(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170206
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
A43C 1/02 20060101AFI20241129BHJP
A43B 11/00 20060101ALI20241129BHJP
A43C 3/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A43C1/02
A43B11/00
A43C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087236
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】399010545
【氏名又は名称】山三商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】巻渕 文彰
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050MA02
4F050MA05
(57)【要約】
【課題】見栄えが良く靴紐による締め上げ状態を良好に維持できる、これまでにない靴を提供する。
【解決手段】対向状態で複数の紐通し孔1が並設された一対の羽根部2および該紐通し孔1に挿通される靴紐3で構成された締付調整部と、前記羽根部2の裏側に設けられる舌部4と、履き口5とを有する靴であって、前記靴紐3は、少なくとも紐長手方向両端部に、前記紐通し孔1の孔径よりも大径に形成されると共に、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔1の孔径よりも小径に変形する小径変形部が設けられた小径変形部領域を有するものであり、前記舌部4の履き口5側の端部には、前記紐通し孔1に挿通された前記靴紐3の両端部の前記小径変形部を止着可能な止着部6と、前記止着部6を覆う開閉自在な覆い部7とが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向状態で複数の紐通し孔が並設された一対の羽根部および該紐通し孔に挿通される靴紐で構成された締付調整部と、前記羽根部の裏側に設けられる舌部と、履き口とを有する靴であって、
前記靴紐は、少なくとも紐長手方向両端部に、前記紐通し孔の孔径よりも大径に形成されると共に、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔の孔径よりも小径に変形する小径変形部が設けられた小径変形部領域を有するものであり、
前記舌部の履き口側の端部には、前記紐通し孔に挿通された前記靴紐の両端部の前記小径変形部を止着可能な止着部と、前記止着部を覆う開閉自在な覆い部とが設けられていることを特徴とする靴。
【請求項2】
請求項1記載の靴において、前記止着部には、前記小径変形部が前記小径に変形した状態では通過可能で、大径状態では通過移動不能な靴紐挿通孔が設けられていることを特徴とする靴。
【請求項3】
請求項2記載の靴において、前記靴紐挿通孔は靴幅方向に延在するものであることを特徴とする靴。
【請求項4】
請求項3記載の靴において、前記靴紐挿通孔は靴長手方向に2つ並設されていることを特徴とする靴。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の靴において、前記覆い部は前記舌部の前記履き口側の端部に連設される折り返し片により構成され、この折り返し片には前記止着部を覆うように折り返した状態で前記舌部に係止可能な係止部が設けられていることを特徴とする靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、例えば特許文献1に開示されるような、少なくとも紐長手方向両端部に、紐通し孔の孔径よりも大径に形成されると共に、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔の孔径よりも小径に変形する小径変形部(こぶ部)が設けられた小径変形部領域を有する靴紐を採用した靴に関する種々の特許出願を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記靴紐の両端部を良好に止着できるのは勿論、止着部を覆うことで目立たず且つ外部と干渉し難い状態とすることができ、見栄えが良く靴紐による締め上げ状態を良好に維持できる、これまでにない靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0006】
対向状態で複数の紐通し孔1が並設された一対の羽根部2および該紐通し孔1に挿通される靴紐3で構成された締付調整部と、前記羽根部2の裏側に設けられる舌部4と、履き口5とを有する靴であって、
前記靴紐3は、少なくとも紐長手方向両端部に、前記紐通し孔1の孔径よりも大径に形成されると共に、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔1の孔径よりも小径に変形する小径変形部が設けられた小径変形部領域を有するものであり、
前記舌部4の履き口5側の端部には、前記紐通し孔1に挿通された前記靴紐3の両端部の前記小径変形部を止着可能な止着部6と、前記止着部6を覆う開閉自在な覆い部7とが設けられていることを特徴とする靴に係るものである。
【0007】
また、請求項1記載の靴において、前記止着部6には、前記小径変形部が前記小径に変形した状態では通過可能で、大径状態では通過移動不能な靴紐挿通孔10が設けられていることを特徴とする靴に係るものである。
【0008】
また、請求項2記載の靴において、前記靴紐挿通孔10は靴幅方向に延在するものであることを特徴とする靴に係るものである。
【0009】
また、請求項3記載の靴において、前記靴紐挿通孔10は靴長手方向に2つ並設されていることを特徴とする靴に係るものである。
【0010】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の靴において、前記覆い部7は前記舌部4の前記履き口5側の端部に連設される折り返し片により構成され、この折り返し片には前記止着部6を覆うように折り返した状態で前記舌部4に係止可能な係止部11が設けられていることを特徴とする靴に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、見栄えが良く靴紐による締め上げ状態を良好に維持できる、これまでにない靴となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】本実施例の靴紐止着状態の概略説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
靴紐3を紐通し孔1に挿通し、靴紐3の両端部が最後に通過した紐通し孔1から引き出された各小径変形部を引っ張り操作して締め上げ、当該靴紐3の両端部を止着部6に止着することで、靴紐3の両端部を靴に良好に固定することができる。
【0015】
さらに、覆い部7により止着部6を覆うことで、止着部6(および止着される靴紐3の両端部)を隠して外観をすっきりとした印象にすることができ、また、靴紐3の両端部の外部との干渉が抑制され、締め上げ状態を良好に維持することが可能となる。
【実施例0016】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施例は、
図1に図示したように、対向状態で複数の紐通し孔1が並設された一対の羽根部2および該紐通し孔1に挿通される靴紐3で構成された締付調整部と、前記羽根部2の裏側に設けられる舌部4と、履き口5とを有する靴であって、前記靴紐3は、少なくとも紐長手方向両端部に、前記紐通し孔1の孔径よりも大径に形成されると共に、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔1の孔径よりも小径に変形する小径変形部が設けられた小径変形部領域を有するものであり、前記舌部4の履き口5側の端部には、前記紐通し孔1に挿通された前記靴紐3の両端部の前記小径変形部を止着可能な止着部6と、前記止着部6を覆う開閉自在な覆い部7とが設けられているものである。
【0018】
本実施例は、靴紐3として、紐長手方向両端部に前記紐通し孔1の孔径よりも大径に形成されると共に、伸縮自在に弾性変形して引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔1の孔径よりも小径に変形するこぶ状部13aが(紐通し孔1より小径なこぶ連結部13bを介して)複数並設されたこぶ領域部13を有する靴紐3を採用している。
【0019】
この靴紐3は、前記紐通し孔1に挿通され前記足甲部に装着された状態にて最後に通過させる紐通し孔1を通過して引き出された前記こぶ領域部13を引っ張り操作することで、前記紐通し孔1の内側に係止するこぶ状部13aが前記引っ張り操作により伸長弾性変形して前記紐通し孔1よりも小径となり、前記紐通し孔1を通過移動して締め上げることができ、この締め上げ状態にて前記引っ張り操作を解除することで、前記紐通し孔1を通過した前記こぶ状部13aが、小径状態から紐通し孔1の孔径よりも大径なもとの状態(非変形状態)に戻り変形し、前記最後に通過した紐通し孔1に対して戻り通過移動不能な状態となる。
【0020】
また、本実施例の靴紐3としては、両端部に設けられる前記こぶ領域部13の間の略全域(長手方向中央部)にわたって紐通し孔1の孔径よりも小径で且つ略一定の太さに形成される太さ一定領域部14が設けられたものを採用している。なお、前記こぶ領域部13間に、上述の太さ一定領域部ではなく、紐通し孔1の孔径よりも小径な小径こぶ部が間隔をおいて複数並設された小径こぶ領域部13が設けられたものを採用しても良い。また、両端部にこぶ領域部13ではなく、紐通し孔1の孔径よりも大径に形成されると共に、伸縮自在に弾性変形して引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔1の孔径よりも小径に変形する大径な太さ一定領域部を設けた構成としても良い。
【0021】
また、本実施例のこぶ領域部13は、靴紐3全体の長さの1/4程度の長さに設定されている。すなわち、本実施例の靴紐3は、紐長手方向両側の各こぶ領域部13を合わせると、この靴紐3の約半分の長さをこのこぶ領域部13が占め、残りの半分を太さ一定領域部14が占める構成としている(太さ一定領域部14は、靴紐3の両側に設けられたこぶ領域部13の間の略全域にわたる長さに設定されている。)。具体的には、太さ一定領域部14は、靴の足甲部に靴紐3を装着した際(左右の羽根部2に設けられた紐通し孔1に左右交互に通し配設した際)、足甲部全体の1/2以上を占める(1/2以上にわたって通し配設される)長さに設定されている。
【0022】
羽根部2は足甲部の幅方向(靴幅方向)ほぼ中央位置に設けられている。
【0023】
羽根部2の裏側には舌部4が設けられている。舌部4の表側の面の履き口5側端部には、前記靴紐3の両端部を夫々止着可能な止着部6が設けられている。止着部6は舌部4の幅方向ほぼ中央位置に設けられている。図中、符号8は靴紐3の途中部が挿通される紐挿通部、9はセルチップが固着された固着部である。
【0024】
止着部6には、
図2に図示したように、紐通し孔1と同様に、こぶ状部等の小径変形部が小径状態では通過移動可能で、もとの大径状態では通過移動不能な靴紐挿通孔10が設けられている。靴紐挿通孔10は、靴幅方向(左右方向)に延在する直線孔であり、靴長手方向(前後方向)に2つほぼ平行に並設されている。靴紐挿通孔10はこぶ連結部13bより短い長さに設定する。なお、止着部6を舌部4の裏側の面に設ける構成としても良く、この場合には覆い部7は設けても設けなくても良い。また、やや大きめの靴紐挿通孔10を1つだけ設け、両端部の小径変形部双方を共に同一の靴紐挿通孔10に止着可能とする構成としても良い。
【0025】
この靴紐挿通孔10に最上位の紐通し孔1を通過した靴紐3の両端部(小径変形部)を、夫々上記同様に通過させ戻り通過不能とすることで、両端部を良好に止着することができる(
図3→
図4)。すなわち、本実施例は紐通し孔1の周縁部と止着部6とによる多重係止構造とされ、締め上げ状態を良好に保持し、靴紐3を結ばなくても靴1の足甲部2の緊締状態が良好に保持される。
【0026】
そして、
図5に図示したように、止着部6に止着した靴紐3の両端部(自由端部)は羽根部2の裏側に入れ込み、
図6に図示したように、覆い部7で覆うと、靴紐3の両端部がカバーされた状態となる。
【0027】
覆い部7は、舌部4の履き口5側端部に折り返し可能に連設された折り返し片により構成されている。この折り返し片には止着部6を覆うように折り返した状態で舌部4に係止可能な係止部11が設けられている。具体的には、この折り返し片(覆い部7)の止着部6と対向する側の面(折り返す前の表側の面)には、止着部6の靴長手方向前方側に設けられた被係止部12に係止する係止部11が設けられている。係止部11と被係止部12としては夫々、例えば面ファスナーのループ面とフック面とを採用できる。
【0028】
覆い部7は舌部4より幅狭の矩形状布片で、折り返して係止した際に止着部6とその近傍(止着部6に止着された靴紐3の両端部の少なくとも一部)を覆えるように構成されている。
【0029】
また、覆い部7を、靴紐3を通し締め付けた際の羽根部2間の間隔より大きい幅に設定すると、止着部6に止着した靴紐3の両端部を良好に隠すことが可能となる。
【0030】
本実施例は上述のように構成したから、靴紐3を紐通し孔1に挿通し、靴紐3の両端部が最後に通過した紐通し孔1から引き出された各小径変形部を引っ張り操作して締め上げ、当該靴紐3の両端部を止着部6に止着することで、靴紐3の両端部を靴に良好に固定することができる。
【0031】
さらに、覆い部7を閉じて止着部6(とその近傍)を覆うことで、止着部6および靴紐3の両端部を隠して外観をすっきりとした印象にすることができ、また、靴紐3の両端部の外部との干渉が抑制され、締め上げ状態を良好に維持することが可能となる。
【0032】
従って、本実施例は、見栄えが良く靴紐3による締め上げ状態を良好に維持できるものとなる。
【0033】
なお、図面では右足用の靴について説明しているが、左足用の靴についても(対称となるだけで)同様である。