(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170218
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】血管画像撮影装置および本人認証システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241129BHJP
【FI】
G06T7/00 510E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087257
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野々村 洋
(72)【発明者】
【氏名】長坂 晃朗
(72)【発明者】
【氏名】三浦 直人
(72)【発明者】
【氏名】松田 友輔
(72)【発明者】
【氏名】中崎 渓一郎
(72)【発明者】
【氏名】上里 達実
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【テーマコード(参考)】
5B043
【Fターム(参考)】
5B043AA09
5B043BA01
5B043DA05
5B043EA02
5B043EA15
5B043GA05
(57)【要約】
【課題】利用者が指を曲げて血管画像撮影装置にかざした場合でも正しく本人認証をすることができる技術を提供する。
【解決手段】
血管画像撮影装置100は、指111の背側に近赤外光103を照射する光源102と、近赤外光103を照射された指111を指111の腹側から撮影する撮像装置110と、撮影された血管画像から指の関節部分を透過した帯状の輝度飽和領域を検出することにより指111が曲がっていることを検知する制御装置113とを備える。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の指の血管画像を撮影する血管画像撮影装置において、
前記指の背側に光を照射する光源と、
前記光を照射された指を前記指の腹側から撮影する撮像手段と、
前記撮影された血管画像から前記指の関節部分を透過した帯状の輝度飽和を起こしている領域を検出することにより前記指が曲がっていることを検知する制御部とを備える血管画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の血管画像撮影装置において、
前記指の腹側に光を照射する反射光光源を、さらに備え、
前記撮像手段は、前記反射光光源により光を照射された指を前記指の腹側から撮影し、
前記制御部は、前記撮影された血管画像から前記指の関節しわによる線状の暗色部分を検出することにより前記指が曲がっていることを検知する血管画像撮影装置。
【請求項3】
請求項1記載の血管画像撮影装置において、
前記制御部は、
前記指が曲がっていることを検知したときは、前記血管画像の指先側と指付け根側を指長さ方向に引き伸ばし、前記血管画像の指先側を指幅方向に引き伸ばし、前記血管画像の指付け根側を指幅方向に引き伸ばす又は縮小することにより前記血管画像を補正する血管画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1記載の血管画像撮影装置において、
前記光源は、指先側に設けられた指先側光源と、指付け根側に設けられた指付け根側光源とを有し、
前記指先側光源は、垂直方向からの光軸角度が指先側に10~80度の範囲になるように配置され、
前記指付け根側光源は、垂直方向からの光軸角度が指付け根側に10~80度の範囲になるように配置される血管画像撮影装置。
【請求項5】
請求項1記載の血管画像撮影装置において、
前記光源は、指先側に設けられた指先側光源と、指付け根側に設けられた指付け根側光源とを有し、
前記指先側光源は、垂直方向からの光軸角度が指付け根側に10~80度の範囲になるように配置され、
前記指付け根側光源は、垂直方向からの光軸角度が指先側に10~80度の範囲になるように配置される血管画像撮影装置。
【請求項6】
請求項1記載の血管画像撮影装置において、
前記制御部は、
前記撮影された血管画像から前記指の関節部分を透過した帯状の輝度飽和を起こしている領域の位置を検出することにより前記指の関節位置を検出する血管画像撮影装置。
【請求項7】
請求項1記載の血管画像撮影装置において、
前記制御部により前記指が曲がっていることを検知したことを前記利用者に知らせる表示部を、さらに備える血管画像撮影装置。
【請求項8】
利用者の指の血管画像を撮影する血管画像撮影装置と、
前記血管画像撮影装置により撮影された血管画像を用いて本人認証を行う認証装置とを備える本人認証システムにおいて、
前記血管画像撮影装置は、
前記指の背側に光を照射する光源と、
前記光を照射された指を前記指の腹側から撮影する撮像手段と、
前記撮影された血管画像から前記指の関節部分を透過した帯状の輝度飽和を起こしている領域を検出することにより前記指が曲がっていることを検知する制御部とを備え、
前記認証装置は、
予め登録された登録血管パターンを記憶する記憶部と、
前記撮影された血管画像から指血管パターンを生成し、前記生成された指血管パターンと前記登録血管パターンとを照合することにより本人認証を行う処理部とを備える本人認証システム。
【請求項9】
請求項8記載の本人認証システムにおいて、
前記血管画像撮影装置は、前記指の腹側に光を照射する反射光光源を、さらに備え、
前記撮像手段は、前記反射光光源により光を照射された指を前記指の腹側から撮影し、
前記制御部は、前記撮影された血管画像から前記指の関節しわによる線状の暗色部分を検出することにより前記指が曲がっていることを検知する本人認証システム。
【請求項10】
請求項8記載の本人認証システムにおいて、
前記制御部は、
前記指が曲がっていることを検知したときは、前記血管画像の指先側と指付け根側を指長さ方向に引き伸ばし、前記血管画像の指先側を指幅方向に引き伸ばし、前記血管画像の指付け根側を指幅方向に引き伸ばす又は縮小することにより前記血管画像を補正する本人認証システム。
【請求項11】
請求項8記載の本人認証システムにおいて、
前記光源は、指先側に設けられた指先側光源と、指付け根側に設けられた指付け根側光源とを有し、
前記指先側光源は、垂直方向からの光軸角度が指先側に10~80度の範囲になるように配置され、
前記指付け根側光源は、垂直方向からの光軸角度が指付け根側に10~80度の範囲になるように配置される本人認証システム。
【請求項12】
請求項8記載の本人認証システムにおいて、
前記光源は、指先側に設けられた指先側光源と、指付け根側に設けられた指付け根側光源とを有し、
前記指先側光源は、垂直方向からの光軸角度が指付け根側に10~80度の範囲になるように配置され、
前記指付け根側光源は、垂直方向からの光軸角度が指先側に10~80度の範囲になるように配置される本人認証システム。
【請求項13】
請求項8記載の本人認証システムにおいて、
前記制御部は、
前記撮影された血管画像から前記指の関節部分を透過した帯状の輝度飽和を起こしている領域の位置を検出することにより前記指の関節位置を検出し、
前記処理部は、
前記検出された関節位置を用いて前記生成された指血管パターンと前記登録血管パターンの位置を合わせることにより、前記生成された指血管パターンと前記登録血管パターンとを照合する本人認証システム。
【請求項14】
請求項8記載の本人認証システムにおいて、
前記認証装置は、
前記制御部により前記指が曲がっていることを検知したことを前記利用者に知らせる表示部を、さらに備える本人認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管画像撮影装置および本人認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高精度な本人認証が可能な生体認証装置の一つに、血管パターンを利用したものがある。これは、血管パターンが個人ごとに異なることを利用し、例えば指に近赤外光を照射することで浮かび上がる指血管パターンを、予め登録しておいた指血管パターンの情報と照合することで本人認証を行う生体認証装置である。
【0003】
指血管パターンを利用した生体認証装置では、指を伸ばして指血管パターンを登録したにもかかわらず、指を曲げて本人認証をしようとした場合、指を曲げることで指血管パターンに歪みが生じ、正しく本人認証が行えない場合がある。
【0004】
特許文献1には、認証装置に2台のカメラが設置されることにより、一般的なステレオ視の技術に基づく距離計測により、指表面と装置との距離を計測することで、指の浮きや曲げの状態を把握することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の認証装置では、指曲げを検知して補正することにより正しく本人認証を行うことができるが、2台のカメラを設置する必要があり、製造コストがかかる。
【0007】
本発明は、利用者が指を曲げて血管画像撮影装置にかざした場合でも正しく本人認証をすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の血管画像撮影装置の一つは、利用者の指の血管画像を撮影する血管画像撮影装置において、指の背側に光を照射する光源と、光を照射された指を指の腹側から撮影する撮像手段と、撮影された血管画像から指の関節部分を透過した帯状の輝度飽和領域を検出することにより指が曲がっていることを検知する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明は、利用者が指を曲げて血管画像撮影装置にかざした場合でも正しく本人認証をすることができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の血管画像撮影装置の構成の一例を示す側面図である。
【
図2A】実施例1の血管画像撮影装置で曲げた指を撮影する様子の一例を示す側面図である。
【
図2B】指の血管が鮮明に写る光量より20%弱い光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【
図2C】指の血管が鮮明に写る光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【
図2D】指の血管が鮮明に写る光量より20%強い光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【
図3A】実施例1の血管画像撮影装置で曲げた指を撮影する様子の他の一例を示す側面図である。
【
図3B】反射光光源の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【
図3C】反射光光源の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量の1.5倍の光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【
図3D】反射光光源の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量の2倍の光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【
図4A】実施例1の血管画像撮影装置で指を曲げて撮影された指血管画像の一例を示す図である。
【
図4B】実施例1の血管画像撮影装置で指を曲げて撮影された指血管画像の他の一例を示す図である。
【
図4C】実施例1の血管画像撮影装置100で補正された指血管画像の一例を示す図である。
【
図5】実施例2の本人認証システムの構成の一例を示す図である。
【
図6】実施例2の本人認証装置で実行される本人認証処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施例3の血管画像撮影装置の構成の一例を示す側面図である。
【
図8】実施例3の血管画像撮影装置の構成の他の一例を示す側面図である。
【
図9】実施例3の血管画像撮影装置の構成の他の一例を示す側面図である。
【
図10A】実施例4の血管画像撮影装置で関節位置付加情報を使用しない指血管パターンの照合を説明する図である。
【
図10B】実施例4の血管画像撮影装置で関節位置付加情報を使用した指血管パターンの照合を説明する図である。
【
図11A】実施例5の血管画像撮影装置に伸ばした指をかざした場合の表示画面の一例を示す図である。
【
図11B】実施例5の血管画像撮影装置に曲げた指をかざした場合の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例0013】
本実施例は、利用者の指の血管パターンを撮影する血管画像撮影装置において、利用者が指を曲げていること(以下、「指曲げ」という。)を検知し、指曲げにより歪みが発生した指血管パターンを補正する機能を備えた血管画像撮影装置の例である。
【0014】
図1は、実施例1の血管画像撮影装置の構成の一例を示す側面図である。
【0015】
血管画像撮影装置100は、指111の血管を撮影するために指111の背側に近赤外光103を照射する複数の光源102と、光源102を格納する上部覆い101と、上部覆い101を支える支柱104と、血管画像撮影装置100を利用する場合にかざす指111をのせる指先側指置台105及び指付け根側指置台106と、指血管画像を指111の腹側から撮影するための撮像装置110と、ごみやほこりの侵入を防ぎ撮影のための近赤外光103を透過する光学フィルタ112と、光源102及び撮像装置110を制御する制御装置113とを備える。
【0016】
血管画像撮影装置100に指111をかざすと、光源102から近赤外光103を指111の背側から照射する。近赤外光103は、指111により遮られるが一部は指111を透過する。血液に含まれるヘモグロビンが他の生体部位より近赤外光を強く遮るため、撮像装置110により撮影された画像では、血管パターンが暗色の線として写る。
【0017】
また、血管画像撮影装置100は、指111の腹側に近赤外光109を照射する反射光光源108を備えてもよい。反射光光源108から照射された近赤外光109は、指111の表面で反射して、もしくは指111の内部に入り散乱して再び指111の表面から出る。この近赤外光109を撮像装置110で撮影する。
【0018】
次に、血管画像撮影装置100に利用者が指111を曲げてかざした場合に、光源102で指111の背側を照射して撮像装置110により撮影する例について、
図2を用いて説明する。
【0019】
図2Aは、実施例1の血管画像撮影装置100で曲げた指を撮影する様子の一例を示す側面図であり、
図2Bは、指の血管が鮮明に写る光量より20%弱い光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図であり、
図2Cは、指の血管が鮮明に写る光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図であり、
図2Dは、指の血管が鮮明に写る光量より20%強い光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【0020】
図2Aにおいて、光源102から曲げた指111の背側に近赤外光103を照射し、撮像装置110により撮影している。制御装置113は、光源102の光量を、指111の血管が鮮明に写る光量より20%弱い光量、指111の血管が鮮明に写る光量、指111の血管が鮮明に写る光量より20%強い光量にそれぞれ調整して撮影することにより、
図2B,2C,2Dに示す撮影画像202,206,210が取得される。
【0021】
図2B,2C,2Dの撮影画像202,206,210において、曲げた指111の第1関節と第2関節の部分は、近赤外光103が透過しやすくなるため、関節部分の指111の幅方向に細く帯状に伸びる、輝度飽和を起こしている領域(以下、「輝度飽和領域」という。)204,205,208,209,212,213が現れる。輝度飽和とは、撮像装置110で撮影した画像の明るさが撮像装置110で表現可能な輝度の上限値を超えている場合に、実際はより明るくなっているにもかかわらず、撮像装置110で表現可能な上限値に丸められることを指す。
【0022】
図2B,2C,2Dの撮影画像202,206,210のいずれにおいても、曲げた指111の第1関節と第2関節の部分に、輝度飽和領域204,205,208,209,212,213が鮮明に現れている。
【0023】
血管画像撮影装置100に指111を伸ばしてかざした場合は、輝度飽和領域が縦横両方向に広がりを持って出現し、光源102の光量を強くすると輝度飽和領域は縦横両方向に広がり、光源102の光量を弱くすると輝度飽和領域は縦横両方向に縮む。
【0024】
一方、血管画像撮影装置100に指111を曲げてかざした場合は、指111の関節部分近傍に光量の±20%の範囲で変化させても変わらず指111と同じ幅をもつ、指111の幅方向に帯状の輝度飽和領域が鮮明に現れる。そのため、制御装置113は、この輝度飽和領域を検出することで指111を曲げて血管画像撮影装置100にかざしていることを検知することができる。
【0025】
帯状の輝度飽和領域は、指111の第1関節と第2関節の場所に、2つの関節の間隔と同じ距離を隔てて、平行に2本現れるという特徴がある。また2つの輝度飽和領域はいずれも指幅方向に長く、指幅の長さで、指の長さ方向に直交するという特徴がある。この他に指血管は指の末端まで血液を届けるために全体的に指の長さ方向に走っているため、帯状の輝度飽和領域は指血管の全体的な流れの方向とも直交しているという特徴がある。
【0026】
これらの特徴により、制御装置113は、指曲げによる関節部分の輝度飽和領域204,205,208,209,212,213を識別することにより、指曲げを検知することができる。
【0027】
また、制御装置113は、指曲げの検知と同時に、撮影画像202,206,210の帯状の輝度飽和領域204,205,208,209,212,213の位置を検出することにより、指111の第1関節の位置及び第2関節の位置を検出することができる。
【0028】
また、指111を曲げて血管画像撮影装置100にかざした場合は、指111を伸ばして血管画像撮影装置100にかざした場合に比べて、画像の指先及び指付け根の端の方が暗く写ること、および、指111を曲げて血管画像撮影装置100にかざした場合、指先と指付け根部分が撮像装置110に近くなることで拡大されて指幅が太くなり指の中央部分の指幅が狭く写ることを、帯状の輝度飽和領域204,205,208,209,212,213の検出と併せて利用することで、指曲げを検知する精度を向上させてもよい。
【0029】
また、制御装置113は、指111の第1関節から指先の部分、および第2関節から指付け根の部分の角度を取得して、指を大きく曲げているか、小さく曲げているかといった指曲げの程度を取得する。指曲げの程度を取得するには、第1関節から指先側に向けて、および第2関節から指付け根側に向けて、関節からの距離による指幅の変化率を調べ、予め取得した平均的な指幅の変化率と比べることで、第1関節から指先の部分、および第2関節から指付け根の部分の角度を算出する。
【0030】
また、第1関節から指先側に向けて、および第2関節から指付け根側に向けて、関節からの距離による指111の輝度の変化率を調べ、予め取得した平均的な輝度の変化率と比べることで第1関節から指先側、および第2関節から指付け根部分の角度を算出してもよい。
【0031】
なお、予め様々な角度で曲げた指111の指血管画像および伸ばした指111の指血管画像から、指曲げの有無と指111の第1関節から指先の部分および第2関節から指付け根の部分の角度を推定するように機械学習により学習しておき、その学習結果を用いて、撮影画像から指曲げの有無と、指の第1関節から指先の部分、および第2関節から指付け根の部分の角度を推定してもよい。
【0032】
次に、血管画像撮影装置100に利用者が指111を曲げてかざした場合に、反射光光源108で指111の腹側を照射して撮像装置110により撮影する例について、
図3を用いて説明する。
【0033】
図3Aは、実施例1の血管画像撮影装置100で曲げた指を撮影する様子の他の一例を示す側面図であり、
図3Bは、反射光光源108の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図であり、
図3Cは、反射光光源108の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量の1.5倍の光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図であり、
図3Dは、反射光光源108の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量の2倍の光量を照射した場合の撮影画像の一例を示す図である。
【0034】
図3Aにおいて、反射光光源108から曲げた指111の腹側に近赤外光109を照射し、撮像装置110により撮影している。制御装置113は、反射光光源108の光量を、反射光光源108の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量、反射光光源108の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量の1.5倍の光量、反射光光源108の写り込み以外の輝度飽和領域が発生しない光量の2倍の光量にそれぞれ調整して撮影することにより、
図3B,3C,3Dに示す撮影画像301,308,316が取得される。
【0035】
図3B,3C,3Dの撮影画像301,308,316のいずれにおいても、曲げた指111の第1関節と第2関節の部分に、関節しわによる線状の暗色部分306,307,313,314,321,322が現れる。制御装置113は、関節しわによる線状の暗色部分306,307,313,314,321,322を検出することにより、指曲げを検知することができる。
【0036】
関節しわによる線状の暗色部分306,307,313,314,321,322は、
図2の帯状の輝度飽和領域204,205,208,209,212,213と同様に、第1関節と第2関節の部分に、2つの関節の間隔と同じ距離を隔てて、平行に2本現れるという特徴がある。また、2つの関節しわによる線状の暗色部分はいずれも指幅方向に長く、指幅の長さで、指の長さ方向にと直交するという特徴がある。この他に、指血管は指111の末端まで血液を届けるために全体的に指111の長さ方向に走っているため、関節しわによる線状の暗色部分306,307,313,314,321,322は指血管の全体的な流れの方向とも直交しているという特徴がある。
【0037】
制御装置113は、これらの特徴により指曲げによる関節しわによる線状の暗色部分306,307,313,314,321,322を識別することにより、指曲げを検知することができる。
【0038】
また、
図3B,3C,3Dの撮影画像301,308,316には、指111の中央の輝度の高い部分303,310,318と、輝度飽和領域304,305,311,312,315,319,320,323とが現れる。
【0039】
丸い輝度飽和領域304,305,311,312,319,320は、反射光光源108から照射した近赤外光109が光学フィルタ112に反射して撮影画像に写っている領域と、指111に反射した近赤外光109による領域が重なっている。
【0040】
図3Cの撮影画像308において、指111の中央の輝度の高い部分310には、反射光光源108が光学フィルタ112に反射したことによる輝度飽和領域311,312以外にも、指111の中央部分に輝度飽和領域315が発生している。
【0041】
図3Dの撮影画像316において、指111の中央の輝度の高い部分318には、反射光光源108が光学フィルタ112に反射したことによる輝度飽和領域319,320以外にも、指111の中央部分に
図3Cの輝度飽和領域315より大きい輝度飽和領域323が発生している。
【0042】
血管画像撮影装置100に指111を伸ばしてかざした場合は、反射光光源108が光学フィルタ112に反射したことによる輝度飽和領域が発生し、光源102の光量を強くすると指111の中央部分に輝度飽和領域が発生し、光源102の光量をさらに強くするとこれらの輝度飽和領域がさらに大きくなり一つの大きな輝度飽和領域となる。
【0043】
一方、血管画像撮影装置100に指111を曲げてかざした場合は、光量を2倍に変化させても、独立した輝度飽和領域319,320,323が現れる。そのため、制御装置113は、光量を強くしても独立した輝度飽和領域319,320,323が現れることを、関節しわによる線状の暗色部分306,307,313,314,321,322の検出と併せて利用することで、指曲げを検知する精度を向上させてもよい。
【0044】
次に、血管画像撮影装置100で指曲げが検知された場合に、指曲げにより発生した指血管パターンの歪みを補正する例について、
図3を用いて説明する。
【0045】
図4Aは、実施例1の血管画像撮影装置100で指111を曲げて撮影された指血管画像の一例を示す図であり、
図4Bは、実施例1の血管画像撮影装置100で指111を曲げて撮影された指血管画像の他の一例を示す図であり、
図4Cは、実施例1の血管画像撮影装置100で補正された指血管画像の一例を示す図である。
【0046】
図4A、
図4Bの指血管画像401,408は、血管画像撮影装置100に指111を曲げてかざした場合に、撮像装置110で撮影された指血管画像であり、指血管パターンが暗色の線として写っている。
【0047】
図4Aの指血管画像401では、指111の幅方向については指111を伸ばして血管画像撮影装置100にかざした場合と比べて、指111の第1関節と第2関節の間の中央部分が撮像装置110から遠くなることで縮小されて写り、指先部分と指付け根部分は相対的に撮像装置110に近くなるため指先方向、及び指付け根方向に向かって拡大されて写っている。
【0048】
また、指血管画像401では、指111の長さ方向については、2つの関節の間の中央部分が上下方向に高い位置になることに伴って第1関節から指先側と、第2関節から指付け根側が上下方向に斜めになることで縮小されて写っている。
【0049】
従って、制御装置113は、
図4Aに示すように、指曲げにより歪みが生じた指血管画像401において、指111の長さ方向には第1関節から指先側および第2関節から指付け根側を矢印402、403の方向に引き伸ばし、指111の幅方向には指先側と指付け根側の末端ほど縮小するよう矢印404,405,406,407の方向に縮小することにより、指血管パターンの歪みを補正する。この補正は、一般的な画像の台形補正により実現できる。
【0050】
また、
図4Bに示すように、指付け根側指置台106の形状と指111の性状によっては、指111を伸ばして血管画像撮影装置100にかざした場合に指付け根側で指111がつぶれることで付け根側が指幅方向に広がり、指111を曲げて血管画像撮影装置100にかざした場合は指付け根側が上下方向に斜めになることで浮き上がり、指111を伸ばした場合と比較して付け根側が指幅方向に縮小されて写る場合がある。そのため、指血管画像408では、付け根側が指先や指の中央部と比較して細く写っている。
【0051】
このような場合は、制御装置113は、
図4Bに示すように、指曲げにより歪みが生じた指血管画像408において、指111の長さ方向には
図4Aと同様に第1関節から指先側および第2関節から指付け根側を矢印409、410の方向に引き伸ばし、指111の幅方向には指先側の末端ほど縮小するよう矢印412,414の方向に縮小し、指付け根側の末端ほど拡大するように矢印411,413の方向に引き伸ばすことにより、指血管パターンの歪みを補正する。この補正は、
図4Aと同様の台形補正で、指付け根側の台形補正の向きを
図4Aの場合と変えることにより実現できる。
【0052】
なお、歪み補正は、指曲げによる歪みの発生している指血管画像と、指を伸ばした歪みの発生していない指血管画像を用いて、指曲げにより歪みが発生している指血管画像から指を伸ばした歪みのない指血管画像を推定するよう機械学習により予め学習しておき、その学習結果を用いて、指曲げによる歪みの発生している指血管画像から指を伸ばした歪みのない指血管画像を推定することで行ってもよい。
【0053】
本実施例によれば、制御装置113は、指曲げによる関節部分の輝度飽和領域、または関節しわによる線状の暗色部分を検出することにより指曲げを検知し、指血管画像の指先側と指付け根側を指長さ方向に引き伸ばし、指血管画像の指先側を指幅方向に引き伸ばし、血管画像の指付け根側を指幅方向に引き伸ばす又は縮小することにより、血管画像を補正するので、利用者が指を曲げて血管画像撮影装置にかざした場合でも正しく本人認証をすることができる。
認証装置500は、近赤外光画像入力部502と、近赤外線光源制御部503と、インターフェース504と、外部記憶装置505と、CPU(Central Processing Unit)506と、メモリ507と、表示装置508と、キーボード509と、スピーカ510とを備える。
認証装置500に接続された血管画像撮影装置100に、利用者が指111をかざすことにより、撮像装置110が光学フィルタ112を介して撮影した撮影画像を電気信号に変換し、近赤外光画像入力部502およびインターフェース504を介して画像としてCPU506に取り込み、メモリ507に記録する。
CPU506は、メモリ507に格納されたプログラムを実行することにより、メモリ507に記録された撮影画像から、光源102から弱く照射した光が指111により遮られたことを検知し、血管画像撮影装置100に指111がかざされたことを識別する。
指111をかざしたことを識別すると、CPU506は、メモリ507に格納されたプログラムを実行することにより、インターフェース504を介して近赤外線光源制御部503により光源102から指血管画像を撮影するために十分な近赤外光103を照射するよう制御する。
光源102から近赤外光103を照射された指111の画像を、光学フィルタ112を通し、撮像装置110にて電気信号に変換し、近赤外光画像入力部502およびインターフェース504を介して画像としてCPU506に取り込み、メモリ507に記録する。
CPU506は、メモリ507に記録されたプログラムを実行することにより、メモリ507に記録された画像を、予め外部記憶装置505に登録されている一つ以上の指血管パターン等と照合し、本人認証を行う。本人認証の結果は、スピーカ510により音声で利用者に通知するか、または、キーボード509からの指示により表示装置508に表示して利用者に通知する。
なお、本実施例では、認証装置500と血管画像撮影装置100を別の装置として説明したが、指血管画像を撮影する撮影部と、撮影した指血管画像の情報により本人認証を行う認証部とを備えた血管画像撮影装置として構成しても良い。
まず、利用者が血管画像撮影装置100に指111をかざすと、光源102から指111の背側に近赤外光103を照射し(ステップS602)、撮像装置110により指111の腹側から撮影して、撮影画像を取得する(ステップS603)。
次に、ステップS603で取得した撮影画像から指の検出を行い(ステップS604)、ステップS604において撮影画像から指が検出されたか否かを判定する(ステップS605)。ステップS605で撮影画像から指が検出されたと判定された場合はステップS606に進み、ステップS605で撮影画像から指が検出されていないと判定された場合はステップS602に戻る。
ステップS606では、取得した撮影画像において、検出された指の平均輝度を算出する。指の平均輝度の算出は、例えば撮影画像から指が検出された場合に、撮影画像の指が必ず写る部分の平均輝度を算出することにより行う。
次に、ステップS606で算出した指の平均輝度が、目標輝度の上限と下限の間であるか否かを判定する(ステップS607)。ステップS607で指の平均輝度が目標輝度の上限と下限の間にない場合はステップS608に進み、ステップS607で指の平均輝度が目標輝度の上限と下限の間にある場合はステップS609に進む。
ステップS608では、指の平均輝度が目標輝度の下限を下回っている場合は光量値を増やし、指の平均輝度が目標輝度の上限を上回っている場合は光量値を減らして照射するように光源102を制御し、ステップS602に戻る。
次に、ステップS609で検出した指曲げの程度から、利用者が指を曲げて血管画像撮影装置100にかざしていた場合に発生する指血管画像の歪みを補正する(ステップS610)。
次に、指血管画像から指輪郭を検出して指血管画像の指111の領域を明確にし(ステップS611)、指血管画像から照合を行うための指血管パターンを生成する(ステップS612)。
次に、予め外部記憶装置505に登録済みの指血管パターン614と、ステップS612で撮影画像から生成した指血管パターンの照合を行って(ステップS613)、血管パターン同士の不一致度のスコアを照合スコアとして算出する。照合スコアの算出は、例えばある画像のパターンが別の画像の中に存在するかどうか調べるテンプレートマッチングを行って、調べる指血管パターンの位置を少しずつずらしながら登録済みの指血管パターン614と一致する画素の数を調べ、一致する画素の一番多い位置において一致しない画素の数を数えることで算出する。
次に、算出した照合スコアが閾値を下回っているか否かを判定する(ステップS615)。ステップS615で、算出した照合スコアが閾値を下回っていると判定された場合は、生成した指血管パターンが登録済みの指血管パターン614と一致していると判断し、ステップS616に進み、認証成功後処理を行って、処理を終了する。
一方、ステップS615において、算出した照合スコアが閾値を下回っていないと判定された場合は、生成した指血管パターンが登録済みの指血管パターン614と一致していないと判断し、ステップS617に進み、認証失敗後処理を行って、処理を終了する。
本実施例によれば、撮影画像から輝度飽和領域または暗色部分を検出することにより、利用者が指111を曲げて血管画像撮影装置100にかざしているか否かを検知し、利用者が指111を曲げて血管画像撮影装置100にかざしている場合は指曲げの程度を検出し(ステップS609)、検出した指曲げの程度から指血管画像の歪みを補正する(ステップS610)ので、利用者が指を曲げて血管画像撮影装置にかざした場合でも正しく本人認証をすることができる。