(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170212
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】光通信装置、光通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20241129BHJP
【FI】
H04B10/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087244
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】菊井 良則
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA20
5K102AL23
5K102AL28
5K102PB18
5K102PH38
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】効率的な光通信を行うことを可能とする。
【課題手段】光通信システムは、光による無線通信である光通信を水中で行う光通信装置であって、球状又は多面体の構造体と、構造体に分散して配置された複数の受発光部210と、光通信装置から、水と他の物質との境界面までの第1距離を計測する計測部と、第1距離に基づいて、複数の受発光部210のうち一部の受発光部における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行う制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光による無線通信である光通信を水中で行う光通信装置であって、
球状又は多面体の構造体と、
前記構造体に分散して配置された複数の受発光部と、
前記光通信装置から、水と他の物質との境界面までの第1距離を計測する計測部と、
前記第1距離に基づいて、前記複数の受発光部のうち一部の受発光部における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行う制御部と、を備える
光通信装置。
【請求項2】
複数の送受信回路と、
複数のスイッチと、
をさらに備え、
前記複数のスイッチのそれぞれは、前記複数の受発光部のうち、前記光通信に同時に使用されない2以上の受発光部ごとに設けられ、
前記制御部は、前記2以上の受発光部のいずれか1つの受発光部と、前記複数の送受信回路のいずれか1つの送受信回路とを、前記スイッチを介して、電気的に接続させる
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の受発光部のそれぞれについて、前記第1距離に基づいて、当該受発光部から、当該受発光部の光軸方向に沿った前記境界面までの第2距離を導出する
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記複数の受発光部のそれぞれの前記境界面に対する傾き角度を検知する傾きセンサ
をさらに含み、
前記制御部は、前記複数の受発光部のそれぞれについて、前記第1距離と、前記傾きセンサにより検知された前記傾き角度とに基づいて、前記第2距離を導出する
請求項3に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記動作制限は、前記第2距離に応じて、前記一部の受発光部に含まれる発光素子をオフ状態にすること、又は前記発光素子の光量を所定光量よりも小さくすることである
請求項3に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2距離が短くなるほど、前記発光素子の光量を小さくする
請求項5に記載の光通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の受発光部のそれぞれについて、
前記第2距離が第1閾値よりも短い場合、当該受発光部に含まれる発光素子を前記所定光量よりも小さくし、
前記第2距離が第2閾値よりも短い場合、当該受発光部に含まれる発光素子をオフ状態にし、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも小さい値である
請求項5に記載の光通信装置。
【請求項8】
前記光通信装置が前記光通信装置の下方に位置する他の光通信装置との前記光通信を行う場合において、
前記境界面は、水面であり、
前記計測部は、前記光通信装置から前記水面までの距離を前記第1距離として計測する
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光通信装置。
【請求項9】
前記光通信装置が前記光通信装置の上方に位置する他の光通信装置との前記光通信を行う場合において、
前記境界面は、水底であり、
前記計測部は、前記光通信装置から前記水底までの距離を前記第1距離として計測する
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光通信装置。
【請求項10】
前記光通信装置が前記光通信装置の横方向に位置する他の光通信装置との前記光通信を行う場合において、
前記境界面は、壁面であり、
前記計測部は、前記光通信装置から前記壁面までの距離を前記第1距離として計測する
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光通信装置。
【請求項11】
光による無線通信である光通信を水中で行い、球状又は多面体の構造体に分散して配置された複数の受発光部を有する光通信装置を制御する光通信方法であって、
前記光通信装置から、水と他の物質との境界面までの第1距離を計測するステップと、
前記第1距離に基づいて、前記複数の受発光部のうち一部の受発光部における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行うステップと、を備える
光通信方法。
【請求項12】
光による無線通信である光通信を水中で行い、球状又は多面体の構造体に分散して配置された複数の受発光部を有する光通信装置に、
前記光通信装置から、水と他の物質との境界面までの第1距離を計測するステップと、
前記第1距離に基づいて、前記複数の受発光部のうち一部の受発光部における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行うステップと、を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信装置、光通信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水中での通信において、伝送媒体として光、特に、可視光を用いた無線通信(単に「光通信」とも称する)を行う光通信システムが知られている。光は高い指向性を持つため、従来の光通信システムでは、送信側及び受信側のそれぞれの光通信装置が固定されている前提下で、送信側及び受信側を対向させて1対1の光通信を行うことが一般的である。
【0003】
非特許文献1には、球状の筐体の表面に分散して配置された複数の受発光部を有し、これらの受発光部のすべてを常時オン状態に設定することで全方向に光通信を行う光通信装置が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Farhad Akhoundi et al. “Cellular Underwater Wireless Optical CDMA Network: Performance Analysis and Implementation Concepts”, IEEE TRANSACTIONS ON COMMUNICATIONS, VOL. 63, NO. 3, MARCH 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載のような従来の光通信装置には、効率的な光通信を行う点で改善の余地がある。例えば、従来の光通信装置のようにすべての受発光部を常時オン状態に設定する場合、光通信装置の消費電力が増大するという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、効率的な光通信を行うことが可能な光通信装置、光通信方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る光通信装置は、光による無線通信である光通信を水中で行う光通信装置であって、球状又は多面体の構造体と、前記構造体に分散して配置された複数の受発光部と、前記光通信装置から、水と他の物質との境界面までの第1距離を計測する計測部と、前記第1距離に基づいて、前記複数の受発光部のうち一部の受発光部における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行う制御部と、を備える。
【0008】
第2の態様に係る光通信方法は、光による無線通信である光通信を水中で行い、球状又は多面体の構造体に分散して配置された複数の受発光部を有する光通信装置を制御する光通信方法であって、前記光通信装置から、水と他の物質との境界面までの第1距離を計測するステップと、前記第1距離に基づいて、前記複数の受発光部のうち一部の受発光部における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行うステップと、を備える。
【0009】
第3の態様に係るプログラムは、光による無線通信である光通信を水中で行い、球状又は多面体の構造体に分散して配置された複数の受発光部を有する光通信装置に、前記光通信装置から、水と他の物質との境界面までの第1距離を計測するステップと、前記第1距離に基づいて、前記複数の受発光部のうち一部の受発光部における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行うステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、効率的な光通信を行うことが可能な光通信装置、光通信方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る光通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る光通信装置を側面から見たときの外観構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る光通信装置を天面から俯瞰したときの外観構成例を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る光通信装置の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る送受信回路、ロードスイッチ、受発光部、傾きセンサ、及び制御部の接続関係を説明する図である。
【
図7】
図6の光通信装置の送受信回路及び受発光部の接続関係を説明する図である。
【
図8】第1実施形態に係る光通信装置の各受発光部と水面との間の距離の導出例を説明する図である。
【
図9】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いていない状態の省電力制御の態様例を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いている状態の省電力制御の態様例を示す図である。
【
図11】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いていない状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの態様例を示す図である。
【
図12】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いている状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの態様例を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る光通信装置の動作例を説明するフローチャートである。
【
図14】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いていない状態の省電力制御の他の態様例を示す図である。
【
図15】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いている状態の省電力制御の他の態様例を示す図である。
【
図16】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いていない状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの他の態様例を示す図である。
【
図17】第1実施形態に係る光通信装置が水面に対して傾いている状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの他の態様例を示す図である。
【
図18】第1実施形態に係る送受信回路、ロードスイッチ、受発光部、傾きセンサ、及び制御部の他の接続関係を説明する図である。
【
図19】第1実施形態に係る光通信装置の点灯パターンの第1変形例を示す図である。
【
図20】第1実施形態に係る光通信装置の点灯パターンの第1変形例に対応する送受信回路、ロードスイッチ、受発光部、傾きセンサ、及び制御部の他の接続関係を説明する図である。
【
図21】第1実施形態に係る光通信装置の点灯パターンの第2変形例を示す図である。
【
図22】第1実施形態に係る光通信装置の点灯パターンの第2変形例に対応する送受信回路、ロードスイッチ、受発光部、傾きセンサ、及び制御部の他の接続関係を説明する図である。
【
図23】第2実施形態に係る光通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図24】第3実施形態に係る光通信システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、実施形態に係る光通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0013】
実施形態に係る光通信システムは、光の一例として可視光を用いて光通信を行うシステムである。但し、光通信システムは、可視光以外の光、例えば赤外光を用いて光通信を行うシステムであってもよい。また、実施形態に係る光通信システムは、水中において光通信を行うシステムである。水中における光通信とは、例えば、海洋、湖、又は河川等における光通信をいうが、以下の実施形態では、海洋(海中)において光通信を行う光通信システムを主として想定する。
【0014】
(第1実施形態)
(1)光通信システムの構成例
まず、一実施形態に係る光通信システムの構成例について説明する。
図1は、光通信システムの構成の一例を示す図である。
【0015】
光通信システム1では、光通信可能エリアを管理する基地局装置200が当該光通信可能エリア内の端末装置100との光通信を行う。図示の例では、光通信システム1は、複数の端末装置100(100a及び100b)と、基地局装置200とを有する。但し、端末装置100の数及び基地局装置200の数は、図示の例に限定されない。
【0016】
各端末装置100は、光通信装置の一例である。各端末装置100は、水中にある。各端末装置100は、水中を移動可能に構成されている。例えば、各端末装置100は、水中ロボット又は水中ドローン等の自走可能な装置であってもよい。端末装置100は、自身が在圏する光通信可能エリアを管理する基地局装置200に接続し、接続先の基地局装置200との光通信を行う。
【0017】
各端末装置100は、異なる方向に光軸(別の観点では、光通信の指向性)が向けられた複数の受発光部を有する。受発光部は、少なくとも1つの発光素子と少なくとも1つの受光素子とを含む。これにより、各端末装置100は、伝送媒体として光を用いつつ、複数の受発光部を用いて様々な方向に対する光通信を行うことができる。
【0018】
各端末装置100は、イメージセンサ等のセンサを備え、センサデータを生成してもよい。例えば、各端末装置100は、センサデータを含む上りリンク(UL:Uplink)データを光通信により基地局装置200に送信してもよい。各端末装置100は、指示データを含む下りリンク(DL:Downlink)データを光通信により基地局装置200から受信してもよい。端末装置100は、当該指示データに基づいて移動及びセンシング動作(撮影等)を行ってもよい。
【0019】
基地局装置200は、光通信装置の他の例である。水中に広い光通信可能エリアを構築するために、水平方向に間隔をおいて複数の基地局装置200が設置されもよい。基地局装置200は、例えば各端末装置100を用いた水中での調査を行う期間で一時的に設置されてもよい。
【0020】
基地局装置200は、例えば浮き部材3を有し、水面付近にある。基地局装置200は、バックホール回線を介してネットワークと通信可能に接続される。バックホール回線は、無線回線であってもよいし、有線回線であってもよい。ネットワークは、インターネットを含んでもよい。基地局装置200は、ネットワークを介して他の基地局装置との基地局間通信を行ってもよい。
【0021】
基地局装置200は、異なる方向に光軸が向けられた複数の受発光部210を有する。受発光部210は、少なくとも1つの発光素子と少なくとも1つの受光素子とを含む。図示の例では、基地局装置200は、球状の構造体が水中にあり、当該球状の構造体の表面に複数の受発光部210がアレイ状に配列されている。これにより、基地局装置200は、伝送媒体として光を用いつつ、複数の受発光部210を用いて様々な方向に対する光通信を行うことができる。
【0022】
基地局装置200は、自身に接続した端末装置100ごとに、当該端末装置100の方向に対応する自身の受発光部210を選択し、選択した受発光部210を用いて当該端末装置100との光通信を行う。同様に、端末装置100は、基地局装置200の方向に対応する自身の受発光部を選択し、選択した受発光部を用いて当該基地局装置200との光通信を行う。
【0023】
なお、基地局装置200は、自装置に固有の同期光信号及び/又は参照光信号を全受発光部から全方向に送信してもよい。端末装置100は、これらの光信号に基づいて基地局装置200の方向を特定するとともに、当該方向に対応する自身の受発光部210を特定し、特定した受発光部210を用いて当該基地局装置200との光通信を行ってもよい。
【0024】
このように、光通信システム1では、端末装置100及び基地局装置200のそれぞれは、複数の受発光部210をその表面に分散して配置し、通信相手の方向に対応する受発光部210を選択的に利用する。基地局装置200は、異なる指向性を持つ複数の発光素子から光信号を送信して光通信可能エリアを形成する。基地局装置200は、自光通信可能エリアに入った端末装置100の方向に対応する受発光部210を選択的に利用することで広範囲のエリアをカバーする。
【0025】
なお、基地局装置200は、球状の構造体が水中にあり、当該球状の構造体の表面に複数の受発光部210がアレイ状に配列されている一例について説明したが、特にこれに限定されない、例えば、基地局装置200は、多面体の構造体が水中にあり、当該多面体の構造体の表面に複数の受発光部210がアレイ状に配列されてもよい。
【0026】
また、複数の受発光部210の配列構成は、アレイ状に限定されない。複数の受発光部210は、球状又は多面体の構造体に分散して配置されればよい。また、複数の受発光部210のそれぞれの間隔も特に限定されない。例えば、底面側に近づくほど、複数の受発光部210のそれぞれの間隔が狭く配置され、天面側に近づくほど、複数の受発光部210のそれぞれの間隔が広く配置されている配置構成であってもよい。
【0027】
図示の例では、球状の構造体は球状の筐体である。この筐体の表面に複数の受発光部210が分散して配置されている。しかし、球状の構造体は球状の筐体に限定されない。球状の構造体は、複数の受発光部210が配置される被配置物である。この被配置物に複数の受発光部210が分散して配置され、複数の受発光部210の全体を透明な球状の筐体で覆う構成であってもよい。
【0028】
以下、光通信装置としての基地局装置200の詳細構成について主として説明するが、光通信装置としての端末装置100についても基地局装置200の詳細構成と同様の構成を有してもよい。
【0029】
(2)光通信装置の外観構成例
次に、一実施形態に係る光通信装置の外観構成例について説明する。
図2は、光通信装置を側面から見たときの外観構成例を示す図である。
図3は、光通信装置を天面から俯瞰したときの外観構成例を示す図である。
【0030】
図2に示すように、基地局装置200における球状の構造体201(以下、「球体」とも称する)の天面の中心と底面の中心とを結ぶ軸に垂直な面のうち最も面積の大きな面を基準面と想定する。基準面から±30°離れた箇所に、基準面から上下におけるそれぞれの1段目の受発光部210が複数設けられる。また、基準面から±60°離れた箇所に、基準面から上下におけるそれぞれの2段目の受発光部210が設けられる。
【0031】
例えば、
図3に示すように、基準面から+30°離れた箇所に設けられた受発光部210#7乃至#14は、基地局装置200における球体の天面の中心と底面の中心とを結ぶ軸を中心とした同心円状にある。また、基準面から+60°離れた箇所に設けられた受発光部#1乃至#6も、基地局装置200における球体の天面の中心と底面の中心とを結ぶ軸を中心とした同心円状にある。
【0032】
(3)光通信装置の機能ブロック構成例
次に、一実施形態に係る光通信装置の機能ブロック構成例について説明する。
図4は、光通信装置の機能ブロック構成例を示す図である。
図5は、送受信回路230、ロードスイッチ220、受発光部210、傾きセンサ240、及び制御部260の接続関係を説明する図である。なお、
図4及び
図5のいずれにおいても、
図1及び
図2に示す複数の受発光部210のうち一部の受発光部210の図示が省略される。また、以後の送受信回路230、受発光部210等の接続関係を説明する図においても同様に、
図1及び
図2に示す複数の受発光部210のうち一部の受発光部210の図示が省略される。
【0033】
基地局装置200は、複数の受発光部210と、複数のロードスイッチ220a~220cと、複数の送受信回路230a~230kと、傾きセンサ240と、計測部250と、制御部260と、バックホール通信部270とを有する。基地局装置200は、基地局装置200の動作に必要な電力を供給するためのバッテリを有してもよい。
【0034】
複数の受発光部210のそれぞれは、制御部260の制御下で光信号を端末装置100に送信する。複数の受発光部210のそれぞれは、発光素子211を有する。各発光素子211は、レーザダイオード(LD)又は発光ダイオード(LED)であってもよい。以下において、各発光素子211がLEDである一例について主として説明する。一実施形態では、複数の発光素子211は、それぞれ光軸の向きが異なる。すなわち、複数の発光素子211は、それぞれ異なる方向に指向性(送信指向性)を有する。なお、各発光素子211は、発光部として機能する。
【0035】
複数の受発光部210のそれぞれは、端末装置100から光信号を受信する。受発光部210のそれぞれは、受光素子212を有する。各受光素子212は、フォトダイオード(PD)であってもよい。各受光素子212は、光信号を受信し、受信した光信号を電気信号(受信信号)に変換し、受信信号を送受信回路230に出力する。
【0036】
例えば、受発光部210において、発光素子211と受光素子212とは1対1で設けられる。ここで、受光素子212は、対応する発光素子211と同じ方向に指向性(受信指向性)を有する。すなわち、複数の受発光部210における発光素子211及び受光素子212のそれぞれのペアは、それぞれ異なる方向に光信号を送信し、それぞれ異なる方向から光信号を受信する。なお、各受光素子212は、受光部として機能する。
【0037】
送受信回路230a乃至230kは、制御部260が出力する送信信号に対する信号処理を行い、信号処理後の信号を変換して各発光素子211に出力する。各発光素子211は、送受信回路230a乃至230kが光通信用に出力する電気信号(送信信号)を光信号に変換し、光信号を送信する。送受信回路230a乃至230kは、受光素子212が出力する受信信号を変換し、変換後の受信信号に対する信号処理を行って制御部260に出力する。送受信回路230a乃至230cは、ロードスイッチ220a乃至220cを制御する。送受信回路230は、FPGA及び/又はSoCにより構成されてもよい。なお、送信回路と受信回路とが一体に構成されたものの一例として、送受信回路230について説明するが、送信機能を有する送信回路と受信機能を有する受信回路とが別々に構成されてもよい。
【0038】
制御部260は、基地局装置200の全体的な動作を制御する。例えば、制御部260は、受発光部210を制御する。基地局装置200の動作は、制御部260の制御による動作であってもよい。制御部260は、少なくとも1つのプロセッサ261及び少なくとも1つのメモリ262を含む。メモリ262は、プロセッサ261により実行されるプログラム、及びプロセッサ261による処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサ261は、メモリ262に記憶されたプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0039】
各ロードスイッチ220は、送受信回路230a乃至230cを介した制御部260の制御下において、2つの受発光部210を選択可能な構成に形成されている。具体的には、複数のロードスイッチ220のそれぞれは、複数の受発光部210のうち、光通信に同時に使用されない2以上の受発光部210ごとに設けられる。つまり、ロードスイッチ220における2つの受発光部210は、光通信に同時に使用されないものとなっている。各ロードスイッチ220は、2つの受発光部210のうちいずれか1つと、対応する送受信回路230とを電気的に接続する。
【0040】
例えば、ロードスイッチ220aは、複数の受発光部210#1及び#4のうち、受発光部210#1と、送受信回路230aとを電気的に接続する。すなわち、制御部260は、2以上の受発光部210のいずれか1つの受発光部210と、複数の送受信回路230のいずれか1つの送受信回路230とを、ロードスイッチ220を介して、電気的に接続させる。このような動作によれば、1つの送受信回路230に、2つの受発光部210が対応することになるため、回路規模を小さくすることが可能となる。
【0041】
なお、各ロードスイッチ220は、本開示におけるスイッチに相当する。
【0042】
傾きセンサ240は、例えば、加速度センサ、及びジャイロセンサのうち、少なくとも1つを含む。なお、傾きセンサ240は、例えば、複数の水深センサ及び複数の水圧センサのうちのいずれかを含んでよい。複数の水深センサにより基地局装置200の傾き角度を計測するためには、複数の水深センサが一定間隔で基地局装置200内に配置されていればよい。具体的には、1つの水深センサの検知結果と、他の1つの水深センサの検知結果との差の経時的な変化と、それらの水深センサの配置場所とに基づいて、基地局装置200の傾き角度を計測することが可能である。水圧センサにより基地局装置200の傾き角度を計測するためには、複数の水圧センサが一定間隔で基地局装置200内に配置されていればよい。具体的には、1つの水圧センサの検知結果と、他の1つの水圧センサの検知結果との差の経時的な変化と、それらの水圧センサの配置場所とに基づいて、基地局装置200の傾き角度を計測することが可能である。
【0043】
計測部250は、光通信装置としての基地局装置200から、水と他の物質との境界面までの第1距離(T)を計測する。第1実施形態では、水と他の物質との境界面は、水面である。そのため、第1実施形態では、光通信装置としての基地局装置200から、水と他の物質との境界面までの第1距離(T)は、光通信装置としての基地局装置200の水深である。よって、計測部250は、水深を計測するためのセンサを含む。このようなセンサは、水深を計測できるセンサであればよく、例えば、水圧センサ及び/又は音波センサを含んでもよい。或いは、
図1に示す浮き部材3と
図2に示す構造体201とが巻き取り可能なケーブルで接続される場合、計測部250は、浮き部材3と構造体201との間のケーブル長を計測することで、光通信装置としての基地局装置200から、水と他の物質との境界面までの第1距離(T)を計測してもよい。
【0044】
バックホール通信部270は、制御部260の制御下で、バックホール回線を介したバックホール通信を行う。バックホール通信部270は、ネットワークとの通信を行うネットワーク通信部271と、隣接基地局との基地局間通信を行う基地局間通信部272とを有していてもよい。
【0045】
このように構成された基地局装置200は、水中において光通信可能エリアを形成する。受発光部210は、光による無線通信である光通信を光通信可能エリア内の端末装置100と行う。制御部260は、例えば、同一の送信情報に対応する光信号送信を所定時間間隔で繰り返し行うように受発光部210を制御する。
【0046】
(4)効率的な光通信を行う構成
次に、
図6及び
図7を用いて光通信の動作例を説明し、
図7乃至
図12を用いて効率的な光通信を行う構成を説明する。
【0047】
図6は、光通信装置の使用例を示す図である。
図6では、本開示における光通信装置としての基地局装置200との比較例として、光通信装置としての基地局装置2000における球状の構造体に分散して配置された複数の受発光部210の全てを常に動作させることを前提としている。
【0048】
図7は、光通信装置の送受信回路2300及び受発光部210の接続関係を説明する図である。
図7では、光通信装置としての基地局装置2000は、複数の受発光部210と、複数の送受信回路2300とを有する。複数の受発光部210のそれぞれと、複数の送受信回路2300のそれぞれとは、1対1で対応する接続構成である。よって、受発光部210の個数と同様の個数の送受信回路2300が必要となる。このような接続構成により、回路規模は大きくなる。また、全ての受発光部210を常時オン状態で動作させる。このような動作により、消費電力は大きくなる。よって、光通信装置としての基地局装置2000の回路規模及び消費電力が大きくなるという問題点がある。
【0049】
よって、光通信装置としての基地局装置200は、光通信装置としての基地局装置200から、水と他の物質(例えば、空気)との境界面までの第1距離に基づいて、複数の受発光部210のうち一部の受発光部210における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行う。
【0050】
以下、具体的に説明する。
【0051】
図8は、光通信装置の各受発光部210と水面との間の距離の導出例を説明する図である。受発光部210から受発光部210の光軸方向に沿った水面までの距離をXとする。基地局装置200における構造体201としての球体の中心に対する受発光部210の傾き角度をθとする。基地局装置200における構造体201としての球体の半径をrとする。基地局装置200における構造体201としての球体の中心から水面までの距離をTとする。Tは、光通信装置としての基地局装置200の水深を示す。
【0052】
上記の各種設定により、
図6の一例では、T=(X+r)sinθという式となる。よって、この式を変換すると、X+r=T/sinθとなる。さらに変換すると、X=(T/sinθ)-rとなる。よって、θ=30°の場合、sin30°=1/2となるため、X=2T-rとなる。
【0053】
ここで、Tを第1距離とし、xを第2距離とする。計測部250は、光通信装置としての基地局装置200から、水と他の物質である空気との境界面までの第1距離を計測する。第1距離は、例えば、水深センサにより計測される。制御部260は、第1距離に基づいて、複数の受発光部210のうち一部の受発光部210(以下、「対象受発光部」とも称する)における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行う。このような動作によれば、複数の受発光部210の全てを常時オン状態で動作させないため、消費電力を小さくすることが可能となる。よって、効率的な光通信を行うことが可能となる。
【0054】
具体的には、制御部260は、複数の受発光部210のそれぞれについて、第1距離に基づいて、当該受発光部210から、当該受発光部210の光軸方向に沿った境界面までの第2距離を導出する。このような動作によれば、当該受発光部210の光軸方向に沿った境界面までの第2距離を導出できるため、当該受発光部210と水面との距離を導出できる。よって、光通信への寄与度が低い受発光部210を見つけ出すことができる。例えば、所定光量で発光させる必要のない受発光部210を見つけ出すことができるようになり、そのような受発光部210の光量を小さくすることが可能となるため、効率よく光通信を行うことができる。
【0055】
ここで、第2距離は、制御部260によって導出される。すなわち、制御部260は、複数の受発光部210のそれぞれについて、第1距離と、傾きセンサ240により検知された傾き角度とに基づいて、第2距離を導出する。このような動作によれば、光通信装置の水深と傾き角度とから、第2距離を導出できるため、より簡易に第2距離を導出できる。これにより、導出用のロジックを組み込んだ回路規模を小さくすることが可能となる。なお、第2距離は、上述したように演算により導出されてもよく、あらかじめパラメータ(T,x,r,θ)が対応付けられたテーブルに基づいて導出されてもよい。
【0056】
より具体的には、制御部260による動作制限は、第2距離に応じて、一部の受発光部(対象受発光部)210に含まれる発光素子211をオフ状態にすること、又は発光素子211の光量を所定光量よりも小さくすることである。このような動作によれば、消費電力の削減が顕著に可能となるため、より効率的な光通信を行うことが可能となる。ここで、所定光量とは、動作制限がされていない場合の光量をいい、例えば、光通信装置としての基地局装置200が球状の光通信可能エリアを形成するための一律な光量である。よって、光通信可能エリアが広く設定されるほど、所定光量は大きく設定される。また、制御部260は、第2距離が短くなるほど、発光素子211の光量を小さく設定する。
【0057】
例えば、制御部260は、複数の受発光部210のそれぞれについて、第2距離が第1閾値よりも短い場合、当該受発光部210に含まれる発光部を所定光量よりも小さくする。制御部260は、複数の受発光部210のそれぞれについて、第2距離が第2閾値よりも短い場合、当該受発光部210に含まれる発光部をオフ状態にする。
【0058】
ここで、第2閾値は、第1閾値よりも小さい値である。第2閾値は、発光素子211をオフ状態にするか否かを判定するための値であるため、光通信をしない状況が成立する値であればよい。例えば、第2閾値として、端末装置100の筐体サイズより小さい値が設定されていれば、水面と基地局装置200との間に端末装置100が近づく隙間がないと想定されるため、発光素子211をオフ状態にしても光通信という観点では問題はない。
【0059】
(5)動作具体例
次に、光通信装置(基地局装置200)が光通信装置(基地局装置200)の下方に位置する他の光通信装置(端末装置100)との光通信を行う場合において、境界面が水面である動作例について、
図9乃至
図12を用いて説明する。
【0060】
図9は、光通信装置が水面に対して傾いていない状態の省電力制御の態様例を示す図である。
図9に示すように、複数の受発光部210のうち、水面に近い受発光部210の動作状態はオフ状態に設定される。また、複数の受発光部210のうち、オフ状態には至らないが水面に近い受発光部210の光量は所定光量よりも小さい光量に設定される。なお、受発光部210の動作状態は、例えば、オフ状態及びオン状態のいずれかであるが、オフ状態の時間間隔及びオン状態の時間間隔は特に限定されない。
【0061】
図10は、光通信装置が水面に対して傾いている状態の省電力制御の態様例を示す図である。
図10においては、海流により光通信装置が水面に対して傾いている状態となっている。このような状態であっても、複数の受発光部210のうち、水面に近い受発光部210の動作状態はオフ状態に設定される。また、複数の受発光部210のうち、オフ状態には至らないが水面に近い受発光部210の光量は所定光量よりも小さい光量に設定される。
【0062】
図11は、光通信装置が水面に対して傾いていない状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの態様例を示す図である。
図11において、基地局装置200の最天面は、浮き部材3との接続箇所であるため、受発光部210は配置されていない。また、水面に近い側の受発光部210#1乃至#6の動作状態はオフ状態に設定されている。つまり、受発光部210#1乃至#6の動作状態は消灯状態である。
【0063】
図12は、光通信装置が水面に対して傾いている状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの態様例を示す図である。
図12の一例では、水面に対する基地局装置200の傾き角度は30°である。この場合、受発光部210#1,210#2,210#3,210#8の動作状態がオフ状態に設定されている。ここで、受発光部210#7乃至210#14は同心円状にある第1段目のものであり、受発光部210#1乃至210#6は同心円状にある第2段目のものであり、第1段目の各受発光部210の光軸と第2段目の各受発光部210の光軸とのなす角は30°である。よって、水面に対する基地局装置200の傾き角度が30°以上とならない場合、受発光部210#1と210#4、受発光部210#2と210#5、及び受発光部210#3と210#6のそれぞれが同時に光通信を行う状態とはならない。よって、
図12に示すように、受発光部210#4乃至210#6の動作状態はオン状態を継続し、受発光部210#1乃至210#3及び210#8の動作状態はオフ状態に設定される。なお、基地局装置200の最天面は浮き部材3により固定されているため、基地局装置200は所定の角度(例えば、30°)以上に傾かないように調整されている。
【0064】
(6)光通信装置の動作例
図13は、光通信装置の動作例を説明するフローチャートである。
【0065】
ステップS11において、制御部260は、計測部250(この動作例では水深センサ、水圧センサ)より光通信装置(基地局装置200)の配置水位である第1距離を取得する。なお、第1距離を取得するためには、水深センサ及び水圧センサのいずれか一方の測定結果を得られればよい。
【0066】
ステップS12において、制御部260は、傾きセンサ240(この動作例では加速度センサ、ジャイロセンサ)より光通信装置(基地局装置200)の傾き値を取得する。
【0067】
ステップS13において、制御部260は、第1距離と傾き値とに基づいて搭載されている受発光部210と水面との第2距離を導出する。
【0068】
ステップS14において、制御部260は、第2距離が閾値A1以上であるか否かを判定する。制御部260により第2距離が閾値A1以上であると判定される場合(ステップS14:YES)、ステップS14の処理はステップS16の処理へ進む。一方、制御部260により第2距離が閾値A1未満であると判定される場合(ステップS14:NO)、ステップS14の処理はステップS15の処理へ進む。ここで、閾値A1は、本開示における第2閾値に相当する。
【0069】
ステップS15において、制御部260は、受発光部210をオフ状態に設定する。その後、ステップS15の処理は、ステップS19の処理へ進む。
【0070】
ステップS16において、制御部260は、第2距離が閾値A2以上であるか否かを判定する。制御部260により第2距離が閾値A2以上であると判定される場合(ステップS16:YES)、ステップS16の処理は、ステップS17の処理へ進む。一方、制御部260により第2距離が閾値A2未満であると判定される場合(ステップS16:NO)、ステップS16の処理は、ステップS18の処理へ進む。ここで、閾値A2は、本開示における第1閾値に相当する。
【0071】
ステップS17において、制御部260は、受発光部210を所定光量である発光レベル1で発光させる。
【0072】
ステップS18において、制御部260は、受発光部210を所定光量よりも小さい光量である発光レベル2で発光させる。
【0073】
ステップS19において、制御部260は、受発光部210の全てに対して実施されたか否かを判定する。制御部260により受発光部210の全てに対して実施されたと判定される場合(ステップS19:YES)、ステップS19の処理は、ステップS12の処理へ戻る。一方、制御部260により受発光部210の全てに対して実施されていないと判定される場合(ステップS19:NO)、ステップS19の処理は、ステップS13の処理へ戻る。
【0074】
なお、ステップS11乃至S19の処理では、複数の受発光部210の全てについての第2距離を求めるが、特にこれに限定されない。例えば、基地局装置200が球体であり、基地局装置200の傾き角度が30°を超えないと想定される場合、第2距離の判定が必要なものは基準面から上側の半球であるので、基準面から上側の半球に搭載されている複数の受発光部210についての第2距離を求める処理であってもよい。
【0075】
(7.1)省電力制御の他の態様例
次に、
図14乃至
図18を用いて、省電力制御の他の態様例を説明する。
図14は、光通信装置が水面に対して傾いていない状態の省電力制御の他の態様例を示す図である。
図14の一例では、端末装置100の侵入禁止エリアが設定されている。侵入禁止エリアは所定水深以上には端末装置100が移動しないように定めたエリアである。例えば、端末装置100側の水深を検知する機能を利用することで、端末装置100が侵入禁止エリアに侵入するのを回避させてもよい。このようにすることで、複数の受発光部210のうち、水面側を向く受発光部210の全ての動作状態をオフ状態に設定することが可能となる。このような動作により、より消費電力を低減させることが可能となる。
【0076】
図15は、光通信装置が水面に対して傾いている状態の省電力制御の他の態様例を示す図である。
図15においても、複数の受発光部210のうち、水面側を向く受発光部210の全ての動作状態をオフ状態に設定することが可能となる。このような動作により、より消費電力を低減させることが可能となる。
【0077】
図16は、光通信装置が水面に対して傾いていない状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの他の態様例を示す図である。
図17は、光通信装置が水面に対して傾いている状態を光通信装置の最天面から俯瞰したときの他の態様例を示す図である。
図18は、送受信回路230、ロードスイッチ220、受発光部210、傾きセンサ240、及び制御部260の他の接続関係を説明する図である。
図14に示すように、水面側への発光が不要であるため、
図16の一例では、複数の受発光部210のうち、天面側の受発光部210は設けられず、基準面より上には、受発光部210#1乃至210#8が設けられている。このように構成すれば、受発光部210及び送受信回路230の構成をさらに減らすことができるため、回路規模及び消費電力の両方をさらに削減することが可能となる。例えば、
図17に示すように、基地局装置200が30°傾いた場合、受発光部210#1乃至210#3及び210#8は水面側を向くため、動作状態がオフ状態に設定されることが可能である。ここで、同心円状において互いに向き合う位置に配置されている受発光部210がロードスイッチ220を共有することで、回路規模をさらに削減することが可能となる。
図18の一例では、受発光部210#1及び210#5、受発光部210#2及び210#6、受発光部210#3及び210#7、受発光部210#4及び210#8の組み合わせのそれぞれが、ロードスイッチ220を共有する。このような構成により、送受信回路230もさらに削減可能である。
【0078】
(7.2)省電力制御の他の態様例
次に、
図19及び
図20を用いて、省電力制御の他の態様例を説明する。
図19は、光通信装置の点灯パターンの第1変形例を示す図である。
図20は、光通信装置の点灯パターンの第1変形例に対応する送受信回路230、ロードスイッチ220、受発光部210、傾きセンサ240、及び制御部260の他の接続関係を説明する図である。
図19の一例では、6個の受発光部210のうち、2個の受発光部210の動作状態がオン状態となる。つまり、受発光部210#1、210#3、210#5のそれぞれが同時に光通信を行うことがない。また、受発光部210#2、210#4、210#6のそれぞれが同時に光通信を行うことがない。よって、
図18の一例では、受発光部210#1、210#3、210#5のそれぞれがロードスイッチ220sを共有する。また、受発光部210#2、210#4、210#6のそれぞれがロードスイッチ220uを共有する。
【0079】
(7.3)省電力制御の他の態様例
次に、
図21及び
図22を用いて、省電力制御の他の態様例を説明する。
図21は、光通信装置の点灯パターンの第2変形例を示す図である。
図22は、光通信装置の点灯パターンの第2変形例に対応する送受信回路230、ロードスイッチ220、受発光部210、傾きセンサ240、及び制御部260の他の接続関係を説明する図である。
図21の一例では、5個の受発光部210のうち、3個の受発光部210の動作状態がオン状態となる。つまり、受発光部210#1、210#2、210#4のそれぞれが同時に光通信を行うことがない。また、受発光部210#3、210#5のそれぞれが同時に光通信を行うことがない。よって、
図22の一例では、受発光部210#1乃至210#5に対し、ロードスイッチ220v,220w,220zと、送受信回路230v,230w,230zとで対応可能である。
【0080】
(第2実施形態)
次に、光通信装置(基地局装置200)が光通信装置(基地局装置200)の上方に位置する他の光通信装置(端末装置100)との光通信を行う場合において、境界面が水底である動作例について、
図23を用いて説明する。
【0081】
図23は、第2実施形態に係る光通信システムの構成の一例を示す図である。
図23に示すように、複数の受発光部210のうち、水底に近い受発光部210の動作状態はオフ状態に設定される。また、複数の受発光部210のうち、オフ状態には至らないが水底に近い受発光部210の光量は所定光量よりも小さい光量に設定される。このような動作によれば、効率的な光通信を行うことが可能である。
【0082】
(第3実施形態)
次に、光通信装置(基地局装置200)が光通信装置(基地局装置200)の横方向に位置する他の光通信装置(端末装置100)との光通信を行う場合において、境界面が壁面である動作例について、
図24を用いて説明する。
【0083】
図24は、第3実施形態に係る光通信システムの構成の一例を示す図である。
図24に示すように、複数の受発光部210のうち、壁面に近い受発光部210の動作状態はオフ状態に設定される。また、複数の受発光部210のうち、オフ状態には至らないが壁面に近い受発光部210の光量は所定光量よりも小さい光量に設定される。このような動作によれば、効率的な光通信を行うことが可能である。
【0084】
端末装置100又は基地局装置200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。また、端末装置100又は基地局装置200が行う各処理を実行する回路を集積化し、端末装置100又は基地局装置200の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0085】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on/in response to)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0086】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、以上では制御部260が各ロードスイッチ220を制御するものとして述べたが、傾きセンサ240が直接各ロードスイッチ220を制御するとしてもよい。
【0087】
(8)付記
上述の実施形態に係る特徴に関して付記する。
【0088】
(付記1)
光による無線通信である光通信を水中で行う光通信装置(200)であって、
球状又は多面体の構造体(201)と、
前記構造体に分散して配置された複数の受発光部(210)と、
前記光通信装置(200)から、水と他の物質との境界面までの第1距離(T)を計測する計測部(250)と、
前記第1距離(T)に基づいて、前記複数の受発光部(210)のうち一部の受発光部(210)における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行う制御部(260)と、を備える
光通信装置。
【0089】
(付記2)
複数の送受信回路(230)と、
複数のスイッチ(220)と、
をさらに備え、
前記複数のスイッチ(220)のそれぞれは、前記複数の受発光部(210)のうち、前記光通信に同時に使用されない2以上の受発光部(210)ごとに設けられ、
前記制御部(260)は、前記2以上の受発光部(210)のいずれか1つの受発光部(210)と、前記複数の送受信回路(230)のいずれか1つの送受信回路(230)とを、前記スイッチ(220)を介して、電気的に接続させる
付記1に記載の光通信装置。
【0090】
(付記3)
前記制御部(260)は、前記複数の受発光部(210)のそれぞれについて、前記第1距離(T)に基づいて、当該受発光部(210)から、当該受発光部(210)の光軸方向に沿った前記境界面までの第2距離(X)を導出する
付記1に記載の光通信装置。
【0091】
(付記4)
前記計測部(250)は、前記複数の受発光部(210)のそれぞれの前記境界面に対する傾き角度(θ)を検知する傾きセンサ(240)
をさらに含み、
前記制御部(260)は、前記複数の受発光部(210)のそれぞれについて、前記第1距離(T)と、前記傾きセンサ(240)により検知された前記傾き角度(θ)とに基づいて、前記第2距離(X)を導出する
付記3に記載の光通信装置。
【0092】
(付記5)
前記動作制限は、前記第2距離(X)に応じて、前記一部の受発光部(210)に含まれる発光素子(211)をオフ状態にすること、又は前記発光素子(211)の光量を所定光量よりも小さくすることである
付記3に記載の光通信装置。
【0093】
(付記6)
前記制御部(260)は、前記第2距離(X)が短くなるほど、前記発光素子(211)の光量を小さくする
付記5に記載の光通信装置。
【0094】
(付記7)
前記制御部(260)は、前記複数の受発光部(210)のそれぞれについて、
前記第2距離(X)が第1閾値よりも短い場合、当該受発光部(210)に含まれる発光部を前記所定光量よりも小さくし、
前記第2距離(X)が第2閾値よりも短い場合、当該受発光部(210)に含まれる発光部をオフ状態にし、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも小さい値である
付記5に記載の光通信装置。
【0095】
(付記8)
前記光通信装置が前記光通信装置の下方に位置する他の光通信装置との前記光通信を行う場合において、
前記境界面は、水面であり、
前記計測部(250)は、前記光通信装置から前記水面までの距離を前記第1距離(T)として計測する
付記1乃至7のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0096】
(付記9)
前記光通信装置が前記光通信装置の上方に位置する他の光通信装置との前記光通信を行う場合において、
前記境界面は、水底であり、
前記計測部(250)は、前記光通信装置から前記水底までの距離を前記第1距離(T)として計測する
付記1乃至7のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0097】
(付記10)
前記光通信装置が前記光通信装置の横方向に位置する他の光通信装置との前記光通信を行う場合において、
前記境界面は、壁面であり、
前記計測部(250)は、前記光通信装置から前記壁面までの距離を前記第1距離(T)として計測する
付記1乃至7のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0098】
(付記11)
光による無線通信である光通信を水中で行い、球状又は多面体の構造体に分散して配置された複数の受発光部(210)を有する光通信装置(200)を制御する光通信方法であって、
前記光通信装置(200)から、水と他の物質との境界面までの第1距離(T)を計測するステップと、
前記第1距離(T)に基づいて、前記複数の受発光部(210)のうち一部の受発光部(210)における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行うステップと、を備える
光通信方法。
【0099】
(付記12)
光による無線通信である光通信を水中で行い、球状又は多面体の構造体に分散して配置された複数の受発光部を有する光通信装置(200)に、
前記光通信装置(200)から、水と他の物質との境界面までの第1距離(T)を計測するステップと、
前記第1距離(T)に基づいて、前記複数の受発光部(210)のうち一部の受発光部(210)における受光動作及び発光動作のうち少なくとも一方の動作を制限する動作制限を行うステップと、を実行させる
プログラム。
【符号の説明】
【0100】
3 :浮き部材
100,100a,100b :端末装置
200,2000 :基地局装置
201 :構造体
210 :受発光部
211 :発光素子
212 :受光素子
220,220a~220c :ロードスイッチ
230,230a~230k,2300 :送受信回路
240 :傾きセンサ
250,2500 :計測部
260 :制御部
261 :プロセッサ
262 :メモリ