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特開2024-170201注入率算出システム、水処理システム、および注入率算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170201
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】注入率算出システム、水処理システム、および注入率算出方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20241129BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20241129BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20241129BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
C02F1/00 K
B01D21/30 A
C02F1/52 Z
C02F1/00 T
C02F1/00 V
C02F1/50 510B
C02F1/50 520C
C02F1/50 531M
C02F1/50 550L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087229
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】布 光昭
(72)【発明者】
【氏名】権 大維
(72)【発明者】
【氏名】チャン ティタントゥイ
(72)【発明者】
【氏名】松永 晃
(72)【発明者】
【氏名】上中 哲也
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA21
4D015CA14
4D015EA03
4D015EA32
(57)【要約】
【課題】浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入率の精度を向上させる。
【解決手段】注入率算出システム(2)は、薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データと、薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標とを取得する取得部(21)と、上流側データから薬剤の注入率を、推定モデルを用いて推定する注入率推定部(22)と、推定された注入率を、評価指標に基づいて補正する注入率補正部(41)と、上流側データを説明変数とし、補正された注入率を目的変数とする教師データを用いて、推定モデルを更新する更新部(51)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入率を算出する注入率算出システムであって、
前記薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データと、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標とを取得する取得部と、
前記上流側データから前記薬剤の注入率を、推定モデルを用いて推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記注入率を、前記評価指標に基づいて補正する補正部と、
前記上流側データを説明変数とし、前記補正部が補正した前記注入率を目的変数とする教師データを用いて、前記推定モデルを更新する更新部と、を備える注入率算出システム。
【請求項2】
浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入率を算出する注入率算出システムであって、
前記薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データを取得する取得部と、
前記上流側データと前記薬剤の注入率とを説明変数とし、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標を目的変数とする教師データを用いて構築された推定モデルを用いて、前記上流側データと前記薬剤の注入率とから推定される前記評価指標が目標値となるように、前記薬剤の注入率を最適化する最適化部と、を備える注入率算出システム。
【請求項3】
前記上流側データは、前記浄水施設に流入する原水の濁度である原水濁度を含み、
前記評価指標は、前記原水濁度の取得位置から前記混和水の状態の取得位置まで流下するのに費やす時間が、前記原水濁度の取得時点から経過した時点における評価指標である、請求項1または2に記載の注入率算出システム。
【請求項4】
前記上流側データは、原水の属性を示す属性データと、前記薬剤の注入位置よりも上流側の位置にて注入される、前記薬剤とは別の薬剤の注入率と、前記原水を処理した水であって前記原水に混合される水の水量との少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の注入率算出システム。
【請求項5】
前記薬剤は凝集剤であり、
前記評価指標は、フロックの撮影画像から取得される、請求項1または2に記載の注入率算出システム。
【請求項6】
前記薬剤は塩素剤であり、
前記評価指標は残留塩素濃度である、請求項1または2に記載の注入率算出システム。
【請求項7】
前記塩素剤は、第1の位置と、第1の位置よりも下流側の第2の位置とにおいて注入され、
第2の位置にて注入される塩素剤の注入率を説明変数または目的変数に含む推定モデルは、第1の位置にて注入される塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度を説明変数として含む、請求項6に記載の注入率算出システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の注入率算出システムと、
前記注入率算出システムが算出した前記注入率に従って前記薬剤の注入を制御する制御装置と、を含む水処理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の注入率算出システムとしてコンピュータを機能させるための注入率算出プログラムであって、前記推定部、前記補正部、および前記更新部としてコンピュータを機能させるための注入率算出プログラム。
【請求項10】
請求項2に記載の注入率算出システムとしてコンピュータを機能させるための注入率算出プログラムであって、前記最適化部としてコンピュータを機能させるための注入率算出プログラム。
【請求項11】
浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データと、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標とを取得する取得ステップと、
前記上流側データから前記薬剤の注入率を、推定モデルを用いて推定する推定ステップと、
前記推定ステップにて推定された前記注入率を、前記評価指標に基づいて補正する補正ステップと、
前記上流側データを説明変数とし、前記補正ステップにて補正された前記注入率を目的変数とする教師データを用いて、前記推定モデルを更新する更新ステップと、を含む注入率算出方法。
【請求項12】
浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データを取得する取得ステップと、
前記上流側データと前記薬剤の注入率とを説明変数とし、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標を目的変数とする推定モデルを用いて、前記上流側データと前記薬剤の注入率とから推定される前記評価指標が目標値となるように、前記薬剤の注入率を最適化する最適化ステップと、を含む注入率算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水施設で用いられる薬剤の注入率を算出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理システムでは、塩素、凝集剤等の各種の薬剤が投入されて、所定の基準を満たす水質の水が生成される。このため、上記薬剤の投入量を如何に制御するかが重要となる。
【0003】
特許文献1に記載のモデル生成装置は、浄水場に流入する流入水へ注入する凝集剤の注入率を推定するための回帰モデルを生成する。上記モデル生成装置は、凝集剤を注入する前の上記流入水の濁度である注入前濁度を含む水質データと、上記流入水へ注入した凝集剤の注入率とを含むデータセットの集合をクラスタリングして複数のクラスタを生成する。次に、上記モデル生成装置は、生成された複数のクラスタ毎に、上記水質データを説明変数とし、上記注入率を目的変数とする学習データを用いて、上記回帰モデルを生成する。
【0004】
特許文献2に記載の凝集剤注入制御装置は、凝集剤が注入された被処理水である混和水におけるフロックの凝集状態を制御量とし、被処理水に対する凝集剤の注入率を操作量としてフィードバック制御を行う。また、上記凝集剤注入制御装置は、混和水中のフロックを沈澱させる沈澱池の濁度及びその目標値に基づいて、上記フィードバック制御における上記制御量の目標値を決定する。
【0005】
特許文献3に記載の凝集剤注入制御システムでは、原水濁質電荷量推定手段は、原水に含まれる濁質粒子表面の電荷量を推定し、凝集後荷電状態測定手段は、凝集剤注入後の荷電状態を測定する。凝集剤注入率設定装置は、原水に含まれる濁質粒子の表面の電荷量に応じて基本凝集剤注入率を算出し、凝集剤注入後の荷電状態に応じて基本凝集剤注入率を補正して実注入率を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-098191号公報
【特許文献2】特開2019-193916号公報
【特許文献3】特開2002-205076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のモデル生成装置では、学習データが、流入水の現在の状況などに適合しなくなった場合、凝集剤の注入率の推定値が最適値とはならない可能性がある。特許文献2に記載の凝集剤注入制御装置では、沈澱池の濁度を測定してから、凝集剤の注入率を変更するまでにタイムラグが生じる。このため、被処理水の水質が急変した場合には、沈澱池の濁度が一時的に悪化することになる。特許文献3のように、フィードフォワード(FF)制御とフィードバック(FB)制御とを組み合わせることにより、特許文献1および特許文献2の上記問題点は、或る程度解決されるが、未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明の一態様は、浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入率の精度を向上できる注入率推定システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る注入率算出システムは、浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入率を算出する注入率算出システムであって、前記薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データと、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標とを取得する取得部と、前記上流側データから前記薬剤の注入率を、推定モデルを用いて推定する推定部と、前記推定部が推定した前記注入率を、前記評価指標に基づいて補正する補正部と、前記上流側データを説明変数とし、前記補正部が補正した前記注入率を目的変数とする教師データを用いて、前記推定モデルを更新する更新部と、を備える。
【0010】
本発明の別の態様に係る注入率算出システムは、浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入率を算出する注入率算出システムであって、前記薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データを取得する取得部と、前記上流側データと前記薬剤の注入率とを説明変数とし、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標を目的変数とする教師データを用いて構築された推定モデルを用いて、前記上流側データと前記薬剤の注入率とから推定される前記評価指標が目標値となるように、前記薬剤の注入率を最適化する最適化部と、を備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様に係る水処理システムは、上記構成の注入率算出システムと、前記注入率算出システムが算出した前記注入率に従って前記薬剤の注入を制御する制御装置と、を含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様に係る注入率算出方法は、浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データと、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標とを取得する取得ステップと、前記上流側データから前記薬剤の注入率を、推定モデルを用いて推定する推定ステップと、前記推定ステップにて推定された前記注入率を、前記評価指標に基づいて補正する補正ステップと、前記上流側データを説明変数とし、前記補正部が補正した前記注入率を目的変数とする教師データを用いて、前記推定モデルを更新する更新ステップと、を含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様に係る注入率算出方法は、浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入位置と前記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて測定された上流側データを取得する取得ステップと、前記上流側データと前記薬剤の注入率とを説明変数とし、前記薬剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標を目的変数とする推定モデルを用いて、前記上流側データと前記薬剤の注入率とから推定される前記評価指標が目標値となるように、前記薬剤の注入率を最適化する最適化ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、浄水施設に流入する原水を処理するために注入する薬剤の注入率の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの概要を示す図である。
図2】上記水処理システムにおける注入率算出システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図3】上記構成の水処理システムにおける注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】上記水処理システムの一実施例であって、上記注入率算出システムにおける説明変数の一例である原水濁度と、上記目的変数である凝集剤の注入率との時間変化を示すグラフである。
図5】上記水処理システムの一変形例であって、上記説明変数の一例である原水濁度と、上記目的変数である凝集剤の注入率との時間変化を示すグラフである。
図6】上記水処理システムの別の実施例であって、上記説明変数の一例である粉末活性炭の注入率と、上記目的変数である凝集剤の注入率との時間変化を示すグラフである。
図7】本発明の別の実施形態に係る水処理システムの概要を示す図である。
図8】上記水処理システムにおける注入率算出システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図9】上記構成の水処理システムにおける前段の注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】上記構成の水処理システムにおける中段の注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】上記構成の水処理システムにおける後段の注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】本発明のさらに別の実施形態に係る水処理システムにおける注入率算出システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図13】上記構成の水処理システムにおける注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
【0018】
(水処理システム)
図1は、本実施形態に係る水処理システムの概要を示す図である。本実施形態の水処理システム1は、例えば河川等から浄水施設に流入する原水を清浄な水に処理するシステムである。具体的には、本実施形態の水処理システム1は、上記原水に含まれる懸濁物質等を、凝集剤によって凝集させ、重力沈降によって原水から分離する凝集沈澱プロセスを実現するものである。
【0019】
図1に示すように、水処理システム1は、上記凝集沈澱プロセスを実現する設備として、着水井101、急速混和池102、フロック形成池103、および沈澱池104を備える。
【0020】
着水井101は、導水管によって送られてくる原水による水面の動揺を抑制し、着水井101以降の設備に送られる原水の水理的な安定性を確保するための槽である。原水には、塩素剤およびpH(水素イオン濃度指数)調整剤が注入されてもよい。ここで、塩素剤とは、原水を消毒するための薬剤である。塩素剤は、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の薬剤であり、図示しない注入装置によって着水井101から急速混和池102の間に注入される。また、pH調整剤とは、原水のpHを調整するための薬剤である。pH調整剤は、例えば硫酸、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)等の薬剤であり、図示しない注入装置によって着水井101から急速混和池102の間に注入される。また、着水井101よりも上流側の取水点から急速混和池102までの間には、粉末活性炭が投入されてもよい。粉末活性炭は、臭気物質の除去、トリハロメタンおよびトリハロメタン前駆物質の除去、等に利用される。
【0021】
着水井101には水質計111が設けられている。水質計111は、着水井101に着水した原水の水質を測定する。当該水質は、少なくとも濁度であり、他の例として、色度、水温、導電率、pH(水素イオン濃度指数)、アルカリ度(酸消費量)、紫外線吸光度等が挙げられる。なお、水質計111は、急速混和池102に設けられてもよいし、急速混和池102より上流側の水路に設けられてもよい。水質計111によって測定された水質を示すデータは、注入率算出システム2に入力される。
【0022】
着水井101と急速混和池102との間の導水管には流量計112が設けられている。流量計112は、着水井101から急速混和池102に送られる原水の流量を測定する。流量計112によって測定された流量のデータは、凝集剤注入装置113に入力される。
【0023】
急速混和池102は、着水井101から送られてきた原水に凝集剤を注入して、急速撹拌するための混和池である。ここで、凝集剤とは、原水に含まれる物質を凝集させるための薬剤である。凝集剤は、例えばポリ塩化アルミニウム(PAC:PolyAluminumChloride)や硫酸アルミニウム(硫酸バンド)等の薬剤であり、凝集剤注入装置113によって急速混和池102に注入される。
【0024】
また、急速混和池102には、上記急速撹拌を行うための急速撹拌機114が設けられえている。急速撹拌機114は、例えば、フラッシュミキサである。急速撹拌機114は、一定の撹拌速度で動作するものであってもよいし、モータの制御によって撹拌速度を調節できるものであってもよい。急速混和池102では、凝集剤の注入と、急速撹拌機114の撹拌とによって微小なフロックが形成される。このような微小なフロックを含む処理水は後段のフロック形成池103に送られ、フロック形成池103以降の設備においてフロックのさらなる集塊化が促進される。
【0025】
フロック形成池103は、処理水中においてより大きなフロックを形成するために緩速撹拌するための槽である。フロック形成池103には、緩速撹拌機115が設けられている。緩速撹拌機115による処理水の撹拌によってフロックのさらなる集塊化が促進される。緩速撹拌機115は、例えばフロキュレータである。フロック形成池103の処理水は、所定時間の撹拌の後に後段の沈澱池104に送られる。フロック形成池103は、撹拌機を用いない迂流式であってもよい。
【0026】
また、フロック形成池103にはカメラ116が設けられている。カメラ116は、フロック形成池103にて形成されたフロックを撮影する。当該フロックの静的な撮影画像から、当該フロックの径、面積、体積などを推定し、上記フロックの形成状態を確認することができる。なお、当該フロックの動的な撮影画像から、当該フロックの移動速度を推定し、上記フロックの形成状態を確認してもよい。上記撮影画像のデータは、凝集状態を評価するための評価指標として、注入率算出システム2に入力される。
【0027】
なお、カメラ116は、確認したいフロックの形成状態に応じて適切な位置に設置することが望ましい。フロック形成の可及的に早い段階でフロックの形成状態を確認する場合、撮影可能な範囲におけるより上流側の位置に設置すれば、凝集剤の注入率の推定と凝集の良否の判定との間の時間遅れが短縮され、凝集不良による沈澱水の水質への悪影響を短時間に抑えることができる。逆に、フロック形成が十分に進行した状態でフロックの形成状態を確認する場合、撮影可能な範囲におけるより下流側の位置に設置すればよい。
【0028】
また、カメラ116の代わりに、ゼータ電位、流動電流値など、凝集状態の良否を評価できる指標を計測可能な測定器を設けてもよい。この場合、測定器が計測した水質のデータは、注入率をフィードバック補正するための評価指標として、注入率算出システム2に入力される。
【0029】
沈澱池104は、フロック形成池103からの流入水に含まれる集塊化したフロックを沈降分離するための池である。上記流入水が沈澱池104に所定時間(例えば1~3時間程度)滞留することにより、フロック形成池103において形成された粒径の大きなフロックが重力により沈降する。これにより、フロックが処理水から分離され、その上澄み液が沈澱水として濾過池(不図示)に送られる。なお、沈澱池104の後段には、上記濾過池に送られる処理水に対してオゾン処理や生物活性炭処理等の付加的な処理を施す設備が備えられてもよい。また、沈澱池104に沈澱したフロックは汚泥として引き抜かれ、図示しない汚泥処理設備に送られる。
【0030】
なお、フロック形成池103を省略し、沈澱池104を高速凝集沈澱池に変更した場合、上記高速凝集沈澱池でフロックを成長させるスラッジブランケットゾーンなどにてフロックの形成状態を評価すればよい。
【0031】
上記濾過池は、沈澱池104から流入する沈澱水を濾過する濾過設備を備えた池である。上記濾過池では、沈澱水に残留する微小な懸濁物質が濾過によって分離される。濾過された沈澱水は塩素剤によって消毒された後、水道水として需要者に供給される。
【0032】
(注入率算出システム)
図1に示すように、水処理システム1は、注入率算出システム2を備える。注入率算出システム2は、原水へ注入する凝集剤の注入率を、原水の属性等に応じて算出するものである。ここで、上記注入率は、原水に注入する凝集剤の、原水に対する割合である。上記注入率は、従来、ジャーテストの結果、過去の知見、所定の計算式などを用いて決定されている。
【0033】
注入率算出システム2は、算出した注入率を凝集剤注入装置113に出力する。凝集剤注入装置113は、流量計112からの流量のデータと、注入率算出システム2からの注入率とに基づいて、凝集剤の注入量を決定して急速混和池102に注入する。なお、注入率算出システム2は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。
【0034】
図2は、注入率算出システム2の要部構成の一例を示すブロック図である。注入率算出システム2は、推定装置11、補正装置12、モデル更新装置13、入力装置14、出力装置15、および記憶装置16を含んでいる。
【0035】
入力装置14は、ユーザの入力を受け付け、当該入力に基づく入力信号を、推定装置11、補正装置12、またはモデル更新装置13へ出力する。また、入力装置14は、各種装置からの入力信号を推定装置11または補正装置12へ出力する。
【0036】
出力装置15は、補正装置12が生成した情報を出力する。出力装置15による出力方法は特に限定されない。出力装置15は、例えば、当該情報を画像として表示する表示装置であってもよいし、当該情報を音声として出力する音声出力装置であってもよい。また、出力装置15は、当該情報を電気信号として、凝集剤注入装置113等の各種装置へ出力する制御信号出力装置であってもよい。
【0037】
記憶装置16は、注入率算出システム2にて使用されるプログラムおよびデータを保持する。記憶装置16は、推定モデル記憶部31、目標値記憶部32、および教師データ記憶部33を含む。これらの記憶部31~33が保持(記憶)するデータについては後述する。
【0038】
(推定装置)
推定装置11は、推定モデルを用いて、原水に対して注入される凝集剤の注入率を推定する。推定装置11は、制御部20を備えている。制御部20は、推定装置11の各部を統括して制御する。制御部20は、一例として、プロセッサおよびメモリにより実現される。この例において、プロセッサは、ストレージ(不図示)にアクセスし、ストレージに格納されているプログラム(不図示)をメモリにロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。これにより、制御部20に含まれている各部が構成される。
【0039】
制御部20は、取得部21および注入率推定部22(推定部)を含む。また、推定モデル記憶部31は、推定モデルを記憶する。
【0040】
取得部21は、入力装置14から入力されたデータである入力データを取得する。上記入力データは、凝集剤注入装置113が凝集剤を注入する注入位置と上記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて取得されたデータである上流側データである。上記上流側データは、原水の属性を示す属性データと、着水井101よりも上流側の取水点から急速混和池102までの間で注入する凝集剤以外の薬剤の注入率と、着水井101にて原水に混合される配水池からの返送水の水量とを含む。
【0041】
上記属性データの典型例は、原水の濁度である原水濁度を含む、原水の水質である。上記属性データの他の例としては、原水の流量、浄水施設の上流に設けられたダムにおける放流の有無、原水の水源が複数存在する場合における当該複数の水源からの水の混合比、などが挙げられる。上記凝集剤以外の薬剤の例としては、塩素剤、硫酸などの酸剤、水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤、粉末活性炭、等が挙げられる。
【0042】
取得部21は、取得した入力データを教師データ記憶部33に記憶する。取得部21が所定のタイミングごとに上記入力データを教師データ記憶部33に格納することにより、教師データ記憶部33には上記入力データの集合が記憶される。
【0043】
注入率推定部22は、推定モデル記憶部31から読み出した推定モデルを用いて、原水に対して注入される凝集剤の注入率を推定する。注入率推定部22は、当該推定モデルに上記上流側データを入力することにより、凝集剤の注入率を取得する。そして、注入率推定部22は、取得した注入率を補正装置12に出力させる。
【0044】
(補正装置)
補正装置12は、推定装置11が推定した凝集剤の注入率を、凝集剤を注入した後のフロック形成池103における凝集状態の評価指標に基づいて補正する。補正装置12は、制御部40を備えている。制御部40は、補正装置12の各部を統括して制御する。なお、制御部40は、制御部20と同様のハードウェア構成であるので、その説明を省略する。
【0045】
制御部40は、注入率補正部41(補正部)を含む。また、記憶装置16の目標値記憶部32は、フロック形成池103における凝集状態の評価指標の目標値を記憶する。上記目標値は、入力装置14を介して目標値記憶部32に記憶されてもよい。
【0046】
注入率補正部41は、入力装置14から上記評価指標を取得し、取得した評価指標と、目標値記憶部32に記憶された評価指標の目標値との差分に応じて、注入率を補正する。そして、注入率補正部41は、補正後の注入率を算出結果として出力装置15に出力させる。出力装置15が上述した制御信号出力装置である場合、当該注入率に基づき、凝集剤注入装置113が原水へ凝集剤を注入することができる。
【0047】
また、注入率補正部41は、補正後の注入率を教師データ記憶部33に記憶する。これにより、教師データ記憶部33には、上記上流側データを説明変数とし、上記補正後の注入率を目的変数とする教師データの集合である教師データ群が記憶される。
【0048】
(モデル更新装置)
モデル更新装置13は、原水に対して注入される凝集剤の注入率を推定するための推定モデルであって、推定モデル記憶部31に記憶された推定モデルを更新する。モデル更新装置13は、制御部50を備えている。制御部50は、モデル更新装置13の各部を統括して制御する。なお、制御部50は、制御部40と同様のハードウェア構成であるので、その説明を省略する。
【0049】
制御部50は更新部51を含む。更新部51は、教師データ記憶部33から読み出した、教師データ群を用いて機械学習を行い、学習モデルとしての推定モデルを構築する。この教師データ群の教師データにおいて、上記上流側データが説明変数であり、上記補正後の注入率が目的変数である。上記推定モデルに上記上流側データが入力されると、当該上流側データに対応する上記補正後の注入率が上記推定モデルから出力される。
【0050】
更新部51は、例えば、ランダムフォレスト(RF:Random Forest)、勾配ブースティング(GBR:Gradient Boosted tree Regression)またはニューラルネットワーク(NN:Neural Network)により得られる回帰モデルを上記推定モデルとして生成する。更新部51は、構築した推定モデルを用いて、推定モデル記憶部31に記憶された推定モデルを更新する。
【0051】
上記構成によると、推定モデルを用いて上流側データから推定された凝集剤の注入率が、上記凝集剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標に基づいて補正される。そして、補正された凝集剤の注入率を目的変数とし、上記上流側データを説明変数とする教師データを用いて、上記推定モデルが更新される。更新された推定モデルを用いることにより、上記上流側データから上記凝集剤の注入率を精度よく推定することができる。その結果、上記凝集剤の注入率の精度を向上することができる。
【0052】
(注入率算出処理)
図3は、上記構成の水処理システム1における注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、取得部21は、凝集剤の注入位置と上記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて取得された上流側データを取得して、説明変数として教師データ記憶部33に記憶する(ステップS11、以下「ステップ」の記載を省略する。)。次に、注入率推定部22は、取得部21が取得した上流側データから、推定モデル記憶部31に記憶された推定モデルを用いて、凝集剤の注入率を推定する(S12)。
【0053】
次に、注入率補正部41は、凝集剤を注入した後の凝集状態の評価指標を取得し、取得した評価指標と、目標値記憶部32に記憶された評価指標の目標値との差分に応じて、注入率推定部22が推定した注入率を補正する(S13)。次に、注入率補正部41は、補正後の注入率を、算出結果として出力すると共に、目的変数として教師データ記憶部33に記憶する(S14)。これにより、上記説明変数である上流側データと、上記目的変数である上記補正後の注入率との組が、教師データとして教師データ記憶部33の教師データ群に追加される。
【0054】
次に、更新部51は、注入率算出処理を開始してから所定期間(例えば1日、1週間等)を経過したか否かを判断する(S15)。所定期間を経過していない場合(S15にてNO)、ステップS11に戻る。
【0055】
一方、所定期間を経過した場合(S15にてYES)、更新部51は、教師データ記憶部33から読み出した教師データ群を用いて機械学習を行い、学習モデルとしての推定モデルを再構築して、推定モデル記憶部31の推定モデルを更新する(S16)。その後、上記注入率算出処理を終了する。
【0056】
(付記事項)
本実施形態では、注入率補正部41が補正した注入率を推定結果として出力装置15に出力させているが、注入率推定部22が推定した注入率を出力装置15に出力させてもよい。
【0057】
(実施例1)
図4は、上記説明変数の一例である原水濁度と、上記目的変数である凝集剤の注入率との時間変化を示すグラフである。図4には、上記原水濁度が破線で示され、本実施例の上記注入率が実線で示されている。また、図4には、比較例として、フィードフォワード制御(FF制御)のみによる注入率、すなわち、上記原水濁度から推定モデルのみによって推定された注入率が一点鎖線で示されている。また、図4には、比較例として、フィードバック制御(FB制御)のみによる注入率、すなわち、上記評価指標およびその目標値のみに基づいて決定された注入率が二点鎖線で示されている。
【0058】
図4を参照すると、FF制御のみによる注入率は、上記原水濁度の変化からの時間遅れが極めて小さいが、上記原水濁度の変化による上記凝集状態の変化に対応した値とは異なる(図4の例では低くなる)場合があることが理解できる。一方、FB制御のみによる注入率は、上記原水濁度の変化による上記凝集状態の変化に対応した値となっているが、上記原水濁度の変化からの時間遅れT1が大きいことが理解できる。
【0059】
これに対し、本実施例の注入率は、FF制御のみによる注入率に比べて、上記原水濁度の変化による上記凝集状態の変化に対応した値であり、また、FB制御のみによる注入率に比べて、上記原水濁度の変化からの時間遅れが少ないことが理解できる。
【0060】
(変形例1)
ところで、原水は、上記上流側データにおける上記原水濁度の取得位置(着水井101の水質計111の位置)から、上記評価指標の取得位置(フロック形成池103のカメラ116の位置)まで流下するのに時間を費やす。
【0061】
そこで、本変形例では、注入率補正部41は、上記実施例の説明変数である上記原水濁度の取得時点から、上記時間が経過した時点における上記評価指標に基づいて補正した注入率を、上記教師データの目的変数として、教師データ記憶部33に記憶する。上記の構成によると、上記教師データにおける説明変数と目的変数との因果関係が適切に反映される。従って、この教師データを用いて更新された推定モデルを用いることにより、上記原水濁度から上記凝集剤の注入率をさらに精度よく推定することができる。
【0062】
図5は、上記説明変数の一例である原水濁度と、上記目的変数である凝集剤の注入率との時間変化を示すグラフである。図5には、上記原水濁度が破線で示され、本変形例の凝集剤の注入率が実線で示されている。また、図5には、図4と同様に、比較例として、FF制御のみによる凝集剤の注入率が一点鎖線で示され、FB制御のみによる凝集剤の注入率が二点鎖線で示されている。図5を参照すると、本変形例の凝集剤の注入率は、図4に示す実施例の凝集剤の注入率に比べて、上記原水濁度の変化からの時間遅れが極めて小さく、FF制御のみによる注入率と同程度となっていることが理解できる。
【0063】
なお、上記時間は、水理学的滞留時間、すなわち、上記原水濁度の取得位置から上記評価指標の取得位置までの流路容量を流量で除した値でもよい。あるいは、上記時間は、トレーサー試験、数値解析等によって求めた時間でもよい。また、上記時間には、評価指標の取得から補正された注入率が出力されるまでの応答時間を加算してもよい。
【0064】
(実施例2)
図6は、上記説明変数の一例である粉末活性炭の注入率と、上記目的変数である凝集剤の注入率との時間変化を示すグラフである。図6には、上記粉末活性炭の注入率が破線で示され、本実施例の上記凝集剤の注入率が実線で示されている。また、図6には、図4と同様に、比較例として、FF制御のみによる凝集剤の注入率が一点鎖線で示され、FB制御のみによる凝集剤の注入率が二点鎖線で示されている。
【0065】
一般に、着水井101などに粉末活性炭を投入した場合、凝集剤の注入率を増やす必要がある。従って、粉末活性炭の注入率は、上記推定モデルの説明変数としては、寄与度の高い変数である。
【0066】
図6を参照すると、FB制御のみによる凝集剤の注入率は、上記粉末活性炭の注入率の変化による上記凝集状態の変化に対応した値となっているが、上記粉末活性炭の注入率の変化からの時間遅れT2が大きいことが理解できる。一方、FF制御のみによる凝集剤の注入率は、上記粉末活性炭の注入率の変化からの時間遅れが極めて小さいが、上記粉末活性炭の注入率の変化による上記凝集状態の変化に対応した値とは異なる(図6の例では高くなる)場合があることが理解できる。従って、FF制御のみの場合、凝集剤を過剰に注入していることになる。
【0067】
これに対し、本実施例の凝集剤の注入率は、FB制御のみによる凝集剤の注入率に比べて、上記粉末活性炭の注入率の変化からの時間遅れが少ないことが理解できる。また、本実施例の凝集剤の注入率は、FF制御のみによる凝集剤の注入率に比べて、上記粉末活性炭の注入率が変化してから上記時間遅れT2を経過した後には、上記粉末活性炭の注入率の変化による上記凝集状態の変化に対応した値となっていることが理解できる。
【0068】
(変形例2)
ところで、原水は、上記上流側データにおける上記粉末活性炭の注入位置(着水井101の所定位置)から、上記評価指標の取得位置(フロック形成池103のカメラ116の位置)まで流下するのに時間を費やす。
【0069】
そこで、本変形例では、注入率補正部41は、上記実施例の説明変数である上記粉末活性炭の注入率の取得時点から、上記時間が経過した時点における上記評価指標に基づいて補正した注入率を、上記教師データの目的変数として、教師データ記憶部33に記憶する。上記の構成によると、上記教師データにおける説明変数と目的変数との因果関係が適切に反映される。従って、この教師データを用いて更新された推定モデルを用いることにより、上記粉末活性炭の注入率から上記凝集剤の注入率をさらに精度よく推定することができる。
【0070】
なお、上記時間は、図5に示す変形例の場合と同様に、水理学的滞留時間でもよく、あるいは、トレーサー試験、数値解析等によって求めた時間でもよい。また、上記時間には、評価指標の取得から補正された注入率が出力されるまでの応答時間を加算してもよい。
【0071】
〔実施形態2〕
本発明の別の実施形態について、図7図11を参照して説明する。
【0072】
図7は、本実施形態に係る水処理システムの概要を示す図である。本実施形態の水処理システム1aは、上記原水または上記原水を処理した処理水に対し、塩素剤を用いて消毒処理を行うものである。なお、アンモニア態窒素等のような塩素と反応する物質の原水中濃度と、これらの反応式に基づく理論式とを用いて塩素要求量を算出し、算出した塩素要求量を、塩素剤の注入率を設定する上での参考とすることが、従来より行われている。
【0073】
図7に示すように、水処理システム1aは、上記消毒プロセスを実現する設備として、着水井101、急速混和池102、フロック形成池103、沈澱池104、中段の塩素混和池105、濾過池106、後段の塩素混和池107、および配水池108を備える。なお、図7に示す着水井101、急速混和池102、フロック形成池103、および沈澱池104は、それぞれ、図1に示す着水井101、急速混和池102、フロック形成池103、および沈澱池104と同様である。
【0074】
着水井101の上流側の導水管には流量計121が設けられている。流量計121は、着水井101に送られる原水の流量を測定する。流量計121によって測定された流量のデータは、前段の塩素剤注入装置122に入力される。着水井101では、前段の塩素剤注入装置122により前段の塩素剤が注入される。上記前段の塩素剤により、原水を消毒すると共に、原水に含まれている有機物等を酸化することができる。
【0075】
急速混和池102の上流側には、濃度計123が設けられている。濃度計123は、急速混和池102における混和水の残留塩素濃度を測定する。濃度計123によって測定された残留塩素濃度の測定データは、注入率算出システム2aに入力される。
【0076】
沈澱池104と中段の塩素混和池105との間の導水管には流量計124が設けられている。流量計124は、沈澱池104から中段の塩素混和池105に送られる処理水の流量を測定する。流量計124によって測定された流量のデータは、中段の塩素剤注入装置125に入力される。
【0077】
中段の塩素混和池105は、沈澱池104から送られてきた沈澱水に中段の塩素剤を注入するための混和池である。上記中段の塩素剤は、中段の塩素剤注入装置125によって中段の塩素混和池105に注入される。上記中段の塩素剤により、原水を消毒すると共に、原水に含まれている溶解性マンガンを後段の濾過池106にて除去することができる。
【0078】
濾過池106は、沈澱池104から中段の塩素混和池105を介して流入する沈澱水を濾過する濾過設備を備えた池である。濾過池106では、沈澱水に残留する微小な懸濁物質が濾過によって分離される。濾過池106にて濾過された水は、浄水として後段の塩素混和池107に送られる。
【0079】
濾過池106の上流側には、濃度計126が設けられている。濃度計126は、濾過池106に送られる沈澱水の残留塩素濃度を測定する。濃度計126によって測定された残留塩素濃度の測定データは、注入率算出システム2aに入力される。
【0080】
濾過池106と後段の塩素混和池107との間の導水管には流量計127が設けられている。流量計127は、濾過池106から後段の塩素混和池107に送られる浄水の流量を測定する。流量計127によって測定された流量のデータは、後段の塩素剤注入装置128に入力される。
【0081】
後段の塩素混和池107は、濾過池106から送られてきた浄水に後段の塩素剤を注入するための混和池である。上記後段の塩素剤は、後段の塩素剤注入装置128によって後段の塩素混和池107に注入される。上記後段の塩素剤は、配水池108から配水される水の残留塩素濃度を調整するために利用される。
【0082】
配水池108は、濾過池106から後段の塩素混和池107を介して流入する浄水を一時的に貯留し、需要量に応じて流出制御を行う制御設備を備えた池である。配水池108から水道管を介して家屋等に浄水が供給される。
【0083】
配水池108の上流側には、濃度計129が設けられている。濃度計129は、配水池108に送られる浄水の残留塩素濃度を測定する。濃度計129によって測定された残留塩素濃度の測定データは、注入率算出システム2aに入力される。
【0084】
(注入率推定システム)
図7に示すように、水処理システム1aは、注入率算出システム2aを備える。注入率算出システム2aは、水へ注入する前段、中段、および後段の塩素剤の注入率のそれぞれを、原水の属性等に応じて推定するものである。ここで、上記注入率は、水に注入する塩素剤の、当該水に対する割合である。上記注入率は、従来、ジャーテストの結果、過去の知見、所定の計算式などを用いて決定されている。
【0085】
注入率算出システム2aは、推定した前段の塩素剤の注入率(以下、「前段の注入率」と称することがある。)を前段の塩素剤注入装置122に出力する。前段の塩素剤注入装置122は、流量計121からの流量のデータと、注入率算出システム2aからの前段の注入率とに基づいて、前段の塩素剤の注入量を決定して着水井101に注入する。
【0086】
また、注入率算出システム2aは、推定した中段の塩素剤の注入率(以下、「中段の注入率」と称することがある。)を中段の塩素剤注入装置125に出力する。中段の塩素剤注入装置125は、流量計124からの流量のデータと、注入率算出システム2aからの中段の注入率とに基づいて、中段の塩素剤の注入量を決定して中段の塩素混和池105に注入する。
【0087】
また、注入率算出システム2aは、推定した後段の塩素剤の注入率(以下、「後段の注入率」と称することがある。)を後段の塩素剤注入装置128に出力する。後段の塩素剤注入装置128は、流量計127からの流量のデータと、注入率算出システム2aからの後段の注入率とに基づいて、後段の塩素剤の注入量を決定して後段の塩素混和池107に注入する。なお、注入率算出システム2aは、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。
【0088】
図8は、注入率算出システム2aの要部構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の注入率算出システム2aは、図2に示す注入率算出システム2に比べて、記憶装置16に記憶するデータが異なり、その他の構成は同様である。
【0089】
記憶装置16の推定モデル記憶部31は、前段の塩素剤の注入率を推定するための前段の推定モデルと、中段の塩素剤の注入率を推定するための中段の推定モデルと、後段の塩素剤の注入率を推定するための後段の推定モデルとを記憶する。記憶装置16の目標値記憶部32は、評価指標の目標値として、前段の残留塩素濃度の目標値と、中段の残留塩素濃度の目標値と、後段の残留塩素濃度の目標値とを記憶する。
【0090】
記憶装置16の教師データ記憶部33は、上記前段の推定モデルを構築するための前段の教師データと、上記中段の推定モデルを構築するための中段の教師データと、上記後段の推定モデルを構築するための後段の教師データとを記憶する。
【0091】
上記前段の教師データは、説明変数として上述の上流側データを含む。上記前段の教師データは、目的変数として補正後の前段の注入率を含む。上記上流側データは、前段の塩素剤の注入位置よりも上流側にて取得されたデータである。上記上流側データは、原水の属性を示す属性データを含む。
【0092】
上記中段の教師データは、説明変数として、上述の上流側データと、前段(第1の位置)の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度とを含む。上記中段の教師データは、目的変数として補正後の中段(第1の位置よりも下流側の第2の位置)の注入率を含む。
【0093】
上記後段の教師データは、説明変数として、上述の上流側データと前段(第1の位置)の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度と中段(第1の位置)の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度とを含む。上記後段の教師データは、目的変数として補正後の後段(第1の位置よりも下流側の第2の位置)の注入率を含む。
【0094】
上記構成によると、推定モデルを用いて上流側データから推定された塩素剤の注入率が、上記塩素剤が注入された後の混和水の状態を評価する残留塩素濃度に基づいて補正される。そして、補正された塩素剤の注入率を目的変数とし、上記上流側データを説明変数とする教師データを用いて、上記推定モデルが更新される。更新された推定モデルを用いることにより、上記上流側データから上記塩素剤の注入率を精度よく推定することができる。その結果、上記塩素剤の注入率の精度を向上することができる。
【0095】
(前段の注入率算出処理)
図9は、上記構成の水処理システム1aにおける前段の注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、取得部21は、前段の塩素剤の注入位置と上記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて取得された上流側データを取得して、説明変数として教師データ記憶部33に記憶する(S21)。次に、注入率推定部22は、取得部21が取得した上流側データから、推定モデル記憶部31に記憶された前段の推定モデルを用いて、前段の塩素剤の注入率を推定する(S22)。
【0096】
次に、注入率補正部41は、前段の塩素剤を注入した後の残留塩素濃度、すなわち、急速混和池102の濃度計123が測定した前段の残留塩素濃度を取得し、取得した前段の残留塩素濃度と、目標値記憶部32に記憶された前段の残留塩素濃度の目標値との差分に応じて、注入率推定部22が推定した前段の塩素剤の注入率を補正する(S23)。次に、注入率補正部41は、補正後の前段の塩素剤の注入率を、推定結果として出力すると共に、前段の教師データの目的変数として教師データ記憶部33に記憶する(S24)。これにより、上記説明変数である上流側データと、上記目的変数である上記補正後の前段の注入率との組が、前段の教師データとして教師データ記憶部33の前段の教師データ群に追加される。
【0097】
次に、更新部51は、前段の注入率算出処理を開始してから所定期間(例えば1日、1週間等)を経過したか否かを判断する(S25)。所定期間を経過していない場合(S25にてNO)、ステップS21に戻る。
【0098】
一方、所定期間を経過した場合(S25にてYES)、更新部51は、教師データ記憶部33から読み出した前段の教師データ群を用いて機械学習を行い、学習モデルとしての前段の推定モデルを再構築する(S26)。更新部51は、推定モデル記憶部31に記憶された前段の推定モデルを、再構築した前段の推定モデルで更新する。その後、上記前段の注入率算出処理を終了する。
【0099】
(中段の注入率算出処理)
図10は、上記構成の水処理システム1aにおける中段の注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、取得部21は、上記上流側データと、前段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度とを取得して、説明変数として教師データ記憶部33に記憶する(S31)。次に、注入率推定部22は、取得部21が取得した上流側データと前段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度とから、推定モデル記憶部31に記憶された中段の推定モデルを用いて、中段の塩素剤の注入率を推定する(S32)。
【0100】
次に、注入率補正部41は、中段の塩素剤を注入した後の残留塩素濃度、すなわち、濾過池106の濃度計126が測定した中段の残留塩素濃度を取得し、取得した中段の残留塩素濃度と、目標値記憶部32に記憶された中段の残留塩素濃度の目標値との差分に応じて、注入率推定部22が推定した中段の塩素剤の注入率を補正する(S33)。次に、注入率補正部41は、補正後の中段の塩素剤の注入率を、推定結果として出力すると共に、中段の教師データの目的変数として教師データ記憶部33に記憶する(S34)。これにより、上記説明変数である上流側データおよび前段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度と、上記目的変数である上記補正後の中段の塩素剤の注入率との組が、中段の教師データとして教師データ記憶部33の中段の教師データ群に追加される。
【0101】
次に、更新部51は、中段の注入率算出処理を開始してから所定期間を経過したか否かを判断する(S35)。所定期間を経過していない場合(S35にてNO)、ステップS31に戻る。一方、所定期間を経過した場合(S35にてYES)、更新部51は、教師データ記憶部33から読み出した中段の教師データ群を用いて機械学習を行い、学習モデルとしての中段の推定モデルを再構築する(S36)。更新部51は、推定モデル記憶部31に記憶された中段の推定モデルを、再構築した中段の推定モデルで更新する。その後、上記前段の注入率算出処理を終了する。
【0102】
(後段の注入率算出処理)
図11は、上記構成の水処理システム1aにおける後段の注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、取得部21は、上記上流側データと、前段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度と、中段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度とを取得して、説明変数として教師データ記憶部33に記憶する(S41)。次に、注入率推定部22は、取得部21が取得した上流側データと前段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度と中段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度とから、推定モデル記憶部31に記憶された後段の推定モデルを用いて、後段の塩素剤の注入率を推定する(S42)。
【0103】
次に、注入率補正部41は、後段の塩素剤を注入した後の残留塩素濃度、すなわち、配水池108の濃度計129が測定した後段の残留塩素濃度を取得し、取得した後段の残留塩素濃度と、目標値記憶部32に記憶された後段の残留塩素濃度の目標値との差分に応じて、注入率推定部22が推定した後段の塩素剤の注入率を補正する(S43)。次に、注入率補正部41は、補正後の後段の塩素剤の注入率を、推定結果として出力すると共に、後段の教師データの目的変数として教師データ記憶部33に記憶する(S44)。これにより、上記説明変数である上流側データ、前段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度、および中段の塩素剤の注入率および注入後の残留塩素濃度と、上記目的変数である上記補正後の後段の塩素剤の注入率との組が、後段の教師データとして教師データ記憶部33の後段の教師データ群に追加される。
【0104】
次に、更新部51は、後段の注入率算出処理を開始してから所定期間を経過したか否かを判断する(S45)。所定期間を経過していない場合(S45にてNO)、ステップS41に戻る。一方、所定期間を経過した場合(S45にてYES)、更新部51は、教師データ記憶部33から読み出した後段の教師データ群を用いて機械学習を行い、学習モデルとしての後段の推定モデルを再構築する(S46)。更新部51は、推定モデル記憶部31に記憶された後段の推定モデルを、再構築した後段の推定モデルで更新する。その後、上記前段の注入率算出処理を終了する。
【0105】
(付記事項)
本実施形態では、前段の塩素剤、中段の塩素剤、および後段の塩素剤を水処理システム1aに利用しているが、これに限定されるものではない。浄水施設によっては、前段の塩素剤、中段の塩素剤、および後段の塩素剤の何れか2つが利用されてもよいし、何れか1つが利用されてもよい。前段の塩素剤、中段の塩素剤、および後段の塩素剤のうち、利用されなかった塩素剤に関する構成および処理は省略することができる。また、本実施形態では、残留塩素濃度を評価指標として用いているが、これに限定されるものではなく、電気伝導度など他の指標を評価指標として用いることができる。
【0106】
また、上述のように、本実施形態の注入率算出システム2aは、図2に示す注入率算出システム2と同様の構成である。従って、本実施形態の注入率算出システム2aを図2に示す注入率算出システム2に組み込むことにより、本実施形態の水処理システム1aを、図1図3に示す水処理システム1に容易に組み込むことができる。
【0107】
〔実施形態3〕
本発明のさらに別の実施形態について、図12および図13を参照して説明する。本実施形態の水処理システム1は、図1図3に示す水処理システム1に比べて、注入率算出システム2に代えて、注入率算出システム3が設けられている点が異なり、その他の構成は同様である。
【0108】
図12は、本実施形態の注入率算出システム3の要部構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の注入率算出システム3は、図2に示す注入率算出システム2に比べて、推定装置11および補正装置12に代えて、最適化装置17が設けられている点と、モデル更新装置13に代えて、モデル構築装置18が設けられている点と、記憶装置16にて推定モデル記憶部31および教師データ記憶部33に代えて、推定モデル記憶部34および教師データ記憶部35が設けられている点とが異なり、その他は同様である。
【0109】
教師データ記憶部35は、上記上流側データおよび上記凝集剤の注入率を説明変数とし、上記凝集状態の評価指標を目的変数とする教師データの集合である教師データ群を予め記憶する。
【0110】
モデル構築装置18は、凝集剤を注入した後のフロック形成池103における凝集状態の評価指標を推定するための推定モデルを構築する。モデル構築装置18は、構築した推定モデルを推定モデル記憶部31に記憶する。モデル構築装置18は、制御部70を備えている。制御部70は、モデル構築装置18の各部を統括して制御する。なお、制御部70は、図2に示す制御部50と同様のハードウェア構成であるので、その説明を省略する。
【0111】
制御部70は構築部71を含む。構築部71は、教師データ記憶部35から読み出した、教師データ群を用いて機械学習を行い、学習モデルとしての推定モデルを構築する。上記上流側データおよび上記注入率が上記推定モデルに入力されると、上記上流側データおよび上記注入率に対応する上記評価指標が上記推定モデルから出力される。構築部71は、上述の回帰モデルを上記推定モデルとして生成する。構築部71は、構築した推定モデルを推定モデル記憶部34に記憶する。
【0112】
推定モデル記憶部34は、上記上流側データおよび上記凝集剤の注入率から上記凝集状態の評価指標を推定するための推定モデルを記憶する。
【0113】
最適化装置17は、上記推定モデルを用いて上記上流側データおよび上記凝集剤の注入率から推定される上記評価指標が目標値となるように、上記凝集剤の注入率を最適化する。最適化装置17は、制御部60を備えている。制御部60は、最適化装置17の各部を統括して制御する。なお、制御部60は、図2に示す制御部20および制御部40と同様のハードウェア構成であるので、その説明を省略する。
【0114】
制御部60は、取得部61および注入率最適化部62(最適化部)を含む。取得部61は、入力装置14から上記上流側データを取得する。取得部61は、取得した上記上流側データを教師データ記憶部35に記憶する。取得部61が所定のタイミングごとに上記上流側データを教師データ記憶部35に格納することにより、教師データ記憶部35には上記上流側データの集合が記憶される。
【0115】
注入率最適化部62は、取得部61が取得した上流側データと、推定モデル記憶部34から読み出した推定モデルと、目標値記憶部32から読み出した評価指標の目標値とを用いて、上記上流側データと凝集剤の注入率とから上記推定モデルを用いて推定される評価指標が上記目標値となるように、上記凝集剤の注入率を最適化する。注入率最適化部62は、最適化した注入率を出力装置15に出力させる。出力装置15が上述した制御信号出力装置である場合、当該注入率に基づき、凝集剤注入装置113が原水へ凝集剤を注入することができる。
【0116】
上記構成によると、推定モデルを用いて、上流側データと凝集剤の注入率とから推定される、上記凝集剤が注入された後の混和水の状態を評価する評価指標が目標値となるように、上記凝集剤の注入率が最適化される。従って、上記上流側データと、上記推定モデルと、上記評価指標の目標値とを用いて、上記凝集剤の注入率の精度を向上することができる。
【0117】
(注入率算出処理)
図13は、上記構成の水処理システム1における注入率算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、上記注入率算出処理を実行する前に、教師データ記憶部35は上記教師データ群を記憶し、モデル構築装置18は、上記教師データを用いて推定モデルを構築して、推定モデル記憶部34に記憶している。
【0118】
まず、取得部61は、凝集剤の注入位置と上記注入位置よりも上流側の位置との少なくとも一方にて取得された上流側データを取得する(S51)。次に、注入率最適化部62は、上記上流側データと凝集剤の注入率とから推定モデル記憶部34の推定モデルを用いて推定される評価指標が、目標値記憶部32の目標値となるように、上記凝集剤の注入率を最適化する(S52)。次に、注入率最適化部62は、最適化した注入率を、算出結果として出力する(S53)。その後、上記注入率算出処理を終了する。
【0119】
(付記事項)
なお、注入率最適化部62は、上記上流側データと、最適化された注入率と、上記上流側データおよび上記最適化された注入率から上記推定モデルを用いて推定された評価指標とを新たな教師データとして、教師データ記憶部35の教師データ群に追加してもよい。そして、モデル構築装置18は、上記新たな教師データが追加された教師データ群を用いて、推定モデル記憶部34に記憶された推定モデルを更新してもよい。
【0120】
また、上記実施形態の水処理システム1は、凝集剤または塩素剤の注入制御に利用しているが、これに限定されるものではなく、水処理システムにおいて注入される、pH調整剤、粉末活性炭などの任意の薬剤の注入制御に利用することができる。
【0121】
〔ソフトウェアによる実現例〕
推定装置11、補正装置12、モデル更新装置13、最適化装置17、およびモデル構築装置18(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部20、40、50、60、70に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0122】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0123】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0124】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0125】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0126】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
1、1a 水処理システム
2、2a、3 注入率算出システム
11 推定装置
12 補正装置
13 モデル更新装置
14 入力装置
15 出力装置
16 記憶装置
17 最適化装置
18 モデル構築装置
20、40、50、60、70 制御部
21、61 取得部
22 注入率推定部(推定部)
34 推定モデル記憶部
32 目標値記憶部
33、35 教師データ記憶部
41 注入率補正部(補正部)
51 更新部
62 注入率最適化部(最適化部)
71 構築部
101 着水井
102 急速混和池
103 フロック形成池
104 沈澱池
105、107 塩素混和池
106 濾過池
108 配水池
111 水質計
112、121、124、127 流量計
113 凝集剤注入装置
114 急速撹拌機
115 緩速撹拌機
116 カメラ
122、125、128 塩素剤注入装置
123、126、129 濃度計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13