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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170216
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/24 20060101AFI20241129BHJP
   B65D 77/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B65D5/24 E
B65D77/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087251
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 晴加
(72)【発明者】
【氏名】篠原 隆昌
【テーマコード(参考)】
3E060
3E067
【Fターム(参考)】
3E060AB12
3E060AB15
3E060BB01
3E060BC01
3E060BC04
3E060DA24
3E060DA30
3E060EA13
3E067AB01
3E067BA10A
3E067BB01A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA15
3E067CA17
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA01
(57)【要約】
【課題】 紙容器を電子レンジにより加熱した場合でも、外観不良が生じにくく、複合基材の一方面及び他方面との接合性(密着性)に優れた紙容器を提供する。
【解決手段】 紙容器は、紙の基材層10と、基材層10の一方面に形成された第1樹脂層11と、基材層10の他方面に形成された第2樹脂層12とを備える複合基材7から得られた一枚の原紙が成形され構成されている。又、複合基材7から第2樹脂層12を除いた部分の透湿性は、複合基材7から第1樹脂層11を除いた部分の透湿性よりも高く、複合基材7の一方面13及び他方面14を接着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下である。このように構成することで、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層から透過すると共に、複合基材の一方面及び他方面との剥離を防止する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙からなる基材層と前記基材層の一方面に形成された樹脂を含む第1樹脂層と前記基材層の他方面に形成された樹脂を含む第2樹脂層とを備えた複合基材から構成される紙容器であって、
前記複合基材から前記第2樹脂層を除いた部分の透湿性は、前記複合基材から前記第1樹脂層を除いた部分の透湿性よりも高く、
前記複合基材の一方面及び他方面を接着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下である、紙容器。
【請求項2】
前記基材層のみの透湿性Aに対する前記複合基材から前記第2樹脂層を除いた部分の透湿性Bの比(B/A)が、0.6以上である、請求項1記載の紙容器。
【請求項3】
前記複合基材から前記第2樹脂層を除いた部分の透湿性が、80g/m・h以上である、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項4】
前記第1樹脂層の厚みが0.5μm以上10μm以下であり、前記第2樹脂層の厚みが10μm以上50μm以下であり、前記第1樹脂層の厚みが前記第2樹脂層の厚みより小さい、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項5】
前記第2樹脂層は、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項6】
前記第1樹脂層は、少なくともウレタン樹脂を含む、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項7】
前記第1樹脂層は、外面側であり、少なくともウレタン樹脂を含み、
前記第2樹脂層は、内面側であり、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項8】
底部と、前記底部の周縁から立ち上がる側壁部とを備え、
前記側壁部のコーナー部において前記複合基材の前記一方面及び前記他方面が高周波溶着により溶着されている、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項9】
前記側壁部は、その立ち上がり端部から外方へ延びる平坦なフランジを更に備える、請求項8記載の紙容器。
【請求項10】
前記側壁部の前記コーナー部における前記フランジの裏面において、前記複合基材の前記一方面及び前記他方面が接着されている、請求項9記載の紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紙容器に関し、特に、1枚のブランクを成形して得られ、食品等を収納する紙トレー等として用いられる紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量且つコスト的に有利な食品の収納容器として、例えばポリプロピレン等の合成樹脂からなるプラスチック容器がある。しかし、近年のマイクロプラスチック問題からプラスチック容器の使用が控えられ、プラスチック容器に代えて、主に紙からなる紙容器の使用が好まれる傾向にある。
【0003】
このような紙容器として、特許文献1では、1枚の板紙原紙(紙ブランク)に対し外周縁に向かってほぼ放射状に延びる複数の線条を設け、プレス成形によって形成されるものが開示されている。紙容器のフランジ端部には縁巻が形成されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の紙容器では、紙の深絞りのような成形方法であるため、紙容器深さを深くしようとすると成形時に紙の破れが生じる虞があり、深型形状の紙容器を製造することが難しい。
【0005】
そこで、1枚の紙ブランクから製造される紙容器深さが深い紙容器としては、特許文献2において、所定形状のブランクを折り曲げて底部と側面部とを形成すると共にコーナー部を折り込み接着することで深型形状としたものが提案されている。
【0006】
このような紙容器にあっては、収容物が冷凍食品等の水分を多く含むものとする場合があるため、耐水性や耐油性を付与すべく板紙原紙の少なくとも内面側となる一方面に樹脂層を形成することが好ましい。しかし、特許文献2のようにコーナー部を折り込み接着するような場合は、板紙原紙の両面に樹脂層を設けて当該樹脂層によりコーナー部を熱溶着や高周波溶着することで容器形状を保持しているが、コーナー部の接合が弱いと容器形状を保持することができないことがある。
【0007】
そこで、このような問題を解決した紙容器として、特許文献3に示すものが存在している。
【0008】
図5は特許文献3に示す従来の紙容器の外観形状を示した斜視図であり、図6図5で示したVI-VIラインの拡大端面図である。
【0009】
図5を参照して、紙容器51は、底部52と、底部52の周縁から立ち上がる側壁部53と、側壁部53の立ち上がり端部54から外方へ延びる平坦なフランジ55とから構成されている。又、図6を参照して、底部52は、紙からなる基材層60と、基材層60の両面に積層されたポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)からなる樹脂層61a、61bとを備えた複合基材57から構成されている。尚、側壁部53も同様に複合基材57から構成されている。そして、コーナー部が折り込み溶着されると共に、コーナー部におけるフランジの接合部分、即ち、複合基材57の一方面63及び他方面64の密着性が所定の範囲内となるように高周波溶着により溶着されている。これにより、樹脂層界面での剥離を防止するため、紙容器の信頼性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10-071656号公報
【特許文献2】特開2000-255546号公報
【特許文献3】特開2021-160744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3に示す従来の紙容器に冷凍食品等を収容し、喫食する際に電子レンジ加熱を行う場合がある。
【0012】
図7図6に示した複合基材から構成される紙容器を電子レンジにより加熱した後の複合基材表面の状態を示す図である。
【0013】
図7を参照して、紙容器に冷凍食品等を収容し、喫食する際に電子レンジ加熱を行った場合、複合基材の樹脂層表面65に細かな気泡が無数に発生し、表面がぶつぶつ沸き上がったような状態になってしまう現象が発見された。以下、このような現象を「樹脂沸き」と呼ぶ。
【0014】
これは、電子レンジによる加熱により紙容器にマイクロ波が照射されると、複合基材を構成する紙からなる基材層に含まれる水分の水分子が高速振動を起こし加熱されることで水蒸気となるが、PETからなる樹脂層は水蒸気が透過しにくく、基材層の両面にPET樹脂が積層されていることにより水蒸気の逃げ場がなく、その結果、樹脂層表面に水蒸気による細かな気泡が無数に発生した状態となってしまう。上記のような特許文献3に示す従来の紙容器にあっては、電子レンジにより加熱した場合に、樹脂沸きにより見栄えが悪くなり外観不良となる。又、場合によっては樹脂層同士の接合状態が劣化し、容器形状を保持できない虞もある。更に、喫食者にも心理的不安をあたえることにもなる。基材層の片面のみに樹脂層を積層すれば電子レンジ加熱時の外観不良は生じないが、そもそも複合基材の一方面及び他方面とを接合(密着)させることができなくなり、紙容器として成形することができない。
【0015】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、紙容器を電子レンジにより加熱した場合でも、外観不良が生じにくく、複合基材の一方面及び他方面との接合性(密着性)に優れた紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紙からなる基材層と基材層の一方面に形成された樹脂を含む第1樹脂層と基材層の他方面に形成された樹脂を含む第2樹脂層とを備えた複合基材から構成される紙容器であって、複合基材から第2樹脂層を除いた部分の透湿性は、複合基材から第1樹脂層を除いた部分の透湿性よりも高く、複合基材の一方面及び他方面を接着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であるものである。
【0017】
このように構成すると、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層から透過するとともに、複合基材の一方面及び他方面との剥離を防止する、という作用1が得られる。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、基材層のみの透湿性Aに対する複合基材から第2樹脂層を除いた部分の透湿性Bの比(B/A)が、0.6以上であるものである。
【0019】
このように構成すると、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層からより透過しやすくなる、という作用2が得られる。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、複合基材から第2樹脂層を除いた部分の透湿性が、80g/m・h以上であるものである。
【0021】
このように構成すると、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層からより確実に透過しやすくなる、という作用3が得られる。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、第1樹脂層の厚みが0.5μm以上10μm以下であり、第2樹脂層の厚みが10μm以上50μm以下であり、第1樹脂層の厚みが第2樹脂層の厚みより小さいものである。
【0023】
このように構成すると、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層からより確実に透過しやすくなる、という作用4が得られる。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、第2樹脂層は、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を含むものである。
【0025】
このように構成すると、複合基材の第2樹脂層側に耐水性や耐油性を付与することができる。又、第1樹脂層との密着性が向上する、という作用5が得られる。
【0026】
請求項6記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、第1樹脂層は、少なくともウレタン樹脂を含むものである。
【0027】
このように構成すると、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層から確実に透過しやすくなるともに、第2樹脂層との密着性が向上する。又、複合基材の第1樹脂層の耐油性が向上する、という作用6が得られる。
【0028】
請求項7記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、第1樹脂層は、外面側であり、少なくともウレタン樹脂を含み、第2樹脂層は、内面側であり、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を含むものである。
【0029】
このように構成すると、紙容器の内面側に耐水性や耐油性を付与すると共に、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が外面側から確実に透過しやすくなる。又、複合基材の第1樹脂層の耐油性が向上する、という作用7が得られる。
【0030】
請求項8記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、底部と、底部の周縁から立ち上がる側壁部とを備え、側壁部のコーナー部において複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着されているものである。
【0031】
このように構成すると、紙容器の成形の安定性が向上する、という作用8が得られる。
【0032】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の構成において、側壁部は、その立ち上がり端部から外方へ延びる平坦なフランジを更に備えるものである。
【0033】
このように構成すると、フランジが持ち手となる、という作用9が得られる。
【0034】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の構成において、側壁部のコーナー部におけるフランジの裏面において、複合基材の一方面及び他方面が接着されているものである。
【0035】
このように構成すると、接着箇所を大きくとることができる、という作用10が得られる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、上記作用1が得られるため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良が生じにくく、複合基材の一方面及び他方面との接合性(密着性)に優れる。
【0037】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、上記作用2が得られるため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良がより生じにくくなる。
【0038】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用3が得られるため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良が更に生じにくくなる。
【0039】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用4が得られるため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良が更に生じにくくなる。
【0040】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用5が得られるため、水分や油分を含む食品の収容に適した容器とすることができる。
【0041】
請求項6記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用6が得られるため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良を更に生じさせにくくすると共に、複合基材の一方面及び他方面との接合性(密着性)が更に優れた紙容器とすることができる。又、油分を含む食品の収容に対して、より適した容器とすることができる。
【0042】
請求項7記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用7が得られるため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良を更に生じさせにくくすることができると共に、水分や油分を含む食品の収容に対して適した容器とすることができる。
【0043】
請求項8記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用8が得られるため、紙容器の信頼性が向上する。
【0044】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の効果に加えて、上記作用9が得られるため、内容物が高温となるときの使用に便宜となる。
【0045】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の効果に加えて、上記作用10が得られるため、紙容器の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】この発明の実施の形態の紙容器の外観を示す斜視図である。
図2図1で示したII-IIラインの拡大端面図である。
図3図1で示した紙容器を構成するためのブランクを示す平面図である。
図4図1で示した紙容器の裏面構造を示す斜視図である。
図5】特許文献3に示す従来の紙容器の外観を示す斜視図である。
図6図5で示したVI-VIラインの拡大端面図である。
図7図6に示した複合基材から構成される紙容器を電子レンジにより加熱した後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1はこの発明の実施の形態の紙容器の外観を示す斜視図であり、図2図1で示したII-IIラインの拡大端面図である。
【0048】
図1及び図2を参照して、紙容器1は、矩形形状の底部2と、底部2の対向する一対の長辺の各々から立ち上がる一対の第1側壁部3a、3bと、底部2の対向する一対の短辺の各々から立ち上がる一対の第2側壁部4a、4bとから主に構成されている。又、第1側壁部3a、3bは、その立ち上がり端部8a、8bから外方へ延びる平坦な第1フランジ5a、5bを備える。第2側壁部4a、4bは、その立ち上がり端部9a、9bから外方へ延びる平坦な第2フランジ6a、6bを備える。
【0049】
図2を参照して、底部2は、紙からなる基材層10と、基材層10の一方面(紙容器1の外面側)に形成された第1樹脂層11と、基材層の他方面(紙容器1の内面側)に形成された第2樹脂層12とを備えた複合基材7から構成されている。尚、紙容器1の外面側とは、側壁部(第1側壁部3及び第2側壁部4)において外面側となる面をいい、紙容器1の内面側とは、側壁部において内面側となる面をいう。第1樹脂層11は塗工により基材層10の一方面に積層され、第2樹脂層12は押出ラミネートにより基材層10の他方面に積層されている。又、第1樹脂層11の厚みは5μm、第2樹脂層12の厚みは30μmとなっている。尚、第1側壁部3a、3b及び第2側壁部4a、4bも同様に複合基材7から構成されている。
【0050】
複合基材7から第2樹脂層12を除いた部分の透湿性は、複合基材7から第1樹脂層11を除いた部分の透湿性よりも高くなるように構成されている。このように構成したことによる効果は後述する。
【0051】
次に、このような紙容器1を構成する方法について説明する。
【0052】
まず、紙基材の基材層10の他方面に対し、押出ラミネートにより第2樹脂層12を積層し、基材層10の一方面に対し、塗工により第1樹脂層11を積層し、複合基材7を構成する。そして複合基材7を所定形状に打ち抜き、ブランクを形成する。
【0053】
図3図1で示した紙容器を構成するためのブランクを示す平面図である。
【0054】
図3を参照して、ブランク17は、紙容器1(図1等を参照)の底部2に当たる矩形形状の底部ブランク18と、底部ブランク18の対向する一対の長辺の各々から外方に延びる一対の第1側壁部ブランク19a、19bと、底部ブランク18の対向する一対の短辺の各々から外方に延びる一対の第2側壁部ブランク20a、20bと、第1側壁部ブランク19a、19bの各々の外縁の中央部から延出する第1側方舌片21a、21bと、第1側壁部ブランク19a、19bの第2側壁部ブランク20a、20b側の各々の端部の外縁から延出する接合用舌片22a、22b、22c、22dと、第2側壁部ブランク20a、20bの各々の外縁から延出する第2側方舌片23a、23bとから構成されている。
【0055】
次に、第2樹脂層12が紙容器1の内面側となるようにして、ブランク17を、図3に破線で示す山折り線24に沿って山折りに折り曲げると共に、同図に二点鎖線で示す谷折り線25に沿って谷折りに折り曲げて容器形状を構成する。
【0056】
図4図1で示した紙容器の裏面構造を示す斜視図である。
【0057】
図3及び図4を参照して、ブランク17の底部ブランク18は紙容器1の底部2を構成し、第1側壁部ブランク19a、19bは第1側壁部3a、3bを構成し、第2側壁部ブランク20a、20bは第2側壁部4a、4bを構成し、第1側方舌片21a、21bは第1フランジ5a、5bを構成し、第2側方舌片23a、23bは第2フランジ6a、6bを構成する。
【0058】
又、第2フランジ6a、6bの裏面に接合用舌片22a~22d及び第1フランジ5a、5bの端部は配置される。そして、容器形状を保持した状態で、加熱されたプレス金型によって加圧プレスしながら、側壁部(第1側壁部3及び第2側壁部4)のコーナー部において、第2フランジ6a、6bの一方面(裏面)と、接合用舌片22a~22dの他方面(表面)及び第1フランジ5a、5bの他方面(表面)とをそれぞれ高周波溶着により溶着することで、紙容器1が構成される。即ち、底部2の周縁から立ち上がる側壁部(第1側壁部3及び第2側壁部4)を備える紙容器1が構成される。尚、側壁部のコーナー部とは、複合基材が重なる部分及び溶着される部分をいい、図4において“A”部分として示す、フランジ裏面における接着されている箇所(接合用舌片及びフランジの一部)及びこれと連続した側壁部における接着されていない箇所を含む。又、接合箇所における複合基材の一方面13及び他方面14の密着性は4.0N/cm以上20.0N/cm以下となっている。
【0059】
上述したように、紙容器1は、複合基材7から第2樹脂層12を除いた部分の透湿性は、複合基材7から第1樹脂層11を除いた部分の透湿性よりも高くなるように構成されている。又、複合基材の一方面及び他方面を接着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下となっている。このように構成することで、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層から透過するとともに、複合基材の一方面及び他方面との剥離を防止する。そのため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良が生じにくく、複合基材の一方面及び他方面との接合性(密着性)に優れる。
【0060】
ここで、接合箇所の密着性が低い場合、接合箇所が容易に剥がれてしまい、紙容器として成り立たない。言い換えると、樹脂沸きという課題を解決するためには、単に透湿性を高くするだけでは紙容器としては成り立たない場合があり、本願発明では透湿性と密着性を両立させることで、樹脂沸きという課題を解決し、外観不良が生じにくく、接合箇所の密着性に優れた信頼性の高い紙容器が得られるという効果を奏している。
【0061】
又、紙容器1はコーナー部において複合基材7の一方面13及び他方面14が高周波溶着により溶着されていることで、紙容器の成形の安定性が向上するため、信頼性が向上する。
【0062】
更に、側壁部(第1側壁部3及び第2側壁部4)の立ち上がり端部(第1側壁部の立ち上がり端部8及び第2側壁部の立ち上がり端部9)から外方へ延びる平坦なフランジ(第1フランジ5及び第2フランジ6)を備えることで、フランジが持ち手となるため、内容物が高温となるときの使用に便宜となる。
【0063】
更に、溶着はフランジ(第1フランジ5及び第2フランジ6)の裏面においてなされていることで、意匠性を損なわず溶着箇所を大きくとることができるため、容器の信頼性が向上する。
【0064】
尚、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、紙容器が特定形状であったが、形状は特に限定されない。例えば紙容器開口上方から見た形状が多角形、円形、略楕円形のもの等が挙げられるが、成形の簡便さから四角形から八角形の多角形であることが好ましい。又、紙容器の大きさも特に限定されない。
【0065】
又、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、基材層を構成する紙の種類は特に限定されない。所望の用途に応じて、純白ロール紙、クラフト紙、パーチメント紙、アイボリー紙、マニラ紙、カード紙、カップ紙、グラシン紙等を用いることができる。又、紙の厚さは特に限定されないが、0.2mm~0.5mm(坪量150g/m~500g/m)程度であることが好ましい。このように構成することで、紙容器の成形が容易となると共に紙容器のコストを抑制することができる。
【0066】
本発明の実施の形態による紙容器にあっては、第1樹脂層を構成する樹脂の種類は特に限定されないが、複合基材から第2樹脂層を除いた部分(即ち、基材層及び第1樹脂層の部分)の透湿性は、前記複合基材から第1樹脂層を除いた部分(即ち、基材層及び第2樹脂層の部分)の透湿性よりも高くなる樹脂である。第1樹脂層をこのような樹脂とすることで、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層から透過することが可能となる。尚、透湿性の比較については、単に樹脂層同士のみを比較するのではなく、基材層と第1樹脂層、第2樹脂層のそれぞれを合わせた状態で比較している。なぜなら、電子レンジ加熱時において、基材層に含まれる水分子が水蒸気となって樹脂層を通過しようとするため、基材層と第1樹脂層、第2樹脂層のそれぞれを合わせた状態で測定した透湿性が重要となるからである。
【0067】
第1樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂を含む樹脂が挙げられる。第1樹脂層としてウレタン樹脂を含む場合には、更にロジン樹脂を含むのが好ましく、更に、ロジン樹脂が、ロジン及び/又はロジン誘導体であり、ウレタン樹脂が、ポリオール及びポリイソシアネートの反応物であり、ウレタン樹脂の重量平均分子量が、5,000以上500,000以下であるものがより好ましい。ウレタン樹脂は透湿性が高く、後述する第2樹脂層との接着性も高くなる点でも好ましい。そのため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良を更に生じさせにくくすると共に、複合基材の一方面及び他方面との接合性(密着性)が更に優れた紙容器とすることができる。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンイミン樹脂が例示できる。ポリエチレンイミン樹脂も、後述する第2樹脂層との接着性も高くなる点でも好ましい。又、ウレタン樹脂を含む樹脂及びポリエチレンイミン樹脂は、耐熱性が高いので、紙容器がオーブン加熱する食品に用いる場合でも接着部分の剥がれが生じることを防ぐことができる。その中でも第1樹脂層を構成する樹脂として、ウレタン樹脂を含む樹脂を用いる場合には、複合基材の第1樹脂層側にも耐油性も付与することができるので、より好ましい。そのため、油分を含む食品の収容に対して、より適した容器とすることができる。尚、第1樹脂層を構成する樹脂自身の透湿性が低い場合であっても、水蒸気が透過可能な程度に第1樹脂層の厚みが薄い場合には、第1樹脂層の厚みが厚い場合と比較すると複合基材から第2樹脂層を除いた部分(即ち、基材層及び第1樹脂層の部分)の透湿性は相対的に高くなるので、そのような樹脂を用いることも可能である。例えば、樹脂自身は透湿性が低いが、基材層に薄い厚みで第1樹脂層として積層した場合には、基材層及び第1樹脂層の部分の透湿性は高くなり、電子レンジ加熱時に外観不良が生じない場合がある。又、第1樹脂層を生物由来(バイオマス資源由来)のバイオマス樹脂から構成したものやバイオマス樹脂を含むものとしてもよい。この場合、化石資源由来原料の割合が少なくなるため環境保全に役立つ。
【0068】
又、基材層のみの透湿性Aに対する複合基材から第2樹脂層を除いた部分(即ち、基材層及び第1樹脂層の部分)の透湿性Bの比(B/A)が、0.6以上であることが好ましい。このように構成すると、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層からより透過しやすくなるので、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良がより生じにくくなる。
【0069】
更に、複合基材から第2樹脂層を除いた部分(即ち、基材層及び第1樹脂層の部分)の透湿性が、80g/m・h以上であることが好ましい。このように構成すると、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層からより確実に透過しやすくなるので、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良が更に生じにくくなる。
【0070】
又、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、第2樹脂層を構成する樹脂の種類は特に限定されない。ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル(メタクリル)系樹脂、ポリブタジエン等のジエン系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。又、より環境対応に適した紙容器とする場合には、例えば、ポリ乳酸(PLA)などの生分解性樹脂を用いることもできる。尚、好ましい樹脂種類としては、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を用いることが、複合基材同士を接着したときの密着性が優れ、紙容器の強度が向上するため好ましい。又、複合基材の第2樹脂層側に耐水性や耐油性を付与することができる。そのため、水分や油分を含む食品の収容に適した容器とすることができる。尚、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂として、生物由来(バイオマス資源由来)のバイオマスポリエステル系樹脂又はバイオマスポリオレフィン系樹脂を含むことが、化石資源由来の使用量を削減でき、カーボンニュートラル性が向上するため、持続可能性が向上し環境保全に役立つのでより好ましい。
【0071】
更に、これらの中でも、ポリエステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂が共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であって、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸との共重合により得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中におけるイソフタル酸の共重合割合は、1モル%以上10モル%未満であり、融点が235℃以上250℃以下であることが好ましい。このように構成することで、基材層と樹脂層との密着性が高く、且つ、耐熱性が高い紙容器となるため、紙容器の成形不良を防止できると共に、内容物が高温となる場合や焼成工程を経る場合の使用にも好適となる。
【0072】
更に、本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂は、バイオベース炭素含有率が5%以上の、生物由来(バイオマス資源由来)のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸を主成分とし、これらを重縮合して得られる樹脂であるが、その大半は化石資源に由来するものである。これをサトウキビ等の生物由来原料から得られたバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂とすることで、化石資源由来の使用量を削減でき、カーボンニュートラル性が向上するため、持続可能性が向上し環境保全に役立つ。
【0073】
本発明において、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中の生物由来原料の占める割合を示す指標であるバイオベース炭素含有率は、5%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましい。バイオベース炭素含有率が高いほど、化石資源由来原料の割合が少なくなるため環境保全に役立つ紙容器となる。他方でバイオベース炭素含有率の割合が高くなるとコストも増加するため、適正な範囲内であることがより好ましい。尚、バイオベース炭素含有率は、ISO-16620-2(ASTM-D6866標準規格と同等)に準拠した放射性炭素(C14)測定法によって得られたC14含有量の値で示すことができる。即ち、化石資源中にはC14がほとんど含まれず、一方で生物資源中にはC14が一定割合(105.5pMC)で含まれるため、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中のC14の含有量をPC14とすると、下記式でバイオベース炭素含有率を算出することができる。
【0074】
バイオベース炭素含有率(%)=PC14/105.5×100
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、樹脂層の厚さは特に限定されないが、第2樹脂層については、例えば厚さ10μm以上50μm以下のものが挙げられる。特に20μm以上30μm以下の範囲内であることが、第1樹脂との接着の安定性及び紙容器内面の耐水性や耐油性確保の観点から好ましい。
【0075】
又、第1樹脂層の厚みが0.5μm以上10μm以下であり、第2樹脂層の厚みが10μm以上50μm以下であり、第1樹脂層の厚みが第2樹脂層の厚みより小さいことが好ましい。なぜなら、樹脂層の厚みは透湿性と関係しているため、複合基材から第2樹脂層を除いた部分の透湿性と第1樹脂層との厚みとが適した範囲となることで、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層からより確実に透過しやすくなるからである。上述した範囲とすることで、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が第1樹脂層からより確実に透過しやすくなるため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良が更に生じにくくなる。
【0076】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、基材層への第1樹脂層及び第2樹脂層の各樹脂層の積層方法は特に限定されず、押出ラミネート、ドライラミネート、ウェットラミネート、樹脂溶液のコーティング(印刷塗工を含む)等が例示できる。尚、第1樹脂層については樹脂溶液のコーティング、第2樹脂層については押出ラミネートを用いることが好ましい。又、第2樹脂層については、樹脂の積層により、成形後の紙容器に耐熱性、耐水性、耐気液透過性等の特性を付与することができる。又、押出ラミネートの際に紙へ事前にアンカーコート層を形成しても良い。更に、複合基材の表面に印刷が施されていても良い。更に、基材層の紙にコロナ処理が施されていても良い。
【0077】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、複合基材の一方面及び他方面を接着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であることが好ましい。このように構成することで、食品収納紙容器としての通常の使用条件下において樹脂層界面での剥離を防止するため、紙容器の信頼性が向上する。又、上記上限値以下であることで、紙容器として使用した後のゴミの減容化のために紙容器を分解や解体することも容易となる。
【0078】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、種々の用途に用いることができ、その用途は限定されるものではないが、例えば食品の収納用途に用いることができる。又、特に収納容積を増加させた深型形状の紙容器として好適である。
【0079】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、特定の製造方法により製造されたものであったが、他の方法で製造しても良い。
【0080】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着(接着)されていたが、超音波溶着等の他の接着方法であっても良い。又、接着時に加熱を併用してもよい。
【0081】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、フランジの裏面において接着されていたが、他の箇所を含めた広範囲や、フランジの裏面以外の箇所で接着されていても良い。
【0082】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、フランジを備えていたが、フランジを備えていなくとも良い。
【0083】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、側壁部のコーナー部が特定形状であったが、その形状は特に限定されない。尚、本発明の実施の形態のような折り曲げにより紙容器を形成する場合は、容器形状を保持するために折り込み接着(溶着)する部分を含むことが好ましい。
【0084】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、複合基材は基材層、第1樹脂層及び第2樹脂層の3層であったが、アンカーコートや印刷を目的とする樹脂層を含み、4層以上であっても良い。基材層の一方面に複数層の樹脂層が形成されている場合であっても、基材層よりも一方面側にあるものは全てまとめて第1樹脂層とする。又、基材層の他方面に複数層の樹脂層が形成されている場合であっても、基材層よりも他方面側にあるものは全てまとめて第2樹脂層とする。
【0085】
更に、本発明の実施の形態による紙容器にあっては、紙容器の外面側に第1樹脂層を形成し、紙容器の内面側に第2樹脂層を形成しているが、これらを逆に形成しても良い。第1樹脂層を外面側、第2樹脂層を内面側にする場合には、第1樹脂層にウレタン樹脂を含み、第2樹脂層にポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。なぜなら、紙容器の内面側に耐水性や耐油性を付与すると共に、ウレタン樹脂は透湿性が高いため、電子レンジ加熱時に基材層中の水分による水蒸気が外面側から確実に透過しやすくなるからである。そのため、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良を更に生じにくくすることができる。又、ウレタン樹脂を含む場合には耐油性を付与することもできるため、第2樹脂層だけでなく第1樹脂層の耐油性も向上する。したがって、水分や油分を含む食品の収容に対して適した容器とすることができる。
【実施例0086】
以下、実施例に基づいて本発明について具体的に説明する。尚、本発明の実施の形態は実施例に限定されるものではない。
【0087】
(試験体の作製)
まず、実施例1においては、坪量260g/mの紙基材を準備し、その一方面に第1樹脂層としてウレタン樹脂(ポリオール及びポリイソシアネートの反応物であり、重量平均分子量:約50,000)及びロジン樹脂を含む溶液を塗工し乾燥することで厚み5μmの樹脂層を形成するとともに、第2樹脂層として押出ラミネートにてポリエチレンテレフタレート樹脂による厚み30μmの樹脂層を形成することで複合基材を調整した。
【0088】
実施例2においては、第1樹脂層としてポリエチレンイミン樹脂を含む溶液を塗工し乾燥することで厚み5μmの樹脂層を形成したこと以外は実施例1と同様の構成を備えた複合基材を調整した。
【0089】
又、比較例1においては、紙基材の両面に押出ラミネートにてポリエチレンテレフタレート樹脂による厚み30μmの樹脂層を形成したこと以外は実施例1と同様の構成を備えた複合基材を調整した。
【0090】
(評価1:透湿性試験)
実施例1、実施例2及び比較例1における複合基材から第2樹脂層を除いた部分の透湿性を測定するため、透湿性試験では紙基材に予め第2樹脂層を形成せず、第1樹脂層のみを形成したものを使用し、それぞれから試験片を切り出し透湿性の測定を行った。又、参考例1として紙基材単体から試験片を切り出し、透湿性の測定を行った。透湿性試験は、JIS L 1099のA-1法(塩化カルシウム法)により測定した。尚、試験片の第1樹脂層側が塩化カルシウム側へと面するようにして測定を行った。その結果を表1に示す。尚、透湿性試験では、紙基材に予め第2樹脂層を形成せず、第1樹脂層のみを形成したものを使用したが、第2樹脂層が形成された複合基材から第2樹脂層をはがしたものであっても同様の結果が得られるものと推測される。
【0091】
(評価2-1:レンジ加熱後の表面状態1)
実施例1、実施例2及び比較例1における複合基材並びに参考例1として紙基材単体を5cm四方に切り出し、電子レンジ内に載置し、600W、6分間加熱後の表面状態の変化を観察した。
【0092】
(評価2-2:レンジ加熱後の表面状態2)
次に、実施例1、実施例2及び比較例1における複合基材を、それぞれ上述した図3に示す形状のブランクに切断すると共に、第2樹脂層側(ポリエチレンテレフタレート樹脂側)が紙容器の内面側となるようにしてブランクを折り曲げて容器形状に保持した状態で加圧プレスしながら、紙容器のフランジ部の接合箇所を高周波溶着に供することで、上述した図1に示す形状の紙容器を得た。尚、実施例1及び実施例2においては、加圧プレスをプレス金型が加熱された状態(約85℃)で行い、比較例1では常温状態で行った。又、接着については、紙容器のフランジ部の接合箇所の裏面において、40MHzのトランジスタ式高周波発振器にて出力1800W、時間1.5秒で高周波溶着を行った。得られた各紙容器に市販の冷凍パスタ(株式会社ニップン製、商品名:オーマイプレミアム彩々野菜ペペロンチーノ)を収容した状態で電子レンジ内に載置し、600W、6分間加熱後の紙容器の表面状態の変化を観察した。
【0093】
それぞれの結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
(評価3:密着性試験)
実施例1、実施例2及び比較例1における複合基材を用いて、評価2-2と同様の方法にて各5個の紙容器を作製した。
【0095】
試験体の各紙容器から、上述した図4において“A”部分として示す、フランジ裏面における接着されている箇所(接合用舌片及びフランジの一部)及びこれと連続した側壁部における接着されていない箇所を試験片として切り出し、引張試験機(島津製作所製、品名:オートグラフ、型番:AGS-X)を用いて接着されていない箇所の端部2箇所を持たせ、180°剥離、引張速度100mm/minで剥離試験を行うことで、複合基材の一方面及び他方面の密着性を試験した。
【0096】
結果を下記の表2に示す。
【0097】
【表2】
表2を参照して、実施例1及び実施例2の密着性は4.0N/cm以上あり、好適な密着性が得られた。したがって、表1及び表2から、本発明の紙容器は、電子レンジ加熱後に樹脂沸きが発生することによる外観不良が生じにくく、複合基材の一方面及び他方面との接合性(密着性)に優れることを確認した。
【0098】
(評価4:耐熱性試験)
評価2-2と同様の方法にて、実施例1、実施例2及び比較例1における複合基材を用いて、各10個の紙容器を作製した。参考例1として紙基材単体を準備した。
【0099】
試験体の各紙容器には何も収容せずに空の状態で、オーブンにて220℃で10分間空焼き状態にて加熱し、紙容器の接着部分の剥がれの有無を目視で確認した。実施例1、実施例2及び比較例1いずれも紙容器10個を試験に供した。紙容器10個のうち、いずれの紙容器にも接着箇所に剥がれが見られなかった場合は、「接着剥がれ無し」と評価し、紙容器10個のうち、1個でも紙容器の接着箇所に剥がれが見られた場合は、「接着剥がれ有り」と評価した。尚、参考例1は、紙基材単体であるため紙容器に成形できる評価は不能であった。その結果を表3に示す。
【0100】
表3を参照して、実施例1及び実施例2は、加熱後であっても接着箇所に剥がれが見られず、容器形態が保持されていた。したがって、本発明の紙容器は、耐熱性を有することを確認した。
【0101】
又、表1~表3を参照して、実施例1及び実施例2と参考例1とを比較すると、参考例1では樹脂沸きは発生しないが、紙基材単体では接着することができないため成形ができず、紙容器として成立していない。このことから、樹脂沸きを発生させない信頼性の高い紙容器には、透湿性の高さと接合箇所の密着性の高さを両立させる必要があると言える。これに対して、実施例1及び実施例2は、樹脂沸きを発生させない程度の透湿性を有すると共に、接合箇所の密着性が高く、加熱後であっても接合箇所の剥がれが見られないという結果が得られた。したがって、本発明の紙容器は、透湿性の高さと接着箇所の密着性の高さを両立させることにより、電子レンジ加熱時の紙容器の外観不良を生じにくく信頼性の高い紙容器となっていることを確認した。
【0102】
(評価5:耐油性試験)
実施例1、実施例2及び比較例1における複合基材並びに参考例1として紙基材単体から試験片を50mm四方の大きさに切り出し、各10枚ずつ試験片を準備した。
【0103】
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.41:2000「紙及び板紙 はつ油度試験方法 キット法」に準じる試験方法にて評価した。ただし、試験にあたっては、キットナンバー2の試験液(ひまし油180ml、トルエン10ml及びへプタン10mlの混合液)のみを用いて、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.41の「6.操作」のa)からc)の操作後の試験片への試験液の染み込み状態を評価した。評価にあたっては、試験後の試験片を照明に当てて透かす前の状態の評価(評価5-1)と透かした時の状態の評価(評価5-2)のそれぞれで評価を行い、評価5-1と評価5-2の評価結果に基づき総合評価を行った。総合評価では、以下の基準により評価した。
◎:評価5-1と5-2のどちらも「油染みが見えない」
〇:評価5-1と5-2の一方で「油染みが見えない」
×:評価5-1と5-2のどちらも「油染みが見える」
その結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
表3を参照して、透かし無しの状態では実施例1は油染みが見えなかった。したがって、本発明の紙容器では、第1樹脂層を構成する樹脂としてウレタン樹脂を含むものが耐油性を向上させることを確認した。
【符号の説明】
【0105】
1…紙容器
2…底部
3…第1側壁部
4…第2側壁部
5…第1フランジ
6…第2フランジ
7…複合基材
8…立ち上がり端部
9…立ち上がり端部
10…基材層
11…第1樹脂層
12…第2樹脂層
13…複合基材の一方面
14…複合基材の他方面
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7