ユーザが装着するグローブ及びシューズとのうち、少なくとも何れかに搭載され、前記ユーザから前記ホールドに作用する、又は、前記ホールドから前記ユーザに作用する力及びモーメントを検出する力覚センサと、前記力及び前記モーメントを表す信号を、前記仮想空間を生成するシミュレーション装置に提供すると共に、前記ホールドが移動するように前記移動機構を制御するための制御信号を、前記シミュレーション装置から取得する入出力部と、を備えている、構成である。
【0065】
本発明の態様2に係るインタフェース装置は、上記の態様1において、前記ボードを傾動可能に支持する傾動機構を更に備えており、前記入出力部は、前記ボードが傾動するように前記傾動機構を制御するための制御信号を、前記シミュレーション装置から取得する、構成としてもよい。
【0066】
本発明の態様3に係るインタフェース装置は、上記の態様1又は2において、各ホールドの少なくとも一部分は、前記ボードの表面に垂直な方向の位置を、前記ユーザが手又は足を掛けることを可能とする第1の位置と、前記第1の位置よりも前記ボードの表面に近い第2の位置とに切り替え可能であり、各ホールドは、少なくとも一部分が前記第1の位置にあって、前記ユーザの手又は足が掛けられているときに、前記仮想空間内のクライミング体験における前記ユーザの進行方向とは逆の方向に移動し、前記少なくとも一部分が前記第2の位置にあり、前記ユーザの手又は足が掛けられていないときに、前記ユーザの進行方向に移動する構成としてもよい。
【0067】
本発明の態様4に係るクライミング体験システムは、上記の態様1から3までの何れかに記載のインタフェース装置と、前記シミュレーション装置と、を含み、前記シミュレーション装置は、前記仮想空間における前記ユーザの位置と、前記力及び前記モーメントから特定した前記ユーザの姿勢とに基づいて、前記ボードにおける前記ホールドの位置を決定する、構成としてもよい。
【0068】
本発明の態様5に係るクライミング体験システムは、上記の態様4において、前記シミュレーション装置から取得した、前記仮想空間を表す映像を表示するヘッドマウントディスプレイを更に含む、構成としてもよい。
【0069】
本発明の態様6に係るクライミング体験システムは、上記の態様5において、前記シミュレーション装置は、前記特定された姿勢のユーザの身体の一部又は全部を含む前記仮想空間を表す映像を生成し、前記ヘッドマウントディスプレイに提供する構成としてもよい。
【0070】
本発明の態様7に係るクライミング体験システムは、上記の態様5又は6において、前記ヘッドマウントディスプレイは、所定の方向に光を照射し、前記インタフェース装置は、前記ヘッドマウントディスプレイが照射した光を検出する複数のフォトディテクタを備え、前記光を検出したフォトディテクタを示す情報を、前記ヘッドマウントディスプレイの向きを特定するための情報として、前記入出力部を介して前記シミュレーション装置に提供する構成としてもよい。
【0071】
本発明の態様8に係るクライミング体験システムは、上記の態様5から7までの何れかにおいて、前記シミュレーション装置は、前記インタフェース装置から提供された情報を参照して、所定条件が満たされたと判定した場合に、前記仮想空間におけるクライミング体験の対象となる壁面から前記ユーザが落下した映像を生成し、前記ヘッドマウントディスプレイに提供する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
S:システム(クライミング体験システム)、1:インタフェース装置、2:シミュレーション装置、3:HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、10:ボード、11:ホールド、12:力覚センサ、13:フォトディテクタ、14:入出力部、17:移動機構、18:傾動機構、19:スリングベルト機構、21:プロセッサ、22:メモリ