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特開2024-170207アンカーフレーム、アンカーフレームを用いた基礎工法、及び基礎構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170207
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】アンカーフレーム、アンカーフレームを用いた基礎工法、及び基礎構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
E02D27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087237
(22)【出願日】2023-05-26
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139376
【弁理士】
【氏名又は名称】八代 則子
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】谷村 章
(72)【発明者】
【氏名】大橋 陽一
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA03
(57)【要約】
【課題】アンカーボルトの位置精度を向上することができるアンカーフレーム、アンカーフレームを用いた基礎工法、及び基礎構造物を提供する。
【解決手段】アンカーフレーム11は、均しコンクリート上に水平方向における一方向Xに間隔を置いて立設される一対の柱部14と、一方向Xに延びて一対の柱部14の上端部同士を連結し、且つアンカーボルトが一方向Xにおいて一対の柱部14と並ぶように着脱自在に取り付けられる取付孔24が設けられた梁部15と、水平方向であって一方向Xと直交する直交方向Yにおいて柱部14に対して隣接して配置されるとともに柱部14に対して斜めに延び、且つ一端部が柱部14に固定されるとともに他端部が均しコンクリート上に固定され、且つ長さを調節可能に構成された斜材17と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均しコンクリート上に水平方向における一方向に間隔を置いて立設される一対の柱部と、
前記一方向に延びて一対の前記柱部の上端部同士を連結し、且つアンカーボルトが前記一方向において一対の前記柱部と並ぶように着脱自在に取り付けられる取付部が設けられた梁部と、
水平方向であって前記一方向と交差する方向において前記柱部に対して隣接して配置されるとともに前記柱部に対して斜めに延び、且つ一端部が前記柱部に固定されるとともに他端部が前記均しコンクリート上に固定され、且つ長さを調節可能に構成された斜材と、
を備えることを特徴とするアンカーフレーム。
【請求項2】
前記取付部は、前記梁部における一対の前記柱部同士の間の位置に設けられていることを備えることを特徴とする請求項1に記載のアンカーフレーム。
【請求項3】
前記梁部は、一対の前記柱部の外側まで延びており、
前記取付部は、前記梁部における一対の前記柱部の外側の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンカーフレーム。
【請求項4】
前記梁部には、複数の前記取付部が間隔を置いて設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のアンカーフレーム。
【請求項5】
一対の前記柱部の高さを調整するための高さ調整機構を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のアンカーフレーム。
【請求項6】
請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のアンカーフレームを用いた基礎工法であって、
前記均しコンクリート上に、前記アンカーボルトが着脱自在に取り付けられた状態の前記アンカーフレームを固定する固定工程と、
前記均しコンクリート上にコンクリートを打設して布基礎を形成する布基礎形成工程と、
前記アンカーフレームの姿勢を微調整する微調整工程と、
前記布基礎形成工程で形成された前記布基礎上に前記コンクリートを打設して地中梁を形成する地中梁形成工程と、
前記アンカーフレームから前記アンカーボルトを取り外すとともに、前記アンカーフレームにおける前記地中梁形成工程で形成された前記地中梁よりも上側に突出した部分を除去する除去工程と、
を備えることを特徴とするアンカーフレームを用いた基礎工法。
【請求項7】
均しコンクリート上に形成されたコンクリート製の基礎と、
鉛直方向に延びるとともに前記基礎に埋設され、且つ上部が前記基礎の上面から突出するアンカーボルトと、
前記均しコンクリート上に立設され、且つ前記基礎に埋設されるとともに前記アンカーボルトと水平方向における一方向において並んで配置され、且つ前記アンカーボルトに沿って延びる一対の柱部と、
前記基礎に埋設され、且つ水平方向であって前記一方向と交差する方向において前記柱部に対して隣接して配置されるとともに前記柱部に対して斜めに延び、且つ一端部が前記柱部に固定されるとともに他端部が前記均しコンクリート上に固定され、且つ長さを調節可能に構成された斜材と、
を備えていることを特徴とする基礎構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーフレーム、アンカーフレームを用いた基礎工法、及び基礎構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンカーボルトが突出する基礎構造体の施工方法として、例えば特許文献1に示すものが知られている。こうした基礎構造体の施工方法では、まず、水平方向において対向する一対の型枠の上面間に支持材を架け渡した状態で、支持材を一対の型枠に取り付ける。続いて、一対の型枠間において支持材にアンカーボルトを吊り下げた状態で、一対の型枠の内側に生コンクリートを打設して基礎構造体を形成する。その後、基礎構造体から一対の型枠及び支持材を取り外す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-107633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような基礎構造体の施工方法では、生コンクリートの打設時の圧力や振動等によって一対の型枠自体が動いてしまうので、アンカーボルトの位置精度を確保することが困難である。したがって、基礎構造体におけるアンカーボルトの位置精度を向上する上では改善の余地を残すものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するためのアンカーフレーム、アンカーフレームを用いた基礎工法、及び基礎構造物の各態様を記載する。
[態様1]均しコンクリート上に水平方向における一方向に間隔を置いて立設される一対の柱部と、前記一方向に延びて一対の前記柱部の上端部同士を連結し、且つアンカーボルトが前記一方向において一対の前記柱部と並ぶように着脱自在に取り付けられる取付部が設けられた梁部と、水平方向であって前記一方向と交差する方向において前記柱部に対して隣接して配置されるとともに前記柱部に対して斜めに延び、且つ一端部が前記柱部に固定されるとともに他端部が前記均しコンクリート上に固定され、且つ長さを調節可能に構成された斜材と、を備えることを特徴とするアンカーフレーム。
【0006】
上記構成によれば、コンクリートの打設時の圧力等によって均しコンクリート上に立設された一対の柱部が水平方向であって一方向と交差する方向に傾いた場合、一対の柱部が傾く前の正規の位置に戻るように斜材の長さを変更することで、アンカーボルトの位置を修正することができる。このため、アンカーボルトの位置精度を向上することができる。
【0007】
[態様2]前記取付部は、前記梁部における一対の前記柱部同士の間の位置に設けられていることを備えることを特徴とする[態様1]に記載のアンカーフレーム。
上記構成によれば、アンカーフレームが所謂門型となるので、一対の柱部同士の間の位置において梁部の取付部にアンカーボルトが取り付けられることで、アンカーボルトをより安定して支持することができる。
【0008】
[態様3]前記梁部は、一対の前記柱部の外側まで延びており、前記取付部は、前記梁部における一対の前記柱部の外側の位置に設けられていることを特徴とする[態様1]に記載のアンカーフレーム。
【0009】
上記構成によれば、コンクリートの打設領域に配置されるアンカーボルトをコンクリートの打設領域の外側から支持することができる。
[態様4]前記梁部には、複数の前記取付部が間隔を置いて設けられていることを特徴とする[態様1]~[態様3]のうちいずれか一つに記載のアンカーフレーム。
【0010】
上記構成によれば、1つのアンカーフレームで複数のアンカーボルトを支持することができる。
[態様5]一対の前記柱部の高さを調整するための高さ調整機構を備えることを特徴とする[態様1]~[態様4]のうちいずれか一つに記載のアンカーフレーム。
【0011】
上記構成によれば、高さ調整機構によって一対の前記柱部の高さを調整することができるので、アンカーボルトの高さを容易に調整できる。
[態様6]上記構成のアンカーフレームを用いた基礎工法であって、前記均しコンクリート上に、前記アンカーボルトが着脱自在に取り付けられた状態の前記アンカーフレームを固定する固定工程と、前記均しコンクリート上にコンクリートを打設して布基礎を形成する布基礎形成工程と、前記アンカーフレームの姿勢を微調整する微調整工程と、前記布基礎形成工程で形成された前記布基礎上に前記コンクリートを打設して地中梁を形成する地中梁形成工程と、前記アンカーフレームから前記アンカーボルトを取り外すとともに、前記アンカーフレームにおける前記地中梁形成工程で形成された前記地中梁よりも上側に突出した部分を除去する除去工程と、を備えることを特徴とするアンカーフレームを用いた基礎工法。
【0012】
通常、布基礎形成工程において均しコンクリート上にコンクリートを打設して布基礎を形成する際には、コンクリートの圧力等によってアンカーフレームの姿勢が正規の姿勢からずれる。このため、このアンカーフレームに支持されたアンカーボルトの位置も正規の位置からずれてしまう。この点、上記工法によれば、布基礎形成工程においてアンカーフレームの姿勢が正規の姿勢からずれても、微調整工程においてアンカーフレームの姿勢を正規の姿勢に戻すことができる。これにより、アンカーフレームの姿勢の正規の姿勢からのずれに伴って正規の位置からずれたアンカーボルトの位置も正規の位置に戻すことができる。このため、アンカーボルトの位置精度を向上することができる。
【0013】
[態様7]均しコンクリート上に形成されたコンクリート製の基礎と、鉛直方向に延びるとともに前記基礎に埋設され、且つ上部が前記基礎の上面から突出するアンカーボルトと、前記均しコンクリート上に立設され、且つ前記基礎に埋設されるとともに前記アンカーボルトと水平方向における一方向において並んで配置され、且つ前記アンカーボルトに沿って延びる一対の柱部と、前記基礎に埋設され、且つ水平方向であって前記一方向と交差する方向において前記柱部に対して隣接して配置されるとともに前記柱部に対して斜めに延び、且つ一端部が前記柱部に固定されるとともに他端部が前記均しコンクリート上に固定され、且つ長さを調節可能に構成された斜材と、を備えていることを特徴とする基礎構造物。
【0014】
上記構成によれば、一対の柱部とアンカーボルトとを連結した状態で基礎の形成のためのコンクリートの打設時の圧力等によって一対の柱部が水平方向であって一方向と交差する方向に傾いた場合、一対の柱部が傾く前の正規の位置に戻るように斜材の長さを変更することで、アンカーボルトの位置を修正することができる。このため、アンカーボルトの位置精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、アンカーボルトの位置精度を向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アンカーフレームの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のアンカーフレームでアンカーボルトを支持したときの状態を示す斜視図である。
図3図2の状態のアンカーフレームを反対側から見たときの斜視図である。
図4図1のアンカーフレームの要部を示す側面拡大図である。
図5図2の状態のアンカーフレームを均しコンクリート上に固定したときの状態を示す側面図である。
図6図5において均しコンクリート上に布基礎を形成したときの状態を示す側面図である。
図7図6において布基礎上に地中梁を形成したときの状態を示す側面図である。
図8図7においてアンカーフレームにおける地中梁から露出した不要部分を除去するときの状態を示す側面図である。
図9】基礎構造物を示す正面図である。
図10】変更例のアンカーフレームでアンカーボルトを支持したときの状態を示す斜視図である。
図11】別の変更例のアンカーフレームでアンカーボルトを支持したときの状態を示す斜視図である。
図12図11のアンカーフレームの別の使用例を示す正面図である。
図13】さらに別の変更例のアンカーフレームでアンカーボルトを支持したときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、一実施形態を図面に従って説明する。
<アンカーフレーム11>
図1及び図2に示すように、アンカーフレーム11は、工事現場においてアンカーボルト12を建築構造物などの基礎に据え付けるための仮設材である。アンカーフレーム11は、金属によって構成されるとともに、ベース板13と、一対の柱部14と、梁部15と、一対の高さ調整機構16と、一対の斜材17とを備えている。
【0018】
<ベース板13>
図1図2及び図5に示すように、ベース板13は、水平方向における一方向Xに延びる矩形板状をなしている。ベース板13における一方向Xの両端部には、それぞれ貫通孔18が対をなすように形成されている。ベース板13は、各貫通孔18において例えば芯棒打ち込み式のアンカー(図示略)により、地面19上に形成された均しコンクリート20上に固定される。
【0019】
<柱部14>
図1図2及び図5に示すように、ベース板13上における一対の貫通孔18の内側には、一対の高さ調整機構16を介して一対の柱部14がそれぞれ立設されている。すなわち、一対の柱部14は、ベース板13及び一対の高さ調整機構16を介して均しコンクリート20上に一方向Xに間隔を置いて立設されている。各柱部14は、一例としてL型アングル(等辺山形鋼)によって構成される。
【0020】
<高さ調整機構16>
図1及び図4に示すように、一対の高さ調整機構16は、一対の柱部14の高さをそれぞれ調整するためのものである。各高さ調整機構16は、鉛直方向Zに延びる寸切りボルト21と、固定板22と、一対の第1ナット23とを備えている。固定板22は、略正方形状をなしている。固定板22は、柱部14を構成するL型アングルの下端における隣合う二つの内面に対して、隣合う二辺が溶接等によってそれぞれ固定されている。
【0021】
固定板22の中心部には孔(図示略)が貫通して形成されるとともに、当該孔に鉛直方向Zに延びる寸切りボルト21が挿通されている。一対の第1ナット23は、固定板22を隔てて対向するように寸切りボルト21に螺合されている。寸切りボルト21の下端は、溶接などによってベース板13上に固定されている。
【0022】
そして、高さ調整機構16によって柱部14の高さ調整を行う場合には、まず、一対の第1ナット23を固定板22から離れるように緩めた状態にする。引き続き、固定板22を柱部14と共に寸切りボルト21に沿って移動させることにより柱部14を所望の高さ位置に移動させた状態にする。この状態で、一対の第1ナット23で固定板22を挟んで締め付けることによって固定板22及び柱部14の位置を固定する。このようにして、柱部14の高さが調整される。
【0023】
<梁部15>
図1及び図2に示すように、梁部15は、一方向Xに延びるとともに、両端部が一対の柱部14の上端面にそれぞれ溶接等によって固定されている。すなわち、梁部15は、一対の柱部14の上端部同士を連結している。梁部15は、一例としてL型アングル(等辺山形鋼)によって構成される。
【0024】
梁部15における一方向Xの中央部には、鉛直方向Zに延びるアンカーボルト12が着脱自在に取り付けられる取付部の一例としての取付孔24が鉛直方向Zに貫通して形成されている。すなわち、取付孔24は、梁部15における一対の柱部14同士の間の位置に設けられている。
【0025】
アンカーボルト12は、その上端部を取付孔24に挿入した状態で当該上端部に螺合する一対の第2ナット25で梁部15を挟んで締め付けることによって梁部15の取付孔24に対して着脱自在に取り付けられる。この場合、アンカーボルト12は、一方向Xにおいて一対の柱部14と並ぶように取付孔24に取り付けられる。アンカーボルト12の下端部には、抜け止め用の円板26が一対の第3ナット27によって固定されている。
【0026】
<斜材17>
図3及び図5に示すように、一対の斜材17は、直線状に延びている。すなわち、斜材17は、直線状に延びる第1丸棒28と、直線状に延びる第2丸棒29と、直線状に延びる枠式ターンバックル30とを備えている。第1丸棒28の一端部には、右ねじ部が形成されている。第2丸棒29の一端部には、左ねじ部が形成されている。枠式ターンバックル30は、一端部に第1丸棒28の右ねじ部が螺合され、且つ他端部に第2丸棒29の左ねじ部が螺合されている。
【0027】
つまり、斜材17は、第1丸棒28と第2丸棒29とが枠式ターンバックル30を介して連結された構成になっている。第1丸棒28は、第2丸棒29よりも長さが短くなっている。斜材17は、枠式ターンバックル30を正方向に回転すると、第1丸棒28と第2丸棒29とが互いに近づくように移動するため、長さが短くなる。一方、斜材17は、枠式ターンバックル30を逆方向に回転すると、第1丸棒28と第2丸棒29とが離れるように移動するため、長さが長くなる。すなわち、斜材17は、枠式ターンバックル30を正方向または逆方向に回転させることで、長さが調節可能に構成されている。
【0028】
一対の斜材17は、第1丸棒28が上側となる姿勢で一対の柱部14に対してそれぞれ隣接して立てかけられるようにして配置されている。一対の斜材17は、一対の柱部14に対してそれぞれ斜めに延びるように配置されている。一対の斜材17は、水平方向であって一方向Xと直交(交差)する方向である直交方向Yにおける一方側から一対の柱部14に対してそれぞれ隣接して配置されている。
【0029】
各斜材17は、一端部となる第1丸棒28の上端部が、隣接する柱部14における中央部よりもやや下部寄りの位置に固定されるとともに、他端部となる第2丸棒29の下端部が均しコンクリート20上に固定されている。この場合、各斜材17は、例えば、一端部が隣接する柱部14に対して溶接によって固定されるとともに、他端部が固定用金具(図示略)などを介して芯棒打ち込み式のアンカー(図示略)によって均しコンクリート20上に固定される。
【0030】
<アンカーフレーム11を用いた基礎工法>
アンカーフレーム11を用いた基礎工法は、固定工程と、布基礎形成工程と、微調整工程と、地中梁形成工程と、除去工程とを備えている。
【0031】
<固定工程>
図5に示すように、固定工程では、予めアンカーボルト12が梁部15の取付孔24に取り付けられた状態のアンカーフレーム11を墨出しされた水平な均しコンクリート20上の所定位置に固定する。すなわち、アンカーフレーム11を均しコンクリート20上の所定位置に鉛直面に沿って立てた状態で、ベース板13及び各斜材17の下端部を均しコンクリート20上に芯棒打ち込み式のアンカー(図示略)などによって固定する。その後、均しコンクリート20からのアンカーボルト12の高さが所定の高さ位置となるように、一対の高さ調整機構16によって一対の柱部14の高さを調整する。
【0032】
<布基礎形成工程>
図6に示すように、布基礎形成工程では、均しコンクリート20上にコンクリートを打設して布基礎31を形成する。このとき、布基礎31は、アンカーフレーム11における一対の柱部14の下端部及び一対の斜材17の第2丸棒29のほとんどを覆う高さまで形成される。したがって、一対の斜材17の枠式ターンバックル30は、布基礎31によって覆われない。この場合、アンカーフレーム11の一対の柱部14は、布基礎31を形成するコンクリートの打設時の圧力などにより、直交方向Yにおいて倒れるように僅かに傾く。
【0033】
<微調整工程>
図6に示すように、微調整工程では、アンカーフレーム11の一対の柱部14の姿勢を微調整する。すなわち、微調整工程では、上記布基礎形成工程において傾いてしまったアンカーフレーム11の一対の柱部14が、傾く前の正規の位置に戻るように枠式ターンバックル30を回転させて一対の斜材17の長さを変更する。
【0034】
このとき、アンカーフレーム11の一対の柱部14が直交方向Yにおける一対の斜材17側に傾いていた場合には、一対の斜材17の長さが長くなるように枠式ターンバックル30を回転させる。この枠式ターンバックル30の回転量を適切に調整することで、一対の柱部14が一対の斜材17によって押圧されるので、一対の柱部14が傾く前の正規の位置に戻される。
【0035】
一方、アンカーフレーム11の一対の柱部14が直交方向Yにおける一対の斜材17側とは反対側に傾いていた場合には、一対の斜材17の長さが短くなるように枠式ターンバックル30を回転させる。この枠式ターンバックル30の回転量を適切に調整することで、一対の柱部14が一対の斜材17によって引っ張られるので、一対の柱部14が傾く前の正規の位置に戻される。
【0036】
なお、微調整工程は、布基礎31を構成するコンクリートが固まる前に行ってもよいし、布基礎31を構成するコンクリートが固まった後に行ってもよい。
<地中梁形成工程>
図7に示すように、地中梁形成工程では、上記布基礎形成工程で形成された布基礎31上にコンクリートを打設して地中梁32を形成する。このとき、アンカーフレーム11及びアンカーボルト12の大半は地中梁32に覆われるが、一対の柱部14の上端部、アンカーボルト12の上部、及び梁部15は、地中梁32から露出する。
【0037】
地中梁形成工程は、既にアンカーフレーム11の一対の柱部14が布基礎31によって強固に固定された状態で行われる。このため、アンカーフレーム11の一対の柱部14は、地中梁32を形成するためのコンクリートの打設時の圧力などによって傾くことはほとんどない。
【0038】
<除去工程>
図8に示すように、除去工程では、アンカーフレーム11の梁部15の取付孔24(図1参照)からアンカーボルト12を一対の第2ナット25と共に取り外すとともに、アンカーフレーム11における地中梁形成工程で形成された地中梁32よりも上側に突出した部分を切断して除去する。すなわち、アンカーフレーム11の一対の柱部14を地中梁32の上面に沿って切断することで、一対の柱部14の上端部及びこれらを連結する梁部15を除去する。この場合、一対の第2ナット25は、アンカーボルト12に螺合させた状態にする。これにより、図9に示す基礎構造物33が得られる。
【0039】
<基礎構造物33>
図9に示すように、基礎構造物33は、コンクリート製の基礎34と、アンカーボルト12と、アンカーフレーム11の一部とを備えている。基礎34は、均しコンクリート20上に形成されたコンクリート、すなわち図8に示す布基礎31及び地中梁32によって構成される。アンカーボルト12は、鉛直方向Zに延びるとともに上部以外の部分が基礎34に埋設され、且つ上部が基礎34の上面から突出している。
【0040】
基礎構造物33を構成するアンカーフレーム11の一部は、アンカーフレーム11における一対の柱部14の上端部から上側の部分以外の部分であって基礎34に埋設された部分である。アンカーフレーム11の一部には、一対の斜材17が含まれる。一対の柱部14における上端部よりも下側の部分は、基礎34に埋設されるとともにアンカーボルト12と一方向Xにおいて並んで配置され、且つアンカーボルト12に沿って延びている。基礎34の上部には、一対の柱部14が切断された痕である切断痕35が存在している。この場合、切断痕35を基礎34の上面に露出させてもよいし、基礎34の上面を補修することによって切断痕35を基礎34の上面に露出させないようにしてもよい。
【0041】
<実施形態の作用>
基礎構造物33は、上述したアンカーフレーム11を用いた基礎工法によって形成される。この工法では、微調整工程を有しているため、アンカーボルト12を支持した状態のアンカーフレーム11の正規の位置に対する位置精度が高くなる。このため、基礎構造物33におけるアンカーボルト12の正規の位置に対する位置精度も高くなる。
【0042】
したがって、基礎構造物33上に建築構造物が建設される場合、建築構造物がアンカーボルト12と高い精度で連結される。この結果、建築構造物がアンカーボルト12によって安定した状態で固定される。
【0043】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)アンカーフレーム11は、均しコンクリート20上に水平方向における一方向Xに間隔を置いて立設される一対の柱部14と、一方向Xに延びて一対の柱部14の上端部同士を連結し、且つアンカーボルト12が一方向Xにおいて一対の柱部14と並ぶように着脱自在に取り付けられる取付孔24が設けられた梁部15と、直交方向Yにおいて柱部14に対して隣接して配置されるとともに柱部14に対して斜めに延び、且つ一端部が柱部14に固定されるとともに他端部が均しコンクリート20上に固定され、且つ長さを調節可能に構成された斜材17と、を備える。
【0044】
上記構成によれば、コンクリートの打設時の圧力等によって均しコンクリート20上に立設された一対の柱部14が直交方向Yに傾いた場合、一対の柱部14が傾く前の正規の位置に戻るように斜材17の長さを変更することで、アンカーボルト12の位置を修正することができる。このため、アンカーボルト12の位置精度を向上することができる。
【0045】
(2)アンカーフレーム11において、取付孔24は、梁部15における一対の柱部14同士の間の位置に設けられている。
上記構成によれば、アンカーフレーム11が所謂門型となるので、一対の柱部14同士の間の位置において梁部15の取付孔24にアンカーボルト12が取り付けられることで、アンカーボルト12をより安定して支持することができる。
【0046】
(3)アンカーフレーム11は、一対の柱部14の高さを調整するための高さ調整機構16を備える。
上記構成によれば、高さ調整機構16によって一対の柱部14の高さを調整することができるので、アンカーボルト12の高さを容易に調整できる。
【0047】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
図10に示すように、アンカーフレーム11において、一方向Xにおけるベース板13及び梁部15の長さを長くし、且つ梁部15にはアンカーボルト12が取り付けられる複数(図10では3つ)の取付孔24(図1参照)を、適宜間隔を置いて設けるようにしてもよい。このようにすれば、1つのアンカーフレーム11で複数のアンカーボルト12を支持することができる。
【0049】
図11に示すように、アンカーフレーム11における梁部15の一端側を一対の柱部14の外側まで延びるように構成し、且つ取付孔24(図1参照)を梁部15における一対の柱部14の外側の位置に設けるようにしてもよい。このようにしても、上記(1)と同様の作用効果を得ることができる。この場合、一対の柱部14の下部同士を連結する連結フレーム36を設けるようにしてもよい。
【0050】
図12に示すように、上記図11のアンカーフレーム11において梁部15の一端側をさらに長くし、且つ長くした梁部15の一端側の先端部にアンカーボルト12が取り付けられる取付孔24(図1参照)を設けるようにしてもよい。このようにすれば、アンカーフレーム11により、コンクリートの打設領域37に配置されるアンカーボルト12をコンクリートの打設領域37の外側から片持ち支持することができる。このため、アンカーフレーム11がコンクリートに埋設されないので、アンカーボルト12の設置後にアンカーフレーム11を再利用することができる。加えて、コンクリートの打設領域37の幅が狭い場合、アンカーフレーム11をコンクリートに埋設する形態でアンカーボルト12をコンクリートに設置すると、アンカーフレーム11がコンクリートからはみ出すことがあるという問題がある。こうした問題がある場合には、上述のように、コンクリートの打設領域37に配置されるアンカーボルト12を、コンクリートの打設領域37の外側からアンカーフレーム11によって片持ち支持するようにすればよい。このようにすれば、アンカーフレーム11をコンクリートに埋設しない形態でアンカーボルト12をコンクリートに設置することができるので、上記問題を解決できる。
【0051】
図13に示すように、アンカーフレーム11において、斜材17は、一対の柱部14に対して直交方向Yの両側に隣接して配置するようにしてもよい。
・取付孔24の代わりに、取付部として切欠部を採用してもよい。
【0052】
・高さ調整機構16は、省略してもよい。
・除去工程において、アンカーフレーム11における地中梁形成工程で形成された地中梁32よりも上側に突出した部分を予め別部材として着脱自在に構成しておき、当該別部材を取り外すことによって除去するようにしてもよい。この場合、アンカーフレーム11における地中梁形成工程で形成された地中梁32の上面から下側の部分と上記別部材とは、例えば、ねじ締結や凹凸嵌合などによって着脱自在に連結される。
【符号の説明】
【0053】
11…アンカーフレーム
12…アンカーボルト
13…ベース板
14…柱部
15…梁部
16…高さ調整機構
17…斜材
18…貫通孔
19…地面
20…コンクリート
21…寸切りボルト
22…固定板
23…第1ナット
24…取付部の一例としての取付孔
25…第2ナット
26…円板
27…第3ナット
28…第1丸棒
29…第2丸棒
30…枠式ターンバックル
31…布基礎
32…地中梁
33…基礎構造物
34…基礎
35…切断痕
36…連結フレーム
37…打設領域
X…一方向
Y…直交方向
Z…鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13