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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170210
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】通信設計装置、通信設計方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 3/16 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
H04J3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087240
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 裕司
(72)【発明者】
【氏名】早川 仁
(72)【発明者】
【氏名】武藤 勇太
(72)【発明者】
【氏名】三村 和
【テーマコード(参考)】
5K028
【Fターム(参考)】
5K028BB01
5K028DD01
5K028DD02
5K028DD04
5K028EE05
5K028EE10
5K028JJ02
5K028LL13
(57)【要約】
【課題】通信要件の異なる様々なアプリケーションの要求に従って通信が行われるネットワークに対して、最適な通信設計を実現可能な技術を提供する。
【解決手段】通信設計装置22は、時刻保証アプリケーション毎に許容される通信の遅延時間の長さを示す遅延許容時間と、時刻保証アプリケーション毎に定められた通信データのパケット長と、を表す通信要件情報を記憶する通信要件記憶部50と、アプリケーション毎に通信のタイムスロットを割り当てるスケジュール設定部51と、を備える。スケジュール設定部51は、複数の時刻保証アプリケーションに係る遅延許容時間に基づいて、タイムスロットの周期を設定し、複数の時刻保証アプリケーションに係るパケット長に基づいて、タイムスロットの長さを設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置が接続され、アプリケーションの要求に従って前記複数の通信装置が互いに通信を行うネットワークの通信設計を行う装置であって、
前記アプリケーション毎に許容される前記通信の遅延時間の長さを示す遅延許容時間と、前記アプリケーション毎に定められた通信データのパケット長と、を記憶する通信要件記憶部と、
前記アプリケーション毎に前記通信のタイムスロットを割り当てるスケジュール設定部と、を備え、
前記スケジュール設定部は、
複数の前記アプリケーションに係る前記遅延許容時間に基づいて、前記タイムスロットの周期を設定し、
複数の前記アプリケーションに係る前記パケット長に基づいて、前記タイムスロットの長さを設定する、通信設計装置。
【請求項2】
請求項1に記載された通信設計装置であって、
前記スケジュール設定部は、同一の前記遅延許容時間を有する複数の前記アプリケーションに同一周期の前記タイムスロットを割り当てる、通信設計装置。
【請求項3】
請求項2に記載された通信設計装置であって、
前記スケジュール設定部は、同一周期の前記タイムスロットが割り当てられた複数の前記アプリケーションに係る前記パケット長に基づいて、当該タイムスロットの長さを設定する、通信設計装置。
【請求項4】
請求項3に記載された通信設計装置であって、
前記スケジュール設定部は、同一周期の前記タイムスロットが割り当てられた複数の前記アプリケーションに係る前記パケット長の合計値と、前記通信装置におけるスイッチ処理に要する時間であるスイッチ遅延時間の前記ネットワーク内での合計値と、前記通信の伝送に要する時間である伝送遅延時間の前記ネットワーク内での合計値と、の和に基づいて、当該タイムスロットの長さを設定する、通信設計装置。
【請求項5】
請求項1に記載された通信設計装置であって、
前記アプリケーションには、時刻保証が必要な通信を行う第一のアプリケーション群と、帯域保証が必要な通信を行う第二のアプリケーション群と、が含まれ、
前記スケジュール設定部は、
前記第一のアプリケーション群に属する各アプリケーションの前記遅延許容時間に応じて、前記第一のアプリケーション群に割り当てる一又は複数の前記タイムスロットを決定し、
前記第一のアプリケーション群に割り当てる前記タイムスロットの決定後、前記第二のアプリケーション群に割り当てる一又は複数の前記タイムスロットを決定する、通信設計装置。
【請求項6】
請求項5に記載された通信設計装置であって、
前記第二のアプリケーション群に割り当てる前記タイムスロットには、所定の通信帯域を保証する一又は複数のクラスが設定され、
前記スケジュール設定部は、前記第二のアプリケーション群に属する各アプリケーションを一以上のグループに分け、前記グループ毎に前記通信の帯域に応じて前記クラスを割り当てる、通信設計装置。
【請求項7】
請求項6に記載された通信設計装置であって、
前記スケジュール設定部は、
前記ネットワークにおける通信経路に応じて前記グループを設定し、
前記グループ毎に、前記通信経路に含まれる各リンクの使用可能帯域および使用可能クラス数を計算し、
前記通信経路上のいずれかのリンクにおいて、同一の前記グループに属する各アプリケーションの前記通信の合計帯域が前記使用可能帯域を上回るか、又は、同一の前記グループに属する各アプリケーションの前記通信の合計クラス数が前記使用可能クラス数を上回る場合に、前記第二のアプリケーション群の要求に係る前記通信の負荷を、複数の前記通信経路に分散させる、通信設計装置。
【請求項8】
請求項7に記載された通信設計装置であって、
前記ネットワークは、車両に搭載された前記複数の通信装置が互いに通信を行う車載ネットワークであり、
前記複数の通信装置は、少なくとも前記車両の前方および後方に配置されており、
前記スケジュール設定部は、前記第二のアプリケーション群の要求に係る前記通信の少なくとも一部について、前記車両の前方に配置された前記通信装置の間を経由する前記通信経路から、前記車両の後方に配置された前記通信装置の間を経由する前記通信経路に変更することで、前記通信の負荷を分散させる、通信設計装置。
【請求項9】
請求項1に記載された通信設計装置であって、
前記ネットワークにおける前記通信装置の接続関係および動作状態を含むネットワーク情報を収集するネットワーク情報収集部と、
前記スケジュール設定部にて設定された前記タイムスロットに関するタイムスロット情報を記憶するスケジュール記憶部と、をさらに備え、
前記スケジュール設定部は、前記ネットワークに新たなアプリケーションが追加された場合、前記ネットワークから前記アプリケーションが削除された場合、前記遅延許容時間又は前記パケット長が変化した場合、および、前記ネットワーク情報収集部が収集した前記ネットワーク情報が変化した場合、の少なくとも一つの条件を満たすときに、前記スケジュール記憶部に記憶された前記タイムスロット情報に基づいて、前記タイムスロットの周期又は長さを再設定する、通信設計装置。
【請求項10】
請求項1に記載された通信設計装置であって、
前記ネットワークにおける前記通信装置の接続関係および動作状態を含むネットワーク情報を収集するネットワーク情報収集部と、
前記アプリケーションにおける通信要件のうち前記遅延許容時間を含む通信性能要件の充足状況を前記アプリケーション毎に監視し、前記通信性能要件を満足しないアプリケーションがある場合に当該アプリケーションを特定する通信性能監視部と、
前記スケジュール設定部にて設定された前記タイムスロットに関するタイムスロット情報を記憶するスケジュール記憶部と、をさらに備え、
前記スケジュール設定部は、前記ネットワークに新たなアプリケーションが追加された場合、前記ネットワークから前記アプリケーションが削除された場合、前記遅延許容時間又は前記パケット長が変化した場合、前記ネットワーク情報収集部が収集した前記ネットワーク情報が変化した場合、および、前記通信性能監視部が前記通信性能要件を満足しないアプリケーションを特定した場合、の少なくとも一つの条件を満たすときに、前記スケジュール記憶部に記憶された前記タイムスロット情報に基づいて、前記タイムスロットの周期又は長さを再設定する、通信設計装置。
【請求項11】
請求項1に記載された通信設計装置であって、
前記ネットワークは車両に搭載されており、
前記車両の制御に関する前記アプリケーションの通信要件に関する情報を入力とし、前記ネットワークの通信制御に関する設定情報を出力する、通信設計装置。
【請求項12】
請求項1に記載された通信設計装置であって、
前記ネットワークとともに車両に搭載されており、
前記ネットワークでは、前記車両の制御に関する複数の前記アプリケーションの要求に従って、前記車両に搭載された複数の前記通信装置が互いに通信を行い、
前記車両内で前記ネットワークの通信スケジュールを再設定する、通信設計装置。
【請求項13】
複数の通信装置が接続され、アプリケーションの要求に従って前記複数の通信装置が互いに通信を行うネットワークの通信設計を行う方法であって、
前記アプリケーション毎に許容される前記通信の遅延時間の長さを示す遅延許容時間と、前記アプリケーション毎に定められた通信データのパケット長と、をコンピュータに記憶し、
前記コンピュータにより、前記アプリケーション毎に前記通信のタイムスロットを割り当て、
前記タイムスロットの割り当てでは、
複数の前記アプリケーションに係る前記遅延許容時間に基づいて、前記タイムスロットの周期を設定し、
複数の前記アプリケーションに係る前記パケット長に基づいて、前記タイムスロットの長さを設定する、通信設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークの通信設計を行う装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)により構成される車載ネットワークのように、複数種類のアプリケーションによる通信が並行して行われ、遅延許容時間などの通信要件がアプリケーションごとに異なる通信ネットワークが知られている。こうした通信ネットワークでは、全てのアプリケーションの通信要件を確実に保証しなければならないため、アプリケーションごとに適切な通信タイミングを設定する通信設計を行うことが重要となる。
【0003】
ネットワークにおける通信データのリアルタイム性を保証する技術として、例えばTSN(Time-Sensitive Networking)が知られている。TSNは、標準のイーサネット(登録商標)を拡張した通信方式として規定されており、イーサネット通信でのリアルタイム性を実現するものである。TSNの規格にはネットワーク内での時刻同期方式(IEEE 802.1AS)、Credit-based Shaperによる送信帯域を保証する方式(IEEE 802.1Qav)、および、同期された時刻に対して事前に設定されたタイムスロットごとに通信を行う方式(IEEE 802.1Qbv)などが含まれる。
【0004】
近年、アプリケーションごとに異なる通信要件を最適化問題として捉え、これを解くことで最適な通信設計を実現する手法が提案されている。例えば特許文献1には、無線通信システムに含まれる全ての機器の情報に基づいて共通に定義したタイムスロットを用いることで、1つのチャネルを多数の無線システムが時分割で使用することができ、また、各通信機器が送信しようとしているトラフィックについて、送信タイミング、許容遅延量を考慮したカウンタ値であって、タイムスロット長を単位とする整数値により表されるカウンタ値を設定し、当該カウンタ値に基づいて、各タイムスロットで送信すべきトラフィックを特定する無線通信方法が記載されている。この無線通信方法によれば、各タイムスロットをどのタイミングで送信するのが良いのかという組み合わせ最適化問題を簡単な手法により解くことができるため、多数の無線通信機器が存在している狭空間であっても、トラフィックの送信タイミングを適切に制御することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-155857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の手法では、各アプリケーションの通信要件を考慮せずにタイムスロットを事前に定義する必要があるため、アプリケーションごとに異なる通信要件に応じた適切なタイムスロット幅を設定することが困難であり、その結果、最適な通信設計を実現できないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、通信要件の異なる様々なアプリケーションの要求に従って通信が行われるネットワークに対して、最適な通信設計を実現可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による通信設計装置は、複数の通信装置が接続され、アプリケーションの要求に従って前記複数の通信装置が互いに通信を行うネットワークの通信設計を行う装置であって、前記アプリケーション毎に許容される前記通信の遅延時間の長さを示す遅延許容時間と、前記アプリケーション毎に定められた通信データのパケット長と、を記憶する通信要件記憶部と、前記アプリケーション毎に前記通信のタイムスロットを割り当てるスケジュール設定部と、を備え、前記スケジュール設定部は、複数の前記アプリケーションに係る前記遅延許容時間に基づいて、前記タイムスロットの周期を設定し、複数の前記アプリケーションに係る前記パケット長に基づいて、前記タイムスロットの長さを設定する。
本発明による通信設計方法は、複数の通信装置が接続され、アプリケーションの要求に従って前記複数の通信装置が互いに通信を行うネットワークの通信設計を行う方法であって、前記アプリケーション毎に許容される前記通信の遅延時間の長さを示す遅延許容時間と、前記アプリケーション毎に定められた通信データのパケット長と、をコンピュータに記憶し、前記コンピュータにより、前記アプリケーション毎に前記通信のタイムスロットを割り当て、前記タイムスロットの割り当てでは、複数の前記アプリケーションに係る前記遅延許容時間に基づいて、前記タイムスロットの周期を設定し、複数の前記アプリケーションに係る前記パケット長に基づいて、前記タイムスロットの長さを設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信要件の異なる様々なアプリケーションの要求に従って通信が行われるネットワークに対して、最適な通信設計を実現可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の通信設計装置が通信設計を行うネットワークの例を示す図である。
図2】車載ネットワークにおける各通信装置の構成例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る通信設計装置を含むシステムの構成例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る通信設計装置の構成を示す機能ブロック図である。
図5】車載ネットワークの通信スケジュールの例を示す図である。
図6】時刻保証通信要件テーブルの例を示す図である。
図7】帯域保証通信要件テーブルの例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る通信設計装置における通信スケジュールの設定方法を説明するフローチャートである。
図9】時刻保証通信のスケジュール計算処理の流れを示すフローチャートである。
図10】時刻保証通信のスケジュール計算処理によって時刻保証アプリケーションに割り当てられるタイムスロットの例を示す図である。
図11】時刻保証通信のスケジュール計算処理結果の例を示す図である。
図12】帯域保証通信の通信経路計算処理の流れを示すフローチャートである。
図13】リンク使用情報の例を示す図である。
図14】ネットワーク設計データの例を示す図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る通信設計装置を含むシステムの構成例を示す図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る通信設計装置の構成を示す機能ブロック図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る通信設計装置における通信スケジュールの再設定方法を説明するフローチャートである。
図18】時刻保証通信のスケジュール再計算処理の流れを示すフローチャートである。
図19】帯域保証通信の通信経路再計算処理の流れを示すフローチャートである。
図20】本発明の第3の実施形態に係る通信設計装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の通信設計装置について図面を参照して説明する。
【0012】
(ネットワーク構成)
図1は、本発明の通信設計装置が通信設計を行うネットワークの例として、自動車で用いられる車載ネットワークの構成例を示す図である。図1において、(a)はドメイン別アークテクチャによる車載ネットワークの構成例を示し、(b)はゾーンアークテクチャによる車載ネットワークの構成例を示している。
【0013】
図1の(a)、(b)にそれぞれ示す車載ネットワーク20は、車両1に搭載されており、車両1の運行時に利用される各種アプリケーションによる通信を行う。図1(a)に示したドメイン別アークテクチャの構成例では、車載ネットワーク20は、ゲートウェイ2と、ドメイン別に組み合わされた複数のドメインECU3、センサ4およびアクチュエータ5と、TCU(Telematics Control Unit)7とが互いに接続されることによって構成される。
【0014】
ドメインECU3は、所定のアプリケーションをそれぞれ実行し、信号線6を介して接続されたセンサ4やアクチュエータ5との間で各種信号を送受信するとともに、ゲートウェイ2を介して、それぞれが実行するアプリケーションの要求に従って互いに通信を行う。ドメインECU3は、例えば、車両1のADAS(Advanced Driver Assistance Systems)に関連するアプリケーションを実行するドメインECU3a、車両1の走行制御に関するアプリケーションを実行するドメインECU3b、車両1の電装品に関するアプリケーションを実行するドメインECU3c、車両1に搭載されているインフォテインメント機器(ナビゲーション装置、オーディオ装置等)に関するアプリケーションを実行するドメインECU3d等を含んで構成される。なお、これ以外のアプリケーションを実行するドメインECU3をさらに含んでもよいし、ドメインECU3a~3dに置き換えてもよい。
【0015】
ドメインECU3a~3dには、信号線6a~6dを介してセンサ4a~4dとアクチュエータ5a~5dがそれぞれ接続されている。ドメインECU3a~3dは、センサ4a~4dから受信するセンサ信号に基づいてアクチュエータ5a~5dをそれぞれ制御するとともに、センサ4a~4dのセンサ信号に関する通信データや、アクチュエータ5a~5dの制御に関する通信データを、ゲートウェイ2を介して互いに送受信し、アクチュエータ5a~5dの制御などに利用することができる。
【0016】
TCU7は、所定の通信相手(例えば、車両1を含む複数の車両の管制を行う車両管制装置や、車両1の周囲に存在する他車両)との間で無線通信を行う装置である。TCU7とドメインECU3a~3dは、ゲートウェイ2を介して互いに接続されている。このTCU7を用いることで、図1(a)の車載ネットワーク20は、ドメインECU3a~3dの間で送受信される通信データを通信相手へ送信したり、通信相手から受信した通信データをドメインECU3a~3dへ提供したりすることができる。
【0017】
ゲートウェイ2は、ドメインECU3a~3dおよびTCU7の間で通信データを送受信する際に必要な通信制御を行う装置である。ドメインECU3a~3dやTCU7は、ゲートウェイ2を介することで互いに通信を行うことができる。
【0018】
図1(b)に示したゾーンアークテクチャの構成例では、車載ネットワーク20は、セントラルECU8と、ゾーン別に組み合わされた複数のゾーンECU9、センサ4およびアクチュエータ5と、TCU7とが互いに接続されることによって構成される。
【0019】
ゾーンECU9は、所定のアプリケーションをそれぞれ実行し、車両1内でゾーン毎に配置されたセンサ4やアクチュエータ5との間で各種信号を送受信するとともに、セントラルECU8や共有バス10を介して、それぞれが実行するアプリケーションの要求に従って互いに通信を行う。ゾーンECU9は、例えば、車両1の前方の右側と左側にそれぞれ配置されて所定のアプリケーションを実行するゾーンECU9aおよび9b、車両1の後方の右側と左側にそれぞれ配置されて所定のアプリケーションを実行するゾーンECU9cおよび9d等を含んで構成される。なお、これ以外の場所に配置されたゾーンECU9をさらに含んでもよいし、ゾーンECU9a~9dに置き換えてもよい。
【0020】
ゾーンECU9a~9dには、信号線や通信バスを介してセンサ4a~4dとアクチュエータ5a~5dがそれぞれ接続されている。ゾーンECU9a~9dは、図1(a)のドメインECU3a~3dと同様に、センサ4a~4dから受信するセンサ信号に基づいてアクチュエータ5a~5dをそれぞれ制御するとともに、センサ4a~4dのセンサ信号に関する通信データや、アクチュエータ5a~5dの制御に関する通信データを、セントラルECU8や共有バス10を介して互いに送受信し、アクチュエータ5a~5dの制御などに利用することができる。
【0021】
TCU7は、図1(a)と同様の動作を行う。このTCU7を用いることで、図1(b)の車載ネットワーク20は、セントラルECU8やゾーンECU9a~9dの間で送受信される通信データを通信相手へ送信したり、通信相手から受信した通信データをセントラルECU8やゾーンECU9a~9dへ提供したりすることができる。
【0022】
図2は、図1に示した車載ネットワーク20における各通信装置(ドメインECU3、ゾーンECU9、ゲートウェイ2、セントラルECU8)の構成例を示す図である。
【0023】
図2(a)は、ドメインECU3の構成例を示している。図2(a)に示すように、ドメインECU3は、CPU11とメモリ12を備えて構成される。CPU11は、メモリ12に記憶された各種データやプログラムを用いて所定の処理を実行することで、ドメインECU3の機能に応じたアプリケーションを実行する。このアプリケーションの要求に従って、CPU11とゲートウェイ2の間で通信が行われるとともに、CPU11とセンサ4やアクチュエータ5との間で各種信号が送受信される。
【0024】
図2(b)は、ゾーンECU9の構成例を示している。図2(b)に示すように、ゾーンECU9は、CPU11、メモリ12およびネットワークスイッチ13を備えて構成される。ネットワークスイッチ13は、他のゾーンECU9やセントラルECU8との間で送受信される通信データに対する通信制御処理を行う。CPU11は、メモリ12に記憶された各種データやプログラムを用いて所定の処理を実行することで、ゾーンECU9の機能に応じたアプリケーションを実行する。このアプリケーションの要求に従って、CPU11と他のゾーンECU9やセントラルECU8との間でネットワークスイッチ13を介したネットワーク通信が行われるとともに、CPU11とセンサ4やアクチュエータ5との間で各種信号が送受信される。
【0025】
図2(c)は、ゲートウェイ2の構成例を示している。図2(c)に示すように、ゲートウェイ2は、CPU11、メモリ12およびネットワークスイッチ13を備えて構成される。CPU11は、メモリ12に記憶された各種データやプログラムを用いて所定の処理を実行することで、ネットワークスイッチ13の動作を制御する。ネットワークスイッチ13は、CPU11の制御に応じて動作し、各ドメインECU3間で送受信される通信データに対する通信制御処理を行う。
【0026】
図2(d)は、セントラルECU8の構成例を示している。図2(d)に示すように、セントラルECU8は、CPU11、メモリ12およびネットワークスイッチ13を備えて構成される。CPU11は、メモリ12に記憶された各種データやプログラムを用いて所定の処理を実行することで、ネットワークスイッチ13の動作を制御するとともに、所定のアプリケーションを実行する。ネットワークスイッチ13は、CPU11の制御に応じて動作し、ゾーンECU9との間で送受信される通信データに対する通信制御処理を行う。
【0027】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態に係る通信設計装置について、以下に図3図14を参照して説明する。なお、本実施形態では、図1で説明した車載ネットワーク20の通信設計を事前に行い、その設計結果を車載ネットワーク20に反映させる通信設計装置の例を説明する。
【0028】
(システム構成)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る通信設計装置を含むシステムの構成例を示す図である。図3に示すシステムは、車両1の車載ネットワーク20に対して通信設定を行うシステムであり、設計拠点30に設けられたネットワーク情報入力装置21および通信設計装置22と、製造拠点31に設けられた通信設定装置23と、を含んで構成される。
【0029】
ネットワーク情報入力装置21は、車載ネットワーク20の通信設計を行う際に必要なネットワーク情報を通信設計装置22に入力する。ネットワーク情報入力装置21は、例えば設計拠点30に勤務している設計者からの操作を受け付け、この操作によって指定されたネットワーク情報を、車載ネットワーク20の通信設計に対する前提条件として設定し、通信設計装置22に入力することができる。
【0030】
通信設計装置22は、ネットワーク情報入力装置21から入力されるネットワーク情報に基づき、車載ネットワーク20の通信設計を自動的に行う。このとき、設計者からの操作を受け付け、この操作によって指定された各アプリケーションの通信要件を満たすように、各アプリケーションに係る通信の設定条件を決定する。通信設計装置22による通信設計の結果は、車載ネットワーク20に対するネットワーク設計データ40として、通信設計装置22から通信設定装置23へ送信される。なお、通信設計装置22の詳細については後述する。
【0031】
通信設定装置23は、通信設計装置22から送信されるネットワーク設計データ40に基づき、車載ネットワーク20における各通信装置(ドメインECU3、ゾーンECU9、ゲートウェイ2、セントラルECU8等)に対する設定内容を決定する。通信設定装置23による各通信装置の設定内容は、車載ネットワーク20に対するネットワーク設定データ41として、通信設定装置23から車載ネットワーク20へ送信される。
【0032】
車載ネットワーク20では、通信設定装置23から送信されるネットワーク設定データ41に基づき、各通信装置の設定を行う。これにより、各ドメインECU3や各ゾーンECU9で実行されるアプリケーションの要求に従って各通信装置が互いに通信を行うことができるように、車載ネットワーク20に対する通信設定を行うことができる。
【0033】
(通信設計装置の構成)
図4は、本発明の第1の実施形態に係る通信設計装置の構成を示す機能ブロック図である。図4に示すように、通信設計装置22は、例えば通信要件記憶部50、スケジュール設定部51および設定出力部52の各機能ブロックを備えて構成される。通信設計装置22におけるこれらの機能ブロックは、例えばコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0034】
通信要件記憶部50は、車載ネットワーク20における各アプリケーションの通信要件に関する情報である通信要件情報を記憶する。通信要件記憶部50は、例えばコンピュータに備えられた各種記憶装置(HDD、SSD、フラッシュメモリ等)を用いて実現することができる。なお、通信要件記憶部50に記憶される通信要件情報の詳細については後述する。
【0035】
スケジュール設定部51は、通信要件記憶部50に記憶された通信要件情報に基づいて、車載ネットワーク20の通信スケジュールをアプリケーション毎に設定する。スケジュール設定部51は、アプリケーション毎に異なる通信要件を満たすように、各アプリケーションによる通信のタイムスロットを割り当てることで、車載ネットワーク20の通信スケジュールを設定することができる。なお、スケジュール設定部51による通信スケジュールの設定方法の詳細については後述する。
【0036】
設定出力部52は、スケジュール設定部51により設定された通信スケジュールに基づいて、車載ネットワーク20の通信制御に関する設定情報を決定し、この設定情報をネットワーク設計データ40として出力する。設定出力部52から出力されたネットワーク設計データ40は、前述のように通信設計装置22から通信設定装置23へ送信され、通信設定装置23が行う処理に利用される。
【0037】
(通信スケジュール)
図5は、スケジュール設定部51により設定される車載ネットワーク20の通信スケジュールの例を示す図である。スケジュール設定部51は、例えばタイムスロット100,101および102をそれぞれ所定の周期で設定することにより、これらのタイムスロットをアプリケーション毎の通信に割り当てて、車載ネットワーク20の通信スケジュールを設定する。なおタイムスロットはTSN規格のIEEE 802.1Qbvにより実現することができる。
【0038】
タイムスロット100は、遅延時間を所定の遅延許容時間以内に抑える時刻保証が必要な通信を短周期で行うアプリケーションに対して割り当てられる。車載ネットワーク20では、当該アプリケーションの要求に従って行われる通信用にタイムスロット100が一定周期毎に確保されており、このタイムスロット100の期間内に、車載ネットワーク20内の通信装置間で通信データが送受信される。これにより、当該アプリケーションの通信要件を満たす通信が行われる。
【0039】
タイムスロット101は、時刻保証が必要な通信を長周期で行うアプリケーションに対して割り当てられる。車載ネットワーク20では、当該アプリケーションの要求に従って行われる通信用に、前述のタイムスロット100よりも長い周期でタイムスロット101が一定周期毎に確保されており、このタイムスロット101の期間内に、車載ネットワーク20内の通信装置間で通信データが送受信される。これにより、当該アプリケーションの通信要件を満たす通信が行われる。
【0040】
タイムスロット102は、時刻保証が不要な通信を行う各アプリケーションに対して割り当てられる。車載ネットワーク20では、当該アプリケーションの要求に従って行われる通信用に、前述のタイムスロット100,101を除いた期間がタイムスロット102として確保されており、このタイムスロット102の期間内に、車載ネットワーク20内の通信装置間で通信データが送受信される。タイムスロット102では、通信装置が有する複数の通信ポートに対応して、通信帯域を保証する3つのクラスと、それ以外のベストエフォート用のクラスとが設定されており、各アプリケーションの通信要件に応じていずれかのクラスが割り当てられる。なお通信帯域の保証はTSN規格のIEEE 802.1Qavにより実現することができる。これにより、当該アプリケーションの通信要件を満たす通信が行われる。
【0041】
なお、図5に示した通信スケジュールは一例であり、他の通信スケジュールとしてもよい。例えば、時刻保証のタイムスロットを1つ、または3つ以上設定してもよいし、タイムスロット102内に設定する帯域保証クラスの数を3以外としてもよい。また、タイムスロット102を全て帯域保証クラスに割り当ててもよいし、反対に、タイムスロット102を全てベストエフォート用のクラスに割り当ててもよい。これ以外にも、任意のタイムスロット構成により、車載ネットワーク20の通信スケジュールを設定することができる。
【0042】
(通信要件情報)
図6は、通信要件記憶部50に記憶される通信要件情報のうち、時刻保証が必要な通信を行うアプリケーション(以下「時刻保証アプリケーション」と称する)に対する通信要件情報を表す時刻保証通信要件テーブルの例を示す図である。図6に示す時刻保証通信要件テーブル200は、各時刻保証アプリケーションによる通信データの種類毎に設定されたレコードを有し、各レコードは、送信元201、宛先202、通信周期203、遅延要件204、パケット長205のデータを有する。
【0043】
送信元201と宛先202には、各通信データの送信元と宛先の通信装置を表す情報がそれぞれ格納される。通信周期203には、各通信データの通信周期を表す情報が格納される。遅延要件204には、各通信データの遅延許容時間を表す情報が格納される。パケット長205には、各通信データのパケット長(通信データ量)を表す情報が格納される。これらの情報により、各時刻保証アプリケーションに対して、その通信データ毎に満たすべき通信要件が表される。
【0044】
図7は、通信要件記憶部50に記憶される通信要件情報のうち、時刻保証が不要で所定の通信帯域を確保する必要がある通信を行うアプリケーション(以下「帯域保証アプリケーション」と称する)に対する通信要件情報を表す帯域保証通信要件テーブルの例を示す図である。図7に示す帯域保証通信要件テーブル210は、各帯域保証アプリケーションによる通信データの種類毎に設定されたレコードを有し、各レコードは、送信元211、宛先212、通信帯域213のデータを有する。
【0045】
送信元211と宛先212には、各通信データの送信元と宛先の通信装置を表す情報がそれぞれ格納される。通信帯域213には、各通信データの通信帯域を表す情報が格納される。これらの情報により、通信データ量が比較的多く、そのためある程度の通信帯域を定期的に確保する必要がある各帯域保証アプリケーションに対して、その通信データ毎に満たすべき通信要件が表される。
【0046】
なお、図6に示した時刻保証通信要件テーブル200や、図7に示した帯域保証通信要件テーブル210の内容は、例えば、事前に設計者がネットワーク情報入力装置21を用いて通信設計装置22に入力することにより、通信要件記憶部50において記憶される。あるいは、過去の設計履歴の情報や外部から収集した情報等に基づき、ネットワーク情報入力装置21が自動的に設定して通信設計装置22に入力した内容を、時刻保証通信要件テーブル200や帯域保証通信要件テーブル210として、通信要件記憶部50に記憶してもよい。
【0047】
(通信スケジュールの設定方法)
図8は、本発明の第1の実施形態に係る通信設計装置における通信スケジュールの設定方法を説明するフローチャートである。本実施形態の通信設計装置22において、スケジュール設定部51は、例えば、設計者の指示に応じて図8のフローチャートに示す処理を実行することにより、車載ネットワーク20の通信スケジュールの設定を行う。
【0048】
ステップS100では、時刻保証通信のスケジュール計算処理を行う。ここでは、図9のフローチャートに示す処理を実行することで、図6に例示した通信要件情報により通信要件が規定される各時刻保証アプリケーションに対して割り当てるタイムスロットを決定する。なお、図9のフローチャートに示す処理の詳細については後述する。
【0049】
ステップS101では、帯域保証通信およびベストエフォート通信用のタイムスロットを決定する。ここでは、ステップS100の処理で決定された時刻保証通信用のタイムスロットを除いた期間を、帯域保証通信およびベストエフォート通信用のタイムスロットに決定する。
【0050】
ステップS102では、帯域保証通信の通信経路計算処理を行う。ここでは、図12のフローチャートに示す処理を実行することで、図7に例示した通信要件情報により通信要件が規定される各帯域保証アプリケーションの通信経路とクラスを決定する。なお、図12のフローチャートに示す処理の詳細については後述する。
【0051】
ステップS103では、ベストエフォート通信用のクラスを決定する。ここでは、ステップS101の処理で決定されたタイムスロットにおいて、帯域保証通信で使用されるクラスを除いた残りの各クラスを、ベストエフォート通信用のクラスとして決定する。
【0052】
ステップS104では、通信設計装置22による車載ネットワーク20の通信設計結果が、通信要件記憶部50に記憶された通信要件情報が表す各アプリケーションの通信要件を満たすか否かを判定する。ここでは、ステップS100~S103の処理で得られた通信スケジュールで各アプリケーションが通信を行った場合の遅延時間や通信帯域が、全てのアプリケーションの通信要件を満たすか否かを判定する。その結果、全てのアプリケーションの通信要件を満たす場合はステップS105へ進み、いずれか少なくとも一つのアプリケーションの通信要件を満たさない場合はステップS106へ進む。
【0053】
ステップS105では、ネットワーク情報入力装置21に対して、通信設計装置22による車載ネットワーク20の通信設計が成功したことを示す情報を出力する。この情報がネットワーク情報入力装置21において受信され、これに応じて所定のメッセージをネットワーク情報入力装置21に提示することで、車載ネットワーク20の通信設計が成功したことを設計者に知らせることができる。これにより、得られた設計結果をネットワーク設計データ40として通信設計装置22から通信設定装置23へ出力するように、設計者を促すことができる。
【0054】
ステップS106では、ネットワーク情報入力装置21に対して、通信設計装置22による車載ネットワーク20の通信設計が失敗したことを示す情報を出力する。この情報がネットワーク情報入力装置21において受信され、これに応じて所定のメッセージをネットワーク情報入力装置21に提示することで、車載ネットワーク20の通信設計が失敗したことを設計者に知らせることができる。これにより、通信要件の設定内容や車載ネットワーク20の構成を見直すように、設計者を促すことができる。
【0055】
ステップS105またはS106の処理を実行したら、通信設計装置22は図8のフローチャートに示す処理を終了する。
【0056】
(時刻保証通信のスケジュール計算処理)
図9は、図8のステップS100で実行される時刻保証通信のスケジュール計算処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
ステップS110~S118では、時刻保証通信の遅延要件毎にループ処理を実施する。ここでは、例えば図6に示した時刻保証通信要件テーブル200により表される通信要件情報において、遅延要件204の値がそれぞれ同一の通信データを一つのグループにまとめることにより、各時刻保証アプリケーションを遅延要件毎にグループ化する。なおグループ化には通信周期203など時刻保証通信に関する他の情報を用いてもよい。そして、このグループ毎にステップS110~S118の処理を実行することで、時刻保証通信のスケジュール計算処理を行う。これにより、同一の遅延許容時間を有する複数の時刻保証アプリケーションに同一周期のタイムスロットを割り当てるようにする。以下では、現在のループ処理の対象である時刻保証アプリケーションのグループを「第1の処理対象アプリケーション群」と称して、ステップS110~S118のループ処理の内容を説明する。
【0058】
ステップS110でループ処理を開始したら、次のステップS111では、第1の処理対象アプリケーション群の使用クラスを決定する。ここでは、現在空き状態のクラスのいずれかを選択し、第1の処理対象アプリケーション群の使用クラスとして決定する。
【0059】
ステップS112では、遅延要件が同一である第1の処理対象アプリケーション群の全ての通信データフローについてパケット長の合計値を計算する。ここでは、図6の時刻保証通信要件テーブル200により表される通信要件情報において、第1の処理対象アプリケーション群の各時刻保証アプリケーションに対応するレコードのパケット長205の値を合計することにより、第1の処理対象アプリケーション群による通信データのパケット長の合計値を計算する。
【0060】
ステップS113では、車載ネットワーク20のトポロジ情報より、第1の処理対象アプリケーション群による通信での車載ネットワーク20内の最大ホップ数を計算する。ここでは、図6の時刻保証通信要件テーブル200により表される通信要件情報において、第1の処理対象アプリケーション群の各時刻保証アプリケーションに対応するレコードの送信元201と宛先202の内容から、これらに該当する車載ネットワーク20の通信装置をそれぞれ特定する。そして、これらの通信装置間で通信を行う場合に途中で経由する可能性がある他の通信装置の数を、車載ネットワーク20のトポロジ情報から特定し、その中で最大の数を最大ホップ数として求めることができる。なお、車載ネットワーク20のトポロジ情報とは、車載ネットワーク20内の各通信装置間の接続関係を表す情報であり、例えば、ネットワーク情報入力装置21から入力されるネットワーク情報に含まれている。
【0061】
ステップS114では、ステップS113で計算した最大ホップ数に基づき、第1の処理対象アプリケーション群による通信での最大遅延時間を計算する。ここでは、予め設定された1ホップ当たりの遅延時間に、ステップS113で計算した最大ホップ数を乗算することにより、最大ホップ時の遅延時間を最大遅延時間として計算することができる。なお、ここで計算される遅延時間には、ネットワークスイッチ13によるスイッチ遅延時間(スイッチ処理時間、ストアアンドフォワード時間等)や、通信データの伝送遅延時間などが含まれる。
【0062】
ステップS115では、ステップS112で計算したパケット長の合計値と、ステップS114で計算した最大遅延時間とに基づいて、第1の処理対象アプリケーション群による通信のタイムスロット長を計算する。ここでは、最大遅延時間にパケット長の合計値を加えた値を、第1の処理対象アプリケーション群による通信のタイムスロット長として計算する。これにより、同一周期のタイムスロットが割り当てられた複数の時刻保証アプリケーションに係るパケット長の合計値と、通信装置内のネットワークスイッチ13によるスイッチ処理に要する時間であるスイッチ遅延時間の車載ネットワーク20内での合計値と、通信の伝送に要する時間である伝送遅延時間の車載ネットワーク20内での合計値と、の和に基づいて、当該タイムスロットの長さを設定するようにする。
【0063】
ステップS116では、ステップS115で計算したタイムスロット長に基づいて、第1の処理対象アプリケーション群による通信のタイムスロットを、その通信周期毎に設定する。ここでは、前回のループ処理で決定したタイムスロットの終了時刻を、今回のループ処理によるタイムスロットの開始時刻(オフセット)に設定し、その時刻にステップS115で求められたタイムスロット長を加えた時間を、第1の処理対象アプリケーション群による通信のタイムスロットとして設定する。これにより、本実施形態のスケジュール設定部51は、第1の処理対象アプリケーション群に含まれる複数の時刻保証アプリケーションについて、これらの時刻保証アプリケーションに係る遅延許容時間に基づいてタイムスロットの周期を設定するとともに、これらの時刻保証アプリケーションに係るパケット長に基づいてタイムスロットの長さを設定することができる。その結果、第1の処理対象アプリケーション群の各時刻保証アプリケーションによって行われる通信のタイムスロットを割り当てることができる。
【0064】
ステップS117では、第1の処理対象アプリケーション群に対するルーティングを実施する。ここでは、例えば車載ネットワーク20のトポロジ情報に基づいて、第1の処理対象アプリケーション群による通信の最短経路を特定し、この最短経路でのルーティングを実施する。なお、このとき車載ネットワーク20全体での通信負荷が分散されるように、最短経路以外のルーティングを実施してもよい。
【0065】
ステップS118では、現在の第1の処理対象アプリケーション群に対するループ処理を終了する。そして、時刻保証が必要なアプリケーションを遅延要件毎にグループ化した前述のグループの全てについて、このループ処理を実施済みか否かを判定する。その結果、ループ処理を未実施のグループが存在する場合は、そのグループのいずれかを次の第1の処理対象アプリケーション群に設定して、次のループ処理を開始する。一方、全てのグループについてループ処理を実施済みの場合は、図9のフローチャートに示す時刻保証通信のスケジュール計算処理を終了する。
【0066】
時刻保証通信のスケジュール計算処理では、スケジュール設定部51により、複数の時刻保証アプリケーションに対して以上説明した処理がそれぞれ実行される。これにより、複数の時刻保証アプリケーションに係る遅延許容時間に基づいて、時刻保証アプリケーション毎に割り当てられる通信のタイムスロットの周期が設定されるとともに、複数の時刻保証アプリケーションに係る通信データのパケット長に基づいて、タイムスロットの長さが設定される。
【0067】
図10は、以上説明した時刻保証通信のスケジュール計算処理によって時刻保証アプリケーションに割り当てられるタイムスロットの例を示す図である。図10では、あるECU(図10では「ECU1」)から別のECU(図10では「ECU2」)へ、ECU1,ECU2内にそれぞれ設けられたネットワークスイッチ13(図10では「Switch1」および「Switch3」)と、その間にある別の通信装置のネットワークスイッチ13(図10では「Switch2」)とを経由して、通信データが送信される場合の例を示している。なお各ECUのネットワークスイッチ13はTSN機能により時刻同期されている。
【0068】
例えば、別々の時刻保証アプリケーションによる通信データ110,111,112について、これらの通信データの遅延要件が同一であり、時刻保証通信のスケジュール計算処理によって所定の通信周期毎にタイムスロット100a,100bが割り当てられたとする。これらのタイムスロット100a,100bにおいて、ECU1からECU2へ通信データ110~112の各パケットがそれぞれ送信される。ただし、例えば図10のパケット110cのように、タイムスロット100a内ではECU2へ到達できないタイミングにおいて、ECU1で実行中の時刻保証アプリケーションから通信データが出力された場合、ECU1のネットワークスイッチ13(Switch1)で当該通信データの送信が一旦保留される。その後、タイムスロット100aから次のタイムスロット110bまでの時間120を経過したら、ECU1からECU2へ通信データ110~112が続けて送信される。
【0069】
タイムスロット110bにおいて、ECU1で実行中の時刻保証アプリケーションから出力された通信データ110~112は、ECU1内のSwitch1で一連のパケットにまとめられた後、Switch2およびSwitch3を経由して、ECU2で実行中の時刻保証アプリケーションへ受け渡される。このとき、ECU1の送信タイミングからSwitch2の送信タイミングまでの間に、伝送遅延時間121aと、Switch2でのスイッチ遅延時間122aとが生じる。同様に、Switch2の送信タイミングからSwitch3の受信タイミングまでの間に、伝送遅延時間121bと、Switch3でのスイッチ遅延時間122bとが加算される。さらに、Switch3の受信タイミングからECU2で実行中の時刻保証アプリケーションへの受け渡しタイミングまでの間に、ECU2内での伝送遅延時間121cと、通信データ110~112を合計したパケット長123とが加算される。
【0070】
タイムスロット110a,110bの長さ(タイムスロット幅)をτiとすると、τiは以下の式(1)で表される。式(1)において、τPacketsは同一遅延要件を持つ時刻保証通信フローに対するパケット長の合計値を表し、これは図10のパケット長123に相当する。τProcとτSFは、車載ネットワーク10内の各ネットワークスイッチ13における内部処理遅延とストアアンドフォワードの合計値をそれぞれ表し、これらは図10のスイッチ遅延時間122a,122bに相当する。τTransは車載ネットワーク10内の各リンクにおける伝送遅延の合計値を表し、これは図10の伝送遅延時間121a~121cに相当する。
τi=τPackets+τProc+τTrans+τSF ・・・(1)
【0071】
また、タイムスロット110a,110bにおける時刻保証通信フローの最大遅延時間(ECU1で通信データ110~112のパケットの先頭を送信開始してから、ECU2で通信データ110~112のパケットの末尾を受信完了するまでの時間)をdE2Eとすると、dE2Eは以下の式(2)で表される。式(2)において、dTimeslotは前周期のタイムスロットが終了してから次周期のタイムスロットが開始するまでの時間を表し、これは図10の時間120に相当する。また、Ciは時刻保証通信の周期を表す。
E2E=dTimeslot+τSF+τTrans+τPackets+τProc
=Ci-τi+τSF+τTrans+τPackets+τProc
=Ci ・・・(2)
【0072】
以上説明したように、アプリケーションでの出力開始から伝送終了までの間には、通信データの伝送に関する様々な遅延時間が加算される。図9のフローチャートで説明した時刻保証通信のスケジュール計算処理では、これらの遅延時間を考慮して、タイムスロット100a,100bを設定することができる。
【0073】
図11は、時刻保証通信のスケジュール計算処理結果の例を示す図である。図11に示すスケジュールテーブル220は、時刻保証通信のスケジュール計算処理によって求められたタイムスロット毎に設定されたレコードを有し、各レコードは、周期221、基準時刻222、スロット長223のデータを有する。これらのデータにより、時刻保証通信が行われる各タイムスロットの設定内容が表される。
【0074】
(帯域保証通信の通信経路計算処理)
図12は、図8のステップS102で実行される帯域保証通信の通信経路計算処理の流れを示すフローチャートである。
【0075】
ステップS120では、車載ネットワーク20の全リンクの使用可能帯域から、ステップS100の時刻保証通信のスケジュール計算処理によって求められた全タイムスロット分の使用帯域をそれぞれ減算することで、帯域保証通信において使用可能な各リンクの通信帯域を算出する。なお、車載ネットワーク20の全リンクの使用可能帯域は、例えば、ネットワーク情報入力装置21から入力されるネットワーク情報に含まれている。
【0076】
ステップS121~S129では、帯域保証が必要な通信フロー毎にループ処理を実行する。ここでは、例えば図7に示した帯域保証通信要件テーブル210の各レコードから、送信元と宛先が共通する一または複数の帯域保証アプリケーションを特定し、これらの帯域保証アプリケーションによる通信データを一連の通信フローとしてグループ化する。こうして一または複数の帯域保証アプリケーションをグループ化して設定された通信フロー毎に、ステップS121~S129のループ処理を実行する。以下では、帯域保証通信要件テーブル210により通信要件情報が示された帯域保証アプリケーションのうち、現在のループ処理の対象である通信フローに対応するアプリケーションのグループを「第2の処理対象アプリケーション群」と称して、ステップS121~S129のループ処理の内容を説明する。
【0077】
ステップS121~S129のループ処理では、第2の処理対象アプリケーション群による通信において利用可能な通信経路毎に、ステップS122~S125のループ処理を実行する。ここでは、例えば図7に示した帯域保証通信要件テーブル210により表される通信要件情報において、第2の処理対象アプリケーション群に属する各帯域保証アプリケーションに対応するレコードの送信元211と宛先212の内容から、これらに該当する車載ネットワーク20の通信装置をそれぞれ特定する。そして、これらの通信装置間を結ぶ車載ネットワーク20の全ての通信経路をリスト化することで経路リストを作成し、この経路リストに示された通信経路毎に、ステップS122~S125のループ処理を実行する。以下では、現在のループ処理の対象である通信経路を「処理対象経路」と称して、ステップS122~S125のループ処理の内容を説明する。
【0078】
ステップS122でループ処理を開始したら、次のステップS123では、処理対象経路上の各リンクに対する使用可能帯域および使用可能クラス数を取得する。ここでは、例えば以下で説明するリンク使用情報を用いて、処理対象経路上の各リンクの使用可能帯域および使用可能クラス数を求めることができる。
【0079】
図13は、図12のステップS123の処理で用いられる各リンクの使用帯域量および使用クラス数を表すリンク使用情報の例を示す図である。図13に示すリンク使用テーブル230は、車載ネットワーク20におけるリンク毎に設定されたレコードを有し、各レコードは、リンク231、使用帯域232、使用クラス数233のデータを有する。これらのデータにより、前回までの処理で設定済みの通信経路に対して割り当てられた各リンクの帯域量およびクラス数が表される。なお、リンク使用テーブル230は、通信設計装置22において記憶されており、後述のステップS127でその内容が更新される。
【0080】
図12の説明に戻ると、ステップS123では、リンク使用情報から次のようにして処理対象経路上の各リンクの使用可能帯域および使用可能クラス数を求めることができる。すなわち、処理対象経路上の各リンクについて、ステップS120で計算した使用可能帯域の値から、図13に例示したリンク使用テーブル230の使用帯域232の値を減算することで、処理対象経路の各リンクに対する使用可能帯域を計算できる。また、処理対象経路上の各リンクについて、予め設定されたクラス数からリンク使用テーブル230の使用クラス数233の値を減算することで、処理対象経路の各リンクに対する使用可能クラス数を計算できる。
【0081】
ステップS124では、ステップS123で計算した処理対象経路の各リンクの使用可能帯域および使用可能クラス数が、通信経路の使用条件を満たすか否かを判定する。ここでは、例えば図7に示した帯域保証通信要件テーブル210により表される通信要件情報において、第2の処理対象アプリケーション群に属する各帯域保証アプリケーションに対応するレコードの通信帯域213の値から、第2の処理対象アプリケーション群の通信フローで必要な通信帯域の総量(フロー帯域)を計算する。そして、処理対象経路上の全てのリンクについて、使用可能帯域がフロー帯域以上であり、かつ、使用可能クラス数が1以上であれば、通信経路の使用条件を満たすと判定してステップS127へ進み、全ての通信経路に対するステップS122~S125のループ処理を終了する。一方、処理対象経路上のいずれかのリンクについて、使用可能帯域がフロー帯域未満であるか、または使用可能クラス数が1未満であれば、通信経路の使用条件を満たさないと判定し、ステップS125へ進む。
【0082】
ステップS125では、現在の処理対象経路に対するステップS122~S125のループ処理を終了する。そして、ステップS122で作成した経路リストの全ての通信経路について、このループ処理を実施済みか否かを判定する。その結果、ループ処理を未実施の通信経路が存在する場合は、その通信経路のいずれかを次の処理対象経路に設定して、次のループ処理を開始する。これにより、これまでとは別の通信経路がステップS124において通信経路の使用条件を満たすと判定されるようにして、第2の処理対象アプリケーション群の要求に係る通信の負荷を、複数の通信経路に分散させるようにする。一方、全ての通信経路についてループ処理を実施済みの場合は、ループ処理を終了してステップS126へ進む。
【0083】
ステップS126では、帯域保証通信の通信経路計算処理に失敗したことを示すメッセージを出力する。このメッセージは、例えばネットワーク情報入力装置21において表示されることで、設計者に通知される。これにより、車載ネットワーク20の構成や通信要件の見直しを行うように、設計者を促すことができる。
【0084】
ステップS127では、図13に例示したリンク使用テーブル230を更新する。具体的には、直前のループ処理の対象とした処理対象経路上の各リンクに対応するレコードをリンク使用テーブル230において特定し、これらのレコードの使用帯域232と使用クラス数233の値に、ステップS124の判定処理で用いた所要帯域の値と1をそれぞれ加算する。これにより、次のステップS128で行われる通信経路の設定結果を反映して、リンク使用テーブル230を更新することができる。
【0085】
ステップS128では、ステップS124で各リンクの使用可能帯域および使用可能クラス数が使用条件を満たすと判定した通信経路およびクラスを、第2の処理対象アプリケーション群に属する各帯域保証アプリケーションの通信において使用する通信経路およびクラスに設定する。そして、これらの設定内容を示す情報を、図8のステップS102の処理結果として出力する。
【0086】
ステップS126またはS128の実行後、ステップS129では、現在の第2の処理対象アプリケーション群に対するステップS121~S129のループ処理を終了する。そして、ステップS121で設定した通信フローの全てについてこのループ処理を実施済みか否かを判定する。その結果、ループ処理を未実施の通信フローが存在する場合は、残りの通信フローのいずれかを選択し、その通信フローに対応する帯域保証アプリケーションのグループを次の第2の処理対象アプリケーション群に設定して、次のループ処理を開始する。一方、全ての通信フローについてループ処理を実施済みの場合は、図12のフローチャートに示す帯域保証通信の通信経路計算処理を終了する。
【0087】
帯域保証通信の通信経路計算処理では、スケジュール設定部51により、複数の帯域保証アプリケーションに対して、以上説明した処理がそれぞれ実行される。これにより、複数の帯域保証アプリケーションが通信フロー毎に一以上のグループに分けられ、このグループ毎に通信の帯域に応じて、通信経路の設定とクラスの割り当てが行われる。
【0088】
なお、以上説明した帯域保証通信の通信経路計算処理において、スケジュール設定部51は、通信フローが経由する通信装置の車載ネットワーク20内での配置を考慮して、通信経路を決定してもよい。例えば、図1(b)に示したゾーンアークテクチャによる車載ネットワーク20では、通信フロー毎にグループ分けされた帯域保証アプリケーションの要求に係る通信の少なくとも一部について、車両1の前方に配置された通信装置であるゾーンECU9a,9bの間を経由する通信経路から、車両の後方に配置された通信装置であるゾーンECU9c,9dの間を経由する通信経路に変更することで、通信の負荷を分散させるようにしてもよい。これ以外にも、帯域保証アプリケーションによる通信フロー毎に任意の通信経路を設定して、車載ネットワーク20内での通信負荷を分散することができる。
【0089】
(ネットワーク設計データ)
図14は、通信設計装置22による車載ネットワーク20の通信設計が完了した場合に、通信設計装置22から通信設定装置23へ出力されるネットワーク設計データ40の例を示す図である。
【0090】
ネットワーク設計データ40は、例えば図14(a)に示すスケジュールテーブル220と、図14(b)に示すルーティングテーブル240とを含んで構成される。スケジュールテーブル220は、図8のステップS100で実行される時刻保証通信のスケジュール計算処理の結果を表しており、図11に例示したものと同じである。ルーティングテーブル240は、図8のステップS102で実行される帯域保証通信の通信経路計算処理の結果を表しており、車載ネットワーク20内で実行される帯域保証アプリケーションによる通信データの種類毎に設定されたレコードを有する。
【0091】
ルーティングテーブル240の各レコードは、送信元241、宛先242、通信経路243のデータを有する。送信元241と宛先242には、各通信データの送信元と宛先の通信装置を表す情報がそれぞれ格納される。通信経路243には、各通信データの通信経路を表す情報として、図12のステップS128で出力される各帯域保証アプリケーションの通信経路の情報が格納される。
【0092】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0093】
(1)通信設計装置22は、複数の通信装置が接続され、アプリケーションの要求に従って複数の通信装置が互いに通信を行う車載ネットワーク20の通信設計を行う装置である。通信設計装置22は、時刻保証アプリケーション毎に許容される通信の遅延時間の長さを示す遅延許容時間と、時刻保証アプリケーション毎に定められた通信データのパケット長と、を表す通信要件情報(時刻保証通信要件テーブル200、帯域保証通信要件テーブル210)を記憶する通信要件記憶部50と、アプリケーション毎に通信のタイムスロットを割り当てるスケジュール設定部51と、を備える。スケジュール設定部51は、複数の時刻保証アプリケーションに係る遅延許容時間に基づいて、タイムスロットの周期を設定し、複数の時刻保証アプリケーションに係るパケット長に基づいて、タイムスロットの長さを設定する(ステップS115,S116)。このようにしたので、通信要件の異なる様々なアプリケーションの要求に従って通信が行われるネットワークに対して、最適な通信設計を実現できる。
【0094】
(2)スケジュール設定部51は、時刻保証アプリケーションに対して、時刻保証通信のスケジュール計算処理を実行する(ステップS100)。この処理では、同一の遅延許容時間を有する複数の時刻保証アプリケーションに同一周期のタイムスロットを割り当てる。このようにしたので、指定された遅延許容時間内で確実に通信を実施できるように、各時刻保証アプリケーションに対するタイムスロットを割り当てることができる。
【0095】
(3)また、時刻保証通信のスケジュール計算処理において、スケジュール設定部51は、同一周期のタイムスロットが割り当てられた複数の時刻保証アプリケーションに係るパケット長に基づいて、当該タイムスロットの長さを設定する(ステップS115)。具体的には、同一周期のタイムスロットが割り当てられた複数の時刻保証アプリケーションに係るパケット長の合計値と、車載ネットワーク20の各通信装置におけるスイッチ処理に要する時間であるスイッチ遅延時間の車載ネットワーク20内での合計値と、通信の伝送に要する時間である伝送遅延時間のネットワーク内での合計値と、の和に基づいて、当該タイムスロットの長さを設定する。このようにしたので、時刻保証アプリケーションに係る通信に用いるタイムスロットの長さを適切に設定することができる。
【0096】
(4)車載ネットワーク20内で実行されるアプリケーションには、時刻保証が必要な通信を行う第一のアプリケーション群と、帯域保証が必要な通信を行う第二のアプリケーション群とが含まれる。スケジュール設定部51は、第一のアプリケーション群に属する各時刻保証アプリケーションの遅延許容時間に応じて、第一のアプリケーション群に割り当てる一又は複数のタイムスロットを決定する(ステップS100)。また、第一のアプリケーション群に割り当てるタイムスロットの決定後、第二のアプリケーション群に割り当てる一又は複数のタイムスロットを決定する(ステップS102)。このようにしたので、第一のアプリケーション群に属する各時刻保証アプリケーションと、第二のアプリケーション群に属する各帯域保証アプリケーションとに対して、それぞれの通信要件を満たすタイムスロットを確実に割り当てることができる。
【0097】
(5)第二のアプリケーション群に割り当てるタイムスロットには、所定の通信帯域を保証する一又は複数のクラスが設定される。スケジュール設定部51は、第二のアプリケーション群に属する各帯域保証アプリケーションを一以上のグループに分け、このグループ毎に通信の帯域に応じてクラスを割り当てる。具体的には、スケジュール設定部51は、車載ネットワーク20における通信経路に応じて、送信元と宛先が共通する帯域保証アプリケーションのグループを設定し(ステップS121)、このグループ毎に、通信経路に含まれる各リンクの使用可能帯域および使用可能クラス数を計算する(ステップS123)。そして、通信経路上のいずれかのリンクにおいて、同一のグループに属する各帯域保証アプリケーションの通信の合計帯域が使用可能帯域を上回るか、または、同一のグループに属する各帯域保証アプリケーションの通信の合計クラス数が使用可能クラス数を上回る場合に(ステップS124:No)、別の通信経路についてステップS122~S125のループ処理を実行して、第二のアプリケーション群の要求に係る通信の負荷を、複数の通信経路に分散させる。このようにしたので、車載ネットワーク20全体で帯域保証通信を実現できる。
【0098】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る通信設計装置について、以下に図15図19を参照して説明する。なお、本実施形態では、図1で説明した車載ネットワーク20について、アプリケーションの更新により通信制御の変更が必要となった場合に、タイムスロットや通信経路の再設計を行い、その設計結果を車載ネットワーク20に反映させる通信設計装置の例を説明する。
【0099】
(システム構成)
図15は、本発明の第2の実施形態に係る通信設計装置を含むシステムの構成例を示す図である。図15に示すシステムは、車両1に搭載されて使用されるシステムであり、第1の実施形態で説明した車載ネットワーク20および通信設計装置22と、アプリケーション管理装置24と、を含んで構成される。
【0100】
アプリケーション管理装置24は、クラウド上に設置されたOTA(Over The Air)サーバ32から送信される更新データを受信し、この更新データを用いて、車載ネットワーク20内で実行されるアプリケーションを更新する。本実施形態において、通信設計装置22は、アプリケーション管理装置24から出力される更新データに基づいて、アプリケーションの更新により通信制御の変更が必要であるか否かを判断し、必要と判断した場合には、タイムスロットや通信経路の再設計を行い、その結果を車載ネットワーク20へ出力する。車載ネットワーク20では、通信設計装置22によるタイムスロットや通信経路の再設計結果を反映することで、アプリケーションの更新により通信制御の変更が必要となった場合でも、各通信装置間の通信を継続することができる。
【0101】
(通信設計装置の構成)
図16は、本発明の第2の実施形態に係る通信設計装置の構成を示す機能ブロック図である。図16に示すように、通信設計装置22は、例えば第1の実施形態で説明した通信要件記憶部50、スケジュール設定部51および設定出力部52に加えて、さらにネットワーク情報収集部53およびスケジュール記憶部54の各機能ブロックを備えて構成される。通信設計装置22におけるこれらの機能ブロックは、例えばコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0102】
ネットワーク情報収集部53は、車載ネットワーク20における各通信装置の接続関係や動作状態を含むネットワーク情報を収集し、収集したネットワーク情報に基づいて、通信要件記憶部50に記憶されている通信要件情報を必要に応じて更新する。例えば、過去に収集済みのネットワーク情報に対して、直近に収集したネットワーク情報が変化した場合には、その変化内容を反映して、通信要件記憶部50に記憶されている通信要件情報を更新する。
【0103】
本実施形態では、通信要件記憶部50に記憶された通信要件情報は、上記のようにネットワーク情報が変化した場合以外に、アプリケーション管理装置24から更新データが入力された場合にも、この更新データの内容に応じて更新される。具体的には、車載ネットワーク20において新たなアプリケーションが追加された場合や、アプリケーションが削除された場合、アプリケーションの更新によって通信の遅延許容時間やパケット長が変化した場合などに、アプリケーション管理装置24から通信要件記憶部50に更新データが入力されて通信要件情報が更新される。
【0104】
スケジュール記憶部54は、車載ネットワーク20の各アプリケーションによる通信のスケジュールを記憶する。すなわち、時刻保証アプリケーションによる時刻保証通信のタイムスロットに関するタイムスロット情報、例えば通信周期やタイミング、スロット長などの情報や、帯域保証アプリケーションによる帯域保証通信の通信経路に関する情報が、スケジュール記憶部54に記憶される。これらの情報は、例えば第1の実施形態において例示した図14のネットワーク設計データ40と同様のデータ構成を有している。
【0105】
本実施形態では、スケジュール設定部51は、アプリケーションの更新により通信制御の変更が必要であると判断した場合に、スケジュール記憶部54に記憶された情報を用いて、通信スケジュールを再設定する。これにより、アプリケーションの更新内容に応じたタイムスロットや通信経路を再設計し、車載ネットワーク20の通信制御において反映させる。
【0106】
(通信スケジュール再設定計方法)
図17は、本発明の第2の実施形態に係る通信設計装置における通信スケジュールの再設定方法を説明するフローチャートである。本実施形態の通信設計装置22において、スケジュール設定部51は、例えば、アプリケーション管理装置24から更新データが入力されると、これに応じて図17のフローチャートに示す処理を実行することにより、車載ネットワーク20の通信スケジュールの再設定を行う。
【0107】
ステップS200では、時刻保証通信の再設計が必要か否かを判定する。ここでは、例えば次の(a1)~(d1)のいずれかの条件を満たす場合には、時刻保証通信の再設計が必要と判定してステップS201へ進み、いずれの条件を満たさない場合には、時刻保証通信の再設計が不要と判定してステップS204へ進む。なお、これらの条件は一例であり、他の条件を用いてステップS200の判定を行ってもよい。あるいは条件(b1)は、削除されない時刻保証アプリケーションの通信性能を劣化させないため、時刻保証通信の再設計が不要と判断することができる。
(a1)時刻保証アプリケーションの追加
(b1)時刻保証アプリケーションの削除
(c1)時刻保証アプリケーションの通信許容時間またはパケット長の変化
(d1)ネットワーク情報の変化
【0108】
ステップS201では、時刻保証通信のスケジュール再計算処理を行う。ここでは、図18のフローチャートに示す処理を実行することで、各時刻保証アプリケーションに対して割り当てるタイムスロットを再決定する。なお、図18のフローチャートに示す処理の詳細については後述する。
【0109】
ステップS202では、帯域保証通信およびベストエフォート通信用のタイムスロットを再決定する。ここでは、ステップS201の処理で再決定された時刻保証通信用のタイムスロットを除いた期間を、帯域保証通信およびベストエフォート通信用のタイムスロットに再決定する。
【0110】
ステップS203では、ステップS202で再決定されたタイムスロットにおいて、帯域保証通信による帯域があふれるリンクの有無を判定する。例えば、再決定後のタイムスロットによる各リンクの使用可能帯域を計算し、この使用可能帯域と、帯域保証アプリケーションによる現在の通信スケジュールでの各リンクの使用帯域とを比較する。その結果、全てのリンクについて使用可能帯域が使用帯域以上であれば、帯域があふれるリンクは存在しないと判定してステップS205へ進む。一方、いずれかのリンクについて使用可能帯域が使用帯域未満であれば、帯域があふれるリンクが存在すると判定してステップS204へ進む。なお、帯域保証アプリケーションによる現在の通信スケジュールでの各リンクの使用帯域の情報は、例えばスケジュール記憶部54に記憶されている。
【0111】
ステップS204では、帯域保証通信の再設計を「必要」に設定する。ここでは、例えば帯域保証通信の再設計に関する所定のフラグ情報を「無効」から「有効」に切り替えることで、通信設計装置22において後述のステップS206の処理が実行されるようにする。
【0112】
ステップS205では、帯域保証通信の再設計が必要か否かを判定する。ここでは、例えばステップS204で帯域保証通信の再設計が「必要」に設定された場合や、次の(a2)~(d2)のいずれかの条件を満たす場合には、帯域保証通信の再設計が必要と判定してステップS206へ進み、そうでない場合には、帯域保証通信の再設計が不要と判定して図8のフローチャートに示す処理を終了する。なお、これらの条件は一例であり、他の条件を用いてステップS205の判定を行ってもよい。あるいは条件(b2)は、削除されない帯域保証アプリケーションの通信性能を劣化させないため、帯域保証通信の再設計が不要と判断することができる。
(a2)帯域保証アプリケーションの追加
(b2)帯域保証アプリケーションの削除
(c2)帯域保証アプリケーションの通信帯域の変化
(d2)ネットワーク情報の変化
【0113】
ステップS206は、帯域保証通信の通信経路再計算処理を行う。ここでは、図19のフローチャートに示す処理を実行することで、各帯域保証アプリケーションの通信経路とクラスの割り当てを再決定する。なお、図19のフローチャートに示す処理の詳細については後述する。
【0114】
ステップS206の処理を実行したら、通信設計装置22は図17のフローチャートに示す処理を終了する。
【0115】
(時刻保証通信のスケジュール再計算処理)
図18は、図17のステップS201で実行される時刻保証通信のスケジュール再計算処理の流れを示すフローチャートである。なお、図18のフローチャートにおいて、第1の実施形態で説明した図9のフローチャートに示す時刻保証通信のスケジュール計算処理と同一の処理を行う部分には、共通のステップ番号を付している。この図9と共通ステップ番号の処理については、特に必要のない限り、以下では説明を省略する。
【0116】
ステップS110~S118では、第1の実施形態で説明した図9のフローチャートと同様に、時刻保証通信の遅延要件毎にループ処理を実施する。ステップS110でループ処理を開始したら、次のステップS210では、スケジュール記憶部54から、第1の処理対象アプリケーション群による現在の通信スケジュールを表すタイムスロット情報を取得する。
【0117】
ステップS211では、ステップS210で取得したタイムスロット情報が表す現在の通信スケジュールと、アプリケーション管理装置24から入力された更新データとを比較し、第1の処理対象アプリケーション群の通信スケジュールに変更があるか否かを判定する。例えば、更新データにおいて他の時刻保証アプリケーションとは通信要件が異なる新たな時刻保証アプリケーションが追加されており、これによって当該時刻保証アプリケーションによる通信のタイムスロットを追加する必要がある場合など、通信スケジュールの変更が必要な場合は、ステップS111へ進む。この場合、第1の処理対象アプリケーション群について、第1の実施形態で説明した図9のフローチャートと同様の処理を実施する。一方、通信スケジュールの変更が不要な場合は、ステップS118へ進み、現在の第1の処理対象アプリケーション群に対するループ処理を終了する。
【0118】
時刻保証通信のスケジュール再計算処理では、スケジュール設定部51により、複数の時刻保証アプリケーションに対して以上説明した処理がそれぞれ実行される。これにより、更新後の時刻保証アプリケーションの通信要件に応じて、時刻保証アプリケーション毎に割り当てられる通信のタイムスロットの周期が車両1上で再設定されるとともに、複数の時刻保証アプリケーションに係る通信データのパケット長に基づいて、タイムスロットの長さが車両1上で再設定される。
【0119】
(帯域保証通信の通信経路再計算処理)
図19は、図17のステップS206で実行される帯域保証通信の通信経路再計算処理の流れを示すフローチャートである。
【0120】
ステップS220では、アプリケーション管理装置24から入力された更新データが表すアプリケーション更新内容が時刻保証通信のみの変更であり、帯域保証通信に対する変更の有無を判定する。帯域保証通信の変更がない場合はステップS221へ進み、変更がある場合は、帯域保証通信の通信経路を再計算する必要があると判断してステップS102へ進む。
【0121】
ステップS221では、帯域保証通信の合計帯域が使用可能帯域を超えるリンクの有無を判定する。車載ネットワーク20において、時刻保証通信の変更により使用可能帯域が減少し、その減少後の使用可能帯域が帯域保証通信の合計帯域以下であるリンクが存在する場合は、帯域保証通信の通信経路を再計算する必要があると判断してステップS102へ進む。一方、こうしたリンクが存在しない場合は、帯域保証通信の通信経路を再計算する必要はないと判断し、図19のフローチャートに示す処理を終了する。
【0122】
ステップS220またはS221からステップS102へ進んだ場合、ステップS102では、第1の実施形態で説明したのと同様の帯域保証通信の通信経路計算処理を行う。すなわち、図12のフローチャートに示す処理を実行することで、各帯域保証アプリケーションの通信経路とクラスを決定する。ステップS102の処理を実行したら、図19のフローチャートに示す処理を終了する。
【0123】
帯域保証通信の通信経路再計算処理では、スケジュール設定部51により、以上説明した処理がそれぞれ実行される。これにより、更新後の帯域保証アプリケーションの通信要件に応じて、通信経路の再設定とクラスの再割り当てが行われる。
【0124】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、通信設計装置22は、車載ネットワーク20における通信装置の接続関係および動作状態を含むネットワーク情報を収集するネットワーク情報収集部53と、スケジュール設定部51にて設定されたタイムスロットに関するタイムスロット情報を記憶するスケジュール記憶部54とをさらに備える。スケジュール設定部51は、車載ネットワーク20に新たな時刻保証アプリケーションが追加された場合、車載ネットワーク20から時刻保証アプリケーションが削除された場合、遅延許容時間又はパケット長が変化した場合、および、ネットワーク情報収集部53が収集したネットワーク情報が変化した場合、の少なくとも一つの条件を満たすときに(ステップS200:Yes)、スケジュール記憶部54に記憶されたタイムスロット情報に基づいて、タイムスロットの周期又は長さを再設定する(ステップS115,S116)。このようにしたので、車載ネットワーク20においてアプリケーションの更新により通信制御の変更が必要となった場合に、即時に対応することができる。
【0125】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る通信設計装置について、以下に図20を参照して説明する。なお、本実施形態では、図1で説明した車載ネットワーク20の通信状況を監視し、所望の通信性能要件を満足しないアプリケーションがある場合に、タイムスロットや通信経路の再設計を行い、その設計結果を車載ネットワーク20に反映させる通信設計装置の例を説明する。
【0126】
(通信設計装置の構成)
図20は、本発明の第3の実施形態に係る通信設計装置の構成を示す機能ブロック図である。図20に示すように、通信設計装置22は、例えば第1の実施形態で説明した通信要件記憶部50、スケジュール設定部51および設定出力部52と、第2の実施形態で説明したネットワーク情報収集部53およびスケジュール記憶部54とに加えて、さらに通信性能監視部55の各機能ブロックを備えて構成される。通信設計装置22におけるこれらの機能ブロックは、例えばコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0127】
通信性能監視部55は、車載ネットワーク20で実行される各アプリケーションにおける通信要件のうち、遅延許容時間を含む通信性能要件の充足状況をアプリケーション毎に監視する。そして、通信性能要件を満足しないアプリケーションがある場合には、当該アプリケーションを特定し、その結果をスケジュール設定部51へ出力する。
【0128】
本実施形態において、スケジュール設定部51は、第2の実施形態で説明した各条件を満たす場合に加えて、さらに通信性能監視部55が通信性能要件を満足しないアプリケーションを特定した場合にも、車載ネットワーク20の通信スケジュールの再設定を行う。このときスケジュール設定部51は、例えば、第2の実施形態で説明した図17のフローチャートに示す処理を実行することにより、第2の実施形態と同様にして、車載ネットワーク20の通信スケジュールの再設定を行うことができる。
【0129】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、通信設計装置22は、車載ネットワーク20における通信装置の接続関係および動作状態を含むネットワーク情報を収集するネットワーク情報収集部53と、アプリケーションにおける通信要件のうち遅延許容時間を含む通信性能要件の充足状況をアプリケーション毎に監視し、通信性能要件を満足しないアプリケーションがある場合に当該アプリケーションを特定する通信性能監視部55と、スケジュール設定部51にて設定されたタイムスロットに関するタイムスロット情報を記憶するスケジュール記憶部54とをさらに備える。スケジュール設定部51は、車載ネットワーク20に新たな時刻保証アプリケーションが追加された場合、車載ネットワーク20から時刻保証アプリケーションが削除された場合、遅延許容時間又はパケット長が変化した場合、ネットワーク情報収集部53が収集したネットワーク情報が変化した場合、および、通信性能監視部55が通信性能要件を満足しないアプリケーションを特定した場合、の少なくとも一つの条件を満たすときに、スケジュール記憶部54に記憶されたタイムスロット情報に基づいて、タイムスロットの周期又は長さを再設定する。このようにしたので、車載ネットワーク20において所望の通信性能要件を満足しないアプリケーションがある場合に、即時に対応することができる。
【0130】
なお、本発明は上記した各種の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することもできる。また、各実施形態の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【0131】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 車両
20 車載ネットワーク
21 ネットワーク情報入力装置
22 通信設計装置
23 通信設定装置
24 アプリケーション管理装置
50 通信要件記憶部
51 スケジュール設定部
52 設定出力部
53 ネットワーク情報収集部
54 スケジュール記憶部
55 通信性能監視部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20