(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170220
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/16 20060101AFI20241129BHJP
E06B 3/34 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
E06B7/16 C
E06B3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087266
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】油谷 祥太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】柚木 一弥
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
【Fターム(参考)】
2E014AA01
2E014CA07
2E014CC05
2E036AA01
2E036AA02
2E036AA04
2E036BA01
2E036CA03
2E036DA02
2E036EB02
2E036FA10
2E036FB01
2E036FB02
2E036GA02
2E036HB18
2E036HC02
2E036HC07
(57)【要約】
【課題】枠体と障子との間の気密性や水密性を確保し、かつ防火性の向上を図る。
【解決手段】枠体10と障子20との間にリンク機構1が設けられ、枠体10に対して障子20の戸先となる部分が面外方向に向けて開放可能となる建具であって、枠体10の吊元側となる吊元枠14及び障子20の吊元側となる吊元框24には、それぞれ相手側に向けて延在し、障子20が閉じ位置に配置された場合に互いに見込み方向に重複し、かつ相互間に間隔を確保した位置に配置される規制部材36f,47dが設けられ、吊元枠14の枠規制部材36fは吊元框24の框規制部材47dよりも障子20の開放側に配置され、吊元框24には、樹脂によって成形され、障子20が閉じ位置に配置された場合に相手側の枠規制部材36fが当接する引き寄せ部材が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と障子との間にリンク機構が設けられ、前記枠体に対して前記障子の戸先となる部分が面外方向に向けて開放可能となる建具であって、
前記枠体の吊元側となる吊元枠材及び前記障子の吊元側となる吊元框材には、それぞれ相手側に向けて延在し、前記障子が閉じ位置に配置された場合に互いに見込み方向に重複し、かつ相互間に間隔を確保した位置に配置される規制部材が設けられ、前記吊元枠材の規制部材は前記吊元框材の規制部材よりも前記障子の開放側に配置され、
前記吊元枠材及び前記吊元框材のいずれか一方には、樹脂によって成形され、前記障子が閉じ位置に配置された場合に相手側の前記規制部材が当接する引き寄せ部材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記引き寄せ部材には、前記規制部材に当接することにより、前記枠体に対して前記障子を室内側にガイドする第1の傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記引き寄せ部材には、前記規制部材に当接することにより、前記枠体に対して前記障子を室外側にガイドする第2の傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記規制部材は、少なくとも一方が長手方向の全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記規制部材は、前記吊元枠材及び前記吊元框材の少なくとも一方と一体に成形されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり出し窓等のように、枠体と障子との間に設けられたリンク機構を介して障子が開放可能となるように支持された建具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建具では、枠体及び障子の吊元において互いに対向する部分に樹脂製の引き寄せ部材を配設し、障子が閉じ位置に配置された際に引き寄せ部材を相互に当接させることにより障子を閉じ位置に維持し、枠体と障子との間の気密性や水密性を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の建具では、火災発生時等において高温状態に晒された場合、引き寄せ部材が溶融、もしくは焼失することになる。このため、枠体から障子が開放側に脱落するおそれがあり、室内外方向に火炎が貫通する等、防火性を考慮すると必ずしも好ましいとはいえない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、枠体と障子との間の気密性や水密性を確保し、かつ防火性の向上を図ることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体と障子との間にリンク機構が設けられ、前記枠体に対して前記障子の戸先となる部分が面外方向に向けて開放可能となる建具であって、枠体の吊元側となる吊元枠材及び前記障子の吊元側となる吊元框材には、それぞれ相手側に向けて延在し、前記障子が閉じ位置に配置された場合に互いに見込み方向に重複し、かつ相互間に間隔を確保した位置に配置される規制部材が設けられ、前記吊元枠材の規制部材は前記吊元框材の規制部材よりも前記障子の開放側に配置され、前記吊元枠材及び前記吊元框材のいずれか一方には、樹脂によって成形され、前記障子が閉じ位置に配置された場合に相手側の前記規制部材が当接する引き寄せ部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、引き寄せ部材に規制部材が当接することで枠体と障子との間の気密性や水密性を確保することが可能となる。しかも、枠体に設けた規制部材が障子に設けた規制部材よりも障子の開放側において見込み方向に重複するため、高温に晒されて引き寄せ部材が溶融、もしくは焼失したとしても規制部材が互いに当接することで枠体から障子が開放側に脱落する事態を防止することができ、防火性の点でも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た姿図である。
【
図4】
図1に示した建具の吊元側となる部分を分解して示すもので、(a)は縦枠を構成する金属枠部の横断面図、(b)は縦枠を構成する樹脂枠部の横断面図、(c)は障子の縦框を構成する金属框部の横断面図、(d)は障子に適用する押縁の横断面図、(e)は障子の縦框を構成する樹脂框部の横断面図である。
【
図5】変形例の建具の吊元側となる部分を示す横断面図である。
【
図6】
図5に示した建具の吊元側となる部分を分解して示すもので、(a)は縦枠を構成する金属枠部の横断面図、(b)は障子の縦框を構成する金属框部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と障子20とを備え、枠体10に対して障子20を室外側に向けて面外方向に押し開くように構成した縦すべり出し窓と称されるものである。枠体10は、上枠11、下枠12、左右の縦枠13,14を四周組することによって構成したものである。上枠11、下枠12、縦枠13,14は、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した金属枠部と、樹脂によって成形した樹脂枠部とを備えて構成したものである。障子20は、上框21、下框22、左右の縦框23,24を四周組することによって構成した框体の内部に複層ガラス等のパネル25を支持させたものである。上框21、下框22、縦框23,24についても、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した金属框部と、樹脂によって樹脂框部とを備えて構成したものである。四周の金属框部には、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した押縁40が装着してある。上述した樹脂框部は、押縁40の室内に臨む見付け面に取り付けてある。図には明示していないが、上枠11の金属枠部30と上框21の金属框部41との間及び下枠12の金属枠部32と下框22の金属框部43との間には、それぞれフリクションステーと称されるリンク機構1が設けてあり、リンク機構1によって障子20が枠体10に対して開閉可能に支持してある。以下、枠体10及び障子20の構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。
【0011】
上枠11の金属枠部30は、上金属枠本体30a、上戸当り壁部30b、上樹脂枠嵌合部30cを一体に成形したものである。上金属枠本体30aは、断面が横長となる略長方形の中空状を成すものである。上金属枠本体30aには、室外側、かつ内周側となる縁部に上シール部材30fが装着してある。上戸当り壁部30bは、上金属枠本体30aの内周側、かつ室内側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。上戸当り壁部30bの内周側縁部において室外に臨む部分には、シール部材2が装着してある。上戸当り壁部30bの内周側縁部において室内に臨む部分には、内周側に開口した上カバー溝部30dが設けてある。上樹脂枠嵌合部30cは、上金属枠本体30aの外周側、かつ室内側となる縁部から室内側に向けて見込み方向に延在した後、内周側に向けて屈曲したもので、内周側となる縁部に内周側に開口した上嵌合溝30eを有している。
【0012】
上枠11の樹脂枠部31は、上樹脂枠本体31a、上枠カバー部31b、上嵌合板部31c、上取付板部31dを一体に成形したものである。上樹脂枠本体31aは、断面が縦長となる略長方形の中空状を成すものである。上枠カバー部31bは、上樹脂枠本体31aの内周側、かつ室外側となる縁部から室外に向けて見込み方向に延在したものである。上枠カバー部31bの外周側となる見込み面には、外周側に向けて見付け方向に延在した上カバー突部31eが設けてある。上嵌合板部31cは、上樹脂枠本体31aの外周側、かつ室内側となる縁部から外周に向けて見付け方向に延在したものである。上取付板部31dは、上樹脂枠本体31aの室内に臨む見付け面の外周側となる部分から室内に向けて見込み方向に延在したものである。この樹脂枠部31は、上カバー突部31eを上カバー溝部30dに嵌合するとともに、上嵌合板部31cを上樹脂枠嵌合部30cの上嵌合溝30eに嵌合させることによって金属枠部30に装着してある。図からも明らかなように、樹脂枠部31を装着した金属枠部30では、上金属枠本体30aから上戸当り壁部30bまでの内周側となる見込み面及び室内に臨む見付け面が樹脂枠部31によって覆われた状態となっている。
【0013】
下枠12の金属枠部32は、下金属枠本体32a、下戸当り壁部32b、下樹脂枠嵌合部32c、水切り部32dを一体に成形したものである。下金属枠本体32aは、断面が横長となる略長方形の中空状を成すものである。下戸当り壁部32bは、下金属枠本体32aの内周側、かつ室内側となる縁部から室内に向けて延在した後に内周側に向けて見付け方向に延在したものである。下戸当り壁部32bの内周側縁部において室外に臨む部分には、シール部材2が装着してある。下戸当り壁部32bの内周側縁部において室内に臨む部分には、内周側に開口した下カバー溝部32eが設けてある。下樹脂枠嵌合部32cは、下戸当り壁部32bの室内に臨む見付け面の中間部分から室内に向けて延在した後、内周側に向けて屈曲したもので、内周側となる縁部に内周側に開口した下嵌合溝32fを有している。水切り部32dは、下金属枠本体32aの外周側、かつ室外側となる縁部から室外に向けて見込み方向に延在した後、外周に向けて屈曲した部分を有したものである。
【0014】
下枠12の樹脂枠部33は、下樹脂枠本体33a、下枠カバー部33b、下取付板部33c、下嵌合板部33dを一体に成形したものである。下樹脂枠本体33aは、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在したものである。下枠カバー部33bは、下樹脂枠本体33aの室外側となる縁部から内周に向けてわずかに突出した後に室外に向けて見込み方向に延在したものである。下枠カバー部33bの外周側となる見込み面において下樹脂枠本体33aとの境界となる部分には、外周側に向けて見込み方向に延在した下カバー突部33eが設けてある。下取付板部33cは、下樹脂枠本体33aの室内側となる縁部から内周に向けてわずかに突出した後に室内に向けて見込み方向に延在したものである。下嵌合板部33dは、下取付板部33cの外周側となる見込み面において室外側となる部分から外周に向けて見付け方向に延在したものである。この樹脂枠部33は、下カバー突部33eを下カバー溝部32eに嵌合するとともに、下嵌合板部33dを下樹脂枠嵌合部32cの下嵌合溝32fに嵌合させることによって金属枠部32に装着してある。図からも明らかなように、樹脂枠部33を装着した金属枠部32では、下戸当り壁部32bの内周側となる見込み面及びこれよりも室内に位置する部分の見込み面が樹脂枠部33によって覆われた状態となっている。
【0015】
戸先となる縦枠(以下、区別する場合に戸先枠13という)の金属枠部34は、先金属枠本体34a、先戸当り壁部34b、先樹脂枠嵌合部34cを一体に成形したものである。先金属枠本体34aは、断面が見込み方向に長手となる長方形の中空状を成すものである。先戸当り壁部34bは、先金属枠本体34aの内周側、かつ室内側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。先戸当り壁部34bの内周側縁部において室外に臨む部分には、シール部材2が装着してある。先戸当り壁部34bの内周側縁部において室内に臨む部分には、内周側に開口した先カバー溝部34dが設けてある。先樹脂枠嵌合部34cは、先金属枠本体34aの外周側、かつ室内側となる縁部から室内側に向けて見込み方向に延在した後、内周側に向けて屈曲したもので、内周側となる縁部に内周側に開口した先嵌合溝34eを有している。
【0016】
戸先枠13の樹脂枠部35は、先樹脂枠本体35a、先枠カバー部35b、先嵌合板部35c、先取付板部35dを一体に成形したものである。先樹脂枠本体35aは、断面が見付け方向に長手となる略長方形の中空状を成すものである。先枠カバー部35bは、先樹脂枠本体35aの内周側、かつ室外側となる縁部から室外に向けて見込み方向に延在したものである。先枠カバー部35bの外周側となる見込み面には、外周側に向けて見込み方向に延在した先カバー突部35eが設けてある。先嵌合板部35cは、先樹脂枠本体35aの外周側、かつ室内側となる縁部から外周に向けて見付け方向に延在したものである。先取付板部35dは、先樹脂枠本体35aの室内に臨む見付け面の外周側となる部分から室内に向けて見込み方向に延在したものである。この樹脂枠部35は、先カバー突部35eを先カバー溝部34dに嵌合するとともに、先嵌合板部35cを先樹脂枠嵌合部34cの先嵌合溝34eに嵌合させることによって金属枠部34に装着してある。図からも明らかなように、樹脂枠部35を装着した金属枠部34では、先戸当り壁部34bの内周側となる見込み面及び室内に臨む見付け面が樹脂枠部35によって覆われた状態となっている。
【0017】
吊元となる縦枠(吊元枠材であり、以下、区別する場合に吊元枠14という)の金属枠部36は、
図4に示すように、元金属枠本体36a、元戸当り壁部36b、元樹脂枠嵌合部36c、枠規制部材36fを一体に成形したものである。元金属枠本体36a、元戸当り壁部36b、元樹脂枠嵌合部36cについては、戸先枠13の金属枠部34と対称となる形状を有するように構成してある。元戸当り壁部36bの内周側縁部において室内に臨む部分には、内周側に開口した元カバー溝部36dが設けてあり、元樹脂枠嵌合部36cには、内周側となる縁部に内周側に開口した元嵌合溝36eが設けてある。枠規制部材36fは、元金属枠本体36aの内周側となる見込み面の中間部から内周に向けて見付け方向に延在した平板状を成すもので、吊元枠14の長手に沿った全長にわたる部分に設けてある。
【0018】
吊元枠14の樹脂枠部37は、元樹脂枠本体37a、元枠カバー部37b、元嵌合板部37c、元取付板部37dを一体に成形したものである。元樹脂枠本体37a、元枠カバー部37b、元嵌合板部37c、元取付板部37dは、戸先枠13の樹脂枠部35と対称となる形状を有するように構成してある。吊元枠14の樹脂枠部37についても、元カバー突部37eを元カバー溝部36dに嵌合するとともに、元嵌合板部37cを元樹脂枠嵌合部36cの元嵌合溝36eに嵌合させることによって金属枠部36に装着してある。樹脂枠部37を装着した金属枠部36では、元戸当り壁部36bの内周側となる見込み面及び室内に臨む見付け面が樹脂枠部37によって覆われた状態となっている。
【0019】
図1~
図3に示すように、上記のように構成した上枠11、下枠12、左右の縦枠13,14は、四周組することによって枠体10を構成する。四周の金属枠部30,32,34,36に装着したアンカー部材3を介して躯体(図示せず)に支持させれば、枠体10を躯体に取り付けることが可能である。それぞれの戸当り壁部30b,32b,34b,36bに設けたシール部材2は、四周で一連となるものである。
【0020】
上框21の金属框部41は、上内方中空部41a、上外方中空部41b、上パネル支持壁部41cを一体に成形したものである。上内方中空部41a及び上外方中空部41bは、それぞれ断面が略長方形の中空状を成すもので、上内方中空部41aの室外側に上外方中空部41bが連設するように構成してある。上内方中空部41a及び上外方中空部41bは、外周側となる見込み面が同一の平面上に位置する一方、内周側となる部分は、上内方中空部41aが上外方中空部41bよりも内周側に突出している。さらに上外方中空部41bは、室外側に位置する半部が室内側に位置する半部よりも内周側に突出することによって中間部に段部41dを構成している。上内方中空部41aの内周側、かつ室外側となる縁部には、押縁内係合突部41eが設けてあり、上外方中空部41bの段部41dには、押縁外係合突部41fが設けてある。押縁内係合突部41e及び押縁外係合突部41fは、上述した押縁40を金属框部41に装着させるためのものである。押縁内係合突部41eは、室外に向けて突出し、押縁外係合突部41fは段部41dの内周側となる縁部から室内に向けて突出したものである。
【0021】
押縁40は、四周で共通となるもので、押縁内係合突部41e及び押縁外係合突部41fに係合した状態で金属框部41に装着したもので、上内方中空部41aの内周側、かつ外周側となる縁部から内周に向けてほぼ見付け方向に沿って延在している。押縁40の室内に臨む見付け面には、後述する樹脂框部42を支持するための嵌合支持部40aが設けてある。
【0022】
上パネル支持壁部41cは、上外方中空部41bの内周側、かつ室外側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。上パネル支持壁部41cの内周側縁部において室内に臨む部分には、室内に向けて開口するようにシール材装着部41gが設けてある。
【0023】
上框21の樹脂框部42は、断面が略長方形の中空状を成すものである。樹脂框部42の室外に臨む見付け面には、嵌合受部42aが設けてある。この樹脂框部42は、嵌合受部42aを嵌合支持部40aに嵌合させることによって押縁40の室内に臨む見付け面から室内に突出する状態で押縁40に取り付けてある。図からも明らかなように、樹脂框部42を装着した金属框部41では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から上内方中空部41aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部42によって覆われた状態となっている。
【0024】
下框22の金属框部43は、下内方中空部43a、下外方中空部43b、下パネル支持壁部43cを一体に成形したもので、段部43d、押縁内係合突部43e、押縁外係合突部43f、シール材装着部43g、押縁40を含めて上框21の金属框部41と対称となる形状を有するように構成してある。同様に、下框22の樹脂框部44は、断面が略長方形の中空状を成すもので、嵌合受部44aを含めて上框21の樹脂框部42と対称となる形状を有するように構成したもので、嵌合受部44aを嵌合支持部40aに嵌合させることによって押縁40の室内に臨む見付け面から室内に突出する状態で押縁40に取り付けてある。図からも明らかなように、樹脂框部44を装着した金属框部43では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から下内方中空部43aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部44によって覆われた状態となっている。
【0025】
戸先となる縦框(以下、区別する場合に戸先框23という)の金属框部45は、先金属框本体45a、先パネル支持壁部45b、先シールヒレ部45cを一体に成形したものである。先金属框本体45aは、見込み方向に沿って鉛直に延在した略平板状を成すものである。この先金属框本体45aには、外周側となる見込み面にレール支持溝45dが設けてあり、内周側となる見込み面には押縁40を装着するための押縁内係合突部45e及び押縁外係合突部45fが設けてある。レール支持溝45dは、室内に向けて突出した後、互いに近接する方向に向けて屈曲したもので、互いの間に帯状を成す連動部材27を戸先框23の長手に沿って移動可能に収容することが可能である。押縁内係合突部45eは、内周側に向けて突出した後に室外に向けて屈曲したものである。押縁外係合突部45fは、押縁内係合突部45eよりも室外側において内周側に向けて突出した後に室内に向けて屈曲したものである。先パネル支持壁部45bは、先金属框本体45aの室外側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。先パネル支持壁部45bの内周側縁部において室内に臨む部分には、室内に向けて開口するようにシール材装着部45gが設けてある。先シールヒレ部45cは、先金属框本体45aの室外側となる縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。先シールヒレ部45cの延在縁部には、戸先枠13との間に介在する先シール部材45hが装着してある。戸先框23の樹脂框部46は、上框21のものと同様の形状を有したものである。図からも明らかなように、樹脂框部46を装着した金属框部45では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から先金属框本体45aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部46によって覆われた状態となっている。戸先框23の樹脂框部46には、内周側となる見込み面に操作ハンドル26が取り付けられる。図には明示していないが、操作ハンドル26は、上述の連動部材27に連係したものであり、適宜操作することにより、戸先枠13と戸先框23との間に設けた錠装置28を施解錠動作させることが可能である。
【0026】
吊元となる縦框(吊元框材であり、以下、区別する場合に吊元框24という)の金属框部47は、
図3及び
図4に示すように、元金属框本体47a、元パネル支持壁部47b、元シールヒレ部47c、框規制部材47dを一体に成形したものである。元金属框本体47aは、見込み方向に沿って鉛直に延在した略平板状を成すものである。この元金属框本体47aには、内周側となる見込み面に押縁40を装着するための押縁内係合突部47e及び押縁外係合突部47fが設けてある。押縁内係合突部47e及び押縁外係合突部47fは、戸先框23に形成したものと対称となる形状を有するように構成したものである。元パネル支持壁部47bは、元金属框本体47aの室外側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。元パネル支持壁部47bの内周側縁部において室内に臨む部分には、室内に向けて開口するようにシール材装着部47gが設けてある。元シールヒレ部47cは、元金属框本体47aの室外側となる縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。元シールヒレ部47cの延在縁部には、吊元枠14との間に介在する元シール部材47hが装着してある。吊元框24の樹脂框部48は、上框21のものと同様の形状を有し、かつ戸先框23のものと対称形状となるものである。図からも明らかなように、樹脂框部48を装着した金属框部47では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から元金属框本体47aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部48によって覆われた状態となっている。框規制部材47dは、元金属框本体47aの室内側となる縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したもので、吊元框24の長手に沿った全長にわたる部分に設けてある。この框規制部材47dは、障子20を閉じ位置に配置した場合に、枠規制部材36fに対して室内側に位置し、かつ見込み方向に重複するとともに、互いの間に間隔を確保するように設けてある。
【0027】
また、吊元框24には、引き寄せ部材50が取り付けてある。引き寄せ部材50は、樹脂によって成形した略直方体状を成すもので、元金属框本体47aの外周側となる見込み面において吊元枠14の枠規制部材36fに対向する位置に取り付けてある。この引き寄せ部材50には、吊元枠14に対向する表面に長手に沿って延在する係合溝51が設けてある。係合溝51は、室内側に内方傾斜面(第1の傾斜部)51aを有し、かつ室外側に外方傾斜面(第2の傾斜部)51bを有したもので、吊元枠14に近接するに従って開口幅が漸次拡大するように断面がV字状を成している。すなわち、内方傾斜面51aは、吊元枠14に近接するに従って漸次室内側となるように傾斜し、外方傾斜面51bは、吊元枠14に近接するに従って漸次室外側となるように傾斜している。図には明示していないが、引き寄せ部材50は、吊元框24の長手に沿った複数位置に互いに間隔を確保し、かつ障子20が閉じ位置に配置された場合に吊元枠14の枠規制部材36fが係合溝51の内部において当接する状態となるように吊元框24に取り付けてある。
【0028】
上記のように構成した上框21、下框22、左右の縦框23,24は、四周組するとともに、それぞれのパネル支持壁部41c,43c,45b,47bと押縁40との間にシール部材25a,25bを介してパネル25の縁部を支持することにより、障子20を構成する。この障子20は、リンク機構1を介して枠体10に開閉可能に支持してあり、枠体10に対して閉じ位置に配置した場合、上述した図示せぬ錠装置28が噛み合った状態となることで閉じ位置に保持される。この状態においては、枠体10の各戸当り壁部30b,32b,34b,36bに装着した一連となるシール部材2が上框21、下框22、左右の縦框23,24の室内に臨む見付け面に当接した状態となる。また、室外側においては、上枠11に設けた上シール部材30fが上框21に当接するとともに、戸先框23に設けた先シール部材45hが戸先枠13に当接し、かつ吊元框24に設けた元シール部材47hが吊元枠14に当接する。従って、雨水等の室外の水や室外の空気が室内に進入する事態を防止することが可能となる。
【0029】
一般に、枠体10を構成する上枠11、下枠12、縦枠13,14としてそれぞれ金属枠部と樹脂枠部とを備えたものを適用し、かつ障子20を構成する上框21、下框22、縦框23,24としてそれぞれ金属框部と樹脂框部とを備えたものを適用した建具では、これらの形材を金属のみによって成形したものに比べて断熱性の点で有利となるものの、剛性が劣るのは否めない。従って、枠体10と障子20との間が錠装置28によって拘束された戸先に比べて吊元側の水密性や気密性を維持することが難しい場合がある。
【0030】
しかしながら、上述の建具によれば、障子20を閉じ位置に配置すると、吊元においても吊元框24に設けた引き寄せ部材50が係合溝51において枠規制部材36fに当接された状態となる。従って、内方傾斜面51aが枠規制部材36fに当接することで枠体10に対して吊元框24が室内側に付勢された状態となり、枠体10と障子20との間の水密性及び気密性をより確実に確保することができる。
【0031】
加えて、室外の風圧(負圧)によりパネル25を室外に向けて引っ張るような外力が障子20に作用した場合にも、内方傾斜面51aが枠規制部材36fに当接することでこれに抗することが可能となる。逆に、室外の風圧(正圧)によりパネル25を室内に向けて押圧するような外力が障子20に作用した場合には、外方傾斜面51bが枠規制部材36fに当接することでこれに抗することが可能となり、耐風圧の点で有利となる。
【0032】
ここで、上述した引き寄せ部材50は樹脂によって成形したものである。このため、火災発生時等のように建具が高温に晒された場合には、引き寄せ部材50が溶融、もしくは焼失し、枠規制部材36fとの当接状態が解除されるおそれがある。しかしながら、本実施の形態の建具では、枠規制部材36fが室外側において框規制部材47dと見込み方向に重複するように設けてある。従って、引き寄せ部材50が溶融、もしくは焼失した場合であっても、框規制部材47dが枠規制部材36fに当接することで障子20が室外側に脱落する事態を防止することができ、防火性の向上を図ることが可能となる。
【0033】
因に、操作ハンドル26の操作によって錠装置28を解除状態とすれば、リンク機構1を介して障子20を開放することができる。このとき、障子20は、吊元框24が上枠11及び下枠12の長手に沿ってほぼ平行移動するとともに、上下に沿った回転軸心となり、戸先部分が室外に向けて突出するように移動する。従って、障子20の開閉移動の際に吊元枠14に設けた枠規制部材36fと吊元框24に設けた框規制部材47dとが相互に干渉することはない。
【0034】
上述した実施の形態では、障子20の吊元框24に引き寄せ部材50を設けるようにしているが、本発明はこれに限定されず、例えば
図5、
図6に示す変形例のように、枠体10の吊元枠14に引き寄せ部材50を設けるようにしても良い。すなわち、変形例の建具では、元金属枠本体36aの内周側となる見込み面において元戸当り壁部36bと枠規制部材36fとの間に引き寄せ部材50が設けてある。引き寄せ部材50は、実施の形態と同様、樹脂によって成形したブロック状を成すもので、吊元框24の框規制部材47dに対向する部分に係合溝51を有している。その他の変形例の構成は実施の形態と同様であり、同一の符号が付してある。
【0035】
この変形例の建具においても障子20を閉じ位置に配置すると、戸先において錠装置28が噛み合った状態となり、かつ吊元においても吊元枠14に設けた引き寄せ部材50に対して框規制部材47dが係合溝51において当接された状態となる。従って、框規制部材47dが外方傾斜面(第1の傾斜部)51bが当接することで枠体10に対して吊元框24が室内側に付勢された状態となり、枠体10と障子20との間の水密性及び気密性をより確実に確保することができる。
【0036】
しかも、室外の風圧(負圧)によりパネル25を室外に向けて引っ張るような外力が障子20に作用した場合にも、框規制部材47dが外方傾斜面51bに当接することでこれに抗することが可能となる。逆に、室外の風圧(正圧)によりパネル25を室内に向けて押圧するような外力が障子20に作用した場合には、框規制部材47dが内方傾斜面(第2の傾斜部)51aに当接することでこれに抗することが可能となり、耐風圧の点で有利となる。
【0037】
さらに、変形例の建具においても枠規制部材36fが室外側において框規制部材47dと見込み方向に重複するように設けてある。従って、引き寄せ部材50が溶融、もしくは焼失した場合であっても、框規制部材47dが枠規制部材36fに当接することで障子20が室外側に脱落する事態を防止することができ、防火性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
なお、上述した実施の形態では、枠体10を構成する上枠11、下枠12、縦枠13,14としてそれぞれ金属枠部と樹脂枠部とを備えたものを適用し、かつ障子20を構成する上框21、下框22、縦框23,24としてそれぞれ金属框部と樹脂框部とを備えたものを適用しているが、本発明はこれに限定されない。枠体10を構成する上枠11、下枠12、縦枠13,14が金属のみによって成形されたものであっても良いし、障子20の上框21、下框22、縦框23,24が金属のみによって成形されたものであっても同様の作用効果を奏する。
【0039】
また、上述した実施の形態では、枠規制部材36fを吊元枠14と一体に成形し、かつ框規制部材47dを吊元框24と一体に成形しているが、枠規制部材36fを吊元枠14と別体に成形しても良いし、框規制部材47dを吊元框24と別体に成形しても良い。さらに、枠規制部材36fを吊元枠14の長手に沿って全長に設け、かつ框規制部材47dを吊元框24の長手に沿って全長に設けるようにしているが、本発明はこれに限定されない。吊元枠14の長手に沿って互いに間隔を確保した複数の位置に枠規制部材36fを設けるようにしても良いし、吊元框24の長手に沿って互いに間隔を確保した複数の位置に框規制部材47dを設けるようにしても構わない。
【0040】
さらに、上述した実施の形態では、縦すべり出し窓を例示しているが、横すべり出し窓にも適用することが可能である。また、障子が室外側に開放するものを例示しているが、必ずしもこれに限定されない。さらに、押縁を介してパネルを支持するようにしているが、必ずしも押縁を備えている必要はない。
【0041】
以上のように、本発明に係る建具は、枠体と障子との間にリンク機構が設けられ、前記枠体に対して前記障子の戸先となる部分が面外方向に向けて開放可能となる建具であって、前記枠体の吊元側となる吊元枠材及び前記障子の吊元側となる吊元框材には、それぞれ相手側に向けて延在し、前記障子が閉じ位置に配置された場合に互いに見込み方向に重複し、かつ相互間に間隔を確保した位置に配置される規制部材が設けられ、前記吊元枠材の規制部材は前記吊元框材の規制部材よりも前記障子の開放側に配置され、前記吊元枠材及び前記吊元框材のいずれか一方には、樹脂によって成形され、前記障子が閉じ位置に配置された場合に相手側の前記規制部材が当接する引き寄せ部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、引き寄せ部材に規制部材が当接することで枠体と障子との間の気密性や水密性を確保することが可能となる。しかも、枠体に設けた規制部材が障子に設けた規制部材よりも障子の開放側において見込み方向に重複するため、高温に晒されて引き寄せ部材が溶融、もしくは焼失したとしても規制部材が互いに当接することで枠体から障子が開放側に脱落する事態を防止することができ、防火性の点でも有利となる。
【0042】
また本発明は、上述した建具において、前記引き寄せ部材には、前記規制部材に当接することにより、前記枠体に対して前記障子を室内側にガイドする第1の傾斜部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、第1の傾斜部の傾斜作用により枠体に対して障子が室内側にガイドされることになる。従って、室外の風圧(負圧)により室外に向けて引っ張るような外力が障子に作用した場合にも、内方傾斜面が規制部材に当接することでこれに抗することが可能となる。
【0043】
また本発明は、上述した建具において、前記引き寄せ部材には、前記規制部材に当接することにより、前記枠体に対して前記障子を室外側にガイドする第2の傾斜部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、第2の傾斜部の傾斜作用により枠体に対して障子が室外側にガイドされることになる。従って、室外の風圧(正圧)により室内に向けて押圧するような外力が障子に作用した場合にも、外方傾斜面が規制部材に当接することでこれに抗することが可能となる。
【0044】
また本発明は、上述した建具において、前記規制部材は、少なくとも一方が長手方向の全長にわたって設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、枠体に設けた規制部材と障子に設けた規制部材とをより確実に当接させることができる。
【0045】
また本発明は、上述した建具において、前記規制部材は、前記吊元枠材及び前記吊元框材の少なくとも一方と一体に成形されていることを特徴としている。
この発明によれば、部品点数が増える事態を防止することができ、建具の製造作業を容易化することができる等の利点がある。
【符号の説明】
【0046】
1 リンク機構、10 枠体、20 障子、14 吊元枠、23 戸先框、24 吊元框、36f 枠規制部材、47d 框規制部材、50 引き寄せ部材、51 係合溝、51a 内方傾斜面、51b 外方傾斜面