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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001702
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】洗車機および洗車システム
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
B60S3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100537
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛大
(72)【発明者】
【氏名】武田 尚也
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026AA03
3D026AA25
3D026AA34
3D026AA40
3D026AA44
3D026AA45
3D026AA47
3D026AA54
3D026AA72
3D026AA73
3D026AA76
(57)【要約】
【課題】破損の可能性のある部品を備える車種の洗車において、破損の可能性を低減した洗車を行う。
【解決手段】洗車機が備える制御部(44)は、センサ(52)が取得した外形に関する情報に基づいて、車両(X)が特定車種であるかを判別し、車両(X)が前記特定車種である場合、変更情報に基づいて変更された手順に従って洗車を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対する前後方向への相対移動により、所定の手順に従って前記車両を洗車する洗車機本体と、
前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサと、
前記洗車機本体の各部を制御する制御部と、
特定車種の特定部位において前記手順を変更するための変更情報に関するデータベースを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、
前記センサが取得した前記外形に関する情報に基づいて、前記車両が前記特定車種であるかを判別し、
前記車両が前記特定車種である場合、前記変更情報に基づいて変更された前記手順に従って洗車を実行する、洗車機。
【請求項2】
前記車両が前記特定車種であるかの判別は、前記車両の洗車中に行われる、請求項1に記載の洗車機。
【請求項3】
前記センサは、前記車両と前記洗車機本体の相対移動経路を横切る光軸を有する複数の光電スイッチを上下方向に配列して形成される車形検出センサである、請求項1に記載の洗車機。
【請求項4】
前記変更情報は、前記特定部位それぞれに対する、特定距離と、前記特定距離における前記洗車機本体の各部の制御の変更手順を示す変更情報とを含む、請求項1に記載の洗車機。
【請求項5】
前記変更手順は、前記洗車機本体が備えるブラシの回避制御に関する手順、当該ブラシによる洗浄強度の変更に関する手順、またはすすぎ量の変更に関する手順である、請求項4に記載の洗車機。
【請求項6】
洗車機と、前記洗車機と通信可能なサーバとを備える洗車システムであって、
前記洗車機は、
車両に対する前後方向への相対移動により、所定の手順に従って前記車両を洗車する洗車機本体と、
前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサと、
前記洗車機の各部を制御する制御部と、を備え、
前記サーバは、
特定車種の特定部位において前記手順を変更するための変更情報に関するデータベースを記憶する記憶部を備えており、
前記制御部は、
前記センサが取得した前記情報に基づいて、前記車両が前記特定車種であるかを判別し、
前記車両が前記特定車種である場合、前記変更情報に基づいて変更された前記手順に従って洗車を実行する、洗車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は洗車機および洗車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている車種の中には、洗車機において選択される一般的なコース洗浄に適さない車種が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、突起物を検出する車形検出装置を備えた洗車機の一例が開示されている。特許文献1に記載の洗車機は、破損の可能性のあるフロントミラーやリアミラーなどの突起物を回避して洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-301427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
破損の可能性の高い部品には、特許文献1に記載の車形検出装置では検出が困難なものがある。
【0006】
本開示の一態様は、破損の可能性のある部品を備える車種の洗車において、破損の可能性を低減した洗車を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る洗車機は、車両に対する前後方向への相対移動により、所定の手順に従って前記車両を洗車する洗車機本体と、前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサと、前記洗車機の各部を制御する制御部と、特定車種の特定部位において前記手順を変更するための変更情報に関するデータベースを記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記センサが取得した前記外形に関する情報に基づいて、前記車両が前記特定車種であるかを判別し、前記車両が前記特定車種である場合、前記変更情報に基づいて変更された前記手順に従って洗車を実行する。
【0008】
また、本開示の一態様に係る洗車システムは、洗車機と、前記洗車機と通信可能なサーバとを備える洗車システムであって、前記洗車機は、車両に対する前後方向への相対移動により、所定の手順に従って前記車両を洗車する洗車機本体と、前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサと、前記洗車機の各部を制御する制御部と、を備え、前記サーバは、特定車種の特定部位において前記手順を変更するための変更情報に関するデータベースを記憶する記憶部を備えており、前記制御部は、前記センサが取得した前記情報に基づいて、前記車両が前記特定車種であるかを判別し、前記車両が前記特定車種である場合、前記変更情報に基づいて変更された前記手順に従って洗車を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、破損の可能性のある部品を備える車種の洗車において、破損の可能性を低減した洗車を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態1に係る洗車機が備える、洗車機本体とリモートパネルとの概略側面、および洗車機本体の概略正面を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る洗車機の構成を示すブロック図である。
図3】実施形態1に係る外形作成部が作成した車両Xの外形データをグラフとして出力した出力結果の一例である。
図4】実施形態1に係る制御部の制御の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態2に係る洗車システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
市販されている車種の中には、洗車機において選択される一般的なコース洗浄におけるブラシ制御では、破損する可能性のある部品を備える車種がある。このように洗車機による一般的なコース洗浄に適さない車種を特定車種と称する。従来、このような特定車種については、説明看板による告知を通して洗車機利用の禁止を求める対応が行われていたが、洗車機利用の禁止を求めると、洗車対象車両が減少してしまう。
【0012】
また、特定車種についても洗車機の利用を可能とするために、全ての被洗浄車両において、破損する可能性のある部品が装着されている部位のブラシ回避を行う対応が行われる場合もある。しかしながら、全ての被洗浄車両においてブラシ回避が行われるため、洗浄力が低下し、顧客満足度が低下する可能性がある。
【0013】
以下では、特定車種の特定部位において、一般的なコース洗浄の一部を変更して洗車を行うことにより、特定車種において部品が破損する可能性を低減した洗浄を実施することができる洗車機の構成について説明する。
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一態様に係る洗車機について詳細に説明する。なお、本明細書において、X軸の正方向を前方向、X軸の負方向を後方向と称する。また、Y軸の正方向を上方向、Y軸の負方向を下方向と称する。また、Z軸の正方向を右方向、Z軸の負方向を左方向と称する。また、図1~5において、ある軸線に対して上下対称又は左右対称になっている構成については、対称となっている構成のうち一方の構成のみに符号を付し、他方の構成に符号を付すことを省略している場合がある。
【0015】
<洗車機の概要>
図1は、本実施形態に係る洗車機2が備える、洗車機本体4とリモートパネル6との概略側面2S、および洗車機本体4の概略正面4Fを示す模式図である。図2は、本実施形態に係る洗車機2の構成を示すブロック図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る洗車機2は、被洗浄車両である車両Xの洗車を行う洗車機本体4を備える。洗車機2は、さらに、洗車機本体4による車両Xの洗車条件を取得するリモートパネル6を備える。概略側面2Sにおいては、車両Xがリモートパネル6よりも、紙面に向かって奥側に位置することを示すために、車両Xの外形を点線にて示す。
【0016】
概略正面4Fに示すように、洗車機本体4は、例えば、2つのフレーム8と、当該2つのフレーム8の上端同士を連結する天井部10とを備える。洗車機本体4は、概略側面2Sに示す、車両Xの進入方向DAに沿って、車両Xが、フレーム8および天井部10によって囲まれた空間4Sを通過できる構造を有している。なお、本明細書において、進入方向DAは、洗車機本体4の前面4Aから後面4Bに向かう方向とする。
【0017】
洗車機本体4は、駆動部4Xと、清掃部4Yとを備える。駆動部4Xは、フレーム8それぞれの下部に設けられる車輪12と、車輪12を回転駆動させる駆動装置11とを備える。駆動装置11が車輪12を回転駆動することにより、洗車機本体4は、地面Gに配されたレールRに沿って、車両Xに対し前後方向に相対移動する。レールRは、例えば、進入方向DAに沿って形成されている。ここで、洗車機本体4は、車両Xに対する相対移動を行いつつ、空間4S中の車両Xに対する洗浄(洗車)を実施する。
【0018】
清掃部4Yは、車両X上を摺動してブラッシングする複数の回転ブラシを備える。例えば、清掃部4Yは、それぞれが回転モータ(不図示)によって回転するトップブラシ14、サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18を含む。トップブラシ14は、車両Xの上面に沿って摺動し、車両Xの上面を洗浄する。サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18は、車両Xの両側面を洗浄する。
【0019】
本実施形態に係るサイドブラシ16は、例えば、地面Gに対し略垂直方向に延伸する回転軸16Sと、当該回転軸16Sに形成された複数の毛材16Tとを含む。換言すれば、サイドブラシ16は、車両Xの側表面の少なくとも一部と平行な回転軸16Sを含み、回転軸16S回りに回転する毛材16Tを車両Xの側表面の少なくとも一部に当接させて、当該側表面を洗浄するブラシである。さらに、サイドブラシ16は、回転軸16Sを支持し、不図示の動力部により車両Xの左右方向に回転軸16Sを移動させるアーム16Aを含んでいてもよい。
【0020】
洗車機本体4の側部には、洗剤またはワックス等を含む各種液剤を貯液した複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部20が配される。タンク収納部20の上方には、市水を含む水、または各貯液タンクからの液剤を分配する分配配管部22が設けられる。分配配管部22からは、清掃部4Yに含まれる、第1浄水ノズル24、第2浄水ノズル26、第1洗剤ノズル28、第2洗剤ノズル30、撥水コートノズル32、およびワックスノズル34がそれぞれ電磁弁(不図示)を介して導出される。
【0021】
第1浄水ノズル24、および第2浄水ノズル26は、洗車機本体4の各フレーム8の前面4A側、および後面4B側にそれぞれ配され、車両Xに対して市水を含む水を噴射する。第1洗剤ノズル28、第2洗剤ノズル30は、各フレーム8の前面4A側、および後面4B側にそれぞれ配され、車両Xに対してシャンプー等を含む洗浄液を噴射する。撥水コートノズル32およびワックスノズル34は洗車機本体4の後面4Bに配される。撥水コートノズル32は車両Xに対して撥水コート剤の液剤を噴射する。ワックスノズル34は車両Xに対してワックスを噴射する。
【0022】
また、洗車機本体4には、気流を発生して車両Xを乾燥させるブロワ36が設けられる。ブロワ36にはトップ送風ノズル38、およびサイド送風ノズル40が接続される。トップ送風ノズル38は、洗車機本体4の中央上部に設けられ、車両Xの天井面に向けて送風する。サイド送風ノズル40は、洗車機本体4の両側部に設けられ、車両Xの側面に向けて送風する。洗車機本体4は、トップ送風ノズル38、およびサイド送風ノズル40の送風によって、洗浄後の車両Xを乾燥させる。
【0023】
洗車機本体4の一方のフレーム8の前面には操作パネル42が配される。操作パネル42は洗車条件を設定する操作ボタン(不図示)を備える。例えば、車両Xから降車したユーザ、またはその他の技術者等は、操作ボタンを操作して、洗車条件の設定等を行ってもよい。
【0024】
さらに、洗車機2は、洗車機本体4の各部を制御する制御部44を備える。本実施形態において、制御部44は、洗車制御部441と、外形作成部442と、車種判別部443と、カウント部444とを備える。外形作成部442、車種判別部443およびカウント部444については後述する。洗車制御部441は、洗車機本体4の駆動部4Xおよび清掃部4Yの各部の動作を制御することにより、洗車機本体4による車両Xの洗浄を制御する。
【0025】
制御部44は、図1に示すように、洗車機本体4に備えられていてもよく、あるいは、洗車機本体4の外部に位置していてもよい。制御部44は、不図示の通信装置などにより、洗車機本体4または後述するリモートパネル6との間における情報の送受信を行い、洗車機本体4を制御してもよい。制御部44は、例えば、CPUなどのプロセッサで構成され、メモリに格納された制御プログラムがプロセッサ上で実行されることにより、各制御が実現される。
【0026】
リモートパネル6は、例えば、洗車機本体4の前方側に位置し、おおよそ洗車機本体4の移動方向に沿って配置される。また、リモートパネル6は、図1に示すように、その正面が、洗車機本体4により洗浄される前、換言すれば、洗車機本体4の内部に進入する前の車両Xの側面と対向するように配置される。このため、図1においては、リモートパネル6の背面を図示している。
【0027】
図1に示すように、リモートパネル6は、筐体46と、地面Gに立設された、筐体46を支持する支持柱48とを備える。リモートパネル6は、筐体46に設けられた、不図示のタッチパネルまたはボタン等の操作により、洗車機本体4による車両Xの洗車条件の少なくとも一部を取得してもよい。制御部44は、リモートパネル6が取得した洗車条件の少なくとも一部に基づいて、洗車機本体4を制御し、車両Xを洗浄してもよい。
【0028】
洗車機2は、さらに、洗車機本体4の前方に位置して、洗車機本体4の進入に伴い車両Xの側方から車形(シルエット)を読み取るための車形検出センサ52を備える。また、駆動部4Xの車輪12を駆動させる駆動装置11に連結されるエンコーダ13を備える。
【0029】
車形検出センサ52は、車両Xと洗車機本体4の相対移動経路を横切る光軸を有する送受光部から構成される光電スイッチを複数備えるエリアセンサであってよい。光電スイッチの光軸は、車両Xと洗車機本体4の相対移動経路を直角に横切る光軸を含む。当該光軸は、地面に対して水平な光軸を含み、読取り精度を向上させるために当該水平な光軸に角度をなす光軸を含んでもよい。このようなエリアセンサを用いることにより、車両Xの車形データを作成することができる。
【0030】
車形検出センサ52は、車形検出センサ52の位置における車両Xの車高を示す車高データを取得し得る。車形検出センサ52は、図1に示すように、洗車機本体4の入り口付近において、左右側方位置に対向して配置される。車形検出センサ52は、洗車機本体4の、車両Xの前後方向への相対移動に伴い、車両Xの前後方向に相対移動するとともに、各光電スイッチからの検出信号を取得する。各光電スイッチからの検出信号は、車両Xの外形に関する情報の一例である。複数の光電スイッチは、例えば、所定間隔(例えば、15mm)で上下方向(垂直方向)に、地面Gより650mmの高さから配列して形成されている。光電スイッチの数は特に限定されないが、例えば106個であってよい。車両Xにより光軸が遮断された光電スイッチを検出することにより、車形検出センサ52の位置における車両Xの車高が検出される。
【0031】
洗車機2の制御部44は、リモートパネル6が取得した洗車条件の少なくとも一部、車形検出センサ52の各光電スイッチからの検出信号、エンコーダ13のパルス信号に基づいて、駆動部4Xおよび清掃部4Yを制御することにより、所定の手順に従う洗車を実行する。
【0032】
具体的には、制御部44は、リモートパネル6から、洗車に必要なデータ、例えば、選択された洗車コースパターンの設定信号、起動、停止などの操作信号を受信する。また、制御部44は、車形検出センサ52の各光電スイッチの検出信号、およびエンコーダ13のパルス信号等を受信する。制御部44の洗車制御部441は、これらリモートパネル6からの信号、およびセンサ類の検出信号に基づいて、駆動部4Xおよび清掃部4Yなどを制御して洗車機本体4全体の動作を制御し、洗車動作を実行する。
【0033】
制御部44は、外形作成部442を備えている。外形作成部442は、センサシステム7の各部から車両Xの外形に関する情報を取得し、車両Xの外形データを作成する。本実施形態では、センサシステム7は、車形検出センサ52と、距離センサ71から構成される。
【0034】
距離センサ71は、洗車機本体4の駆動部4Xが備えるエンコーダ13と、制御部44が備えるカウント部444から構成されている。カウント部444は、エンコーダ13のパルス信号をカウントする機能を有している。カウント部444によるカウントは、車両Xが所定の停車位置に停止し、洗車機本体4が車両Xに向かって進行を開始するときにリセットされる。例えば、洗車制御部441は、駆動装置11に対し、車輪12の駆動を開始させる駆動開始指示を送信するとともに、カウント部444に対して洗車機本体4の進行が開始されたことを示す信号を送信する。カウント部444は、当該信号を受信すると、カウントをリセットしてもよい。カウント部444によるカウントに基づき、洗車機本体4の走行距離が検出される。洗車機本体4の走行距離は、換言すると車両Xと洗車機本体4の相対移動距離である。距離センサ71は、当該走行距離(相対移動距離)を示す情報を、走行カウントデータとして出力し得る。
【0035】
外形作成部442は、車形検出センサ52が出力する各光電スイッチの検出信号と、距離センサ71が出力する走行カウントデータから、車両Xの外形データを作成する。図3は、外形作成部442が作成した車両Xの外形データをグラフとして出力した出力結果の一例である。外形作成部442が作成する外形データは、例えば、図3に示すように、車両Xを側面視したときのシルエットを示すデータである。
【0036】
外形作成部442は、洗車機本体4が進行を開始してから、最初に光電スイッチが遮光された位置を車両Xの先端位置と判断し得る。例えば、図3では、カウント部444がカウントしたカウント(走行カウント)15において、最初に光軸が遮光されていることがわかる。この場合、外形作成部442は、カウント15の位置を車両Xの先端位置と判断する。
【0037】
車種判別部443は、外形作成部442が作成した車両Xの外形データと、後述する特定車種外形データとを比較することにより、車両Xが特定車種であるか否かを判別する。あるいは、車種判別部443は、外形作成部442が作成した車両Xの外形データを説明変数とし、車種情報を目的変数とする判別モデル(判別アルゴリズム)から構成されていてもよい。このような判別モデルは、外形データを入力すると車種を判別して出力する分類アルゴリズムまたは機械学習により生成されたモデルであってもよい。当該判別モデルは、記憶部45にデータとして記録され得る。
【0038】
洗車機2は、さらに記憶部45を備えている。記憶部45は、特定車種外形データ451と、変更手順データベース452とを備えている。特定車種外形データ451は、特定車種の外形データに関するデータベースである。特定車種外形データ451は、少なくとも1つの特定車種の外形データを含む。
【0039】
特定車種とは、一般的なコース洗浄に適さない車種であり、例えば、洗車機2において選択される一般的なコース洗浄におけるブラシ制御では、部品の形状または部品の取付強度の弱さなどに起因して、破損する可能性のある部品を備える車種であってよい。このような部品としては、サイドミラー、アンテナ、リアバンパーなどが挙げられる。あるいは、車形検出センサ52によって検出した車両の外形データには反映されにくい部品を備える車種であってもよい。このような部品としては、オーバーフェンダー、ドア開閉ハンドル、フロントグリル・リアガーニッシュなどが挙げられる。あるいは、車形検出センサ52の検出下限高さ以下に取り付けられている部品を備える車種であってもよい。このような部品としては、サイドスポイラー、前後バンパー下部、ドアサイドモール、スプラッシュガード(泥除け)などが挙げられる。あるいは、車形検出センサ52で形状を把握しにくい低い位置に、通常の車種とは異なる形状の部品を備える車種であってもよい。このような部品としては、オーバーフェンダー、リアバンパーなどが挙げられる。あるいは、特徴的な車両形状であるかまたは特徴的な形状を有する装備品を装備しており、特徴的な形状箇所におけるブラッシング、すすぎ、または乾燥を、特別な制御によって行うことが好ましい車種であってもよい。特定車種の外形データは、当該特定車種を側面視したときのシルエットを示すデータであってよい。
【0040】
変更手順データベース452は、特定車種の特定部位において洗車機2の所定の手順を変更するための、変更情報に関するデータベースである。特定部位とは、特定車種における、上述したような破損する可能性のある部品が装着されている部位、あるいは特徴的な形状を有する部品が装着されている部位を意味する。
【0041】
変更手順データベース452には、当該特定車種の特定部位における変更情報が記憶されている。変更情報は、各特定車種に紐付けられた、特定距離と、当該特定距離における洗車機2の各部の制御の変更手順を示す情報と、を含む。特定距離とは、所定の洗車手順の変更の開始から終了までの距離である。すなわち、車両Xは、特定距離において、変更された手順によって洗車される。特定距離は、例えば、車両の先端位置を基準として(ゼロとして)規定される。変更情報が特定距離と当該特定距離における洗車機2の各部の制御の変更手順を示す情報とを含んでいることにより、制御部44は、変更情報を参照して、特定距離において所定の手順を変更することができる。
【0042】
ここで、変更手順とは、例えば、特定部位における、ブラシ(トップブラシ14、サイドブラシ16またはロッカーブラシ18)の回避制御に関する手順、ブラシによる洗浄強度の変更に関する手順、またはすすぎ量の変更に関する手順を含む。例えば、ブラッシング工程では、特定部位においてブラシを回避させるかまたはブラシによる洗浄強度を低下させてもよい。すすぎ工程では、特定部位においてすすぎ量を増加または低減させてもよい。また、変更手順は、ブロワと車両との距離、ブロワの風速・風量の変更に関する手順を含む。例えば、ブロワ工程では、特定部位においてブロワと車両との距離を増大させるか、またはブロワの風速・風量を低減させてもよい。また、高圧水洗浄を備える洗車機においては、変更手順は、高圧水ノズルと車両との距離、高圧水の水圧・水量の変更に関する手順を含む。例えば、高圧水洗浄工程では、特定部位において高圧水ノズルと車両との距離を増大させるか、または高圧水の水圧・水量を低減させてもよい。
【0043】
変更手順において、洗車機2が備える各部の制御の変更が指示されることにより、制御部44は、特定距離において所定の手順を変更するために各部を制御することができる。
【0044】
変更手順データベース452は、例えば以下の表1に示すようなテーブルによって変更情報を記憶していてもよい。以下の表1において、変更手順開始位置および変更手順終了位置は、車両Xの先端位置からの距離(mm)を示している。以下の表1において、変更手順開始位置から変更手順終了位置までの距離が、上記特定距離に相当する。表1におけるTBは、トップブラシを意味している。
【0045】
【表1】

なお、図1および図2においては、図示の簡単のために、上述した、洗車機本体4が備える、車両Xの洗浄のための各装置に関する図示を省略している場合がある。また、図1に示す、洗車機本体4が備える各装置は、単なる例示であり、洗車機本体4は、上述した装置の他、従来公知の構成を含む、車両Xの洗浄のための装置、および当該洗浄を補助する装置を、フレーム8または天井部10に備えていてもよい。
【0046】
(洗車時の制御部の制御)
図4は、制御部44の制御の一例を示すフローチャートである。
【0047】
図4に示すフローチャートでは、洗車制御部441が、駆動部4Xを制御して車両Xに対する洗車機本体4の相対移動を開始するとともに、清掃部4Yを制御して所定の手順に従う洗車を開始した時点から説明する。
【0048】
洗車が開始されると、外形作成部442は、センサシステム7の各部から外形データの作成に必要な情報を取得し、外形データの作成を開始する(ステップS1)。具体的には、外形作成部442は、車形検出センサ52が出力する各光電スイッチの検出信号と、距離センサ71が出力する走行カウントデータを用いて外形データを作成する。
【0049】
車種判別部443は、所定の車種判別ポイントを過ぎると(S2:YES)、外形作成部442が作成した外形データと、記憶部45が記憶する特定車種外形データ451とを比較することにより、車両Xが特定車種に該当するかを判別する(S3)。つまり、車種判別部443は、車形検出センサ52が取得した外形に関する情報に基づいて、車両Xが特定車種であるかを判別している。あるいは、車種判別部443は、記憶部45にデータとして記録された判別モデルを実行することにより、車両Xが特定車種に該当するかを判別してもよい。
【0050】
所定の車種判別ポイントは、予め設定される、制御部44が車種の判別を実行するポイントであって、例えば、距離センサ71が出力する走行カウントデータの規定値によって規定されてもよい。あるいは、車形検出センサ52が出力する各光電スイッチの検出信号が特定の条件を満たした時点として規定されてもよい。当該特定の条件を満たした時点とは、例えば、検出信号が示す車高データの経時変化において、車高データの変化量が少なくなった、または車高データが一定になった時点であってもよい。車高データの変化量が少なくなった、または車高データが一定になった時点は、車形検出センサ52が測定している位置が、車両Xのフロントガラスを過ぎ、車両Xのルーフに到達した時点を示し得る。すなわち、制御部44は、車両Xの洗車中に車両Xが特定車種であるかを判別する。制御部44は、車両Xの洗車中に車両Xが特定車種であるかを判別することができるため、洗車機本体4の外部に車両Xを判別するためのセンサを設けなくてもよい。また、所定の車種判別ポイントにおいて車両Xが特定車種であるかを判別できるため、車種判別までの所要時間を短くすることができる。
【0051】
車種判別部443が、車両Xは特定車種に該当すると判別すると(S3:YES)、洗車制御部441は、記憶部45が記憶する変更手順データベース452を参照し、該当する特定車種の変更情報に基づいて、所定の洗車手順を変更するよう、清掃部4Yの各部を制御する(ステップS4)。つまり、制御部44は、車両Xが特定車種である場合、変更情報に従って変更された所定の洗車手順に従って洗車を実行する。なお、特定距離以外は、上述した所定の手順に従う洗車が行われる。
【0052】
車種判別部443が、車両Xは特定車種に該当しないと判別すると(S3:NO)、洗車制御部441は、所定の手順を変更せずに洗車を行う。
【0053】
所定の手順に従う洗車が完了すると、制御部44は制御を終了する。
【0054】
上記構成により、本開示に係る洗車機2は、特定車種を判別することができる。また、判別した特定車種の特定部位における所定の洗車手順を、変更情報に基づいて、特定車種に適切な洗車手順に変更することができる。これにより、特定車種において部品が破損する可能性を低減した洗浄を実施することができる。
【0055】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
図5は、実施形態2に係る洗車システム200の構成を示すブロック図である。図5に示す洗車システム200は、洗車機2Aと、サーバ80とを備えている。サーバ80は、記憶部85を備えており、記憶部85は、変更手順データベース852および特定車種外形データ851を備えている。サーバ80は、インターネットのような通信ネットワークを通じて外部の通信機器(例えば洗車機の管理者端末)と通信し得る。
【0057】
実施形態2の洗車システム200は、実施形態1において洗車機2が備えていた記憶部を、洗車機2Aと通信可能な外部のサーバ80が備えている点が実施形態1と異なっている。それ以外の点については実施形態と同様である。実施形態1の記憶部45と、実施形態2の記憶部85の機能は同じである。
【0058】
サーバ80が記憶部85を備えることにより、変更手順データベース852および特定車種外形データ851の更新作業などを容易に行うことができる。
【0059】
〔まとめ〕
(1)本開示の態様1に係る洗車機は、車両に対する前後方向への相対移動により、所定の手順に従って前記車両を洗車する洗車機本体と、前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサと、前記洗車機本体の各部を制御する制御部と、特定車種の特定部位において前記手順を変更するための変更情報に関するデータベースを記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記センサが取得した前記外形に関する情報に基づいて、前記車両が前記特定車種であるかを判別し、前記車両が前記特定車種である場合、前記変更情報に基づいて変更された前記手順に従って洗車を実行する洗車機である。
【0060】
(2)本開示の態様2に係る洗車機は、上記態様1において、前記車両が前記特定車種であるかの判別は、前記車両の洗車中に行われる、洗車機である。
【0061】
(3)本開示の態様3に係る洗車機は、上記態様1または2において、前記センサは、前記車両と前記洗車機本体の相対移動経路を直角に横切る水平な光軸を有する複数の光電スイッチを上下方向に配列して形成される車形検出センサである、洗車機である。
【0062】
(4)本開示の態様4に係る洗車機は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記変更情報は、前記特定部位それぞれに対する、特定距離と、前記特定距離における前記洗車機本体の各部の制御の変更手順を示す変更情報とを含む、洗車機である。
【0063】
(5)本開示の態様5に係る洗車機は、上記態様4において、前記変更手順は、前記洗車機本体が備えるブラシの回避制御に関する手順、当該ブラシによる洗浄強度の変更に関する手順、またはすすぎ量の変更に関する手順である、洗車機である。
【0064】
(6)本開示の態様6に係る洗車システムは、洗車機と、前記洗車機と通信可能なサーバとを備える洗車システムであって、前記洗車機は、車両に対する前後方向への相対移動により、所定の手順に従って前記車両を洗車する洗車機本体と、前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサと、前記洗車機の各部を制御する制御部と、を備え、前記サーバは、特定車種の特定部位において前記手順を変更するための変更情報に関するデータベースを記憶する記憶部を備えており、前記制御部は、前記センサが取得した前記情報に基づいて、前記車両が前記特定車種であるかを判別し、前記車両が前記特定車種である場合、前記変更情報に基づいて変更された前記手順に従って洗車を実行する、洗車システムである。
【0065】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
2、2A・・・洗車機
4・・・洗車機本体
4X・・・駆動部
4Y・・・清掃部
6 リモートパネル
7 センサシステム
14 トップブラシ(ブラシ)
16 サイドブラシ(ブラシ)
18 ロッカーブラシ(ブラシ)
44 制御部
45、85 記憶部
52 車形検出センサ(センサ)
71 距離センサ
80 サーバ
200 洗車システム

図1
図2
図3
図4
図5