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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017022
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】非常電話装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/04 20060101AFI20240201BHJP
   H04M 1/11 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H04M1/04 A
H04M1/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119377
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
【テーマコード(参考)】
5K023
【Fターム(参考)】
5K023AA13
5K023BB14
5K023BB20
5K023BB26
5K023CC02
5K023KK04
5K023PP02
5K023PP05
(57)【要約】
【課題】送受話器の外れ(脱落やズレ)が発生しづらいとともに送受話器の取り出し操作および装着操作がし易い非常電話装置を提供する。
【解決手段】送受話器(26)と、該送受話器が縦姿勢で少なくとも一部が載置される受け台(25)と、前記送受話器および受け台を収容する箱形の収容ケース(24)と、を備えた非常電話装置において、前記収容ケース(24)の上壁に、収容ケースの前側から後方へ向かって下り傾斜するように配設され基部側を回動支点として先端が上下動可能なサポート片(41)と、サポート片を下方へ押圧する押圧手段(44,46)と、を有し、サポート片の先端が送受話器の上面に近接して対向するようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受話器と、該送受話器が縦姿勢で少なくとも一部が載置される受け台と、前記送受話器および前記受け台を収容する箱形の収容ケースと、を備えた非常電話装置において、
前記収容ケースの上壁に、前記収容ケースの前側から後方へ向かって下り傾斜するように配設され基部側を回動支点として先端が上下動可能に取り付けられたサポート片と、前記サポート片を下方へ押圧する押圧手段と、を有し、前記サポート片の先端が前記送受話器の上面に近接して対向することを特徴とする非常電話装置。
【請求項2】
前記受け台の上面には突起が設けられ、前記送受話器の受話部の下面には前記突起に係合可能な係合凹部が形成され、
前記受け台の所定位置に前記送受話器が装着された状態で、前記突起が前記係合凹部に係合されることで前記送受話器のずれが防止されるように構成されており、
前記サポート片は先端に水平部を有し、前記水平部と前記送受話器の上面とが前記突起の高さよりも小さな距離をおいて対向するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の非常電話装置。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記サポート片の先端の前記水平部と前記収容ケースの上壁との間に介挿された圧縮コイルバネであることを特徴とする請求項2に記載の非常電話装置。
【請求項4】
前記収容ケースの上壁に固定され前記サポート片は基部側を回動可能に支持する受け金具を備え、
前記サポート片または前記受け金具の少なくとも一方は強磁性体材料で形成され、
前記サポート片の基部側または前記受け金具にはマグネットが取り付けられ、前記マグネットの磁力により前記サポート片の先端部を下げる方向の力が作用するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の非常電話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送受話器と収容ケースを備えた電話装置に関し、例えば防災監視システム(火災報知システムを含む)に用いられる非常電話装置に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
防災監視システムには、火災発生時に火災発生現場付近の第一通報者と子機の送受話器を使って現場の状況確認を通話で行うための非常電話装置が監視センター等に設置されている。非常電話装置(親機)は、一般に、子機側の送受話器のオフフック操作で親機の呼出音が鳴動し、親機側の送受話器のオフフック操作で呼出音を停止し、親機側と子機側の送受話器間の通話回線を開通し、親機と子機間での通話ができるように構成されている。
【0003】
しかし、何らかの理由で非常電話装置(親機)の送受話器が外れていると、非常電話装置の規格では送受話器のオフフック状態をランプの点灯で表示する。そのような状態で子機の送受話器がオフフック(火災発生に伴う通話要求を)された際に、親機と子機の送受話器が共にオフフック状態となり親機側での子機からの火災発生に伴う通話要求の呼出音が鳴動しないまま、通話回線が開通状態(通話できる状態)になる。この場合、親機側では子機からの火災発生に伴う通話要求の呼出音が鳴動せず、子機側からの着信(火災発生に伴う通話要求)に気が付かないという事態が生じることになる。
【0004】
なお、非常電話装置の送受話器が外れる主な原因は、送受話器が縦置きの場合、従来の送受話器は、上部の受話部と中央の把手部との境界に形成された凹部が、置き台本体(受け台)に設けられた突起部(段差)に引っかかるように取り付けているだけの構成であるためであり、送受話器に直接又は間接的に何らかの力が加わった場合に送受話器の脱落や正しい装着位置からずれる可能性がある。例えば、送受話器に作業者(管理者)の肩や肘又は物が意図せずに接触したり、非常電話装置を搭載した装置の扉の開閉操作や、地震等で縦方向の振動が加わったりした場合に、送受話器が電話機本体の装着部から外れたり、正しい装着位置からずれたりしてしまうことがある。
【0005】
そのため、非常通話システムの親機側の電話装置に対しては、電話機本体から送受話器の外れ(脱落やズレ)が発生しづらい構造が要望されており、電話機本体に縦置きで装着した送受話器の脱落を防ぐために、送受話器の上方に、下方のフックに向かって押圧する電話器押え具や押圧部(板状弾性部材)を設けるようにした発明が、特許文献1や2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-27068号公報
【特許文献2】特開2022-10911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1や2の発明の電話装置にあっては、電話器押え具や押圧部が置き台(受け台)の取付け面から手前に向かって下方に傾斜する構成であるので、送受話器の取り出しの際に、送受話器を水平もしくは斜めに持ち上げながら手前に引き出す必要があり、電話器押え具や押圧部からの押圧力が送受話器の水平もしくは斜めに持ち上げながらの取り出しに影響することとなる。逆に、送受話器を置き台(受け台)に装着する際も、送受話器の上部で電話器押え具や押圧部を上方に押し上げながら送受話器を押し込むような操作をする必要があり、送受話器の装着操作にも影響することとなる。また、特許文献1や2の発明の電話装置にあっては、電話器押え具や押圧部が送受話器の上部に接触し、常時押圧力が送受話器上部にかかる構成であるため、送受話器の上部に傷がつき易いという課題がある。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、送受話器の外れ(脱落やズレ)が発生しづらいとともに、送受話器の取り出し操作および装着操作がし易い非常電話装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、送受話器の外れ防止機能を設けたとしても、送受話器の上部に傷がつきにくい非常電話装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本出願に係る発明は、
送受話器と、該送受話器が縦姿勢で少なくとも一部が載置される受け台と、前記送受話器および前記受け台を収容する箱形の収容ケースと、を備えた非常電話装置において、
前記収容ケースの上壁に、前記収容ケースの前側から後方へ向かって下り傾斜するように配設され基部側を回動支点として先端が上下動可能に取り付けられたサポート片と、前記サポート片を下方へ押圧する押圧手段と、を有し、前記サポート片の先端が前記送受話器の上面に近接して対向するように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する非常電話装置によれば、先端が送受話器の上面に近接して対向するサポート片が設けられているため、送受話器の外れ(脱落やズレ)が発生しづらい。また、サポート片が収容ケースの前側から後方へ向かって下り傾斜するように配設され基部側を回動支点として先端が上下動する構成であるため、サポート片を逆方向すなわち収容ケースの後側から前方へ向かって下り傾斜するように配設する場合に比べて、送受話器の取り出し操作および装着操作がし易くなる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記受け台の上面には突起が設けられ、前記送受話器の受話部の下面には前記突起に係合可能な係合凹部が形成され、
前記受け台の所定位置に前記送受話器が装着された状態で、前記突起が前記係合凹部に係合されることで前記送受話器のずれが防止されるように構成されており、
前記サポート片は先端に水平部を有し、前記水平部と前記送受話器の上面とが前記突起の高さよりも小さな距離をおいて対向するように設定されているようにする。
【0012】
上記のような構成によれば、サポート片の先端の水平部と送受話器の上面とが、送受話器を係止するための突起の高さよりも小さな距離をおいて対向する構成であるため、送受話器が突起から外れるのを抑制できる。また、サポート片の先端と送受話器の上面とが常時離れていて接触しないので、送受話器の上部に傷がつくのを抑制することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記押圧手段は、前記サポート片の先端の前記水平部と前記収容ケースの上壁との間に介挿された圧縮コイルバネであるようにする。
かかる構成によれば、送受話器が振動等で持ち上がった際に、サポート片の先端の水平部が送受話器の上部を押圧して浮き上がりを防止するのに最適な力を、バネの反発力で比較的容易に設定することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記収容ケースの上壁に固定され前記サポート片は基部側を回動可能に支持する受け金具を備え、
前記サポート片または前記受け金具の少なくとも一方は強磁性体材料で形成され、
前記サポート片の基部側または前記受け金具にはマグネットが取り付けられ、前記マグネットの磁力により前記サポート片の先端部を下げる方向の力が作用するように構成する。
【0015】
上記のような構成によれば、送受話器を受け台上から取り外したり、受け台上へ装着したりする際に、送受話器の上部がサポート片の下面に当たって、マグネットに吸着されていた強磁性体材料で形成されたサポート片または受け金具がマグネットから少しでも離れると送受話器の上部を押圧する力が急に弱くなるため、送受話器の浮き上がりを防止するための押圧力が送受話器の取り外し操作や装着操作の大きな抵抗とならないので、送受話器の取り外し操作や装着操作をし易くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非常電話装置の送受話器収容箱によれば、送受話器の外れ(脱落やズレ)が発生しづらいとともに、送受話器の取り出し操作および装着操作がし易い。また、送受話器の外れ防止機能を設けたとしても、送受話器の上部に傷がつきにくいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る非常電話装置の一実施形態を示す正面図である。
図2】(A)は実施形態の非常電話装置を構成する非常電話ユニットの構成例を示す正面図、(B)は(A)におけるB-Bに沿った断面側面図である。
図3】実施形態の非常電話装置を構成する電話器ユニットのオフフックの状態を示す斜視図である。
図4】実施形態の非常電話装置を構成する送受話器収容箱に設けられる送受話器の浮上り防止機構の第1の実施例を示すもので、(A)は送受話器のオンフックの状態を示す要部拡大側面図、(B)は送受話器のオフフックの状態を示す要部拡大側面図である。
図5】第1実施例の浮上り防止機構を構成する部品の詳細を示すもので、(A)は部品を組み合わせた状態を示す斜視図、(B)は構成部品の分解斜視図である。
図6】実施形態の非常電話装置を構成する送受話器収容箱に設けられる送受話器の浮上り防止機構の第2の実施例を示すもので、(A)は送受話器のオンフックの状態を示す要部拡大側面図、(B)は送受話器のオフフックの状態を示す要部拡大側面図である。
図7】第2実施例の浮上り防止機構を構成する部品の詳細を示すもので、(A)は部品を組み合わせた状態を示す斜視図、(B)は構成部品の分解斜視図である。
図8】(A)は実施形態の非常電話装置における浮上り防止機構を構成するサポート片と送受話器の上部との間の隙間を示す要部拡大側面図、(B)はサポート片の変形例を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の非常電話装置は、建物の一角にある監視センター等に設置され、建物内の各所に設置された子機との間で通話を行う機能を有する。
図1には非常電話装置の一実施形態が示されている。図1は監視センター等に設置される非常電話装置の正面図である。
図1に示すように、本実施形態の非常電話装置10は、前面に開閉扉11Aを有する縦長の箱状をなす金属製の筐体11と、開閉扉11Aの一部(図では中央よりやや上寄りの位置)に形成された矩形状の開口11aに嵌め込まれた非常電話装置の主要部(以下、非常電話ユニットと記す)12とを備える。
【0019】
非常電話ユニット12は、上記開閉扉11Aを形成する前面パネルと同一平面をなす金属製の前面パネル21と、前面パネル21の左側に形成された縦長矩形状の開口21aに嵌め込まれた電話器ユニット22と、前面パネル21の右側に形成された略正方形の開口21bに嵌め込まれた操作表示部23とを備えており、電話器ユニット22は前面パネル21の裏面に取り付けられた収容ケース24内に収容されている。なお、電話器ユニット22は、親機となる非常電話装置または子機のいずれにも使用可能である。
【0020】
図2には非常電話ユニット12の詳細が示されている。このうち、(A)は非常電話ユニット12の正面図、(B)は(A)におけるB-Bに沿った断面側面図である。
操作表示部23は、図2(A)に示すように、火災発報の際に警報音を発するスピーカ31や、火災発報に関連した各種情報を表示するためのLCD(液晶表示装置)などからなる情報表示部32、火災発報の音響を停止させるための押しボタンや、火災内容・異常内容などを情報表示部32に表示させるため情報ボタン、試験を実施するための試験スイッチボタンなどの各種の機能ボタンを有する入力操作部33などを備えている。
【0021】
一方、非常電話ユニット12は、図2(B)に示されているように、収容ケース24の後壁にネジによって固定された台座部25Bおよび該台座部25Bの前面に一体に形成された支持部25Aからなる受け台25と、該受け台25の前面に接合、載置された送受話器26と、端部のコネクタが受け台25と送受話器26にそれぞれ接続されたカールコード27とを備える。図2から分かるように、本実施形態の非常電話ユニット12は、送受話器26を縦置きして受け台25に装着する形式である。
【0022】
本実施形態の非常電話ユニット12においては、特に限定されるものでないが、収容ケース24の奥行が、受け台25の前面に送受話器26を載置したオンフックの状態で、収容ケース24の後壁から送受話器26の前面までの高さよりも数mm大きくなるように設定されている。これにより、送受話器26の前面は前面パネル21よりも奥に位置し、筐体11の前面に飛び出さないようになっている。
また、本実施形態の非常電話ユニット12においては、収容ケース24の前端下部に設けられている前縁壁24cの内側に、側方視で収容ケース24の後壁側へ向かっておよそ45度で下り傾斜する傾斜面を有する台形状をなす誘導部材28が設けられている。
【0023】
また、受け台25のほぼ中間高さ位置にカールコード27の一方の端部のコネクタが位置し、収容ケース24は前記一方の端部のコネクタの位置から底壁までの距離が、送受話器26の縦方向の長さ(約20cm)とほぼ同じになるように設定されている。
さらに、収容ケース24の上壁は、受け台25に載置された送受話器26の受話器側上端からカールコード27のカール部の径分程度高くなるように設定され、収容ケース24内の誘導部材28の中間高さ位置から収容ケース24の後壁までの距離L0がカールコード27のカール部の径(例えば15mm)の約2倍(例えば30mm)となるように設定されている。
【0024】
これにより、誘導部材28の傾斜面と収容ケース24の後壁~底壁の間にカールコード27のカール部を折り返して二重にして横に寝かせて収納しても十分収納可能な空間が形成されている。そして、収容ケース24の横幅(前面視で左右方向の長さ)は、上記収納空間に、カールコード27のカール部を横に寝かせて1回だけ折り返した状態で収納した際に、折返し部の外側が収容ケース24の側壁内面に接するか接しない程度になるように設定されている。これにより、カールコード27のカール部の復元力が、送受話器26を押し上げるように作用して、受け台25から外れるのを防止することができる。
【0025】
また、誘導部材28を設けたことにより、誘導部材28の後方の収納空間に、カールコード27のカール部を横に寝かせて1回だけ折り返した状態で収納した際の外見は、前方から収納空間にあるカールコード27がほとんど見えない状態にすることができる。そのため、送受話器26から垂れ下がったカールコード27は、非常電話ユニット12の前面パネル21よりも前へ張り出すことがなく、移動する人の体の一部や搬送される物品が接触して送受話器26が受け台25から外れるのを防止することができる。また、自重でカールコードのカール部が延びてしまうのを防止することができる。
【0026】
また、本実施形態の非常電話ユニット12においては、図3に示されているように、受け台25の支持部25Aの上側の凹部25cの底壁上面に山型の突起29が設けられているとともに、図示しないが、送受話器26の受話部26Aの下面には、上記突起29に係合可能な係合凹部が形成されている。この突起29に送受話器26の受話部26Aの係合凹部が掛けられる形で送受話器26が装着される構造のため、縦型の電話ユニットにおいて、比較的小さな振動が加わったとしても送受話器26が受け台25から外れて脱落したりずれたりするのを防止できるようになっている。なお、受話部26Aの下面の上記突起29に係合可能な係合凹部内に、オフフック状態を検知するスイッチが設けられていても良い。
【0027】
さらに、本実施形態の非常電話ユニット12においては、送受話器26の上方に、送受話器26の浮き上がりを防止する浮上り防止機構が設けられている。
図4には浮上り防止機構40の第1の実施例が、また図6には浮上り防止機構40の第2の実施例が示されている。図4および図6に示すように、浮上り防止機構40は、一端が収容ケース24の上壁前縁部に係止され、後方(図では左方)へ向かって下り傾斜し、先端部が送受話器26の上面近傍に位置するように配設されたサポート片41をそれぞれ備えるとともに、サポート片41は両端にそれぞれ水平部を有し中間に傾斜部を有する点で共通している。サポート片41の傾斜部の水平面に対する角度は30度~50度の範囲にあれば良く、好適な角度は45度である。
【0028】
以下、図4に示す第1実施例の浮上り防止機構40と図6に示す第2実施例の浮上り防止機構40の詳細な構成と作用効果について、順に説明する。
図4に示す第1実施例の浮上り防止機構40は、円柱状をなすスペーサ部42aを上面に備え該スペーサ部42aに形成されたネジ穴(雌ネジ)に螺合するネジ43によって、収容ケース24の上壁前縁部に、収容ケース24の上壁と所定の間隔をおいて水平姿勢にて固定される受け金具42と、サポート片41の先端側(下端側)の水平部と収容ケース24の上壁との間に介挿された圧縮コイルバネ(以下、圧縮バネと記す)44と、を備える。なお、収容ケース24の上壁の所定部位に、ネジ43を螺合させるネジ穴(雌ネジ)を形成して、ネジ43を下方からスペーサ部42aを貫通させ、収容ケース24の上壁のネジ穴に螺合させるように構成しても良い。これにより、受け金具42を簡単に固定することができる。
【0029】
サポート片41の基端側(上端側)の水平部には、スペーサ部42aに遊嵌する貫通孔が形成されており、サポート片41は基端側を支点として先端側が上下方向に揺動可能に構成されている。さらに、サポート片41の先端側の水平部と送受話器26の上面とは、図8(A)に示すように、所定の間隔δだけ離れるように構成されている。なお、間隔δは、受け台25側の突起29の高さ(例えば3mm)よりも小さい値に設定される。
尚、サポート片41の先端側の形状は図8(B)に示すように曲面としてもよい。図8(B)に示すようにサポート片41の先端側の形状を曲面とした場合、送受話器26の脱着時にサポート片41と接触する範囲を少なくでき、送受話器26の着脱時におけるサポート片41の影響を少なくできる。
【0030】
上記のような構成を有することにより、地震等で送受話器26が上下に振動したとしても、サポート片41の先端部が送受話器26の上面に当たることで送受話器26の突起29の高さを超える浮き上がりを防ぐことができる。よって、送受話器26が受け台25から外れたり、正規の位置からずれたりするのを防止することができる。
さらに、サポート片41の先端側の水平部と送受話器26の上面との間にδの隙間が設けられており、サポート片41の先端が送受話器26の上面に常時接触しない構造になっているため、送受話器26の上面に傷が付くのを防止することができる。また、本実施例の浮上り防止機構は、既存の非常電話装置の送受話器収容箱に後から追加で設置することができる。
【0031】
通常使用時には、図4(B)に示すように、送受話器26を持ち上げると、圧縮バネ44が縮みながらサポート片41の先端側が上方へ移動するようにして、サポート片41が回動し、送受話器26の上部がサポート片41の傾斜部の下面に沿って移動することで、送受話器26が受け台25から外される。
逆に、送受話器26を受け台25に載置する場合には、送受話器26の上部をサポート片41の傾斜部の下面に接触させ、前方へ押し込むと、送受話器26の上部がサポート片41の傾斜部に誘導されて、送受話器26側の係合凹部が受け台25側の突起29に係合する所定位置に移動することとなる。なお、圧縮バネ44による最適な押圧力については、後に詳しく説明する。
【0032】
図5(A)、(B)には、図4に示す浮上り防止機構40を構成する部品の詳細な構造が示されている。このうち、(A)は部品を組み合わせた状態を示す斜視図、(B)は構成部品の分解斜視図である。
図5(B)に示すように、受け金具42の上面には、2個の円柱状スペーサ部42aが設けられており、サポート片41の基端側の水平部には、2個のスペーサ部42aにそれぞれ遊嵌する2個の貫通孔41aが形成されている。
【0033】
一方、受け金具42の後端部には突状部42bが形成され、サポート片41の基端側の端部は下方に折曲され、角部には上記突状部42bよりも一回り大きな開口41bが形成され、サポート片41の基端側の開口41bが受け金具42の後端部の突状部42bに係合されることで、サポート片41はこの係合部を支点として上下方向に揺動可能に構成されている。
さらに、サポート片41の先端側の水平部には、切り起こし加工によって、垂直片41cが立設されており、垂直片41cに圧縮バネ44が挿入されることによって、垂直片41cは圧縮バネ44を垂直に支持するガイドポストとして機能する。また、圧縮バネ44の下端とサポート片41の先端側の水平部との間には、ワッシャ45が介挿されている。
また、図8(B)のようにサポート片41の先端側を曲面とした場合もサポート片41の先端側に図5(B)と同様に切り起こし部を設けガイドポストとして形成しても良い。
【0034】
次に、図6に示す第2実施例の浮上り防止機構40の詳細な構成と作用効果について説明する。なお、図7(A)、(B)には、図6に示す浮上り防止機構40を構成する部品の詳細な構造が示されている。このうち、(A)は部品を組み合わせた状態を示す斜視図、(B)は構成部品の分解斜視図である。
【0035】
図6に示す浮上り防止機構40は、支点側の構造が図4に示す第1実施例の浮上り防止機構と類似しており、円柱状をなすスペーサ部42aを上面に備え該スペーサ部42aに螺合されたネジ43によって、収容ケース24の上壁前縁部に収容ケース24の上壁と所定の間隔をおいて水平姿勢にて固定される受け金具42を備える。ただし、サポート片41の先端側(下端側)の水平部と収容ケース24の上壁との間に介挿される圧縮バネ44はなく、代わりに、サポート片41の基端側(上端側)の水平部の下面に固着されたマグネット46を備える。また、サポート片41は、磁石に吸着される強磁性体材料で形成されている。サポート片41を強磁性体材料で形成する代わりに、受け金具42を強磁性体材料で形成しても良いし、サポート片41と受け金具42の両方を強磁性体材料で形成しても良い。
【0036】
また、図7(B)に示すように、サポート片41の基端側(上端側)の水平部には、スペーサ部42aに遊嵌する貫通孔41aが形成されており、サポート片41は基端側を支点として先端側が上下方向に揺動可能に構成されている。また、受け金具42の後端部には突状部42bが形成され、サポート片41の基端側の端部は下方に折曲され、折曲部のサポート片41の基端側下面からマグネット46の厚み分下に上記突状部42bよりも一回り大きな開口41bが形成され、サポート片41の基端側の開口41bが受け金具42の後端部の突状部42bに係合されることで、サポート片41はこの係合部を支点として上下方向に揺動可能に構成されている。
【0037】
さらに、サポート片41の先端側の水平部と送受話器26の上面とは、第1実施例の浮上り防止機構と同様、図8(A)に示すように、所定の間隔δだけ離れるように構成されている。なお、間隔δは、受け台25側の突起29の高さ(3mm)よりも小さい値に設定される。
尚、サポート片41の先端側の形状は図8(B)に示すように曲面としてもよい。図8(B)に示すようにサポート片41の先端側の形状を曲面とした場合、送受話器26の脱着時にサポート片41と接触する範囲を少なくでき、送受話器26の着脱時のサポート片41の影響を少なくできる。
【0038】
なお、第2実施例の浮上り防止機構40は、第1実施例の浮上り防止機構における圧縮バネ44のバネ力の代わりに、マグネット46による吸引力を利用するもので、動作はほぼ同じであるので、詳しい説明は省略する。
次に、圧縮バネ44のバネ力またはマグネット46による吸引力によるサポート片41の最適な押圧力について説明する。
【0039】
本発明者らは、地震が発生した場合でも送受話器26が受け第25から外れないように、サポート片41が送受話器26の上部へ押圧力を作用させるのに必要な条件を検討した。なお、一般的な耐震設計において設計用水平震度を1とした場合、設計用鉛直震度Kvは0.5である。
送受話器26の重量Zが150gの場合、設計用鉛直震度をKv、重量をニュートンに変換する係数をW(9.8)とすると、鉛直地震力Fvは次式
鉛直地震力Fv=Z×Kv×W ……(1)
で表わされる。
【0040】
設計用鉛直震度Kvは上述したように0.5であるので、送受話器26の重量Zが150g(0.15kg)の場合、上記式(1)より、
鉛直地震力Fv=0.15×0.5×9.8=0.735(N)
となる。ここで、安全率(マージン)を1.3、地震の振動による送受話器26の浮き上がりを防止するのに必要な押し付け力をFとすると、
F=0.735×1.3=0.9555≒1(N)≒100(gf)
となる。従って、地震に伴う振動で送受話器26に加わる押し上げ力は、第1実施例の場合、圧縮バネ44による反発力をおよそ100(重量グラム)に設定し、サポート片41を介して送受話器26にバネの押圧力を与えることで抑えられることが分かる。
【0041】
一方、マグネットを用いて送受話器26の外れを防止する第2実施例の場合、サポート片41の全長をL1、回動支点からマグネット46迄の距離をL2とすると、送受話器26の上部に1(N)の押圧力Fを作用させることができるように、サポート片41の基部側を固定するのに必要なマグネット46の吸引力Fmは、テコの原理から、次式
Fm=F×(L1/L2) ……(2)
で表わされる。ここで、L1を43mm、L2を13mmと仮定すると、上記式(2)より
Fm=1×(43/13) =3.3(N) =330(gf)
となる。従って、地震に伴う振動で送受話器26が浮き上がりを防止するのに必要なマグネットの吸引力は330(gf)となる。
【0042】
上記のような構造を有する浮上り防止機構40を採用した本実施形態の非常電話装置においては、上記のように圧縮バネ44の反発力やマグネット46の吸引力を設定することによって、地震等で送受話器26が上下に振動したとしても、サポート片41の先端部が送受話器26の上面に当たることで送受話器26の浮き上がりを防止して、送受話器26が受け台25から外れたり、正規の位置からずれたりするのを防止することができる。
【0043】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、受け金具42の後端部に突状部42bを設け、サポート片41の基端側の端部に上記突状部42bよりも一回り大きな開口41bを形成して、サポート片41の基端側の開口41bに受け金具42の突状部42bを係合させることで、サポート片41が揺動可能になるように構成されているが、サポート片41の基端側にピン軸を設け、受け金具42に軸穴を有する支持片を設けて、サポート片41が揺動可能になるように構成してもよい。
【0044】
また、前記実施形態においては、浮上り防止機構40に押圧力を持たせるため、圧縮バネ44またはマグネット46を使用しているが、サポート片41をバネ鋼で板バネとして形成することで押圧力を持たせるように構成することも可能である。この場合にも、サポート片(板バネ)41の向きが従来のものと逆であるため、送受話器26を受け台25に装着する際に、抵抗として作用せず誘導部材として機能するという利点がある。
さらに、前記実施形態においては、浮上り防止機構40が収容ケース24の上壁前縁部(天板)に取付ける例を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、収容ケース24の上寄りに上記で説明した浮上り防止機構40が取付けられれば良く、収容ケース24の上寄りの一方の側壁又は左右の側壁間に固定する構成であってもよいし、収容ケース24の手前かつ上側の表面板に取り付ける形態であっても良い。
さらに、前記実施形態においては、送受話器26と受け台25との間を接続するカールコード27が設けられているが、送受話器が無線通信方式の場合、カールコード27は不要であり、収容ケース24は送受話器とその受け台を収容するものであれば良い。
【0045】
さらに、本発明の非常電話装置は、図1に示す実施形態のように縦長の筐体の前面に設けられるものに限定されるものでなく、図1の実施形態の筐体よりも高さの低い筐体の前面パネルあるいは火災受信機の一部に取り付けられるもの、火災発信機及びベルやスピーカを備えた機器収容箱もしくは非常警報設備の前面パネルに子機として取り付けられるもの、さらには非常電話ユニット単独で建物の壁面等に子機として設置されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 非常電話装置
11 筐体
11A 開閉扉
12 非常電話ユニット
21 前面パネル
21a,21b 開口
22 電話器ユニット
23 操作表示部
24 収容ケース
24c 前縁壁
25 受け台
25A 支持部
25B 台座部
26 送受話器
27 カールコード
28 誘導部材
29 突起
40 浮上り防止機構
41 サポート片
42 受け金具
43 ネジ
44 圧縮バネ
45 ワッシャ
46 マグネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8